InstagramInstagram

テトラヒドロ葉酸代謝パネル検査|葉酸代謝異常症・非ケトーシス型高グリシン血症など13遺伝子を調べる遺伝子検査

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

テトラヒドロ葉酸代謝パネル検査|葉酸代謝異常症・非ケトーシス型高グリシン血症など13遺伝子を調べる遺伝子検査

テトラヒドロ葉酸は、食べ物からとった葉酸が体の中で働ける形になったものです。この葉酸の代謝や、名前のよく似たBH4(テトラヒドロビオプテリン)の代謝に関わる遺伝子に生まれつきの変化があると、赤ちゃんや子どもの時期に、貧血・けいれん・発達の遅れなどが起こることがあります。病名がわかると、フォリン酸などによる治療を選べる病気かどうか、何に気をつけて見守るか、きょうだいや次のお子さんをどう考えるかが決まります。このページでは、テトラヒドロ葉酸代謝に関わる13遺伝子を一度に調べる葉酸代謝の遺伝子検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. テトラヒドロ葉酸代謝パネル検査で何がわかりますか?

テトラヒドロ葉酸の代謝に関わる13遺伝子を一度に調べ、非ケトーシス型高グリシン血症・脳葉酸輸送欠損症・DHFR欠損症・BH4欠乏症(PTPS欠損症など)といった、生まれつきの代謝の病気の原因があるかを確かめます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

血液や髄液の検査でグリシンの高値・葉酸の低値を指摘された方、新生児マススクリーニングで高フェニルアラニン血症と言われBH4欠乏症との区別が必要な方、原因のわからない巨赤芽球性貧血やけいれんのあるお子さん、ご家族にこれらの病気の方がいる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。どの病気もほとんどが常染色体潜性(劣性)遺伝なので、原因がわかると、きょうだいや次のお子さんの確率(4分の1)と、次の妊娠での備えを具体的に考えられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 病名がわかると、次の一手が決まります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 代謝の病気を広く調べたい方へ

1. テトラヒドロ葉酸とは?葉酸のはたらきと、代謝が止まると起きること

テトラヒドロ葉酸(THF)は、葉酸(ビタミンB9)が体の中で働ける形になった「活性型の葉酸」で、DNAの材料づくりやアミノ酸の代謝に「炭素1個分の部品」を運ぶ補酵素です。このはたらきは一炭素代謝と呼ばれ、細胞が増えるとき、血液をつくるとき、脳が育つときに欠かせません。

葉酸・ジヒドロ葉酸・テトラヒドロ葉酸の違い

食べ物やサプリメントからとった葉酸は、細胞に取り込まれたあと、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)という酵素によって、ジヒドロ葉酸を経てテトラヒドロ葉酸に変わります[5][6]。「ジヒドロ」は水素が2つ、「テトラヒドロ」は水素が4つ付いた形という意味で、テトラヒドロ葉酸になってはじめて、部品を運ぶ役目を果たせます。

葉酸食べ物・サプリ
▶
細胞・脳へ取り込むFOLR1・SLC19A1など
▶
テトラヒドロ葉酸に変えるDHFR
▶
部品を運ぶMTHFD1・MTHFS・グリシン開裂など

この流れのどこかが生まれつき止まると、体の中や脳の中で使える葉酸が足りなくなったり、テトラヒドロ葉酸が手伝うはずの反応が進まなくなったりします。どこで止まるかによって、巨赤芽球性貧血(大きく未熟な赤血球ができる貧血)、免疫の弱さ、けいれん、発達の遅れなど、出てくる症状が変わります。

食事の葉酸不足(葉酸欠乏症)と、生まれつきの葉酸代謝異常症は別のもの

「葉酸欠乏症」と検索される方の多くは、食事やお酒、薬などによる葉酸不足を心配されています。生まれつきの葉酸代謝異常症は、それとは別の、遺伝子の変化による病気です。食事の葉酸不足は葉酸をとれば補えますが、生まれつきの病気では、葉酸をとるだけでは足りなかったり、病気によっては普通の葉酸(folic acid)ではなくフォリン酸を注射で使う必要があったりします[2]。

妊娠前・妊娠中の葉酸サプリメントのとり方は、このページの検査とは別の話です。いつから・どれくらいとるかは、葉酸サプリはいつからいつまで?妊婦に必要な理由と効果、1日の摂取量で解説しています。

2. このパネルで調べる13遺伝子と、わかる病気

この葉酸代謝の遺伝子検査では、AMT・DHFR・FOLR1・FPGS・GCSH・GLDC・MTHFD1・MTHFD1L・MTHFS・PCBD1・PTS・SHMT1・SLC19A1の13遺伝子をまとめて調べます。中身は大きく3つのグループに分かれます。葉酸を取り込み働く形にする遺伝子、非ケトーシス型高グリシン血症の遺伝子、そして葉酸とは別の補酵素BH4をつくる遺伝子です。

🧬 テトラヒドロ葉酸代謝パネルの13遺伝子と、関係する病気

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
GLDC 非ケトーシス型高グリシン血症(グリシン脳症1型) 常染色体潜性
AMT 非ケトーシス型高グリシン血症(グリシン脳症2型) 常染色体潜性
GCSH 多発性ミトコンドリア機能障害症候群7型。非ケトーシス型高グリシン血症の原因としては、まだ確立していない 常染色体潜性
FOLR1 脳葉酸輸送欠損症(脳への葉酸の運び込みができない病気) 常染色体潜性
SLC19A1 葉酸反応性巨赤芽球性貧血/葉酸反応性免疫不全症114 常染色体潜性
DHFR ジヒドロ葉酸還元酵素欠損症による巨赤芽球性貧血(DHFR欠損症) 常染色体潜性
MTHFD1 複合免疫不全症と巨赤芽球性貧血(高ホモシステイン血症を伴うことがある) 常染色体潜性
MTHFS 小頭症・てんかん・髄鞘形成不全を伴う神経発達症(MTHFS欠損症) 常染色体潜性
PTS BH4欠乏性高フェニルアラニン血症A型(PTPS欠損症) 常染色体潜性
PCBD1 BH4欠乏性高フェニルアラニン血症D型(PCD欠損症、プリマプテリン尿症) 常染色体潜性
FPGS 病気との関係を研究中の遺伝子(細胞の中に葉酸をとどめておく酵素) 確立していない
MTHFD1L 病気との関係を研究中の遺伝子(ミトコンドリアの一炭素代謝の酵素) 確立していない
SHMT1 病気との関係を研究中の遺伝子(セリンとグリシンを相互に変える酵素) 確立していない

※病名と遺伝のしかたは、OMIMの登録(NCBI Gene・UniProtで確認、2026年10月時点)と文献[1][3]による。対象遺伝子は当院の検査内容による(2026年10月に照合)。

非ケトーシス型高グリシン血症(GLDC・AMT・GCSH)

非ケトーシス型高グリシン血症(非ケトン性高グリシン血症、グリシン脳症)は、アミノ酸の一つグリシンを分解するしくみ(グリシン開裂系)が働かず、脳や体にグリシンがたまる病気です。原因の約80%がGLDC、約20%がAMTの変化です[1]。グリシン開裂系はテトラヒドロ葉酸を使って働くため、このパネルに入っています。

遺伝性疾患の解説書GeneReviewsによると、症状の重さには大きな幅があり、発達がほとんど進まず、てんかんが治りにくい「重症型」と、発達の程度がさまざまで、てんかんが治療できるか起こらない「軽症型」に分けられます。新生児期に発症した赤ちゃんでは約85%が重症型で、症状のある新生児の最大80%に、命にかかわる呼吸の弱まりや停止が起こります。生後3か月より後に発症した方は軽症型とされています。頻度は世界全体で出生約76,000人に1人と推定されています[1]。

治療には、グリシンを減らす安息香酸ナトリウムや、脳の神経の受け皿(NMDA受容体)に働くデキストロメトルファンなどが使われます[1]。一方で、難病情報センターは「確実に効くと証明された治療法はありません」としています(2026年10月時点で確認)。GCSHは、GeneReviewsでは原因と確かめられた報告がなく、OMIMでは別の病気(多発性ミトコンドリア機能障害症候群7型)の原因遺伝子として登録されています。

葉酸を取り込み、働く形にする遺伝子(FOLR1・SLC19A1・DHFR・MTHFD1・MTHFS)

このグループには、フォリン酸などで治療して良くなった報告のある病気が含まれます。だからこそ、早く原因を確かめる意味が大きいグループです。ただし、病気ごとに効く治療は違います。

  • ●FOLR1(脳葉酸輸送欠損症):脳に葉酸を運び込む受容体の病気です。報告された3人のお子さんでは、運動の障害・発達の後戻り・てんかんと、髄液(脳と脊髄のまわりの液)の葉酸の強い低下、髄鞘(神経の被覆)の形成不全がみられ、フォリン酸の治療で髄液の葉酸が戻り、症状が良くなりました[4]。
  • ●DHFR(DHFR欠損症):巨赤芽球性貧血や汎血球減少と、脳の葉酸不足を起こします。フォリン酸で脳の葉酸や貧血が改善したと報告されていますが[5]、神経の経過は人によってまちまちで、てんかんが続いた方もいました[6]。
  • ●SLC19A1:細胞に葉酸を取り込む運び手の病気で、重い巨赤芽球性貧血をくり返し、葉酸を補ってはじめて治まった報告があります[9]。
  • ●MTHFD1:巨赤芽球性貧血に重い免疫不全などが重なった赤ちゃんで、全エクソーム解析によって見つかった病気です[7]。
  • ●MTHFS(MTHFS欠損症):小頭症・重い発達の遅れ・てんかん・髄鞘形成不全を伴います。報告では、フォリン酸で脳の葉酸不足がかえって悪くなった方がいました(別の形の葉酸とビタミンB12の注射でわずかに良くなった)[8]。「葉酸の病気ならフォリン酸」と一律に決められない理由です。

BH4(テトラヒドロビオプテリン)欠乏症(PTS・PCBD1):新生児マススクリーニングで見つかることがある

BH4(テトラヒドロビオプテリン)は、名前は似ていますが葉酸とは別の補酵素です。BH4の代謝に異常があると、フェニルアラニンの分解が妨げられて血液中にたまることがあり(高フェニルアラニン血症)、病型によっては脳の神経伝達物質(ドーパミン・セロトニン)の合成も障害されます。BH4欠乏症の多くは、新生児マススクリーニングで、フェニルケトン尿症(PKU)と同じ「フェニルアラニンの高値」として見つかります[3]。

2020年の国際的な診療指針によると、高フェニルアラニン血症を伴うBH4欠乏症のうち最も多いのがPTPS欠損症(PTS遺伝子)で約54%です。PKUとの区別には、尿や乾燥ろ紙血のプテリン分析と、ろ紙血のDHPR活性の測定を行い、PTPS欠損症などではBH4や神経伝達物質のもと(L-ドーパ・5-ヒドロキシトリプトファン)による治療を早く始めることが、長い目で見た発達を大きく左右するとされています[3]。PCD欠損症(PCBD1遺伝子)は最もまれで、多くの方は症状がありませんが、思春期以降の糖尿病(MODY3に似た型)や低マグネシウム血症に注意して調べることが勧められています[3]。

💡 このパネルに入っていないBH4の遺伝子

BH4欠乏症で2番目に多いDHPR欠損症(約33%)の原因であるQDPR遺伝子や、GTPCH欠損症・SR欠損症の原因遺伝子は、このパネルには入っていません[3]。新生児マススクリーニングで高フェニルアラニン血症と言われ、BH4欠乏症全体を確かめたい場合は、これらを含む包括的代謝疾患遺伝子検査(795遺伝子)が向いています。

病気との関係を研究中の遺伝子(FPGS・MTHFD1L・SHMT1)

FPGS・MTHFD1L・SHMT1は、葉酸の代謝で大切な酵素の遺伝子ですが、2026年10月時点で、生まれつきの病気の原因として確立した登録はありません。このため、これらの遺伝子に変化が見つかっても、それだけで病名をつけることはできず、多くは意義がまだわからない変化(VUS)として扱われます。

このパネルに入っていない主な遺伝子(SLC46A1・MTHFR)も、追加して調べられます

「先天性葉酸吸収不全症(遺伝性葉酸吸収不全症)」の原因であるSLC46A1遺伝子と、重いMTHFR欠損症(ホモシスチン尿症の一つ)の原因であるMTHFR遺伝子は、このパネルには入っていません。

遺伝性葉酸吸収不全症は、腸から葉酸を吸収できず、生まれてすぐに葉酸が足りなくなる病気です。巨赤芽球性貧血、下痢、免疫の低下、けいれん(約40%の方で生後6〜12か月に始まる)などがみられ、早くから高用量のフォリン酸を、筋肉注射を優先して使う治療が勧められています。重い神経の合併症は、ほぼ必ず診断や治療の遅れによると、GeneReviewsは指摘しています[2]。原因の遺伝子についてはSLC46A1遺伝子のページでも解説しています。

このパネルに入っていないSLC46A1・MTHFR遺伝子も、追加して調べることができます。遺伝カウンセリングのときにご相談ください(カスタマイズ遺伝子パネル検査)。また、SLC46A1・MTHFR・DHFR・FOLR1・MTHFD1を含むコバラミン・ホモシステイン・メチオニン代謝異常症遺伝子検査(39遺伝子)を選ぶ方法もあります(第4章の選び分けの表)。

3. MTHFRの「体質の違い(C677T)」は、病気や流産の原因?

MTHFR遺伝子のC677TやA1298Cといった、多くの人がもっている体質の違い(遺伝子多型)は、それだけで血栓症や流産・不育症の原因と決まるものではありません。米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)と米国産科婦人科学会(ACOG)は、こうした目的でのMTHFR多型の検査を勧めていません[10][11]。

ACMGの2013年の指針は、血栓ができやすい体質や、くり返す流産を調べる目的でMTHFR多型の検査をすべきではなく、ご家族を調べる目的でも勧めないとしています。また、MTHFRの型にかかわらず、妊娠を考える年代の女性には標準量の葉酸をとる勧めが変わらないことも明記しています[10]。ACOGの2018年の診療指針も、妊娠中のMTHFR多型の検査を勧めておらず、流産・死産の経験がある方への遺伝性血栓性素因の検査も勧めないとしています[11]。

これに対して、重いMTHFR欠損症は、2つあるMTHFR遺伝子の両方に働きを強く失わせる変化があり、ホモシステインが大きく上がる、まれな生まれつきの病気です。体質の違いとはまったく別のものです。「MTHFRの遺伝子検査を受けたい」と考えている方の多くは体質の違いを心配されていますが、その目的ではこのパネルも、MTHFRを含むほかのパネルも、学会の勧めには当てはまりません。重いMTHFR欠損症が疑われる症状や検査値があるときは、コバラミン・ホモシステイン・メチオニン代謝異常症遺伝子検査が向いています。MTHFRの体質の違いについては、MTHFR遺伝子のページでも詳しく解説しています。

4. どんな人がこの検査を受けるとよいか

血液や髄液の検査で、グリシンの高値・葉酸の低値・フェニルアラニンの高値など、テトラヒドロ葉酸代謝やBH4代謝の異常を思わせる結果が出ている方に向く検査です。原因がわからないまま病院を回る時間を、一度の検査で短くできる可能性があります。ただし、全員に原因が見つかるわけではありません(第6章)。

  • ●新生児期・乳児期に、ぐったりする・呼吸が弱い・けいれんがあり、血液や髄液のグリシンが高いと言われたお子さん
  • ●原因のわからない巨赤芽球性貧血や汎血球減少、免疫の低下があるお子さん
  • ●髄液の葉酸(5-メチルテトラヒドロ葉酸)が低いと言われた方、発達の後戻り・てんかん・髄鞘形成不全があるお子さん
  • ●新生児マススクリーニングで高フェニルアラニン血症と言われ、プテリン分析などでBH4欠乏症(PTPS欠損症・PCD欠損症)が疑われた赤ちゃん
  • ●ご家族(きょうだい・お子さん)にこれらの病気の方がいて、原因を確かめたい・次の妊娠に備えたい方

見た目や家族歴、症状だけで、どの遺伝子が原因かを決めることはできません。病名が決まると、受けるべき検査、気をつけたい薬(たとえば病気によっては避けたほうがよい葉酸の形や抗てんかん薬[2])、使える制度(第8章)が決まります。米国臨床遺伝・ゲノム学会の系統的レビューでは、エクソーム・ゲノム検査を扱った研究167件のうち95%が、患者さんやご家族の診療方針に何らかの変化があったと報告していました[12](研究の割合であり、患者さんの95%という意味ではありません)。

この検査より別の検査が向いている場合

症状や検査値から、病気をこのパネルの範囲までしぼれているときは、このパネルが向いています。反対に、次のような場合は別の検査のほうが合うことがあります。比べる相手は検査の種類です。

🔍 葉酸・ホモシステイン・BH4に関わる当院の検査の選び分け

こんなとき 向いている検査
グリシンの高値、脳の葉酸の低値、PTPS欠損症などが疑われる このページの検査(13遺伝子)
ホモシステインの高値、遺伝性葉酸吸収不全症(SLC46A1)、重いMTHFR欠損症が疑われる コバラミン・ホモシステイン・メチオニン代謝異常症遺伝子検査(39遺伝子)
メチルマロン酸とホモシステインが両方高い(cblC型・cblD型・cblF型) メチルマロン酸血症・ホモシスチン尿症NGS遺伝子検査(3遺伝子)
新生児マススクリーニングで再検査と言われたが、病気をしぼれない/DHPR欠損症などBH4欠乏症全体を調べたい 包括的代謝疾患遺伝子検査(795遺伝子)
けいれん・てんかんが主な症状で、原因の候補が多い てんかん包括的遺伝子検査
症状が多くの臓器にわたり、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)

※遺伝子数は当院の各検査ページによる(2026年10月時点)。どの検査が合うかは、症状・検査値・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めます。

\ 原因がわかれば、次のお子さんへの備えも考えられます /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご家族の原因がわかれば、次の妊娠で羊水検査・絨毛検査による出生前診断を院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

足りない遺伝子を追加して調べたい方へ | どの検査がよいか迷う方へ

5. 遺伝のしかた:常染色体潜性(劣性)遺伝と、きょうだい・次のお子さんの確率

このパネルで調べる病気は、どれも常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がともに同じ遺伝子の保因者のとき、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症し、2分の1の確率で保因者になります[1]。

常染色体潜性遺伝では、2つある遺伝子の両方に変化があるときに発症します。片方だけに変化がある保因者の方は、ふつう症状がなく、ご自身が保因者だと知らないまま過ごしています。そのため、ご家族に同じ病気の方がいなくても、お子さんが初めて発症することがあります。上のお子さんが発症したかどうかで、次のお子さんの確率が変わることはありません。

非ケトーシス型高グリシン血症では、お子さんの代で新しく起きた変化(de novo)が見つかることもありますが、まれです[1]。多くの場合、ご両親はどちらも保因者ですが、実際の遺伝のしかたはご家族ごとに確認する必要があります。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。原因がわかることは、ご両親を責める材料ではなく、次を考えるための手がかりです。

保因者検査で調べられる遺伝子

妊娠の前にご夫婦で保因者かどうかを調べる拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)と男性版714遺伝子には、このパネルのうちAMT・FOLR1・GLDC・MTHFD1・PCBD1・PTSの6遺伝子が入っています。GCSHは、女性版1009遺伝子・男性版911遺伝子にだけ入っています。DHFR・FPGS・MTHFD1L・MTHFS・SHMT1・SLC19A1は、どの保因者検査にも入っていません(2026年10月時点の当院の遺伝子一覧で確認)。なお、パネル外のSLC46A1とMTHFRは、4つの保因者検査すべてに入っています。

妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラス(女性787遺伝子・男性714遺伝子。単独では受けられません)もあります。保因者検査の全体像は遺伝子ブライダルチェック(保因者検査)でご案内しています。

6. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、13遺伝子の配列の小さな変化(1文字の置き換わり・小さな挿入や欠失)と、まとまった範囲の欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●調べる範囲:次世代シークエンサーで、遺伝子のたんぱく質をつくる部分(エクソン)と、その境目を読みます。読み取りが不十分なところは、別の方法(サンガー法)で補います。
  • ●欠失・重複:遺伝子1つ分の欠失・重複(血液・頬の粘膜)と、2つ以上続いたエクソンの欠失・重複(血液のみ)を見つけられます。エクソン1つだけの欠失・重複は、ふつうは見つかりません。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
  • ●わからない変化:染色体の一部が入れ替わる変化(転座・逆位)、繰り返し配列の伸び、遺伝子のスイッチの部分(プロモーター)や、エクソンから離れた部分(深いイントロン)の変化は調べられません。体の一部の細胞にだけ変化があるモザイクを見つけることも、この検査の目的には含まれていません。
  • ●調べていない遺伝子:SLC46A1・MTHFR・QDPRなどは入っていません(第2章)。必要に応じて追加できます。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知見ではまだ判断できない変化が見つかることがあります。とくに病気との関係を研究中の遺伝子(FPGS・MTHFD1L・SHMT1)の変化は、VUSになりやすいと考えられます。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、この検査で見つけられない変化や、まだ知られていない遺伝子が原因のことがあります。非ケトーシス型高グリシン血症でも、酵素の働きが低いのに既知の遺伝子に変化が見つからない方が最大5%いるとされています[1]。

7. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。報告書の英語の意味や読み方は、遺伝子検査・NIPTの結果の見方で解説しています。

病的変異が見つかったら、次にできること

病気との関連が確立した遺伝子について、2つある遺伝子の両方に病気の原因となる変化(病的変異)が見つかり、遺伝子の変化の組み合わせや症状・検査値とも一致すれば、診断を確定できる場合があります。わかるだけで終わらせず、読む方の立場ごとに、次にできることをまとめます。治療は当院では行っていないため、先天代謝異常症の専門の医療機関で受けていただきます。

  • ●症状のあるお子さん:病名が決まると、治療の方向が決まります。FOLR1・DHFRの病気ではフォリン酸、PTPS欠損症ではBH4と神経伝達物質のもと、非ケトーシス型高グリシン血症では安息香酸ナトリウムなどが、専門の医療機関で検討されます[1][3][4][5]。MTHFS欠損症のように、フォリン酸で悪くなった報告がある病気もあるため[8]、病名が決まることそのものが治療の安全につながります。病気のときの食事・ビタミン・体調を崩したときの対応も、病名ごとに主治医と決めていきます。
  • ●ご両親:ご両親がそれぞれ保因者かどうかを、お子さんで見つかった変化だけを狙って確かめられます。保因者でもご自身の健康に影響することは、ふつうありません。
  • ●きょうだい:症状のないきょうだいが同じ病気かどうかを調べられます。PTPS欠損症や遺伝性葉酸吸収不全症のように、症状より前に見つけて治療を始めることが大切な病気もあります[2][3]。保因者かどうかは、きょうだいが将来、結婚や妊娠を考えるときの手がかりになります(ご本人の同意で調べます)。
  • ●次のお子さんを考えるとき:次の妊娠で同じ病気が起こる確率は4分の1です。原因の変化がわかっていれば、妊娠中に赤ちゃんを調べる出生前診断を計画でき、何もしないでそのまま産むことも、同じように選べる選択肢です(次の「次のお子さんを考えるとき」)。
  • ●当院でのその後:結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、ご家族の検査や次の妊娠の計画を一緒に考えます(遺伝カウンセリング料は第9章のとおり)。

陰性だったとき

原因が見つからなかった場合でも、病気が否定されたわけではありません(第6章)。症状や検査値に合わせて、SLC46A1・MTHFR・QDPRなどの追加、より広い包括的代謝疾患遺伝子検査、全エクソーム検査などを考えます。片方の遺伝子だけに病的変異が見つかった場合は、保因者である可能性と、もう片方の変化がこの検査で見つけられない種類である可能性の両方を考えます。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。考え方はVUS(意義不明変異)の臨床的取り扱いで解説しています。調べた目的と別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針のとおりです。

次のお子さんを考えるとき:出生前診断

ご家族の原因の変化がわかっていれば、次の妊娠で、赤ちゃんに同じ変化があるかを調べられます。非ケトーシス型高グリシン血症では、ご家族の変化がわかっている場合に出生前の遺伝学的検査ができるとされています[1]。原因がわからないままでは、出生前に調べる的を決められません。

絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に考えますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。どの選択(調べる・調べない、産む)も尊重します。

8. 日本の制度:指定難病・小児慢性特定疾病・新生児マススクリーニング(2026年10月時点)

非ケトーシス型高グリシン血症は指定難病321、先天性葉酸吸収不全は指定難病253です。BH4欠損症(PTPS欠損症など)は、指定難病240「フェニルケトン尿症」に関連する病名として載っています。ただし難病情報センターは、BH4欠損症などの関連する病名について、医療費助成の対象にならない場合があるとしています。

📋 このページの病気と日本の制度

病気 指定難病 小児慢性特定疾病 新生児マススクリーニング
非ケトーシス型高グリシン血症 321 先天性代謝異常(告示番号16) 対象外
BH4欠損症(PTPS欠損症・PCD欠損症など) 240「フェニルケトン尿症」の関連する病名(助成の対象にならない場合あり) 告示番号17「フェニルケトン尿症(高フェニルアラニン血症)」の病型にBH4欠損症 フェニルアラニンの高値として見つかることがある
先天性葉酸吸収不全(症)※パネル外 253 先天性代謝異常(告示番号76) 対象外

※難病情報センター・厚生労働省・小児慢性特定疾病情報センターの公表資料、日本先天代謝異常学会「新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2025」、自治体の案内(神奈川県、2026年3月更新)で確認(2026年10月時点)。脳葉酸輸送欠損症・DHFR欠損症・MTHFD1欠損症は、指定難病の一覧で見つけられませんでした。

日本先天代謝異常学会のガイドライン2025は、新生児マススクリーニングで高フェニルアラニン血症として精密検査に紹介された赤ちゃん全員で、BH4欠損症とPAH欠損症(いわゆるフェニルケトン尿症)を見分けるよう求めており、その対象にPTPS欠損症・PCD欠損症が含まれています。この見分けは主にプテリン分析や酵素の測定で行われ、遺伝子検査は原因を確定し、ご家族の検査や次の妊娠の計画に使う手がかりになります。新生児マススクリーニング全体のしくみは新生児スクリーニングで解説しています。

医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜・血液のいずれでも、オンライン診療で受けられます。この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医・オンライン可
▶
検体の採取・発送お支払い後にキット
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
対象遺伝子 AMT, DHFR, FOLR1, FPGS, GCSH, GLDC, MTHFD1, MTHFD1L, MTHFS, PCBD1, PTS, SHMT1, SLC19A1(13遺伝子)
調べる内容 遺伝子の配列(塩基配列)と、欠失・挿入(どちらも料金に含まれます)
検査費用 税込330,000円
オプション 至急(結果までが約7日短くなります):55,000円/VUS除外(意義がまだわからない変化を報告に載せない):無料
結果までの期間 2〜3週間
検体 血液(EDTA採血管4mL×2本)、抽出したDNA、頬の内側の粘膜(スワブ)、唾液
読み取りの精度 調べる範囲の99%以上を、20回以上読み取ります(同じ場所を何度も読むほど、読み違いを減らせます)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、ご自身の判断で先に検体を採らないでください。血液で調べる場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、お子さんとご家族のこれからに /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

唾液・頬の粘膜・血液のいずれでも、オンライン診療で受けられます。結果は臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

お問い合わせはこちら | ホモシステイン・MTHFRを調べたい方へ

10. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「葉酸の病気」とひとくくりにしない】

テトラヒドロ葉酸代謝のパネルには、名前の似た病気がいくつも入っています。けれども中身は、フォリン酸で良くなった報告のある病気、フォリン酸でかえって悪くなった報告のある病気、新生児マススクリーニングで見つかりBH4で治療する病気、そして治療が難しい病気まで、まったく違います。「葉酸の病気なら葉酸を」と一律に考えるのではなく、どの遺伝子のどの病気かを確かめることが、治療を選ぶ出発点だと考えています。

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

このページの病気はどれも潜性遺伝で、ご両親は症状のない保因者であることがほとんどです。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。原因がわかれば、きょうだいの検査や、次の妊娠での出生前診断まで、当院で続けて支えられます。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. テトラヒドロ葉酸とは何ですか?葉酸やジヒドロ葉酸との違いは?

テトラヒドロ葉酸は、葉酸が体の中で働ける形になった活性型の葉酸で、DNAの材料づくりやアミノ酸の代謝に炭素1個分の部品を運ぶ補酵素です。葉酸はジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)によって、ジヒドロ葉酸を経てテトラヒドロ葉酸に変わります。この代謝に関わる遺伝子に生まれつきの変化があると、貧血やけいれん、発達の遅れなどが起こることがあります。

Q2. 葉酸欠乏症とは違うのですか?

違います。食事やお酒、薬による葉酸欠乏症は葉酸をとれば補えますが、生まれつきの葉酸代謝異常症は遺伝子の変化による病気で、葉酸をとるだけでは足りなかったり、病気によってはフォリン酸を注射で使う必要があったりします。どの治療が合うかは病気ごとに違うため、遺伝子検査で病名を確かめることが大切です。

Q3. MTHFRの遺伝子多型(C677T)があると言われました。この検査を受けるべきですか?

MTHFRのC677Tなどのよくある体質の違いは、それだけで血栓症や流産・不育症の原因と決まるものではなく、米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)と米国産科婦人科学会(ACOG)は、その目的でのMTHFR多型の検査を勧めていません。また、MTHFR遺伝子はこのパネルには入っていません。重いMTHFR欠損症が疑われる症状や検査値がある場合は、コバラミン・ホモシステイン・メチオニン代謝異常症遺伝子検査が向いています。

Q4. 非ケトーシス型高グリシン血症の症状と見通しは?

グリシンを分解するしくみが働かず、脳や体にグリシンがたまる病気で、原因の約80%がGLDC、約20%がAMTの変化です。症状の重さには幅があり、新生児期に発症した赤ちゃんの約85%は発達がほとんど進まずてんかんが治りにくい重症型で、命にかかわる呼吸の弱まりが起こることがあります。生後3か月より後に発症した方は軽症型とされています。指定難病321です。

Q5. 新生児マススクリーニングで高フェニルアラニン血症と言われました。この検査で何がわかりますか?

高フェニルアラニン血症には、フェニルケトン尿症(PAH欠損症)のほかにBH4欠乏症があり、精密検査で見分けます。このパネルでは、BH4欠乏症で最も多いPTPS欠損症のPTS遺伝子と、PCD欠損症のPCBD1遺伝子を調べられます。DHPR欠損症のQDPR遺伝子などは入っていないため、BH4欠乏症全体を確かめたい場合は包括的代謝疾患遺伝子検査が向いています。

Q6. このパネルに入っていない遺伝子も調べられますか?

調べられます。先天性葉酸吸収不全症の原因であるSLC46A1遺伝子や、重いMTHFR欠損症の原因であるMTHFR遺伝子は、このパネルには入っていませんが、追加して調べることができます。遺伝カウンセリングのときにご相談ください。これらを含むコバラミン・ホモシステイン・メチオニン代謝異常症遺伝子検査を選ぶ方法もあります。

Q7. きょうだいや次の子どもに遺伝する確率は?

このパネルの病気はどれも常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症し、2分の1の確率で保因者になります。原因の変化がわかっていれば、症状のないきょうだいの検査や、次の妊娠での出生前診断(絨毛検査・羊水検査)を計画できます。

Q8. 家族に代謝異常症の人がいると、結婚に差し支えますか?

常染色体潜性遺伝の病気では、お子さんが発症するのは、ご夫婦がともに同じ遺伝子の保因者のときです。ご自身が保因者かどうか、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかは、保因者検査で調べられます。知ったうえで、出生前診断なども含めてどうするかを選ぶことができます。

🧬 一度の検査で、お子さんとご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。テトラヒドロ葉酸代謝やBH4代謝の病気の原因がわかれば、治療の方向を決める手がかりになるだけでなく、きょうだいの検査や次の妊娠の計画にもつながります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Van Hove JLK, Coughlin C II, Swanson M, Hennermann JB. Nonketotic Hyperglycinemia. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle (Updated 2019 May 23). [NCBI Bookshelf NBK1357]
  • [2] Goldman ID. Hereditary Folate Malabsorption. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle (Updated 2026 Mar 25). [NCBI Bookshelf NBK1673]
  • [3] Opladen T, López-Laso E, Cortès-Saladelafont E, et al. Consensus guideline for the diagnosis and treatment of tetrahydrobiopterin (BH4) deficiencies. Orphanet J Rare Dis. 2020;15(1):126. [DOI: 10.1186/s13023-020-01379-8]
  • [4] Steinfeld R, Grapp M, Kraetzner R, et al. Folate receptor alpha defect causes cerebral folate transport deficiency: a treatable neurodegenerative disorder associated with disturbed myelin metabolism. Am J Hum Genet. 2009;85(3):354-363. [DOI: 10.1016/j.ajhg.2009.08.005](PMID: 19732866)
  • [5] Banka S, Blom HJ, Walter J, et al. Identification and characterization of an inborn error of metabolism caused by dihydrofolate reductase deficiency. Am J Hum Genet. 2011;88(2):216-225. [DOI: 10.1016/j.ajhg.2011.01.004](PMID: 21310276)
  • [6] Cario H, Smith DE, Blom H, et al. Dihydrofolate reductase deficiency due to a homozygous DHFR mutation causes megaloblastic anemia and cerebral folate deficiency leading to severe neurologic disease. Am J Hum Genet. 2011;88(2):226-231. [DOI: 10.1016/j.ajhg.2011.01.007](PMID: 21310277)
  • [7] Watkins D, Schwartzentruber JA, Ganesh J, et al. Novel inborn error of folate metabolism: identification by exome capture and sequencing of mutations in the MTHFD1 gene in a single proband. J Med Genet. 2011;48(9):590-592. [DOI: 10.1136/jmedgenet-2011-100286](PMID: 21813566)
  • [8] Rodan L, Qi W, Ducker G, et al. 5,10-methenyltetrahydrofolate synthetase deficiency causes a neurometabolic disorder associated with microcephaly, epilepsy, and cerebral hypomyelination. Mol Genet Metab. 2018;125(1-2):118-126. [DOI: 10.1016/j.ymgme.2018.06.006](PMID: 30031689)
  • [9] Svaton M, Skvarova Kramarzova K, Kanderova V, et al. A homozygous deletion in the SLC19A1 gene as a cause of folate-dependent recurrent megaloblastic anemia. Blood. 2020;135:2427-2431. [DOI: 10.1182/blood.2019003178](PMID: 32276275)
  • [10] Hickey SE, Curry CJ, Toriello HV. ACMG Practice Guideline: lack of evidence for MTHFR polymorphism testing. Genet Med. 2013;15(2):153-156. [DOI: 10.1038/gim.2012.165](PMID: 23288205)
  • [11] American College of Obstetricians and Gynecologists. ACOG Practice Bulletin No. 197: Inherited Thrombophilias in Pregnancy. Obstet Gynecol. 2018;132(1):e18-e34. [DOI: 10.1097/AOG.0000000000002703]
  • [12] Malinowski J, Miller DT, Demmer L, et al. Systematic evidence-based review: outcomes from exome and genome sequencing for pediatric patients with congenital anomalies or intellectual disability. Genet Med. 2020;22(6):986-1004. [DOI: 10.1038/s41436-020-0771-z](PMID: 32203227)

関連記事

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

記事の作り方と生成AIの使い方は、編集方針をご覧ください。