この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

このページの検査は、ガラクトース血症と遺伝性果糖不耐症(フルクトース不耐症)の原因になる4つの遺伝子(GALT・GALK1・GALE・ALDOB)を、1回でまとめて調べる遺伝子検査です。ガラクトース血症は母乳やミルクに含まれる乳糖で、遺伝性果糖不耐症は果物や砂糖で具合が悪くなる、生まれつきの代謝の病気です。原因の遺伝子がわかると、避ける食べ物・薬・点滴がはっきりし、ご家族の検査や次の妊娠の計画にも使えます。新生児マススクリーニングでガラクトース血症の「再検査」と言われた方、遺伝する確率が気になる方に向けて、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
ガラクトース血症(I型・II型・III型)と遺伝性果糖不耐症の原因が、GALT・GALK1・GALE・ALDOBの4遺伝子にあるかどうかがわかります。病気の型がわかると、症状や酵素検査の結果とあわせて、食事制限の必要性や避けるものを判断する手がかりになります。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
新生児マススクリーニングでガラクトース血症の再検査・精密検査と言われた方、果物や砂糖を食べたあとに吐く・低血糖になるお子さん、ご家族にこの病気の方がいて、遺伝する確率を知りたい方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜のいずれかで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。どれも潜性(劣性)遺伝の病気なので、ご両親が保因者なら、次のお子さんでは4分の1の確率です。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. ガラクトース血症・遺伝性果糖不耐症とは|この検査で調べる病気
ガラクトース血症と遺伝性果糖不耐症は、どちらも生まれつき特定の糖を体の中で処理できない「先天性代謝異常症」です。原因の糖を含む食べ物をとると具合が悪くなり、原因の糖を避ける食事で症状を防ぐのが治療の基本です。どちらも、原因の遺伝子を2本とも受け継いだときに発症する潜性(劣性)遺伝の病気です[1][2]。
ガラクトース血症とは:母乳・ミルクの乳糖を分解できない病気(I型・II型・III型。IV型は対象外)
母乳やミルクに含まれる乳糖は、おなかの中でブドウ糖とガラクトースに分かれます。ガラクトースは、肝臓などでいくつかの酵素によって段階的にブドウ糖の仲間に作り替えられます。このどこかの酵素が生まれつき働かないと、ガラクトースやその途中の物質がたまり、体に害を与えます。これがガラクトース血症です。止まる酵素の場所によって型が分かれます。
- ●I型(古典型、GALT欠損症):最も重い型です。未治療のまま母乳やミルクを飲み続けると、肝臓の障害、哺乳の困難、大腸菌などによる敗血症を起こし、命に関わることがあります[1]。
- ●II型(GALK1欠損症=ガラクトキナーゼ欠損症):白内障が主な症状です。11か国53人の登録研究では、約36%(19人)に白内障がみられました[4]。
- ●III型(GALE欠損症=エピメラーゼ欠損症):酵素の低下が血液の細胞だけにとどまる「末梢型」は多くが無症状で治療はいりません。全身で酵素が低下する「全身型」はI型に似た症状を示しますが、とてもまれで、日本での報告はないとされています(小児慢性特定疾病情報センター、2026年10月確認)。
- ●IV型(GALM欠損症):日本の新生児マススクリーニングをきっかけに見つかった新しい型です。報告された日本人8人で、続いて残った症状は白内障(2人)だけでした[5]。GALMはこの検査の対象に入っていません。
遺伝性果糖不耐症(フルクトース不耐症)とは:果物・砂糖・ソルビトールで症状が出る
遺伝性果糖不耐症(フルクトース不耐症、HFI)は、ALDOB遺伝子が作る肝臓の酵素「アルドラーゼB」が働かない病気です。果物やはちみつの果糖(フルクトース)、砂糖(ショ糖。体の中で果糖とブドウ糖に分かれる)、甘味料のソルビトールなどをとると、果糖を処理する途中の物質が肝臓にたまり、吐き気・嘔吐・腹痛・汗をかく・肝臓の腫れ、そしてグルカゴンでも上がりにくい低血糖を起こします。たくさんとると、ぐったりする・けいれん・意識がなくなることもあります[2]。
口からだけでなく、果糖・ソルビトール・ショ糖を含む点滴や薬でも命に関わることがあり、実際に点滴による死亡例が報告されています[2]。そのため、診断がついていることを医療機関に伝えられるようにしておくことが、とても大切です。
症状はいつ出る?新生児の症状と、離乳食から気づかれる症状
ガラクトース血症I型は、母乳やミルクを飲み始めて間もない新生児期に症状が出ます。症状のあった新生児270人のまとめでは、肝臓の障害が89%(黄疸74%、肝臓の腫れ43%)、哺乳の不良などの食べ物を受けつけない症状が76%、体重が増えない29%、ぐったりする16%、敗血症10%(多くは大腸菌)でした[1]。
遺伝性果糖不耐症は、もともとは離乳食で果物や砂糖を食べ始めたころに気づかれる病気です。母乳には果糖が含まれないためです。ただし最近は、果糖を含む成分を加えた粉ミルクがあるため、生後5〜6か月より前に症状が出ることも増えています[2]。また、具合が悪くなるのを体が覚えて、果物や甘いものを自然に嫌うようになることがあり、果糖を避けているあいだ虫歯が少ないことも特徴として知られています[2]。「甘いものが嫌いな子」と思われているうちは、病気と気づかれにくいことがあります。
何人に1人?日本での頻度
日本では、ガラクトース血症I型は約90万〜100万出生に1人とされる、まれな病気です。難病情報センターと小児慢性特定疾病情報センターは約90万人に1人、日本先天代謝異常学会の新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2025は約100万出生に1例としています(2026年10月確認)。米国の新生児スクリーニングのデータでは4万8,000人に1人と、日本より多く報告されています[1]。
📊 この検査で調べる病気の頻度
※日本の数字は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センター・日本先天代謝異常学会のガイドライン2025による(2026年10月確認)。
乳糖不耐症・果糖吸収不良との違い
名前は似ていますが、乳糖不耐症とガラクトース血症はまったく別の病気です。乳糖不耐症は、腸で乳糖を分解する力が弱いために、牛乳などでおなかがゆるくなったり張ったりするもので、症状は腸の中にとどまります。ガラクトース血症は、腸で吸収したあとのガラクトースを体の中で処理できない病気で、肝臓・腎臓・目・脳など全身に影響します。
「果糖不耐症」という言葉も、大人の方が調べると、多くは別の状態を指していることがあります。腸で果糖を吸収しにくい「果糖吸収不良」では、吸収されなかった果糖が腸管内に残り、腹部膨満や下痢などを起こします。一方、遺伝性果糖不耐症では、吸収された果糖を肝臓などで正常に代謝できず、低血糖や肝障害などを起こします[2]。果物を食べるとおなかが張る、というだけで遺伝性果糖不耐症を心配する必要はありません。低血糖・嘔吐・肝臓の異常などがあるときに、この検査を考えます。
2. 新生児マススクリーニングでガラクトース血症の再検査と言われたら
新生児マススクリーニングの「再検査」「要精密検査」は、病気が確定したという意味ではありません。スクリーニングは、病気の可能性がある赤ちゃんを広く拾い上げるための検査で、ガラクトースが高く出る理由はガラクトース血症以外にもあります。まずは指定された医療機関での精密検査を受け、そのうえで原因を確かめる方法のひとつとして遺伝子検査があります。
新生児マススクリーニングでわかること・わからないこと
新生児マススクリーニング(先天性代謝異常等検査)では、日本全国でガラクトース血症が対象になっています[5]。多くの自治体では、ろ紙に染み込ませた血液で、ガラクトース・ガラクトース-1-リン酸・総ガラクトースと、GALT酵素の働き(ボイトラー法)を測っています。測る項目や基準値は自治体によって違います(日本先天代謝異常学会ガイドライン2025)[5]。
一方、遺伝性果糖不耐症は新生児マススクリーニングの対象に入っていません。たとえば神奈川県の対象20疾患にも含まれていません(2026年10月確認)。生まれたばかりの赤ちゃんはふつう果糖をとらないので、スクリーニングで見つける方法がなく、症状が出てから、あるいはご家族の検査をきっかけに見つかります。
ガラクトースが高く出る、ガラクトース血症以外の理由
日本先天代謝異常学会の新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2025では、スクリーニングで陽性になったときに、次のような病気や状態を見分けるとしています(2026年10月確認)。
🔎 スクリーニングでガラクトースが高い・GALTが低いと出る主な理由
※日本先天代謝異常学会「新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2025 ガラクトース血症I型」による(2026年10月確認)。
また、GALT遺伝子には「デュアルテ(Duarte)型」と呼ばれる変化があり、酵素の働きが少し下がって血液のガラクトースが上がることがありますが、多くの専門家は食事療法はいらないと考えています[1]。スクリーニングの数値だけで重い病気と決めつけず、精密検査の結果を待つことが大切です。
遺伝子検査の役割:診断を確かめ、型を決め、ご家族に使える
ガラクトース血症I型の診断は、血液のガラクトース-1-リン酸の上昇、GALT酵素の低下、GALT遺伝子の2本ともに病的な変化があることの組み合わせで確かめます[1]。日本のガイドライン2025も、確定には酵素の低下か、GALT遺伝子の両方のアレルの病的な変化の確認が必要としています。GALT遺伝子の配列を読む検査で、病的な変化の95%以上が見つかるとされています[1]。
遺伝子検査には、酵素の検査にはない強みがあります。輸血や検体の状態に左右されにくいこと、I型・II型・III型のどれかをはっきりさせられること、そして見つかった変化がわかれば、ご両親やきょうだい、次の妊娠でも同じ場所を調べられることです。なお、ガラクトース血症が疑われた時点で、診断の確定を待たずに乳糖を除いた食事を始めることが勧められています[1]。遺伝子検査の結果を待つあいだも、主治医の指示による食事の対応を優先してください。
3. ガラクトース血症・果糖不耐症は遺伝する?遺伝する確率
ガラクトース血症も遺伝性果糖不耐症も、常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1(25%)の確率で病気になり、2分の1(50%)の確率で保因者になります[1][2]。
常染色体潜性(劣性)遺伝のしくみ
遺伝子は、父親と母親から1本ずつ受け継いだ2本1組です。常染色体潜性(劣性)遺伝の病気では、2本のうち1本に病的な変化があっても、もう1本が働くので症状は出ません。この状態の人を保因者といいます。保因者同士のご夫婦から、変化のある1本ずつを受け継いだお子さんだけが発症します。保因者は症状がないので、お子さんが発症してはじめて、ご両親が保因者だったとわかることがほとんどです。
👪 ご両親とも保因者のとき、お子さん1人ごとの確率
※GeneReviews[1][2]による。確率は妊娠ごとに同じで、上のお子さんの結果で下のお子さんの確率は変わりません。
きょうだい・次のお子さんの確率
お子さんがガラクトース血症や遺伝性果糖不耐症と診断された場合、次のお子さんが同じ病気になる確率は、妊娠ごとに4分の1です[1]。すでに生まれている症状のないきょうだいについても、病気の原因となる変化を2本受け継いでいる可能性を考える必要があります。ただし、実際の確率は年齢や症状の有無、病気の型によって異なります。とくに遺伝性果糖不耐症は新生児マススクリーニングで見つからないため、ご家族の変化がわかっていれば、果物や砂糖を食べ始める前にきょうだいを調べられることに意味があります。
原因がわかっていれば、次の妊娠で出生前診断を考えることもできます。反対に、原因の遺伝子の変化がわかっていないと、出生前に何を調べればよいのかを決められません。「次の子どものために、いまの子の原因を確かめておく」ことが、ご家族の計画の出発点になります。
いとこ同士の結婚と潜性遺伝の病気
血のつながりのある方どうしの結婚では、同じ祖先から同じ遺伝子の変化を受け継いでいる可能性が高くなるため、潜性遺伝の病気のお子さんが生まれる確率が上がります。米国遺伝カウンセラー学会の推奨では、いとこ同士のご夫婦のお子さんは、一般の集団にもともとある確率に比べて、重い先天性の病気の確率が1.7〜2.8%高いと見積もられています[8]。
これは「いとこ同士は結婚してはいけない」という意味ではありません。どのご夫婦にも、もともと一定の確率で生まれつきの病気はあります。大切なのは、心配なときに確率を「知る」手段があることです。ご家族にこの病気の方がいる場合は、ご自身とパートナーの保因者検査で、具体的な確率がわかります。
結婚・妊娠を考えるときに:保因者検査でわかること
当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子)の対象遺伝子一覧には、GALT・GALK1・GALE・ALDOBの4つとも入っています(2026年10月、当院の遺伝子一覧で確認)。ご家族にガラクトース血症や遺伝性果糖不耐症の方がいる場合、ご自身とパートナーがそれぞれ保因者かどうかを知ることで、お子さんへの確率を具体的に考えられます。
妊娠前の方は拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)と男性版714遺伝子を、妊娠中の方は、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラス(女性787遺伝子・男性714遺伝子。単独では受けられません)を選べます。ご家族ですでに原因の変化がわかっている場合は、その変化を直接調べるほうがよいこともあるので、遺伝カウンセリングでご相談ください。
4. どんな人がこの遺伝子検査を受けるとよいか
ガラクトース血症や遺伝性果糖不耐症が疑われる症状がある方、スクリーニングで疑いを言われた方、ご家族にこの病気の方がいる方に向く検査です。見た目や症状だけでは型を決められないことが多いので、迷ったら遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
受けるとよい場面
- ●新生児マススクリーニングでガラクトース血症の再検査・精密検査と言われ、型や原因を確かめたい
- ●母乳やミルクを飲み始めてから、吐く・黄疸・肝臓の腫れ・体重が増えないなどの症状があった
- ●乳児期に白内障が見つかった
- ●果物・砂糖・果糖入りのミルクや食べ物をとったあとに、吐く・おなかを痛がる・低血糖になる
- ●果物や甘いものを極端に嫌い、肝臓の数値の異常や体重の増えにくさがある
- ●きょうだいなどご家族にガラクトース血症・遺伝性果糖不耐症の方がいて、ご自身や症状のないお子さんの状態を知りたい
遺伝性果糖不耐症では、遺伝子検査が診断の第一の方法とされています。以前行われていた果糖を飲ませて反応を見る検査(果糖負荷試験)は、命に関わることがあるため行うべきではないとされ、肝臓の組織をとって酵素を測る検査は、遺伝子検査で決まらないときに考える方法です[2]。体に負担をかけずに診断できることが、この病気で遺伝子検査を選ぶ大きな理由です。
この検査より別の検査が向いている場合
症状や検査の結果によっては、ほかの検査のほうが合うことがあります。当院の検査ページで実際の対象遺伝子を確かめたうえで、選び方の目安を表にしました。
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※遺伝子数は当院の各検査ページによる(2026年10月確認)。どの検査が合うかは、症状・血液検査の結果・ご家族の情報で変わります。
低血糖のときの血液・尿の検査の結果から選ぶパネル
低血糖が起きたその時に採った血液で、インスリン・ケトン体(β-ヒドロキシ酪酸)・遊離脂肪酸・乳酸などを測ると、低血糖の原因の種類を絞り込む大切な手がかりになります[6]。当院の低血糖の遺伝子検査は、原因の種類ごとに分かれています。
🩸 低血糖のときの検査結果と、考える遺伝子パネル
※米国小児内分泌学会の推奨[6]と、低血糖の遺伝子パネルの総説[7]をもとに作成。遺伝性果糖不耐症では、果糖をとったあとの発作で乳酸やリン・尿酸の異常を伴うことがあります[7]。実際の判断は、主治医の検査結果をもとに行います。
ご本人の検査結果は、ご家族を守る手がかりにもなります。お子さんの原因がわかれば、症状のないきょうだいが同じ変化をもっていないかを、ピンポイントで調べられます。
5. 調べる4遺伝子と、それぞれでわかる病気
この検査で調べるのは、ALDOB・GALE・GALK1・GALTの4遺伝子です。4つとも、病気の遺伝のしかたは常染色体潜性(劣性)遺伝です。
🧬 ガラクトース・フルクトース代謝異常パネルで調べる4遺伝子
※対象遺伝子は当院の検査内容による。病気と遺伝のしかたはOMIM・GeneReviews[1][2]、II型は文献[4]、III型は小児慢性特定疾病情報センターによる。ガラクトース血症IV型の原因遺伝子GALMは対象に入っていません。
6. 検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、4遺伝子の中の小さな変化と、遺伝子の一部が抜けたり重なったりする変化(欠失・重複)です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
わかること
遺伝子の文字(塩基)が1つ変わる変化や、数文字の抜け・入り込みを、次世代シーケンサーという機械で読み取ります。遺伝子の大きな欠失・重複も調べ、見つかったときは、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。遺伝性果糖不耐症では、原因の変化のうち0〜25%が欠失・重複の解析で見つかるとされ、イタリアの小さな集団では、ALDOB遺伝子の一部が抜ける変化が原因のアレルの11%を占めていました[2]。配列を読むだけでなく欠失・重複まで調べることには、こうした理由があります。
わからないこと
- ●調べていない遺伝子:ガラクトース血症IV型のGALMなど、4遺伝子以外の原因はわかりません。
- ●読み取らない場所:遺伝子のスイッチの役割をする場所(プロモーター)の多くや、遺伝子の中でもたんぱく質の設計図から離れた場所(深いイントロン)の変化は、ふつう見つかりません。
- ●小さな欠失・重複:エクソン1つだけの欠失・重複は、見つかることもありますが、確実には検出できません。
- ●そのほか:染色体の入れかわり(転座・逆位)、体の一部の細胞にだけある変化(モザイク)を調べる検査ではありません。
「陰性=病気ではない」ではない理由と、VUSのこと
病的な変化が見つからなくても、ガラクトース血症や遺伝性果糖不耐症を完全に否定することはできません。上のように調べていない原因が残るためです。酵素の検査や症状とあわせて判断します。また、病気の原因かどうかがまだ判断できない変化(VUS)が見つかることがあります。VUSは、それだけで診断や、ご家族の検査に使うことはしません。
7. 病的変異が見つかったら、次にできること
原因となる病的な変化が見つかると、症状や酵素検査などとあわせて病名や型を判断する手がかりとなり、避けるもの・見張る合併症・ご家族の検査・次の妊娠の計画まで、具体的に考えられるようになります。わかるだけで終わらないのが、この病気の遺伝子検査の大きな意味です。治療・食事の指導・緊急時の対応は、主治医や専門の医療機関で行います。
ご本人:避ける食べ物・薬・点滴が決まり、見張る合併症がわかる
ガラクトース血症I型と診断されたら:母乳やふつうのミルクをやめ、乳糖を含まない特殊ミルクに切りかえ、乳糖・乳製品の制限を生涯続けます[1]。日本のガイドライン2025では、果物・野菜・豆類などは制限しないとされています。乳糖は飲み薬の添加物(賦形剤)に使われることがあるため、処方箋に「乳糖禁」と書いてもらう必要があります(日本先天代謝異常学会ガイドライン2025)。国際的な診療ガイドラインも、診断・食事療法・検査値の確認・長期のフォローについて推奨をまとめています[3]。
食事療法を続けていても、長い目で見た合併症が起こりうることが知られています。GeneReviewsのまとめでは、6歳以上の177人中45%に発達の遅れ、3歳以上の243人中56%に言葉の問題、47人の女性のうち81%に卵巣の働きが早く落ちる早発卵巣不全(POI)の所見がありました[1]。日本のガイドライン2025では、白内障の眼科での確認、乳児期からの発達の確認、12歳で二次性徴が不十分・14歳で初経がないときのホルモン検査、8〜10歳以降の骨密度の検査などが示されています。病名が確定していると、こうした見張りを計画的に受けられます。
遺伝性果糖不耐症と診断されたら:果糖・ショ糖・ソルビトール・スクラロースの制限が治療の中心で、早く始めてきちんと続ければ、発達・健康・寿命の見通しはとてもよいとされています[2]。病気であることを示すブレスレットなどを身につけ、診療記録に注意の印を付けておくことが勧められています。新生児の処置で使う24%ショ糖液も、遺伝性果糖不耐症とわかっている赤ちゃんには使わないとされています[2]。
ガラクトース血症II型と診断されたら:白内障の確認とガラクトースの制限が中心です。登録研究では、新生児期の白内障は、生後2か月以内に食事療法を始めた人や新生児スクリーニングで見つかった人で少なかったと報告されています[4]。
症状のないきょうだい・ご両親の検査
ご家族の中で原因の変化がわかると、ほかのご家族は同じ場所だけを調べて、受け継いでいるかを確かめられます(カスケード検査)。症状のないきょうだいが病気の変化を2本もっていないか、ご両親がそれぞれ保因者かを確かめることで、ご家族全体の計画が立てやすくなります。保因者だったきょうだいが将来、結婚や妊娠を考えるときにも、パートナーの保因者検査を受ける手がかりになります。
次のお子さんのために:出生前診断・PGT-M・生まれてすぐの検査
ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。この病気で出生前診断をどのように進めるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に考えますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。
出生前診断を受けずに出産し、生まれてすぐに赤ちゃんを調べて、早くから食事に気をつけるという選び方もあります。ガラクトース血症の女性ご本人が妊娠するときは、妊娠中も乳糖を制限した食事を続けることが勧められていますが、保因者の女性には必要ないとされています[1]。どの選び方も、そのまま選べる選択肢です。
日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-M(着床前遺伝学的検査)が行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことはPGT-Mを考えている方へのコラムで解説しています。
陰性・VUSだったとき
病的な変化が見つからなかった場合は、酵素の検査の結果や症状をあわせて、ほかの原因を考えます。低血糖が続くなら低血糖症パネル、代謝以外の症状も多ければ全エクソーム検査など、次の検査の選択肢があります(第4章)。VUSが見つかった場合は、研究が進んでのちに意味がはっきりすることもあるため、結果の扱いをご説明します。
結果のご説明と報告書
結果は必ず一度、遺伝カウンセリングで臨床遺伝専門医がお伝えしてから、マイページにアップします。結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の見方は遺伝子検査結果の見かたで、調べた目的と別の病気の原因が見つかったときの扱いは二次的所見の開示方針でご案内しています。
8. 日本の制度:指定難病・小児慢性特定疾病(2026年10月時点)
ガラクトース血症I型は、指定難病258「ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症」です(難病情報センター、疾患情報は2024年4月1日付)。II型・III型・IV型は、指定難病258には含まれず、見分けるべき病気として挙げられています。
小児慢性特定疾病情報センターには、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症(告示番号59)、ガラクトキナーゼ欠損症(告示番号60)、ウリジル二リン酸ガラクトース-4-エピメラーゼ欠損症(告示番号58)が掲載されています(2026年10月確認)。遺伝性果糖不耐症が小児慢性特定疾病の対象かどうかは、今回の確認では確かめられませんでした。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たして申請する必要があります。くわしくは各センターやお住まいの自治体の窓口でご確認ください。
9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜から選べ、オンライン診療でも受けられます。この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採取しないでください。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
10. 院長コラム
🩺 院長コラム【「再検査」の不安を、次の一手に変える】
生まれたばかりの赤ちゃんの新生児マススクリーニングで「再検査です」と連絡を受けたときの不安は、言葉にしにくいものだと思います。スクリーニングは、病気の可能性がある赤ちゃんを見逃さないために広く拾い上げる検査なので、再検査になったからといって、病気と決まったわけではありません。まずは精密検査の結果を待っていただきたいと考えています。
そのうえで、ガラクトース血症や遺伝性果糖不耐症は、原因がわかれば「何を避ければよいか」がはっきりする病気です。とくに遺伝性果糖不耐症は、スクリーニングで見つからず、果糖を飲ませる検査には危険があるため、遺伝子検査で確かめる意味が大きいと考えています。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、というのが私の考えです。
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。潜性遺伝の病気の保因者は、誰でも気づかないまま持っているものです。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、お子さんの健康管理だけでなく、きょうだいの将来や次の妊娠の計画にも、ずっと役に立ちます。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. ガラクトース血症の再検査と言われました。病気と決まったのですか?
決まったわけではありません。新生児マススクリーニングは病気の可能性がある赤ちゃんを広く拾い上げる検査で、ガラクトースが高く出る理由には、ガラクトース血症のほかに、シトリン欠損症などの胆汁うっ滞、門脈体循環シャント、検体の状態などがあります。まず指定された医療機関で精密検査を受けてください。原因を確かめる方法のひとつとして、遺伝子検査があります。
Q2. ガラクトース血症は遺伝しますか?次の子どもに遺伝する確率は?
ガラクトース血症も遺伝性果糖不耐症も常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で病気になり、2分の1の確率で保因者になります。この確率は妊娠ごとに同じです。原因の変化がわかっていれば、次の妊娠で出生前診断を考えることもできます。
Q3. ガラクトース血症と乳糖不耐症の違いは何ですか?
乳糖不耐症は、腸で乳糖を分解する力が弱く、牛乳などでおなかがゆるくなる状態で、症状は腸の中にとどまります。ガラクトース血症は、吸収したあとのガラクトースを体の中で処理できない生まれつきの病気で、肝臓・腎臓・目・脳など全身に影響します。名前は似ていますが、まったく別の病気です。
Q4. ガラクトース血症は治りますか?
病気そのものを治す治療はなく、乳糖・乳製品を制限する食事を生涯続けることが治療の基本です。食事療法を続けていても、発達の遅れ・言葉の問題・卵巣の働きの低下などの長期の合併症が起こりうるため、定期的な確認が大切です。遺伝性果糖不耐症は、果糖・ショ糖・ソルビトールなどの制限を早く始めて続ければ、見通しはとてもよいとされています。
Q5. ガラクトース血症で知的障害は起こりますか?
ガラクトース血症I型では、食事療法をしていても発達の遅れがみられることがあります。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsのまとめでは、6歳以上の177人のうち45%に発達の遅れがありました。すべての方に起こるわけではなく、程度にも幅があります。乳児期から発達の確認を定期的に受けることが勧められています。
Q6. 大人になってから果糖不耐症とわかることはありますか?
遺伝性果糖不耐症では、果物や甘いものを自然に避けるようになり、病気と気づかれにくいことがあります。一方、大人の方が「果物でおなかが張る」と感じる場合の多くは、腸で果糖を吸収しにくい果糖吸収不良など別の状態です。低血糖・嘔吐・肝臓の異常などがあるときに、遺伝性果糖不耐症の遺伝子検査を考えます。
Q7. 家族にガラクトース血症の人がいると、結婚に差し支えますか?
差し支えるものではありません。潜性遺伝の病気の保因者は症状がなく、誰でも気づかないまま何らかの保因者であることがあります。気になる場合は、ご自身とパートナーの保因者検査で、お子さんへの確率を具体的に知ることができます。当院の拡大版保因者スクリーニングには、ガラクトース血症と遺伝性果糖不耐症の原因4遺伝子が含まれています。
Q8. ガラクトース血症は指定難病ですか?
ガラクトース血症I型は、指定難病258「ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症」です(2026年10月時点、難病情報センターの情報)。I型・II型・III型は、小児慢性特定疾病情報センターにも掲載されています。医療費の助成には、それぞれの制度の認定の条件を満たす必要があります。なお、当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
🧬 一生変わらない遺伝子を知って、ご家族のこれからを計画する
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ガラクトース血症や遺伝性果糖不耐症の原因がわかれば、避ける食べ物・薬・点滴が決まるだけでなく、きょうだいの検査や、次の妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、保因者検査、羊水検査・絨毛検査による出生前診断のご相談まで、院内で続けて受けていただけます。
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参考文献
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