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ケトン体産生異常症の遺伝子検査|ケトン体が出ない低血糖の原因を調べる(HMGCL・HMGCS2)

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

ケトン体産生異常症の遺伝子検査(HMGCL・HMGCS2)

空腹や発熱のときに低血糖を起こしたのに、低血糖の重さに比べてケトン体が少ない――このとき考える病気のひとつが「ケトン体産生異常症」です。子どもの低血糖でよく聞く「ケトン性低血糖」とは、ケトン体の結果が逆になります。原因は、ケトン体を作る2つの酵素の遺伝子(HMGCL・HMGCS2)の変化です。原因がわかれば、空腹の時間や病気の日の過ごし方を具体的に決められ、きょうだいや次のお子さんのことも考えられるようになります。このページでは、この2つの遺伝子をまとめて調べる遺伝子検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この遺伝子検査で何がわかりますか?

ケトン体産生異常症の原因となるHMGCL遺伝子(HMG-CoAリアーゼ欠損症)とHMGCS2遺伝子(HMG-CoA合成酵素2欠損症)の2つを一度に調べ、ケトン体が作れない低血糖の原因がこの病気かどうかを確かめます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

空腹・発熱・胃腸炎のときに低血糖をくり返す子どもで、低血糖のときにケトン体が少なかった方、新生児マススクリーニングでHMG血症の再検査と言われた方、きょうだいがこの病気と診断された方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、唾液・粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因が確定すれば、ご両親は保因者で、次のお子さんに同じ病気が起こる確率は4分の1です。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 原因が絞れない方は低血糖症パネル(60遺伝子)へ

1. ケトン体産生異常症とは:空腹のときにケトン体を作れない病気

ケトン体産生異常症は、空腹のときに肝臓でケトン体を作る2つの酵素のどちらかがうまく働かず、低血糖を起こしやすくなる生まれつきの代謝の病気です。酵素の名前から、HMG-CoAリアーゼ欠損症とHMG-CoA合成酵素2欠損症(ミトコンドリアHMG-CoA合成酵素欠損症)の2つに分かれます[4]。どちらも、両親から1つずつ変化を受け継いだときに発症する常染色体潜性(劣性)遺伝の病気です[1][2]。

ケトン体は、空腹のときの「脳の予備の燃料」

ケトン体(アセト酢酸と3-ヒドロキシ酪酸)は、食事が途切れてブドウ糖が足りなくなったときに、肝臓から脳・心臓などへエネルギーを運ぶ大切な燃料です[4]。肝臓は、体の脂肪から出てきた脂肪酸を、細胞の中のミトコンドリアでβ酸化という反応で分解し、そこから2段階でケトン体を作ります。

脂肪酸体の脂肪から
▶
β酸化アセチルCoAに
▶
HMG-CoAHMGCS2が作る
▶
ケトン体HMGCLが作る

1段階目を担うのがHMG-CoA合成酵素2(HMGCS2遺伝子)、2段階目を担うのがHMG-CoAリアーゼ(HMGCL遺伝子)です。どちらかが止まると、空腹が長引いたときに脳へ届ける燃料が足りなくなり、低血糖とその症状が起こりやすくなります。

2つの病気の違い:HMG-CoAリアーゼ欠損症とHMG-CoA合成酵素2欠損症

🧬 ケトン体産生異常症の2つの病気

項目 HMG-CoA合成酵素2欠損症 HMG-CoAリアーゼ欠損症
原因遺伝子 HMGCS2 HMGCL
止まる段階 ケトン体を作る1段階目 ケトン体を作る2段階目。アミノ酸のロイシンの分解も止まる
報告された人数 世界で60人以下(2022年の論文時点) 211人(2020年の文献のまとめ)
発症のしかた 感染症や長い空腹をきっかけにした低血糖の発作。中国の10人では、初めての発作が生後5〜12か月 95%以上が急な代謝の悪化で発症。発症の年齢の中央値は生後4か月で、42.4%が新生児期
尿・血液の手がかり 決め手になる検査値はなく、遺伝子検査が勧められる診断方法。尿の4-ヒドロキシ-6-メチル-2-ピロンが手がかりになるという報告がある 尿の有機酸分析でロイシンの分解途中の物質がたまり、血液のアシルカルニチン分析も多くは異常になる
新生児マススクリーニング 今のスクリーニングでは発症前に見つけられないとされる 日本を含む複数の国で対象(日本では「HMG血症」)

※HMG-CoA合成酵素2欠損症は文献[2][3]、HMG-CoAリアーゼ欠損症は文献[1]による。日本の新生児マススクリーニングは第2章を参照。

症状と、発作のきっかけ

発作は、感染症(かぜ・胃腸炎など)や長い空腹をきっかけに起こりやすく、吐く・ぐったりする・意識がぼんやりする・けいれんなどで気づかれます。HMG-CoAリアーゼ欠損症では、吐く、ぐったりする・意識がなくなる、呼吸が速くなる・止まる、けいれん、肝臓の腫れがみられ、検査では重い低血糖・血液が酸性に傾く代謝性アシドーシス・肝臓の数値の上昇・高アンモニア血症がみられると報告されています[1]。HMG-CoA合成酵素2欠損症でも、低ケトン性低血糖・代謝性アシドーシス・肝臓の数値の上昇がよくみられ、中国の10人では全員の肝臓が腫れ、3分の1にけいれんがありました[2]。

見通しは、2つの病気で少し違います。HMG-CoAリアーゼ欠損症の211人のまとめでは、16.1%が亡くなっており、発達の経過がわかった139人のうち62.6%は発達が正常、31.7%に発達の遅れや神経の症状がありました[1]。HMG-CoA合成酵素2欠損症は、命にかかわることがある一方で治療できる病気とされ、中国の10人のうち生き残った9人は、その後の経過で発作をくり返していませんでした[2]。どちらも、診断がついて空腹を避ける対策がとれるかどうかが、その後を左右する病気です。

2. 「ケトン性低血糖」との違い:ケトン体が出ないことが手がかり

子どもの低血糖でよく言われる「ケトン性低血糖(ケトン血性低血糖症)」では、低血糖のときにケトン体がしっかり上がります。ケトン体産生異常症はその逆で、低血糖の重さに比べてケトン体が少ないのが特徴です。低血糖が起きた「その時」の血液・尿の検査が、どちらなのかを見分ける大きな手がかりになります。

よくあるケトン性低血糖は、多くが体質によるもの

原因がはっきりしない「特発性ケトン性低血糖」は、子どもの低血糖の原因として最も多いと考えられています。生後6か月ごろから、食事がとれないときや病気のときに起こりやすく、6〜7歳ごろにはおさまるのが典型とされます[6]。ほかの病気を除いてつける「除外診断」です[6]。ケトン性低血糖と言われたお子さんの多くは、この検査を受ける必要はありません。

ただし、米国小児内分泌学会の推奨は、ケトン性低血糖と診断されて発作をくり返す場合は、糖原病の一部(0型・Ⅵ型・Ⅸ型)などほかの病気を調べ直すべきとしています[5]。また、ケトン体が高いまま続く・ひどいケトーシスをくり返す場合は、ケトン体を「使う」側の病気(ケトン体利用障害)を調べるべきとされています[6]。自家中毒(アセトン血性嘔吐症)と言われ続けてきた方で、こうした特徴があるときは、遺伝カウンセリングでご相談ください。

低血糖のときの血液・尿の検査から、どの検査を選ぶか

低血糖の原因を調べるときは、低血糖が起きているその時に、血糖・ケトン体(3-ヒドロキシ酪酸)・乳酸・インスリン・遊離脂肪酸・カルニチンとアシルカルニチンなどを一緒に測ることが勧められています[5]。ケトン体は、血糖や遊離脂肪酸と並べて、とくに遊離脂肪酸とケトン体の比で見ると評価しやすいとされています[4]。当院の低血糖の遺伝子検査は、こうした結果に合わせて選べるように分かれています。

🔍 低血糖のときの結果と、向いている遺伝子検査(目安)

低血糖のときの結果 考えられる病気のグループ 向いている検査
インスリンが下がらず、ケトン体も遊離脂肪酸も低い 高インスリン血症 高インスリン血症パネル
遊離脂肪酸は上がっているのにケトン体が少なく、アシルカルニチンに異常がある 脂肪酸β酸化異常症(MCAD欠損症・VLCAD欠損症など) 脂肪酸β酸化異常症パネル(14遺伝子)/脂肪酸酸化異常症パネル
ケトン体が少なく、尿の有機酸分析でロイシンの分解途中の物質がたまっている HMG-CoAリアーゼ欠損症 このページの検査
ケトン体が少なく、β酸化異常症を疑ったが確かめられない HMG-CoA合成酵素2欠損症 このページの検査
ケトン体が高いまま続く・ひどいケトーシスをくり返す ケトン体利用障害(β-ケトチオラーゼ欠損症など) ケトン体利用障害パネル(3遺伝子)
ケトン体が上がるタイプの低血糖をくり返す 多くは特発性ケトン性低血糖。一部に糖原病(0型・Ⅵ型・Ⅸ型)など 糖原病パネル
血糖が下がるにつれて乳酸が上がる 糖原病Ⅰ型(グルコース-6-ホスファターゼ欠損症)など 糖原病パネル
結果がそろっていない・型を絞れない 上のどれか、またはそれ以外 低血糖症パネル(60遺伝子)

※高インスリン血症の数値は米国小児内分泌学会の推奨(3-ヒドロキシ酪酸1.5mmol/L未満・遊離脂肪酸1.0〜1.5mmol/L未満が「不適切に低い」)[5]、それ以外は文献[1][4][5][6]による。表は目安で、結果の読み方は主治医とご相談ください。当院には、糖新生異常パネル・ガラクトース・フルクトース代謝異常パネル・乳酸アシドーシス・ピルビン酸代謝異常症パネル・高アンモニア血症・尿素サイクル異常症パネルもあります。

💡 「ケトン体が出ない」の意味

ケトン体産生異常症でも、ケトン体がまったくゼロになるとは限りません。HMG-CoA合成酵素2欠損症の中国の10人では、尿のケトン体は全員「弱陽性」でした[2]。大切なのは、低血糖の重さや空腹の時間に比べて、ケトン体が少なすぎないかという見方です[4]。

新生児マススクリーニング(タンデムマス)で再検査と言われたら

HMG-CoAリアーゼ欠損症は、日本の新生児マススクリーニングの対象で、「ヒドロキシメチルグルタル酸血症(HMG血症)」の名前で有機酸代謝異常の対象疾患に入っています(埼玉県の先天性代謝異常等検査の案内、2026年7月掲載、2026年10月時点で確認)。複数の国でもスクリーニングの対象になっています[1]。再検査や精密検査と言われた場合、尿の有機酸分析などで診断を進め、遺伝子検査はその診断を確かめる役割を持ちます。

一方、HMG-CoA合成酵素2欠損症は、今の新生児マススクリーニングでは発症前に見つけられないとされています[2]。スクリーニングで異常がなかったことは、この病気がないことを意味しません。

3. どんな人がこの検査を受けるとよいか

原因不明の低血糖をくり返していて、低血糖のときにケトン体が少なかった子どもの方が、この検査のいちばんの対象です。希少な病気ほど、診断までに時間がかかります。欧州の41か国で6,507人の希少疾患の患者さんを調べた調査では、診断までにかかった時間は平均4.7年でした[7]。原因がわからないまま発作に備える時間を、検査で短くできる可能性があります。

  • ●かぜや胃腸炎・長い空腹のときに、低血糖・嘔吐・ぐったりする発作をくり返す
  • ●低血糖のときの検査で、ケトン体が少ない(低ケトン性低血糖)と言われた
  • ●尿の有機酸分析で、HMG-CoAリアーゼ欠損症を疑う結果が出た
  • ●新生児マススクリーニングでHMG血症の再検査・精密検査と言われた
  • ●脂肪酸β酸化異常症が疑われたのに、検査で確かめられなかった
  • ●きょうだいがHMG-CoAリアーゼ欠損症・HMG-CoA合成酵素2欠損症と診断された

病名がつくと、空腹を何時間まで許せるか、発熱や胃腸炎で食べられないときにどうするかを、主治医と具体的に決められるようになります。HMG-CoAリアーゼ欠損症では、長い空腹を避けることが治療の柱とされています[1]。

この検査より別の検査が向いている場合

この検査が調べるのは2つの遺伝子だけです。低血糖のときの結果がそろっていない、ケトン体が少なかったかどうかわからない、という場合は、同じ2つの遺伝子を含めて60遺伝子をまとめて調べる低血糖症パネルのほうが向いています。代謝の病気が広く疑われるときは795遺伝子の包括的代謝疾患パネル、代謝以外の症状も多いときは全エクソーム検査(WES)を考えます。どれが合うかは、遺伝カウンセリングで一緒に決めます。

症状のないきょうだいが調べる意味

お子さんの1人がこの病気と診断されたとき、ほかのきょうだいも同じ2つの変化を受け継いでいる可能性があります(4分の1)。HMG-CoAリアーゼ欠損症の報告では、症状のないまま見つかった患者さんは少ないとされ[1]、多くは発作で見つかっています。症状が出る前にわかれば、初めての発作の前から空腹を避ける対策や、病気の日の計画を立てておけます。

\ 病名がわかれば、病気の日の計画が立てられます /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

唾液・頬の内側の粘膜の検体なら、オンライン診療で遺伝カウンセリングから受けられます。

お問い合わせはこちら | まだ原因が絞れない方は低血糖症パネルへ

4. 調べる2つの遺伝子と、わかる病気

この検査では、ケトン体産生異常症の原因となるHMGCLとHMGCS2の2つの遺伝子を、まとめて調べます。

🧪 ケトン体産生異常症の遺伝子検査で調べる遺伝子(2遺伝子)

遺伝子 働き 関係する病気 遺伝のしかた
HMGCL HMG-CoAからケトン体(アセト酢酸)を作る酵素。ロイシンの分解にも関わる HMG-CoAリアーゼ欠損症(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタル酸血症、OMIM 246450) 常染色体潜性(劣性)遺伝
HMGCS2 ミトコンドリアでHMG-CoAを作る、ケトン体づくりの最初の酵素 HMG-CoA合成酵素2欠損症(ミトコンドリアHMG-CoA合成酵素欠損症、OMIM 605911) 常染色体潜性(劣性)遺伝

※対象遺伝子は当院の検査内容による。病名・OMIM番号・遺伝のしかたは文献[1][2]による。

5. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、2つの遺伝子の中の小さな変化(1文字の変化や、短い挿入・欠失)と、遺伝子のまとまった欠失・重複です。一方で、どんな遺伝子検査にも限界があります。

  • ●調べる範囲:遺伝子のうち、たんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)と、そのつなぎ目のまわりを読みます。遺伝子のスイッチにあたる部分の大半や、エクソンから20塩基より離れた部分の変化は調べられません。
  • ●欠失・重複:遺伝子まるごと、または2つ以上続くエクソンにわたる欠失・重複は見つけられます(2つ以上のエクソンは血液の検体の場合)。エクソン1つだけの欠失・重複は、見つかることはありますが、ふつうは検出の対象外です。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
  • ●見つけられない変化:染色体の一部が入れかわる転座・逆位、同じ配列の繰り返しが伸びる変化、体の一部の細胞にだけある変化(モザイク)は、この検査の対象外です。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知識ではまだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:この2つの遺伝子に原因が見つからなくても、ほかの遺伝子による低血糖や、検出できない種類の変化の可能性は残ります。
🔬 検査の精度(専門的な情報)

対象の遺伝子の99%以上の範囲を、同じ場所を20回以上読み取る精度(カバレッジ:20回以上の読み取りで99%以上)で調べます。同じ場所を何度も読むことで、読み間違いの影響を減らせます。結果の確かさが十分でない変化は、別の方法(サンガー法)で確かめます。よく似た配列(偽遺伝子など)が近くにあると、まれに判定のじゃまになることがあります。

二次的所見(調べた目的と別の病気の原因が見つかること)の扱いは、当院の二次的所見の開示方針のとおりです。

6. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたをご覧ください。

病的変異が見つかったら、次にできること

原因遺伝子に病的な変化が2つ見つかり、それぞれが父母由来の別々の染色体上にあることなどが確認されれば、臨床所見と合わせてケトン体産生異常症の診断を確定できます。わかったあとにできることを、立場ごとにまとめます。治療や食事の具体的な内容は、代謝の病気を診る主治医・専門の医療機関で決めます。

①ご本人(症状のあるお子さん)
長い空腹を避けることが、どちらの病気でも対策の中心です[1][2]。HMG-CoAリアーゼ欠損症の211人のまとめでは、ロイシンやたんぱく質を控える食事(多くは脂肪も控える)が使われ、78%の方がカルニチンを補っていました。ただし、比べて効果を確かめた研究はなく、食事やカルニチンの決まった推奨はまだないとされています[1]。HMG-CoA合成酵素2欠損症の中国の10人では、長い空腹を避けて脂肪の少ない食事にするよう指導され、食事がとれないときには口からブドウ糖をとることも提案されています[2]。発熱・嘔吐・下痢で食べられないときにどうするか、どの時点で受診するかを、主治医と前もって決めておくことが大切です。

②大人になってからのこと
HMG-CoAリアーゼ欠損症では、思春期や大人になってからも低血糖の発作や神経の症状が起こりうるとされています[4]。また、この病気の女性の妊娠はこれまでに5人・8回が報告されており、その中に妊娠中に代謝が悪くなった例があります[1]。妊娠を考えるときは、前もって代謝の主治医に相談することが勧められます。

③子どもを持つときの選択肢
ご両親はそれぞれ1つずつ変化をもつ保因者で、次のお子さんがこの病気になる確率は、妊娠ごとに4分の1です。ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております(羊水検査・絨毛検査)。出生前診断を行えるかは病気の重さなどを踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。生まれてすぐに調べる方法として、HMGCLとHMGCS2を含む新生児遺伝子スクリーニング(255遺伝子)もあります。日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。何も検査をせずに産むことも、同じように尊重される選択です。

④ご家族
ご家族の中で原因の変化がわかると、きょうだいや親族は同じ変化だけをピンポイントで調べられます(カスケード検査)。症状のないきょうだいの検査は、ご家族とよく話し合って決めます。

⑤当院でのその後
結果をお伝えしたあとも、ご家族の検査や次の妊娠の計画について、遺伝カウンセリングでご相談いただけます(遺伝カウンセリング料は30分22,000円・税込)。

陰性のとき・VUSのとき

原因が見つからなかった場合は、ケトン体産生異常症の可能性は低くなりますが、ゼロにはなりません(第5章)。低血糖のときの検査結果に合わせて、低血糖症パネルや、ほかの代謝の病気の検査を考えます。VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります(VUSの臨床的な取り扱い)。

次のお子さんに遺伝する確率と、血のつながりのある結婚(いとこ婚など)

常染色体潜性遺伝では、ご両親がともに保因者のとき、お子さん1人ごとに、病気になる確率が4分の1、保因者になる確率が2分の1、どちらでもない確率が4分の1です。保因者は、ふつう症状がありません。上のお子さんがこの病気だったかどうかで、次のお子さんの確率は変わりません。

両親がいとこ同士などの血縁関係(いとこは第三度近親)にあると、同じ祖先から同じ変化を受け継いでいる可能性があるため、潜性遺伝の病気が起こりやすくなります。HMG-CoAリアーゼ欠損症の報告をまとめた研究では、両親が血縁関係にあった方が49%(122人中60人)でした[1]。これは結婚そのものを否定するものではありません。知ったうえで、保因者検査や出生前診断などの選択肢を考えられます。

HMGCLとHMGCS2は、どちらも当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)と男性版(714遺伝子)の対象です。妊娠中の方は、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(単独では受けられません)もあります。ご家族にこの病気の方がいて、パートナーが保因者かどうかを知りたい場合にも使えます。

7. 日本の制度(2026年10月時点)

小児慢性特定疾病(先天性代謝異常)の対象に、「3-ヒドロキシ-3-メチルグルタル酸血症」(告示番号102)と「3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoA合成酵素欠損症」(告示番号104)が含まれています。小児慢性特定疾病情報センターで、それぞれの医療意見書を確認しました(2026年10月時点)。

医療費の助成を受けるには、認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜・血液のどれでも検査できます。この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取唾液・粘膜・血液
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
対象遺伝子 HMGCL・HMGCS2(2遺伝子)
検査費用 税込330,000円(塩基配列の解析と、欠失・挿入の解析を含む)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急:結果までの期間が約7日短くなります(55,000円)/VUS除外:意義がまだわからない変化(VUS)を報告に載せない(無料)
検体 血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色のキャップ)、抽出したDNA(EBバッファー中3μg)、頬の内側の粘膜(スワブ)、唾液
オンライン診療 唾液・頬の内側の粘膜・血液のいずれもオンライン診療で受けられます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質を保つため、ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ お子さんの結果が、きょうだいを守る手がかりに /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご夫婦とも保因者なら、次の妊娠の羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「ケトン性低血糖でしょう」で終わらせないために】

子どもの低血糖の多くは、成長とともにおさまる体質によるものです。ですから、すべてのお子さんに遺伝子検査が必要だとは考えていません。ただ、低血糖のときにケトン体が少なかった、発作をくり返している、きょうだいも同じだった――こうした手がかりがあるときは、「様子を見ましょう」だけで終わらせず、原因を確かめる意味があると考えています。原因がわかれば、空腹の時間や病気の日の対応を、根拠をもって決められるからです。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

潜性遺伝の病気では、ご両親はふつう症状のない保因者で、知らずに変化を受け渡しています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。次のお子さんを考えるときも、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. ケトン性低血糖と言われました。この遺伝子検査を受けるべきですか?

多くの場合、必要ありません。原因のはっきりしない特発性ケトン性低血糖は子どもの低血糖の原因として最も多く、6〜7歳ごろにおさまるのが典型とされています。この検査が向いているのは、低血糖のときにケトン体が少なかった方です。ケトン性低血糖でも発作をくり返す場合は、ほかの病気を調べ直すことが勧められているので、遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q2. 自家中毒(ケトン性嘔吐症)やケトン性低血糖症と、この病気はどう違いますか?

自家中毒やケトン性低血糖症では、空腹や病気のときにケトン体が多く作られます。ケトン体産生異常症はその逆で、ケトン体を作る酵素が働かないため、低血糖の重さに比べてケトン体が少なくなります。ケトン体が高いまま続く・ひどいケトーシスをくり返す場合は、ケトン体を使う側の病気(ケトン体利用障害)を考えます。

Q3. HMG-CoAリアーゼ欠損症とHMG-CoA合成酵素2欠損症の違いは何ですか?

どちらもケトン体を作る酵素の病気で、HMG-CoA合成酵素2欠損症は1段階目、HMG-CoAリアーゼ欠損症は2段階目が止まります。HMG-CoAリアーゼ欠損症ではロイシンの分解も止まるため、尿の有機酸分析に特徴が出て、新生児マススクリーニングの対象になっています。HMG-CoA合成酵素2欠損症は決め手になる検査値がなく、遺伝子検査が勧められる診断方法とされています。

Q4. 新生児マススクリーニングで再検査と言われました。遺伝子検査は必要ですか?

HMG-CoAリアーゼ欠損症は、日本の新生児マススクリーニングで「HMG血症」として対象になっています。再検査や精密検査では、まず尿の有機酸分析などで診断を進めます。遺伝子検査は、その診断を確かめ、ご家族の検査や次の妊娠の計画に使える情報を得る役割を持ちます。進め方は、スクリーニングの精密検査を行う医療機関とご相談ください。

Q5. ケトン体産生異常症は遺伝しますか?次の子に遺伝する確率は?

常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに、病気になる確率が4分の1、保因者になる確率が2分の1、どちらでもない確率が4分の1です。上のお子さんの結果で、次のお子さんの確率は変わりません。ご家族で原因の変化がわかっていれば、妊娠したときに出生前診断を考えられます。

Q6. 症状のないきょうだいも検査できますか?

できます。ご家族の中で原因の変化がわかっていれば、きょうだいは同じ変化だけを調べられます。2つの変化を受け継いでいるとわかれば、初めての発作の前から空腹を避ける対策や病気の日の計画を立てておけます。検査を受けるかどうかは、遺伝カウンセリングでご家族とよく話し合って決めます。

Q7. いとこ同士の結婚だと、この病気は起こりやすいですか?

両親が血縁関係にあると、同じ祖先から同じ変化を受け継いでいる可能性があるため、潜性遺伝の病気は起こりやすくなります。HMG-CoAリアーゼ欠損症の報告をまとめた研究では、両親が血縁関係にあった方が49%でした。結婚そのものを否定するものではなく、保因者検査などで知ったうえで、選択肢を考えられます。

Q8. 何歳ごろまで発作に気をつければよいですか?

はっきり何歳までとは言えません。よくある特発性ケトン性低血糖は6〜7歳ごろにおさまるのが典型ですが、HMG-CoAリアーゼ欠損症では、思春期や大人になってからも低血糖の発作や神経の症状が起こりうるとされています。年齢だけで判断せず、主治医と相談しながら対策を続けることが大切です。

🧬 一度の検査で、お子さんとご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ケトン体産生異常症の原因がわかれば、お子さんの空腹の時間や病気の日の計画だけでなく、きょうだいの検査や、次の妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

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参考文献

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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