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神経セロイドリポフスチン症(バッテン病)の遺伝子検査|原因14遺伝子でCLN2などの型を調べる

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

神経セロイドリポフスチン症(バッテン病)の遺伝子検査|14遺伝子パネル

神経セロイドリポフスチン症(NCL・バッテン病)は、細胞の中のライソゾームに老廃物がたまり、てんかん発作・視力の低下・できていたことができなくなる「発達の後戻り」が進む病気のグループです。CLN1〜CLN14などの型があり、型によって始まる年齢も、使える治療も、ご家族への遺伝のしかたも違います。この遺伝子検査で型がわかると、CLN2病の酵素補充療法のように「次の一手」が決まり、次のお子さんへの確率やきょうだいの検査も具体的に考えられるようになります。このページでは、原因の14遺伝子を一度に調べる遺伝子パネル検査でわかること・わからないこと、結果のあとにできることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

神経セロイドリポフスチン症(バッテン病)の原因遺伝子と、ヒトの病気との関係が研究中のPPT2を合わせた14の遺伝子をまとめて調べ、CLN2・CLN3などどの型かを確かめる遺伝子検査です。型がわかると、治療の選び方や見通し、ご家族への遺伝の確率が決まります。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

てんかん発作と発達の後戻りがあるお子さん、視力の低下から始まり学習や行動の変化が続くお子さん、大人になってから認知機能の低下やミオクローヌスが出てきた方、ご家族にNCLの方がいる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、唾液・口の内側の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。ほとんどの型は潜性遺伝で、ご両親がともに保因者なら、次のお子さんでも4分の1の確率で同じ病気が起こります。意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることもあり、その扱いもご説明します。

\ 型がわかれば、次の一手が決まります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 進行性ミオクローヌスてんかんパネル

1. 神経セロイドリポフスチン症(NCL・バッテン病)とは

神経セロイドリポフスチン症(NCL)は、細胞の中で不要なものを分解するライソゾームの働きが損なわれ、セロイドリポフスチンと呼ばれる老廃物が神経細胞などにたまっていく、遺伝性の病気のグループです。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsは、NCLをまとめて「子どもの遺伝性の神経変性疾患のなかで最も多い」病気としています[1]。体の中で物質を分解する酵素などの働きが生まれつき弱い病気の集まりであるライソゾーム病のひとつに数えられます。

バッテン病・NCL・CLは同じ病気?

バッテン病・NCL・CL(セロイドリポフスチン症)は、いずれも同じ病気のグループを指す言葉です。バッテン病は、もともと若年型(いまのCLN3病)を指した名前ですが、いまはNCL全体の呼び名としても使われています。日本の医療費助成の制度では「セロイドリポフスチノーシス」、小児慢性特定疾病では「神経セロイドリポフスチン症」の名前で載っています。病名がいくつもあるので、検索や説明を受けるときに戸惑う方も少なくありません。このページでは「NCL」とまとめて書き、型を言うときは「CLN2病」のように番号で書きます。

型(CLN1〜CLN14)によって、始まる年齢と最初の症状が違う

NCLは原因の遺伝子ごとに「CLN+番号」で型を呼び分けます。乳児期に始まる型、2〜4歳ごろに始まる型、学童期に視力の低下から始まる型、大人になってから始まる型まであり、型によって経過が大きく違います[1]。

🧬 NCLのおもな型と、始まる時期・最初に目立つ症状

型(原因の遺伝子) 典型的に始まる時期 最初に目立つことが多い症状
CLN1病(PPT1) 乳児期(生後6〜18か月) 発達がゆっくりになる、機嫌が悪い、手の決まった動き
CLN2病(TPP1) 2〜4歳ごろ 言葉の遅れ、その後のてんかん発作とふらつき
CLN3病(CLN3) 学童期(若年型) 網膜の病気(錐体杆体ジストロフィー)による視力の低下
CLN4病(DNAJC5) 大人(平均30歳ごろ) 行動の変化、てんかん発作、ふるえ
CLN5病(CLN5) 幼児期(遅発乳児型) 動作のぎこちなさ、その後の視力の低下
CLN6病(CLN6) 幼児期〜学童期 発達の遅れから後戻りへ
CLN7病(MFSD8) 幼児期(遅発乳児型) 言葉の問題、歩き方の変化、てんかん発作
CLN8病(CLN8) 幼児期〜学童期 認知機能の低下を伴うてんかん、またはふらつきと言葉の遅れ
CLN10病(CTSD) 生まれたとき(先天型) てんかん発作、小頭症、無呼吸
CLN11病(GRN) 10代〜大人 視力の低下、てんかん発作、ふらつき
CLN13病(CTSF) 大人(Kufs病B型) 認知機能と運動機能の低下
CLN14病(KCTD7) 幼児期(遅発乳児型) 発達の後戻りと、進んでいくてんかん

※GeneReviews(2025年5月更新)の表[1]をもとに作成。同じ型でも、始まる年齢や症状には幅があります。CLN12(ATP13A2)と大人で始まるCLN6病(Kufs病A型)は、第4章の表にまとめています。

どれくらいの人がなる病気か

小児慢性特定疾病情報センターの解説(2015年掲載)では、欧米では1万人に1人と頻度が高い一方、2001年の国内の全国調査では27例の報告だったとされています。日本で少ない理由ははっきりしておらず、診断されていない方がいる可能性もあります。数字は調べた時期と方法によって変わるため、目安として受け取ってください。

指定難病・小児慢性特定疾病か(2026年10月時点)

NCLは、国の指定難病19「ライソゾーム病」の対象疾患に「セロイドリポフスチノーシス」として含まれています。厚生労働省の指定難病の一覧(令和8年4月時点)で、ライソゾーム病の対象として挙げられた31の病気のひとつです。また、小児慢性特定疾病の対象疾病にも「神経セロイドリポフスチン症」が掲載されています(2026年10月に確認)。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。遺伝子検査で型が確定していることは、制度の申請や、主治医が治療を考えるときの手がかりになります。

2. 神経セロイドリポフスチン症の遺伝子検査で、何がわかり何が変わるのか

この遺伝子検査では、NCLの原因遺伝子と、ヒトの病気との関係が研究中のPPT2を含む14遺伝子を調べます。原因となる病的変異が見つかれば、NCLの型の確定につながります。型がわかると、治療の選び方・合併症への備え・ご家族への遺伝の確率が決まります。先天異常や知的障害のあるお子さんのエクソーム・ゲノム検査について、米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)が167件の研究をまとめた系統的レビューでは、検査の結果として最も多く報告されていたのは、診療方針の変更と、次のお子さんを考えるときの意思決定でした[8]。NCLの14遺伝子パネルそのものを調べた研究ではなく、多くは症例報告や小さな症例集積ですが、「原因の名前がつくこと」が次の行動につながりうることを示しています。

CLN2病は、酵素補充療法がある型

CLN2病(セロイドリポフスチン症2型)には、足りない酵素(TPP1)を脳室に直接補う酵素補充療法(一般名:セルリポナーゼ アルファ)があります。日本でも「セロイドリポフスチン症2型」を効能・効果として承認されており、2週に1回、脳室内に投与する薬です(PMDAの添付文書、2025年8月改訂の第5版で確認)。添付文書には、2歳未満では量を減らすこと、1歳未満での使用経験がないことも書かれています。

3〜16歳のCLN2病のお子さん24人を対象にした臨床試験では、運動と言葉の点数が2点下がるまでの期間を、治療を受けなかった過去の患者さん42人と比べました。治療を受けたお子さんでは悪化する危険が大きく下がり(ハザード比0.08)、48週あたりの点数の低下は、治療群で平均0.27点、過去の患者さんで平均2.12点でした[2]。この治療は病気を治すものではなく、進み方をゆるやかにするものです。また、点数がすでに大きく下がってから始めるより、早く始めるほうがよいかどうかを確かめる研究が続いています[3]。治療を受けるかどうか、いつ始めるかは、神経の病気を専門とする医療機関でご相談ください。当院は治療を行っていません。

酵素の検査と遺伝子検査の関係

CLN1病とCLN2病では、白血球などで酵素の働きを測る検査が、以前は診断の中心でした。GeneReviewsの2025年の改訂では、いまは遺伝子検査を先に行い、酵素の検査は主に、遺伝子検査で見つかった意義がまだわからない変化(VUS)の意味をはっきりさせるために使われるとされています[1]。酵素の検査が使えない型も多いため、どの型かを一度に確かめるには、原因の遺伝子をまとめて調べる遺伝子パネル検査が向いています。

原因探しの回り道を短くする

NCLの初めの症状は、てんかん発作・言葉の遅れ・視力の低下・行動の変化などで、ほかの病気でもよくみられるものです。そのため、てんかんの治療や眼科・発達の検査を続けながら、なかなか原因にたどりつけないこともあります。原因の候補になる14の遺伝子を一度に調べることで、1つずつ遺伝子を調べていくより、原因にたどりつくまでの回り道を短くできる可能性があります。ただし、全員に原因が見つかるわけではありません(第6章)。

遺伝子検査そのものの種類やしくみは、遺伝子検査(遺伝学的検査)とはで解説しています。

3. どんな人がこの検査を受けるとよいか

NCLを思わせる症状がある方と、ご家族にNCLの方がいる方に向く検査です。症状の組み合わせや始まった年齢で、ほかの検査のほうが向くこともあるので、迷ったら遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。

お子さんにてんかんと発達の後戻り・視力の低下がある

次のような組み合わせがあると、NCLを含めて原因を調べる意味があります(型ごとの症状はGeneReviews[1]による)。

  • ●てんかん発作が始まり、それまでできていた言葉や動作ができなくなってきた(発達の後戻り)
  • ●幼児期に言葉の遅れがあり、そのあとにてんかん発作やふらつきが出てきた(CLN2病でよくみられる順番)
  • ●学童期に視力が下がり、そのあとに学習・行動の変化やてんかん発作が加わってきた(CLN3病でよくみられる順番)
  • ●ミオクローヌス(手足などが一瞬ぴくっと動く発作)やふらつきが、だんだん強くなってきた
  • ●てんかんや眼科・発達の検査を重ねても、原因がわからないままになっている

ご家族にNCLの方がいる(きょうだい・保因者かもしれない方)

上のお子さんがNCLと診断された、または原因がわからないまま亡くなったご家族では、次のお子さんやきょうだいへの影響が気がかりになります。原因がわかれば、次のお子さんで同じ病気が起こる確率と、次の妊娠でどう備えられるかを、具体的に考えられるようになります。ほとんどの型は常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親がともに保因者なら、次のお子さんでも4分の1の確率で同じ病気が起こります(第5章)。

大人になってから症状が出た方、ご家族が大人で発症した方(CLN4・CLN6・CLN13・GRN)

NCLには、大人になってから始まる型があります。Kufs病A型(CLN6)は進行性ミオクローヌスてんかんとして現れ[6]、Kufs病B型(CTSF)は認知機能の低下と運動の症状で現れます[5]。CLN4病(DNAJC5)は平均30歳ごろに始まる顕性遺伝の型です[1]。また、GRN遺伝子は、2本とも変化があるとCLN11病に、1本だけ変化があると前頭側頭型認知症につながることが報告されています[4]。

親やきょうだいが大人になってから発症したご家族のなかには、ちょっとした物忘れや手のふるえ・つまずきでも「始まったのでは」と不安を抱えながら暮らしている方もいます。症状のない方が、将来発症する可能性を調べる検査は「発症前の検査(予測的検査)」になります。当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。

ご家族の原因の変化を受け継いでいないとわかれば、その病気について、ご家族と同じ確率で心配し続ける必要はなくなります。受け継いでいるとわかった場合も、見張る症状を決め、仕事・結婚や出産・住まいなどの計画を立てる手がかりになります。英国でハンチントン病の発症前検査を受けた人の理由として最も多かったのは「不確実さを減らすため」(70.5%)でした[9]。病気は違いますが、「知ったうえで計画したい」という思いは通じるものがあると考えています。一方で、結果を知ったあとの気持ちの変化は、陽性でも陰性でも起こりえます。当院では、結果をお伝えしたあとも遺伝カウンセリングで相談を続けていただけます。なお、日本医学会のガイドライン(2022年3月改定)は、成年期以降に発症する病気の未成年者への発症前の検査は、原則として本人が成人し自分で判断できるまで延期すべきとしています。

この検査より別の検査が向いている場合

NCLを疑うなら、14の原因遺伝子をそろえて調べるこの検査が基本です。ただし、症状によっては次の検査のほうが向いています。比べる相手は検査の種類で、どれが合うかは症状・診察所見・ご家族の情報で変わります。

🔍 症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査 NCLの14遺伝子との関係
NCLの型を確かめたい、ご家族にNCLの方がいる このページの検査(14遺伝子) 14遺伝子すべて
ミオクローヌスとてんかんが進み、NCL以外の原因(ウンフェルリヒト・ルントボルク病・ラフォラ病など)も考えたい 進行性ミオクローヌスてんかんパネル(19遺伝子) 9遺伝子が共通(ATP13A2・CTSD・CTSF・DNAJC5・PPT2は含まれない)
肝臓や脾臓の腫れ・骨の変化など、ほかのライソゾーム病も考えたい ライソゾーム病パネル(106遺伝子) 10遺伝子が共通(CTSF・GRN・KCTD7・PPT2は含まれない)
てんかんの型や始まった年齢から病気をしぼれない てんかん包括的遺伝子検査(1,057遺伝子) てんかんの原因を広く調べる検査
発達の遅れが中心で、てんかんや後戻りがはっきりしない 発達障害・知的障害の遺伝子検査 発達の遅れの原因を広く調べる検査
症状が多くの臓器にわたり、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES) ほぼすべての遺伝子を調べる検査

※遺伝子数・共通する遺伝子は、それぞれの検査のもとになる検査内容で確かめた数です(2026年10月18日時点)。

\ 原因がわかれば、ご家族の計画も立てられます /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご夫婦とも保因者だった場合、妊娠したときの出生前診断(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。

海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

4. 神経セロイドリポフスチン症の遺伝子検査で調べる14遺伝子

この検査では、ATP13A2・CLN3・CLN5・CLN6・CLN8・CTSD・CTSF・DNAJC5・GRN・KCTD7・MFSD8・PPT1・PPT2・TPP1の14遺伝子をまとめて調べます。多くの遺伝子は1つでいくつかの病気に関わり、同じ遺伝子でも、変化が1本か2本かで病気が変わるものもあります。

🧬 調べる14遺伝子と、関係する病気・遺伝のしかた

遺伝子 型 関係する病気 遺伝のしかた 当院の保因者検査
ATP13A2 CLN12 クフォー・ラケブ症候群/CLN12病[1]/常染色体劣性痙性対麻痺78(SPG78)[7] 常染色体潜性 対象
CLN3 CLN3 CLN3病(若年型・バッテン病) 常染色体潜性 対象
CLN5 CLN5 CLN5病 常染色体潜性 対象
CLN6 CLN6 CLN6病(幼児期〜学童期に始まる型)/Kufs病A型(大人で始まる型)[6] 常染色体潜性 対象
CLN8 CLN8 CLN8病/北方てんかん(CLN8の型) 常染色体潜性 対象
CTSD CLN10 CLN10病(先天型など) 常染色体潜性 対象
CTSF CLN13 CLN13病(Kufs病B型・大人で始まる型)[5] 常染色体潜性 対象
DNAJC5 CLN4 CLN4病(大人で始まる型) 常染色体顕性 対象外
GRN CLN11 2本とも変化:CLN11病/1本の変化:前頭側頭型認知症[4] CLN11は常染色体潜性/前頭側頭型認知症は常染色体顕性 対象外
KCTD7 CLN14 CLN14病(幼児期に始まる、発達の後戻りと進んでいくてんかん) 常染色体潜性 対象
MFSD8 CLN7 CLN7病 常染色体潜性 対象
PPT1 CLN1 CLN1病(乳児期に始まることが多い) 常染色体潜性 対象
PPT2 型の番号なし ヒトの病気との関係を研究中の遺伝子(GeneReviewsのNCLの型の一覧には含まれていない) 確立していない 対象外
TPP1 CLN2 CLN2病(2〜4歳ごろに始まることが多い)/常染色体潜性脊髄小脳失調症7型 常染色体潜性 対象

※型・病気・遺伝のしかたはGeneReviews[1]と各原著論文[4][5][6][7]、TPP1の脊髄小脳失調症は米国国立医学図書館(MedlinePlus Genetics)による。「当院の保因者検査」は、拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子・女性版1009遺伝子・男性版911遺伝子)の遺伝子一覧で確かめた結果です(2026年10月18日時点)。PPT2とヒトのNCLとの関係は確立しておらず、CLN9病の原因遺伝子も同定されていません。

この14遺伝子のなかに、当院のNIPT(ダイヤモンドプラン・インペリアルプラン)で調べる遺伝子は含まれていません。妊娠中にNCLを調べたい場合は、ご家族で原因の遺伝子の変化を確かめておき、絨毛検査・羊水検査で赤ちゃんを調べる方法になります(第7章)。

5. 神経セロイドリポフスチン症は遺伝する?遺伝する確率

NCLはほとんどの型が常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します。例外はCLN4病(DNAJC5)で、常染色体顕性(優性)遺伝です[1]。どの型かによって確率が変わるので、まず原因の遺伝子を確かめることが出発点になります。

ほとんどは常染色体潜性遺伝(劣性遺伝):ご両親が保因者なら、お子さんごとに4分の1

常染色体潜性(劣性)遺伝では、対になった2本の遺伝子の両方に変化があるときに発症します。1本だけ変化をもつ人は「保因者」と呼ばれ、ふつうは症状がありません。ご両親がともに同じ遺伝子の保因者の場合、お子さん1人ごとに、発症する確率が4分の1、保因者になる確率が2分の1、どちらでもない確率が4分の1です[1]。上のお子さんが発症したかどうかで、下のお子さんの確率が変わることはありません。

保因者であることは、ご本人のせいではありません。誰でもいくつかの病気の保因者であることが知られており、たまたま同じ遺伝子の保因者どうしだったときに、お子さんで病気が起こります。

顕性遺伝の型:DNAJC5(CLN4)と、GRNの1本だけの変化

常染色体顕性(優性)遺伝では、2本のうち1本に変化があれば発症しうるため、親から子へ伝わる確率はお子さん1人ごとに2分の1です。CLN4病(DNAJC5)がこれに当たります[1]。GRN遺伝子は、2本とも変化があるとCLN11病になる一方、1本だけの変化は前頭側頭型認知症の主な原因のひとつです[4]。同じ遺伝子でも、変化が1本か2本かで、ご家族にとっての意味が大きく変わります。

💡 用語解説:保因者と発症者

常染色体潜性遺伝の病気では、変化を1本もつ方(保因者)はふつう発症せず、2本もつ方が発症します。保因者かどうかは見た目や家族歴だけではわからず、遺伝子を調べてはじめてわかります。当院の拡大版保因者スクリーニングでは、14遺伝子のうち11遺伝子(ATP13A2・CLN3・CLN5・CLN6・CLN8・CTSD・CTSF・KCTD7・MFSD8・PPT1・TPP1)を調べています。

6. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、14の遺伝子の中の小さな変化(1つの塩基の置き換わりや、小さな挿入・欠失)と、遺伝子のまとまった範囲の欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

わかること

  • ●小さな変化:次世代シークエンサーで、遺伝子のたんぱく質を作る部分(エクソン)と、その境目(スプライス部位)の配列を読みます。読み取りの質が低い場所は、別の方法(サンガー法)で確かめます。
  • ●欠失・重複:1つの遺伝子まるごと、または2つ以上続くエクソンの範囲の欠失・重複を調べます(エクソン2つ以上の範囲は血液の検体のとき)。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。

わからないこと

  • ●調べていない遺伝子:この検査の対象は14遺伝子だけです。ほかの遺伝子の変化は見つかりません。
  • ●見つけにくい種類の変化:エクソン1つだけの欠失・重複はふつうは検出されません。染色体の一部が入れ替わる変化(転座・逆位)、同じ配列の繰り返しが長くなる変化(リピート伸長)、遺伝子のスイッチの部分(プロモーター)や、エクソンから20塩基以上離れた場所の変化も調べられません。
  • ●モザイク:体の一部の細胞だけに変化がある状態(モザイク)を見つけることは、この検査の目的に含まれていません。
  • ●よく似た配列:遺伝子とよく似た配列(偽遺伝子など)があると、判定がむずかしくなる場所があります。

陰性でもNCLを否定できない/VUSのこと

原因が見つからなくても、NCLではないと言い切ることはできません。NCLの症状があっても、知られている遺伝子に変化が見つからない方がいます。また、病気の原因かどうかまだ判断できない変化(VUS)が見つかることがあります。VUSだけで診断やご家族の発症リスクを判断することはしません。ただし、VUSの意味を確かめるために、ご家族で同じ変化の有無を調べることがあります。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

7. 病的変異が見つかったら、次にできること

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。わかったことを、ご本人・ご家族・次のお子さんのそれぞれで、次の行動につなげます。

ご本人:型に合わせた治療とサポート

型がわかると、病名がはっきりし、見通しと気をつけることが決まります。CLN2病なら、酵素補充療法を受けられるかを専門の医療機関で相談できます(第2章)[2]。どの型でも、てんかん発作の治療、視力の低下への支援、リハビリテーション、食事や呼吸のケアなどを、症状に合わせて組み立てていきます。指定難病・小児慢性特定疾病の申請にも、型の確定が手がかりになります(第1章)。治療は神経の病気を専門とする医療機関で受けていただき、当院では、結果の意味とご家族への影響を遺伝の専門医としてご説明します。

ご家族:ご両親の保因者確認と、きょうだいの検査

潜性遺伝の型でお子さんに2つの変化が見つかった場合、ご両親それぞれが1つずつもっているか(保因者か)を確かめます。これで、次のお子さんへの確率が4分の1かどうかがはっきりします。ご家族の中で原因の変化がわかっていると、ほかのご家族は、同じ場所だけをピンポイントで調べられます。

症状のまだないきょうだいが、同じ変化を2つもっているか(発症するか)を調べることは、CLN2病のように治療のある型では、早く見つかることに意味があります[3]。一方、症状のない未成年のきょうだいが「保因者かどうか」を調べることは、日本医学会のガイドライン(2022年3月改定)で、原則として本人が成人し自分で判断できるまで延期すべきとされています。きょうだいご本人が大人になって結婚や妊娠を考えるときに、ご自身の意思で調べることができます。

ご家族の原因の変化を確かめるとき、病気のご本人の検査結果や検体が大きな手がかりになります。将来、ほかのご家族が検査やPGT-Mを考えるときのためにも、結果の報告書は大切に保管しておくことをおすすめしています。

次のお子さんを考えるとき

ご夫婦がともに保因者とわかっている場合、次の妊娠では、次のような選択肢があります。どれを選ぶか、選ばないかは、ご夫婦が決めることで、どの選択も尊重されます。

  • ●妊娠して出生前診断を受ける:ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。その病気で出生前診断をどう進められるかは、妊娠を考えている段階からご相談ください。
  • ●パートナーの保因者検査:ご自身が保因者とわかり、新しいパートナーとの妊娠を考える場合は、パートナーが同じ遺伝子の保因者かを調べます。拡大版保因者スクリーニングでは14遺伝子のうち11遺伝子を調べています。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(単独では受けられません)。
  • ●PGT-M(着床前遺伝学的検査):日本では日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て行われており、海外で受ける方もいます。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません(下の「海外でPGT-Mを考えている方へ」をご覧ください)。
  • ●何もしないで妊娠・出産する:検査を受けないことも、そのまま選べる選択肢です。

この14遺伝子は当院のNIPTの対象ではないため、NCLを妊娠中に調べる方法は、絨毛検査・羊水検査になります。

海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます

PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因の遺伝子の確定、英語の検査結果の用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査(院内)です。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。

欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の指針では、PGT-Mの準備に、①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化、②どの遺伝子のどの変化かが書かれた元の報告書、③ご家族の検体が必要とされています[10]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあるため、変化の両側にある目印(多型マーカー)で、変化をもつ染色体を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます。そのために、ご夫婦に加えて、病気の有無がわかっている血縁者のDNAが必要です。潜性遺伝のNCLでは、患者さん(2つの変化をもつ方)・保因者・保因者でない方が目安とされ、顕性遺伝のCLN4病では、患者さん少なくとも1人(できれば2人)、および/または発症していない方1人が目安とされています[10]。

ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。血縁者がいない場合、指針は、ご夫婦で目印を調べたうえで治療周期の受精卵などから変化の乗った染色体を決める方法を挙げていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります[10]。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。

臨床遺伝専門医としての判断をお伝えすると、意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。潜性遺伝のNCLでは、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。また、海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もって確認してください。

⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です

受精卵のごく一部の細胞を調べる検査なので、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[11]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、絨毛検査・羊水検査で赤ちゃんそのものを確かめることが望ましいと考えています。海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でも、院内でご相談いただけます。

日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)」に関する指針(2026年9月改定)にもとづき、症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。

どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。英国では公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。一覧にない病気は、施設を通じて申請できます。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[12]。米国生殖医学会の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気に対するPGT-Mも倫理的に許容されうるとする意見を出しています[13]。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。準備の詳しい流れは、海外でPGT-Mを考えている方へ(必要な遺伝子検査・家族の検体・英語の検査結果)で解説しています。

陰性・VUSだったとき

14遺伝子に原因が見つからなかった場合は、症状に合わせて、進行性ミオクローヌスてんかんパネル・ライソゾーム病パネル・全エクソーム検査など、調べる範囲の違う検査を考えます(第3章)。VUSが見つかった場合は、それだけで診断やご家族の発症リスクを判断せず、必要に応じてご家族で同じ変化の有無を調べ、主治医の検査(酵素の検査・画像・眼科の検査など)の結果とあわせて意味を考えます[1]。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。VUSの扱いはVUS(意義不明変異)の臨床的取り扱いでも解説しています。

8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・抽出したDNA・口の内側の粘膜・唾液で、唾液・口の内側の粘膜・血液のいずれもオンライン診療で受けられます。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の提出唾液・口の粘膜・血液
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
調べる遺伝子 14遺伝子(ATP13A2・CLN3・CLN5・CLN6・CLN8・CTSD・CTSF・DNAJC5・GRN・KCTD7・MFSD8・PPT1・PPT2・TPP1)
検査費用 税込330,000円(塩基配列と欠失・重複の解析を含む)
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急:結果までの期間が約7日短くなります(55,000円)/VUS除外:意義がまだわからない変化を報告に含めない(無料)
検体 血液(EDTA採血管4ml×2本)、抽出DNA(3μg)、口の内側の粘膜、唾液
読み取りの精度 対象の領域の99%以上を、20回以上読み取ります(カバレッジ)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
オンライン診療 唾液・口の内側の粘膜・血液のいずれも可能。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血します

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

オンライン診療(ビデオ通話での診療)では、遺伝カウンセリングを行ったあとに、検体を当院にお送りいただきます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質を保つため、ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は、NIPT/遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、ご家族のこれからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。

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9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【名前がつくことは、終わりではなく始まり】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

神経セロイドリポフスチン症のように、潜性遺伝の病気では、ご両親はふつう症状がなく、ご自身が保因者だと知らないまま、お子さんの発症ではじめて気づくことがほとんどです。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。そして、型がわかることは、そこで何かが終わるのではなく、治療の相談、きょうだいのこと、次の妊娠の計画と、次の一歩を考える始まりだと考えています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで次のお子さんを考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 神経セロイドリポフスチン症とバッテン病の違いは何ですか?

同じ病気のグループを指す言葉です。神経セロイドリポフスチン症(NCL)は、細胞のライソゾームに老廃物(セロイドリポフスチン)がたまる病気の総称で、バッテン病は、もともと若年型(いまのCLN3病)を指した名前が、NCL全体の呼び名としても使われるようになったものです。日本ではセロイドリポフスチン症(CL)と書かれることもあります。

Q2. 神経セロイドリポフスチン症は難病(指定難病)ですか?

国の指定難病19「ライソゾーム病」の対象疾患に「セロイドリポフスチノーシス」として含まれています(厚生労働省の一覧、令和8年4月時点)。小児慢性特定疾病の対象疾病にも「神経セロイドリポフスチン症」が掲載されています(2026年10月に確認)。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。

Q3. 神経セロイドリポフスチン症に治療薬はありますか?

型によって違います。CLN2病(セロイドリポフスチン症2型)には、脳室内に投与する酵素補充療法の薬(セルリポナーゼ アルファ)があり、日本でも承認されています。ほかの型では、てんかん発作や視力・運動の症状に合わせた治療とリハビリテーションが中心です。治療は、神経の病気を専門とする医療機関で受けていただきます。

Q4. 子どもに遺伝する確率はどのくらいですか?

ほとんどの型は常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症し、2分の1の確率で保因者になります。CLN4病(DNAJC5遺伝子)は常染色体顕性(優性)遺伝で、親が変化をもっていれば、お子さん1人ごとに2分の1の確率で受け継ぎます。どの型かで確率が変わるので、まず原因の遺伝子を確かめることが出発点です。

Q5. きょうだいも検査を受けたほうがよいですか?

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、きょうだいが同じ変化を2つもっているか(発症するか)を、その場所だけ調べられます。CLN2病のように治療のある型では、早く見つかることに意味があります。一方、症状のない未成年のきょうだいが保因者かどうかを調べることは、日本医学会のガイドラインで、原則として本人が成人して自分で判断できるまで延期すべきとされています。

Q6. 検査で何も見つからなければ、NCLではないということですか?

そうとは言い切れません。この検査は14の遺伝子の配列を調べるもので、調べていない遺伝子の変化や、この方法では見つけにくい種類の変化は見つかりません。症状や画像・視力の検査などとあわせて、主治医と次の検査を考えます。全エクソーム検査など、より広い検査が選択肢になることがあります。

Q7. 家族にNCLの人がいると、結婚に差し支えますか?

病気のご家族がいることは、結婚の妨げになる理由にはなりません。ほとんどの型は潜性遺伝なので、ご自身が保因者でも、パートナーが同じ遺伝子の保因者でなければ、お子さんが発症することは通常ありません。ご自身とパートナーが保因者かどうかは検査でわかり、そのうえで出生前診断などの選択肢を考えることもできます。

Q8. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?

はい。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。なお、当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。PGT-Mの準備には、ご本人の結果だけでなく、ご家族の検体が必要になることがふつうです。

🧬 一度の検査で、お子さんとご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。神経セロイドリポフスチン症の型がわかれば、治療の相談だけでなく、きょうだいの検査や、次の妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Malik K, Santucci K, Sremba L, et al. Neuronal Ceroid Lipofuscinoses Overview. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2001 (Updated 2025 May 29). [NCBI Bookshelf NBK1428]
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  • [3] Schulz A, Schwering C, Wibbeler E, et al. Real-world clinical outcomes of patients with CLN2 disease treated with cerliponase alfa. Front Neurol. 2025;16:1516026. [DOI: 10.3389/fneur.2025.1516026]
  • [4] Smith KR, Damiano J, Franceschetti S, et al. Strikingly different clinicopathological phenotypes determined by progranulin-mutation dosage. Am J Hum Genet. 2012;90(6):1102-1107. [DOI: 10.1016/j.ajhg.2012.04.021]
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  • [6] Arsov T, Smith KR, Damiano J, et al. Kufs disease, the major adult form of neuronal ceroid lipofuscinosis, caused by mutations in CLN6. Am J Hum Genet. 2011;88(5):566-573. [DOI: 10.1016/j.ajhg.2011.04.004](PMID: 21549341)
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  • [11] ESHRE PGT Consortium Steering Committee, Carvalho F, Coonen E, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the organisation of PGT. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa021. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa021]
  • [12] Nakasato K, Yamamoto BA, Kato K. Evaluating standards for 'serious' disease for preimplantation genetic testing: a multi-case study on regulatory frameworks in Japan, the UK, and Western Australia. Hum Genomics. 2022;16:16. [DOI: 10.1186/s40246-022-00390-3]
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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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