この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

ツェルウェガー症候群(Zellweger症候群)は、細胞の中のペルオキシソームという小さな器官がうまくつくれなくなる、常染色体潜性(劣性)遺伝の病気です。原因はPEX遺伝子のどれか1つにある変化で、このページの検査では、そのうち12種類をまとめて調べます。原因がわかれば、お子さんの病名がはっきりするだけでなく、次のお子さんで同じことが起こる可能性と、次の妊娠でどう備えられるかを、具体的に考えられるようになります。病気のあらまし・遺伝する確率と、この遺伝子検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
ツェルウェガー症候群(ペルオキシソーム形成異常症)の原因となるPEX遺伝子12種類に、病気の原因となる変化があるかを一度に調べます。重い型だけでなく、新生児副腎白質ジストロフィー・乳児レフサム病と呼ばれてきた中間から軽い型も、同じPEX遺伝子群の変化によって起こります。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
血液の検査でペルオキシソームの病気が疑われた方、生まれてすぐからの筋緊張低下・けいれん・肝臓の病気の原因がわからない方、お子さんがこの病気と診断された(または亡くなった)ご両親で、次の妊娠に備えたい方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因が確定すれば、ご両親はともに保因者と考えられ、次のお子さんで同じ病気になる確率は4分の1です。ご家族の検査や、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. ツェルウェガー症候群(Zellweger症候群)とは
ツェルウェガー症候群は、PEX遺伝子の変化によってペルオキシソームがうまくつくれず、全身の脂質の分解や合成がうまくいかなくなる、常染色体潜性(劣性)遺伝の病気です[1]。医学的には「ペルオキシソーム形成異常症」の一つで、重い型から軽い型までをひと続きのものとして「ツェルウェガー症候群スペクトラム(Zellweger spectrum disorder:ZSD)」と呼びます。日本語では、ツェルウェーガー症候群・ツェルベーガー症候群と書かれることもあります。
ペルオキシソームとは:細胞の中で脂肪を分解し、大事な脂質をつくる小さな器官
ペルオキシソームは、ほとんどすべての細胞の中にある、膜に包まれた小さな器官です。ミトコンドリアでは分解できないとても長い脂肪酸を分解したり、脳や神経に欠かせない脂質をつくったりしています。ツェルウェガー症候群では、この働きがまとめて弱くなるため、血液や尿の検査で次のような変化が見つかります[1]。
🔬 ペルオキシソームの主な働きと、ツェルウェガー症候群で見つかる変化
※検査項目と新生児での注意点はGeneReviews[1]による。
重い型から大人まで:ツェルウェガー症候群スペクトラム(乳児レフサム病・新生児副腎白質ジストロフィー・ハイムラー症候群)
ツェルウェガー症候群、新生児副腎白質ジストロフィー、乳児レフサム病は、以前は別の病気として名前が付けられていましたが、今は同じ原因によるひと続きの病気(スペクトラム)と考えられています。GeneReviewsは、これらを「重い型・中間の型・軽い型」と呼ぶことを勧めています[1]。
いちばん軽い側には、難聴・歯のエナメル質の形成不全・爪の異常を特徴とし、網膜の色素の変化がときに遅れて出る「ハイムラー症候群」も含まれます。ハイムラー症候群は、PEX1またはPEX6の、働きが少し弱まる程度の変化で起こる軽いペルオキシソーム形成異常症であることが示されています[4]。また、難聴と網膜の病気(網膜色素変性に似た変化)があり、知的な発達は正常で、アッシャー症候群の検査が陰性だった子どもに、PEX1の変化による軽い型が見つかった報告もあります[5]。
💡 名前の似た病気に注意:新生児副腎白質ジストロフィーと副腎白質ジストロフィー(ALD)
「新生児副腎白質ジストロフィー」はツェルウェガー症候群スペクトラムの一つで、PEX遺伝子による常染色体潜性遺伝の病気です。これに対し、よく知られた副腎白質ジストロフィー(ALD)は、X染色体上のABCD1遺伝子による別の病気です。名前は似ていますが、原因の遺伝子も遺伝のしかたも違い、調べる検査も変わります。
主な症状と見通し(寿命)
症状の重さには大きな幅があり、重い型と軽い型では見通しがまったく違います。小児慢性特定疾病情報センターの解説では、重い型(ツェルウェガー症候群)は生まれたときからの強い筋緊張低下、特徴的な顔つき、目の異常、肝臓の腫れ、腎臓の小さな嚢胞、関節の点状の石灰化があり、哺乳の難しさ、重い発達の遅れ、けいれんを伴うとされています。軽い型(乳児レフサム病)では、網膜色素変性・難聴・肝臓の腫れ・発達の遅れなどが見られます。
GeneReviewsは、重い型のお子さんはふつう1歳になる前に亡くなるとしています。一方、中間から軽い型では、多くのお子さんが歩いたり話したりできるようになり、知的な発達が正常な方もいます。1歳を過ぎて病状が進まない経過のお子さんでは、77%が学齢期まで達するとされています[1]。軽い型の方は、病気が進まないか、長く安定した状態のまま大人になることもあります[3]。
日本の情報では、難病情報センターが、国内の症例の生存期間をツェルウェガー症候群で2〜14か月、新生児型副腎白質ジストロフィーで20〜33か月とし、近年は医療の進歩で長くなる傾向にあること、乳児型レフサム病では大人まで生きている方や肝移植を受けた方もいることを示しています(2026年10月時点で確認)。数字は限られた症例にもとづくもので、お一人おひとりの見通しは、病型・合併症・遺伝子の変化の種類によって変わります。
日本の制度:指定難病234・小児慢性特定疾病(2026年10月時点)
ツェルウェガー症候群スペクトラムは、指定難病234「ペルオキシソーム病(副腎白質ジストロフィーを除く)」に含まれます。難病情報センターのページでは、ツェルウェガー症候群・新生児型副腎白質ジストロフィー・乳児型レフサム病がこの中に挙げられ、国内での診断例は年間2〜3例とされています。小児慢性特定疾病でも「ペルオキシソーム形成異常症」が対象疾病に載っています(いずれも2026年10月時点で確認)。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。
病気のしくみや病型をさらに詳しく知りたい方は、ペルオキシソーム形成異常症(ツェルウェガー症候群スペクトラム)の解説もご覧ください。このページでは、遺伝子検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。
2. ツェルウェガー症候群の原因と遺伝する確率(常染色体潜性遺伝)
ツェルウェガー症候群は常染色体潜性遺伝の病気で、ご両親がともに同じPEX遺伝子に病気の原因となる変化を1つずつもつ保因者のとき(ご両親の変化は同じ種類とは限りません)、お子さんがこの病気になる確率は、お子さん1人ごとに4分の1です[1]。保因者のご両親は、ふつう症状がありません。
原因はPEX遺伝子:どの遺伝子の変化でも同じスペクトラムになる
ペルオキシソームをつくるには、ペルオキシンと呼ばれる多くのたんぱく質が必要で、その設計図がPEX遺伝子です。GeneReviewsでは、ツェルウェガー症候群スペクトラムの原因として13のPEX遺伝子が挙げられ、PEX1が60.5%と最も多く、次いでPEX6が14.5%、PEX12が7.6%です[1]。どの遺伝子に変化があっても症状は似ていて、症状や血液の検査からどの遺伝子が原因かを当てることは難しいため、まとめて調べる遺伝子パネル検査が役に立ちます。
この病気の研究には、日本の研究グループが大きく関わってきました。1992年には日本のグループが、ツェルウェガー症候群の患者さんの細胞で、ペルオキシソームをつくる因子(PAF-1)の遺伝子に変化があることを突き止め、ご両親がそれぞれ保因者であったことを報告しています[9]。
遺伝子の変化の種類によって、残る働きの程度が違い、それが症状の重さに関わります。たとえばPEX1では、p.Ile700TyrfsTer42という変化を2つもつと重い型に、p.Gly843Aspという変化を2つもつと軽い型(ときに中間の型)になりやすいとされています[1]。
次のお子さんで同じ病気になる確率は4分の1
常染色体潜性(劣性)遺伝では、ご両親がともに保因者のとき、お子さん1人ごとの確率は次のとおりです[1]。上のお子さんがどうだったかで、次のお子さんの確率は変わりません。
病気になる4分の1(25%)
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保因者になる2分の1(50%)・ふつう症状なし
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変化を受け継がない4分の1(25%)
すでに生まれていて、この病気ではないとわかっているごきょうだいでは、「病気になる」可能性が除かれるため、保因者である確率は3分の2になります(上の4分の1・2分の1・4分の1から計算した値です)。血液の生化学検査では保因者の値は正常なので、保因者かどうかは遺伝子検査で調べます[1]。
血のつながりのある結婚(いとこ婚)と潜性遺伝の病気
潜性遺伝の病気は、通常、同じ遺伝子について、お父さんとお母さんから病気の原因となる変化を1つずつ受け継いだときに起こります。ご両親がもつ変化は、同じ種類の場合も、異なる種類の場合もあります。血のつながりのあるご夫婦は、共通の祖先から同じ変化を受け継いでいる可能性が少し高くなります。米国の遺伝カウンセラーの学会の推奨では、いとこ同士のご夫婦のお子さんで、重い先天性の病気が起こるリスクは、一般の場合に比べて1.7〜2.8%上乗せされると見積もられています[10]。これはツェルウェガー症候群に限らない、さまざまな病気をまとめた数字です。
いとこ婚を否定するものではありません。どなたでも、いくつかの潜性遺伝の病気の保因者であることは珍しくありません。ご家族にこの病気の方がいて結婚や妊娠を考えるときは、ご自身とパートナーが保因者かどうかを知ることで、確率を具体的に考えられるようになります。
3. ツェルウェガー症候群の遺伝子検査は、どんな人が受けるとよいか
血液の検査でペルオキシソームの病気が疑われたものの原因遺伝子がわかっていない方、原因のわからない症状が続いている方、そして次の妊娠に備えたいご両親に向く検査です。症状や血液の検査だけで回り道を続けるより、1回の検査で原因にたどりつける可能性があります。
- ●極長鎖脂肪酸の上昇やプラスマローゲンの低下など、ペルオキシソームの働きの異常を指摘された方
- ●生まれてすぐからの強い筋緊張低下(フロッピーインファント)、哺乳の難しさ、けいれん、肝臓の病気などの原因がわからない方
- ●難聴と網膜の病気があり、アッシャー症候群などの検査で原因が見つからなかった方(軽い型の可能性)
- ●お子さんがツェルウェガー症候群と診断された、または疑われたまま亡くなり、原因と次のお子さんの確率を知りたいご両親
- ●ご家族にこの病気の方がいて、ご自身が保因者かを知りたい方
血液の検査で疑われても、原因の遺伝子まではわからない
極長鎖脂肪酸などの血液の検査は、ペルオキシソームの病気を見つける大切な手がかりです。ただし、どのPEX遺伝子が原因かまではわかりません。また、軽い型では血液の検査が正常か、わずかな変化しか出ないことがあり、GeneReviewsは診断を確定するには遺伝子検査が必要だとしています[1]。次のお子さんの出生前診断やご家族の検査を計画するには、原因の遺伝子の変化そのものがわかっていることが出発点になります。
新生児期の検査との関係も知っておくと安心です。副腎白質ジストロフィー(ALD)の新生児スクリーニングでは、乾燥ろ紙血のC26:0-リゾホスファチジルコリンという指標を測ります。米国カリフォルニア州の報告では、この指標で陽性となりALDではなかった赤ちゃんのうち7人が、PEX遺伝子の変化によるツェルウェガー症候群スペクトラムと診断されました[6]。日本でもALDの新生児スクリーニングが2025年までに21県で行われていると報告されています(岐阜大学、2026年2月発表)。一方で、この指標では軽い型を見つけられないことがあるとされています[1]。スクリーニングで再検査や精密検査を勧められた場合も、診断を確かめる段階で遺伝子検査が役に立ちます。
この検査より別の検査が向いている場合(ペルオキシソーム病パネルとの選び分け)
病名がツェルウェガー症候群スペクトラムにほぼしぼれているなら、このパネルが向いています。ペルオキシソームの病気の中でもどれか決められないときや、もっと広く原因を探したいときは、次の検査が向いていることがあります。
🔍 症状・状況に合わせた検査の選び方
※遺伝子数は当院の各検査ページの記載による。どの検査が合うかは、症状・血液の検査の結果・ご家族の情報で変わります。
4. 調べる12の遺伝子と、それぞれでわかる病気
この検査では、ツェルウェガー症候群スペクトラムの原因となるPEX遺伝子12種類を、まとめて調べます。どの遺伝子でも、遺伝のしかたは常染色体潜性遺伝です。
🧬 対象遺伝子(12遺伝子)
※対象遺伝子は当院の検査内容による。病気・遺伝のしかた・割合はGeneReviews[1]、ハイムラー症候群は文献[4]、PEX5による点状軟骨異形成症5型は文献[1][8]による。PEX6には、1つの変化だけでも病気に関わると報告された例外的な変化があります[1]。
この検査に入っていない遺伝子もあります。GeneReviewsが13番目の原因として挙げるPEX11B(全体の0.1%)や、近位肢節型点状軟骨異形成症1型の原因であるPEX7遺伝子は、このパネルでは調べません。これらも調べたい場合は、ペルオキシソーム病の遺伝子パネル検査を選びます。
5. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、12のPEX遺伝子の、遺伝子の文字(塩基)の小さな変化と、遺伝子の一部が欠けたり重なったりしている変化(欠失・重複)です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
わかること・わからないこと
- ●わかること:たんぱく質の情報が書かれた部分と、その切れ目の近くにある、塩基の置き換わりや小さな挿入・欠失。2つ以上続くエクソン(遺伝子の区画)や遺伝子まるごとの欠失・重複(全血の検体の場合。頬の内側の粘膜では遺伝子まるごとの欠失・重複)
- ●わかりにくいこと:エクソン1つだけの欠失・重複は、見つかることもありますが、ふだんの検査では確実には見つけられません。
- ●わからないこと:染色体の一部が入れ替わる変化(転座・逆位)、繰り返し配列が長くなる変化、遺伝子の働きを調節する部分や、遺伝子の区画から20塩基以上離れた奥の部分の変化、体の一部の細胞だけにある変化(モザイク)
- ●調べていない遺伝子:PEX11B・PEX7など、このパネルに入っていない遺伝子の変化
よく似た配列(偽遺伝子など)が邪魔をして、読み取りにくい場所が残ることもあります。読み取りの質が十分でない場所は、別の方法(サンガー法)で確かめます。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。この検査では、調べる部分の99%以上について、同じ場所を20回以上読み取ります。これは読み取りの深さを示す数値で、病気の原因となる変化を99%以上見つけられるという意味ではありません。
陰性・VUSのとき
原因となる変化が見つからなくても、ツェルウェガー症候群スペクトラムを完全に否定することはできません。この検査で見つけられない種類の変化や、調べていない遺伝子が原因のこともあります。症状と血液の検査の結果を合わせて、ほかのパネルや全エクソーム検査を考えます。
また、病気の原因かどうかまだ判断できない変化(VUS:意義がまだわからない変化)が見つかることがあります。VUSは、それだけで診断や、ご家族の発症・保因者の判定、出生前診断の判断根拠にはしません。ただし、その変化の意味を確かめるために、ご家族で同じ変化があるかを調べることがあります。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。当院での扱いはVUS(意義不明変異)の臨床的取り扱いと二次的所見の開示方針をご覧ください。なお、オプションで「VUSを報告に含めない」選び方もできます(無料)。
6. 病的変異が見つかったら、次にできること
原因の遺伝子の変化がわかると、お子さんの病名と見張るべき合併症が決まり、ご両親・ごきょうだいの検査、そして次の妊娠での備えまで、具体的に考えられるようになります。立場ごとに、できることを整理します。
お子さん(ご本人):診断の確定と、合併症への備え
ツェルウェガー症候群スペクトラムには、今のところ病気そのものを治す治療はなく、症状と合併症に合わせたケアが中心です。GeneReviewsは、聴力と視力の年1回の検査、肝臓の働きと血液の固まりやすさの年1回の確認、1歳までに副腎の働き(ACTH・コルチゾール)を調べてその後は毎年確かめること、歯が生えたら6か月ごとの歯科の診察などを挙げています[1]。副腎の働きが落ちていることは多く、見落とされやすいとして、すべての方で調べることが勧められています[3]。
ケアの例としては、補聴器・眼鏡・白内障の手術、ビタミンKなど脂溶性ビタミンの補充、けいれんの薬、副腎の働きを補う薬、骨が弱いときのビタミンD、歯のエナメル質の治療、栄養のための胃ろう、早期からの療育などがあります[1]。治療の方針は、お子さんの主治医や専門の医療機関で決めます(当院では治療は行っていません)。
胆汁酸の薬(コール酸)は、米国では2015年に、ツェルウェガー症候群スペクトラムを含むペルオキシソーム病の補助療法として承認されています。ただし、効果を確かめた研究は限られており、効果があると結論づけるには根拠が足りないとする総説もあります[2][3]。日本で承認されているコール酸の薬の効能は「先天性胆汁酸代謝異常症」で、ツェルウェガー症候群スペクトラムは効能に含まれていません(PMDAの審査資料で確認、2026年10月時点)。
軽い型の方では、生体肝移植を受けた3人の報告があり、1人は移植のあとに亡くなりましたが、2人では血液の異常な物質が正常になり、聴力・視力が安定し、発達がよくなったとされています[7]。ごく少ない人数の報告であり、どの方にも当てはまる治療ではありません。
ご両親:保因者の確認と、次のお子さんのための選択肢
お子さんで2つの原因の変化が見つかれば、ご両親それぞれがどちらの変化をもっているかを、その場所だけピンポイントで調べて確かめられます。ご両親が保因者と確かめられていると、次の妊娠では、次のような選択肢を知ったうえで選べます。
- ●自然に妊娠して、出生前診断を受ける:ご家族の変化がわかっていれば、妊娠中に赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます[1]。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。
- ●着床前の検査(PGT-M):日本では日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て行われ、海外で受ける方もいます(下の項目)。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。
- ●検査を受けずに妊娠・出産する:これも、そのまま選べる選択肢です。
出生前診断を受けるかどうか、受けたあとにどうするかは、ご夫婦が決めることです。当院の羊水検査・絨毛検査は院内で行っており(2025年6月から産婦人科を併設)、妊娠を考えている段階からご相談いただけます。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断します。
ごきょうだい・ご親族:将来、結婚や妊娠を考えるときに
この病気ではないごきょうだいは、3分の2の確率で保因者です。保因者であっても、ふつう症状はありません。将来、結婚や妊娠を考えるときに、ご自身が保因者か、パートナーが同じ遺伝子の保因者かを知っておくと、お子さんへの確率を具体的に考えられます。ご家族で原因の変化がわかっていれば、ごきょうだいはその変化だけを調べられます。
パートナーの方は、拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)や男性版714遺伝子で調べられます。どちらも、このページの12のPEX遺伝子をすべて含んでいます(各ページの遺伝子一覧で確認)。妊娠中の方は、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(女性787遺伝子・男性714遺伝子。単独では受けられません)もあります。結婚前の検査の全体像は遺伝子ブライダルチェックにまとめています。なお、ツェルウェガー症候群の原因遺伝子は、当院のNIPT(ダイヤモンドプラン・インペリアルプラン)の対象には入っていません。
海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます
PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。海外でPGT-Mを受けたいというお問い合わせが多く、当院では、海外で使える英語の検査結果をお渡しできます(英語の原本が必要な方は、検査の時にお申し出ください)。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。
欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の指針では、PGT-Mの準備として、①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、②どの遺伝子のどの変化かが書かれた元の報告書、③ご家族の検体が求められます[11]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、変化を直接読むだけでは判定を誤るおそれがあるため、変化の両側にある目印(多型マーカー)で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどるハプロタイプ解析を組み合わせます。潜性遺伝の病気では、少なくとも2つの変化をもつ患者さん(病気のお子さん)のDNAに加えて、保因者と保因者でない方を基準にすることが目安とされています[11]。
ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。血縁者の検体が得られない場合に、ご夫婦の目印や治療周期の受精卵などを使う方法も指針には挙げられていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります[11]。海外でPGT-Mを考えている方は、検査に協力していただけるご家族がいるかを、早い段階から考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。
臨床遺伝専門医としての判断も添えます。VUSは病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。潜性遺伝の病気では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。また、海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もって確認してください。
⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です
受精卵のごく一部の細胞を調べる検査なので、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[12]。
当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。絨毛検査・羊水検査は院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。
日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、症例ごとに学会の審査を受け、実施施設の倫理委員会の承認を経て行われます。指針の「重篤」は、原則として成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、有効な治療法がないか、あっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。
どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。英国では公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気(2026年9月17日更新の一覧で2,067)が載っていて、一覧にない病気は施設を通じて申請できます。米国にはPGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[13]。米国生殖医学会(ASRM)の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気に対するPGT-Mも倫理的に許容されうるとする意見を出しています[14]。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。くわしくは遺伝性疾患をお持ちで海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。
お子さんのDNA・検体を残しておく意味
ここからは、臨床遺伝専門医としての考えです。重い型のお子さんは、残念ながら短い期間で亡くなることがあります。上で書いたように、潜性遺伝の病気でPGT-Mの準備をするには、病気のお子さんのDNAがいちばん大切な手がかりになります。出生前診断でも、お子さんで原因が確定していることが出発点です。原因がまだわかっていない段階では、お子さんの検体やDNAを残しておけるかを、主治医とあらかじめ相談しておくことを勧めます。検体が残っていない場合でも、ご両親それぞれの保因者検査で手がかりが得られることがあります。
当院でのその後
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。結果の意味、ご家族への影響、次の妊娠でできることを、一緒に考えます(遺伝カウンセリング料は30分22,000円・税込、出生前診断に関するものは30分33,000円・税込)。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたでも解説しています。
7. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜・血液のいずれでも、オンライン診療で受けられます。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取お支払い後にキット発送
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
💴 費用・日数・検体
※検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、ご自身で勝手に検体を採取しないでください。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
8. 院長コラム:原因がわかることは、次の選択の出発点
🩺 院長コラム【原因がわかることは、次の選択の出発点】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
ツェルウェガー症候群のような潜性遺伝の病気では、保因者のご両親にはふつう症状がなく、お子さんが生まれるまで誰も気づけません。保因者であることは珍しいことではなく、遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度原因がわかれば、その情報は、次の妊娠の計画にも、ごきょうだいが将来結婚や出産を考えるときにも、ずっと使えます。遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。出生前診断を受ける、受けない、どの選択をされても、その選択を尊重します。知ったうえで次の妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。
よくある質問(FAQ)
Q1. ツェルウェガー症候群は遺伝しますか?次の子がなる確率は?
常染色体潜性(劣性)遺伝の病気です。ご両親がともに同じPEX遺伝子に病気の原因となる変化をもつ保因者のとき(ご両親の変化は同じ種類とは限りません)、お子さん1人ごとに、病気になる確率は4分の1、保因者になる確率は2分の1、変化を受け継がない確率は4分の1です。上のお子さんがどうだったかで、次のお子さんの確率は変わりません。
Q2. ツェルウェガー症候群の寿命は?
重い型と軽い型で大きく違います。GeneReviewsでは、重い型のお子さんはふつう1歳になる前に亡くなるとされています。難病情報センターは、国内の症例の生存期間をツェルウェガー症候群で2〜14か月、新生児型副腎白質ジストロフィーで20〜33か月としています。軽い型では、大人まで生きている方もいます。
Q3. 新生児副腎白質ジストロフィーと副腎白質ジストロフィー(ALD)は同じ病気ですか?
違う病気です。新生児副腎白質ジストロフィーはツェルウェガー症候群スペクトラムの一つで、PEX遺伝子による常染色体潜性遺伝の病気です。副腎白質ジストロフィー(ALD)は、X染色体上のABCD1遺伝子による病気で、原因も遺伝のしかたも違います。
Q4. 乳児レフサム病とは何ですか?
乳児レフサム病は、ツェルウェガー症候群スペクトラムのうち軽い側の型に付けられてきた名前で、原因はツェルウェガー症候群と同じPEX遺伝子です。網膜色素変性・難聴・肝臓の腫れ・発達の遅れなどがみられ、大人まで生きている方もいます。今は、重い型・中間の型・軽い型と呼ぶことが勧められています。
Q5. 上の子を亡くしました。今からでも原因を調べられますか?
お子さんの検体やDNAが残っていれば、それを使えるかをまずご相談ください。残っていない場合でも、ご両親それぞれの保因者検査で、同じPEX遺伝子に変化があるかを調べることで手がかりが得られることがあります。当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子)は、このページの12のPEX遺伝子をすべて含んでいます。
Q6. きょうだいが将来結婚するとき、何を知っておけばよいですか?
この病気ではないごきょうだいが保因者である確率は3分の2です。保因者でもふつう症状はありません。お子さんへの確率は、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかで大きく変わります。結婚や妊娠を考えるときに、ご自身とパートナーの保因者検査を受けておくと、確率を具体的に考えられます。
Q7. ペルオキシソーム病パネルとどちらを選べばよいですか?
ツェルウェガー症候群スペクトラムが強く疑われるなら、このページのパネル(12遺伝子)が向いています。副腎白質ジストロフィーや点状軟骨異形成症など、ほかのペルオキシソームの病気も考えたいときは、この12遺伝子をすべて含むペルオキシソーム病パネル(21遺伝子)を選びます。
Q8. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?
はい。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。ただし、潜性遺伝の病気でPGT-Mの準備をするには、ふつう病気のお子さんのDNAなどご家族の検体も必要です。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。
🧬 原因を知って、次の妊娠とご家族の計画に
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ツェルウェガー症候群の原因がわかれば、お子さんの合併症への備えだけでなく、ご両親・ごきょうだいの検査や、次の妊娠でどう備えるかを考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
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