(更新日:2026/10/27)
この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)
ファミリーセーフティ プラスは、当院でNIPTを受ける妊婦さんとパートナーが、NIPTと同じ日に、ご夫婦で受ける保因者検査 です。NIPTの一種ではありません。NIPTが赤ちゃん由来のDNAを調べるのに対し、この検査はご夫婦それぞれの遺伝子(女性787遺伝子・男性714遺伝子)を調べ、ご夫婦が同じ病気の保因者かどうか を確かめます。NIPTを受ける方のための検査なので、単独では受けられません。
⏱️ 30秒でわかる要約
👪 Q. ファミリーセーフティ プラスとは?
当院でNIPTを受ける方が、NIPTと同じ日の採血で、ご夫婦で受ける拡大版の保因者検査 です。女性は787遺伝子、男性は714遺伝子を調べます。女性787遺伝子には、米国医学遺伝学会(ACMG)がすべての妊娠中・妊娠を考えている方に勧める113遺伝子がすべて入っています。
🧬 Q. NIPTだけではわからないの?
当院のNIPTで調べる単一遺伝子は、赤ちゃんに新しく起きた変化(de novo変異)です。ご両親から受け継ぐ潜性(劣性)の病気、たとえば脊髄性筋萎縮症(SMA)はどのプランでも調べられません 。日本人の福山型に多い約3kbのSVA挿入は、一般的な遺伝子検査(NGS)では見つけにくい変化ですが、当院の検査では、この領域が十分に読み取れており、大きな挿入を見つける解析も行っているため、理論上は検出できると考えられます(検査会社に確認)。
💴 Q. 費用と結果までの期間は?
ご夫婦2名で330,000円(税込) です。遺伝カウンセリング料はNIPTの料金に含まれます。結果は検体到着後3〜4週間です。ご夫婦とも同じ病気の保因者だった場合、絨毛検査・羊水検査で赤ちゃんを調べることも院内で受けられます。
お子様の未来を守る、一生に一度の検査 ─ 拡大版保因者スクリーニング
お子様を授かるということは、ご夫婦お二人の遺伝情報が、新しい命のなかで初めて一つに重なるということでもあります。お父様が知らずに持っている変化と、お母様が知らずに持っている変化が、偶然同じ遺伝子に重なったとき、健康なご両親から、お子様にだけ病気が現れることがあります。だからこそ私たちは、保因者検査を単なる「検査」ではなく、ご夫婦のこれからの家族計画を一緒に考えるための情報だと考えています。
ファミリーセーフティ プラスは、ミネルバクリニックでNIPT(新型出生前診断) を受けるご夫婦のための拡大版保因者スクリーニングです。女性787遺伝子・男性714遺伝子を調べます。女性787遺伝子には、米国医学遺伝学会(ACMG)が2021年に「すべての妊娠中・妊娠を考えている方に提示すべき」としたTier 3(113遺伝子) がすべて含まれています[1] 。
この検査の本質は、項目数の多さでも、価格でもありません。ご夫婦の遺伝子は生涯変わらないため、結果は2人目・3人目のお子様を考えるときにもそのまま使えます 。妊娠のたびに受け直す検査ではない、という意味で「一生に一度の検査」と呼んでいます。
💡 ご案内:受けられる方
ファミリーセーフティ プラスは、当院でNIPTを受ける方のための保因者検査 です。NIPTと同じ日に、ご夫婦それぞれから採血します。ファミリーセーフティ プラスだけを単独で受けることはできません。NIPTを受けない方や妊娠前の方は、通常の保因者検査(女性787遺伝子 ・男性714遺伝子 )としてお受けいただけます。
ファミリーセーフティ プラスとは ─ ご夫婦の血液から、両親自身の遺伝子を調べる検査
ファミリーセーフティ プラスは、ご夫婦それぞれの血液から、ご両親自身の遺伝子を調べる「保因者検査(キャリアスクリーニング)」です。NIPTが妊婦さんの血液に混ざる赤ちゃん由来のDNAを調べる検査であるのに対し、この検査はご両親お二人の遺伝子を直接調べる検査 です。
常染色体潜性(劣性)遺伝 の病気は、ご両親が症状のない「保因者」であっても、お子様に現れることがあります。ご夫婦が同じ遺伝子の保因者だった場合、お子様が発症する確率は妊娠のたびに4分の1です。X連鎖性 の病気では、お母様が保因者の場合、男の子のお子様一人ひとりについて2分の1の確率で受け継がれます。
保因者であっても、ふだんの生活では症状がないため、検査を受けて初めてわかります。「健康なご両親から、重い病気のあるお子様が生まれる」しくみを、妊娠中の早い時期に把握できる のが、ファミリーセーフティ プラスです。保因者のしくみは劣性遺伝(潜性遺伝)とは?保因者の仕組みと子どもへ遺伝する確率 でも解説しています。
「うちは家族歴がないから大丈夫」とは言えない理由
近年、あるYouTuberのご夫婦が、極めてまれな遺伝性の病気をもったお子様の闘病とご逝去を公表され、保因者検査の大切さを発信されたことが大きな反響を呼びました。ご夫婦はお子様の闘病中に、ご自身たち二人ともが同じ潜性遺伝の変化の保因者であることを知られたといいます。「もし妊娠する前に、自分たちが同じ遺伝子の保因者だと知ることができていたら」という言葉から、私たち医療者も多くのことを教えていただきました。
常染色体潜性遺伝の病気の多くは、家族歴のないご夫婦のお子様に、突然現れます 。保因者には症状が出ないため、何世代にもわたって家系の中で気づかれずに受け継がれているからです。ご夫婦の両方がたまたま同じ遺伝子の保因者だったときに、初めてお子様に病気として現れます。「家族歴がない」ことは「リスクがない」ことと同じではありません 。
NIPTでは調べられない、でも大切な病気
当院のNIPTでも、ダイヤモンドプラン(56遺伝子)とインペリアルプラン(最大155遺伝子・202疾患)では単一遺伝子の病気を調べます。ただし対象は、赤ちゃんに新しく起きた変化(de novo変異) です。ご両親から受け継ぐ潜性の病気を調べる検査ではありません。たとえば脊髄性筋萎縮症(SMA)は、当院のNIPTのどのプランでも調べられません。NIPTで調べる単一遺伝子については単一遺伝子疾患とNIPT をご覧ください。
ファミリーセーフティ プラスは、ご夫婦の血液からご両親自身の遺伝子を直接調べる検査 です。一つの塩基が入れ替わる変化だけでなく、次のような、母体血に混ざるわずかな赤ちゃんのDNAからは読み取りにくいタイプの変化も対象に含まれます。
保因者検査が対象にしている、4つのタイプの変化
① エクソン単位の大きな欠失・重複 遺伝子の一部が大きく欠けたり、重なったりする変化です。脊髄性筋萎縮症(SMA) はSMN1遺伝子の欠失が主な原因で、デュシェンヌ型筋ジストロフィー も大きな欠失・重複が多い病気です。
② リピート伸長 DNAの繰り返し配列が異常に長く伸びる変化です。脆弱X症候群 (FMR1遺伝子のCGGリピート)やフリードライヒ運動失調症 (GAAリピート)が代表例です。
③ 遺伝子の逆位(インバージョン) 遺伝子の中の長い配列が逆向きにつながる変化です。血友病A では、F8遺伝子のイントロン22の逆位が重症型の原因として最も多い変化の一つです[7] 。
④ よく似た「偽遺伝子」と区別が必要な遺伝子 すぐ近くによく似た配列(偽遺伝子)があり、正しく区別する解析が必要な遺伝子です。ゴーシェ病 (GBA)や先天性副腎皮質過形成症(CYP21A2 )が該当します。
SMAは、7万2千件を超える検体を調べた米国の検査室の報告で、保因者の頻度が全体で約54人に1人、アジア系の方で約59人に1人でした[4] 。決してまれな話ではありません。
代表的な病気と、当院のNIPTで調べられるか
📊 保因者検査で調べる代表的な病気
※保因者の頻度は、調べた集団・地域によって違います。表の数字は出典の対象集団での値です。
日本人に多い福山型先天性筋ジストロフィーとFKTN遺伝子
福山型先天性筋ジストロフィー は、日本人に多い常染色体潜性の筋ジストロフィーです。原因の多くは、FKTN遺伝子 の3’非翻訳領域に約3kbのレトロトランスポゾン(SVA)が入り込んだ、日本人に共通する「創始者変異」です。日本各地の調査で、この変化の保因者は約188人に1人 と報告されています[5] 。
日本人の福山型に多い約3kbのSVA挿入は、一般的な遺伝子検査(NGS)では見つけにくい変化ですが、当院の検査では、この領域が十分に読み取れており、大きな挿入を見つける解析も行っているため、理論上は検出できると考えられます(検査会社に確認)。FKTN遺伝子は女性787遺伝子・男性714遺伝子の両方に入っています。海外の検査をそのまま日本人に使うときは、日本人に多い病気がきちんと拾えるかを確かめることが大切だと考えています。
脆弱X症候群と卵巣機能 ─ 原因の分からない卵巣機能低下がある方へ
脆弱X症候群は、X染色体にあるFMR1遺伝子 の中で、CGGという3つの塩基の繰り返しが異常に長く伸びることで起こる病気で、遺伝性の知的障害の原因として知られています。繰り返しの回数が55〜200回の女性を「前変異(プレミューテーション)」の保因者と呼びます。
前変異(プレミューテーション)がもたらす、2つのリスク
1つ目は、ご自身の卵巣機能への影響です。 前変異の女性は、卵巣機能が早く低下することがあり、これを脆弱X関連原発性卵巣不全(FXPOI )と呼びます。前変異の保因者の約21%に早発卵巣不全がみられ、一般の女性の約1%と比べて高いと報告されています[3] 。
2つ目は、お子様への影響です。 前変異の繰り返し配列は不安定で、お母様からお子様に受け継がれるときに、さらに伸びることがあります。200回を超えると「完全変異(フルミューテーション)」となり、お子様が脆弱X症候群になります。伸びる危険は、お母様の繰り返しの回数が多いほど高くなります。
💡 米国産婦人科学会(ACOG)の考え方
米国産婦人科学会(ACOG)は、脆弱X症候群に関係する病気の家族歴がある方と、原因の分からない卵巣機能不全がある方や40歳未満でFSHが高い方 に、FMR1の前変異を調べることを勧めています[2] 。
AMHが低いと言われた方のうち、どの方がこれに当てはまるかは、年齢やほかの検査の結果もあわせて考える必要があります。低AMHと遺伝の関係は低AMHと早発卵巣不全(POI)|遺伝子検査でわかること で解説しています。
前変異とわかれば、ご自身の卵巣機能を考えた家族計画や、お子様への影響を調べる検査(今回の妊娠での絨毛検査・羊水検査、次の妊娠での着床前診断など)を、根拠をもって考えられるようになります。脆弱X症候群は、ファミリーセーフティ プラスの女性787遺伝子に含まれています。
米国の学会の推奨 ─ ACMGはTier 3(113遺伝子)を、すべての妊娠中・妊娠を考えている方に
米国医学遺伝学会(ACMG)は2021年、妊娠中と妊娠を考えている方の保因者検査について、遺伝子を4段階(Tier 1〜4)に分ける考え方を示しました[1] 。
📋 ACMG 2021の推奨のポイント
● Tier 1 :嚢胞性線維症とSMA。ACMGは、Tier 1やTier 2だけの検査は人種・民族によって公平にならないとして、勧めていません。
● Tier 3 :すべての妊娠中・妊娠を考えている方に提示すべき とされた段階で、常染色体潜性97遺伝子とX連鎖性16遺伝子からなります(あわせて113遺伝子)。
● パートナー :妊娠中・妊娠を考えている方と同時に検査する場合、常染色体潜性のTier 3を提示してよいとされています。
● X連鎖性の遺伝子 :XXの方(女性)に、表に挙げた遺伝子の検査を提示するとされています。
ファミリーセーフティ プラスの女性787遺伝子は、このTier 3の113遺伝子をすべて含み、さらに広い範囲の潜性の病気を調べる拡大版です。男性714遺伝子は、常染色体潜性の病気を中心に調べます(X連鎖性の病気は、男性ではご本人が発症する側になるため、保因者検査の対象から外れます)。ACMGの推奨のくわしい内容はキャリア(保因者)スクリーニング検査|米国の学会の推奨内容 で解説しています。
「一生に一度の検査」 ─ 妊娠のたびに受け直す必要がない
ファミリーセーフティ プラスの大きな特徴は、「ご夫婦の遺伝子は生涯変わらない」という当たり前の事実 に立っていることです。ご夫婦の遺伝情報は、年齢や生活習慣で変わるものではありません。
● 2人目・3人目のお子様を考えるときにも、同じ結果を使えます
● 次の妊娠でNIPTを受けるとき、保因者検査を受け直す必要はありません
● 保因者とわかっていれば、次の妊娠で必要な検査を早めに準備できます (絨毛検査・羊水検査、着床前診断の検討など)
これから複数のお子様を望まれるご夫婦にとって、ファミリーセーフティ プラスは長い家族計画の土台になる情報です。
検査の価値は「結果の読み解き」で決まる
ファミリーセーフティ プラスは、米国の3大遺伝子検査会社の一角※の検査室で解析します。米国の臨床検査の認証であるCLIA認証と、米国病理学会(CAP)の認定を受けた検査室です。
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
遺伝子検査の価値は、機械の性能だけでは決まりません。見つかった変化が病気の原因になるのか、病気とは関係のない個人差なのかを判断する作業を「アノテーション(解釈)」といい、この解釈の質が、ご家族に届く情報を左右します 。
「意義不明(VUS)」をどう読み解くか
世界の遺伝学者・臨床医は、米国国立衛生研究所(NIH)が運営するClinVar という公的データベースで、遺伝子の変化の意味を共有しています。変化は次の5段階で分類されます。
● Pathogenic (病的)
● Likely Pathogenic (病的の可能性が高い)
● VUS:Variant of Uncertain Significance (意義不明)
● Likely Benign (病的でない可能性が高い)
● Benign (病的でない)
保因者検査の報告書には、原則としてPathogenicとLikely Pathogenicの変化 が報告されます。健康なご夫婦が受ける検査なので、意味のはっきりしない情報で不必要な不安を与えないためです。ACMGも、VUS の報告は、保因者とわかった方のパートナーに限り、ご本人の同意を得て行うとしています[1] 。
だからこそ、ClinVarで「VUS」とされている変化でも、新しい機能解析の論文を読み込み、根拠をもって「Likely Pathogenic」と判断できるかどうかで、報告書に載るかどうかが変わります。ClinVarの分類をそのまま写すだけでは、大切な変化が報告書から漏れることがあるのです。
ABCD1遺伝子の「VUS→Likely Pathogenic」 ─ 当院の実例から
当院であった事例をご紹介します(特定されないよう、細部は変えています)。
あるご夫婦が、妊娠前に当院で拡大版保因者検査を受けられました。奥様の結果で、X染色体にあるABCD1遺伝子 に変化が見つかりました。ABCD1遺伝子は、主に男の子に重い進行性の神経の病気を起こす副腎白質ジストロフィー(ALD) の原因遺伝子です。
ところが、奥様の変化はClinVarでは「VUS(意義不明)」と分類されていました 。世界の遺伝学者たちが、データ不足で結論を出せていなかった変化です。
検査会社の解釈チームは、タンパク質の機能を調べた最新の論文を読み込み、この位置にこの変化があるとペルオキシソーム膜での輸送の働きが失われることを論文にもとづいて解析しました。そしてACMGの基準に照らしてLikely Pathogenicと判断する根拠を、報告書に明記していました。
もしClinVarのVUSの分類のまま扱われていたら、報告書には「該当所見なし」と書かれていたかもしれません。ご夫婦は、奥様がABCD1の病的な変化の保因者であることを知らないまま妊娠し、男の子のお子様の検査が必要だと気づかずに出産を迎えていたかもしれません。
このご夫婦が保因者検査を受けようと決めたきっかけは、奥様が先ほどのYouTuberのご夫妻のファンで、公表されたお話に心を動かされたこと でした。お一組のご夫妻の勇気ある発信が、別のご家族の決断につながったのです。
お話を伺ううちに、大切な家族歴が浮かび上がってきました。奥様の血縁の男の子が2歳のときに「筋ジストロフィー」と診断されて亡くなっていたこと 、そして祖母が60歳を過ぎてから「多発性硬化症」と診断され、進行する歩行障害を抱えていたこと です。当時はいずれもALDとは診断されておらず、ご夫婦は「家族歴がある」こと自体を認識されていませんでした。
妊娠が成立した後、変化が家系の中でどう受け継がれてきたかを確かめるため(分離解析)、奥様のお母様にも遺伝子検査を受けていただき、同じABCD1の変化が見つかりました 。これで母方の家系でX連鎖性に受け継がれてきたことが裏づけられ、お母様ご自身にとっても、今後の健康管理に欠かせない情報になりました。
ALDの女性保因者についての医学的な理解は、近年大きく変わっています。 かつては「女性の保因者は症状がない」とされていましたが、女性保因者46人を調べたオランダの研究では、症状のある人の割合が40歳未満の18%から、60歳を超えると88%に増えていました。主な症状は脊髄の障害による歩きにくさ・足のしびれ・排尿や排便の障害で、多発性硬化症と区別が必要になることもあります[6] 。奥様の祖母のご経験は、まさにこの新しい理解と重なるものでした。
論文を読み込んでLikely Pathogenicと判断してくれた検査会社があったからこそ、ご夫婦はリスクを知り、当院の絨毛検査でお子様の状態を確かめることができました。同時に、奥様・お母様・祖母へと受け継がれてきたABCD1の変化が初めて医学的に明らかになり、それぞれの世代の健康管理の指針につながりました。これは機械でDNAを読む能力の話ではなく、報告書をつくるチームの学術的な深さと誠実さの話 です。
もし解釈の浅い検査で見逃されていたら、と思うと、「検査を受けていたのにどうして?」と悲しむご夫妻の姿が浮かび、背筋が凍ります。ALDと遺伝についてはALD(副腎白質ジストロフィー)と遺伝 でも解説しています。
ダイヤモンドプランと同じ検査会社 ─ 一貫した解釈基準
ファミリーセーフティ プラスは、当院のNIPTのダイヤモンドプラン と同じ検査会社が解析しています。ご夫婦の保因者検査と、赤ちゃんの単一遺伝子のNIPTが、同じ検査会社の同じ解釈の基準で行われる ことになります。
こんなご夫婦に、ファミリーセーフティ プラスをご検討いただきたい
● 当院でNIPTを受ける予定のご夫婦 ── NIPTでは調べられない、親から受け継ぐ潜性の病気まで知っておきたい方
● これから複数のお子様を望まれるご夫婦 ── 一度の結果を、次の妊娠の計画にも使えます
● 原因の分からない卵巣機能の低下を指摘されたことがある方 ── FMR1の前変異を含めて調べられます
● 血縁関係のあるご夫婦 ── 共通の祖先から同じ変化を受け継いでいる可能性があります
● ご家族・ご親族に遺伝性の病気の方がいる方 ── 家系で受け継がれている変化の手がかりになります
● 遺伝性の病気のあるお子様がいて、次のお子様を考えている方
● 「家族歴がないから大丈夫」と思っているご夫婦 ── 潜性の病気は、家族歴のないご夫婦のお子様に現れることが多い病気です
体外受精の前や、妊娠前に検査を受けたい方は、ファミリーセーフティ プラスではなく通常の保因者検査をお選びください(当院は体外受精・着床前診断〔PGT-M〕は行っていません)。
検査内容の詳細
検査の構成
代表的な対象の病気
● 血液の病気: サラセミア(α・β)、鎌状赤血球症、血友病A・B、ファンコニ貧血ほか
● 代謝の病気: フェニルケトン尿症、ガラクトース血症、メープルシロップ尿症、ゴーシェ病、テイ・サックス病、ニーマン・ピック病、ムコ多糖症、ポンペ病ほか
● 神経・筋の病気: 脊髄性筋萎縮症(SMA)、福山型先天性筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、フリードライヒ運動失調症、脆弱X症候群(FMR1)ほか
● 免疫・内分泌・呼吸器の病気: 嚢胞性線維症、副腎白質ジストロフィー(ALD)、先天性副腎皮質過形成症、重症複合免疫不全症ほか
● 聴覚・視覚の病気: 先天性難聴(GJB2関連)、アッシャー症候群、レーバー先天黒内障ほか
※787遺伝子・714遺伝子の一覧は、遺伝カウンセリングのときにお示しします。
対象にしている変化のタイプ
● 一つの塩基の変化(点変異)
● エクソン単位の大きな欠失・重複 ── SMA、デュシェンヌ型筋ジストロフィーなど
● リピート伸長 ── 脆弱X症候群(FMR1)、フリードライヒ運動失調症など
● 遺伝子の逆位 ── 重症型血友病A(F8の逆位)など
● 偽遺伝子との区別 ── ゴーシェ病、先天性副腎皮質過形成症など
● レトロトランスポゾンの挿入 ── 福山型先天性筋ジストロフィー(FKTNのSVA挿入)。理論上は検出できると考えられます(検査会社に確認、福山型の説明 を参照)
検査の流れ
① 遺伝カウンセリングNIPTと一緒に臨床遺伝専門医が説明
▶
② ご夫婦で採血NIPTと同じ日に
▶
③ 米国の検査室で解析検体到着後3〜4週間
▶
④ 結果説明臨床遺伝専門医が組み合わせを評価
当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。ファミリーセーフティ プラスの採血は、NIPTと同じ日に行います。NIPTの結果は基本10〜14日でお知らせするので、保因者検査の結果はNIPTより後に届きます。
ご夫婦が同じ遺伝子の保因者だった場合は、臨床遺伝専門医がお子様への影響と選べる検査を説明します。当院では絨毛検査(妊娠11〜13週)・羊水検査を院内で行い、赤ちゃんの遺伝子を調べる出生前診断 も承っています。
よくある質問
Q1. ファミリーセーフティ プラスはNIPTの一種ですか?
いいえ。NIPTは妊婦さんの血液に混ざる赤ちゃん由来のDNAを調べる検査で、ファミリーセーフティ プラスはご夫婦それぞれの遺伝子を調べる保因者検査です。当院でNIPTを受ける方が、NIPTと同じ日にご夫婦で受けられるようにした検査です。
Q2. ファミリーセーフティ プラスだけを受けることはできますか?
ファミリーセーフティ プラスは当院でNIPTを受ける方のための検査なので、単独では受けられません。NIPTを受けない方や妊娠前の方は、通常の保因者検査(女性787遺伝子・男性714遺伝子、各253,000円〈税込〉。または女性1009遺伝子・男性911遺伝子、各275,000円〈税込〉)として受けられます。
Q3. NIPTとどう違うのですか?
NIPTは赤ちゃんの染色体や遺伝子の変化を調べる検査です。当院のNIPTで調べる単一遺伝子は赤ちゃんに新しく起きた変化(de novo変異)で、ご両親から受け継ぐ潜性の病気は対象ではありません。たとえば脊髄性筋萎縮症(SMA)は、当院のNIPTのどのプランでも調べられません。ファミリーセーフティ プラスは、ご両親が同じ病気の保因者かどうかを調べることで、こうした病気がお子様に現れる可能性を評価します。
Q4. 家族歴がなくても、検査を受ける意味はありますか?
あります。常染色体潜性の病気は、保因者には症状が出ないため、家系の中で気づかれずに受け継がれます。家族歴がなくても、ご夫婦がたまたま同じ遺伝子の保因者だった場合、お子様が発症する確率は妊娠のたびに4分の1です。
Q5. 結果が陽性(保因者)だった場合はどうなりますか?
常染色体潜性の病気で、ご夫婦のどちらか一方だけが保因者の場合、お子様が発症することは原則ありません。X連鎖性の病気でお母様が保因者の場合は、男の子のお子様一人ひとりについて2分の1の確率で受け継がれます。ご夫婦が同じ遺伝子の保因者の場合、お子様が発症する確率は4分の1です。今回の妊娠では、絨毛検査(妊娠11〜13週)や羊水検査で赤ちゃんの遺伝子を調べることが当院で受けられます。当院は体外受精・着床前診断(PGT-M)は行っていませんが、次の妊娠で着床前診断を考える場合に必要な情報の整理や、英語の検査結果のご用意について、遺伝カウンセリングでご説明します。
Q6. 一度受ければ、次の妊娠にも使えますか?
はい。ご夫婦の遺伝子は生涯変わらないため、結果は2人目・3人目のお子様を考えるときにもそのまま使えます。次の妊娠でNIPTを受けるときに、保因者検査を受け直す必要はありません。
Q7. 原因の分からない卵巣機能の低下がある場合、受ける意味はありますか?
あります。脆弱X症候群の前変異(FMR1遺伝子のCGGリピートが55〜200回)の女性は、卵巣機能が早く低下することがあります。米国産婦人科学会(ACOG)は、原因の分からない卵巣機能不全がある方や、40歳未満でFSHが高い方に、FMR1の前変異を調べることを勧めています。女性787遺伝子にはFMR1が含まれています。
Q8. 検査結果はどのくらいで出ますか?
検体到着後、約3〜4週間で結果が出ます。NIPTの結果(基本10〜14日)とは別に届きます。結果は臨床遺伝専門医が、ご夫婦の組み合わせの評価とあわせてお伝えします。
Q9. 費用はいくらですか?
ご夫婦2名で330,000円(税込)です。女性787遺伝子・男性714遺伝子をそれぞれ通常の保因者検査として受けると合計506,000円(税込)なので、176,000円低い料金です。遺伝カウンセリング料はNIPTの料金に含まれます。別途、結果作成手数料3,300円(税込)・翻訳料金5,500円(税込)がかかります。自由診療で、健康保険は使えません。
Q10. 夫婦のどちらか一方だけ受けることはできますか?
原則として、ご夫婦お二人で受けていただいています。保因者検査の目的は「ご夫婦が同じ遺伝子の保因者かどうか」を評価することで、お一人の結果だけでは、お子様への影響を十分に評価できないためです。
Q11. 検査結果のプライバシーは守られますか?
はい。検査結果はご夫婦の個人情報として管理し、第三者に開示することはありません。ご家族・ご親族と結果を共有するかどうかは、ご夫婦のご判断にお任せしています。家系の中に同じ変化をもつ方がいる可能性がある場合は、ご親族への伝え方についても遺伝カウンセリングでご相談に応じます。
検査費用
ファミリーセーフティ プラス(NIPTと同時に受けるご夫婦の保因者検査)
女性787遺伝子+男性714遺伝子 ご夫婦2名
330,000円(税込)
通常の保因者検査として受けた場合:女性787遺伝子253,000円+男性714遺伝子253,000円=合計506,000円(税込) NIPTと同時に受けるご夫婦の料金として、176,000円低い料金です。
🩺 院長コラム【「もし知っていたら」を減らすために】
NIPTは赤ちゃんを調べる検査で、保因者検査はご両親を調べる検査です。どちらか一方で、もう一方の代わりはできません。とくに日本では、福山型先天性筋ジストロフィーのように日本人に多い病気があり、海外で作られた検査を使うときは、日本人に多い病気の遺伝子が含まれているかを確かめておく必要があると考えています。当院の保因者検査には、福山型の原因遺伝子であるFKTNも含まれています。
「もし妊娠する前に保因者だと知ることができていたら」という後悔を、少しでも減らしたいと考えています。NIPTと同じ日の採血で、ご夫婦の遺伝子を一度調べておくことが、これからの家族計画の土台になります。
検査を受ける前に ─ 必ずご確認ください
● この検査はスクリーニング検査で、確定診断ではありません。 保因者とわかった場合は、ご夫婦の組み合わせの評価と遺伝カウンセリングのうえで、必要に応じて追加の検査をご案内します。
● 将来起こるすべての病気を予測する検査ではありません。 対象は、女性787遺伝子・男性714遺伝子の範囲です。
● 報告の対象は、原則としてPathogenic(病的)とLikely Pathogenic(病的の可能性が高い)の変化です。
● 保因者でないという結果でも、保因者である可能性がゼロになるわけではありません。 検査で見つけにくい変化もあります。
● ご夫婦お二人の結果をあわせて評価します。 お一人だけの検査では、お子様への影響を十分に評価できません。
● 自由診療のため、健康保険は使えません。
🏥 NIPTと同じ日に、ご夫婦の保因者検査を
女性787遺伝子・男性714遺伝子で、SMAなど、NIPTでは調べられない親から受け継ぐ病気を調べます(福山型先天性筋ジストロフィーの原因遺伝子FKTNも含まれます)。ご夫婦とも保因者なら、絨毛検査・羊水検査まで院内で受けられます。
まだ決めていない方は:NIPTとは? | 保因者検査(女性787遺伝子)の詳細
NIPTの各プラン
ファミリーセーフティ プラスは、次のどのプランのNIPTとも同じ日に受けられます。
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参考文献
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[4] Sugarman EA, Nagan N, Zhu H, et al. Pan-ethnic carrier screening and prenatal diagnosis for spinal muscular atrophy: clinical laboratory analysis of >72,400 specimens. Eur J Hum Genet. 2012;20(1):27-32. [DOI 10.1038/ejhg.2011.134]
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※本ページは一般の方への情報提供を目的とするもので、個別の診断や検査の選択を示すものではありません。検査については臨床遺伝専門医にご相談ください。
この記事の監修・執筆者:仲田 洋美
(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)
ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得 後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。
出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。
ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。
また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。
出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。
日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。
2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け 、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載 されました。
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