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先天性免疫不全(原発性免疫不全症候群)の遺伝子検査|596遺伝子でわかること・病気の一覧と疑う10の徴候

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

先天性免疫不全(原発性免疫不全症候群)の遺伝子検査

先天性免疫不全(原発性免疫不全症候群)とは、生まれつき免疫のしくみのどこかに異常があり、感染症をくり返す・重くなる・治りにくいといったことが起こる病気の総称です。原因の多くは免疫にかかわる遺伝子の変化で、500以上の病気に分けられています。感染をくり返しているのに原因がわからないまま、病院を回り続けている方もいます。このページでは、免疫不全の病気の一覧、疑う10の徴候、遺伝のしかたと、原因として知られる596の遺伝子を一度に調べる遺伝子検査でわかること・わかったあとにできることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. 先天性免疫不全の遺伝子検査で何がわかりますか?

先天性免疫不全(原発性免疫不全症候群・先天性免疫異常症)の原因として報告されている596の遺伝子を一度に調べ、重症複合免疫不全症・抗体の病気・好中球の病気・自己炎症性疾患など、どのグループの病気かの手がかりを探します。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

感染症をくり返す・重くなる方、大人になって免疫不全と言われた方、ご家族に免疫不全の方がいる方、病気のグループがまだしぼれていない方に向く検査です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、治療の選び方・ワクチンの注意・ご家族の検査を考える手がかりになります。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

1. 先天性免疫不全(原発性免疫不全症候群)とは

先天性免疫不全(原発性免疫不全症候群)とは、先天的に免疫系のどこかに欠陥がある病気の総称です。難病情報センターでは、500以上の病気に分類されると説明されています(2026年1月更新の情報)。日本では指定難病65「原発性免疫不全症候群」として扱われています。

免疫は、ひとつの細胞だけで働くしくみではありません。細菌を食べて殺す好中球、抗体(免疫グロブリン)を作るB細胞、ウイルスに感染した細胞を見張るT細胞やNK細胞、血液中で菌を壊す補体など、多くの部品が組み合わさって体を守っています。どの部品の遺伝子に変化があるかで、かかりやすい感染症も、出てくる症状も、選ぶ治療も変わります。

難病情報センターの解説によると、全部の病気を合わせると、出生1万人に対して少なくとも毎年1人ほどの割合で生まれるとされています。日本では、重症複合免疫不全症(SCID)が1年に15人近く生まれていると考えられ、X連鎖無ガンマグロブリン血症と慢性肉芽腫症は、それぞれ全国に少なくとも300人いると推定されています(2026年10月時点で確認)。

先天性免疫異常症(IEI)という呼び方

最近は「先天性免疫異常症(inborn errors of immunity:IEI)」という呼び方が、国際的な分類で使われています。国際免疫学会連合(IUIS)の専門委員会が2024年版としてまとめた分類では、508の遺伝子の異常と17のフェノコピー(体細胞の遺伝子変化や自己抗体などにより、遺伝性の免疫異常症とよく似た病気になるもの)が、10の表に分けて整理されています[1]。

「不全」という言葉は感染への弱さを思い浮かべさせますが、先天性免疫異常症には、感染よりも、炎症・自己免疫・アレルギー・リンパ節の腫れ・腫瘍などが目立つ病気も多く含まれています。難病情報センターも、感染に弱くならずにこうした症状を示す病気が多数あると説明しています。呼び方が広がったのは、この病気のグループの実際の姿に合わせるためです。

後天性免疫不全(エイズ)・続発性免疫不全との違い

先天性(原発性)の免疫不全の多くは、生まれつきの遺伝子の変化による病気です。ただし、現在の先天性免疫異常症の分類には、体細胞の遺伝子変化や自己抗体などによるフェノコピーも含まれます。これに対して、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染で起こる後天性免疫不全症候群(エイズ)や、抗がん剤・免疫を抑える薬・ほかの病気などによって後から起こる免疫の低下(続発性免疫不全)は、生まれつきの遺伝子の変化が原因ではありません。厚生労働省の指定難病の資料でも、原発性免疫不全症候群は、エイズなどの後天性の免疫不全とは区別されています。

そのため、遺伝子検査で調べる意味があるのは、生まれつきの原因が考えられる場合です。後から起こる免疫の低下の原因を探すときは、まず主治医がその原因(薬・ほかの病気など)を調べます。

免疫不全と自己免疫疾患の違い

免疫不全は「守る力が足りない」状態、自己免疫疾患は「免疫が自分の体を攻撃してしまう」状態です。一見反対のように見えますが、先天性免疫異常症では、両方が同じ人に起こることがあります。免疫のブレーキ役の遺伝子に変化があると、感染に弱くなると同時に、自分の血球や臓器を攻撃してしまうことがあるためです。

また、自然免疫の炎症のスイッチが入りっぱなしになり、感染がないのに熱や炎症をくり返す「自己炎症性疾患」も、国際分類では先天性免疫異常症のグループのひとつです[1]。このパネル検査は、こうした病気の原因遺伝子も対象に含めています。

2. 免疫不全の病気一覧:10のグループと選ぶ検査

国際免疫学会連合の2024年版の分類では、先天性免疫異常症は10のグループ(表)に分けられています[1]。病名がはっきりしている、またはグループがしぼれているなら個別の検査を、まだしぼれないならこのパネル検査を選ぶ、というのが基本の考え方です。

🧬 先天性免疫不全の病気一覧(国際分類の10グループ)と、向いている検査

グループ 代表的な病気 病気がしぼれているときの検査
1. T細胞とB細胞の両方の免疫の異常(複合免疫不全症) 重症複合免疫不全症(SCID)、ADA欠損症、複合免疫不全症 SCIDパネル/B細胞陰性SCIDパネル/B細胞陽性SCIDパネル
2. 症候群の特徴を伴う複合免疫不全症 ウィスコット・アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症、22q11.2欠失症候群、高IgE症候群、ブルーム症候群、Schimke免疫骨異形成症 高IgE症候群パネル/染色体不安定症候群パネル
3. 抗体(免疫グロブリン)の病気 X連鎖無ガンマグロブリン血症、分類不能型免疫不全症(CVID)、X連鎖高IgM症候群(抗体の低下を伴いますが、国際分類では第1群の複合免疫不全症です)、TCF3変異による無ガンマグロブリン血症 無ガンマグロブリン血症パネル/原発性抗体欠損症(PAD)パネル
4. 免疫の調節(ブレーキ)の病気 家族性血球貪食性リンパ組織球症、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、X連鎖リンパ増殖症候群、自己免疫性多内分泌腺症候群1型(APECED) 家族性血球貪食性リンパ組織球症の遺伝子検査
5. 好中球など食細胞の数・働きの病気 慢性肉芽腫症、先天性好中球減少症 慢性肉芽腫症パネル(働きの病気)/好中球減少症パネル(数の病気)
6. 自然免疫・細胞の中の防御のしくみの病気 メンデル遺伝型マイコバクテリア易感染症、IRAK4欠損症・MyD88欠損症 このページのパネル
7. 自己炎症性疾患 家族性地中海熱、メバロン酸キナーゼ欠損症、クリオピリン関連周期熱症候群 自己炎症性症候群の遺伝子検査
8. 補体の病気 先天性補体欠損症、遺伝性血管性浮腫 このページのパネル
9. 骨髄不全 ファンコニ貧血、先天性角化不全症 骨髄不全症候群パネル
10. 先天性免疫異常症のフェノコピー 体の一部の細胞にだけ起きた遺伝子の変化や、自分の体の物質に対する抗体(自己抗体)によって、よく似た病気になるもの 生まれつきの遺伝子を調べる検査では、原則として見つかりません

※グループの分け方は国際免疫学会連合の2024年版分類[1]による。病気の例は各グループの代表で、すべてではありません。

たとえば、リンパ球の検査でT細胞がほとんどいないとわかっているならSCIDの検査、B細胞がいなくて抗体が作れないとわかっているなら無ガンマグロブリン血症の検査、というように、検査結果で病気のグループが見えている場合は、その病気にしぼった検査で十分なことがあります。反対に、感染・炎症・自己免疫の症状が混ざっていてグループが決められない場合や、個別の検査で原因が見つからなかった場合には、596遺伝子をまとめて調べるこのパネル検査が向いています。

3. 免疫不全を疑う10の徴候と症状

いちばん多い症状は、感染症にかかりやすく、治りにくく、重くなりやすいこと(易感染性)です。難病情報センターは、風邪のような症状がなかなか治らない、何度も熱を出す、薬が効きにくく入院が必要になる、といった形で現れると説明しています。どの部品が弱いかによって、かかりやすい病原体にも傾向があります。

🦠 弱い部分とかかりやすい病原体の傾向

弱い部分 かかりやすい感染症の傾向
好中球・抗体(B細胞) 細菌による感染が多い
T細胞など ウイルスや真菌(カビ)による感染が多い

※難病情報センター・厚生労働省の指定難病(原発性免疫不全症候群)の資料による(2026年10月時点で確認)。

原発性免疫不全症を疑う10の徴候(感染のかかり方)

厚生労働省の指定難病の資料には、原発性免疫不全症を疑う10の徴候が示されています。要点をまとめると、次のとおりです。

  • ●乳児で呼吸器や消化器の感染症をくり返し、体重が増えない・発育が悪い
  • ●1年に2回以上肺炎にかかる
  • ●気管支拡張症になる
  • ●髄膜炎・骨髄炎・敗血症・深い場所の膿瘍などの重い感染症に2回以上かかる
  • ●抗菌薬を飲んでも、2か月以上感染症が治らない
  • ●重い副鼻腔炎をくり返す
  • ●1年に4回以上中耳炎にかかる
  • ●1歳を過ぎても、口のカンジダ(鵞口瘡)・皮膚の真菌症・広い範囲のいぼが続く
  • ●BCG接種のあとの重い副反応など、ふつうは起こりにくい重い感染症にかかったことがある
  • ●乳幼児期に感染症で亡くなった家族がいるなど、原発性免疫不全症を疑う家族歴がある

この資料では、1つでも当てはまる場合は専門の医師に相談することが勧められています。ただし、当てはまるから必ず免疫不全、というわけではありません。子どもは集団生活を始めると風邪をよくひきますし、中耳炎をくり返す原因もさまざまです。徴候はあくまで「詳しく調べるきっかけ」として使うものです。

感染以外のサイン:炎症・自己免疫・リンパ節の腫れ

難病情報センターは、感染に弱くならずに、炎症・湿疹・自己免疫の症状・リンパ節の腫れ・悪性腫瘍・アレルギーなどを示す病気も多数あると説明しています。たとえば、血小板や赤血球を自分で壊してしまう、原因のわからない熱や炎症をくり返す、リンパ節や肝臓・脾臓が腫れる、治りにくい下痢が続く、といった症状が、免疫の遺伝子の病気から起きていることがあります。

こうした症状は、まず「免疫の病気」と結びつけて考えられにくいため、診断までに時間がかかりやすいところです。複数の診療科にかかっていて、それぞれの症状は治療しているものの、全体の原因がわからないという場合も、遺伝子検査が手がかりになることがあります。

免疫不全は大人になってから見つかることもある(CVIDなど)

先天性免疫不全は子どもの病気と思われがちですが、大人になってから症状が出たり、診断されたりする型もあります。代表が、抗体が十分に作れなくなる分類不能型免疫不全症(CVID)です。国際的な合意文書(ICON、2016年)は、CVIDは幼い子どもからお年寄りまでどの年齢でも発症しうるとし、大人で診断される症状のある抗体の病気としては最も多いとしています。ヨーロッパの413人の調査では、発症の平均は35.3歳でした[2]。

同じ文書は、発症から診断までに米国のグループで5〜6年、最近のヨーロッパの報告で4〜5年かかっていると述べています[2]。大人の場合も、日本では大人向けに改変した10の徴候が、理化学研究所のサイトで示されています(中耳炎・重い副鼻腔炎をくり返す、肺炎が毎年続く、非結核性抗酸菌の感染、点滴が必要な感染症のくり返し、体重が減るほどの慢性の下痢、ヘルペスなどのウイルス感染のくり返し、家族歴など)。

4. 先天性免疫不全は遺伝する?遺伝のしかたと家族への確率

先天性免疫不全は基本的には遺伝性の病気ですが、ご家族に同じ病気の方がいない例も多くみられます(難病情報センター)。遺伝のしかたは病気(原因の遺伝子)ごとに違い、X連鎖、常染色体潜性(劣性)、常染色体顕性(優性)のすべてがあります。原因の遺伝子がわかると、ご家族に同じ変化がある確率を具体的に考えられるようになります。

👪 遺伝のしかたと、お子さんへの確率(1回の妊娠ごと)

遺伝のしかた どんな場合に お子さんへの確率
常染色体潜性(劣性)遺伝 ご両親がともに同じ遺伝子の保因者 4分の1で発症、2分の1で保因者
X連鎖潜性遺伝 お母さんが保因者 男の子は2分の1で発症、女の子は2分の1で保因者
常染色体顕性(優性)遺伝 ご両親のどちらかが変化をもつ 2分の1で変化を受け継ぐ

※確率は遺伝形式ごとの一般的な考え方です。顕性遺伝では、同じ変化を受け継いでも症状の重さが人によって違うことがあります。

X連鎖の病気では、お母さんは症状がない保因者であることが多く、ご家族に病気の方がいなくても、男の子に初めて病気が見つかることがあります。お子さんに見つかった変化がお母さんから受け継いだものか、お子さんで新しく起きたもの(新生突然変異)かによって、次のお子さんへの確率も、お母さんの姉妹への影響も変わります。だからこそ、原因の遺伝子を確かめることに意味があります。

お子さんで新しく起きた変化と考えられる場合でも、親御さんの卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)にだけ変化がある「性腺モザイク」のことがあります。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。

5. どんな人がこの遺伝子検査を受けるとよいか

感染症をくり返して原因がわからない方、免疫の検査で異常を指摘された方、ご家族に免疫不全の方がいる方に向く検査です。病名がつくと、受けるべき治療、気をつけたいワクチン、使える制度(指定難病・小児慢性特定疾病)が決まります。たとえば、オランダの遺伝子診断センターで先天性免疫異常症が疑われた165人に早い段階で遺伝子検査を行った研究では、原因が確定した人の76%で、診療の方針に変化がありました[3]。

  • ●第3章の10の徴候に当てはまり、主治医から免疫不全の可能性を指摘された方
  • ●リンパ球の数や免疫グロブリン(抗体)の量の検査で異常があると言われた方
  • ●感染症だけでなく、自己免疫・原因不明の熱や炎症・リンパ節の腫れなどがあり、病気のグループがしぼれない方
  • ●大人になってから免疫不全(低ガンマグロブリン血症など)と言われた方
  • ●ご家族に先天性免疫不全の方がいて、ご自身やお子さんのことを考えたい方
  • ●個別の病気の遺伝子検査で原因が見つからなかった方

遺伝子検査で原因が見つかる割合は、どんな人を対象にするかで大きく変わります。先天性免疫異常症の次世代シーケンス検査の研究24件をまとめたレビューでは、原因が見つかった割合は平均29%(研究によって10〜79%)、全エクソーム検査に限ると平均38%でした[4]。前に紹介したオランダの研究では、全体で15.2%、子どもで24.6%、大人で9%でした[3]。全員に原因が見つかるわけではありませんが、見つかった方では、その後の診療が大きく変わることがあります。

ご家族に免疫不全の方がいて、自分もなるかもしれないと心配な方

症状がなくても、親やきょうだいに先天性免疫不全の方がいて「自分もなるかもしれない」と不安を感じている方も、この検査を考えられます。先天性免疫不全には、CVIDのように大人になってから発症したり診断されたりする型もあり[2]、ご家族の病気をきっかけにご自身のことを考え始める方もいます。

いちばん確かなのは、まず病気のご家族で原因の遺伝子の変化を確かめ、そのうえでご自身がその変化をもっているかを調べる順番です。ご家族の原因がすでにわかっていれば、その1か所をピンポイントで調べられます。ご家族の原因がわからない場合や、ご家族が検査を受けられない場合は、このパネル検査でご自身を調べることも考えられます。ただしその場合、変化が見つからなくても、ご家族と同じ病気の原因をもっていないとは言い切れないことがあります。どの順番で調べるのがよいかは、遺伝カウンセリングでご家族の状況をうかがいながら考えます。

当院は、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。

新生児スクリーニングでSCIDの再検査と言われたら

日本では、こども家庭庁が令和5年度(2023年度)から、重症複合免疫不全症(SCID)と脊髄性筋萎縮症(SMA)を新生児マススクリーニングで調べる実証事業を行っています。参加する自治体で始まっており、たとえば大阪府では令和6年3月1日から府内で生まれた新生児が公費で受けられるようになり(検査費用は無料、採血料は医療機関へ支払い)、新潟県では令和7年7月1日に始まりました(2026年10月時点で各自治体のページを確認)。開始時期や費用の扱いは自治体によって違います。

このスクリーニングは、赤ちゃんの血液でT細胞が作られているかの目印を測り、SCIDの可能性がある赤ちゃんを見つける検査です(新生児スクリーニング)。「再検査」や「要精密検査」と言われても、それだけで病気が決まったわけではありません。まずは紹介された専門の医療機関で、リンパ球の詳しい検査を受けることが先です。

そのうえで、SCIDなどが疑われた場合に原因を確かめるのが遺伝子検査です。SCIDでは、移植を受ける時期が経過に大きく関わります。25施設で2000〜2009年に造血細胞移植を受けたSCIDの赤ちゃん240人の研究では、5年生存率は全体で74%でしたが、生後3.5か月以内に移植を受けた赤ちゃんでは94%でした[5]。リンパ球の検査でT細胞とB細胞の数がわかっている場合は、SCIDパネルのように、しぼった検査のほうが向くこともあります。なお、当院の新生児遺伝子スクリーニング検査は、症状のない赤ちゃんを調べる別の検査です。

この検査より別の検査が向いている場合

比べる相手は検査の種類です。症状や検査結果によっては、次の検査のほうが向いています。

🔍 状況に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
感染・炎症・自己免疫が混ざり、病気のグループがしぼれない このページの検査(596遺伝子)
リンパ球の検査でSCIDが疑われる SCIDパネル(T細胞・B細胞の結果でB細胞陰性・陽性のパネルも選べます)
感染症ではなく、熱や炎症をくり返す 自己炎症性症候群の遺伝子検査
せきや痰をくり返し、気管支拡張症・内臓の左右逆位などがある 原発性線毛機能不全症候群(PCD)パネル(気道の線毛の病気も感染をくり返す原因になるため)
免疫以外にも発達の遅れや体のつくりの特徴など多くの症状がある 全エクソーム検査(WES)

※どの検査がよいかは、それまでの検査結果を見ながら遺伝カウンセリングで一緒に検討します。

\ あなたの1回の検査が、ご家族の手がかりにもなります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

X連鎖の病気では、お母さん・姉妹が保因者かどうかを確かめる手がかりになります。ご家族の検査も当院でご相談いただけます。

海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

6. 調べる596遺伝子と、それぞれでわかる病気

この検査では、先天性免疫異常症の原因として報告されている596の遺伝子をまとめて調べます。対象には、抗体の病気、複合免疫不全症、免疫調節の病気、自己炎症性疾患のほか、悪性腫瘍・アレルギーなど、よく似た症状を示すことがある病気の遺伝子も含まれます。

従来の方法では、A遺伝子を調べて変化がなければ次にB遺伝子を調べる、というように、検査を何度もくり返す必要がありました。そのたびに時間と費用がかかります。このパネル検査なら、596の遺伝子を1回の検査で、2〜3週間で調べられます。

グループ別の代表的な遺伝子と遺伝のしかた

🧬 代表的な遺伝子・病気・遺伝のしかた

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
IL2RG X連鎖重症複合免疫不全症 X連鎖
JAK3 重症複合免疫不全症 常染色体潜性
RAG1/RAG2 重症複合免疫不全症(B細胞陰性) 常染色体潜性
DCLRE1C 重症複合免疫不全症(アルテミス欠損) 常染色体潜性
ADA ADA欠損症 常染色体潜性
WAS ウィスコット・アルドリッチ症候群 X連鎖
ATM 毛細血管拡張性運動失調症 常染色体潜性
STAT3 高IgE症候群1型(機能が落ちる変化) 常染色体顕性
BTK X連鎖無ガンマグロブリン血症 X連鎖
CD40LG X連鎖高IgM症候群 X連鎖
PRF1 家族性血球貪食性リンパ組織球症 常染色体潜性
FAS 自己免疫性リンパ増殖症候群 常染色体顕性(潜性の報告もあり)
SH2D1A X連鎖リンパ増殖症候群1型 X連鎖
AIRE 自己免疫性多内分泌腺症候群1型 常染色体潜性(顕性の報告もあり)
CYBB X連鎖慢性肉芽腫症 X連鎖
CYBA 慢性肉芽腫症(常染色体潜性) 常染色体潜性
HAX1 重症先天性好中球減少症 常染色体潜性
MEFV 家族性地中海熱 常染色体潜性(顕性の報告もあり)
MVK メバロン酸キナーゼ欠損症 常染色体潜性
FANCA ファンコニ貧血 常染色体潜性
DKC1 先天性角化不全症 X連鎖

※596遺伝子のうち、代表的なものだけを載せています。遺伝のしかたは、その遺伝子で最もよく知られる病気についてのものです。同じ遺伝子でも、変化の種類によって別の病気・別の遺伝のしかたになることがあります。

対象596遺伝子の一覧

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ACD, ACP5, ACTB, ADA, ADA2, ADAM17, ADAMTS13, ADAMTS3, ADAR, ADGRE2, ADIPOR1, ADIPOR2, AICDA, AIRE, AK2, ALG6, ALPI, ALPK1, ANGPT1, ANKZF1, AP1S3, AP3B1, AP3D1, APOL1, ARHGEF1, ARMC4, ARPC1B, ASAH1, ATG4A, ATM, ATP6AP1, B2M, BACH2, BCL10, BCL11B, BLM, BLNK, BLOC1S3, BLOC1S6, BRCA2, BRIP1, BTK, C1QA, C1QB, C1QC, C1R, C1S, C2, C3, C3AR1, C4BPA, C4BPB, C5, C5AR1, C6, C7, C8A, C8B, C8G, C9, CARD11, CARD14, CARD8, CARD9, CARMIL2, CASP10, CASP8, CAVIN1, CBL, CCBE1, CCDC103, CCDC114, CCDC151, CCDC39, CCDC40, CCDC65, CCNO, CD19, CD247, CD27, CD3D, CD3E, CD3G, CD4, CD40, CD40LG, CD46, CD55, CD59, CD70, CD79A, CD79B, CD81, CD8A, CDC42, CDCA7, CEBPE, CENPF, CFAP298, CFAP300, CFB, CFD, CFH, CFHR1, CFHR2, CFHR3, CFHR4, CFHR5, CFI, CFP, CFTR, CHD7, CIB1, CIITA, CLCN7, CLEC7A, CLPB, COG6, COL7A1, COLEC11, COPA, CORO1A, CR2, CREBBP, CSF2RA, CSF2RB, CSF3R, CTC1, CTLA4, CTNNBL1, CTPS1, CTSC, CXCR2, CXCR4, CYBA, CYBB, CYBC1, CYP27A1, DBR1, DCLRE1B, DCLRE1C, DDX58, DEF6, DGAT1, DGKE, DHFR, DIAPH1, DKC1, DNAAF1, DNAAF2, DNAAF3, DNAAF4, DNAAF5, DNAH1, DNAH11, DNAH5, DNAH9, DNAI1, DNAI2, DNAJB13, DNAJC21, DNAL1, DNASE1L3, DNASE2, DNMT3B, DOCK2, DOCK8, DRC1, DTNBP1, EFL1, ELANE, ELF4, EPG5, ERBIN, ERCC2, ERCC3, ERCC4, ERCC6L2, ETV6, EXTL3, F11, F13A1, F13B, F5, F7, F8, F9, FAAP24, FADD, FANCA, FANCB, FANCC, FANCD2, FANCE, FANCF, FANCG, FANCI, FANCL, FANCM, FAS, FASLG, FAT4, FCGR3A, FCHO1, FCN3, FERMT3, FGA, FGB, FNIP1, FOXJ1, FOXN1, FOXP3, FPR1, G6PC, G6PC3, G6PD, GAS2L2, GAS8, GATA1, GATA2, GFI1, GINS1, GP1BA, GP1BB, GP9, GTF2H5, GUCY2C, HAVCR2, HAX1, HELLS, HMOX1, HPS1, HPS3, HPS4, HPS5, HPS6, HYDIN, HYOU1, ICOS, IFIH1, IFNAR1, IFNAR2, IFNG, IFNGR1, IFNGR2, IGHM, IGLL1, IKBKB, IKZF1, IL10, IL10RA, IL10RB, IL12B, IL12RB1, IL17F, IL17RA, IL17RC, IL18BP, IL1RN, IL2, IL21, IL21R, IL23R, IL2RA, IL2RB, IL2RG, IL36RN, IL6R, IL6ST, IL7, IL7R, INO80, INSR, INVS, IRAK1, IRAK4, IRF2BP2, IRF3, IRF4, IRF7, IRF8, IRF9, ISG15, ITCH, ITGAM, ITGB2, ITK, IVNS1ABP, JAGN1, JAK1, JAK2, JAK3, KDM6A, KIT, KMT2D, KRAS, LAMTOR2, LAT, LCK, LCP2, LIG1, LIG4, LPIN2, LRBA, LRRC6, LRRC8A, LSM11, LYST, MAGT1, MALT1, MAN2B1, MANBA, MAP3K14, MASP1, MASP2, MBL2, MC2R, MCIDAS, MCM10, MCM4, MEFV, MKL1, MLPH, MOGS, MPL, MPO, MRE11, MS4A1, MSH6, MSN, MTHFD1, MVK, MYD88, MYH9, MYO5A, MYSM1, NBAS, NBN, NCF1, NCF2, NCF4, NCKAP1L, NCSTN, NFAT5, NFE2L2, NFKB1, NFKB2, NFKBIA, NHEJ1, NHP2, NKX2-5, NLRC4, NLRP1, NLRP12, NLRP3, NME8, NOD2, NOP10, NRAS, NSMCE3, OAS1, OFD1, ORAI1, OSTM1, OTULIN, PALB2, PARN, PAX1, PCCA, PCCB, PDCD1, PEPD, PGM3, PI4KA, PIGA, PIH1D3, PIK3CD, PIK3CG, PIK3R1, PLCG2, PLEKHM1, PLG, PLVAP, PMM2, PMS2, PNP, POLA1, POLD1, POLD2, POLE, POLE2, POLR3A, POLR3C, POLR3F, POMP, PRF1, PRG4, PRKCD, PRKDC, PROC, PROS1, PSENEN, PSMA3, PSMB4, PSMB8, PSMB9, PSMG2, PSTPIP1, PTEN, PTPRC, RAB27A, RAC2, RAD50, RAD51C, RAG1, RAG2, RANBP2, RASGRP1, RBCK1, RBM8A, RECQL4, REL, RELA, RELB, RFWD3, RFX5, RFXANK, RFXAP, RHOG, RHOH, RIPK1, RMRP, RNASEH2A, RNASEH2B, RNASEH2C, RNF113A, RNF168, RNF31, RNU4ATAC, RORC, RPGR, RPL11, RPL15, RPL26, RPL35A, RPL36, RPL5, RPS10, RPS15, RPS15A, RPS17, RPS19, RPS24, RPS26, RPS27A, RPS28, RPS29, RPS7, RPSA, RSPH1, RSPH3, RSPH4A, RSPH9, RTEL1, RUNX1, SAMD9, SAMD9L, SAMHD1, SAR1B, SBDS, SEC61A1, SEMA3E, SERPING1, SGPL1, SH2D1A, SH3BP2, SH3KBP1, SI, SKIV2L, SLC10A2, SLC26A3, SLC29A3, SLC35A1, SLC35C1, SLC37A4, SLC39A4, SLC39A7, SLC46A1, SLC51B, SLC5A1, SLC7A7, SLC9A3, SLX4, SMARCAL1, SMARCD2, SNORA31, SNX10, SOCS1, SP110, SPAG1, SPINK5, SPINT2, SPPL2A, SRP54, SRP72, STAT1, STAT2, STAT3, STAT4, STAT5B, STAT6, STIM1, STK36, STK4, STN1, STX11, STX3, STXBP2, TAP1, TAP2, TAPBP, TAZ, TBK1, TBX1, TCF3, TCIRG1, TCN2, TERC, TERT, TET2, TFRC, TGFB1, TGFBR1, TGFBR2, THBD, TICAM1, TINF2, TIRAP, TLR2, TLR3, TLR7, TMC6, TMC8, TMEM173, TMPRSS15, TNFAIP3, TNFRSF11A, TNFRSF13B, TNFRSF13C, TNFRSF1A, TNFRSF4, TNFRSF9, TNFSF11, TNFSF12, TNFSF13, TONSL, TOP2B, TP63, TPP1, TPP2, TRADD, TRAF3, TRAF3IP2, TREX1, TRNT1, TTC12, TTC25, TTC37, TTC7A, TYK2, UBA1, UBE2T, UNC119, UNC13D, UNC93B1, UNG, USB1, USP18, VAV1, VPS13B, VPS45, VSIG4, WAS, WDR1, WIPF1, WNT2B, WRAP53, XIAP, XK, XRCC2, ZAP70, ZBTB24, ZCCHC8, ZMYND10, ZNF341, ZNFX1(596遺伝子)

※リンクのある遺伝子は、当院の遺伝子の解説ページへ移動します。

当院のNIPTでも調べられる遺伝子

このパネルの対象遺伝子のうち、次の10遺伝子は当院のNIPT(新型出生前診断)の対象遺伝子にも入っています。NIPTでは、お腹の赤ちゃんに新しく起きた遺伝子の変化(新生突然変異)を調べます。

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性だった場合は、確定検査(羊水検査・絨毛検査)を院内で受けられます。そのほかの免疫不全の遺伝子は、潜性遺伝やX連鎖のものが多く、NIPTではなく、妊娠前の保因者検査や、原因がわかっているご家族の出生前診断で考えます(第8章)。

7. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、596の遺伝子の中の小さな変化(1つの塩基の変化や、小さな挿入・欠失)と、遺伝子の大きめの欠失・重複の一部です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

わかること

遺伝子のうち、タンパク質の設計図になる部分(エクソン)と、そのつなぎ目(スプライス部位)を次世代シーケンサーで読みます。調べる場所の99%以上を、同じ場所を20回以上読み取る精度で調べます(読み取る回数が多いほど、見落としや読み間違いが減ります)。遺伝子1つ分まるごとの欠失・重複は、血液と頬の粘膜の検体で、2つ以上続くエクソンの欠失・重複は血液の検体で見つけることができます。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。

わからないこと

  • ●染色体の転座・逆位、同じ配列のくり返しが伸びる変化(リピート伸長)
  • ●遺伝子のスイッチ部分(プロモーター)の多くや、エクソンから20塩基以上離れた場所(深いイントロン)の変化
  • ●エクソン1つだけの欠失・重複(見つかることはありますが、確実には調べていません)
  • ●体の一部の細胞にだけある変化(体細胞モザイク)や、がん組織の変化(腫瘍組織の検査は対象外です)
  • ●この596遺伝子以外の遺伝子の変化、まだ見つかっていない原因

似た配列(偽遺伝子など)が多い場所では、変化を見つけにくいことがあります。遺伝子ごとの注意点の詳しい内容は、下の折りたたみにまとめました。

▼ 遺伝子ごとの注意点(タップで開く)

CD40LG遺伝子:この遺伝子の3塩基のくり返し配列が伸びる変化は、今の方法では調べていません。

F8遺伝子:血友病Aの原因として知られるイントロン1・イントロン22の逆位は、この検査には含まれていません(凝固の病気のパネルやF8の単一遺伝子検査などで、依頼があった場合に調べるものです)。

RPGR遺伝子:大事な領域(ORF15)の病的な変化のほとんどは見つけられますが、配列が複雑なため、この領域の一部の変化を完全に否定することはできません。

⚠️ 「陰性」は「この病気ではない」という意味ではありません

原因が見つからなかった場合も、検査で調べられない種類の変化や、まだ知られていない遺伝子が原因の可能性は残ります。前に紹介したように、原因が見つかる割合は検査の対象によって1割前後から数割です[3][4]。陰性でも、主治医による診断と治療はそのまま続けることが大切です。

また、意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることがあります。VUSは、それだけで診断を決めたり、ご家族の検査に使ったりはしません。オプションの「VUS除外」(無料)を選ぶと、VUSを報告に載せない形にできます。調べた目的とは別の病気の原因が見つかること(二次的所見)の扱いは、当院の二次的所見の方針に沿ってご説明します。

8. 病的変異が見つかったら、次にできること

原因の遺伝子がわかると、「何の病気か」だけでなく、「次に何をするか」が具体的に決まります。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の治療だけでなく、ご家族の健康や、これからの妊娠・出産の計画を考えるときにも、ずっと役に立ちます。

① ご本人:治療の選び方・ワクチン・感染への備え

難病情報センター・厚生労働省の資料によると、治療は病気と重さによって選ばれます。抗体が作れない型では、月1回ほどの免疫グロブリン製剤の補充で感染をほぼ予防できるとされ、軽い型では抗菌薬などの予防内服が効果を示すことがあります。好中球が少ない病気にはG-CSF、慢性肉芽腫症にはインターフェロンγの定期投与が効果的とされています。重症複合免疫不全症などの重い型では、早い時期の造血細胞移植(造血幹細胞移植)が選ばれ、ドナーがいない場合には遺伝子治療が考えられます。

ワクチンにも注意が必要です。17か国28施設でBCGを接種されたSCIDの患者さん349人を調べた研究では、51%にBCGによる合併症が起こり(全身に広がったものが34%)、生後1か月以内の接種では合併症や死亡が多くなっていました。研究者は、こうした重い免疫不全の子どもを守るため、BCG接種を遅らせることも考えるべきだとしています[6]。BCGのように生きた菌やウイルスを使うワクチン(生ワクチン)を受けてよいかは、病気の種類によって違います。原因がわかったら、専門の医療機関で予防接種の計画を立ててもらいましょう。

当院は治療や予防接種を行っていません。治療は免疫の病気を専門とする医療機関で受けていただき、当院は原因の確定と、ご本人・ご家族の遺伝の相談を担当します。

② 症状のないご本人:家族歴で受けた方・保因者とわかった方

症状のない方で病的な変化が見つかったとき、その意味は病気と遺伝のしかたによって大きく違います。常染色体潜性(劣性)遺伝の病気で、2本ある遺伝子の片方だけに変化をもつ「保因者」であれば、ふつうご自身が発症することはありません。一方、常染色体顕性(優性)遺伝の病気や、大人になってから症状が出ることがある病気では、変化をもっていても発症しない方や、症状の重さが人によって違う場合があります。

そのため、見つかった遺伝子に合わせて、気をつけたい症状や、どの医療機関でどんな検査を受けておくとよいかをご説明し、必要に応じて免疫の病気を専門とする医療機関をご案内します。お子さんへの確率は、第4章の表のとおり遺伝のしかたで決まります。潜性遺伝の保因者だった場合は、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかで、お子さんの確率が変わります(次の③)。

③ 子どもを持つとき:知ってから選べること

原因の遺伝子と遺伝のしかたがわかれば、次のお子さんで同じ病気が起こる確率と、妊娠したときにどう備えられるかを具体的に考えられます。原因がわからないままでは、出生前に何を調べるかの的が決められません。

  • ●自然に妊娠して出生前診断を受ける:ご家族の原因の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さなどをふまえて個別に考えますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。
  • ●パートナーの検査:潜性遺伝の病気なら、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかで確率が変わります。拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子)の対象には、ADA・IL2RG・BTK・CYBB・CYBA・RAG1・RAG2・DCLRE1C・JAK3・WAS・CD40LG・PRF1・ATM・BLM・FANCA・MEFVなどが入っています(NCF1・ITGB2は女性版787遺伝子の一覧に見当たりませんでした。2026年10月時点で一覧を確認)。妊娠中の方は、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」も選べます(単独では受けられません)。
  • ●PGT-M(着床前遺伝学的検査):日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へのコラムで解説しています。
  • ●何もしないで産むことも、そのまま選べる選択肢です。どの選択をされても、その選択を尊重します。

④ ご家族:お母さん・きょうだい・ドナーの選び方

原因の変化がわかると、ご家族はその1か所だけをピンポイントで調べられます(症状のない方は、ご本人の同意のうえで)。X連鎖の病気なら、お母さんや姉妹が保因者かどうか、潜性遺伝の病気なら、きょうだいが発症していないか・保因者かどうかを確かめられます。造血細胞移植のドナーをきょうだいから選ぶことを考えるときも、そのきょうだいが同じ病気の変化をもっていないかを前もって確かめておくことは、移植を計画するうえで大切な情報になります。

原因が見つからなかったとき・VUSだったとき

陰性だった場合は、検査で調べられない種類の変化の可能性や、全エクソーム検査など範囲を広げた検査を考えます。VUSだった場合は、それだけで診断を決めず、ご家族の検査結果や今後の研究の進み具合をふまえて考えます。研究が進むと、意義がわからなかった変化の評価が変わることもあります。

⑤ 当院でのその後

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果の意味、ご家族への影響、次に受ける検査や専門の医療機関への受診について、次にどうするかを考えます。遺伝カウンセリング料は30分22,000円(税込)です。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

9. 日本の制度:指定難病65・小児慢性特定疾病(2026年10月時点)

原発性免疫不全症候群は、指定難病65に指定されています。難病情報センターのページ(2026年1月更新)に、指定難病65として掲載されています。また、小児慢性特定疾病でも「免疫疾患」のグループに、複合免疫不全症、免疫不全を伴う特徴的な症候群、液性免疫不全を主とする疾患、免疫調節障害、原発性食細胞機能不全症および欠損症、自然免疫異常、先天性補体欠損症などが並んでいます(小児慢性特定疾病情報センターで確認)。

医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。原因の遺伝子がわかることは、病名をはっきりさせる手がかりになります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜・血液のいずれも、オンライン診療で受けられます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取お支払い後にキット送付
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)。検査費用とは別にかかります
結果までの日数 2〜3週間
オプション 至急(結果までの期間が約7日短くなります):55,000円/VUS除外:無料/塩基配列と欠失・挿入の解析は料金に含まれます
検体 血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(採取キットをお送りします)
受け方 オンライン診療が可能。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします

※この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。決められた容器と採り方で採らないと、検体の取り違えや品質の問題で、正しい結果が出せなくなるためです。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

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📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

596遺伝子を1回の検査で、結果まで2〜3週間。唾液・頬の粘膜・血液のいずれもオンライン診療で受けられます。

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11. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「くり返す感染」の理由がわかると、次の一手が決まる】

先天性免疫不全は、ひとつの病気ではなく、数百の遺伝子がかかわる病気の集まりです。同じ「感染に弱い」でも、足りない部品が抗体なのか、好中球なのか、T細胞なのかで、選ぶ治療も、避けるべきワクチンも、ご家族に伝わる確率もまったく違います。症状だけで病気のグループを決めきれないことも多く、だからこそ、原因の遺伝子を確かめることに大きな意味があると考えています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、家族歴が濃いものの、ご本人は大学を卒業して会社に勤めていた方が念のため検査を受けたところ、染色体の微小欠失が見つかったことがあります。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。治療は専門の医療機関で、遺伝のことは当院で。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、保因者検査から出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 先天性免疫不全症は治る病気ですか?

病気の種類によって違います。難病情報センターによると、重症複合免疫不全症などの重い型では早い時期の造血細胞移植が選ばれ、抗体が作れない型では免疫グロブリンの定期的な補充で感染をほぼ予防できるとされています。軽い型では予防内服などで通常の日常生活を送れることもあります。原因の遺伝子がわかると、どの治療が合うかを考える手がかりになります。

Q2. 原発性免疫不全症候群の寿命は?

病気の種類と重さによって大きく異なります。軽い型では予防内服や免疫グロブリン補充で通常の生活を送れる一方、重症複合免疫不全症は造血細胞移植を行わないと多くは2歳以上まで生存できないとされています。移植を受けたSCIDの赤ちゃん240人の研究では、生後3.5か月以内に移植を受けた赤ちゃんの5年生存率は94%でした。

Q3. 先天性免疫不全症には何種類ありますか?

500以上の病気に分類されています。国際免疫学会連合の2024年版の分類では、508の遺伝子の異常と17のフェノコピーが、複合免疫不全症・抗体の病気・免疫調節の病気・食細胞の病気・自己炎症性疾患など10のグループに整理されています。

Q4. 大人になってから免疫不全と言われることはありますか?

あります。代表的なのが分類不能型免疫不全症(CVID)で、どの年齢でも発症しうるとされ、ヨーロッパの調査では発症の平均が35.3歳でした。大人で診断される症状のある抗体の病気としては最も多いとされています。

Q5. 家族に免疫不全の人がいると、結婚や妊娠に差し支えますか?

結婚や妊娠ができないということはありません。お子さんに伝わる確率は、原因の遺伝子と遺伝のしかた、パートナーが保因者かどうかで大きく変わります。原因の遺伝子がわかっていれば、ご自身が変化をもっているか、パートナーが保因者かを検査で確かめ、出生前診断なども含めて、知ったうえで計画を立てることができます。

Q6. 子どもに遺伝する確率は?

遺伝のしかたで決まります。常染色体潜性遺伝ではご両親がともに保因者の場合、お子さんごとに4分の1で発症します。X連鎖潜性遺伝ではお母さんが保因者の場合、男の子は2分の1で発症します。常染色体顕性遺伝では2分の1で変化を受け継ぎます。まず原因の遺伝子を確かめることが出発点です。

Q7. 検査で原因がわからないことはありますか?

あります。先天性免疫異常症の遺伝子検査で原因が見つかる割合は、研究をまとめたレビューで平均29%、オランダの研究では子どもで24.6%、大人で9%でした。陰性でも病気が否定されたわけではないため、主治医による診断と治療は続けてください。

Q8. 海外でPGT-Mを考えています。英語の検査結果はもらえますか?

お渡しできます。検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。準備に必要なことは、海外でPGT-Mを考えている方へのコラムで解説しています。

🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。先天性免疫不全の原因がわかれば、治療の選び方やワクチンの注意だけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、保因者検査、絨毛・羊水による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Poli MC, Aksentijevich I, Bousfiha AA, et al. Human inborn errors of immunity: 2024 update on the classification from the International Union of Immunological Societies Expert Committee. J Hum Immun. 2025;1(1):e20250003. [DOI: 10.70962/jhi.20250003]
  • [2] Bonilla FA, Barlan I, Chapel H, et al. International Consensus Document (ICON): Common Variable Immunodeficiency Disorders. J Allergy Clin Immunol Pract. 2016;4(1):38-59. [DOI: 10.1016/j.jaip.2015.07.025]
  • [3] Elsink KE, Huibers MMH, Hollink IHIM, et al. Implementation of Early Next-Generation Sequencing for Inborn Errors of Immunity: A Prospective Observational Cohort Study of Diagnostic Yield and Clinical Implications in Dutch Genome Diagnostic Centers. Front Immunol. 2021;12:780134. [DOI: 10.3389/fimmu.2021.780134]
  • [4] Vorsteveld EE, Hoischen A, van der Made CI. Next-Generation Sequencing in the Field of Primary Immunodeficiencies: Current Yield, Challenges, and Future Perspectives. Clin Rev Allergy Immunol. 2021;61(2):212-225. [DOI: 10.1007/s12016-021-08838-5]
  • [5] Pai SY, Logan BR, Griffith LM, et al. Transplantation Outcomes for Severe Combined Immunodeficiency, 2000–2009. N Engl J Med. 2014;371(5):434-446. [DOI: 10.1056/NEJMoa1401177](PMID: 25075835)
  • [6] Marciano BE, Huang CY, Joshi G, et al. BCG vaccination in patients with severe combined immunodeficiency: complications, risks, and vaccination policies. J Allergy Clin Immunol. 2014;133(4):1134-1141. [DOI: 10.1016/j.jaci.2014.02.028]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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