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B細胞陰性重症複合免疫不全症(T-B- SCID)の遺伝子検査|ADA欠損症・RAG1/RAG2など13遺伝子

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

B細胞陰性重症複合免疫不全症(T-B- SCID)の遺伝子検査

B細胞陰性重症複合免疫不全症(T-B- SCID)は、生まれつきT細胞とB細胞の両方が作られない、重症複合免疫不全症(SCID)の型です。このページの検査では、ADA欠損症・RAG1/RAG2・アルテミス(DCLRE1C)など、この型と関係する13の遺伝子を1回で調べます。原因の遺伝子がわかると、造血細胞移植の前処置の選び方、酵素補充療法や遺伝子治療という選択肢、次のお子さんで起こる確率までが具体的になります。このページでは、病気の特徴、新生児スクリーニングで再検査と言われたときの考え方、13遺伝子でわかること、結果が出たあとにできることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

B細胞陰性重症複合免疫不全症と、それに似た免疫不全の原因になる13遺伝子(ADA・AK2・CORO1A・DCLRE1C・LIG4・NBN・NHEJ1・PGM3・PRKDC・RAC2・RAG1・RAG2・TTC7A)に、病気の原因となる変化があるかを調べます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

リンパ球の検査でT細胞とB細胞の両方が少ないと言われた方、新生児スクリーニングのあとの精密検査でSCIDが疑われた方、ご家族にSCIDの方がいて、次の妊娠を考えている方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です(至急オプションで約7日短くなります)。検体は血液・頬の粘膜・唾液で、オンライン診療にも対応しています。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。多くの型は常染色体潜性遺伝で、ご両親が同じ原因遺伝子の保因者である場合、次のお子さんで同じ病気が起こる確率は4分の1です。ご両親・きょうだいの検査や、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 原因がわかると、治療と次の妊娠の計画が立てられます /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | SCIDの型がまだわからない方へ(SCIDパネル)

1. B細胞陰性重症複合免疫不全症(T-B- SCID)とは

B細胞陰性重症複合免疫不全症は、免疫の中心になるT細胞とB細胞の両方が作られないタイプのSCIDです。治療をしなければ、重い感染症のため、ほとんどの赤ちゃんが1歳を迎えられません[3]。英語では、T細胞がない(T-)、B細胞もない(B-)という意味で「T-B- SCID」と書かれます。

重症複合免疫不全症(SCID)は、生まれつき免疫の働きがほとんどない病気の総称です。厚生労働省の指定難病の資料でも、重症複合免疫不全症は造血幹細胞移植をしなければ多くは2歳以上まで生存できず、乳児期の早いうちに緊急の治療が必要な病気とされています(2026年10月時点で確認)。SCIDには原因の違う多くの型があり、どの細胞が減っているかで調べる遺伝子が変わります。病気全体の詳しい解説は、重症複合免疫不全症(SCID)総論をご覧ください。このページでは、検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。

リンパ球の検査(T・B・NK細胞)で、選ぶ検査が変わる

SCIDが疑われたら、まず血液でT細胞・B細胞・NK細胞の数を調べます。T細胞もB細胞も少なければ、このページの検査が向いています。T細胞は胸腺で育つリンパ球、B細胞は抗体を作るリンパ球、NK細胞はウイルスに感染した細胞などを壊すリンパ球です。

免疫の病気の国際分類(IUIS、2024年版)では、T-B- SCIDの原因として、RAG1・RAG2・DCLRE1C・PRKDC・NHEJ1・LIG4・ADA・AK2・RAC2の9遺伝子が挙げられています。NK細胞は、ADA欠損症では少なく、RAG1・RAG2・DCLRE1C・NHEJ1・LIG4・PRKDCの型では正常にいるとされています[1]。このパネルには、これに加えて、B細胞のいる型に分類されるCORO1Aと、SCIDに似た免疫不全を起こすTTC7A・PGM3・NBNが含まれています(第4章の表)。

🔍 リンパ球の検査の結果と、向いている検査

リンパ球の検査の結果 向いている検査
T細胞もB細胞も少ない(T-B-) このページの検査(B細胞陰性重症複合免疫不全症パネル・13遺伝子)
T細胞は少ないが、B細胞はいる(T-B+) B細胞陽性重症複合免疫不全症パネル
SCIDが疑われるが、型がまだわからない 重症複合免疫不全症(SCID)パネル
感染をくり返すが、SCIDかどうかもしぼれない 包括的原発性免疫不全症パネル
免疫以外の症状も多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)

※比べているのは検査の種類です。どの検査が合うかは、リンパ球の検査・症状・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めます。

どんな症状で気づかれるか

SCIDの赤ちゃんは、生まれてすぐは元気に見えることが多く、生後数か月のうちに、治りにくい感染症・長引く下痢・体重が増えないことなどで気づかれます。ふつうの赤ちゃんでは問題にならない病原体でも重い感染症になり、くり返します[3]。

とくに気をつけたいのが、弱めた病原体を使う生ワクチンです。17か国28施設でBCGを接種したSCIDの患者さん349人を調べた研究では、51%にBCGによる合併症(全身に広がるもの34%、接種した部位にとどまるもの17%)が起こっていました[4]。ロタウイルスワクチンのあとに下痢と脱水が続き、のちにSCIDと診断された赤ちゃん3人から、ワクチン株のウイルスが見つかった報告もあります[5]。

日本の定期接種では、ロタウイルスワクチンは生後6週から、BCGは標準的には生後5〜8か月に接種します。厚生労働省は、免疫不全と診断されている方や、近親者に先天性免疫不全症の方がいる方を、BCGの接種に注意が必要な方としています(厚生労働省のBCG・ロタウイルスワクチンのページ、2026年10月時点で確認)。ご家族にSCIDの方がいるときは、接種の前にかかりつけの小児科医に必ず伝えてください。

どのくらいの頻度で、どう遺伝するか

米国の11の新生児スクリーニング事業で約303万人を調べた研究では、SCID(典型的なSCID・リーキーSCID・オーメン症候群を含む)は約5万8,000人に1人でした[6]。このうち、ADA欠損症が11%、RAG1が15%を占めていました[6]。ADA欠損症だけでみると、出生50万人に1人と推定されています[7]。

このパネルで調べる型の多くは常染色体潜性(劣性)遺伝です[1]。ご両親がどちらも保因者(変化を1つだけもち、症状のない方)で、お子さんが両方から変化を受け継いだときに発症します。例外はRAC2の型で、機能が強まる変化が1つあるだけで起こる常染色体顕性(優性)遺伝で、ご両親にない新しい変化として起こることもあります[1][16]。

2. 新生児スクリーニングで「再検査」「要精密検査」と言われた方へ

再検査や精密検査と言われても、それだけでSCIDと決まったわけではありません。遺伝子検査は、精密検査でSCIDが疑われたときに、その原因を確かめる役割をもっています。

日本では、SCIDを新生児のうちに見つける取り組みが広がっています。愛知県などで2017年4月から2021年12月までに行われた研究では、赤ちゃん137,484人のうち、80,791人ではT細胞が作られるときにできるTRECを、56,693人ではTRECと、B細胞が作られるときにできるKRECという目印を測りました。値が基準から外れたのは145人(0.11%)で、そのうち遺伝子の検査でSCIDと確定したのは2人でした[8]。この数字からわかるように、基準から外れた赤ちゃんのほとんどはSCIDではありません。

国の事業としては、こども家庭庁が、SCIDと脊髄性筋萎縮症(SMA)の2つを、これまでとは違う検査方法(定量PCR法)で調べる新生児マススクリーニングの実証事業を、令和5年度から自治体と進めており、データを集めて全国への広がりを目指すとしています(こども家庭庁の事務連絡〔令和5年12月〕と審議会資料〔令和7年12月〕)。たとえば東京都では、令和6年4月から、SCID・B細胞欠損症・SMAが新たに検査の対象になり、検査費用は無料です(採血料は保護者の負担。東京都の案内)。どの病気を、いつから、どの費用で調べるかは自治体で違うので、お住まいの自治体にご確認ください(2026年10月時点で確認)。

💡 用語解説:新生児スクリーニングと遺伝子検査の違い

新生児スクリーニングは、すべての赤ちゃんから病気の可能性がある赤ちゃんをふるい分ける検査です。そのあとの精密検査(リンパ球の数など)で、本当に免疫が足りないかを確かめます。遺伝子検査は、そのうえで「なぜ足りないのか」を確かめる検査です。原因の遺伝子によって治療の選び方が変わるため、移植の準備と並行して原因を確かめることに意味があります(第5章)。

3. どんな人がこの検査を受けるとよいか

リンパ球の検査でT細胞もB細胞も少ないとわかった方、ご家族にT-B-型のSCIDの方がいる方、次の妊娠を考えている方に向く検査です。

  • ●新生児スクリーニングのあとの精密検査で、T細胞とB細胞の両方が少ないと言われた赤ちゃん
  • ●生後早いうちから重い感染症・長引く下痢・体重が増えないことが続き、SCIDが疑われているお子さん
  • ●湿疹・紅皮症などがあり、オーメン症候群が疑われているお子さん
  • ●ご家族にT-B-型のSCIDの方がいる、またはきょうだいが原因のわからないまま乳児期に重い感染症で亡くなった方
  • ●大人になってから、くり返す感染症や、肉芽腫・自己免疫の病気などがあり、RAGの変化による複合免疫不全が疑われている方

ご家族にSCIDの方がいて、症状のない大人のきょうだいなどが「自分もいつか発症するのでは」と心配されることもあります。このパネルの多くの型は常染色体潜性遺伝なので、症状のないご家族の検査は、多くの場合「保因者かどうか」を知るための検査になります。一方で、RAG1・RAG2の変化やADA欠損症には、大人になってから見つかる型も報告されています[9][7]。ご家族の原因の変化がわかっていれば、同じ変化をピンポイントで調べて、ご自身が保因者なのか、発症する組み合わせをもっているのかを確かめられます。知ったうえで、結婚や妊娠の計画を考えることができます。

一方で、リンパ球の検査でB細胞がいる(T-B+)とわかっている場合は、B細胞陽性重症複合免疫不全症パネルのほうが向いています。型がまだわからなければSCIDパネル、免疫の病気を広く調べたい場合は包括的原発性免疫不全症パネルを考えます(第1章の表)。

見た目や家族歴だけでは、原因はわかりません。原因の遺伝子が決まってはじめて、治療の段取りや、次のお子さんへの備えを具体的に考えられます。

\ 次の妊娠の前に知れば、選べることが増えます /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご夫婦とも保因者だった場合、妊娠したときの出生前診断(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

妊娠前に保因者かどうかを調べたい方へ(拡大版保因者スクリーニング) | お問い合わせはこちら

4. 調べる13遺伝子と、それぞれでわかる病気

この検査では、次の13遺伝子をまとめて調べます。同じ「T-B-」でも、原因の遺伝子によって、放射線への弱さ、免疫以外の症状、遺伝のしかたが違います。

🧬 B細胞陰性重症複合免疫不全症パネルで調べる13遺伝子

遺伝子 関係する病気(OMIM番号) 遺伝のしかた 特徴
ADA アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症(102700) 常染色体潜性 NK細胞も少ない。骨・聴力・肺など免疫以外の症状。酵素補充療法・遺伝子治療の選択肢がある
AK2 細網異形成症(267500) 常染色体潜性 好中球もいない。両側の感音難聴
CORO1A 免疫不全症8型(リンパ増殖を伴う)(615401) 常染色体潜性 国際分類ではB細胞のいる型(T-B+)
DCLRE1C アルテミス欠損症(放射線感受性SCID、アサバスカン型SCID)(602450)、オーメン症候群(603554) 常染色体潜性 NK細胞は正常。放射線に弱い
LIG4 LIG4症候群(606593) 常染色体潜性 NK細胞は正常。放射線に弱い。小頭症・成長の遅れ
NBN ナイミーヘン染色体不安定症候群(251260) 常染色体潜性 進行する小頭症。リンパ腫などのがんが多い。放射線に弱い
NHEJ1 重症複合免疫不全症(免疫不全症124型)(611291) 常染色体潜性 NK細胞は正常。放射線に弱い。小頭症・成長の遅れ
PGM3 免疫不全症23型(615816) 常染色体潜性 糖鎖の異常。骨格の異常や知的障害を伴うことがある。国際分類では高IgE症候群の群
PRKDC 免疫不全症26型(神経の異常を伴うことがある)(615966) 常染色体潜性 NK細胞は正常。放射線に弱い
RAC2 免疫不全症73B型(好中球の動きの異常とリンパ球減少)(618986) 常染色体顕性(新しく起きた変化のことがある) 機能が強まる変化でT細胞・B細胞が強く減る
RAG1 T-B-NK+のSCID(601457)、オーメン症候群(603554)、肉芽腫を伴う複合免疫不全(233650)など 常染色体潜性 NK細胞は正常。変化の程度で病型の幅が広い
RAG2 T-B-NK+のSCID(601457)、オーメン症候群(603554)、肉芽腫を伴う複合免疫不全(233650) 常染色体潜性 NK細胞は正常。変化の程度で病型の幅が広い
TTC7A 消化管の異常と免疫不全症候群1型(多発性腸閉鎖を伴う免疫不全)(243150) 常染色体潜性 腸がいくつもの場所でふさがる多発性腸閉鎖・腸の病気を伴う

※対象遺伝子は当院の検査内容による。病名・OMIM番号・遺伝のしかたは、国際分類(IUIS 2024年版)[1]と、OMIM番号を収載するUniProtで確認した。特徴は文献[1][7][11][12][13][14][15]による。

RAG1・RAG2:オーメン症候群・リーキーSCID・大人になってから見つかる型

RAG1・RAG2の変化では、典型的なSCIDだけでなく、オーメン症候群や、肉芽腫・自己免疫を伴う複合免疫不全まで、とても幅の広い病気が起こります[9]。RAG1とRAG2は、T細胞とB細胞が多様な受容体を作るためのV(D)J再構成を始める酵素の遺伝子です。ここが働かないと、T細胞もB細胞も育ちません。

働きが少し残る変化では、T細胞がある程度いる「リーキーSCID」や、皮膚の赤み・湿疹などを伴うオーメン症候群になることがあります。2008年には、RAG1またはRAG2の変化をもち、皮膚・粘膜・内臓に肉芽腫ができる免疫不全の女の子3人が報告されました[10]。症状が遅れて出る型では、自己免疫や炎症の病気が目立つこともあります[9]。そのため、「SCIDは赤ちゃんの病気」と決めつけず、大人になって見つかる方もこの検査の対象になります。

放射線に弱い型:DCLRE1C(アルテミス欠損症)・LIG4・NHEJ1・PRKDC・NBN

DCLRE1C・LIG4・NHEJ1・PRKDCは、切れたDNAをつなぎ直すしくみ(非相同末端結合)の遺伝子です。このしくみはV(D)J再構成にも使われるため、働かないとリンパ球が育たず、体の細胞も放射線に弱くなります[1]。国際分類では、これらはNK細胞が正常な、放射線に弱いT-B- SCIDとしてまとめられ、PRKDC・NHEJ1・LIG4には小頭症を伴うことがあると書かれています[1]。

アルテミス(DCLRE1C)欠損症は世界の各地で報告されていますが、北米のアサバスカン語を話す先住民では、共通の祖先に由来する変化によるSCIDが集まってみられます[11]。NHEJ1の変化は、成長の遅れ・小頭症・免疫不全をもつ5人の患者さんから見つかりました[12]。

NBNの両方に変化があるナイミーヘン染色体不安定症候群は、SCIDとは別の群に分類されますが[1]、進行する小頭症、免疫不全、放射線への弱さを伴います。GeneReviewsによると、これまでに報告された患者さんの40%が20歳までにがん(多くはリンパ腫)を発症しています[13]。NBNは染色体不安定症候群の検査にも、LIG4・NHEJ1・NBNは小頭症の遺伝子検査にも含まれています。

ADA欠損症:酵素補充・遺伝子治療という選択肢がある型

ADA欠損症は、アデノシンデアミナーゼという酵素が働かず、たまった物質がリンパ球を傷つけて起こる常染色体潜性遺伝の病気です。SCID全体の約15%(新生児スクリーニングで見つかったSCIDでは約12%)を占めるとされています[7]。T細胞・B細胞に加えてNK細胞も少なくなります[1]。

ADA欠損症では、免疫以外の症状にも目を向けます。GeneReviewsによると、米国の登録データ64人のうち28%に難聴がみられ、感音難聴・けいれん・運動の異常などの神経や行動の異常も報告されています。診断のときに約半数で肋骨の先端のくぼみなどの骨の変化があり、肺胞蛋白症を伴う感染によらない肺の病気も、ほかの型のSCIDより多いとされています[7]。また、15〜20%は1〜10歳ごろに見つかる遅い型で、まれに10〜40代で見つかる方もいます[7]。詳しくはアデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症のページをご覧ください。

そのほかの型:AK2・RAC2・TTC7A・PGM3・CORO1A

AK2の変化による細網異形成症では、リンパ球だけでなく、細菌から体を守る好中球(顆粒球)もほとんどいなくなり、両側の感音難聴を伴います[14]。好中球の数が少ないこと自体を調べる検査としては、好中球減少症の遺伝子検査もあります。

RAC2では、機能が強まる変化が1つあるだけで、T細胞・B細胞が強く減ることが報告されています。E62Kという変化は、ご両親にない新しい変化として3人の患者さんで見つかりました[15]。G12Rという変化では、骨髄の形成不全と好中球の欠如を伴い、細網異形成症に似ていますが難聴はなく、AK2の変化もありませんでした。新しく起きた変化をもつ方が移植で治ったあと、お子さんに受け継がれたことも報告されています[16]。

TTC7Aは、腸がいくつもの場所でふさがる多発性腸閉鎖を伴う免疫不全の原因で、国際分類では症候群を伴う複合免疫不全に入っています[1]。PGM3は糖鎖をつける働きに関わる遺伝子で、重い免疫不全に骨格の異常・特徴的な顔立ち・知的障害を伴う患者さんが報告され[17]、国際分類では高IgE症候群の群に入っています[1](高IgE症候群の検査)。CORO1Aの変化は、T細胞はいないもののB細胞とNK細胞はいるSCIDの患者さんで見つかりました[18]。国際分類でもB細胞のいる型に入っているので[1]、この遺伝子に変化が見つかったときは、リンパ球の検査の結果とあわせて解釈します。

5. 原因遺伝子がわかると、治療の選び方が変わる

SCIDを治すおもな方法は造血幹細胞移植で、早く移植するほど成績がよいことがわかっています。そのうえで、原因の遺伝子によって、移植の前処置の考え方や、移植以外の選択肢が変わります。当院は移植や治療を行っていません。治療は免疫不全症を専門とする医療機関で行われますが、その医療機関で治療を選ぶための大事な情報が、原因の遺伝子です。

北米の25施設で2000〜2009年に移植を受けたSCIDの赤ちゃん240人を調べた研究では、生後3.5か月までに移植を受けた赤ちゃんの生存率は94%でした。それより後に移植を受けた赤ちゃんでは、移植のときに感染症がないと90%、感染症が治っていると82%でしたが、感染症が続いていると50%まで下がりました[2]。HLAの型が合う兄弟姉妹から移植を受けた赤ちゃんの生存率は97%でした[2]。

🩺 わかった遺伝子で、変わること

原因の遺伝子 治療・見張りで変わること
DCLRE1C・LIG4・NHEJ1・PRKDC(放射線に弱い型) 移植の前処置で、アルキル化剤や放射線をできるだけ減らす考え方がとられる[19]。アルテミス欠損症では、アルキル化剤の使用と、成長の遅れ・歯の発育の異常・内分泌の晩期障害との関連が報告されている[20]
NBN・LIG4・NHEJ1 DNA修復の病気(ナイミーヘン症候群・LIG4欠損・Cernunnos-XLF欠損など)77人の移植では、生存は69%で、骨髄破壊的な強い前処置を受けた群は、強度を減らした前処置を受けた群より生存率が低かった[21]。NBNでは、不要な放射線被ばくを避け、画像検査はMRIや超音波が強く勧められている[13]。がんの見張りも大切
ADA 移植のほかに、酵素補充療法(移植や遺伝子治療までのつなぎとして勧められる)と遺伝子治療という選択肢がある[7]。難聴・神経・骨・肺の症状の見張り
RAG1・RAG2・DCLRE1C・LIG4・NHEJ1・PRKDC(NK細胞が正常な型) 国際分類で、移植した細胞が拒絶されるリスクが高いと書かれている[1]。移植の計画に関わる
AK2 好中球もいないため、細菌感染への備えが特に大切。両側の感音難聴があるので聴力の確認[14]
RAC2 常染色体顕性遺伝なので、ご両親の検査と、次のお子さんでの確率の考え方が潜性遺伝の型と違う(第7章)
TTC7A 免疫だけでなく、腸の病気への対応が必要になる[1]

※治療の方針は、それぞれの医療機関が患者さんごとに決めます。この表は、原因の遺伝子が治療の検討に関わる例を、文献から示したものです。

ADA欠損症の酵素補充療法と遺伝子治療

日本では2019年3月に、ADA欠損症の治療薬としてエラペグアデマーゼ(酵素補充療法の薬)が承認されました(医薬品医療機器総合機構の審査報告書・添付文書で確認)。GeneReviewsは、酵素補充療法を、移植や遺伝子治療ができるまでのつなぎとして最初に行う治療に勧めています[7]。

ADA欠損症のSCIDで移植を受けた106人の研究では、生存率は、HLAの型が合う兄弟姉妹からの移植で86%、合う血縁者からで81%、合う非血縁者からで66%、半分合う血縁者からで43%でした[22]。遺伝子治療では、欧州で2016年に、HLAの型が合う血縁のドナーがいないADA欠損症のSCIDに対する遺伝子治療薬が承認されています(欧州医薬品庁の公開情報、2026年10月時点で確認)。米国と英国で行われたレンチウイルスを使う遺伝子治療の臨床試験では、50人全員が2〜3年の時点で生存していました[23]。ただし、これは臨床試験の結果で、どの治療を選べるかは国や医療機関で違います。

6. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、13遺伝子のたんぱく質を作る部分と、その境目にある小さな変化(一塩基の変化・小さな挿入や欠失)と、ある程度の大きさの欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●読める範囲:次世代シーケンサー(NGS)で、遺伝子のたんぱく質を作る部分(エクソン)と、その境目(スプライス部位)を読みます。対象の領域の99%以上を、20回以上くり返して読める精度で調べます。読み取りが十分でない部分は、別の方法(サンガー法)で確かめます。
  • ●欠失・重複:遺伝子まるごとの欠失・重複(頬の粘膜と血液)と、2つ以上続くエクソンの大きさの欠失・重複(血液のみ)を見つけられます。1つのエクソンだけの欠失・重複は見つかることもありますが、ふだんは検出の対象ではありません。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
  • ●見つけられない変化:染色体の転座や逆位、繰り返し配列が長くなる変化、遺伝子の働きを調節する部分(プロモーター)やエクソンから離れたイントロンの奥の変化は、この検査では見つけられません。体の一部の細胞だけにある変化(モザイク)を見つけることを目的にした検査でもありません。腫瘍の組織では検査できません。
  • ●調べていない遺伝子:この検査は13遺伝子だけを調べます。B細胞のいる型に多いX連鎖のSCID(IL2RG)などは含まれていません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、この検査で調べていない遺伝子や、検出できない種類の変化が原因のことがあります。診断と治療は、リンパ球の検査などの結果にもとづいて続けられます。

⚠️ 造血幹細胞移植を受けたあとの方は、検体の種類を必ず先にご相談ください

移植を受けると血液の細胞はドナー由来になるため、血液は遺伝子検査に使えなくなります。2026年の研究では、移植のあとの頬の粘膜(口腔スワブ)にも、ドナーのDNAが中央値で20〜24%混じっていました[24]。移植を受けた方・受ける予定の方は、検体を選ぶ前に遺伝カウンセリングでお知らせください。

7. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。結果の報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたでも解説しています。

病的変異が見つかったら、次にできること

原因の遺伝子が決まると、「わかった」で終わらず、ご本人・ご家族・次のお子さんのそれぞれで、具体的に次の一手を打てるようになります。

  • ●ご本人:病名が決まり、移植の前処置の考え方や、ADA欠損症なら酵素補充療法・遺伝子治療という選択肢を、専門の医療機関で検討できます(第5章)。生ワクチンを避けること、放射線に弱い型ならX線・CTをできるだけ控えること、型ごとの合併症(難聴・がん・腸の病気など)の見張りも決まります。SCIDの赤ちゃんの輸血には、放射線照射を行い、白血球を除去した、サイトメガロウイルス陰性の血液製剤を使うことが勧められています[7]。
  • ●ご両親:潜性遺伝の型なら、ご両親がそれぞれ同じ遺伝子の変化をもつ保因者かを、ピンポイントで確かめられます。RAC2の型なら、ご両親のどちらかがもっているのか、新しく起きた変化なのかを確かめます。
  • ●きょうだい:HLAの型が合う兄弟姉妹は、移植のドナーの第一候補になります[2][7]。ドナーとして考える前に、そのきょうだいが同じ病気をもっていないかを、同じ変化を調べることで確かめられます。生まれたばかりのきょうだいも、生ワクチンの前に確かめることができます。
  • ●次のお子さん:ご家族の変化がわかっていれば、出生前検査や着床前検査が可能になり[7]、生まれてすぐの治療の準備にも役立ちます(下の「次のお子さんを考えるとき」)。
  • ●当院でのその後:結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、ご家族の検査や次の妊娠にどう備えるかを一緒に考えます。ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。

何も見つからなかったとき・VUSだったとき

13遺伝子に原因が見つからなかった場合は、この検査で調べていない遺伝子が原因のことがあります。リンパ球の検査の結果を見直したうえで、SCIDパネル・包括的原発性免疫不全症パネル・全エクソーム検査などを考えます。

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。研究が進んで、のちに病的バリアントかどうかがはっきりすることもあります。調べた目的とは別の病気の原因が見つかったときの扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

次のお子さんを考えるとき

常染色体潜性遺伝の型では、ご両親がどちらも保因者の場合、次のお子さんが同じ病気になる確率は、妊娠のたびに4分の1です。保因者になる確率は2分の1、変化を受け継がない確率は4分の1です。上のお子さんが病気かどうかで、次のお子さんの確率は変わりません。

RAC2の型(常染色体顕性遺伝)では、変化をもつ方のお子さんは、1人ごとに2分の1の確率で変化を受け継ぎます[16]。ご両親のどちらにも変化が見つからない新しい変化でも、親の卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)にだけ変化がある「モザイク」のことがあります。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は「最大で2分の1」とお伝えしています。

ご家族の原因の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます[7]。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。出生前にわかっていれば、生まれてすぐから感染を防ぐ準備や、移植の準備に早く取りかかれます。その病気で出生前診断をどう進めるかは、病気の重さなどを踏まえて一緒に考えますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。もちろん、出生前診断を受けずに産むことも、そのまま選べる選択肢です。

日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは遺伝性疾患をお持ちで海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで解説しています。

これから妊娠を考えるご夫婦は、妊娠の前に保因者かどうかを調べることもできます。このパネルの13遺伝子のうち、潜性遺伝の12遺伝子(RAC2以外)は、当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の遺伝子一覧に入っています(2026年10月に一覧で確認。男性版の対象は男性版の一覧でご確認ください)。すでに妊娠している方は、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(女性787遺伝子・男性714遺伝子。単独では受けられません)もあります。

男の子だけ?女の子も?結婚・妊娠の前に知っておけること

このパネルで調べる型の多くは常染色体潜性遺伝なので、男の子にも女の子にも同じように起こります。男の子に起こるX連鎖のSCIDは、B細胞のいる型に多い別の病気です(B細胞陽性SCIDパネル)。

ご家族にSCIDの方がいると、「結婚したら子どもに遺伝するのでは」と心配される方もいます。遺伝の確率は、病気の型と、ご自身とパートナーがそれぞれ変化をもっているかで決まります。潜性遺伝の病気では、ご本人とパートナーが同じ遺伝子に病的な変化をもつか、保因者か発症者かによって、お子さんへの確率が変わります。検査で変化が見つからなくても、保因者である可能性を完全には否定できません。ご家族の原因の変化がわかっていれば、ご自身が保因者かどうかと、パートナーの保因者検査で、お子さんへの確率を具体的に知ることができます。知ったうえで、出生前診断なども含めて選べることが増えます。詳しくは結婚前に考えたい遺伝性疾患のリスクもご覧ください。

8. 日本の制度(2026年10月時点)

重症複合免疫不全症は、指定難病65「原発性免疫不全症候群」に含まれます(厚生労働省の資料で確認)。小児慢性特定疾病では、免疫疾患の「複合免疫不全症」の中に、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症・細網異形成症・オーメン症候群などが個別に掲載されています。DNAリガーゼⅣ・Cernunnos・アルテミスの欠損症については、「1から9までに掲げるもののほか、複合免疫不全症」の解説で、T細胞・B細胞が減り、放射線への感受性が高いと説明されています(小児慢性特定疾病情報センターで確認)。

医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・頬の粘膜・唾液から選べ、オンライン診療にも対応しています。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・頬の粘膜・唾液
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

💴 費用・日数・検体

項目 内容
対象遺伝子 ADA、AK2、CORO1A、DCLRE1C、LIG4、NBN、NHEJ1、PGM3、PRKDC、RAC2、RAG1、RAG2、TTC7A(13遺伝子)
調べる変化 塩基配列の変化、欠失・挿入(料金に含まれます)
検査費用 税込330,000円
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります(55,000円)/VUS除外:意義がまだわからない変化を報告に含めない(無料)
検体 血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬の粘膜(スワブ)、唾液(採取キットをお送りします)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
オンライン診療 唾液・頬の粘膜・血液のいずれもオンライン診療で対応できます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採らないでください。造血幹細胞移植を受けた方は、検体を選ぶ前に必ずお知らせください(第6章)。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

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臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

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10. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「T-B-」は答えではなく、出発点です】

リンパ球の検査で「T-B-」とわかると、病名がついたように感じるかもしれません。けれども、このページで見てきたように、同じT-B-でも、原因の遺伝子によって、移植の前処置で放射線やアルキル化剤をどう考えるか、酵素補充療法や遺伝子治療という道があるか、がんや難聴の見張りが必要か、次のお子さんへの伝わり方まで違います。私は、T-B-という結果は答えではなく、原因を確かめるための出発点だと考えています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。原因がわかれば、治療をする医療機関は治療の段取りを組みやすくなり、ご家族はきょうだいや次のお子さんのことを具体的に考えられるようになります。知ったうえで次の妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 重症複合免疫不全症は完治しますか?

造血幹細胞移植などで免疫が作られるようになれば、長く生きていくことが期待できます。北米で2000〜2009年に移植を受けたSCIDの赤ちゃん240人の研究では、生後3.5か月までに移植を受けた赤ちゃんの生存率は94%でした。ただし、移植のあとも長く経過をみる必要があり、原因の遺伝子によって移植の前処置の考え方や、移植以外の選択肢(ADA欠損症の酵素補充療法・遺伝子治療など)が変わります。

Q2. 重症複合免疫不全症の寿命はどのくらいですか?

治療をしなければ、重い感染症のため、ほとんどの赤ちゃんが1歳を迎えられないとされています。一方で、移植を受けた赤ちゃん240人の研究では、5年生存率は74%で、生後3.5か月までに移植を受けた場合は94%でした。早く見つけて、感染症にかかる前に移植することが、見通しを大きく変えます。

Q3. 遺伝しますか?男の子と女の子で違いますか?

このパネルで調べる型の多くは常染色体潜性遺伝で、ご両親がどちらも保因者の場合、お子さんが同じ病気になる確率は妊娠のたびに4分の1です。男の子にも女の子にも同じように起こります。男の子に起こるX連鎖のSCIDは、B細胞のいる型に多い別の病気です。RAC2の型は常染色体顕性遺伝で、変化をもつ方のお子さんへは2分の1の確率で受け継がれます。

Q4. 新生児スクリーニングで再検査と言われました。SCIDなのでしょうか?

再検査や精密検査と言われただけで、SCIDと決まったわけではありません。愛知県などで赤ちゃん137,484人を調べた研究では、値が基準から外れたのは145人で、そのうち遺伝子の検査でSCIDと確定したのは2人でした。まずは精密検査でリンパ球の数などを確かめ、SCIDが疑われたときに、遺伝子検査で原因を確かめます。

Q5. 生ワクチンは受けられますか?

SCIDの赤ちゃんでは、BCGやロタウイルスワクチンなどの生ワクチンで、ワクチンの病原体による重い感染が起こることがあります。BCGを接種したSCIDの患者さん349人の研究では、51%に合併症がみられました。SCIDが疑われる場合や、ご家族にSCIDの方がいる場合は、接種の前に必ず主治医に伝えてください。

Q6. ADA欠損症とはどんな病気ですか?

アデノシンデアミナーゼという酵素が働かず、たまった物質がリンパ球を傷つけて起こる常染色体潜性遺伝の病気で、SCID全体の約15%を占めるとされています。難聴・神経・骨・肺など免疫以外の症状を伴うことがあります。移植のほかに酵素補充療法や遺伝子治療という選択肢があり、日本では2019年3月に酵素補充療法の薬(エラペグアデマーゼ)が承認されています。

Q7. 検査で何も見つからなかったら、SCIDではないのですか?

そうとは限りません。この検査は13遺伝子だけを調べるため、ほかの遺伝子や、この検査では見つけられない種類の変化が原因のことがあります。リンパ球の検査の結果を見直したうえで、SCIDパネル・包括的原発性免疫不全症パネル・全エクソーム検査などを考えます。

Q8. 大人になってから見つかることはありますか?

あります。RAG1・RAG2の変化では、肉芽腫や自己免疫の病気を伴う複合免疫不全として、遅れて見つかる型が報告されています。ADA欠損症でも、15〜20%は1〜10歳ごろに見つかる遅い型で、まれに10〜40代で見つかる方もいます。

🧬 原因を確かめて、治療とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。B細胞陰性重症複合免疫不全症の原因がわかれば、治療をする医療機関での治療の選び方だけでなく、きょうだいの確認や、次の妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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