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B細胞陽性重症複合免疫不全症(T-B+ SCID)の遺伝子検査|X連鎖重症複合免疫不全症(IL2RG)・JAK3欠損症など26遺伝子と遺伝する確率

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

B細胞陽性重症複合免疫不全症(T-B+ SCID)の遺伝子検査|X連鎖重症複合免疫不全症(IL2RG)・JAK3欠損症など26遺伝子と遺伝する確率

B細胞陽性重症複合免疫不全症(T-B+ SCID)は、T細胞がほとんど作られない一方で、B細胞は残っている型の重症複合免疫不全症(SCID)です。米国の新生児スクリーニングで見つかった典型的なSCIDでは、原因としていちばん多かったのがX連鎖重症複合免疫不全症(IL2RG遺伝子)で[2]、JAK3欠損症・IL7R欠損症もこの型に入ります。このページの遺伝子検査では、T-B+ SCIDと関連する免疫不全症の原因26遺伝子をまとめて調べます。X連鎖の型では、お子さんの原因がわかると、お母さんや姉妹が保因者かどうかを確かめられます。あなたのお子さんの1回の検査が、ご家族と次のお子さんを守る手がかりになります。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この遺伝子検査で何がわかりますか?

B細胞陽性重症複合免疫不全症の原因になるX連鎖重症複合免疫不全症(IL2RG)・JAK3欠損症・IL7R欠損症など、関連する免疫不全症を含めた26遺伝子に、病気の原因となる変化があるかを一度に調べます。原因がわかると、遺伝のしかた(X連鎖か常染色体潜性か)も決まります。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

新生児スクリーニングで再検査・要精密検査と言われ、T細胞は少ないがB細胞はいるとわかった赤ちゃん、X連鎖重症複合免疫不全症のお子さんがいるお母さん・姉妹、家族歴があって妊娠を考えている方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です(至急オプション55,000円で約7日短くなります)。検体は血液・抽出DNA・頬の粘膜・唾液で、唾液・頬の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。X連鎖の型なら、保因者のお母さんから生まれる男の子が発症する確率は2分の1です。ご家族の検査や、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 原因の遺伝子を知って、ご家族と次の計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 型がまだわからない方はSCIDパネル(91遺伝子)へ

1. B細胞陽性重症複合免疫不全症(T-B+ SCID)とは:症状と原因

B細胞陽性重症複合免疫不全症は、生まれつき体を守るT細胞がほとんど作られず、B細胞の数は保たれている重症複合免疫不全症です。治療をしないと重い感染症をくり返しますが、早く見つけて造血細胞移植などの治療を受けると、多くの赤ちゃんが助かるようになっています。英語では T-B+ SCID(severe combined immunodeficiency)と書き、「T細胞がいない(T−)・B細胞はいる(B+)」という意味です。

T細胞がいないのに、B細胞はいるとは

血液の中のリンパ球には、主に3つの種類があります。ウイルスに感染した細胞を見つけて攻撃し、免疫全体の司令塔にもなるT細胞、抗体を作るB細胞、感染した細胞をすばやく壊すNK細胞(ナチュラルキラー細胞)です。T細胞は、胸の中にある胸腺という臓器で育ちます。

T細胞による免疫と、抗体による免疫の両方がうまく働かない病気を「複合」免疫不全症と呼び、そのなかで最も重いものが重症複合免疫不全症(SCID)です。SCIDは、リンパ球の検査でどの細胞が少ないかによって型に分けられます。T細胞は少ないのにB細胞が残っている型が「B細胞陽性(T-B+)」で、B細胞も少ない型は「B細胞陰性(T-B−)」です。どの型かによって、考えられる原因の遺伝子が変わります(第5章の表)。国際免疫学会連合(IUIS)の分類でも、IL2RGやJAK3の型ではT細胞がとても少なく、抗体の一種であるIgAが低いことが示されています[4]。

症状はいつから?赤ちゃんの重症複合免疫不全症の症状

典型的なX連鎖重症複合免疫不全症の赤ちゃんは、生まれたときには元気に見えます。お母さんからもらった抗体が減ってくると感染しやすくなり、新生児スクリーニングが始まる前は、生後3〜6か月ごろに受診することが多かったとされています[1]。今は、症状が出る前に新生児スクリーニングで見つかることが多くなっています。一方で、症状が軽い「非典型的な型」では、小児期の後半や若い大人になるまで診断が遅れることもあります[1]。

症状が出る前に見つけることが大切な理由のひとつが、生ワクチンです。生ワクチンは、弱めた生きた病原体を使うワクチンで、SCIDの赤ちゃんでは重い感染症を起こすことがあります。

  • ●BCG:17か国28施設の研究では、BCGを受けたSCIDの患者349人のうち51%に合併症が起こり、全身に広がる型が34%、接種した場所の型が17%でした。生後1か月以内に接種した場合に合併症が多かったと報告されています[5]。日本ではBCGは生後5〜8か月に1回接種します(厚生労働省)。
  • ●ロタウイルスワクチン:ワクチンを受けたあとにSCIDと診断された赤ちゃん3人が、ワクチン由来のロタウイルスで下痢と脱水を起こしたと報告されています[6]。日本では生後6週から接種でき、厚生労働省は重症複合型免疫不全の方を「接種を受けられない方」としています(2026年10月時点で確認)。
  • ●輸血:SCIDの赤ちゃんに輸血をするときは、白血球を除き、放射線を当てた、サイトメガロウイルス陰性の血液製剤だけを使うことが勧められています[1]。

また、SCIDの赤ちゃんでは、お母さんのリンパ球が赤ちゃんの体に入り込んで残っていることがあり、リンパ球の検査の結果を読み違える原因になります。そのため、診断のときには母体由来のリンパ球が残っているかを確認し、赤ちゃん自身のT細胞と区別して評価することが必要とされています[1]。

重症複合免疫不全症は完治する?寿命は?

重症複合免疫不全症の標準の治療は、ほかの人の造血幹細胞を移して免疫を作り直す造血細胞移植です[1]。北米の多施設の研究では、生後3.5か月以内に移植を受けた赤ちゃんの生存率は、ドナーの種類にかかわらず94%でした[3]。同じ研究で、それより遅く移植を受けた赤ちゃんでは、感染症にかかっていなかった場合の生存率が90%、感染症が治ってから移植した場合が82%でした。HLA(白血球の型)が合うきょうだいからの移植では、ほかのドナーより5年生存が高かったとも報告されています[3]。米国の新生児スクリーニングの研究では、移植・酵素補充療法・遺伝子治療のいずれかを受けた赤ちゃんの92%が生存していました[2]。

X連鎖重症複合免疫不全症では、本人の造血幹細胞に正しい遺伝子を入れて戻す遺伝子治療の研究も進んでいます。昔の方法では白血病が起こる問題がありましたが、改良した方法を使った2019年の研究では、8人の赤ちゃんのうち7人で、3〜4か月のうちにT細胞とNK細胞の数が正常になったと報告されています[7]。2025年12月に更新された解説書(GeneReviews)では、遺伝子治療は移植が向かない場合などに検討され、海外の施設で臨床試験として行われているとされています[1]。

「完治するか」「寿命はどのくらいか」は、病気の型、見つかった時期、感染症の有無、ドナーなどで一人ひとり違うため、ひとつの数字で言い切ることはできません。治療は、移植を専門に行う医療機関で受けます(当院では治療は行っていません)。病気そのものの詳しい解説は重症複合免疫不全症(SCID)総論、移植のしくみは造血幹細胞移植のページでご覧いただけます。

どのくらいの頻度で起こる?

米国の11の新生児スクリーニングの記録をまとめた研究では、SCIDは約5万8千人に1人(95%信頼区間:4万6千人に1人〜8万人に1人)の頻度でした[2]。この研究で見つかった典型的なSCID42人の原因は、IL2RGが9人で最も多く、IL7Rが6人、ADAが5人、RAG1が4人、JAK3が3人でした[2]。日本全体の頻度は、まだ確かな数字がそろっていません。

2. X連鎖重症複合免疫不全症(IL2RG)とJAK3欠損症・IL7R欠損症:原因遺伝子と遺伝のしかた

B細胞陽性重症複合免疫不全症の原因には、X染色体にある遺伝子による「X連鎖」の型と、男女どちらにも起こる「常染色体潜性(劣性)」の型があります。どちらかによって、ご家族への影響も次のお子さんへの確率もまったく変わるため、原因の遺伝子を確かめることが出発点になります。遺伝のしかたの全体像は遺伝形式とはで解説しています。

X連鎖の型:保因者のお母さんから男の子へ(遺伝する確率)

IL2RG遺伝子は、リンパ球の表面にある「共通γ鎖」というたんぱく質を作る遺伝子です。共通γ鎖は、IL-2・IL-4・IL-7・IL-9・IL-15・IL-21という6つのサイトカインの受け皿(受容体)に共通して使われています[1]。そのため、この遺伝子が働かないと、T細胞やNK細胞が育つための信号が一度に途切れてしまいます。

IL2RGはX染色体にあるため、X連鎖重症複合免疫不全症はほとんどが男の子に起こります。お母さんが保因者の場合、妊娠のたびに2分の1の確率で変化が受け継がれ、受け継いだ男の子は発症し、女の子は保因者になります[1]。保因者の女性は、X染色体の働き方の偏りのため、ふつう症状が出ません[1]。くわしいしくみはX連鎖遺伝とは、保因者とはをご覧ください。

一方で、X連鎖重症複合免疫不全症の患者さんの半数以上は、お母さん側の男性の親族に、幼くして亡くなった方がいないとされています[1]。家族に同じ病気の人がいなくても起こる、ということです。家族の中で1人だけの場合は、お母さんが保因者である場合、お子さんで新しく起きた変化の場合、お母さんの卵子のもとになる細胞(生殖細胞)にだけ変化がある「モザイク」の場合が考えられます[1]。お母さんの血液で変化が見つからなくても、生殖細胞のモザイクの可能性が残るため、次のお子さんの確率はゼロにはなりません[1]。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。

移植などの治療を受けて大人になった男性の患者さんの場合は、X染色体の受け継ぎ方から、娘さんは全員が保因者になり、息子さんには受け継がれません。

常染色体潜性(劣性)の型:男女どちらにも(JAK3・IL7R・CD3・CD45など)

JAK3欠損症は、X連鎖重症複合免疫不全症と同じ「T細胞とNK細胞が少なく、B細胞は保たれる(T-B+NK−)」型になりますが、常染色体潜性(劣性)遺伝のため、男の子にも女の子にも起こります[1]。JAK3は、リンパ球が育つために欠かせない酵素で[8]、細胞の中で信号を伝えるJAK-STAT経路の一員です。

IL7R欠損症(T-B+NK+)、CD3の部品の欠損(CD3D・CD3E・CD247。T細胞が少ない〜いない、B細胞とNK細胞はいる)、CD45欠損症(PTPRC。T細胞がいない、B細胞はいる、NK細胞はいることもいないこともある)も、常染色体潜性(劣性)遺伝です[1]。NK細胞が残っているかどうかは、原因をしぼる手がかりになります。常染色体潜性(劣性)の重症複合免疫不全症の全体は、常染色体潜性(劣性)重症複合免疫不全症のページでも解説しています。

常染色体潜性(劣性)遺伝では、ご両親がともに同じ遺伝子の保因者で、妊娠のたびに4分の1の確率でお子さんが発症し、2分の1の確率で保因者になります。保因者のご両親には、ふつう症状がありません。しくみは潜性遺伝(劣性遺伝)とはで解説しています。

T-B+のほかに、このパネルが調べる病気

このパネルの26遺伝子には、典型的なT-B+ SCIDの遺伝子のほかに、SCIDより軽いことが多い複合免疫不全症や、免疫不全を伴う症候群の遺伝子も入っています。たとえば、CD4のT細胞が少なくなるMHCクラスII欠損症、CD8のT細胞がいなくなるCD8欠損症、自己免疫を伴うことがあるZAP-70欠損症、T細胞がだんだん減っていくPNP欠損症、アトピーやアレルギーが重く出やすいDOCK8欠損症などです[4]。

新生児スクリーニングでT細胞が少ないと出る原因は、SCIDだけではありません。米国の研究では、SCID以外でT細胞が少なかった赤ちゃん136人のうち、ディジョージ症候群(22q11.2欠失)が78人で最も多く、21トリソミー21人、毛細血管拡張性運動失調症4人、18トリソミー4人、CHARGE症候群3人などでした[2]。このパネルにTBX1(22q11.2欠失症候群に関係する遺伝子)、CHD7(CHARGE症候群)、ATM(毛細血管拡張性運動失調症)が入っているのは、こうした病気も見分けるためです。ただし、21トリソミーのような染色体の数の変化や、22q11.2欠失症候群のような染色体の一部の欠失は、遺伝子の配列を読むこの検査の得意分野ではありません。疑われるときは、マイクロアレイ染色体検査などの染色体の検査が向いていることがあります。

3. 調べる26遺伝子と、それぞれでわかる病気

この検査では、次の26遺伝子をまとめて調べます。病名と遺伝のしかたは、国際免疫学会連合(IUIS)の2024年の分類[4]とGeneReviews[1]にもとづきます。遺伝のしかたが2つある遺伝子は、両方を書いています。

🧬 B細胞陽性重症複合免疫不全症パネルの26遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた 特徴
IL2RG X連鎖重症複合免疫不全症(共通γ鎖欠損症) X連鎖 T−B+NK−。米国の新生児スクリーニングで最も多い原因
JAK3 JAK3欠損症 常染色体潜性 T−B+NK−。男女どちらにも起こる
IL7R IL-7受容体α鎖欠損症 常染色体潜性 T−B+NK+
CD3D CD3δ欠損症 常染色体潜性 T細胞が少ない〜いない、B+NK+
CD3E CD3ε欠損症 常染色体潜性 T細胞が少ない〜いない、B+NK+
CD247 CD3ζ欠損症 常染色体潜性 T細胞が少ない〜いない、B+NK+
PTPRC CD45欠損症 常染色体潜性 T−B+、NK細胞はいることもいないこともある
CORO1A コロニン1A欠損症 常染色体潜性 T細胞がとても少ない、B細胞は正常。胸腺は見える
ZAP70 ZAP-70欠損症 常染色体潜性 自己免疫を伴うことがある
CD8A CD8欠損症 常染色体潜性 CD8のT細胞がいない(CD4は正常)。症状がないこともある
CIITA MHCクラスII欠損症(露出リンパ球症候群2型) 常染色体潜性 CD4のT細胞が少ない。発育の遅れ、呼吸器・消化管の感染
RFX5 MHCクラスII欠損症(露出リンパ球症候群2型) 常染色体潜性 同上
RFXANK MHCクラスII欠損症(露出リンパ球症候群2型) 常染色体潜性 同上
RFXAP MHCクラスII欠損症(露出リンパ球症候群2型) 常染色体潜性 同上
PNP プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)欠損症 常染色体潜性 T細胞がだんだん減る。自己免疫性溶血性貧血、神経の症状
ORAI1 ORAI1欠損症 常染色体潜性 T細胞の活性化がうまくいかない。自己免疫、外胚葉の形成異常、筋肉の症状
STIM1 STIM1欠損症 常染色体潜性 ORAI1欠損症と同じグループの病気
DOCK8 DOCK8欠損症 常染色体潜性 感染のくり返し、重いアトピー・アレルギー、がんになりやすい
IL2RA CD25欠損症 常染色体潜性 免疫の調節がうまくいかない。感染のくり返し、自己免疫の症状
FOXN1 FOXN1欠損症(ヌード型)/FOXN1の片方の働きの低下 常染色体潜性/常染色体顕性 胸腺の上皮がうまく作られない。重い感染
STAT5B STAT5B欠損症 常染色体潜性/常染色体顕性 成長ホルモンが効きにくい低身長、湿疹
SP110 肝静脈閉塞症を伴う免疫不全症(VODI) 常染色体潜性 肝臓の静脈の閉塞、ニューモシスチス肺炎・サイトメガロウイルス・カンジダにかかりやすい
ATM 毛細血管拡張性運動失調症 常染色体潜性 T細胞がだんだん減る。運動失調、白目の毛細血管拡張、リンパ系のがん、放射線に弱い
RMRP 軟骨毛髪低形成症 常染色体潜性 手足の短い低身長、髪が細く少ない、骨髄の働きの低下。T細胞は正常〜とても少ない
CHD7 CHARGE症候群 常染色体顕性 目のコロボーマ、心臓の病気、後鼻孔閉鎖など。一部はSCIDに似た免疫不全
TBX1 TBX1欠損症(22q11.2欠失症候群に関係する遺伝子) 常染色体顕性 T細胞は少ない〜正常。新生児スクリーニングでTRECが低く出ることがある

※病名・遺伝のしかた・特徴は、国際免疫学会連合(IUIS)2024年分類[4]、リンパ球の型(T・B・NK)はGeneReviews[1]による。IL2RA(CD25欠損症)の病名と遺伝のしかたはOMIM(606367)の記載による。T−は「T細胞がいない」、B+は「B細胞がいる」の意味です。

4. 新生児スクリーニング(TREC)で再検査・要精密検査と言われたら

重症複合免疫不全症の新生児スクリーニングは、生後数日の赤ちゃんのろ紙の血液で、T細胞が作られている印(TREC)を測る検査です。TRECが低いという結果は「T細胞が少ないかもしれない」というふるい分けで、重症複合免疫不全症と決まったわけではありません。遺伝子検査は、精密検査でT細胞が少ないとわかったあとに、その原因を確かめる役割を持っています。

TREC(T-cell receptor excision circles)は、T細胞が育つ途中でできる小さな輪の形のDNAです。新しくT細胞が作られていればTRECが見つかり、作られていなければ低くなります。TRECが低い・見つからないという結果は、意味のあるT細胞の減少(1マイクロリットルあたり1,500個未満)を示すとされています[1]。新生児スクリーニング全体のしくみは新生児スクリーニングで解説しています。

日本での実施状況(2026年10月時点)

日本では、こども家庭庁が令和5年度から、都道府県・指定都市で重症複合免疫不全症(SCID)と脊髄性筋萎縮症(SMA)の2つを対象にした新生児マススクリーニングの実証事業をモデル的に行っています。参加している自治体は、令和5年度の21自治体から、令和6年度には38自治体(27都府県・11指定都市)に増えました(こども家庭庁の資料、2026年2月)。こども家庭庁は、結果を踏まえて全国展開を目指すとしています(2025年12月の資料)。

費用の扱いは自治体ごとに違います。たとえば神奈川県では、実証事業に参加した場合、2疾患の検査に追加の費用はかからない(採血料は自己負担になる場合がある)と案内しています。お住まいの地域の扱いは、自治体の案内でご確認ください。

「疑い」と言われたら、まず精密検査を

スクリーニングで疑いがあると言われたら、自治体から案内される医療機関で精密検査を受けます。精密検査で病気ではないとわかることもあります(神奈川県の案内)。米国の研究でも、スクリーニングで見つかった赤ちゃんの中には、SCIDではないT細胞の減少が多く含まれていました(第2章)[2]。

精密検査で、T細胞が少なくB細胞はいる(T-B+)とわかった場合に、このページの遺伝子検査が役に立ちます。原因の遺伝子がわかると、X連鎖か常染色体潜性かが決まり、お母さんや姉妹の検査、次のお子さんへの備え(第8章)まで具体的に考えられるようになります。治療を受ける医療機関での遺伝子検査とは別に、ご家族の検査や妊娠の計画について臨床遺伝専門医と相談したい、という方もご相談ください。

5. どの検査を選ぶ?SCIDパネル(全体)・B細胞陰性・B細胞陽性の選び分け

重症複合免疫不全症の遺伝子検査は、リンパ球の検査でT細胞・B細胞・NK細胞のどれが少ないかによって、選ぶ検査が変わります。当院では、SCIDの遺伝子検査を3つ用意しています。

🔍 リンパ球の検査の結果で選ぶ、SCIDの遺伝子検査

リンパ球の検査の結果 主な原因の遺伝子(例) 向いている検査
T−B+NK−(T細胞とNK細胞が少なく、B細胞はいる) IL2RG(X連鎖)、JAK3 このページの検査(B細胞陽性SCIDパネル・26遺伝子)
T−B+NK+(T細胞が少なく、B細胞とNK細胞はいる) IL7R、CD3D・CD3E・CD247、PTPRC このページの検査
CD4だけ少ない・CD8だけいない MHCクラスII欠損症(CIITA・RFX5・RFXANK・RFXAP)、CD8A、ZAP70 このページの検査
T−B−NK+(T細胞とB細胞が少なく、NK細胞はいる) RAG1、RAG2 など B細胞陰性SCIDパネル(13遺伝子)
T−B−NK−(3つとも少ない) ADA など B細胞陰性SCIDパネル
T細胞が少ないが、B細胞・NK細胞の数をまだ測っていない/型がはっきりしない 上のすべて SCIDパネル(91遺伝子)
感染をくり返すが、SCIDかどうかも、どの免疫の病気かもしぼれない 複合免疫不全・抗体の病気・食細胞の病気など 包括的原発性免疫不全症NGSパネル

※リンパ球の型と遺伝子の対応はGeneReviews[1]とIUIS分類[4]による。どの検査が合うかは、検査の結果やご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

正直にお伝えすると、このページの26遺伝子は、すべてSCIDパネル(91遺伝子)にも含まれていて、料金も同じ税込330,000円です。B細胞陰性SCIDパネルとは、CORO1Aが共通です。そのため、精密検査でT-B+とはっきりわかっている場合はこのページの検査を、まだ型がわからない場合は、より多くの遺伝子を調べるSCIDパネルを選ぶのが基本です。このほか、DOCK8欠損症のように湿疹や皮膚・肺の感染が目立つ場合は高IgE症候群パネルを、免疫以外の症状も多く病気をしぼれない場合は全エクソーム検査(WES)を考えることがあります。

6. この遺伝子検査が向いている人

T-B+ SCIDやその疑いがあり原因を確かめたい赤ちゃん・お子さんと、X連鎖重症複合免疫不全症のご家族(お母さん・姉妹)に向く検査です。見た目や家族歴だけでは、ご家族が保因者かどうかは判断できません。

  • ●新生児スクリーニングで再検査・要精密検査と言われ、精密検査でT細胞は少ないがB細胞はいるとわかった赤ちゃん
  • ●重い感染症のくり返し、治りにくい口のカンジダ、ニューモシスチス肺炎、BCGや生ワクチンのあとの重い感染などから、SCIDを疑われたお子さん
  • ●X連鎖重症複合免疫不全症のお子さんがいる(いた)お母さんや、その姉妹で、保因者かどうかを知りたい方
  • ●重症複合免疫不全症の家族歴があり、結婚や妊娠を考えている方
  • ●すでにSCIDと診断されているが、原因の遺伝子がまだわかっていない方

この検査より別の検査が向いている場合

リンパ球の型がまだわからない場合はSCIDパネル(91遺伝子)、B細胞も少ない場合はB細胞陰性SCIDパネルのほうが向いています(第5章)。ご家族ですでに原因の変化がわかっている場合は、その変化だけを調べる方法もありますので、遺伝カウンセリングでご相談ください。染色体の病気が疑われる場合は、染色体の検査を考えます。

\ 名前がつくと、治療と予防接種の次の一手が決まります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

原因の遺伝子がわかると、移植や遺伝子治療の選び方、ご家族の検査の方針が具体的になります。SCIDが疑われる場合は、遺伝子検査の結果を待たず、生ワクチンの接種を避けるなどの対応を専門の医療機関で進めます。臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングを行います。

お問い合わせはこちら | B細胞も少ない方はB細胞陰性SCIDパネルへ

7. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、26遺伝子の配列の小さな変化(1文字の置き換わりや、小さな挿入・欠失)と、条件を満たした場合の遺伝子単位の大きな欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●調べる場所:たんぱく質を作る遺伝子では、たんぱく質を作る部分(コード領域)と、その両端に接するイントロンの10塩基ほど(スプライス部位)を読みます。スプライス部位は、遺伝子の読み取りに使う部分と捨てる部分の境目で、ここが変わると、たんぱく質が正しく作られなくなることがあります。26遺伝子のうちRMRPは、たんぱく質を作らずRNAとして働く遺伝子のため、この「コード領域」の説明には当てはまりません。読み取りの質が低い部分は、別の方法(サンガー法)でも確かめます。
  • ●大きな欠失・重複:遺伝子1つ分まるごとの欠失・重複(頬の粘膜・血液)と、となり合う2つ以上のエクソンの欠失・重複(血液のみ)を調べられます。エクソン1つだけの欠失・重複は、見つかることはありますが、ふつうは検出の対象外です。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
  • ●わからない変化:染色体の一部の入れかわり(転座・逆位)、同じ配列の繰り返しが長くなる変化(リピート伸長)、遺伝子のスイッチの部分(プロモーター)や、エクソンから20塩基以上離れた深い部分(深部イントロン)の変化の多くは、この検査ではわかりません。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけることは、この検査の目的に含まれていません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知識ではまだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:この検査は26の遺伝子だけを調べるもので、B細胞陽性重症複合免疫不全症の原因の遺伝子をすべて含んでいるわけではありません。原因が見つからなくても病気を完全に否定することはできず、リンパ球の検査などの結果にもとづく診断と管理が引き続き大切です。
📊 読み取りの深さ(カバレッジ)について

この検査は、調べる遺伝子の領域の99%以上を、20回以上重ねて読み取るように作られています(≥99% at 20x)。同じ場所を何度も読むほど、読み間違いと本当の変化を見分けやすくなります。

造血細胞移植を受けたあとの検体について

造血細胞移植を受けたあとは、血液の細胞がドナーの細胞に置きかわるため、血液ではご本人の生まれ持った遺伝子を正しく調べられないことがあります。生まれ持った変化を確かめるには、皮膚の細胞(線維芽細胞)のような血液以外の検体が勧められ、唾液や頬の粘膜には白血球が混じって結果の解釈が難しくなることがあると報告されています[9]。当院でお受けしている検体は血液・抽出DNA・頬の粘膜・唾液ですので、移植を受けたあとの方は、検査の前に遺伝カウンセリングでご相談ください。

8. 病的変異が見つかったら、次にできること

原因の遺伝子がわかると、「わかって終わり」ではなく、ご本人・ご家族・次のお子さんのそれぞれで、次にできることがはっきりします。結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。次にどうするかも、遺伝カウンセリングで一緒に考えます(遺伝カウンセリング料は第10章のとおりです)。

お子さんご本人:病名の確定と、治療・予防接種の備え

病名が確定すると、移植を急ぐかどうか、どんな移植や治療が選べるかを、専門の医療機関で具体的に考えられるようになります。X連鎖重症複合免疫不全症では、移植のほかに、海外の臨床試験として遺伝子治療も行われています[1][7]。BCGやロタウイルスワクチンなどの生ワクチンを避けること、輸血には放射線を当てた血液製剤を使うことなどの備えは、SCIDが疑われた段階から、遺伝子検査の結果を待たずに専門の医療機関で進めます(第1章)[1]。きょうだいを移植のドナーの候補にするときにも、原因の変化がわかっていれば、そのきょうだいが同じ病気でないかを確かめることができます。治療は専門の医療機関で受けていただきます(当院では移植・治療・予防接種は行っていません)。

症状のないご家族:お母さん・姉妹・パートナーの検査

X連鎖の型では、保因者かどうかを確かめ、次のお子さんへの確率を考えるために、お母さんの遺伝子検査が勧められています[1]。お子さんで変化がわかっていれば、その場所に絞って調べられます。お子さんの検査ができない場合は、お母さんの遺伝子の配列を読み、見つからなければ欠失・重複を調べる方法があります[1]。お母さんが保因者だった場合、その姉妹も保因者である可能性があるため、姉妹が自分のことを知る手がかりになります。症状のないご家族の検査は、ご本人の同意のうえで行います。

常染色体潜性(劣性)の型では、ご両親がそれぞれ保因者かを確かめます。ごきょうだいが将来パートナーと子どもを考えるときは、パートナーが同じ遺伝子の保因者かを調べる拡大版保因者スクリーニングも選択肢です。当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・1009遺伝子)の一覧には、このパネルの遺伝子のうちIL2RG・JAK3・IL7R・CD3D・CD3E・CD247・PTPRC・ZAP70・CD8A・CIITA・RFX5・RFXANK・RFXAP・PNP・DOCK8・IL2RA・CORO1A・FOXN1・SP110・RMRP・ATMが入っています(ORAI1・STIM1・STAT5Bは入っていません。2026年10月に一覧で確認)。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラスもあります(NIPTとは別の検査で、単独では受けられません)。

次のお子さんを考えるとき:知ってから選べること

ご家族の原因の変化がわかっていると、妊娠中に赤ちゃんを調べる出生前診断や、着床前の検査が可能になります。出生前に調べておくと、生まれたあとの治療に向けて、移植のドナー探しや感染を防ぐ準備ができるとされています[1]。出生前診断を受けない場合も、リスクのある男の子は、生まれてすぐ感染から守られる環境に置き、早く検査を受けることが勧められています[1]。

絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。

当院のNIPTで調べられるのは、このパネルの遺伝子のうちCHD7(CHARGE症候群)で、ダイヤモンドプランとインペリアルプランの単一遺伝子の対象に入っています。また、22q11.2欠失症候群は、スタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・双子マックス・インペリアルのすべてのプランで、微小欠失として調べます。一方、IL2RG・JAK3・IL7RなどのSCIDの主な遺伝子は、どのプランの対象にも入っていません。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。

日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。出生前診断を受けずに産むことも、そのまま選べる選択肢です。どの選択をされても、当院はその選択を尊重します。

陰性だったとき・VUSが見つかったとき

原因が見つからなかった場合は、この検査に含まれない遺伝子や、この検査で検出できない変化が原因の可能性があります(第7章)。リンパ球の検査の結果に合わせて、SCIDパネル(91遺伝子)や全エクソーム検査など、次の検査を考えます。意義がまだわからない変化(VUS)は、それだけで診断やご家族の発症リスクの判定には使いません。ただし、その変化の意味を明らかにするために、ご家族の検査を行うことがあります。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。結果の伝え方は、当院の二次的所見の開示方針もあわせてご覧ください。

9. 日本の制度(2026年10月時点)

X連鎖重症複合免疫不全症は、小児慢性特定疾病の「免疫疾患」のうち「複合免疫不全症」の対象疾病に掲載されています(告示番号30)。同じ分類には、PNP欠損症・CD8欠損症・ZAP-70欠損症・MHCクラスII欠損症と、「1から9までに掲げるもののほか、複合免疫不全症」が並んでいます。毛細血管拡張性運動失調症やディ・ジョージ症候群も、免疫疾患の別の分類に掲載されています(小児慢性特定疾病情報センターで確認)。

指定難病では、原発性免疫不全症候群が指定難病65です。難病情報センター(2026年1月更新)は、重症複合免疫不全症を最も重いタイプとし、早期に造血細胞移植が選ばれるとしています。病気によっては医療費助成の対象にならない場合もあるとされているため、認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の粘膜の検体なら、オンライン診療で遺伝カウンセリングを受けてから、検体を当院へ送っていただけます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の提出血液・唾液・頬の粘膜
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
調べる遺伝子 26遺伝子(ATM、CD247、CD3D、CD3E、CD8A、CHD7、CIITA、CORO1A、DOCK8、FOXN1、IL2RA、IL2RG、IL7R、JAK3、ORAI1、PNP、PTPRC、RFX5、RFXANK、RFXAP、RMRP、SP110、STAT5B、STIM1、TBX1、ZAP70)
調べる内容 塩基配列・欠失/挿入(料金に含まれます)
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間
至急オプション 55,000円(結果までの期間が約7日短くなります)
VUS除外 無料(VUS=病気との関係がまだよくわかっていない変化)
検体 血液(EDTA採血管〔紫色のキャップ〕4mL×2本)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬の粘膜、唾液(ご希望により採取キットをお送りします)
オンライン診療 唾液・頬の粘膜・血液のいずれもオンライン診療が可能です。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 次のお子さんを考える前に、原因を知っておく /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

原因がわかっていれば、次の妊娠で出生前診断を計画できます。当院では羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます。

お問い合わせはこちら | パートナーの保因者検査について

11. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「家族に同じ病気の人はいない」でも、検査をしないと何も言えない】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

X連鎖重症複合免疫不全症は、患者さんの半数以上で、お母さん側の男性の親族に、幼くして亡くなった方がいないとされる病気です。「家族に同じ病気の人はいないから、うちは関係ない」「お母さんの血液で見つからなかったから、もう大丈夫」という印象だけで、次の妊娠の計画を決めてしまわないでほしいと考えています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、お子さんの治療の選び方だけでなく、ご家族の健康や、これからの妊娠・出産の計画を考えるときにも、ずっと役に立ちます。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. X連鎖重症複合免疫不全症とJAK3欠損症の違いは?

どちらもT細胞とNK細胞が少なく、B細胞は保たれる同じ型(T-B+NK−)の重症複合免疫不全症です。違いは原因の遺伝子と遺伝のしかたです。X連鎖重症複合免疫不全症はX染色体にあるIL2RG遺伝子が原因で、ほとんどが男の子に起こります。JAK3欠損症は常染色体潜性(劣性)遺伝で、男の子にも女の子にも起こります。見た目や血液検査だけでは区別できないため、遺伝子検査で原因を確かめます。

Q2. 重症複合免疫不全症は遺伝しますか?遺伝する確率は?

遺伝する病気です。X連鎖の型では、お母さんが保因者なら、妊娠のたびに2分の1の確率で変化が受け継がれ、受け継いだ男の子は発症し、女の子は症状の出ない保因者になります。常染色体潜性(劣性)の型では、ご両親がともに保因者の場合、妊娠のたびに4分の1の確率でお子さんが発症します。どちらの型かは、遺伝子検査で原因がわかってはじめて決まります。

Q3. 新生児スクリーニングで再検査・要精密検査と言われました。この検査を受けるべきですか?

まず、自治体から案内される専門の医療機関で精密検査(リンパ球の数や種類を調べる検査など)を受けてください。スクリーニングで引っかかっても、重症複合免疫不全症ではない場合もあります。精密検査でT細胞が少ないとわかり、原因の遺伝子を確かめたいときや、ご家族の検査・次の妊娠への備えを考えたいときに、この遺伝子検査が役に立ちます。

Q4. 重症複合免疫不全症は完治しますか?

造血細胞移植で免疫を作り直すことが標準の治療で、北米の多施設の研究では、生後3.5か月以内に移植を受けた赤ちゃんの生存率は94%でした。X連鎖の型では、海外で遺伝子治療の臨床試験も行われています。どの治療が合うか、どこまで回復するかは一人ひとり違うため、専門の医療機関で相談します。

Q5. 保因者のお母さん・姉妹も検査できますか?

できます。お子さんで原因の変化がわかっていれば、お母さんや姉妹が同じ変化を持っているかを、その場所に絞って調べられます。X連鎖重症複合免疫不全症の保因者の女性は、ふつう症状が出ません。お子さんの検査ができない場合も、お母さんの遺伝子を調べる方法があります。どちらの場合も、検査の前に遺伝カウンセリングでご説明します。

Q6. 家族に重症複合免疫不全症の人がいます。結婚や妊娠の前に何ができますか?

ご家族の病気を理由に、結婚や妊娠をあきらめる必要はありません。ご自身が原因の変化を持っているか、パートナーが同じ遺伝子の保因者かを検査で確かめると、お子さんへの確率が具体的にわかります。そのうえで、妊娠したときの出生前診断や、生まれてすぐの検査など、選べる道を前もって考えられます。どの選択をされても、当院はその選択を尊重します。

Q7. 検査で原因が見つからなかったら、病気ではないのですか?

そうとは限りません。この検査は26の遺伝子を調べるもので、原因の遺伝子がすべて含まれているわけではなく、調べ方の限界もあります。症状やリンパ球の検査の結果とあわせて、より多くの遺伝子を調べる検査や、全エクソーム検査などを考えます。

Q8. 難病・小児慢性特定疾病の対象ですか?

X連鎖重症複合免疫不全症は、小児慢性特定疾病の「複合免疫不全症」の対象疾病に掲載されています。原発性免疫不全症候群は指定難病65です(2026年10月時点)。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。

🧬 一度の検査で、お子さんとご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。B細胞陽性重症複合免疫不全症の原因がわかれば、お子さんの治療と予防接種の備えだけでなく、お母さん・姉妹の保因者の検査や、次の妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Allenspach EJ, Rawlings DJ, Petrovic A, Chen K. X-Linked Severe Combined Immunodeficiency. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2003 (Updated 2025 Dec 4). [NCBI Bookshelf NBK1410]
  • [2] Kwan A, Abraham RS, Currier R, et al. Newborn screening for severe combined immunodeficiency in 11 screening programs in the United States. JAMA. 2014;312(7):729-738. [DOI: 10.1001/jama.2014.9132](PMID: 25138334)
  • [3] Pai SY, Logan BR, Griffith LM, et al. Transplantation outcomes for severe combined immunodeficiency, 2000-2009. N Engl J Med. 2014;371(5):434-446. [DOI: 10.1056/NEJMoa1401177](PMID: 25075835)
  • [4] Poli MC, et al. Human inborn errors of immunity: 2024 update on the classification from the International Union of Immunological Societies Expert Committee. J Hum Immun. 2025;1(1):e20250003. [DOI: 10.70962/jhi.20250003]
  • [5] Marciano BE, et al. BCG vaccination in patients with severe combined immunodeficiency: complications, risks, and vaccination policies. J Allergy Clin Immunol. 2014;133(4):1134-1141. [DOI: 10.1016/j.jaci.2014.02.028]
  • [6] Patel NC, Hertel PM, Estes MK, et al. Vaccine-acquired rotavirus in infants with severe combined immunodeficiency. N Engl J Med. 2010;362(4):314-319. [DOI: 10.1056/NEJMoa0904485]
  • [7] Mamcarz E, et al. Lentiviral gene therapy combined with low-dose busulfan in infants with SCID-X1. N Engl J Med. 2019;380(16):1525-1534. [DOI: 10.1056/NEJMoa1815408]
  • [8] Russell SM, et al. Mutation of Jak3 in a patient with SCID: essential role of Jak3 in lymphoid development. Science. 1995;270(5237):797-800. [DOI: 10.1126/science.270.5237.797]
  • [9] Hwang SM. Genomic testing for germline predisposition to hematologic malignancies. Blood Res. 2024;59:12. [DOI: 10.1007/s44313-024-00012-y]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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