この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

好中球減少症の遺伝子検査は、生まれつきの好中球減少症の原因になる21の遺伝子を、1回でまとめて調べる検査です。子どもの好中球減少症の多くは、自己免疫性好中球減少症のように自然に良くなるタイプで、遺伝子を調べる必要はありません。一方で、重い感染をくり返す、好中球の少ない状態がずっと続く、周期的に下がる、ご家族にも同じ方がいる、といった場合は、生まれつきの原因を確かめる意味があります。原因の遺伝子がわかると、治療の考え方、骨髄異形成症候群・白血病への見張り、次のお子さんへの備えが、具体的に決まります。このページでは、心配の少ない好中球減少との見分け方から、21遺伝子でわかる病気、結果のあとにできることまで、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
重症先天性好中球減少症・周期性好中球減少症・シュワッハマン・ダイアモンド症候群など、生まれつきの好中球減少症の原因になる21遺伝子に、病気の原因となる変化があるかを調べます。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
好中球の少ない状態が続き、重い感染をくり返す方・周期的に下がる方・ご家族にも同じ方がいる方・ほかの症状を伴う方です。乳幼児の好中球減少症は、約95%が自然に良くなったという報告もあり、まず経過を見ることも多くあります。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、治療の方針、血液の病気への見張り、ご家族や次のお子さんへの影響を具体的に考えられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. 好中球減少症の遺伝子検査でわかること
この検査でわかるのは、好中球減少症が「生まれつきの遺伝子の変化」によるものかどうか、そして、どの遺伝子の変化によるものかです。原因の遺伝子によって、病気の名前、治療の考え方、将来の見張り方、ご家族への伝わり方が変わります。生まれ持った遺伝子は一生変わらないので、一度の検査でわかったことは、この先ずっと使える情報になります。
遺伝子検査そのものの基本は、遺伝子検査(遺伝学的検査)とはで解説しています。この検査では、次世代シークエンサーを使って、21の遺伝子をまとめて読みます。
好中球減少症とは:好中球の数と重さの目安
好中球減少症とは、血液中の好中球(細菌やカビから体を守る白血球の一種)が少ない状態です。欧州血液学会などがまとめた2023年の診療ガイドラインは、好中球の数(好中球絶対数)で重さを次のように分けています[1]。
🩸 好中球の数と重さの目安
※2023年の欧州の診療ガイドライン[1]による(ガイドラインでは ×109/L で表記。1.0×109/L=1,000/μL)。
「白血球減少症」とよく混同されますが、白血球には好中球のほかにリンパ球なども含まれます。白血球減少症は白血球全体が少ないこと、好中球減少症はそのうちの好中球が少ないことを指します。感染を防ぐ力に直接かかわるのは好中球の数なので、血液検査では白血球の数だけでなく、好中球の数(白血球の分画)を見ることが大切です。
なお、抗がん剤の治療中に起こる好中球減少や発熱性好中球減少症は、薬の影響による一時的なもので、このページの検査の対象ではありません。このページでお話しするのは、薬などのはっきりした原因がないのに好中球が少ない状態が続く場合です。
子どもの好中球減少症の多くは、自然に良くなるタイプ
乳幼児の好中球減少症で最も多いのは、自分の好中球に対する抗体ができて好中球が減る「自己免疫性好中球減少症」で、多くは自然に良くなります。ドイツで乳幼児240人を調べた研究では、診断されたのはおもに生後5〜15か月で、95%が自然に良くなり、その多くは7〜24か月のうちでした。好中球の数がかなり少なくても、感染の90%は軽いものでした[2]。
2023年の欧州の診療ガイドラインも、乳幼児の自己免疫性好中球減少症は感染が少なく、数年のうちに自然に治り、白血病になりやすさはないとしています[1]。好中球減少症は、こうした心配の少ないタイプから、生まれつきの遺伝子の変化による病気まで、さまざまな原因で起こります[1]。「好中球が少ない」と言われたら、すぐに遺伝の病気を心配するのではなく、まず主治医と経過を見ることが大切です。
遺伝子検査を考える目安
遺伝子検査を考えるのは、ふつうの血液検査などで原因がわからず、好中球の少ない状態が続いている場合です。2023年の欧州の診療ガイドラインは、最初の検査で原因が見つからない重い慢性の好中球減少症で、感染をくり返す方や家族歴のある方には遺伝子検査を行うこととしています。さらに、小さなお子さんで、ご家族に重い好中球減少症の方がいる、生まれつきの体の特徴(先天異常)がある、重い感染をくり返す、といった場合は、最初の検査のあと早めに遺伝子検査を行うよう勧めています[1]。
- ●重い感染(肺炎・皮膚の膿瘍・敗血症など)をくり返す
- ●好中球の少ない状態が、自然に良くならずに続いている
- ●発熱や口内炎が、決まった間隔でくり返す(周期性の可能性)
- ●ご家族にも好中球減少症の方がいる
- ●膵臓(消化)・骨・心臓・皮膚や髪の色・発達など、血液以外の症状も伴う
発熱や口内炎が周期的にくり返すときは、同じガイドラインが、6週間にわたって週2回の血液検査で好中球の数の変化を追い、周期性好中球減少症かどうかを確かめることを挙げています[1]。
2. 生まれつきの好中球減少症の主な型:原因で治療と見張りが変わる
生まれつきの好中球減少症は、原因の遺伝子によって型が分かれ、型によって治療の考え方と、骨髄異形成症候群・白血病への見張り方が変わります。同じ「好中球が少ない」でも、名前がつくと次の一手が決まります。
重症先天性好中球減少症(ELANE・HAX1・G6PC3ほか)
重症先天性好中球減少症は、赤ちゃんのころから好中球がとても少なく、重い細菌感染をくり返す病気です。原因の遺伝子はいくつもあり、血液以外の症状がなく免疫のほかの働きに異常がないタイプでは、その約半分がELANE遺伝子の変化によるとされています[3]。ほかに、潜性(劣性)遺伝のHAX1(コストマン症候群)・G6PC3・VPS45、顕性(優性)遺伝のGFI1、X連鎖のWASなどが知られています。
治療の中心は、好中球を増やす薬(G-CSF)と感染の予防で、これによって見通しは大きく良くなりました[3]。一方で、この病気は骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病になりやすいことが知られています。長くG-CSFを使っていた重症先天性好中球減少症の374人とシュワッハマン・ダイアモンド症候群の29人を調べた国際登録の研究では、10年間で骨髄異形成症候群・白血病になった人の割合は21%でした。とくに、多い量のG-CSFを使っても好中球が増えにくい人では、10年間で40%が骨髄異形成症候群・白血病になり、14%が敗血症で亡くなっていました[4]。
こうしたことから、2023年の欧州の診療ガイドラインは、生まれつきの好中球減少症のお子さんには、年に1回の骨髄検査で染色体の変化などを確かめることを強く勧めています[1]。G-CSFの量や、造血幹細胞移植を考えるかどうかは、専門の医療機関で判断されます。原因の遺伝子がわかっていることは、その判断の大事な材料になります。
周期性好中球減少症(ELANE)
周期性好中球減少症は、好中球の数が決まった周期で上がり下がりし、下がる時期に発熱・口内炎・感染が出る病気です。米国国立医学図書館の遺伝情報(MedlinePlus Genetics)によると、多くの方で約21日ごとにくり返し、好中球が少ない時期は3〜5日ほど続きます。原因はELANE遺伝子の変化で、顕性(優性)遺伝です。
原因の遺伝子は重症先天性好中球減少症と同じELANEですが、見通しは違います。ELANEによる病気を集めた2024年の系統的レビューでは、周期性好中球減少症から白血病になった報告は1例だけで、白血病になる可能性はほぼないと考えられている、とまとめられています[6]。同じ遺伝子でも、型によって見張り方が変わる。遺伝子の名前だけでなく、どの型かまで確かめることが大切なのは、このためです。
シュワッハマン・ダイアモンド症候群(SBDS)
シュワッハマン・ダイアモンド症候群は、好中球減少に加えて、膵臓の消化の働きの低下(消化吸収の不良・栄養不良・成長の遅れ)や骨の異常を伴う病気です。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsによると、ほとんどのお子さんで好中球減少が早くから見られ、骨の症状は約60%にみられます。原因の約92%はSBDS遺伝子の変化で、常染色体潜性(劣性)遺伝です[5]。
この病気も、骨髄異形成症候群・白血病になりやすいことがわかっています。フランスの登録では、20年で18.8%、30年で36.1%が骨髄異形成症候群・白血病に移ったと報告されています。GeneReviewsは、血液検査を少なくとも3〜6か月ごとに、骨髄検査を1〜3年ごとに行うこと、重い骨髄不全や骨髄異形成症候群・白血病では造血幹細胞移植を考えることを挙げています[5]。骨髄の働きが落ちる生まれつきの病気全体は、遺伝性骨髄不全症候群で解説しています。
💡 このパネルで調べる範囲について
シュワッハマン・ダイアモンド症候群には、SBDSのほかにDNAJC21・EFL1(潜性遺伝)、SRP54(顕性遺伝)が原因の型もあります(それぞれ1%未満)[5]。このパネルで調べるのはSBDSで、これらの遺伝子は含まれていません。
好中球減少を伴うそのほかの病気
好中球減少は、血液以外の症状を伴うさまざまな病気の一部として現れることもあります。このパネルには、次のような病気の原因遺伝子が含まれています。血液以外の症状が、原因をしぼる手がかりになります。
🧭 原因がわかると変わること(主な型)
※治療は専門の医療機関で行われます。当院では治療は行っておらず、遺伝子検査と遺伝カウンセリングで、原因の確定とその後の計画づくりをお手伝いします。
3. どんな人がこの検査を受けるとよいか
好中球の少ない状態が続き、感染をくり返す方、周期的に下がる方、ご家族にも同じ方がいる方、血液以外の症状を伴う方に向く検査です。一方で、心配の少ないタイプが考えられる場合は、まず経過を見ることも多くあります。
- ●赤ちゃんのころから重い細菌感染(肺炎・皮膚の膿瘍・中耳炎など)をくり返し、好中球がとても少ない方
- ●発熱・口内炎・歯ぐきの炎症が、決まった間隔でくり返す方
- ●自己免疫性好中球減少症と考えて経過を見てきたが、年齢が上がっても良くならない方
- ●G-CSFの治療を受けている、または検討していて、原因を確かめておきたい方
- ●ご家族に好中球減少症の方がいる方、ご家族で原因の遺伝子がわかっていて、ご自身も調べたい方
- ●次のお子さんを考えていて、上のお子さんの好中球減少症の原因を知っておきたいご両親
「念のために調べたい」というお気持ちも大切です。見た目や家族歴だけでは判断できないことが多いので、迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
受けなくてよい場合・別の検査が向く場合
好中球だけが減っているならこのパネル、ほかの血球も減っているなら骨髄不全症候群パネル、というように、症状に合わせて検査を選びます。このパネルの21遺伝子のうちELANE・HAX1・SBDSなどは骨髄不全症候群パネルにも含まれていますが、調べる範囲と目的が違います。
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※どの検査が合うかは、血液検査の経過・症状・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。
4. 調べる21遺伝子と、それぞれでわかる病気
この検査では、次の21遺伝子をまとめて調べます。遺伝のしかたは、常染色体顕性(優性)遺伝・常染色体潜性(劣性)遺伝・X連鎖遺伝の3つが混ざっていて、遺伝子ごとに違います(くわしくは遺伝形式とは)。ご家族への影響を考えるうえで、どの遺伝子かがわかることが大切です。
🧬 好中球減少症パネルで調べる21遺伝子
※対象遺伝子は当院の検査内容による。病気と遺伝のしかたは、遺伝子ごとの公開データベースと文献[3][5]で確認(2026年10月)。1つの遺伝子がほかの病気にも関係することがあります。
5. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、21遺伝子の中の小さな変化(1文字の置き換わりや、小さな欠けや入り込み)と、遺伝子の大きな欠け・重なりの一部です。一方で、どの遺伝子検査にも限界があります。
- ●大きな欠け・重なり:遺伝子まるごとの欠け・重なりは、血液と頬の粘膜の検体で調べられます。2つ以上続くエクソン(遺伝子の中の、たんぱく質の設計にかかわる部分)の欠け・重なりは、血液の検体だけで調べられます。エクソン1つだけの変化は、見つかることもありますが、ふだんは検出の対象外です。見つかった欠け・重なりは、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
- ●調べられない変化:染色体の一部が入れ替わる変化(転座・逆位)、同じ配列がくり返して伸びる変化、遺伝子のスイッチの部分(プロモーター)や、エクソンから離れた場所(イントロンの深い部分)の変化は対象外です。
- ●体の一部の細胞だけの変化:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(体細胞モザイク)や、生まれたあとに血液の細胞で起きた変化を見つけることは、この検査の目的に入っていません。
- ●調べていない遺伝子:このパネルの対象は21遺伝子だけです。生まれつきの好中球減少症の原因には、ほかの遺伝子もあります(シュワッハマン・ダイアモンド症候群のDNAJC21・EFL1・SRP54など)[5]。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。
- ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、生まれつきの好中球減少症ではないとは言い切れません。また、自己免疫性・薬・感染など、生まれつきでない原因の好中球減少症は、遺伝子検査ではわかりません。
読み取りの精度は、調べる範囲の99%以上を、同じ場所を20回以上読み取ることで確保しています(20回以上の読み取りで99%以上)。何度も読むことで、読み間違いを減らせます。読み取りの質が十分でない変化は、別の方法(サンガー法)で確かめます。
調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。
6. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。原因が見つかったとき、見つからなかったとき、VUSのときで、次にできることが違います。
原因が見つかったとき:治療と見張りの方針が決まる
病名がはっきりすると、主治医と次のことを具体的に決められます。
- ●治療:G-CSFの使い方や、造血幹細胞移植を考えるかどうかなどを、専門の医療機関で判断するための材料になります。
- ●見張り:重症先天性好中球減少症やシュワッハマン・ダイアモンド症候群のように骨髄異形成症候群・白血病になりやすい型なら、骨髄検査などの定期的な見張りを始められます[1][5]。周期性好中球減少症のように、その心配が小さい型だとわかることもあります[6]。
- ●血液以外の備え:症候群がわかれば、心臓・血糖・出血しやすさ・膵臓など、血液以外の症状の検査や備えも決まります。
- ●制度:小児慢性特定疾病や指定難病の申請で、原因が確定していることが手がかりになります(第7章)。
見つからなかったとき・VUSが見つかったとき
原因が見つからなかった場合は、生まれつきでない原因の可能性や、このパネルに含まれない遺伝子の可能性を考えます。症状に合わせて、骨髄不全症候群パネルや全エクソーム検査などを検討します。VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。
ご家族と次のお子さんへの影響
次のお子さんで同じ病気が起こる確率は、原因の遺伝子と遺伝のしかたによって大きく変わります。原因がわかれば、次の妊娠でどう備えられるかを具体的に考えられるようになります。
👪 遺伝のしかたと、次のお子さんへの影響
※実際の確率は、ご家族の検査の結果で変わります。遺伝カウンセリングで、ご家族ごとにご説明します。
顕性遺伝の病気では、お子さんで新しく起きた変化(de novo)のこともあります。その場合でも、親御さんの卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)にだけ変化がある「性腺モザイク」の可能性があり、次のお子さんの確率はゼロではありません。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。
お子さんで新しく起きた変化だとわかれば、ご両親のせいではないことがはっきりします。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。
潜性遺伝・X連鎖の病気では、ご両親やごきょうだいが保因者かどうかを知ることが、次の計画につながります(くわしくは潜性遺伝と保因者のしくみ)。当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の対象遺伝子一覧には、このパネルの遺伝子のうちHAX1・G6PC3・SBDS・LYST・AP3B1・SLC37A4・VPS13B・VPS45・WAS・TAZが含まれています(2026年10月時点。RAB27A・USB1・LAMTOR2・GATA1は含まれていません)。男性版714遺伝子、女性版1009遺伝子・男性版911遺伝子の対象は、それぞれのページの一覧でご確認ください。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります。
ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに、赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さなどを踏まえて個別に考えますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。原因がわからないままでは、出生前に何を調べればよいかを決められません。
日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-M(着床前遺伝学的検査)が行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで解説しています。
7. 日本の制度(2026年10月時点)
重症先天性好中球減少症・周期性好中球減少症・シュワッハマン・ダイアモンド症候群などは、小児慢性特定疾病の対象疾病で、指定難病65「原発性免疫不全症候群」の関連疾患にも含まれています。
小児慢性特定疾病の対象疾病には、「重症先天性好中球減少症」「周期性好中球減少症」「35及び36に掲げるもののほか、慢性の経過をたどる好中球減少症」「シュワッハマン・ダイアモンド症候群」が挙げられています。このパネルに関係する病気では、ほかに「チェディアック・東症候群」「ウィスコット・オルドリッチ症候群」も対象です。小児慢性特定疾病情報センターの解説では、慢性の経過をたどる好中球減少症の例として、糖原病Ib型・X連鎖好中球減少症・p14欠損症・バース症候群・コーエン症候群・好中球減少を伴うクレリクッツィオ型多形皮膚萎縮症が挙げられています。
これらの病気は、指定難病65「原発性免疫不全症候群」の関連疾患としても整理されています(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所の難病データベースで、2026年10月に確認)。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、小児慢性特定疾病情報センター・難病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液や頬の粘膜でも検査でき、オンライン診療で遺伝カウンセリングを受けてから、検体をお送りいただくこともできます。
ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取唾液・頬の粘膜・血液
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体を採るキットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質を保つため、キットが届く前にご自身で検体を採取しないでください。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
9. 院長コラム
🩺 院長コラム【「心配の少ない減少」と「調べるべき減少」を分ける】
好中球減少症と聞くと、多くの親御さんは不安になります。けれども、乳幼児の好中球減少症の多くは自然に良くなるタイプです。大切なのは、すべてを心配することではなく、「経過を見てよい減少」と「原因を確かめるべき減少」を分けることだと考えています。
生まれつきの好中球減少症は、原因の遺伝子によって、白血病への見張りが欠かせない型もあれば、その心配がほとんどない型もあります。同じELANEという遺伝子でも、型によって先の見通しが違います。名前がわからないまま「とにかく様子を見る」より、原因を知って、必要な見張りだけをきちんと続けるほうが、お子さんにもご家族にも負担が少ないはずです。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。次のお子さんを考えるときには、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 子どもの好中球減少症は治りますか?
乳幼児の好中球減少症で最も多い自己免疫性好中球減少症は、多くが自然に良くなります。乳幼児240人を調べたドイツの研究では、95%が自然に良くなり、その多くは7〜24か月のうちでした。一方、生まれつきの遺伝子の変化による好中球減少症は自然には治らないため、治療と定期的な見張りが必要になります。
Q2. 白血球減少症とはどう違いますか?
白血球には好中球のほかにリンパ球なども含まれます。白血球減少症は白血球全体が少ないこと、好中球減少症はそのうちの好中球が少ないことを指します。細菌やカビから体を守る力に直接かかわるのは好中球の数なので、血液検査では好中球の数を確かめることが大切です。
Q3. 自己免疫性と生まれつきの好中球減少症は、どう見分けますか?
自己免疫性好中球減少症は、乳幼児期に見つかり、感染が軽く、数年のうちに自然に良くなることが多いのが特徴です。重い感染をくり返す、良くならずに続く、周期的に下がる、ご家族にも同じ方がいる、血液以外の症状を伴う、といった場合は、生まれつきの原因を考えて遺伝子検査を検討します。
Q4. 周期性好中球減少症とは何ですか?
好中球の数が決まった周期で上がり下がりし、下がる時期に発熱・口内炎・感染が出る病気です。多くの方で約21日ごとにくり返し、好中球が少ない時期は3〜5日ほど続きます。原因はELANE遺伝子の変化で、顕性(優性)遺伝です。白血病になる可能性はほぼないと考えられています。
Q5. 好中球減少症は遺伝しますか?次の子に起こる確率は?
生まれつきの好中球減少症は、原因の遺伝子によって遺伝のしかたが違います。顕性遺伝なら親から子へ2分の1、潜性遺伝ならご両親がともに保因者のときに4分の1、X連鎖ならお母さんが保因者のときに男のお子さんの2分の1です。お子さんで新しく起きた変化でも、次のお子さんの確率はゼロではありません。自己免疫性など生まれつきでない好中球減少症は遺伝しません。
Q6. 骨髄不全症候群パネルとどちらを受ければよいですか?
好中球だけが少ない場合はこの好中球減少症パネル、赤血球や血小板も減っているなど骨髄の働きが全体に落ちている場合は骨髄不全症候群パネルが向いています。どちらが合うかは血液検査の経過や症状で変わるので、遺伝カウンセリングで一緒に決めます。
Q7. 結果が陰性ならどうなりますか?
原因が見つからなくても、生まれつきの好中球減少症ではないとは言い切れません。このパネルに含まれない遺伝子や、この検査では見つからない種類の変化の可能性があるためです。また、自己免疫性など生まれつきでない原因も考えます。症状に合わせて、ほかのパネル検査や全エクソーム検査を検討します。
Q8. 費用と結果までの日数を教えてください。
検査費用は税込330,000円で、結果までは2〜3週間です。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。唾液や頬の粘膜でも検査でき、オンライン診療にも対応しています。
🧬 人生に一度の遺伝子検査を、お子さんとご家族のこれからに
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。好中球減少症の原因がわかれば、治療と見張りの方針だけでなく、ご家族の検査や、次のお子さんの計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
- [1] Fioredda F, Skokowa J, Tamary H, et al. The European Guidelines on Diagnosis and Management of Neutropenia in Adults and Children: A Consensus Between the European Hematology Association and the EuNet-INNOCHRON COST Action. HemaSphere. 2023;7(4):e872. [DOI: 10.1097/HS9.0000000000000872](PMID: 37008163)
- [2] Bux J, Behrens GMN, Jaeger G, Welte K. Diagnosis and clinical course of autoimmune neutropenia in infancy: analysis of 240 cases. Blood. 1998;91(1):181-186. [DOI: 10.1182/blood.V91.1.181](PMID: 9414283)
- [3] Donadieu J, Fenneteau O, Beaupain B, Mahlaoui N, Bellanné-Chantelot C. Congenital neutropenia: diagnosis, molecular bases and patient management. Orphanet J Rare Dis. 2011;6:26. [DOI: 10.1186/1750-1172-6-26](PMID: 21595885)
- [4] Rosenberg PS, et al. The incidence of leukemia and mortality from sepsis in patients with severe congenital neutropenia receiving long-term G-CSF therapy. Blood. 2006;107(12):4628-4635. [DOI: 10.1182/blood-2005-11-4370](PMID: 16497969)
- [5] Nelson A, Myers K. Shwachman-Diamond Syndrome. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle (Last Update: 2024 Sep 19). [NCBI Bookshelf NBK1756](PMID: 20301722)
- [6] Xiao Y, Wang N, Jin X, Liu A, Zhang Z. Clinical relevance of SCN and CyN induced by ELANE mutations: a systematic review. Front Immunol. 2024;15:1349919. [DOI: 10.3389/fimmu.2024.1349919](PMID: 38840904)
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