この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

ヘルマンスキー・パドラック症候群(HPS)は、目・皮膚・髪の色が薄い白皮症(アルビノ)に、血が止まりにくい体質が加わる遺伝性の病気です。型によっては、大人になってから肺線維症(間質性肺炎)や、腸の炎症を起こすことがあります。ふつうの血液検査では見つかりにくいため、「ただの白皮症」と思われたまま過ごしている方もいます。原因の遺伝子がわかって型が決まれば、手術や出産の前の出血への備えや、肺の定期的な見張りを前もって計画できます。このページでは、症状・型・寿命の見通し・遺伝する確率と、9遺伝子を調べる遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
白皮症に出血しやすさを伴う原因を、ヘルマンスキー・パドラック症候群に関わる9つの遺伝子で調べ、型(HPS1型〜9型)を確かめます。型によって、肺線維症・腸の炎症・感染しやすさのどれに気をつけるかが変わります。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
白皮症(アルビノ)と言われていて、あざができやすい・鼻血や抜歯のあとの出血が止まりにくい方、ご家族やきょうだいにこの病気の方がいる方、結婚や妊娠を考えていて遺伝が気になる方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。常染色体潜性(劣性)遺伝なので、ご両親がともに保因者なら、きょうだいがこの病気になる確率は1人ごとに4分の1です。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. ヘルマンスキー・パドラック症候群とは|白皮症(アルビノ)に出血しやすさが加わる病気
ヘルマンスキー・パドラック症候群は、眼皮膚白皮症(目・皮膚・髪の色が薄くなる体質)と、血が止まりにくい体質(出血傾向)を特徴とする遺伝性の病気です。一部の方では、肺線維症・肉芽腫性大腸炎・免疫の弱さが加わります[1]。英語の Hermansky-Pudlak syndrome の頭文字をとってHPSと呼ばれ、「ヘルマンスキー・プドラック症候群」と書かれることもあります。
体の細胞には、色素(メラニン)をためる袋や、血小板の中で血を固める物質をためる袋など、リソソームの仲間にあたる小さな袋(リソソーム関連小器官)があります。HPSでは、この袋を作ったり運んだりするタンパク質の設計図(遺伝子)に変化があるため、色素を含むメラノソームの働きや分布に異常が生じ、血小板もうまく働かなくなります。病気全体の解説は白皮症(眼皮膚白皮症)総論もご覧ください。このページでは、検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。
症状:白皮症の症状と、出血しやすさ
HPSの症状は、白皮症による目・皮膚の症状と、血小板の働きの異常による出血しやすさの2本立てです。
- ●目:ほぼすべての方に、目が小刻みに揺れる眼振がみられます。視力は多くの場合20/50〜20/400(小数視力でおよそ0.4〜0.05)の範囲で、幼児期を過ぎるとあまり変わらないとされています[1]。
- ●皮膚・髪:色の薄さの程度は人によってさまざまです。日光で皮膚が傷みやすく、基底細胞がん・有棘細胞がん(扁平上皮がん)ができることがあります。メラノーマはまれとされています[1]。
- ●出血しやすさ:血小板の中の「濃染顆粒(δ顆粒)」という袋がない、またはとても少ないために起こります[1]。あざができやすい、鼻血が止まりにくい、抜歯や手術のあとに出血が長引く、月経の出血が多い、などの形で現れます。
💡 ふつうの血液検査では見つかりにくい
HPSでは、血小板の数や、血の固まりやすさを見るプロトロンビン時間(PT)・部分トロンボプラスチン時間(APTT)は、ふつう正常です[1]。そのため、健康診断の血液検査で異常が出ないまま、「白皮症だけ」と思われていることがあります。診断には、電子顕微鏡で血小板の濃染顆粒がないことを確かめる検査(ホールマウント法が勧められています)や、遺伝子検査が使われます[1]。
型(HPS1型〜11型)で違う合併症:肺線維症(間質性肺炎)・肉芽腫性大腸炎・免疫不全
HPSの原因になる遺伝子は、現在11個が知られていて、どの遺伝子に原因があるかで、白皮症と出血しやすさ以外に気をつけることが大きく変わります[1]。遺伝子は、作るタンパク質のまとまり(BLOC-1・BLOC-2・BLOC-3・AP-3という複合体)で、いくつかのグループに分けられます。
🫁 型のグループと、気をつける合併症
※GeneReviews[1]による。AP3D1(HPS10型)は免疫不全とけいれんを伴う型として報告されています[2]が、このパネルの対象ではありません(第3章)。
肺線維症(間質性肺炎):肺が少しずつ硬くなり、息切れや空せきが出る病気です。GeneReviewsによると、HPS1型などの肺線維症は、ふつう30代前半に症状が出はじめ、10年ほどで命にかかわるところまで進むことがあります[1]。肺の異常が白皮症の方に見つかったときは、HPSを考える大切な手がかりになります。
肉芽腫性大腸炎:クローン病に似た、出血を伴う大腸の炎症で、平均17歳ごろに始まり、HPSの方の約15%では重い症状になるとされています[1]。腸の病気の遺伝的な原因を広く調べる検査としては、炎症性腸疾患の遺伝子検査もあります。
免疫不全:好中球減少や免疫の異常は、主にAP3B1とAP3D1の型でみられます[1]。好中球が少ない原因を広く調べる検査としては、好中球減少症の遺伝子検査があります。
寿命・見通しは型によって違う
HPSの寿命・見通しを大きく左右するのは、肺線維症を起こしうる型かどうかです。GeneReviewsには型ごとの平均寿命の数字は示されていませんが、BLOC-3の型(HPS1・HPS4)の肺線維症は命にかかわることがある一方で、BLOC-2の型(HPS3・HPS5・HPS6)では肺線維症はこれまで報告されておらず、症状も軽いことが多いとされています[1]。
「アルビノは短命なのか」「なぜ寿命が短いと言われるのか」と心配して調べる方もいます。白皮症のうち、目・皮膚・髪の色だけに症状がとどまる型と、HPSのように全身の症状を伴う型(症候型)では、見通しがまったく違います[1]。同じ「白皮症」でも、どの型かがわからなければ見通しは語れません。遺伝子検査で型がわかることは、むやみに心配することも、必要な見張りを逃すことも避けるための手がかりになります。
遺伝のしかた:常染色体潜性(劣性)遺伝と、子どもに遺伝する確率
HPSは常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに、病気になる確率は4分の1、症状のない保因者になる確率は2分の1です[1]。この確率は、お子さんの性別に関係せず、上のお子さんの結果で次のお子さんの確率が変わることもありません。
潜性(劣性)遺伝では、対になった2つの遺伝子の両方に原因の変化があるときに発症します。片方だけに変化がある人を保因者といい、ふつう症状はありません。ご両親から別々の変化を1つずつ受け継いでいる状態を複合ヘテロ接合といい、同じ変化を2つ持つ場合と同じように発症します。
HPSの方ご本人がお子さんを持つ場合、お子さんは必ず変化を1つ受け継ぎます。パートナーが同じ遺伝子の保因者でなければ、お子さんは保因者にとどまり、ふつうは発症しません。パートナーが保因者かどうかで確率が変わるため、パートナーの保因者検査が大切になります(第5章)。
日本での頻度と、指定難病(眼皮膚白皮症〔指定難病164〕)
GeneReviewsでは、HPSは世界全体の有病率が100万人に1〜9人と推定される、まれな病気とされています[1]。一方、プエルトリコ北西部では、創始者効果によってHPS1型が1,800人に1人と多くみられます。GeneReviewsは、HPS1型が日本でもまとまった報告のある集団として知られていることを紹介しています[1]。日本でのHPSの患者さんの正確な人数は、公的な統計では示されていません。
日本では、HPSは指定難病164「眼皮膚白皮症」のうち、全身の症状を伴う「症候型」のひとつとして扱われています。難病情報センターの診断基準には、HPS1・AP3B1・HPS3・HPS4・HPS5・HPS6・DTNBP1・BLOC1S3・PLDN(BLOC1S6)の9つの遺伝子の型が載っていて、重症度の基準には、血小板の働きの異常による出血・炎症性腸疾患・肺線維症なども含まれています(2026年10月時点で確認)。医療費の助成を受けるには認定の条件を満たして申請する必要があるため、くわしくは難病情報センターやお住まいの自治体の窓口でご確認ください。遺伝子検査で型が確定していることは、制度を使うときの手がかりのひとつになります。
2. ヘルマンスキー・パドラック症候群の遺伝子検査を受けるとよい人
白皮症に出血しやすさがある方、ご家族にHPSの方がいる方、結婚や妊娠を考えていて白皮症の遺伝が気になる方に向く検査です。見た目だけでは型はわかりません。迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
「ただの白皮症」と言われたが、あざができやすい・鼻血や抜歯のあとの出血が止まりにくい
白皮症と診断されていても、HPSかどうかまでは確かめられていないことがあります。前の章のとおり、HPSの出血しやすさはふつうの血液検査では見つかりにくいためです[1]。あざができやすい、鼻血が止まりにくい、抜歯のあとの出血が長引いた、月経の量が多いといった経験があれば、一度HPSの遺伝子を調べる意味があります。手術・抜歯・出産の予定が立つ前にわかっていれば、出血への備えを前もって相談できます。
家族やきょうだいに、ヘルマンスキー・パドラック症候群の人がいる
きょうだいがHPSと診断された場合、ほかのきょうだいも同じ型のHPSである可能性があります(ご両親が保因者なら1人ごとに4分の1)。ご家族で原因の変化がわかっていれば、ほかのご家族はその変化だけを調べて、受け継いでいるかどうかを確かめられます[1]。症状が軽くても、肺線維症を起こしうる型かどうかは、症状だけでは判断できません。
結婚・妊娠を考えていて、白皮症の遺伝が気になる
結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。ご本人が白皮症の方、ご家族に白皮症の方がいる方が、結婚や妊娠の前に遺伝のことを気にかけるのは自然なことです。遺伝する確率は、どの型か、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかで変わり、検査で確かめられることがあります。ご自身の原因の遺伝子と、パートナーの保因者検査の結果がわかれば、お子さんへの確率を具体的に考えられ、出生前診断などの選択肢も前もって計画できます(第5章)。どの選択をされても、当院はその選択を尊重します。
この検査より別の検査が向いている場合(症状から、どのパネルを選ぶか)
白皮症に出血しやすさがあるなら、まずこの検査です。症状によっては、次の検査のほうが向いていることがあります。比べているのは当院の検査の種類で、それぞれ調べる遺伝子の範囲が違います。
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※遺伝子の数は、それぞれの検査ページに書かれている数です。どの検査が合うかは、症状・これまでの検査・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。
3. 調べる9遺伝子と、それぞれの型(HPS1型〜9型)
この検査では、HPSの原因として知られる遺伝子のうち、HPS1型〜9型にあたる9つの遺伝子をまとめて調べます。どれも常染色体潜性(劣性)遺伝の型です。
🧬 ヘルマンスキー・パドラック症候群の遺伝子検査で調べる9遺伝子
※合併症はGeneReviews[1]、型の番号と遺伝子の対応は難病情報センターの診断基準による。BLOC1S6は診断基準ではPLDNと書かれています。
HPSの原因として知られる11の遺伝子のうち、AP3D1(HPS10型)とBLOC1S5は、この検査の対象に入っていません[1]。AP3D1は、当院のアルビニズム(白皮症)の遺伝子検査(34遺伝子)で調べられます。免疫不全やけいれんを伴うなど、AP3D1の型が疑われる場合[2]は、検査を選ぶ段階でご相談ください。
4. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、9つの遺伝子の中の、遺伝子の文字(塩基)が1つ変わる変化や、小さな欠け・入り込みと、遺伝子の一部や全体が欠けたり重なったりする変化(欠失・重複)です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
欠失・重複を調べることには、とくに意味があります。GeneReviewsが2023年1月までに文献で報告されたHPSの方(約770人)をまとめた表では、原因の変化のうち欠失・重複の解析で見つかったものは、HPS3型で約60%、AP3B1で約10%、HPS1型で約5%とされています[1]。ただしHPS3型の割合には、プエルトリコ中部に多い3.9kbの欠失をもつ方が多く含まれていて、ほかの地域の方に同じ割合が当てはまるとは限りません[1]。それでも、遺伝子の文字を読むだけでは見つからない原因があることは確かで、この検査では欠失・重複の解析もあわせて行います。
- ●欠失・重複は検体で見つけられる範囲が違います:遺伝子まるごとの欠失・重複は血液と頬の粘膜の検体で、エクソン(遺伝子の中のタンパク質の設計図になる部分)が2つ以上続く大きさの欠失・重複は血液の検体でだけ見つけられます。エクソン1つ分の欠失・重複は、ふつうは見つけられません。見つかった欠失・重複は、別のしくみの方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
- ●見つけられない変化:染色体の一部が入れ替わる・向きが逆になる変化、繰り返し配列が長くなる変化、遺伝子の働きを調節する部分(プロモーター)や、エクソンから離れたイントロンの奥の変化は、この検査では見つけられません。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけるための検査ではありません。
- ●調べていない遺伝子:AP3D1とBLOC1S5は対象外です(第3章)。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知識ではまだ判断できない変化が見つかることがあります。
- ●陰性でもHPSを否定はできません:原因が見つからなくても、この検査で見つけられない変化や、対象外の遺伝子が原因である可能性が残ります。
🔬 検査の技術的なくわしい情報(読み取りの精度など)
この検査は次世代シーケンサー(NGS)という方法で、遺伝子のタンパク質の設計図になる部分(コード領域)と、そのつなぎ目(スプライス部位)を読みます。対象の領域の99%以上を、同じ場所を20回以上読み取る精度(20x)で調べます。読み取りの質が十分でなかった変化は、サンガー法という別の方法で確かめます。よく似た配列(偽遺伝子など)があると、まれに判定が難しくなることがあります。
調べた目的と別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、二次的所見の開示方針をご覧ください。
5. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。原因の変化が見つかったとき・見つからなかったとき・VUSが見つかったときで、次にできることが違います。
病的変異が見つかったら、次にできること
型がわかると、「何に備え、何を見張り、何を避けるか」が具体的に決まります。治療や見張りは、血液内科・呼吸器内科・皮膚科・眼科など、専門の医療機関で受けていただくことになります。当院では、結果をもとに何をすればよいかを整理してお伝えします。
① ご本人:出血への備え
GeneReviewsは、HPSの方が避けるものとして、アスピリンを含む薬や、そのほかの非ステロイド性抗炎症薬(いわゆる痛み止め・解熱剤の多く)を挙げています[1]。抜歯・手術の前には、主治医に病名を伝えて出血への備えを相談します。出血を抑えるデスモプレシン(DDAVP)は効かない方もいるため、前もって効くかどうかを確かめることが勧められ、大きな手術や長引く出血では血小板や赤血球の輸血が必要になることもあります。月経の出血が多いときは、低用量ピル・子宮内避妊具や、出血を抑えるトラネキサム酸などが使われます[1]。妊娠がわかったら早めに血液内科とも相談し、出産のときの出血に備えることが勧められています[1]。
② ご本人:肺の見張り(肺線維症を起こしうる型)
GeneReviewsは、20歳以上の方に年1回の呼吸機能検査を、AP3B1・HPS1・HPS4の型では、おおむね30歳ごろから胸の高分解能CTを勧めています(症状があればもっと早く)[1]。たばこや電子たばこ、肺に悪い粉じん・化学物質を吸い込む環境は避けることとされています[1]。治療については、抗線維化薬ピルフェニドンの臨床試験では効果がはっきり示されず、HPS1型の肺線維症で肺移植を受けた方の報告があるとされています[1]。肺線維症を起こしうる型だと前もってわかっていれば、症状が出る前から見張りを始められます。BLOC-2・BLOC-1の型とわかれば、肺線維症について過度に心配しなくてよい、という判断の材料にもなります(ただし保証ではありません)。
③ ご本人:腸・免疫・目と皮膚
腹痛・下痢・血便が続くときは、肉芽腫性大腸炎を考えて消化器内科で調べます。HPS2型では、感染症へのそなえについて主治医と相談します。目と皮膚については、日光を直接浴びないこと(帽子・サングラス・日焼け止めなど)と、皮膚がんの定期的な確認、見え方に合わせた補助具の活用が基本になります[1]。
④ 症状のない方・保因者だった方:パートナーの検査
保因者だとわかった方は、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかで、お子さんへの確率が変わります。拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の遺伝子一覧には、このページの9遺伝子がすべて入っています(男性版の対象は遺伝子一覧でご確認ください)。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラス(女性787遺伝子・男性714遺伝子、単独では受けられません)もあります。
⑤ 次のお子さんを考えるとき
ご家族で原因の変化がわかっていれば、出生前検査や着床前検査が可能とされています[1]。妊娠したときに、赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで解説しています。もちろん、特別な検査をせずに妊娠・出産することも、そのまま選べる選択肢です。
⑥ ご家族:同じ変化だけをピンポイントで
きょうだい・親・いとこなどは、ご家族で見つかった変化だけを調べて、受け継いでいるかどうかを確かめられます[1]。症状のない方の検査は、ご本人の同意のうえで行います。
⑦ 当院でのその後
結果をお伝えしたあとも、遺伝カウンセリング(30分22,000円・税込)で、ご家族の検査や妊娠の計画について続けてご相談いただけます。
陰性だったとき
9つの遺伝子に原因の変化が見つからなかった場合、HPSの可能性は低くなりますが、ゼロにはなりません(第4章)。白皮症の原因をさらに調べるには、AP3D1なども含むアルビニズム(白皮症)の遺伝子検査や、全エクソーム検査(WES)が選択肢になります。出血しやすさについては、血小板の電子顕微鏡の検査など、血液内科での検査を続けて考えます。
意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき
VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。ご家族の検査結果や症状とあわせて、どう考えるかをご説明します。
6. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液や頬の内側の粘膜の検体なら、オンライン診療で受けられます。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
💴 費用・日数・検体
※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
検体の採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質を保つため、ご自身の判断で検体を採らないでください。欠失・重複の見つけやすさは検体によって違うため(第4章)、どの検体を使うかは遺伝カウンセリングでご相談ください。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。遺伝カウンセリングについては遺伝カウンセリングとはもご覧ください。
7. 院長コラム
🩺 院長コラム【白皮症の「その先」を知ることが、手術や出産の日の安全になる】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。
ヘルマンスキー・パドラック症候群は、見た目は白皮症で、ふつうの血液検査では異常が出にくい病気です。だからこそ、「白皮症だから、目と日焼けに気をつければよい」で止まってしまうと、抜歯や手術、出産のときに、思わぬ出血に初めて出会うことがありえます。型がわかっていれば、主治医に伝えて前もって備えることができます。肺線維症を起こしうる型かどうかがわかれば、症状が出る前から見張りを始められ、そうでない型とわかれば、必要以上に怖がらずに過ごす材料にもなります。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の健康管理だけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画にも、ずっと使える情報になります。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、パートナーの保因者検査から出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. ヘルマンスキー・パドラック症候群とはどんな病気ですか?
目・皮膚・髪の色が薄くなる眼皮膚白皮症(アルビノ)に、血小板の働きの異常による出血しやすさが加わる遺伝性の病気です。型によっては、肺線維症(間質性肺炎)・肉芽腫性大腸炎・免疫の弱さを伴います。常染色体潜性(劣性)遺伝で、日本では指定難病164「眼皮膚白皮症」の症候型のひとつとされています(2026年10月時点)。
Q2. ヘルマンスキー・パドラック症候群の寿命はどのくらいですか?
型によって大きく違い、平均寿命の数字は示されていません。見通しを左右するのは肺線維症で、HPS1型などの肺線維症はふつう30代前半に症状が出はじめ、10年ほどで命にかかわるところまで進むことがあるとされています。一方、HPS3型・HPS5型・HPS6型では肺線維症はこれまで報告されておらず、症状も軽いことが多いとされています。
Q3. 間質性肺炎(肺線維症)は、どの型で起こりやすいですか?
HPS1型・HPS4型(BLOC-3の型)と、AP3B1遺伝子によるHPS2型で報告されています。肺線維症を起こしうる型では、20歳以上で年1回の呼吸機能検査、おおむね30歳ごろから胸の高分解能CTが勧められ、たばこや電子たばこは避けることとされています。
Q4. ただの白皮症(アルビノ)と、ヘルマンスキー・パドラック症候群はどう見分けますか?
見た目だけでは見分けられません。HPSでは、血小板の数や血の固まりやすさの検査(PT・APTT)がふつう正常なため、健康診断では見つかりにくいことがあります。電子顕微鏡で血小板の濃染顆粒がないことを確かめる検査や、遺伝子検査で確かめます。あざができやすい・出血が止まりにくい経験があれば、HPSの遺伝子を調べる意味があります。
Q5. 白皮症(アルビノ)は子どもに遺伝しますか?確率はどのくらいですか?
HPSは常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに病気になる確率は4分の1、保因者になる確率は2分の1です。HPSの方ご本人のお子さんは必ず原因の変化を1つ以上受け継ぎますが、パートナーが同じ遺伝子の保因者でなければ、ふつうは保因者にとどまり発症しません。白皮症のほかの型では遺伝のしかたが違うことがあるため、まず型を確かめることが大切です。
Q6. 家族に白皮症の人がいると、結婚に差し支えますか?
遺伝する確率は、病気の型と、ご夫婦それぞれが原因の変化を持っているかどうかで決まり、ご家族に白皮症の方がいるというだけでは決まりません。ご自身の検査やパートナーの保因者検査で、お子さんへの確率を具体的に知ることができ、出生前診断などの選択肢も前もって考えられます。知ったうえでどう選ぶかは、おふたりが決めることです。
Q7. 自分が保因者かどうかを調べられますか?
調べられます。ご家族で原因の変化がわかっていれば、その変化だけを調べられます。ご家族の情報がない場合は、拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の遺伝子一覧に、このページの9遺伝子がすべて入っています。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります。
Q8. 検査で異常がなければ、ヘルマンスキー・パドラック症候群ではないと言えますか?
言い切ることはできません。この検査で見つけられない種類の変化や、対象外の遺伝子(AP3D1・BLOC1S5)が原因である可能性が残ります。症状に合わせて、白皮症の原因を広く調べる検査や全エクソーム検査、血液内科での血小板の検査を続けて考えます。
🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ヘルマンスキー・パドラック症候群の型がわかれば、手術や出産のときの出血への備え、肺の見張り、ご家族の検査、結婚・妊娠の計画まで、この先ずっと使える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
- [1] Introne WJ, Huizing M, Malicdan MCV, O’Brien KJ, Gahl WA. Hermansky-Pudlak Syndrome. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2000 (Last Revision: 2023 May 25). [NCBI Bookshelf NBK1287]
- [2] Ammann S, Schulz A, Krägeloh-Mann I, et al. Mutations in AP3D1 associated with immunodeficiency and seizures define a new type of Hermansky-Pudlak syndrome. Blood. 2016;127(8):997-1006. [DOI: 10.1182/blood-2015-09-671636](PMID: 26744459)
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