この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

アルビノ(白皮症・アルビニズム)の遺伝子検査は、生まれつきメラニン色素が少なくなる原因を遺伝子から確かめる検査です。当院の検査では、眼皮膚白皮症・眼白皮症に加え、出血しやすさや免疫の症状を伴う「症候型」や、色素の変化と難聴を伴うワーデンブルグ症候群などに関わる34遺伝子を一度に調べます。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかった病型は、ご自身の目と皮膚の守り方だけでなく、ご家族の検査や、これからの結婚・妊娠の計画にもずっと使える情報になります。このページでは、症状・遺伝のしかた・調べる遺伝子と、検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
アルビノ(白皮症)の原因となる遺伝子の変化を調べ、どの病型か(眼皮膚白皮症の型、眼白皮症、ヘルマンスキー・パドラック症候群などの症候型)を確かめます。対象は34遺伝子です。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
皮膚・髪・目の色が生まれつき薄く、視力の低下や眼振がある方、出血しやすい・感染をくり返すなど全身の症状もある方、ご家族にアルビノの方がいて結婚や妊娠を考えている方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込み330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。多くの型は常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご家族の保因者検査や妊娠の計画にも役立ちます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. アルビノ(白皮症・アルビニズム)とは
アルビノ(白皮症・アルビニズム)は、生まれつき皮膚・髪・目のメラニン色素が少ないか、ほとんどない状態で、多くの場合、視力の低下や眼振などの目の症状を伴う遺伝性の病気です[1]。医学的には、皮膚と目の両方に症状が出る型を「眼皮膚白皮症(OCA)」、主に目に症状が出る型を「眼白皮症(OA)」と呼びます。
「アルビノ」「白皮症」「先天性白皮症」「アルビニズム」は、どれもこの病気を指す呼び名です。小児慢性特定疾病情報センターは、単なる色白との決定的な違いは、多くの方に羞明(まぶしさ)と眼振があり、矯正できない視力障害を伴うことだとしています。生まれつき肌の白い人と見分けるうえで、目の症状は大切な手がかりです。
眼皮膚白皮症(OCA)と眼白皮症(OA)
遺伝子からみた解説書GeneReviewsは、眼皮膚白皮症では皮膚・髪・目が、眼白皮症では主に目から脳へ見たものを伝える経路が影響を受ける、と説明しています[1]。眼皮膚白皮症は原因遺伝子によってOCA1〜OCA8の型に分かれ、たとえばOCA1はTYR遺伝子、OCA2はOCA2遺伝子、OCA4はSLC45A2遺伝子の変化で起こります[1]。眼白皮症1型はGPR143遺伝子の変化で起こります。
全身の症状を伴う「症候型」
アルビノの中には、色素が少ないことに加えて、出血しやすさや免疫の働きの低下など、全身の症状を伴う「症候型」があります。代表的なものは、ヘルマンスキー・パドラック症候群、チェディアック・東症候群、グリセリ症候群です[1]。症候型は、見た目だけでは非症候型と区別がつかないことがあり、症状がそろう前に遺伝子で確かめておく意味があります。
また、色素の変化と難聴を特徴とするワーデンブルグ症候群は、アルビノに含めるかどうか専門家の間でも議論があるとされています[1]。当院の検査は、こうした「色素の変化を伴う関連の病気」の遺伝子も一緒に調べるのが特徴です。
日本の患者数と、日本人に多い型
難病情報センターは、国内の眼皮膚白皮症の患者数を約5,000人(2,800〜11,200人)と推計しています。小児慢性特定疾病情報センターによると、2009年度の調査で、特定機能病院を受診する眼皮膚白皮症の方は毎年約160人と報告されています(いずれも2026年10月時点で確認)。
日本皮膚科学会の眼皮膚白皮症診療ガイドライン(2014年)では、日本人の患者さんの約34%がOCA1、27%がOCA4、10%がヘルマンスキー・パドラック症候群、8%がOCA2とされています。海外ではOCA2が多い地域もありますが、日本人ではOCA1とOCA4が多く、症候型のヘルマンスキー・パドラック症候群も1割ほどを占めます。国によって多い型が違うので、海外の情報をそのまま当てはめないことが大切です。
💡 用語解説:メラノソーム
メラノソームは、色素細胞の中でメラニン色素をつくり、ためておく小さな袋です。非症候型の眼皮膚白皮症はメラニンをつくるしくみそのものの異常で、症候型は、メラノソームなどの小さな袋を細胞の中で運ぶしくみの異常で起こると考えられています(小児慢性特定疾病情報センターの解説による)。たとえばヘルマンスキー・パドラック症候群の出血しやすさは、血小板の中にある顆粒(濃染顆粒)がないことによるとされています[2]。
2. 症状と寿命:目・皮膚・全身
アルビノの主な症状は、目の症状(視力の低下・眼振・まぶしさ)と、紫外線に弱い皮膚です。症候型では、これに出血・肺・腸・免疫などの症状が加わります。症状の程度は型や一人ひとりで大きく違います。
目の症状:視力・眼振・まぶしさ
GeneReviewsの総説によると、アルビノの方では、網膜の中心(中心窩)の発達が不十分な「中心窩低形成」が94〜100%、目から脳への神経が交差する場所で神経の通り道が通常と異なる状態が84〜100%、光が虹彩を透けて見える所見が91〜100%に報告されています。眼振は多くの方にみられますが、ない方も最大7.7%報告されています。視力は程度の差はあっても低下することが多く、中心窩低形成の程度と関係します[1]。
難病情報センターは、眼の症状は網膜の障害によって弱視に至りうるとしています。遮光眼鏡や屈折の矯正、弱視の訓練などで、見え方を助ける工夫ができます(小児慢性特定疾病情報センターの解説による)。
皮膚の症状と、皮膚がんへの備え
メラニンが少ない皮膚は紫外線に弱く、GeneReviewsは、アルビノで最も大切な健康上の注意点として皮膚がんをあげています。色の少ないメラノーマ(悪性黒色腫)は見つけにくいため、年に1回の全身の皮膚の診察が勧められています[1]。
日本皮膚科学会のガイドライン(2014年)は、SPF30以上の日焼け止め、紫外線の強い時間帯(午前10時〜午後2時)を避けること、つばの広い帽子を勧め、中高年の方では皮膚科専門医による定期的な皮膚がん検診が必須としています。型がわかっても日焼け対策が不要になるわけではありません。型を知ることは、ご自身に合った備えを続ける出発点です。
症候型で注意したい全身の症状
- ●ヘルマンスキー・パドラック症候群:すべての方に眼皮膚白皮症と出血しやすさがあり、血小板の中の顆粒の欠損が原因です。肺線維症は30代で症状が出はじめることが多く、HPS1・AP3B1・HPS4の変化でみられます。肉芽腫性大腸炎は15%で重症になるとされ、好中球の減少や免疫の異常は主にAP3B1とAP3D1の変化でみられます[2]。
- ●チェディアック・東症候群:LYST遺伝子の変化で起こり、部分的な眼皮膚白皮症、免疫不全、軽い出血傾向がみられます。典型的な型では約85%に血球貪食性リンパ組織球症(HLH)が起こるとされ、造血幹細胞移植が、血液と免疫の問題を治す唯一の方法とされています[3]。
- ●グリセリ症候群:MYO5Aによる型は重い神経の症状を、RAB27Aによる型は免疫不全とリンパ組織球症を伴い、MLPHによる型は色素が少ないことだけが症状とされています[3]。
- ●ワーデンブルグ症候群:1型では、生まれつきの感音難聴が約60%に、前髪の一部が白い「白い前髪」が約45%にみられます[4]。4型ではヒルシュスプルング病を伴います[4]。
寿命は短くなるか
寿命の見通しは、非症候型か症候型かで大きく違います。難病情報センターは、非症候型では眼の症状(弱視に至りうること)と皮膚がんへの注意をあげ、症候型では、合併する全身の症状が生命予後を左右するとしています。チェディアック・東症候群では、HLHの合併症が最も多い死亡の原因とされています[3]。ヘルマンスキー・パドラック症候群の肺線維症は、症状が出てから10年以内に命にかかわることがあるとされています[2]。
つまり、「アルビノの寿命」を考えるときにいちばん大切なのは、その方が非症候型なのか、全身の症状を伴う型なのかを確かめることです。見た目が同じでも、必要な備えはまったく違います。
3. 遺伝のしかた:多くは常染色体潜性(劣性)遺伝
眼皮膚白皮症と、ヘルマンスキー・パドラック症候群・チェディアック・東症候群・グリセリ症候群は、常染色体潜性(劣性)遺伝です。眼白皮症1型はX連鎖遺伝、ワーデンブルグ症候群1型は常染色体顕性(優性)遺伝です[1][4]。型によって、ご家族への影響が違います。
常染色体潜性(劣性)遺伝:きょうだいで4分の1
常染色体潜性(劣性)遺伝では、対になった2つの遺伝子の両方に変化があると発症します。ご両親がともに1つずつ変化をもつ保因者の場合、お子さん1人ごとに、発症する確率が4分の1、保因者になる確率が2分の1です。2つの変化が別々の種類である場合(複合ヘテロ接合)もあります。
眼白皮症1型はX連鎖遺伝
眼白皮症1型の原因遺伝子GPR143はX染色体にあります[1]。X連鎖遺伝では、お母さんが保因者の場合、男のお子さんは2分の1の確率で発症し、女のお子さんは2分の1の確率で保因者になります。詳しくは眼白皮症1型(OA1)のページで解説しています。
ワーデンブルグ症候群1型は常染色体顕性(優性)遺伝
ワーデンブルグ症候群1型はPAX3遺伝子の変化による常染色体顕性(優性)遺伝の病気で、お子さんが受け継ぐ確率は2分の1です。同じ家族の中でも症状の現れ方がさまざまであることが知られています[4]。
⚠️ 「家族にいないから大丈夫」とは言えません
常染色体潜性遺伝の病気では、保因者のご両親には症状がありません。そのため、ご家族にアルビノの方が一人もいなくても、お子さんが発症することがあります。保因者かどうかは見た目ではわからず、遺伝子を調べてはじめてわかります。
4. どんな人がこの検査を受けるとよいか
皮膚・髪・目の色が生まれつき薄く、目の症状がある方、全身の症状もあって症候型かどうかを知りたい方、ご家族にアルビノの方がいて結婚や妊娠を考えている方に向く検査です。見た目や家族歴だけでは型を決められないことが多いので、迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
症状があり、型を確かめたい方
日本皮膚科学会のガイドライン(2014年)は、OCA1〜7(OCA5を除く)やヘルマンスキー・パドラック症候群の型の分類は遺伝子検査によるとしています。病名と型がわかると、受けるべき検査、気をつけたい合併症、使える制度(指定難病・小児慢性特定疾病)がはっきりします。
出血しやすい・感染をくり返す・難聴などもある方
鼻血が止まりにくい、あざができやすい、感染をくり返す、生まれつきの難聴がある、といった症状が色素の変化と一緒にある場合は、症候型や関連の病気を考えます。この検査は、ヘルマンスキー・パドラック症候群・チェディアック・東症候群・グリセリ症候群・ワーデンブルグ症候群の原因遺伝子も含めて調べるので、症状がそろう前の段階で、全身の備えが必要な型かどうかを確かめる手がかりになります。
ご家族にアルビノの方がいる・結婚や妊娠を考えている方
結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。アルビノの当事者の方にとっても、きょうだいにアルビノの方がいる方にとっても、ご家族の原因となる遺伝子の変化がわかっていると、パートナーの検査や、妊娠したときの計画を具体的に考えられます。あなたの1回の検査が、ご両親・きょうだい・お子さんが自分の状態を知る手がかりにもなります。
ご夫婦で保因者かどうかを調べる拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子、さらに女性版1009遺伝子・男性版911遺伝子)もあります。アルビノの原因遺伝子が対象に含まれるかどうかは、遺伝子一覧でご確認ください。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラス(女性787遺伝子・男性714遺伝子。単独では受けられません)もあります。
この検査より別の検査が向いている場合
当院には、アルビノに関係する検査がほかにもあります。症状や知りたいことに合わせて選べます。
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※比べているのは検査の種類です。どの検査が合うかは、症状・診察所見・ご家族の情報で変わるので、遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。各検査で調べる遺伝子は、それぞれのページでご確認ください。
5. 調べる34遺伝子と、関係する病気
この検査では、アルビノとその関連の病気に関わる34の遺伝子を、次世代シークエンサーでまとめて調べます。一つずつ順番に調べる方法と違い、型の見当がつかない場合でも一度で幅広く確かめられます。
🧬 調べる遺伝子と関係する病気
※遺伝子は当院の検査の対象34遺伝子(AP3B1、AP3D1、BLOC1S3、BLOC1S6、DCT、DTNBP1、EDN3、EDNRB、EPG5、FRMD7、GPR143、HPS1、HPS3、HPS4、HPS5、HPS6、KIT、KITLG、LRMDA、LYST、MC1R、MITF、MLPH、MYO5A、OCA2、PAX3、RAB27A、SLC24A5、SLC38A8、SLC45A2、SNAI2、SOX10、TYR、TYRP1)。関係する病気と遺伝のしかたは文献[1][2][3][4]による。
検査の精度(カバレッジ)
この検査は、調べる遺伝子の領域の99%以上を、20回以上くり返して読み取る設計です(≥99% at 20x)。同じ場所を何度も読むほど、読み間違いと本当の変化を区別しやすくなります。読み取りの深さを表す指標をカバレッジといいます。調べる方法は次世代シークエンサーによる解析で、読み取りの質が十分でない部分は、別の方法(サンガー法)で確かめます。
6. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、34遺伝子のたんぱく質をつくる部分(エクソン)とその境目の、小さな変化(1文字の変化や小さな挿入・欠失)です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
- ●大きな欠失・重複:遺伝子全体の欠失・重複は頬の粘膜と血液の検体で、2つ以上続くエクソンの欠失・重複は血液の検体で見つけられます。1つのエクソンだけの欠失・重複は、見つからないことがあります。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
- ●見つけられない種類の変化:染色体の一部が入れ替わる変化(転座・逆位)、同じ配列のくり返しが伸びる変化、遺伝子のスイッチ部分(プロモーター)や、エクソンから20塩基以上離れた部分の変化は調べていません。
- ●よく似た配列:よく似た配列(偽遺伝子など)がある場所では、変化を見分けにくいことがあります。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけることは目的にしていません。腫瘍の組織での検査には使えません。
- ●調べていない遺伝子:対象は34遺伝子だけです。ほかの遺伝子が原因の場合は見つけられません。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。
- ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、この検査で見つけられない変化や、まだ知られていない遺伝子が原因の可能性が残ります。
7. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。
原因が見つかったとき:型が決まり、次の一手が決まる
型がわかると、何に気をつけて過ごせばよいかがはっきりします。非症候型なら、目の見え方を助ける工夫と、紫外線対策・定期的な皮膚の診察が中心です[1]。ヘルマンスキー・パドラック症候群なら出血・肺・腸への備えが[2]、チェディアック・東症候群やRAB27Aによるグリセリ症候群なら、血球貪食性リンパ組織球症を見すえた血液の専門医との相談が大切になります[3]。指定難病などの制度を使うときにも、型が確定していることが手がかりになります(第8章)。
ご家族への影響と、ご家族が検査を受けるとき
ご家族の中で原因となる変化がわかっていると、ご両親・きょうだいは同じ場所を調べることで、保因者かどうか、受け継いでいるかどうかを確かめられます。常染色体潜性遺伝の型では、きょうだいが将来、結婚や出産を考えるときの手がかりにもなります。ご家族の検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。
原因が見つからなかったとき
原因が見つからなかった場合も、アルビノではないとは言い切れません(第6章)。症状に合わせて、ほかのパネル検査や全エクソーム検査を考えます。結果の意味は、症状とご家族の情報をあわせて一緒に考えます。
意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき
VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。
妊娠を考えている方:出生前診断の相談
ご家族の原因となる変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんを調べる出生前診断を受けられるかどうかも含めて、当院でご相談いただけます。当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。原因がわからないままでは、出生前に調べる的を決められません。妊娠の前に原因を確かめておくことが、計画の出発点になります。
海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます
PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。海外でPGT-Mを受けたいというお問い合わせが多いため、準備に必要なことをまとめます。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因遺伝子の確定、英語の検査結果の用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査です。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。
欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の指針では、PGT-Mの準備として、①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、②どの遺伝子のどの変化かが書かれた元の報告書、③ご家族の検体、が求められています[5]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、変化を直接読むだけでは、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあります。そのため、変化のある場所の両側にある目印(多型マーカー)で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます[5]。
ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。指針の目安では、ご夫婦に加えて、潜性遺伝の型(眼皮膚白皮症・ヘルマンスキー・パドラック症候群など)では患者さん(2つの変化をもつ方)・保因者・保因者でない方、X連鎖の眼白皮症1型では患者さんや発症していない方(保因者と確かめられた方が望ましい)、顕性遺伝のワーデンブルグ症候群1型では患者さん少なくとも1人(できれば2人)や発症していない方の検体が求められます。血縁者がいない場合、指針は治療周期の受精卵や1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法を挙げていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります[5]。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。
臨床遺伝専門医としての判断では、VUSは病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。潜性遺伝の型では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もって確認してください。
⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です
PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[6]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。当院では絨毛検査・羊水検査を院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。
日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないが日常生活が著しく損なわれる状態が現れる疾患では、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みになっています。ある病気が日本で対象になるかどうかは、審査で個別に決まります。学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。
どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。眼皮膚白皮症(OCA1A・1B・2・4型)、眼白皮症1型、ワーデンブルグ症候群(1型・2型の一部・3型・4型)は、PGT-Mを行ってよい病気としてこの一覧に載っています(2026年9月時点)。一覧にない病気は、施設を通じて申請し、HFEAが審査します。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[7]。米国生殖医学会(ASRM)の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気に対するPGT-Mも倫理的に許容されうるとする意見を出しています[8]。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。くわしくは海外でPGT-Mを考えている方へ(必要な遺伝子検査・家族の検体・英語の検査結果)で解説しています。
8. 日本の制度(2026年10月時点)
眼皮膚白皮症は指定難病164で、非症候型だけでなく、症候型のヘルマンスキー・パドラック症候群・チェディアック・東症候群・グリセリ症候群も対象に含まれます。難病情報センターの重症度の基準では、非症候型は良いほうの目の矯正視力が0.3未満の場合、症候型は全身症状の基準を満たす場合に重症とされています。また、小児慢性特定疾病(皮膚疾患群)の対象にも「眼皮膚白皮症(先天性白皮症)」が掲載されています(いずれも2026年10月時点で確認)。
医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。なお、この検査は自費診療で、保険は使えません。
9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込み330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医(オンライン可)
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検体の採取・送付お支払い後にキット発送
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。ご自身の判断で先に検体を採取しないでください。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質を保つためです。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。日本皮膚科学会のガイドライン(2014年)も、アルビノの遺伝子検査は臨床遺伝専門医などによる適切な遺伝カウンセリングを前提に行うことが望ましいとしています。
10. 院長コラム
🩺 院長コラム【見た目が同じでも、必要な備えは違う】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。アルビノの多くは潜性遺伝で、保因者のご両親には症状がないため、お子さんが生まれてはじめてわかることがほとんどです。そして、色素の少なさは同じように見えても、目と皮膚の守り方だけでよい型もあれば、出血・肺・免疫への備えが必要な型もあります。見た目の印象だけで「この型だろう」と決めてしまわないでほしいと考えています。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断の相談まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. アルビノの寿命はどのくらいですか?
寿命の見通しは、全身の症状を伴わない非症候型か、症候型かで大きく違います。難病情報センターは、非症候型では弱視に至りうる眼の症状と皮膚がんへの注意をあげ、症候型では合併する全身の症状が生命予後を左右するとしています。どちらの型かを遺伝子検査で確かめることが、見通しを考える出発点になります。
Q2. アルビノは遺伝しますか?
遺伝します。眼皮膚白皮症の多くは常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに発症する確率は4分の1です。保因者のご両親には症状がないため、家族にアルビノの方がいなくても生まれることがあります。眼白皮症1型はX連鎖遺伝、ワーデンブルグ症候群1型は常染色体顕性(優性)遺伝です。
Q3. アルビノ(眼皮膚白皮症)は難病ですか?
はい。眼皮膚白皮症は指定難病164で、症候型のヘルマンスキー・パドラック症候群・チェディアック・東症候群・グリセリ症候群も対象に含まれます。小児慢性特定疾病の対象にも掲載されています(2026年10月時点)。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たす必要があります。
Q4. アルビノの視力は普通ですか?
多くの方で視力は低下します。網膜の中心の発達が不十分な中心窩低形成が94〜100%に報告されており、視力はその程度と関係します。小児慢性特定疾病情報センターは、矯正できない視力障害を伴うことが単なる色白との決定的な違いだとしています。遮光眼鏡や屈折の矯正などで見え方を助ける工夫ができます。
Q5. 日本人にアルビノはどれくらいいますか?
難病情報センターは、国内の眼皮膚白皮症の患者数を約5,000人(2,800〜11,200人)と推計しています。日本皮膚科学会のガイドライン(2014年)では、日本人の患者さんの約34%がOCA1、27%がOCA4、10%がヘルマンスキー・パドラック症候群、8%がOCA2とされています。
Q6. 白皮症とアルビノは違うのですか?
同じ病気を指す呼び名です。医学的には、皮膚と目の両方に症状が出る型を眼皮膚白皮症、主に目に症状が出る型を眼白皮症と呼び、「アルビノ」「先天性白皮症」「アルビニズム」はこれらをまとめて指す言葉として使われています。
Q7. 検査はオンラインで受けられますか?
受けられます。オンライン診療で遺伝カウンセリングを行ったあと、唾液や頬の内側の粘膜の検体をお送りいただきます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。検体採取キットは検査料金のお支払い後にお送りしますので、先に検体を採取しないでください。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。
Q8. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?
はい。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。ただし、ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。ご家族の検体が必要になることが多いので、ご本人の検査の段階から準備を考えておくことが大切です。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。くわしくは「海外でPGT-Mを考えている方へ」のコラムで解説しています。
🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。アルビノの型がわかれば、ご自身の目と皮膚の守り方や、全身の合併症への備えだけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
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