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CFTR

承認済シンボルCFTR
遺伝子:CF transmembrane conductance regulator
参照:
HGNC: 1884
AllianceGenome : HGNC : 1884
NCBI1080
Ensembl :ENSG00000001626
UCSC : uc003vjd.4
遺伝子OMIM番号
遺伝子のlocus type :タンパク質をコードする
遺伝子のグループ:Chloride channels, ATP-gated CFTR
ATP binding cassette subfamily C
遺伝子座: 7q31.2
ゲノム座標: (GRCh38): 7:117,480,025-117,668,665

遺伝子の別名

ABC35
ABCC7
cAMP-dependent chloride channel
CF
CFTR_HUMAN
cystic fibrosis transmembrane conductance regulator (ATP-binding cassette sub-family C, member 7)
cystic fibrosis transmembrane conductance regulator, ATP-binding cassette (sub-family C, member 7)
MRP7

遺伝子の概要

CFTR遺伝子は、ATP結合カセット(ABC)トランスポーターの一種であるCFTRタンパク質をコードしています。このタンパク質は、ヌクレオチド結合ドメイン(NBD)でのATPの結合と加水分解によって活性化される、塩化物イオン(Cl)を選択的に通過させるチャネルとして働きます。CFTRの活性は、複数のリン酸化部位を含む調節ドメインによって細かく調整されます。この調節ドメインは、本質的に無秩序なタンパク質セグメントで構成されており、CFTRの機能を正確に制御する役割を果たしています。

CFTRタンパク質のこのような構造と機能の特徴は、細胞内外の塩化物イオン濃度のバランスを調整し、体液の適切な分泌と吸収を保証することによって、特に気道や消化管などの粘膜を覆う細胞における正常な生理機能を維持するために重要です。CFTRの異常は、塩化物イオンと水の輸送異常を引き起こし、粘液の粘度が異常に高くなる嚢胞性線維症などの疾患に繋がります。このため、CFTRの正確な制御機構の理解は、これらの疾患の治療法の開発に不可欠です。

CFTR遺伝子は、CF膜貫通コンダクタンスレギュレーター(CFTR)というタンパク質をコードしています。このタンパク質は細胞膜を通じて塩化物イオン(Cl^-)を輸送するチャネルとして機能し、粘液、汗、唾液、涙、消化酵素の産生に関与する細胞において重要な役割を果たします。塩化物イオンの輸送は、組織内の水分バランスを調節し、薄く流動性のある粘液の生成を助けます。この粘液は、気道や消化器系、生殖器系などの臓器の表面を滑らかに保ち、保護する役割を持ちます。

さらに、CFTRタンパク質はナトリウムイオン(Na^+)など他のイオンチャネルの機能も調節することで、肺や膵臓といった臓器の正常な機能維持に貢献します。これらのイオンチャネルの適切な調節は、体内の電解質バランスと液体の動きをコントロールし、細胞や組織の健康を支えます。CFTRタンパク質の異常は、嚢胞性線維症という遺伝性疾患を引き起こし、粘液の過剰な粘度上昇や体液の異常な分泌を引き起こすことが知られています。

遺伝子と関係のある疾患

{Bronchiectasis with or without elevated sweat chloride 1, modifier of}  気管支拡張症1±汗中塩化物上昇、修飾因子  211400 AD  3
※中括弧「{ }」は、多因子疾患(例:糖尿病、喘息)や感染症(例:マラリア)に対する感受性に寄与する変異を示します。これは、単一の遺伝子変異ではなく、複数の遺伝子や環境要因が組み合わさって疾患のリスクを高める場合に用いられる記号です。

{Hypertrypsinemia, neonatal} 新生児高トリプシン血症 3 

{Pancreatitis, hereditary} 遺伝性膵炎 167800 AD  3

Congenital bilateral absence of vas deferens 先天性両側精管欠損症 277180 AR 3 

Cystic fibrosis 嚢胞性線維症 219700 AR 3 

Sweat chloride elevation without CF  嚢胞性線維症を伴わない汗中塩化物上昇 3 

遺伝子の発現とクローニング

Riordanらによる1989年の研究は、嚢胞性線維症(CF)の原因遺伝子であるCFTR(嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス制御因子)を同定する重要な進歩を示しています。彼らは上皮細胞ライブラリーから重複するcDNAクローンを単離し、約6,500塩基転写産物を特定しました。この転写産物から予測されるタンパク質は、膜結合ドメインとATP結合ドメインを含む1,480アミノ酸から構成され、特定のフェニルアラニン残基欠失がCF患者の特徴であることが明らかにされました。

この発見は、ポジショナルクローニングという逆遺伝学のプロセスを通じて、染色体再配列や欠失を利用せずに解明された最初の遺伝性疾患の一つであり、嚢胞性線維症の研究において大きな進展をもたらしました。Rommensらによる染色体ウォーキングとジャンピングの組み合わせ、およびCF遺伝子の約25万bpの長さの特定は、CF遺伝子の同定における重要なステップでした。

GreenとOlsonによる1990年の研究では、酵母人工染色体(YAC)を用いたヒトDNAの大領域のクローニングとマッピングの戦略が述べられています。この方法により、CFTR遺伝子を含む7番染色体の領域から30個のYACクローンが分析され、1.5Mbp以上のコンティグマップが構築されました。これは、CF遺伝子全体を含む個々のYACが、酵母の減数分裂による組換えを利用してインビボで構築されたことを示しています。

Anandらによる1991年の研究は、CF遺伝子座に隣接する2つの遺伝子座を包含する1.5-Mbp領域の物理的マッピングを報告しており、CFTR遺伝子全体がこれらのYACクローンの1つに含まれていることを示しています。

これらの研究は、嚢胞性線維症の分子遺伝学における重要なマイルストーンであり、CFTR遺伝子のクローニングとその機能解析における基盤を築きました。これらの成果は、CFの診断、治療、および理解を深めるための出発点となり、遺伝性疾患の研究における新たな方向性を示しました。

遺伝子の構造

Riordanらによる1989年の研究は、嚢胞性線維症(Cystic Fibrosis, CF)の原因遺伝子であるCFTR(Cystic Fibrosis Transmembrane Conductance Regulator)遺伝子に24のエクソンが存在することを明らかにしました。この発見は、嚢胞性線維症の分子生物学的基盤の理解における重要な進展であり、この疾患の診断、治療、および研究に大きな影響を与えました。

Ellsworthらによる2000年の研究は、CFTR遺伝子の構造と機能に関するさらなる洞察を提供しました。彼らはヒトのCFTR遺伝子とマウスのCftr遺伝子を比較し、両種間で保存された生物学的に重要な領域を同定しようと試みました。この比較遺伝学的アプローチは、遺伝子の進化的保存領域がしばしばその遺伝子の重要な機能的役割を果たしていることを示しており、これらの領域を特定することは、遺伝子の機能と疾患との関連を理解する上で貴重です。

この研究により作成されたヒトとマウスのゲノム領域の物理地図と、選択されたクローンからの塩基配列の決定は、CFTR/Cftr遺伝子の組織を明らかにし、その発現を制御する潜在的な配列要素に関する新たな知見を提供しました。このような情報は、CFTR遺伝子の調節メカニズムを理解し、嚢胞性線維症のより効果的な治療法を開発するための基盤となります。

これらの研究は、遺伝子の構造、機能、および調節に関する基本的な理解を深めることによって、特定の遺伝子が関与する疾患の治療法を改善するための道を開いています。CFTR遺伝子の詳細な研究は、嚢胞性線維症だけでなく、他の多くの遺伝的疾患の研究にも影響を及ぼしています。

マッピング

Riordanらによる1989年の研究は、嚢胞性線維症(CF)の原因遺伝子であるCFTR(Cystic Fibrosis Transmembrane Conductance Regulator)遺伝子を染色体7qにマッピングしたという重要な発見を報告しました。この発見は、嚢胞性線維症の分子生物学的基盤の理解における大きな進歩であり、この遺伝性疾患の診断と治療に新たな道を開きました。

その後の研究では、マウスとチャイニーズハムスターの遺伝学的モデルを使用して、CFTR遺伝子の位置がさらに詳細に調べられました。Chanらによる1989年の研究は、WNT2とMET遺伝子に相当するマウス遺伝子がマウスの6番染色体にマッピングされており、これが嚢胞性線維症に相当するマウス遺伝子も同様に6番染色体上に存在することを示唆するものでした。Kelleyら(1992年)とSiegelら(1992年)の研究は、マウスモデルを用いてこの位置を確認し、CFTR遺伝子がマウスの6番染色体、特にMet遺伝子およびCola-2遺伝子に近い位置にあることを示しました。

さらに、Treziseらによる1992年の研究は、ラットの4番染色体上にCFTR遺伝子座が存在することを明らかにしました。これらの異なる種間でのマッピング結果は、哺乳類の進化における染色体の保存と遺伝子座の再配置のパターンを示唆しています。特に、ラット4番染色体とマウス6番染色体にはシンテニック(相同な遺伝情報を共有する)関係があり、これらの染色体は祖先の哺乳類染色体に由来することが示唆されています。しかし、ヒトでは、これらの遺伝子は7番染色体と12番染色体に分かれており、ネズミの4番染色体とヒトの7番染色体でシンテニックな5つの遺伝子は、ネズミでは5番染色体と6番染色体の間に分かれています。

これらのマッピング研究は、遺伝子の位置決定だけでなく、哺乳類の遺伝子組織と進化の理解にも貢献しています。CFTR遺伝子の正確な位置の特定は、嚢胞性線維症の分子メカニズムの解明や治療戦略の開発において重要な役割を果たしています。

生化学的特徴

Serohijosら(2008)による研究では、CFTR(嚢胞性線維症膜透過性調節因子)の三次元構造が分子モデリングを通じて構築され、生化学的データによって支持されました。この構造解析では、Phe508残基が、N末端ヌクレオチド結合ドメイン(NBD1)の表面と、C末端の膜スパニングドメイン(MSD)内の細胞質ループ-4との間で重要な三次元相互作用を仲介していることが明らかになりました。この相互作用はチャネルゲーティングの制御に関わっており、CFTRのアセンブリーと機能におけるNBD1と細胞質ループ-4の変異の影響を説明しています。

一方、Liuら(2019)はクライオ電子顕微鏡(cryo-EM)を用いて、増強剤であるivacaftorおよびGLPG1837と複合体を形成したヒトCFTRの構造を3.3オングストロームおよび3.2オングストロームの分解能で報告しました。これらの薬剤は化学的に異なるものの、CFTRの膜貫通領域内の同じ部位に結合し、タンパク質が提供する水素結合が薬物認識に重要であることが示されました。この研究は、CFTRタンパク質の機能改善を目指した薬剤開発において、特定の薬剤がCFTRにどのように作用するかを理解する上で貴重な情報を提供します。

これらの研究は、CFTRの構造と機能に関する深い理解を提供し、嚢胞性線維症の治療薬の設計と開発における新たな方向性を示しています。

遺伝子の機能

分子遺伝学の研究は、CFTRタンパク質の複雑な機能とその異常がシステミックな影響を及ぼす方法を示しています。CFTR(Cystic Fibrosis Transmembrane Conductance Regulator)は、主に塩化物イオンの細胞膜を通じた輸送を調節することで知られていますが、これらの研究は、その機能がはるかに多岐にわたることを示しています。

CFTRとその制御機構

Schwiebertら(1995)の研究は、CFTRがATPを細胞外へ輸送し、これによって外向きに整流するクロライドチャネル(ORCC)を間接的に活性化することを示しました。これは、CFTRが塩化物イオンの輸送だけでなく、他の輸送経路の調節にも関与していることを示しています。

CFTRの品質管理とその異常

Jensenら(1995)およびChangら(1999)の研究は、CFTRが小胞体(ER)で厳格な品質管理システムの対象となり、異常なタンパク質は迅速に分解されることを示しています。特に、delF508変異体は、その100%がERから出る前に迅速に分解されます。

Changら(1999)は、特定のアルギニン残基をリジンで置換することにより、変異型delF508 CFTRタンパク質が品質管理システムから逃れ、機能的に細胞表面に到達することを示しました。

ER関連分解(ERAD)経路

Youngerら(2006)の研究は、E3 RMA1、E2 UBC6E、derlin-1などを含むER膜関連ユビキチンリガーゼ複合体が、CFTRとその変異体の選択的分解に関与していることを同定しました。これらの分子はCFTRのプロテアソーム分解を促進し、特にdelF508変異体のフォールディング欠陥を認識し、分解を行います。

CFTRのATPアーゼ活性

Randakら(1997)の研究は、CFTRのNBF2ドメインがATPの加水分解活性を持ち、さらにアデニル酸キナーゼ様の活性も有していることを示しました。これは、CFTRが細胞内エネルギー代謝にも関与している可能性を示唆しています。

これらの発見は、CFTRが単なる塩化物チャネル以上の役割を持っていること、そしてシスティック・フィブローシス(CF)のような遺伝性疾患において、その異常がなぜ広範な生理学的影響を及ぼすのかを理解する上で重要です。CFTRの異常は、塩化物イオン輸送の障害だけでなく、ナトリウム吸収の亢進、細胞外ATP輸送の調節失敗、さらにはタンパク質の品質管理機構の破綻によって、細胞のアポトーシス感受性の増大といった広範囲にわたる影響を引き起こします。これらの機構の詳細な理解は、システィック・フィブローシスのより効果的な治療法の開発に寄与する可能性があります。

Ramjeesinghら(1999)の研究では、CFTRタンパク質のATPアーゼ活性に対するWalker Aコンセンサスモチーフの変異の影響を調査しました。2つのヌクレオチド結合フォールド(NBF)のうち、どちらかのWalker Aモチーフのリジン残基を変異させると、CFTRタンパク質のATPアーゼ活性が50%以上減少し、これにより2つのNBFが触媒作用において協調的に機能していることが示唆されました。しかし、チャネルゲーティングの速度は第二のNBFに変異がある場合にのみ有意に阻害され、ATPアーゼ活性がチャネルゲーティングと直接関連していない可能性が示されました。

RandakとWelsh(2003)は、HeLa細胞で発現した全長CFTRと単離されたNBD2が、ATPアーゼ活性とアデニル酸キナーゼ活性を持つことを発見しました。アデニル酸キナーゼ阻害剤Ap5AはCFTRのCl^-電流を阻害し、ATPとAMP部位に結合してチャネル活性を阻害しました。AMPの添加により、NBD2ポリペプチドの酵素活性がATPaseからアデニル酸キナーゼに切り替わり、ATPとAMPはNBD1とNBD2の二量体化を誘導し、チャネルを開く可能性が示唆されました。

JiangとEngelhardt(1998)は、肺におけるCFTRの発現と機能の細胞内不均一性が嚢胞性線維症の遺伝子治療に重要であることを概説しました。

嚢胞性線維症は、気道における緑膿菌の持続的な定着と多形核白血球による炎症反応が特徴です。Cromwellら(1981)は、CF患者の喀痰中にロイコトリエンが存在することを示し、Konstanら(1995)はイブプロフェンがCF治療に有用である可能性を報告しました。しかし、イブプロフェンのCFTRに対する影響は、塩化物イオン分泌の阻害を含み、治療戦略に影響を及ぼす可能性があることがDevorとSchultz(1998)によって示されました。これらの研究は、CFTRの機能、調節、および嚢胞性線維症治療に関する理解を深めるのに貢献しています。

Weiら(1998)による研究では、CFTR(嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス制御因子)の特定の点変異が、チャネル活性にどのように影響するかを検討しました。H620Q変異体では塩化物伝導が増加したのに対し、E822KおよびE826K変異体では減少しましたが、陰イオン透過性や単一チャネルコンダクタンスは野生型と変わらなかったことが示されました。これは、Rドメインの特定の部位がCFTRのゲーティングに影響を与えることを示唆しています。

Chansonら(1999)は、CFTRの機能的発現が塩化物イオンチャネルの活性化だけでなく、細胞間のギャップ結合コンダクタンスの調節にも重要であることを明らかにしました。この研究は、ギャップジャンクションチャネルの制御不全がCFで影響を受ける組織の機能変化に寄与している可能性があることを示唆しています。

Reddyら(1999)による研究では、CFTR活性が上皮ナトリウムチャネル(ENaC)の活性に影響を与え、CF患者における食塩吸収の低下は、塩化物伝導能の低下だけでなく、ナトリウム伝導能の低下にも起因していることが示されました。

WeixelとBradbury(2000)は、CFTRがエンドサイトーシスアダプター複合体AP2に結合し、その結合がCFTRのエンドサイトーシスと細胞内輸送に重要であることを示しました。この相互作用は、CFTRの細胞表面での局在と機能調節に寄与しています。

最後に、Wangら(2000)は、CFTR活性を増強する親水性CFTR結合タンパク質CAP70(PDZK1)を同定しました。このタンパク質はCFTR分子間の相互作用を介してチャネル活性を高め、CFTRの伝導状態を制御する重要な役割を果たしています。

CFTRのC末端とPDZ相互作用ドメイン
Moyerら(2000)による研究は、CFTRのC末端に位置するPDZ相互作用ドメインが、細胞膜への分極とPDZドメインを含むタンパク質EBP50との相互作用に重要であることを示しました。特定のアミノ酸の点置換により、CFTRの分極、EBP50との相互作用、および塩化物分泌が阻害されることが明らかになりました。
CFTRの塩化物共役重炭酸塩輸送の制御
Choiら(2001)は、CFTR変異体が重炭酸塩輸送を支持しないことを発見し、これが膵機能不全や嚢胞性線維症の特定の症状と関連していることを示しました。これは、分泌上皮の機能およびCFにおける重炭酸塩輸送の重要性を証明しています。
CFTR遺伝子の調節
Rowntreeら(2001)は、CFTR遺伝子のイントロン1に存在するDNase I hypersensitive site(DHS)の除去が、特定の組織でのCFTR発現に重大な影響を与えることを発見しました。これは、CFTR遺伝子の組織特異的な調節メカニズムの存在を示唆しています。
CFTR機能の定量的識別
Callenら(2000)は、cAMPを介した発汗速度検査を開発し、これを用いてCFTRの機能を定量的に識別しました。この検査は、CFの診断や治療薬の研究に有用であることが示されました。
CFTR遺伝子のスプライシング
Hefferonら(2002)は、CFTR遺伝子のエクソン9のスキップと関連するスプライシング配列の変化を調査しました。彼らの研究は、スプライシング効率に影響を与える可能性のあるスプライシングサイト周辺の配列変異に光を当てました。

CFTR発現の発生学的制御: Broackes-Carterらによる研究は、ヒツジの妊娠期間中のCFTR mRNAの発現パターンを明らかにしました。これは、CFTRが呼吸器上皮の分化において重要な役割を果たすこと、および分娩間近のナトリウム/塩化物バルクフローの変化とは独立した機能を持つことを示唆しています。

CFTRとリン脂質の相互作用: Eidelmanらの研究は、CFTRのNBF1ドメインがホスファチジルセリンと選択的に相互作用することを発見しました。これは、δ-F508変異体のプロセッシング欠陥に寄与する可能性がある異常な相互作用を示しています。

CFTR活性化の新しいメカニズム: YangらとReddyとQuintonによる研究は、CFTR活性化のための新しい戦略を提供します。Yangらは、特定の小分子がdelta-F508 CFTRの機能を改善できることを発見しました。ReddyとQuintonは、グルタミン酸によるCFTRのリン酸化とATP非依存的活性化を報告しました。

CFTRと生殖: Wangらの研究は、CFTRが子宮内膜上皮細胞における重炭酸塩輸送に関与しており、CFの女性の受胎能低下と関連している可能性があることを示しています。

CFTRの複雑な調節: Fischerら、Verganiら、およびWangらによる研究は、CFTR機能の調節にビタミンC、NBD間の相互作用、およびHSP90コシャペロンが関与していることを示しています。

CFTRと細胞間相互作用: Thelinらは、CFTRの機能と細胞膜での安定性がフィラミンによって調節されることを発見しました。また、Chengらは、CFTRがゴルジ体でCALと相互作用し、その細胞表面発現が選択的に阻害されることを示しました。

CFTRとその他のイオンチャネルの関係: OusingsawatらとBenedettoらの研究は、CFTRとTMEM16Aとの関係を探り、これらが相互に依存し合っていることを示しました。

分子遺伝学

Keremらによる1989年の研究は、CF患者の約70%に共通する特異的な変異、F508delを明らかにしました。この変異は、CFTR遺伝子のアミノ酸位置508におけるフェニルアラニン残基の欠損によるもので、CFの表現型に大きく寄与しています。この発見は、CFの原因となる遺伝子変異の多様性を理解する上での出発点となりました。

Trapnellらによる1991年の研究は、CFTR mRNAの転写産物が気道上皮細胞で適切な割合で存在していることを示し、CFの理解に貢献しました。Zeitlinらによる1992年の研究は、CFTRタンパク質の薬理学的調節を示し、CFの治療戦略の開発に役立つ可能性があります。

Zielenskiらによる1991年の研究は、CFTR遺伝子のイントロン17bに高多型のジヌクレオチドリピートクラスターを発見し、CFの遺伝的診断と家族カウンセリングに有用な情報を提供しました。この多型性は、CFの遺伝的背景と変異の起源を追跡する上での重要なツールとなっています。

また、CFTR mRNAの「異所性」または「不正」転写の検出に関するChalkleyとHarrisの1991年の研究や、Fonknechtenらによるリンパ球とリンパ芽細胞の研究は、CFTR遺伝子変異の検出方法を進化させ、より正確な診断へと導いています。

Cuttingらによる1990年の研究は、CFTRのNBFにおける変異の存在を明らかにし、CFの表現型における複雑さをさらに理解するための基盤を築きました。これらの研究は、CFの分子的メカニズムの解明に大きく貢献し、将来的な治療法の開発に向けた貴重な知見を提供しています。

CFTRの変異とその影響
delF508変異は、CFTRタンパク質の局在異常と不安定性により、チャネル機能の部分的欠損を引き起こします。この変異は、タンパク質が小胞体で保持され、正しくプロセシングされずに分解されることにより、疾患が引き起こされるようです。
G551D変異は、チャネル活性の異常によって特徴づけられます。この変異は、CFTRのヌクレオチド結合ドメインに影響を与え、ATP結合の欠陥を引き起こします。
CFTRタンパク質の機能とスプライシング
CFTR遺伝子のイントロン8に存在するチミジンの多型は、エクソン9のスプライシング効率に影響を及ぼし、これがCFTR転写産物のエクソン9欠損と関連しています。これは、エクソン9を欠くCFTR転写産物が成熟しないCFTRタンパク質に翻訳され、上皮細胞の頂膜でクロライドチャネルとして機能しないことを意味します。
R117H変異がT5対立遺伝子と組み合わされると、CFの原因となります。この変異は、T5対立遺伝子が存在する場合にのみ、CFまたはCBAVD(先天性双側精管欠如症)を引き起こす可能性があります。
多型とCFTRの表現
CFTR遺伝子には120以上の多型が存在し、これらの多型の組み合わせがCFTRタンパク質の量や機能に影響を与える可能性があります。特に、M470V遺伝子座とジヌクレオチド反復多型(TG)mは、CFTR転写物およびタンパク質の量と質に影響を及ぼします。

CFTR遺伝子と播種性気管支拡張症: PignattiらとGirodonらの研究は、播種性気管支拡張症患者の一部にCFTR遺伝子の変異が存在し、これが疾患の原因の一つである可能性があることを示しています。このことは、CFTR遺伝子の変異がCF以外の肺疾患にも関与していることを示唆しています。

CFTR遺伝子変異と腸チフスの感受性: Pierらの研究は、CFTR遺伝子の変異が腸チフスに対する感受性を低下させる可能性があることを示しています。これは、Salmonella typhiがCFTRを利用して上皮細胞に侵入することから、CFTRの機能が変異によって低下すると、細菌の侵入が阻害される可能性があるためです。

CFTR遺伝子と特発性慢性膵炎: SharerらとCohnらの研究は、特発性慢性膵炎患者の一部にCFTR遺伝子の変異が存在し、これが疾患の原因の一つである可能性があることを示しています。これは、CFTR遺伝子の変異が膵炎の発症に関与していることを示唆しています。

CFTR遺伝子のイントロン8における5T変異とその隣接するTGリピートの数は、嚢胞性線維症(CF)や先天性精管欠損症(CBAVD)などの疾患の表現型に影響を与える重要な遺伝的要因です。Gromanら(2004)の研究では、5T変異に隣接するTGリピートの数が疾患の浸透率に影響することが示されました。特に、11個のTGリピートを持つ5T変異は、非罹患者に多く見られ、12または13個のTGリピートを持つ5T変異は、罹患者に一般的であり、これらの個体は異常な表現型を示す可能性が高いことがわかりました。

Leeら(2003)によるハプロタイプ解析では、特定の多型が症例対照研究で疾患と関連していることが明らかにされました。CFTRの多型、特にM470Vは疾患関連の強さに影響を与え、T5-V470ハプロタイプは、T5-M470よりも高い疾患関連性を示しました。

CFTRプレmRNAのスプライシングにおけるTDP43の役割は、Burattiら(2001)によって強調されました。彼らは、TDP43がCFTRエクソン9のスキップを促進することを示しました。CFTRイントロン8中のTGリピートがTDP43に結合し、エクソン9のスプライシングを阻害することが示され、TGリピートの数が疾患の表現型に影響を与えるメカニズムを提供しました。

CFTR遺伝子の異常は、膵臓欠損型CFや特発性慢性膵炎(ICP)の発症リスクとも関連しています。Changら(2007)による研究では、CFTR変異のヘテロ接合体保有者がICP発症リスクが高いことが示されました。

これらの研究は、CFTR遺伝子の変異がCFやその他の関連疾患の発症にどのように影響を与えるかについての理解を深めるものであり、遺伝子機能、スプライシング機構、および遺伝的変異の相互作用の重要性を強調しています。これらの知見は、CFや関連疾患の診断、治療、および予防戦略の改善に貢献する可能性があります。

アミノグリコシド系抗生物質の効果

アミノグリコシド系抗生物質は、抗菌活性に加え、早すぎる終止コドンを抑制する能力があります。これは、停止コドンの代わりにアミノ酸を取り込むことで、特定の遺伝子変異が原因で発生する疾患の治療に応用される可能性があります。リボソームのプルーフリーディング機能を阻害することで、アミノグリコシドは翻訳の忠実度を低下させ、ナンセンスコドンへの誤った挿入の頻度を増加させます。このメカニズムは、真核細胞で確認されています。

Howardら(1996)は、アミノグリコシド系抗生物質による低用量処理がCFTR関連のストップ突然変異を抑制することを発見しました。さらに、Bedwellら(1997)は、特定のCFTR変異を持つ細胞株において、アミノグリコシドによる処理がCFTR発現の回復をもたらし、cAMP活性化塩化物電流の再出現やCFTRタンパク質の細胞膜への回復を示しました。

Wilschanskiら(2003)は、CFTRのストップ変異を有する患者に対するゲンタマイシンの鼻腔内投与の効果を二重盲検プラセボ対照試験で調査しました。結果は、ゲンタマイシンがストップ変異を持つ患者の鼻電位差を有意に減少させ、CFTRの機能回復を示唆しました。

これらの発見は、アミノグリコシド系抗生物質が嚢胞性線維症などの遺伝性疾患におけるナンセンス変異の治療に有用である可能性を示しており、遺伝子療法の新たなアプローチとして注目されています。

歴史

Mashalらによる1995年の研究と、Youilらによる同年の独自開発された酵素ミスマッチ切断(EMC)技術は、遺伝子の変異分析方法における重要な進歩を示しています。この技術は、CFTR遺伝子などの特定の遺伝子に存在する変異を検出するために用いられました。

レゾルバーゼによる変異検出法
レゾルバーゼは、生体内での分岐DNAの切断に関与する酵素であり、二本鎖DNA中のミスマッチ塩基を特定し、その部位でDNAを切断する能力を持っています。この性質を利用することで、遺伝子の変異や突然変異を効率的に検出することが可能になります。EMC技術では、レゾルバーゼがヘテロ二重鎖DNAのミスマッチ部位を認識し、放射性標識されたDNAをその部位で切断します。その結果、ゲル電気泳動によってミスマッチの存在とその位置を明確に特定することができます。

CFTR遺伝子の変異分析
CFTR遺伝子は、嚢胞性線維症(Cystic Fibrosis, CF)の原因となる重要な遺伝子であり、この遺伝子の変異はCFの発症に直接関連しています。MashalらとYouilらによる研究は、CFTR遺伝子内の変異を特定し、その変異がどのようにCFの症状を引き起こすかを理解するための基礎を築きました。EMC技術の使用は、CFTR遺伝子の詳細な変異分析を可能にし、CFに関連する特定の変異のスクリーニングと診断に大きく貢献しました。

遺伝子変異検出技術の進歩
レゾルバーゼを用いた変異検出法は、遺伝子変異の分析における新しいパラダイムを提示しました。この技術は、変異の迅速かつ正確な検出を可能にし、疾患の診断、個別化医療、および遺伝子治療の開発に重要な影響を与えました。また、この技術の開発は、遺伝子の変異を特定するための他の方法論の発展にも影響を与え、分子生物学と遺伝子診断の分野を進化させる重要なステップとなりました。

動物モデル

嚢胞性線維症(Cystic Fibrosis, CF)の理解と治療法の開発において、動物モデルは重要な役割を果たしています。CFは、CFTR(嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス制御因子)遺伝子の変異によって引き起こされる遺伝性の疾患で、主に肺や消化系の厳重な症状をもたらします。

マウスモデルの開発
Tataら(1991)は、ヒトCFTR遺伝子のマウスホモログをクローニングし、CFのマウスモデルの研究の基盤を築きました。このマウスモデルを使用して、Dorinら(1992)やSnouwaertら(1992)は、CFTR遺伝子を破壊することによって、CFTRを欠損するマウスを作製しました。これらのモデルは、CFの病態生理を理解し、新しい治療法を評価するための基盤を提供しました。

Zeiherら(1995)は、CFTR遺伝子に最も一般的な変異であるF508del変異を導入することによって、CFのマウスモデルを作製しました。この変異は、CFTRタンパク質が小胞体に保持され、分解されることを引き起こし、結果として上皮細胞が塩化物イオンの透過性を欠くことになります。

線虫モデルの貢献
McCombieら(1992)は、線虫を用いてCFTRやLDLレセプター遺伝子のホモログを同定しました。彼らは、線虫が生物学的および遺伝学的なマップに関する広範な情報を提供し、正常遺伝子や変異遺伝子の機能を研究する上でユニークな利点があることを示唆しました。

CF治療戦略への影響
Eganら(2004)は、クルクミンがCFTRのF508del変異によって引き起こされるミスフォールディングと細胞膜への輸送不良を改善する可能性があることを示しました。この発見は、CF治療のための新たなアプローチを提案しました。

Pezzuloら(2012)は、CFブタモデルを用いて、新生児の気道が細菌の排除を損なう異常を調査しました。彼らは、CFTRが欠損していると、気道上皮の重炭酸塩分泌に欠陥が生じ、抗菌機能が阻害されることを発見しました。これは、CF治療において、ASLのpHを標的とする新たな治療戦略を提案しました。

これらの動物モデルによる研究は、CFの複雑な病態生理の理解を深め、CFTRタンパク質の機能回復に焦点を当てた治療戦略の開発に貢献しています。CF治療のための遺伝子置換戦略や、CFTR機能の回復を目指した新しい治療法の開発に向けた基礎を提供し、CF患者の生活の質の向上に向けた新たな希望を与えています。

アレリックバリアント

アレリックバリアント(138の選択された例):Clinvarはこちら

.0001 のう胞性線維症
汗の塩化物1上昇を伴うか伴わない気管支拡張症、修飾因子、含む
CFTR、PHE508DEL (rs113993960)
嚢胞性線維症(CF; 219700)の個体において、Keremら(1989)は、CFTR遺伝子のエクソン10において3塩基対の欠失を同定し、コドン508におけるフェニルアラニンの欠失(delta-F508)をもたらした。delta-F508変異が生じたエクソンは、エクソン11に修正されている;例えば、Sharmaら(2014)を参照。

European Working Group on CF Genetics (1990)は、ヨーロッパにおけるδ-F508変異の分布に関する情報を発表した。そのデータは、有用な地図で示され、南東部(トルコ)の30%という低い値から、北西部の高い値(例えば、デンマークの88%)まで、ヨーロッパ全域で顕著なクラインを示していた。研究グループは、CF遺伝子の拡散は、中東から始まった初期の農民の移動に伴い、ゆっくりとヨーロッパ北西部に向かって進行した可能性を示唆した。CF遺伝子の拡散は、その遺伝子が与える選択的優位性によって促進された可能性がある。いわゆるハプロタイプBとの強い関連性が示された。隣接する遺伝子の影響、すなわち「ヒッチハイク」の可能性が議論された。Rozenら(1990)は、ケベック州フランス系カナダ人の都市部の家族のCF染色体の71%、サグネー-ラック-サン-ジャン地域の家族の染色体の55%、ルイジアナ州アカディア人の家族の染色体の70%にδ-F508変異を認めた。De Braekeleer (1991)は、サグネー-ラック-サン-ジャン地域の出生時の嚢胞性線維症の頻度は1/926であり、1/15の保因率と推定している。Daigneault ら(1991)は、同地域の出生時 CF 有病率は 1/902 であり、保因率は 1/15 であると報告している。Rozenら(1992)は、Saguenay-Lac-Saint-JeanのCF家系の58%にδ-F508変異がみられ、コドン621以降のG-to-Tドナースプライス部位変異が23%、A455E変異(602421.0007)が8%にみられた。後者の2つの変異はケベック州の都市部の家族には見られなかった。このことは、創始者効果の役割を示すさらなる証拠となった。293人の患者の中で、Keremら(1990)は、F508欠失のホモ接合体の患者は、より早い年齢で嚢胞性線維症の診断を受け、膵不全の頻度が高いことを見出した。膵不全はホモ接合体の患者の99%に認められ、欠失のヘテロ接合体の患者では72%であった。Wautersら(1991)は、ベルギーのCF患者におけるδ-F508変異の頻度を調査した。この変異は、血縁関係のない36家族のCF染色体の80%にみられた。この集団では、delta-F508変異を持つCF染色体の93%がハプロタイプBも持っていた。Gilleら(1991)は、δ-F508突然変異の効率的なヘテロ接合体スクリーニング法について述べている。彼らはPCR法で49個までの無関係なDNAサンプルからヘテロ接合体を検出できることを示した。Lererら(1992)は、δ-F508変異はユダヤ人CF対立遺伝子の33.8%を占めると報告している。

バスク人は、旧石器時代後期に西ヨーロッパに定着し、ヨーロッパで最も古い民族のひとつと考えられている。バスク語であるエウスケラは、ヨーロッパに最初に入植した人々に由来する、インド・ヨーロッパ語以前の言語であると考えられている。ヨーロッパにおけるdelF508変異の分布は様々で、北ヨーロッパでは頻度が高く、南ヨーロッパでは頻度が低い。これは、新石器時代に中東から移住してきた初期の農民によってこの変異が広まったためと考えられている。しかし、バスク地方では、4,500人に1人という非常に高い頻度でこの突然変異が見つかっている。Casalsら(1992)は、バスク地方の45のCF家 族を調査した結果、delF508変異の頻度は、純粋なバスク 出身者の染色体では87%、混血バスク出身者の染色体では58% であった。Casalsら(1992)は、delF508突然変異は1万年以上前のヨーロッパに存在し、農耕民族の移住が突然変異を導入するのではなく、突然変異を希釈したと提唱している。Ballabioら(1990)はフェニルアラニン508欠失を診断するための対立遺伝子特異的増幅法について述べている。Grebeら(1992)はアメリカ南西部のPuebloとNavajoのネイティブアメリカンにおいて、12人の罹患者にdelF508変異を認めなかった。臨床的には、罹患者のうち6人に成長不全がみられ、5人(すべてズニ・プエブロ出身)に重度のCF表現型がみられた。また、6人のズニ族CF患者のうち4人は小頭症であった。Casalsら(1997)は、スペインの嚢胞性線維症家族640人の分析において、75の突然変異がCF染色体の90.2%を占めていることを発見した。δ-F508変異の頻度は53.2%であった。次に頻度の高い変異はgly542からterへの変異(602421.0009)で、頻度は8.43%であった。

Russoら(1995)は、イントロンに位置するCFTR遺伝子の3つの遺伝子内マイクロサテライトを用い、イタリア人被験者の377本のCF染色体と358本の正常染色体について、各マーカーと様々なCF変異との連鎖不平衡を評価した。その結果、すべてのdel508染色体は単一の突然変異事象に由来するという仮説と一致した。同じ仮説は、del508よりも最近発生した可能性のある他の3つの突然変異についても有効であった。

Grebeら(1994)は、米国南西部のヒスパニック系嚢胞性線維症患者129人について分子遺伝学的解析を行った。その結果、F508delの変異を有していたのは、わずか46%(129人中59人)であった(一般集団における頻度は67.1%)。

delF508変異のホモ接合性に起因する69人のイタリア人CF患者において、De Roseら(2005年)は、免疫グロブリンFc受容体II遺伝子(FCGR2A;146790.0001参照)のR131対立遺伝子も有する患者では、慢性緑膿菌感染症の発症リスクが4倍増加することを明らかにした(p=0.042)。De Rose ら(2005)は、FCGR2A 遺伝子座の変異が CF 患者のこの感染感受性に寄与していることを示唆した。

Fajac ら(2008)は、特発性気管支拡張症(BESC1; 211400)を有し、ヘテロ接合体 F508del CFTR 変異を有する、汗塩化物上昇を認めるが鼻電位差は正常であった 62 歳の女性において、SCNN1B 遺伝子のミスセンス変異(600760.0015)のヘテロ接合体も同定した。この患者は、1秒間の強制呼気量(FEV1)が予測値の89%であった。Fajacら(2008)は、SCNN1Bの変異は、特にCFTR遺伝子にも変異を有する患者において、ナトリウムチャネル機能に有害であり、気管支拡張症につながる可能性があると結論づけた。

Okiyonedaら(2010)は、F508del変異を含むアンフォールディングCFTRを細胞膜から除去する周辺タンパク質品質管理ネットワークの構成要素を同定した。Okiyonedaら(2010)は、彼らの結果と異なる細胞内位置におけるプロテオスタティックメカニズムに基づき、CFTRのアンフォールドした細胞質領域の認識は、HSC70(600816)とDNAJA1(602837)、そしておそらくはHSP90機構(140571)によって仲介されるというモデルを提唱した。シャペロン-コシャペロン複合体との長時間の相互作用は、CHIP(607207)-UBCH5C(602963)をリクルートし、コンフォメーションに損傷を受けたCFTRのユビキチン化につながる。このユビキチン化は、おそらく他のE3リガーゼや脱ユビキチン化酵素活性の影響を受け、Ub結合クラスリンアダプターと輸送に必要なエンドソームソーティング複合体(ESCRT)機構によって、それぞれエンドサイトーシスとリソソーム輸送が促進される。HuttとBalch(2010)は、プロテオスタシスネットワークによって維持される「陰陽」のバランスは、正常な細胞、組織、生物の生理にとって重要であると述べている。

Chongら(2012)は、米国のシュミーデロイト(S-leut)ハッター派1,482人のうち、CFTR遺伝子のphe508del変異のヘテロ接合体を32人、ホモ接合体を0.022人、つまり45.5人に1人の頻度で発見した。この頻度は、一般集団におけるこの変異の頻度(30人に1人)よりも低い。

Pankowら(2015年)は、CFTRとδ-F508 CFTRのインタラクトームと、温度シフトおよびヒストンアセチル化酵素阻害時のその動態の初の包括的解析を報告した。新規のディーププロテオミクス解析法を用いて、彼らは638個の高信頼CFTR相互作用因子を同定し、レスキュー時に広範囲にリモデリングされるデルタ-F508欠失特異的なインタラクトームを発見した。インタラクトームのリモデリングの詳細な解析により、その欠損が初代嚢胞性線維症上皮におけるデルタ-F508i CFTRチャネル機能を促進する、あるいはCFTRの生合成に重要な、主要な新規インタラクターが同定された。Pankowら(2015)の結果は、δ-F508 CFTR相互作用のグローバルなリモデリングがレスキューに重要であることを示し、F508欠失に起因する嚢胞性線維症の分子疾患メカニズムに関する包括的な洞察を提供した。

臨床試験

Wainwrightら(2015)は、CFTR補正薬であるルマカフトール(VX-809)とCFTR増強薬であるアイバカフトール(VX-770)の併用効果を評価することを目的とした2つの第3相無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。12歳以上のPhe508del CFTR遺伝子変異ホモ接合体患者1,108人を、ルマカフトール(600mgを1日1回または400mgを12時間ごと)とアイバカフトール(250mgを12時間ごと)の併用群と、マッチさせたプラセボ群に無作為に割り付け、24週間投与した。主要評価項目は、24週目における強制呼気1秒量(FEV1)の予測値に対するベースラインからの絶対変化率であった。両試験とも、主要エンドポイントに有意な改善がみられた。FEV1パーセントの平均絶対的改善に関する有効群とプラセボ群の差は2.6~4.0パーセントポイント(pは0.001未満)であり、これは平均相対的治療差4.3~6.7%(pは0.001未満)に相当した。プール解析によると、肺増悪率はプラセボ群より治療群で30~39%低かった。さらに、入院または抗生物質の静脈内投与に至ったイベントの発生率は、治療群で低かった。有害事象の発生率は治療群とプラセボ群で同程度であった。有害事象による中止率は、ルマカフトール-イバカフトール投与群で4.2%であったのに対し、プラセボ投与群では1.6%であった。Wainwrightら(2015年)は、CFTRを標的とすることで嚢胞性線維症の根本原因に対処するように設計されたCFTR補正薬と増強薬の併用は、Phe508del変異のホモ接合体である患者の45%に利益をもたらすことができると結論づけた。

.0002 嚢胞性線維症
CFTR、ile507del
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Keremら(1990)は、CFTR遺伝子に3bpの欠失を検出し、その結果、506位または507位のいずれかにイソロイシンが欠失した(δ-I507)。Nelsonら(1991)は、重篤な膵不全を持つ2人の兄弟に、ホモ接合状態で同じ変異を認めた。Orozcoら(1994)は、F508delとの複合ヘテロ接合体におけるile507-to-del変異の認識の困難さについてコメントしている。

.0003 のう胞性線維症
cftr, gln493ter
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Keremら(1990)は、CFTR遺伝子のエクソン10のヌクレオチド1609において、早発停止位置493(Q493X)を引き起こすCからTへの変化を検出した。

.0004 嚢胞性線維症
CFTR、ASP110HIS
Oritaら(1989)によって開発された一本鎖コンフォメーション多型(SSCP)を同定する方法を用いて、Deanら(1990)は軽症の嚢胞性線維症(CF; 219700)に関連する3つの異なる変異を同定した。3つの変異はすべて、荷電アミノ酸を極性の低い残基で置換し、分子の推定膜貫通部分に変化をもたらした。変異したアミノ酸はげっ歯類と両生類の両方で保存されているものであり、CFTRの膜にチャネルを形成すると考えられている領域にあることがわかった。BOS-7と同定されたファミリーでは、エクソン4のCからGへの転換により、アスパラギン酸残基がヒスチジンに置換されていた(D110H)。(SSCPを同定するオリタ法では、100-400bpの放射性標識DNAを増幅し、その後変性させ、高分解能の非変性アクリルアミドゲルで電気泳動する。このような条件下では、DNA断片の各鎖はユニークなコンフォメーションでそれ自身に折り返すことができる。DNAセグメント内の変異はしばしば分子の二次構造を変化させ、電気泳動移動度に影響を与える)

0.0005嚢胞性線維症
精管、先天性両側欠如を含む
cftr、arg117his
軽度の嚢胞性線維症(CF;219700)を持つ、おそらく血縁関係のない2家系において、Deanら(1990)は、CFTR遺伝子のエクソン4に482G-A転移を発見し、arg117からhis(R117H)への置換をもたらした。

Gervaisら(1993)は、先天性精管欠損症(CBAVD; 277180)患者23人中4人にR117H変異がみられたと報告している。3人の患者はR117HとdelF508の複合ヘテロ接合体(602421.0001)であり、4人目はR117Hと2322delGの複合ヘテロ接合体であった。 23人の患者のいずれも嚢胞性線維症の肺所見はなかった。delF508変異を持たない5人の患者は、精管の欠如に加えて片側腎不全を有していた。Bienvenuら(1993)は、先天性両側精管欠損による不妊症の30歳のフランス人男性におけるR117H突然変異のホモ接合体について初めて報告した。この被験者には呼吸器や膵臓の病変はなく、汗の電解質値は正常であった。彼の両親は血縁関係になく、家系内に他のCBAVDやCFの症例はなかった。

Kiesewetterら(1993)は、R117H変異の染色体背景が、生じる表現型に重大な影響を及ぼすという証拠を示した。イントロン8のスプライスアクセプター部位のポリピリミジントラクトの長さの違いにより、エクソン9のスプライシングの程度が異なる3つの長さのCFTR変異体が観察されている(Chuら(1991,1993))。イントロン8のスプライスアクセプター部位の前に、様々な長さのチミジン(T)トラクト(5、7、または9T)が認められた。5Tの変異体は、白人のCFTR対立遺伝子の5%に存在し、ほぼ独占的(95%)にエクソン9マイナスRNAを産生する。CFTR遺伝子発現におけるこのT-tract多型の影響は、R117H変異との関係によっても証明された: R117H(5T)は、膵臓充足の典型的なCF患者にみられ、R117H(7T)はCBAVDと関連している。R117H変異は、CF患者、先天性両側精管欠損の男性、無症状の女性で報告されている。さらに、集団スクリーニングにより、このCF変異の保因者が予想より19倍多く発見された。この状況は、ミスセンス変異に関連した神経細胞障害の重症度が、同じ対立遺伝子のミスセンス変異によって変化するゴーシェ病と比較された(Lathamら、1990)。

Whiteら(2001)は、R117H/delF508ヘテロ接合体であることが判明した29歳の健康な女性を報告している。この患者には、アトピー喘息と不妊症がみられたが、身長と体重は正常であり、CFの肺症状はみられなかった。ポリチミジントラクトの解析から、R117H変異は7Tトラクトとシスにあり、δ-F508変異は9Tトラクトとシスにあることが示された。著者らは、R117H変異が発見された患者ではポリT研究が重要であると結論し、そのような家族の遺伝カウンセリングに注意するよう勧告した。

Thauvin-Robinetら(2009)は、R117Hに関連する全体的な表現型を確立し、R117H+F508del遺伝子型の疾患浸透度を評価するためにフランスで行われた全国共同研究の結果を報告した。72人の新生児を含む184人のフランス人集団のR117H+F508delにおいて、疾患の表現型は主に軽度であった;1人の小児は典型的な嚢胞性線維症であり、3人の成人は重度の肺症状であった。CFの家族歴のない健康な成人5,245人において、F508delの対立遺伝子有病率は1.06%、R117H;T7は0.27%、R117H;T5は0.01%未満であった。フランス人集団におけるR117H;T7+F508delの理論的個体数は3650人と推定されたが、CFに関連した症状を持つ個体は112人(3.1%)しか知られていなかった。R117H;T7+F508delの古典的CFの浸透率は0.03%、成人期の重症CFの浸透率は0.06%と推定された。Thauvin-Robinetら(2009)は、R117Hをスクリーニングプ ログラムに使用されるCF変異パネルから除外することを 提案している。

0.0006嚢胞性線維症
CFTR, ARG347PRO
Deanら(1990)は、UT1446として同定された家系の嚢胞性線維症(CF; 219700)を持つ3人の兄弟姉妹において、CFTR遺伝子の1172位にCからGへの転座を発見し、その結果、プロリンがアスパラギン酸に置換された(R347P)。この変異はHhaI制限部位を破壊し、NcoI部位を作った。

.0007 嚢胞性線維症
CFTR、ARA455GLU
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者の2本の染色体において、Keremら(1990)は、CFTR遺伝子のエクソン9のヌクレオチド1496において、455位(A455E)でグルタミン酸からアラニンへの置換を引き起こすCからAへの変化を検出した。A455E変異が生じたエクソンは、エクソン10に修正されている;例えば、Vecchio-Paganら(2016)を参照のこと。

.0008 のう胞性線維症
CFTR、IVS10、G-A、-1
嚢胞性線維症の患者において、Keremら(1990)は、CFTR遺伝子のスプライス変異、すなわちイントロン10のアクセプター部位におけるヌクレオチド-1のGからAへの変化を同定した。フランスの嚢胞性線維症患者において、Guillermitら(1990)は同じ変異を検出した:イントロン10のヌクレオチド1717マイナス1の3-プライム末端の最後のヌクレオチドのGからAへの変化である。この変異はスプライス部位を破壊した。

.0009嚢胞性線維症
CFTR、Gly542TER
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Keremら(1990)は、CFTR遺伝子のエクソン11のヌクレオチド1756にGからTへの変化を見つけ、これがコドン542(G542X)の停止変異の原因であることを明らかにした。Cuppensら(1990)は、ベルギーの患者に同じ変異を発見した。G542X変異は、ベルギーのCF染色体の7.3%を占め、おそらく2番目に頻度の高い変異であろう。(ベルギーのCF患者のサンプルでは、全CF染色体の68.1%がδ-F508変異を有していた)。臨床症状は、ホモ接合体では軽度であったが、G542Xとgly458-to-val(602421.0028)の遺伝子複合体であったいとこでは重度であった。Lererら(1992)は、gly542-to-ter変異がアシュケナージCF変異の13%を占めると報告している。

Castaldoら(1997)は、G542X変異のホモ接合体であり、10歳で死亡した女児において、膵臓機能不全と中等度の肺CF発現を伴う重篤な肝病変を報告している。

Loiratら(1997)は、G542Xがおそらくフェニキア嚢胞性線維症突然変異であることを示唆した。彼らは、G542Xの頻度は出身地の町によって異なり、北東ヨーロッパ人では南西ヨーロッパ人よりも低いことを示した。彼らがG542X頻度の重回帰によって定義したG542X変異マッピングは、28カ国(53地点)をカバーし、50の検査施設からのデータに基づいている。G542X頻度のより高い値は、古代フェニキア人が居住していた場所に対応していた。

嚢胞性線維症の重症型の患者において、Savovら(1995)はG542X変異と二重変異(S912LとG1244V;602421.0135)を持つ対立遺伝子の複合ヘテロ接合を同定した。

0.0010嚢胞性線維症
CFTR、SER549ASN
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Cuttingら(1990)は、CFTR遺伝子のエクソン11のヌクレオチド1778において、549位のアスパラギンからセリンへの置換(S549N)を引き起こすGからAへの変化と、同じくエクソン11における早期終止変異(R553X; 602421.0014)の複合ヘテロ接合を検出した。

.0011 のう胞性線維症
CFTR、SER549ILE
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Keremら(1990)は、CFTR遺伝子のエクソン11のヌクレオチド1778において、アミノ酸549(S549I)におけるイソロイシンからセリンへの置換を原因とするGからTへの変化を検出した。

.0012 嚢胞性線維症
CFTR、SER549ARG
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Keremら(1990)は、CFTR遺伝子のエクソン11のヌクレオチド1779において、アミノ酸549(S549R)においてアルギニンがセリンに置換するT-G変化を検出した。Sangiuoloら(1991)は、重症の嚢胞性線維症のイタリア人患者において、同じser549からargへの置換を発見した;しかしながら、この置換はヌクレオチド1777におけるAからCへの変化によって引き起こされた。従って、この2つの変異はAGTからAGGへの変異とAGTからCGTへの変異である。ヌクレオチド1779におけるTからCへの変化もまたセリンをアルギニンに変化させる。

Romeyら(1999)は、エクソン11のT-to-G変換によるS549R変異と、最小CFTRプロモーターの最初の配列変化である-102位のT-to-A変換(602421.0122)を組み合わせた、CFTR遺伝子の新規複合対立遺伝子を報告した。Romeyら(1999)は、別の論文で、複合対立遺伝子を持つ6人のCF患者と、S549R変異のみを持つ16人のCF患者の主な臨床的特徴を比較している。診断時の年齢は、S549R/S549R群と比較して、複合対立遺伝子を持つ群で高く、現在の年齢も有意に高かった(P=0.0032)。肺コロニー形成患者の割合は両群で同程度であったが、発症時の年齢は複合対立遺伝子を持つ群で有意に高かった(P = 0.0022)。また、複合対立遺伝子を持つ患者は、発汗試験の塩化物値が有意に低く(P = 0.0028)、総合臨床スコアも良好であった(P = 0.004)。この研究に参加した22人の患者にはメコニウムイレウスはなかった。しかし、S549Rのホモ接合体の患者16人全員が膵臓不全であり、複合対立遺伝子を持つ患者の50%であった(P = 0.013)。さらに、複合型対立遺伝子のホモ接合体患者1人は34歳で軽症であった。これらの所見から、CFTR最小プロモーターにおける塩基配列の変化が、S549R変異に関連する重篤な臨床表現型を減弱させることが強く示唆された。

Romeyら(2000)は、-102T-Aの配列変化が、CFTR発現の調節を通じて、重篤なS549R変異の影響を減弱させる可能性があると仮定した。野生型および-102A変異型ヒトCFTR指向性ルシフェラーゼレポーター遺伝子を一過性にトランスフェクトした細胞株の解析により、陰陽1(YY1)コアエレメントを作成する-102A変異体を含む構築物は、CFTR発現を有意に増加させることが示された。電気泳動移動度シフトアッセイにより、-102部位は複数のDNA-タンパク質相互作用領域内に位置し、-102A対立遺伝子はYY1に関連する核タンパク質を特異的にリクルートすることが示された。

.0013 のう胞性線維症
cftr, gly551asp
Cuttingら(1990)は、2人の兄弟姉妹を含む7人の嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、CFTR遺伝子のエクソン11のヌクレオチド1784において、アミノ酸551(G551D)においてアスパラギン酸がグリシンに置換するG-A変化を検出した。これらの患者のうち6例では、もう一方の対立遺伝子にδ-F508変異(602421.0001)が存在した。これらの患者のうち3例(11〜13歳)は軽度の肺疾患を有し、肺機能検査の結果は正常であった。7番目の患者は軽度の肺疾患であったが、もう一方の対立遺伝子の変異は不明であった。

Curtisら(1991)は、ホモ接合体の兄弟2人と、G551Dとδ-I507(602421.0002)の複合ヘテロ接合体である無関係の成人1人について、この変異を報告している。3人とも臨床的には軽症であった。G551D変異は、CFTR遺伝子のコドン551にMboI認識部位を作る。Burgerら(1991)は、G551D変異のヘテロ接合が再発性鼻ポリープ症の原因因子であることを示唆した。Hamoshら(1992)は、CFTRの最初のヌクレオチド結合フォールド内にあるgly551-to-asp変異は、3番目に多いCF変異であり、CF染色体中の世界的頻度は3.1%であると述べている。頻度の高い地域は、ケルト系の人口が多い地域に相当する。G551Dがδ-F508と異なる表現型を与えるかどうかを調べるため、Hamoshら(1992)は、ヨーロッパと北米の9つのCFセンターから得られた、年齢と性別が一致したδ-F508ホモ接合体と比較して、2つの変異の79複合ヘテロ接合体を調査した。複合ヘテロ接合体では、メコ ニウムイレウスが少なかったが、それ以外では、 2群間に統計学的有意差は認められなかった。臨床転帰(メコ ニウムイレウス生存後の転帰)については、両群間に差 はなかった。

Delaneyら(1996)は、Cftr遺伝子のヒトG551D変異を持つマウスは嚢胞性線維症の病態を示すが、「ヌル」変異体と比べて致死的な腸閉塞のリスクが減少することを示した。G551D変異マウスは、CFTRに関連した塩化物輸送が大幅に減少しており、活性(野生型Cftrの約4%に相当)は「ヌル」マウスと活性が残存しているCftr挿入変異マウスの中間であった。著者らは、これらの動物の長期生存は嚢胞性線維症の研究に優れたモデルを提供するはずであると述べている。

G551D対立遺伝子はケルト系の集団に特徴的に関連し、アイルランドやブルターニュなどの地域で最も高い頻度で見られる。G551D対立遺伝子はヨーロッパの南部や東部に行くにつれて頻度が減少する。当初不可解だったのは、チェコ共和国でのこの突然変異の発生率が比較的高かったことである(3.8%)。しかし、Bobadillaら(2002)が指摘したように、過去の集団移動から説明がつく。

Accursoら(2010年)は、少なくとも1つのG551D対立遺伝子を持つ嚢胞性線維症の成人39人を対象に、CFTR増強剤であるVX-770を用いた2相臨床試験の結果を報告した。第2相試験では、被験者はVX-770を12時間毎に150mg、28日間投与された。鼻電位差のベースラインからの変化は全例で-3.5mV(範囲:-8.3~0.5、被験者内比較でP = 0.02、プラセボとの比較でP = 0.13)であり、汗の塩化物濃度の変化の中央値は-59.5mmol/リットル(範囲:-66.0~-19.0、被験者内比較でP = 0.008、プラセボとの比較でP = 0.02)であった。強制呼気1秒量予測値のベースラインからの変化率中央値は8.7%(範囲:2.3~31.3、被験者内P = 0.008、プラセボ比P = 0.56)であった。VX-770の忍容性は良好であった。治験を中止した被験者は一人もいなかった。すべての重篤な有害事象はVX-770を中止することなく消失した。

Ramseyら(2011)は、嚢胞性線維症で少なくとも1つのG551D-CFTR変異を有する12歳以上の被験者を対象に、アイバカフトール(VX-770)を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。被験者は、本剤150mgを12時間ごとに投与する群(84例、うち83例は少なくとも1回投与)とプラセボを48週間投与する群(83例、うち78例は少なくとも1回投与)に無作為に割り付けられた。主要エンドポイントは、強制呼気1秒量(FEV1)のベースラインから24週目までの変化率の推定平均値であった。予測FEV1値のベースラインから24週目までの変化は、プラセボ群よりアイバカフトール群で10.6ポイント大きかった(pは0.001未満)。肺機能に対する効果は2週までに認められ、有意な治療効果は48週まで維持された。ivacaftorを投与された被験者は、プラセボを投与された患者に比べ、48週目まで肺増悪の可能性が55%低かった(pは0.001未満)。さらに、48週目まで、嚢胞性線維症質問票改訂版の呼吸器症状領域において、ivacaftor投与群はプラセボ投与群より8.6点高かった(pは0.001未満)。48週までに、アイバカフトール投与群はプラセボ投与群より平均2.7kg体重が増加した(pは0.001未満)。ベースラインから48週目までの汗の塩化物濃度の変化は、プラセボ投与群と比較して、アイバカフトール投与群で-48.1mmol/Lであった(pは0.001未満)。有害事象の発生率は治療群と対照群で同程度であり、重篤な有害事象の割合はプラセボ群よりアイバカフトール群の方が低かった(24%対42%)。

2012年1月31日、FDAはKalydeco(旧VX-770(ivacaftor))をG551D変異を有する嚢胞性線維症患者への適応で承認した。

.0014 嚢胞性線維症
cftr, arg553ter
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Cuttingら(1990)は、CFTR遺伝子のエクソン11のヌクレオチド1789において、アミノ酸553(R553X)における停止変異の原因となるCからTへの変化を検出した。

Balら(1991)は、エクソン11のarg553からterへの変異をホモ接合体で持つ患者を報告した。この患者は中等度の重症であった。Hamoshら(1991)は、R553XとW1316X(602421.0029)の2つのナンセンス変異の複合ヘテロ接合体のCF患者を研究した。この患者は、気管支および鼻の上皮細胞においてCFTR mRNAが検出されず、重度の膵臓疾患を伴っていたが、肺疾患は予想外に軽症であった。R553X変異は、CFコンソーシアム(Hamoshら、1991)によると、世界で4番目に頻度が高く、1.5%である。この患者は22歳のアフリカ系アメリカ人女性で、Cuttingら(1990)が報告した軽度の肺疾患を有する2人の患者のうちの1人であった。Cheadleら(1992)は、R553X突然変異のホモ接合体であるにもかかわらず、軽度の肺疾患を有する小児を報告した。彼らは、気道細胞におけるCFTRタンパク質の欠乏は、変化したタンパク質の存在よりもダメージが少ない可能性を提起した。

Chenら(2005)は、R553X変異ホモ接合体の台湾人CF患者を報告した。同患者の臨床経過は重篤で、早期の慢 性下痢、発育不全、頻回の呼吸器感染症がみられた。両親は血縁関係はなく、ともにヘテロ接合体であった。両親の家族はいずれも台湾出身で、少なくとも3世代にわたって台湾に住んでいた。Chenら(2005年)は、嚢胞性線維症はアジア人ではまれであり、R553Xのホモ接合体はこれまで白人患者でのみ報告されていたことを指摘した。

Aznarezら(2007)は、R553Xとδ-F508(602421.0001)変異の複合ヘテロ接合体であるCF患者5人の転写産物解析を行った。患者のリンパ芽球様細胞のRT-PCRでは、エクソン11のスキップに対応するCFTRアイソフォームの異常スプライシングレベルが変化することが示された。スプライスレポーター構築物を用いることにより、R553X置換が推定エキソニックスプライシングサイレンサー(ESS)を形成し、近位5プライムスプライス部位の選択を妨げることによりエキソンスキッピングをもたらす可能性が示された。エクソン11のスキップは、ナンセンスに関連したスプライシング機構の変化によるものではなかった。Aznarezら(2007)は、この変異がエクソン11をスキップさせるため、この変異を持つCF患者にはアミノグリコシド治療は有効でないと結論づけている。

.0015 嚢胞性線維症
CFTR、Ala559thr
嚢胞性線維症(CF;219700)患者において、Cuttingら(1990)は、CFTR遺伝子のエクソン11のヌクレオチド1807において、アミノ酸559(A559T)においてアラニンへのスレオニンの置換を引き起こすGからAへの変化を検出した。

.0016 嚢胞性線維症
CFTR, ARG560THR
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Keremら(1990)は、CFTR遺伝子のエクソン11のヌクレオチド1811において、アミノ酸560(R560T)におけるスレオニンのアルギニンへの置換の原因となるGからCへの変化を発見した。

.0017 嚢胞性線維症
CFTR、TYR563ASN
嚢胞性線維症(CF;219700)患者において、Keremら(1990)は、CFTR遺伝子のエクソン12のヌクレオチド1819において、アミノ酸563(Y563N)におけるチロシンへのアスパラギンの置換に関与するTからAへの変化を発見した。

.0018 嚢胞性線維症
CFTR、プロ574ヒス
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Keremら(1990)は、CFTR遺伝子のエクソン12のヌクレオチド1853において、アミノ酸574(P574H)におけるヒスチジンのプロリンへの置換を原因とするCからAへの変化を検出した。

.0019 嚢胞性線維症
CFTR、2-bp ins、2566at
嚢胞性線維症(CF; 219700)の患者において、Whiteら(1990)はCFTR遺伝子のエクソン13のヌクレオチド2566(2566insAT)の後に2ヌクレオチドATの挿入を検出した。

0.0020嚢胞性線維症
CFTR、1-bp欠失、3659c
嚢胞性線維症(CF; 219700)の患者において、Keremら(1990)は、CFTR遺伝子のエクソン19のヌクレオチド3659のCの欠失を検出し、フレームシフトをもたらした。

.0021 嚢胞性線維症
CFTR、SER1255TER
嚢胞性線維症(CF; 219700)の11歳の黒人の少年において、Cuttingら(1990)は、CFTR遺伝子のエクソン20のヌクレオチド3896において、アミノ酸1255(S1255X)における停止変異の原因となるCからAへの変化を検出した。この少年は父親からこの突然変異を受け継いだ。母親から受け継いだ染色体には、gly542-to-ter(602421.0009)という別のナンセンス変異があった。この患者は重篤な膵臓疾患を有していたが、肺病変は軽度であった。

.0022嚢胞性線維症
CFTR、TRP1282TER
フランスの嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Vidaudら(1990)は、CFTR遺伝子の終止コドンによるトリプトファン-1282の置換を同定した。もう一方の染色体にはδ-F508変異がみられた(602421.0001)。別のフランス人嚢胞性線維症患者において、Vidaudら(1990)は、一方の染色体に正確に同じ変異を認めたが、もう一方の染色体の変異は不明であった。ヌクレオチド3978のGからAへの置換がtrp1282からterへの変化の原因であった。

Hamoshら(1991)は、エクソン20に位置するW1282X変異が、CF染色体の50%に存在するアシュケナージ・ユダヤ人集団で最も一般的なCF変異であるという証拠を挙げている。イスラエルでは、Shoshaniら(1992)が、97のCF家 族の63の染色体にW1282X変異を発見した。W1282X変異のホモ接合体16 例、δ-F508変異とW1282X変異のヘテロ接合体22 例は、同様に重症であり、膵臓機能不全、メコニーイ レウスの高発生率(それぞれ37%と27%)、診断時年齢の 早さ、栄養状態の悪さ、肺機能の変動がみられた。ここでも、W1282X変異はイスラエルのアシュケナージ・ユダヤ人患者において最も一般的な型であった。ユダヤ系アシュケナージ患者集団では、CF染色体の60%がW1282Xナンセンス変異を有している。この変異のホモ接合体患者は、肺合併症が多様で、重症である。Shoshaniら(1994)の研究によると、W1282X変異ホモ接合体患者のCFTR mRNAレベルは、変異によって有意に低下することはない。この突然変異のヘテロ接合体患者では、W1282X対立遺伝子とδ-F508または正常対立遺伝子のmRNAの相対レベルは、各患者で同程度であった。これらの結果から、W1282X変異を持つ患者の重篤な臨床表現型は、mRNAの重篤な欠損によるものではないことが示された。肺疾患の重症度、進行度、および変動性は、まだ知られていない他の因子の影響を受けているようである。

Kulczyckiら(2003)は、最高齢の嚢胞性線維症患者について述べている。この患者は、71歳の白人男性で、再発性の鼻ポリープ症、汗のナトリウムと塩化物の上昇、姉のCFの既往のため、27歳の時に診断された。泌尿器科的検査により、先天性両側精管欠如(277180)が示された。60歳時、遺伝子検査により、CFTR遺伝子に重度のW1282X変異と軽度のala445-to-glu(602421.0130)変異の複合ヘテロ接合が認められた。(Kulczyckiら(2003)の論文では、W1282X変異はH1282Xと誤って引用されている)。

.0023 CFTR多型
CFTR、MET470VAL
Keremら(1990)はヌクレオチド1540において、470位がそれぞれメチオニンまたはバリンになる「正常な」AまたはG変異を発見した。

.0024 cftr多型
cftr, ile506val
CFTR遺伝子のこの変異は、Kobayashiら(1990)により、δ-F508(602421.0001)との複合ヘテロ接合体で発見された。臨床および上皮生理学的研究では正常な結果が得られ、I506V変異は良性であることが示された。

.0025 CFTR多型
cftr, phe508cys
この変異はKobayashiら(1990)によってδ-F508(602421.0001)との複合ヘテロ接合体で発見された。臨床的および上皮生理学的研究では正常な結果が得られ、F508C変異が良性であることを示している。

.0026嚢胞性線維症
CFTR、TRP846TER
フランスの嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Vidaudら(1990)は、一方の染色体上のトリプトファン-846が停止コドンによって置換されていることを発見した。

.0027嚢胞性線維症
CFTR, TYR913CYS
フランスの嚢胞性線維症(CF;219700)患者において、Vidaudら(1990)はチロシン913のシステインによる置換を同定した。もう一方の染色体はδ-F508変異を有していた。2870位のAからGへの置換がtyr913からcysへの変化の原因であった。

.0028嚢胞性線維症
cftr, gly458val
嚢胞性線維症(CF; 219700)の患者において、Cuppensら(1990)はG542X突然変異(602421.0009)とグリシン-458のバリンへの変化(G458V)の複合ヘテロ接合について述べた。患者は呼吸不全と右心不全のため12歳で死亡した。

.0029 嚢胞性線維症
CFTR、TRP1316TER
21歳の黒人女性嚢胞性線維症(CF; 219700)で、実質的な膵臓病変を有するが、肺病変は軽度であった。Cuttingら(1990)は、エクソン21のヌクレオチド4079にAからGへの置換を発見し、コドン1316のトリプトファンが終止シグナルによって置換されていることを明らかにした。この変異は父親から受け継がれたようで、母親からはarg553からterへの変異が受け継がれた(602421.0014)。

.0030嚢胞性線維症
CFTR、2-bp ins、1154TC
37歳の嚢胞性線維症(CF; 219700)の女性で、汗の塩化物濃度が高く、幼児期からの膵臓機能不全、軽度の肺疾患を有する患者において、Iannuzziら(1991)は、CFTR遺伝子の1154位にTとCの2塩基の挿入を同定し、タンパク質の読み枠のシフトと369残基へのUAA(黄土色)終止コドンの導入を予測した。この患者はもう一方の対立遺伝子にδ-F508(602421.0001)を持っていた。Alperら(2003)は、ATP結合ドメイン、調節ドメイン、第2膜貫通ドメインが欠損しており、非機能性であると考えられると述べている。

Alperら(2003)は、80人のCFTR患者をスクリーニングした結果、2つの1154insTC変異を見つけ、いずれも白人で、CF染色体の1.25%を占めていた。また、白人男性において、膵臓機能不全と糞便性イレウスを伴うCFにおいて、delF508(602421.0001)との複合ヘテロ接合が報告されている。

.0031 のう胞性線維症
CFTR、1-bp欠失、1213t
嚢胞性線維症(CF; 219700)の2人の兄弟において、Iannuzziら(1991)は1213位のチミンの欠失を同定し、これはタンパク質の読み枠をシフトさせ、368残基にUAA(ochre)終止コドンを導入すると予測した。患者は軽度の肺機能障害を有していた。

.0032嚢胞性線維症
CFTR, ASN1303LYS
Osborneら(1991)は、嚢胞性線維症(CF; 219700)患者(2人の兄弟を含む)の52本の染色体のうち4本において、CFTR遺伝子のヌクレオチド4041のCからGへの変化により、アミノ酸位置1303(N1303K)がアスパラギンからリジンに変化していることを同定した。この変異はヘテロ接合体でのみ認められ、臨床的表現型とこの遺伝子の存在との間に相関は認められなかった。Osborneら(1992)は、欧米の研究室を集め、検査した約15,000本のCF染色体の中から216例のN1303Kを同定し、その頻度は1.5%であった。この頻度は、北欧よりも南欧で高く、英国のアジア人、アメリカの黒人、オーストラリア人にはみられなかった。10人の患者はホモ接合体であったが、残りの106人は、既知のCF変異12個のうち1個をもう一方の対立遺伝子に有していた。Osborneら(1992)は、N1303Kは膵臓に関して「重度」の変異であると結論づけたが、ホモ接合体、ヘテロ接合体のいずれにおいても、この変異と肺疾患の重症度との間に相関関係は認められなかった。

.0033 嚢胞性線維症
cftr, arg1162ter
南ヨーロッパの症例における嚢胞性線維症(CF; 219700)の突然変異の研究において、Gaspariniら(1991)は、ヌクレオチド3616のCからTへの置換によるエクソン19のナンセンス突然変異を発見した。1162位のアルギニンをコードする正常コドンCGAが停止コドンUGA(R1162X)に変化していた。デルタ-F508染色体以外の16本中2本で検出された。この突然変異のホモ接合体である9人の患者において、Gaspariniら(1992)は軽度の肺疾患を発見した。彼らは、CFTR蛋白の合成が阻害されれば、重篤な臨床経過をたどるだろうと予想していた。しかし、肺の病変が軽度から中等度であったことから(膵機能不全は全例にみられたが)、調節領域、第一ATP結合ドメイン、両膜貫通ドメインを含むこの切断型CFTR蛋白質は、肺組織で部分的に機能している可能性が示唆された。

0034嚢胞性線維症
cftr, arg334trp
南ヨーロッパの症例における嚢胞性線維症(CF; 219700)の突然変異の研究の過程で、Gaspariniら(1991)はエクソン7のヌクレオチド1132にCからTへの置換を発見した。この点変異は、タンパク質の推定第一膜貫通ドメインの334位のアルギニンコドンをトリプトファンに変化させた(R334W)。この患者はR334XとN1303Kの複合ヘテロ接合体であった(602421.0032)。

Antinoloら(1997)は、R334W変異による嚢胞性線維症患者12人の表現型を、ホモ接合のdelF508患者の表現型と比較した。現在の年齢と診断時の年齢はR334W変異群で有意に高かった。R334W変異を有する患者では、緑膿菌のコロニー形成率が低いことがわかったが、その差は統計学的に有意ではなかった。しかし、R334W変異を有する患者群では、緑膿菌コロニー形成の発症年齢が統計学的に有意に高いことが判明した。膵臓機能不全はR334Wの患者ではより低い割合(33%)で認められた。身長に対する理想体重の割合で表した体重は、R334W変異を有する患者で有意に高かった。

.0035 のう胞性線維症
CFTR、2-bp欠失、1677TA
Ivaschenkoら(1991)は、嚢胞性線維症(CF; 219700)の3人の子供が生後数ヶ月以内に死亡した兄弟の両親(2人は肺炎、1人は推定メコニウムイレウス)において、同じ変異、すなわち1677位の2ヌクレオチド(TA)の欠失を発見した。この欠失の結果、タンパク質の読み取り枠がシフトし、その結果得られた転写産物のアミノ酸位置515に終止コドン(TAG)が導入された。この家族はグルジア西部のMegralsと呼ばれるソ連の小さな民族グループの出身であった。

0036嚢胞性線維症
CFTR, ARG851TER
嚢胞性線維症(CF; 219700)の複合ヘテロ接合体において、Whiteら(1991)は、コドン851(CGA;ARG)を停止コドン(TGA)に変換するde novo突然変異を発見した。母親にはCFTR変異がなく、父親は一般的なδ-F508変異のヘテロ接合体であった。

.0037 嚢胞性線維症
CFTR、Gly551SER
Strongら(1991)は、2番目のいとこの両親の子供である軽度の嚢胞性線維症(CF; 219700)の2人の姉妹において、アミノ酸551の高度に保存された位置に、セリン残基がグリシン残基に置換される結果、塩基対1783にGからAへの置換を見いだした。患者は50歳の女性で、慢性の咳嗽があった。彼女は頻繁に肺感染を起こしていた。汗の電解質濃度は境界域の正常値であった。患者は2回の正常妊娠・出産を経験し、トラック検査員として働きながら子供を育てた。患者には48歳で呼吸不全で死亡した姉がいた。彼女は4人の健康な子供を問題なく出産し、吸収不良の所見もなく、23歳の時に喀血するまでは健康であった。その時、胸部レントゲン検査で趾内反と気管支拡張が認められた。いくつかの発汗検査は正常であった。

.0038 嚢胞性線維症
CFTR、GLY85GLU
ChalkleyとHarris(1991)は、嚢胞性線維症(CF;219700)を有するイラン出身の11歳の男児において、CFTR遺伝子のエクソン3のヌクレオチド386において、グルタミン酸がグリシン85に置換するG-A変異のホモ接合を認めた。患者が鼻ポリープを呈したことから、CFと診断された。汗のナトリウム値は90mmol/Lで、肺疾患は軽度であり、膵臓は十分であった。G85E変異は、Zielenskiら(1991)により、複合ヘテロ接合体であったフランス系カナダ人患者において初めて定義された。

.0039嚢胞性線維症
CFTR, ARG1158TER
Ronchettoら(1992)は、遺伝的複合体であることが知られているイタリアの嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、CFTR遺伝子のヌクレオチド3604にCからTへの転移を見つけ、1158位のアルギニン残基が停止コドン(R1158X)に変化した。この患者は、もう一方の染色体上に未知の変異を有しており、膵臓は十分であった。

.0040嚢胞性線維症
CFTR、IVS19、A-G、+4
イタリアの嚢胞性線維症(CF; 219700)患者で、膵臓機能不全であったが肺疾患は軽度であった。Ronchettoら(1992)は、CFTR遺伝子のイントロン19の5-プライム末端にAからGへの転移を発見し、ドナー部位のコンセンサス配列をGTGAGAからGTGGGA(3849+4A-G)に変化させた。

.0041 嚢胞性線維症
CFTR、22bpの欠損
嚢胞性線維症(CF; 219700)を引き起こす更なる変異の探索の一環として、Deanら(1992)は、エクソン6Aのフランキングプライマーを用いて、少なくとも1つの染色体にdelta-F508変異を持たない150人以上のCF患者のDNAを増幅した。その結果、1人の患者では、852番から始まりエクソン末端の2bp手前で止まる22bpの欠失が認められた。この欠失はタンパク質のリーディングフレームを変化させ、アミノ酸253にフレーム内終止コドンTGAを導入させると予測された。Deanら(1992)は、CFTR遺伝子のde novo変異は1例のみで、大きな欠失の症例は報告されていないと述べている。

.0042 嚢胞性線維症
CFTR、1-bp欠失、556a
膵不全を伴う嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Zielenskiら(1991)は、ヌクレオチド556の欠失、Aによるフレームシフト、新しいBglI部位を作るCFTRのエクソン4変異を同定した。

.0043 嚢胞性線維症
CFTR、1bp欠失、557t
比較的症状の軽い嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Grahamら(1992)は、CFTR遺伝子のエクソン4の塩基番号557から561までのTトラクトにおいて、Tの1塩基の欠失を同定した。556A欠失(602421.0042)と同様に、この変異は新しいBglI部位を作り出した。

.0044 嚢胞性線維症
CFTR、84bp欠失、nt1949
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Granellら(1992)は、エクソン13の5プライム末端500bpのDNA増幅と直接配列決定により、CFTR遺伝子のエクソン13に84bpの欠失を同定した。この欠失は母方の対立遺伝子にあり、患者の父方の対立遺伝子はdelta-F508欠失(602421.0001)を有していた。欠失は1949-1952位の4-Aクラスターから2032-2035位の別の4-Aクラスターに及んでいた。この変異により、CFTRタンパク質のRドメインの28アミノ酸残基が欠損した。このインフレーム変異は、その時点で同定された最大の変異であり、ヌクレオチド1949の後に始まったため、1949del84と呼ばれた。Nunesら(1992)は、340人のスペイン人CF患者のうち、1949del84とdelF508変異の複合ヘテロ接合体である患者を3人、1949del84と未知の変異の複合ヘテロ接合体である患者を1人発見した。これらの患者の重症度はdelF508ホモ接合体の患者と同様であった。

.0045嚢胞性線維症
CFTR、1-bp ins、2869g
嚢胞性線維症(CF; 219700)の5人の患者において、Nunesら(1992)はエクソン15のヌクレオチド2869の後にグアニン(G)が挿入されることによるフレームシフト突然変異を同定した。患者1人はこの突然変異のホモ接合体であり、他の4人は複合ヘテロ接合体であった。この変異のホモ接合体を直接塩基配列決定したところ、変異により挿入部位にTGA停止コドンが生じ、続いてエクソン16の先頭に別の停止シグナルが生じたことが示された。この変異はMboIエンドヌクレアーゼの新しい制限部位を作った。Nunesら(1992)は、この突然変異がスペイン集団の非デルF508染色体191本中6本に、イタリアの非デルF508染色体86本中1本にも存在しないことを証明した。変異を持つ染色体はすべて同じハプロタイプであった。ホモ接合体の患者は中等度の重篤な臨床経過を示した。(この変異は2869insGとも呼ばれる)。

.0046 嚢胞性線維症
CFTR、VAL520PHE
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Jonesら(1992)は化学的切断ミスマッチ法を用いて、GからTへの転座に起因するV520F変異を証明した。

.0047嚢胞性線維症
CFTR、Cys524TER
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者のDNAの研究に化学的切断ミスマッチ法を用い、Jonesら(1992)はCからAへのトランスバージョンに起因するナンセンスC524X突然変異を発見した。

.0048嚢胞性線維症
CFTR、GLN1291HIS
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Jonesら(1992)は、化学的切断ミスマッチ法を用いて、エクソン20の最後のヌクレオチドにおけるGからCへの転座に起因するQ1291H変異を証明した。RNAベースのPCRを用いたさらなる研究により、Q1291Hはスプライス変異でもあることが示された。Q1291H対立遺伝子によって、正しくスプライスされたmRNAと異常スプライスされたmRNAの両方が産生された。正しくスプライスされない産物は、隣接するイントロンに29塩基ある近傍の暗号スプライス部位を使用した結果であった。

.0049 嚢胞性線維症
cftr, phe311leu
ブルターニュのケルト人集団における嚢胞性線維症(CF; 219700)の突然変異の系統的研究において、DGGEを用いてFerecら(1992)は、CFTR遺伝子のヌクレオチド1065において、コドン311をフェニルアラニンからロイシンに変更するC-to-G突然変異を同定した。この変異は、膵臓不全に分類された複合ヘテロ接合体の子供にみられ、もう一方の対立遺伝子はgly551-to-asp(602421.0013)であった。

.0050嚢胞性線維症
CFTR、2-bp欠失、NT1221
ブルターニュのケルト人集団における365本の嚢胞性線維症(CF;219700)染色体の系統的研究において、Ferecら(1992)はエクソン7にフレームシフト変異を検出した。この患者は重度の膵臓機能不全で、1221位の2塩基の欠失の複合ヘテロ接合体であった。もう一方の対立遺伝子は1078位のTの欠失であった。

0051嚢胞性線維症
CFTR、SER492PHE
ブルターニュのケルト人集団における365本の嚢胞性線維症(CF;219700)染色体の系統的研究において、Ferecら(1992)は、膵臓十分に分類された小児において、ヌクレオチド1607のCからTへの変化による、ser492からpheへの変異を同定した。

.0052 嚢胞性線維症
CFTR, ARG560LYS
ブルターニュのケルト人集団の嚢胞性線維症(CF; 219700)染色体365本の系統的研究において、Ferecら(1992)は、ヌクレオチド1811のGからAへの転移に起因する、エクソン11の3-プライム末端のarg560からlysへの変異を同定した。ヒトβグロビン遺伝子のエクソン1における同様の変異はRNAスプライシングを低下させる(Vidaudら、1989;ヘモグロビンKairouan; HBB, ARG30THR; 141900.0144を参照)。患者は膵臓不全であった。

.0053 嚢胞性線維症
CFTR, GLU827TER
ブルターニュのケルト系住民の膵不全性嚢胞性線維症(CF; 219700)の小児において、Ferecら(1992)は、エクソン13の2611位でグルタミン酸-827を停止コドンに変化させるG-T変化を同定した。

.0054 のう胞性線維症
cftr, arg1066his
ブルターニュのケルト系住民の膵不全性嚢胞性線維症(CF;219700)患者において、Ferecら(1992)はヌクレオチド3329のGからAへの転移に起因するarg1066からhisへの変異を発見した。このCpGジヌクレオチドは突然変異のホットスポットとして知られている。Ferecら(1992)は、arg1066からcysにつながるC3328からTへの別の突然変異が発見されたことを示す未発表の結果を引用している(602421.0058)。arg1066からhisへの変異を持つ子供は複合ヘテロ接合体であり、もう一方の対立遺伝子はヌクレオチド1078でTの欠失を有していた。

.0055 のう胞性線維症
CFTR、Ala1067THR
ブルターニュのケルト人集団の嚢胞性線維症(CF; 219700)の膵不全児において、Ferecら(1992)はala1067からthrへの置換をもたらす3331位のGからAへの転移を発見した。この置換は非極性残基を極性残基に置き換えたものである。もう1本の染色体はδ-F508変異を有していた(602421.0001)。

.0056 のう胞性線維症
CFTR、IVS20、G-A、+1
ブルターニュのケルト人集団の嚢胞性線維症(CF; 219700)の膵不全患者において、Ferecら(1992)はイントロン20のスプライス供与部位の最初のヌクレオチドにG-A変異を同定した。

.0057嚢胞性線維症
CFTR、5bp重複、NT3320
ブルターニュのケルト人の嚢胞性線維症(CF; 219700)の膵不全患者において、Ferecら(1992)はヌクレオチド3320の後に5ヌクレオチドの重複(CTATG)を見つけ、フレームシフトを生じた。

.0058嚢胞性線維症
cftr, arg1066cys
Ferecら(1992)はP. Fanenの未発表の結果を引用している:ヌクレオチド3328のCからTへの転移はarg1066からcysへの置換をもたらした。このCpGジヌクレオチドは突然変異のホットスポットである;602421.0054を参照。

.0059嚢胞性線維症
CFTR、1bp欠失、1078t
602421.0050を参照。Claustresら(1992)は、南フランスの嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、エクソン7にこの変異を発見した。Romeyら(1993)は、非変性ポリアクリルアミドゲル上で1塩基対の欠失を検出できる改良された方法を記載し、この変異の同定に適用できることを示した。

.0060 精管、先天性両側欠如
CFTR、ASP1270ASN
Anguianoら(1992)は、臨床的に先天性両側性精管欠損症(CBAVD; 277180)と診断された、24歳から43歳の非血縁で非選択の白人無精子症男性25人を対象とした研究において、phe508-to-del変異(602421.0001)のヘテロ接合性と、もう一方の染色体上に別の稀な変異を持つ2人を発見した。イギリス人とイタリア人の血を引く1人の患者では、2番目の突然変異はアミノ酸1270(D1270N)においてアスパラギンからアスパラギン酸への置換をもたらすGからAへの転移であった。患者は胸部X線は正常で、汗の電解質は正常範囲内であった。肺疾患や消化器疾患の徴候はなく、明らかな吸収不良の徴候もなかった。したがって、この患者は主に性器型の嚢胞性線維症であった。この変異とG576A変異(602421.0061)はともに、CFTR蛋白のアデノシン三リン酸結合ドメイン内に生じる。これらのドメインは塩化物輸送の制御に関与していると考えられている。発達中の狼管の細胞は、肺、膵臓、汗管とは異なる、CFTRと機能的に関連する制御経路を持つ可能性がある。

.0061 精管、先天性両側欠如
CFTR、Gly576ARA
Anguianoら(1992)は、先天性両側性精管欠損症(277180)の男性において、phe508-to-del(602421.0001)変異と、もう一つのまれな変異である、エクソン12のコドン576におけるGGA-to-GCA転座の複合ヘテロ接合を発見した。

.0062 のう胞性線維症
CFTR、3849+10kb、C-T
Abeliovichら(1992)は、イスラエルの嚢胞性線維症(CF; 219700)のアシュケナージ系ユダヤ人患者94人のうち、5つの変異が変異型CFTR対立遺伝子の97%を占めていることを発見した。そのうちの4つは、delF508(602421.0001)、G542X(602421.0009)、W1282X(602421.0022)、N1303K(602421.0032)であった。5番目は対立遺伝子の4%を占め、Highsmith (1991)によって発見された珍しい突然変異であった。これは3849+10kbC-Tと呼ばれ、HphIによるPCR産物の切断によって検出された。Highsmithら(1991)は、3849+10kbC-T変異を、CFの症状が軽度で、汗の塩化物値が正常であった19歳のパキスタン人女性で検出した。Highsmithら(1991)は、この変異を持つ患者の病気の経過が軽いことを説明するために、CからTへの塩基置換が代替スプライス部位を作り、その結果、CFTRコード領域に84塩基対が挿入されたという仮説を立てた。この変化により、正常なCFTR機能を持つ蛋白質と非機能蛋白質が合成される可能性がある。あるいは、この変異により、部分的にしか機能しないタンパク質が産生され、より軽度の疾患を引き起こす可能性もある。イスラエルでは、Augartenら(1993)が、 CFとこの変異を持つ患者15人(すべてアシュ ケナージ系ユダヤ人)を調査している。彼らの臨床的特徴を、重症に関連することが知られている変異を持つCF患者と比較した。3849+10kbC-T変異を持つ患者は、年齢が高く、より高齢でCFと診断され、栄養状態も良好であった。15例中5例では汗の塩化物値が正常であり、このうち4例と他の6例では膵機能が正常であった。しかし、年齢調整した肺機能は、これらの患者と重症化を引き起こすことが知られている変異を有する患者との間に差はなかった。3849+10kbC-T変異を持つ患者のうち、メコニウムイレウスを起こした患者はおらず、肝疾患や糖尿病を持つ患者はいなかった。

.0063嚢胞性線維症
CFTR, ARG1283MET
嚢胞性線維症(CF; 219700)の3人の膵不全患者において、Cheadleら(1992)は、trp1282-to-ter突然変異(602421.0022)と同様に、MnlII制限部位を消失させる新規CFTR突然変異を同定した。この新しい変異は3980位のGからTへの転位であり、その結果残基1283(R1283M)のアルギニンがメチオニンに置換されていることがわかった。

.0064嚢胞性線維症
CFTR、IVS12、G-A、+1
嚢胞性線維症(CF; 219700)の2人の患者において、Strongら(1992)は、化学的ミスマッチ切断とそれに続くDNA配列決定を用いて、CFTR遺伝子のイントロン12の5プライム末端におけるスプライス変異を同定した。ドナースプライス部位の1位でGからAへの転移が起こり、エクソン12がスキップされた。この変異は、CFの典型的な肺と消化管の変化を有する39歳の白人男性と9歳の女性において、delF508変異(602421.0001)との複合ヘテロ接合状態で発見された。両者とも膵臓機能不全であった。男性には14歳時に門脈圧亢進症で脾腎シャントを必要とした肝疾患の既往があった。

.0065嚢胞性線維症
CFTR、GLN359LYSおよびTHR360LYS
Shoshaniら(1993)は、ソビエトグルジア出身のユダヤ人であるCF患者の同定された嚢胞性線維症(CF; 219700)染色体の88%に、隣接するコドンに二重の変異があることを発見した。1つの変異は、ヌクレオチド位置1207のC-A変換で、グルタミンコドンがリジンに変化していた(Q359K)。

.0066 のう胞性線維症
CFTR、IVS6、12bp欠損
Audrezetら(1993)は、膵不全性嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、δ-F508変異と、彼らが876–14 del 12 NTと命名した新規変異の複合ヘテロ接合を発見した。この変異は4bpの繰り返し(GATT)を含んでいるので、欠失が生じた対立遺伝子によっては8ヌクレオチドを含む可能性がある。

.0067 嚢胞性線維症
CFTR, ARG347LEU
Audrezetら(1993)は、系統的な新生児スクリーニングで発見された嚢胞性線維症(CF; 219700)の2歳の女児で、その時点まで無症状で膵臓は十分であったが、bp1172の347残基でアルギニン(塩基性側鎖を持つアミノ酸)がロイシン(非極性側鎖を持つアミノ酸)に変化するG-T転移を発見した。Audrezetら(1993)は、ヌクレオチド1172に関与する他の2つの変異が観察されており、1つはR347P(602421.0006)、もう1つはR347H(602421.0078)であると指摘している。どちらも膵充足と関連している。

.0068 嚢胞性線維症
CFTR、ARA349VAL
Audrezetら(1993)は、ヘテロ接合体女性の正常な夫をスクリーニングする過程で、ヌクレオチド1178において、残基349のアラニンに対するバリンの置換を予測するC-T転移を発見した。これらのアミノ酸は両方とも非極性側鎖を持つので、この変異がCF対立遺伝子をもたらすことは明らかではなかった。しかし、このヌクレオチド変化はスクリーニングした300以上の正常染色体では観察されず、349位のアラニンはヒト、ゼノパス、ウシのCFTR遺伝子に保存されている。

.0069 嚢胞性線維症
CFTR、Ala534glu
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者48人と義務的保因者12人のスクリーニングにおいて、Audrezetら(1993)は、ヌクレオチド1733において、グルタミン酸のアラニン-534(A534E)への置換につながるCからTへの転移を観察した。この変化は酸性残基を非極性残基に置き換えるものであり、劇的な変化である。ヘテロ接合体で観察され、この変異はおそらく機能的に重要である。

.0070 のう胞性線維症
CFTR、LYS716TER
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者48人と義務的保因者12人のスクリーニングにおいて、Audrezetら(1993)はヌクレオチド2278においてAからTへの転座を発見し、その結果リジン-716において停止コドンが生じた。この変異は死亡した子供のヘテロ接合体の父親から検出された。

.0071 のう胞性線維症
CFTR、IVS13、G-A、+1
δ-F508変異(602421.0001)を有し、CFの典型的な症状、すなわち膵臓機能不全と肺疾患を示した嚢胞性線維症(CF; 219700)の2歳の子供において、Audrezetら(1993)は、もう一方の染色体上で、イントロン13の5-プライムスプライス部位の最初のヌクレオチドにGからAへの転移を検出した。Audrezetら(1993)はこの変異を2622 +1 G-to-Aと呼んだ。

.0072 嚢胞性線維症
CFTR、GLN1238TER
Audrezetら(1993)は、典型的な膵欠損型CF(CF; 219700)患者において、ヌクレオチド3844において、グルタミン(CAG)の代わりに停止コドン(TAG)を作るC-T転移を発見した。もう1本の染色体はG542X変異(602421.0009)を有する。

0.0073嚢胞性線維症
CFTR、IVS19、G-A、-1
典型的な嚢胞性線維症(CF; 219700)の小児3人(全員膵臓機能不全)において、Audrezetら(1993)は、イントロン19のヌクレオチド-1において、スプライスアクセプター部位に関与するGからAへの転移を観察した(3850, -1, G-to-A)。

.0074 嚢胞性線維症
CFTR、1-bp ins、3898c
重篤な膵不全の20歳の嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Audrezetら(1993)はヌクレオチド3898の後にCが挿入され、フレームシフトが生じていることを発見した。もう1本の染色体はR1162X変異を有していた(602421.0033)。

.0075嚢胞性線維症
CFTR、TRP57TER
Audrezetら(1993)は、膵不全性嚢胞性線維症(CF; 219700)患者2人において、エクソン3のヌクレオチド302において、コドン57をTGG(trp)からTGA(stop)に変換するG-to-A転移の複合ヘテロ接合を発見した。

.0076嚢胞性線維症
CFTR、GLN1313TER
嚢胞性線維症(CF; 219700)の重篤な膵不全患者において、Audrezetら(1993)は、エクソン21のヌクレオチド4069において、gln1313を停止コドンに変換するCからTへの転移をホモ接合性で発見した。

.0077 嚢胞性線維症
CFTR、GLU92LYS
軽度の嚢胞性線維症(CF; 219700)のスペイン人患者において、Nunesら(1993)は、ヌクレオチド406にGからAへの転移を発見し、その結果、エクソン4のコドン92がグルタミン酸からリジンに変化した。同じ変異が、ドイツ在住の血縁関係にある両親を持つトルコ人患者においてホモ接合状態で発見された。両症例とも膵臓は十分で、脂肪排泄は正常であった。トルコ人の男の子の母親は、1時間スポーツをした後、男の子の皮膚と髪が白い塩辛い皮で覆われ、それを取り除くのに2、3回シャワーを浴びる必要があったと報告している。

0078嚢胞性線維症
cftr, arg347his
Audrezetら(1993)は、膵不全性嚢胞性線維症(CF;219700)の原因となるR347H変異について言及している。これはヌクレオチド1172に関与する3つの変異のうちの1つで、他はR347P(602421.0006)とR347L(602421.0067)である。

.0079 嚢胞性線維症
CFTR、GLY91ARG
Guillermitら(1993)は、ブルトン起源の87本の非delF508染色体の研究において、3人の膵臓不全性嚢胞性線維症患者(CF; 219700)にG91R変異を発見した。この3人の患者はG91R変異とdelF508(602421.0001)の複合ヘテロ接合体であった。

.0080嚢胞性線維症
cftr, phe1286ser
160本の嚢胞性線維症(CF; 219700)染色体の解析において、Dorvalら(1993)は、変性ゲル電気泳動とPCR産物の直接塩基配列決定を用いて、CFTR遺伝子のエクソン20にF1286S変異を検出した。ヌクレオチド3989におけるTからCへの転移が、フェニルアラニンからセリンへの変化の原因であった。

.0081嚢胞性線維症
CFTR、1-bp ins、2307a
アフリカ系アメリカ人の嚢胞性線維症(CF; 219700)患者の化学的ミスマッチ切断により、Smitら(1993)はエクソン13のヌクレオチド2307の後にアデニンが挿入されているホモ接合体を発見した。その結果、コドン726で読み枠がシフトし、アミノ酸位置729と730に2つの連続した停止コドンが導入された。2307insA変異に関連するmRNAレベルを調べるために、患者と正常被験者の鼻上皮細胞からのRNAを逆転写した。その後、cDNAを増幅したところ、2307insAに関連するCFTRメッセージレベルは、正常対照と比較して著しく低下していることが示されたが、患者と正常被験者の両方は、同程度の発現レベルを示した。

.0082 嚢胞性線維症
CFTR、GLU92TER
嚢胞性線維症(CF; 219700)の4人のドイツ人患者のそれぞれにおいて、Willら(1994)は、エクソン4の最初の塩基に影響を及ぼし、終止コドンglu92-to-terを作るGからTへの転座を発見した。E92X変異のヘテロ接合体患者のリンパ球RNAは、野生型の配列と、エクソン4を欠くスプライシングの異なるアイソフォームを含んでいることがわかった。一方、これらの患者の鼻上皮細胞由来のRNAは、より長い長さの第3の断片を示した。塩基配列決定の結果、E92Xと、エクソン3と4の間に挿入された183bpの追加断片の存在が明らかになった。183bpの配列はCFTR遺伝子のイントロン3にマップされた。この断片はアクセプターとドナーのスプライス部位に挟まれていた。Willら(1994)は、イントロン3の183bp断片は、E92X変異の存在によって上皮細胞で活性化されうる、隠蔽CFTRエクソンであると結論した。E92Xは正しくスプライシングされたCFTR mRNAを欠損させ、重篤な嚢胞性線維症を引き起こす。

.0083 嚢胞性線維症
CFTR, Gly480Cys
Smitら(1995)は、膵臓不全のアフリカ系アメリカ人CF(CF;219700)患者において、哺乳類細胞における蛋白輸送障害に関連する新規CFTRミスセンス変異を発見したが、Xenopus卵子アッセイでは正常なクロライドチャネル特性を示した。この変異は、残基480のシステインがグリシンに置換されたものである。哺乳動物細胞では、コードされた変異タンパク質は完全にグリコシル化されず、細胞膜に到達しなかったことから、G480Cタンパク質は細胞内プロセッシングに欠陥があることが示唆された。しかし、変異型CFTRタンパク質が細胞内プロセシング/トラフィッキング欠損を起こしにくい系であるXenopus卵母細胞では、G480C CFTRの発現は、野生型CFTRと同様のフォルスコリンおよび3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)による活性化に対する感受性を示すクロライドコンダクタンスと関連していた。これは、疾患の唯一の基盤がタンパク質の位置ずれであるCFTR変異体の最初の同定であったようである。

.0084 嚢胞性線維症
CFTR、leu206trp
CFTR遺伝子のleu206-to-trp(L206W)変異は、南フランスの嚢胞性線維症(CF;219700)患者3人において初めて同定された(Claustresら、1993年)。Rozenら(1995)は、ケベック出身のフランス系カナダ人に比較的頻繁にみられると報告している。7名のフランス系カナダ人プロバンドにおける所見に基 づいて、この変異は、非典型的なCF患者にも存在する可能 性が高く、また、不妊症の健常男女にも存在する可能性が あることが示唆された。そのグループには、47歳と48歳の姉妹と30歳の兄弟が含まれていた。女性は生殖機能が低下していると考えられ、 男性は精管欠損であった。男性と1人の姉妹は、肺機能と胸部高分解能CTスキャンは正常であった。47歳の姉は、20歳の時に気管支拡張症の推定で左上葉切除術を受けており、肺感染症を頻繁に起こしていたが、肺機能は驚くほど良好に保たれていた。

Clainら(2005)は、L206W変異が様々な疾患表現型をもたらす可能性があることを指摘している。この変異と重度のCF原因変異F508del(602421.0001)を持つ個体は、CFまたは先天性両側性精管欠損症(277180)を有する可能性がある。Clainら(2005)は、CFTRタンパク質の産生と機能に対するL206W変異の影響を研究し、L206W/F508del複合ヘテロ接合体患者の遺伝子型と表現型の相関を検討した。その結果、L206Wは、CFTR生合成経路が著しく損なわれていることから、プロセッシング(クラスII)変異であることが示されたが、一方、単一チャネルの測定では、野生型タンパク質と同様のイオン伝導性が示された。これらのデータは、F508delを含むクラスII変異体の表現型の多様性という大きな問題を提起した。Clainら(2005)は、CFTRタンパク質が細胞表面に到達する過程で、複数の潜在的な特性がCFTRタンパク質のプロセッシングを変化させる可能性があるため、環境因子やその他の遺伝因子がこの変動性に寄与している可能性があると結論づけた。

.0085 嚢胞性線維症
CFTR、18bp欠損、NT591
Varonら(1995)は、嚢胞性線維症(CF; 219700)の単症状型として、CFTR遺伝子のエクソン4における18bpの欠失という新規のインフレーム変異に関連した再発性鼻ポリープを報告した。欠失はcDNAクローンのヌクレオチド591から始まっていることから、この変異は591del18と記号化された。この変異はトルコ出身の男性双生児にみられた。双子は母親から591del18変異を受け継いだ。父方の対立遺伝子にはナンセンス変異glu831-to-terがあった(Verlingueら、1994)。患者は、鼻ポリープの持続と汗の電解質上昇により、10歳の時にCFと診断された。鼻ポリープは4回、外科的に切除されている。新生児期と乳児期初期は、全く問題なかった。膵臓は十分であり、肺疾患やその他の CFに関連する問題はなかった。

Burgerら(1991)は、G551D変異(602421.0013)のヘテロ接合が、再発性鼻ポリープの原因因子であることを示唆した。ChalkleyとHarris(1991)は、gly85-to-glu変異(602421.0038)のホモ接合を発見したイラン出身の11歳の少年において、鼻ポリープが嚢胞性線維症の診断の基礎となった。

.0086 精管、先天性両側性欠如
気管支拡張症、汗の塩化物上昇を伴うか伴わない1、修飾因子
cftr、ivs8as、5t変異体
Zielenskiら(1995)は、CBAVD(277180)は、CFTR遺伝子のイントロン8の3プライム末端にある5T変異体と関連し、その浸透度は男性で0.60であると推定している。Chuら(1993)は、イントロン8のスプライスアクセプター部位の前にあるチミジン(T)トラクトの長さ(5, 7, 9T)が様々であることに注目した。この長さはエクソン9のスプライシング効率と相関しているようで、白人集団のCFTR対立遺伝子の5%に存在する5Tの変異型は、ほとんどエクソン9マイナスmRNAしか産生しない(95%)。CFTR遺伝子発現におけるこのT-tract多型の影響は、CF変異R117H(602421.0005)との関係によっても証明されている。R117H(5T)は、膵臓充足の典型的なCF患者にみられるが、R117H(7T)は、CBAVDと関連している(Kiesewetterら、1993)。

Costesら(1995)は、孤立性CBAVDを有する45人の無精子症のCFTR遺伝子を調査した。彼らは、これらの被験者の染色体の86%にCFTR遺伝子の欠損を検出した。9つの新規CFTR遺伝子変異の同定に加え、彼らは、CF変異のヘテロ接合体であるCBAVD男性の84%が、1本の染色体上にイントロン8ポリピリミジン5T CFTR対立遺伝子を有することを見いだした。

De Meeusら(1998)は、5T対立遺伝子とmet470-to-val多型のval対立遺伝子との間に連鎖不平衡を見いだした(602421.0023)。

Gromanら(2004)は、5Tに隣接するTGリピートの数が疾患の浸透性に影響することを示した。彼らは、先天性精管欠如による男性不妊症患者98人、非古典的CF患者9人、および27人の非罹患者(生殖能力のある男性)において、TGリピート数を決定した。この研究では、CFTR遺伝子の一方に重度のCFTR変異があり、もう一方に5Tの変異があった。彼らは、5Tが12または13のTG反復に隣接している個体は、5Tが11のTG反復に隣接している個体よりも、異常な表現型を示す可能性がかなり高いことを見出した。従って、TG反復数を決定することにより、良性の5T対立遺伝子と病原性の5T対立遺伝子をより正確に予測することが可能になる。

CFTR遺伝子のエクソン9のスプライスアクセプター部位に位置するTGリピートは、スプライシングに影響を及ぼす可変ジヌクレオチドリピートの一例である。リピート数が多いと、エクソン9のスプライシング効率が低下し、場合によっては、全長転写産物の減少は、先天性両側精管欠損症や非古典的嚢胞性線維症による男性不妊の原因となるのに十分である。Hefferonら(2004)は、CFTRミニ遺伝子システムを用いて、TGトラクトの変異を研究し、ジヌクレオチド反復数とエクソン9のスプライシング効率との間に、in vivoで見られたのと同じ相関関係を観察した。ミニ遺伝子のTGジヌクレオチドをランダムな配列に置き換えると、エクソン9のスプライシングが消失した。TGトラクトを自己塩基対形成可能な配列に置き換えると、RNA二次構造の形成が効率的なスプライシングに関連することが示唆された。しかし、スプライシング効率は、そのような構造の予測される熱力学的安定性と逆相関があり、中間の安定性が最適であることが示された。最後に、異なる長さのTAリピートの置換により、配列内容ではなくRNA二次構造の安定性がスプライシング効率と相関することが確認された。これらのデータを総合すると、ジヌクレオチド反復配列は、RNAスプライシング効率と臨床表現型に様々な影響を及ぼす二次構造を形成しうることが示された。

特発性気管支拡張症(BESC1; 211400)の66歳の女性と血縁関係のない67歳の男性で、5T CFTR変異体のヘテロ接合体であったFajacら(2008年)は、SCNN1B遺伝子のミスセンス変異(600760.0015)のヘテロ接合体も同定した。この女性は、汗塩化物が境界域まで上昇し、鼻電位差(PD)が正常で、FEV1は予測値の77%であった。男性は、汗の塩化物および鼻電位差(PD)が正常で、FEV1は予測値の80%であった。Fajacら(2008)は、SCNN1Bの変異はナトリウムチャネル機能に有害であり、特にCFTR遺伝子に変異を有する患者では気管支拡張症につながる可能性があると結論づけた。

.0087 嚢胞性線維症
CFTR, THR338ILE
低ナトリウム血症、低クロル血症、低カリウム血症、 代謝性アルカローシスを伴う低張性脱水のため受診 したサルデーニャ系小児8人全員において、Leoniら (1995)は、T338I変異をホモ接合体または他の CF変異との複合ヘテロ接合体で発見した。肺や膵臓の病変は認められなかった。T338I変異は、典型的な症状を有するCF患者や同系統の健常者では検出されなかった。これらのデータは、T338I変異が特異的な軽度の嚢胞性線維症(CF;219700)の表現型と関連していることを示唆した。患者は生後2ヵ月から7歳の間で受診した。患者のうち3人は発育不全であった。汗の塩化物濃度は、生後3ヵ月で境界値であった1名を除き、すべての患者で高値であった。すべての患者で年齢に対して正常なステアトクリット値を示し、膵酵素の補給を必要とした患者はいなかった。

.0088嚢胞性線維症
CFTR、TRP1089TER
Shoshaniら(1994)は、嚢胞性線維症(CF;219700)のユダヤ人患者138対立遺伝子のうち2つにおいて、CFTR遺伝子のエクソン17bのヌクレオチド3398でGからAへの転移を同定した。この置換により、1089残基でトリプトファンの代わりに終止コドン(TAG)が生じる。両変異体染色体は同じ遺伝子外および遺伝子内ハプロタイプA112を持つ。

.0089嚢胞性線維症
CFTR、4-bp欠失、NT4010
アラブ出身の嚢胞性線維症(CF;219700)患者において、Shoshaniら(1994)は、エクソン21の直接塩基配列決定を用いて、CFTR遺伝子TATTのコード配列の4010位に4bpの欠失を検出した。このフレームシフト変異は、変異の34アミノ酸下流に終止コドン(TAG)を作ると予想される。この変異は、第2のATP結合ドメインを欠く切断ポリペプチドを作ると予測されるので、疾患の原因となる変異である可能性が高い。患者は父親からこの欠失を受け継いだ。CFTR染色体はD121ハプロタイプである。もう一方のCFTR染色体にはasn1303-to-lys変異(602421.0032)がある。

.0090再分類-意義不明の変異体
CFTR、ile556val
以前はCYSTIC FIBROSISと題されていたこの変異型は、Hamosh (2018)によるgnomADデータベースのレビューに基づいて再分類された。

224本の非F508del嚢胞性線維症(CF;219700)染色体の研究において、Ghanemら(1994)は、フランスの嚢胞性線維症の夫婦と1人の患児において、ヌクレオチド223の31位のアルギニンをシステインに変えるCからTへの置換を同定した。この夫婦の6歳の患児はホモ接合体であったので、おそらく多型であろう。父親と罹患児は、エクソン11のイソロイシン556をバリンに変える別の置換を持っていた。この変異はHhaI認識配列を消失させるので、制限分析で検出できる。

Hamosh(2018年)は、I556V変異体がヘテロ接合状態で276,478対立遺伝子中914個に、ホモ接合体が28個に存在することをgnomADデータベースで発見し、対立遺伝子頻度は0.0033であった(2018年5月3日)。

0.0091嚢胞性線維症
CFTR, TYR109CYS
Schaedelら(1994)は、生後9ヵ月で診断された嚢胞性線維症(CF;219700)の16歳の女児で、膵臓不全を維持している症例において、CFTR遺伝子のエクソン4のヌクレオチド458におけるAからGへの置換を同定し、チロシン-109をシステインに変換した(Y109C)。彼女の2番目の変異は、エクソン19の3659delC(602421.0020)であった。3659delC変異は膵不全の表現型と関連している。著者らは、tyr109-to-cysが膵不全をもたらす変異であると結論づけた。

.0092 嚢胞性線維症
CFTR, ARG352GLN
Gaspariniら(1993)は、北イタリアの嚢胞性線維症(CF;219700)患者133人の系統的研究において、CFTR遺伝子のarg352からgluへの変異を同定した。

.0093 嚢胞性線維症
CFTR、IVS3、A-G、+4
Ghanemら(1994)は、イントロン3のドナースプライス部位の4番目のヌクレオチドにAからGへの置換を同定した。この変異が異常スプライシングを引き起こすほど劇的なものであるかどうかは不明である。単に暗号スプライス部位が使われるのに十分なだけかもしれない。この変異は、カメルーン出身のアフリカ人家族において、母方の嚢胞性線維症(CF;219700)染色体上に発見された。CF罹患児は9歳の女児で、膵不全や重篤な肺疾患はなかったが、喘息に苦しんでいた。汗の塩化物濃度は90〜110mmol/Lであった。

.0094嚢胞性線維症
CFTR、GLN524HIS
Gaspariniら(1993)は、北イタリアの嚢胞性線維症(CF;219700)133人の系統的研究において、CFTR遺伝子のgln524-to-his(Q524H)変異を同定した。

.0095 のう胞性線維症
CFTR, Gly542TER
Gaspariniら(1993)は、北イタリアの嚢胞性線維症(CF; 219700)患者133人の系統的研究において、グリシン542の代わりに停止コドンを作る点突然変異を発見した。米国南西部のヒスパニック系嚢胞性線維症患者129人の分子遺伝学的解析において、Grebeら(1994)は、5.4%(129人中7人)がこの変異を有していることを発見した。

.0096嚢胞性線維症
CFTR、GLN552TER
重度の膵不全を有する嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Gaspariniら(1993)は、グルタミン552の代わりに停止コドンを作るCFTR遺伝子の変異を発見した。この変異は225例中3例にみられた。

.0097 嚢胞性線維症
CFTR、ASP648VAL
Gaspariniら(1993)は、北イタリアの嚢胞性線維症(CF;219700)患者133人の系統的研究において、CFTR遺伝子のasp648からvalへの変異を同定した。

.0098 嚢胞性線維症
CFTR, LYS710TER
北イタリアの嚢胞性線維症(CF;219700)患者133人の系統的研究において、Gaspariniら(1993)は、CFTR遺伝子のリジン-710の代わりに停止コドンを作る点突然変異を発見した。

.0099 嚢胞性線維症
CFTR, Gln890ter
Ghanemら(1994)は、関連する2人のポルトガル人嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、エクソン15のヌクレオチド2880にCからTへの置換を同定し、その結果、890位に停止コドンが生じた。この変異は13歳の少女とその15歳の叔父にみられ、彼女らはこの疾患の古典型で鼻ポリポーシスを有していた。両症例とももう一方のCF染色体にF508delを有し、叔父は汗テスト陽性(140mmol/L)であった。変異は制限部位MseI(+)とMboII(-)を変化させた。

.0100 cftr多型
cftr, ser912leu
Ghanemら(1994)は、非F508del CF染色体224本を対象とした研究において、フランス人とスペイン人のCF保因者において、CFTR遺伝子のエクソン15に2867C-T転移を同定し、その結果、ser912からleu(S912L)への置換が生じた。この置換が致死的であるかどうかを予測することは困難であった。

In vitroでの機能発現研究により、Clainら(2005年)は、S912L置換は単独では疾患の原因とはならないが、他のCFTR変異(602421.0135を参照)とシス遺伝した場合には、CFTRの機能を有意に損なうことを示した。Clainら(2005)は、S912L変異を持つCF胎児の健康な父親を同定した。父親のもう一方の対立遺伝子には、別の CF産生変異が同定されている。Clainら(2005)は、S912L変異は中立変異であると結論している。

.0101嚢胞性線維症
CFTR、2bp欠損、936TA
Chillonら(1994)は、スペイン人の嚢胞性線維症(CF; 219700)患者2人において、CFTR遺伝子のエクソン6bのコード配列の936位に2bpの欠失(TA)を同定した。このフレームシフト変異により、272塩基下流に早発終止コドンが生じ、タンパク質が切断される。患者の1人はホモ接合体であり、もう1人は複合ヘテロ接合体であった。

.0102 のう胞性線維症
CFTR、HIS949TYR
非F508del嚢胞性線維症(CF; 219700)染色体224本の研究において、Ghanemら(1994)は、10年間の慢性肺疾患の病歴をもつ60歳の女性において、エクソン15のヌクレオチド2977において、949位のヒスチジンからチロシンへのCからTへの置換を同定した。汗の塩化物値は42mmol/リットルであった。

0.0103嚢胞性線維症
CFTR、LEU1065PRO
嚢胞性線維症(CF; 219700)の10歳の女児において、Ghanemら(1994)は、エクソン17bのヌクレオチド3326にTからCへの置換を同定し、1065位のロイシンをプロリンに変化させた(L1065P)。このL1065P変異は患者の母方の染色体に見られ、父方の対立遺伝子にはF508del変異(602421.0001)があった。この位置のロイシンはマウスCFTR蛋白質で保存されている。この変異はMnlI(+)制限部位を変化させる。この患者は嚢胞性線維症の胃腸症状と肺症状があり、また汗の塩化物値が高かった(66mmol/リットル)。

0.0104嚢胞性線維症
cftr, gln1071pro
21歳の嚢胞性線維症(CF; 219700)の女性において、Ghanemら(1994)は、エクソン17bのヌクレオチド3344においてAからCへの置換を同定し、1071位のグルタミンをプロリンに変更した(Q1071P)。患者は5歳のときから慢性胃腸障害、膵不全、下痢、ステアトルレア、非常に高い汗の塩化物値(1リットルあたり160mmol)に悩まされていた。このミスセンス変異は、マウスCFTRに保存されているアミノ酸上に生じたものである。患者はもう一方のCF染色体にF508del変異を有していた。この変異は制限部位HaeIII(+)を変化させる。

0105嚢胞性線維症
CFTR、HIS1085ARG
北イタリアの嚢胞性線維症(CF;219700)患者133人の系統的研究において、Gaspariniら(1993)はCFTR遺伝子のhis1085-to-arg変異を同定した。

.0106 嚢胞性線維症
CFTR、TYR1092TER
北イタリアの嚢胞性線維症(CF;219700)患者133人の系統的研究において、Gaspariniら(1993)は、CFTR遺伝子のチロシン-1092の代わりに停止コドンを作る点突然変異を発見した。

0107嚢胞性線維症
CFTR、TRP1204TER
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Ghanemら(1994)は、エクソン19のヌクレオチド3743にGからAへの置換を同定し、その結果、1204位に停止コドンが生じた。この変異は、膵臓機能不全を有し、汗の塩化物濃度が120mmol/Lであったが肺感染症はなかった4歳の子供の父方の染色体上に見いだされた。母方染色体にはF508欠失がある。変異は制限部位MaeI(+)を変化させている。

0108嚢胞性線維症
CFTR、1bp欠失、1215g
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Romeyら(1994)はCFTR遺伝子のエクソン7のヌクレオチド2423に1bpの欠失(G)を同定した。このフレームシフト変異は、7コドン下流で早期終止(UAA)を引き起こす。この欠失はAflIII制限部位を作り、患者の父親から遺伝した。この患者はフランス人とスペイン人の7歳の男児で、2番目の変異2423delG(602421.0116)を有している。2つのフレームシフト変異にもかかわらず、この患者は嚢胞性線維症の重症型ではない。

0109嚢胞性線維症
CFTR, THR1220ILE
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Ghanemら(1994)は、CFTR遺伝子のエクソン19のヌクレオチド3791において、1220位のスレオニンからイソロイシンへのCからTへの置換を同定した。CFTRに他の変異はみられなかったが、著者らは、この変異が同じ対立遺伝子にみられたのか、異なる対立遺伝子にみられたのかは判断できなかった。他の家族には検査可能なものはなかった。

.0110 嚢胞性線維症
cftr, ile1234val
Gaspariniら(1993)は、北イタリアの嚢胞性線維症(CF; 219700)患者133人の系統的研究において、CFTR遺伝子のile1234-val変異を同定した。

.0111嚢胞性線維症
CFTR, Gly1249GLU
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Greilら(1994)は、CFTR遺伝子のエクソン20のヌクレオチド3878において、アミノ酸1249のグリシン(GGG)からグルタミン酸(GAG)へのGからAへの置換を同定した。

.0112嚢胞性線維症
CFTR、SER1251ASN
北イタリアの嚢胞性線維症(CF; 219700)患者133人の系統的研究において、Gaspariniら(1993)は、CFTR遺伝子のser1251からasnへの変異を同定した。

.0113 嚢胞性線維症
CFTR, ser1255pro
北イタリアの嚢胞性線維症(CF;219700)患者133人の系統的研究において、Gaspariniら(1993)はCFTR遺伝子のser1255-to-pro変異を同定した。

.0114 嚢胞性線維症
CFTR, Asn1303his
北イタリアの嚢胞性線維症(CF;219700)患者133人の系統的研究において、Gaspariniら(1993)は、CFTR遺伝子のasp1303-to-his変異を同定した。

.0115嚢胞性線維症
CFTR、2-bp欠損、1609CA
Gaspariniら(1992)は、北イタリアの嚢胞性線維症(CF;219700)患者133人の系統的研究において、CFTR遺伝子のエクソン10に2bpの欠失(CA)を同定した。

.0116 嚢胞性線維症
CFTR、1-bp欠失、2423g
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Romeyら(1994)は、CFTR遺伝子のエクソン13のコード配列の2423位に1bp(G)の欠失を同定した。このフレームシフト変異は、6コドン下流で早期終止(UGA)を引き起こす。この患者はフランス人とスペイン人の7歳の男児で、2番目の変異1215delG(602421.0108)を有していた。2つのフレームシフト変異にもかかわらず、この患者は嚢胞性線維症の重症型を示さなかった。変異2423delGはイントロン17aの3271+18CまたはTの配列変異とも関連している。

.0117嚢胞性線維症
CFTR、1bpの欠損、3293a
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Ghanemら(1994)は、CFTR遺伝子のエクソン10のコード配列の3293位に1bpの欠失(A)を同定した。このフレームシフト変異は、15ヌクレオチド下流の早発終止コドンと切り詰められた蛋白をもたらす。この患者は、フランス出身の15歳のF508delヘテロ接合体の少女で、汗検査陽性(1リットルあたり80mmol)と膵不全を有するが、慢性肺感染症はない。

0.0118嚢胞性線維症
cftr、4-bp ins、nt3667
Sangiuoloら(1993)は、膵臓機能不全と重篤な肺病変を有するイタリア中北部出身の20歳の嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、CFTR遺伝子のエクソン19のコード配列の3667位に4bpの挿入(TCAA)を同定した。このフレームシフト変異は、アミノ酸位置1195に早期終止コドン(TGA)をもたらし、HincII制限酵素部位を破壊する。

.0119嚢胞性線維症を伴わない汗の塩化物上昇
CFTR、SER1455TER
Mickleら(1998)は、汗の塩化物濃度が単発的に上昇した母親とその末娘のCFTR遺伝子において、6.8kbの欠失とナンセンス変異(ser1455→ter;S1455X)を同定した。両者の詳細な臨床評価では、CFに特徴的な肺疾患や膵疾患の所見は認められなかった。この家族の 2 番目の子供は典型的な CF であり,6.8kb 欠失のホモ接合体であったことから,この変異が重度の CFTR 機能障害を引き起こしていることが示された.S1455X 変異を有する CFTR mRNA 転写物は生体内で安定であったことから,この対立遺伝子は,CFTR の最後の 26 アミノ酸を欠失した切断型をコードしていることが示唆された.この領域の欠損は、野生型CFTRと比較して、一過性に発現したS1455X-CFTRのプロセシングには影響しなかった。CF気道細胞で発現させると、この変異体は野生型CFTRと同様のcAMP活性化全細胞塩化物電流を生成した。S1455X-CFTR変異体のクロライドチャネル機能の維持は、母親とその娘における正常な肺と膵臓の機能と一致していた。この研究は、CFTRの変異が、CFの表現型がないにもかかわらず、汗の塩化物濃度の上昇と関連する可能性があることを示し、CFTRのC末端の汗腺におけるこれまで認識されていなかった機能的役割を示唆した。

Salvatoreら(2005)は、CFTR遺伝子の全コード領域の系統的スキャンにより、S1455XとdelF508(602421.0001)の複合ヘテロ接合が明らかになった、汗の塩化物濃度が単発的に上昇した無症状の姉妹2人を報告している。

.0120嚢胞性線維症
CFTR、IVS16、G-A、+1
Dorkら(1998)は、嚢胞性線維症(CF; 219700)のアフリカ人、アラブ人、および少数のギリシャ人家系に存在する3120+1G-A変異は、ハプロタイプが非常に類似しているか同一であるため、おそらく共通の祖先に由来すると結論づけた。

.0121嚢胞性線維症
CFTR, ARG553GLN
嚢胞性線維症(CF; 219700)の膵不全患者において、Dorkら(1991)はCFTR遺伝子のヌクレオチド1790でGからAへの転移を同定し、arg553からglnへの置換をもたらした。Stern (1997)も参照。

.0122 嚢胞性線維症
CFTR、-102T-A、プロモーター
Romeyら(1999)が嚢胞性線維症患者において複合ヘテロ接合状態で発見した最小CFTRプロモーターの-102位におけるT-A転位については、602421.0012を参照。

.0123嚢胞性線維症
cftr、21-kb欠失
Dorkら(2000)は、中・東欧で頻繁に観察されるCFTR遺伝子の大きなゲノム欠失について記述している。この変異はCFTR遺伝子のイントロン1からイントロン3までの21,080bpを欠失するものである。転写解析の結果、この欠失により上皮CFTR mRNAのエクソン2と3が失われ、エクソン4内に早期終止シグナルが生じることが示された。この対立遺伝子に対する簡単なPCRアッセイが考案され、ヨーロッパ人とヨーロッパ人由来の集団における変異のスクリーニングに用いられた。ホモ接合体7人を含む197人の嚢胞性線維症(CF;219700)患者が同定された。ホモ接合体の臨床的評価,およびdelF508(602421.0001)の複合ヘテロ接合体と一対一にマッチさせたdelF508ホモ接合体との比較から,21kb欠失は膵不全と診断時年齢の早さに関連する重篤な変異であることが示された.

.0124 膵炎、特発性、高トリプシン血症感受性
高トリプシン血症、新生児、感受性、含む
CFTR, LEU997PHE
Gomez Liraら(2000)は、特発性膵炎や新生児高トリプシン血症にみられる膵管閉塞には、特定のCFTR遺伝子変異が関与している可能性があると仮定した。この仮説に基づき、彼らは、特発性膵炎患者32人(うち14人は、5T変異型CF変異(602421.0086)を有するか、境界域の汗塩化物レベルを有し、18人は、一般的なCF変異やその他のCFの特徴を有さない)と、高トリプシン血症で汗塩化物が正常な新生児49人(うち32人は、一般的なCF変異を有し、17人は、一般的なCF変異を有さない)を対象に、CFTR遺伝子の完全なスクリーニングを行った。希少変異は、特発性膵炎患者32人中9人と、高トリプシン血症の新生児49人中21人にみられた。これらの希少変異のうち、leu997→phe(L997F)は、特発性膵炎患者32人中4人(12.5%)と高トリプシン血症の新生児39人中4人(8%)で同定された。L997は膜貫通ドメイン9に高度に保存された残基である。

嚢胞性線維症の新生児スクリーニングプログラムのほとんどは、免疫反応性トリプシノーゲン(IRT)の測定とCFTR遺伝子の最も一般的な変異の解析を組み合わせたものであるため、IRTの増加による新生児のヘテロ接合体の同定は欠点と考えられている。Scotetら(2001)は、10年前にブルターニュ(フ ランス)で実施されたCFスクリーニングプ ログラムで検出された高トリプシン血症児のヘテ ロ接合体頻度を評価した。1992年から1998年の間に、合計160,019人の新生児がCFスクリーニングを受けた。IRTが増加した新生児1,964人(1.2%)のうち、60人がCFであり、213人が保因者であった。ヘテロ接合体頻度は12.8%で、一般集団(3.9%)の3倍であった。保因者では軽度の突然変異や変異体の割合が高かった。5T変異体(5.6%)の対立遺伝子頻度は増加しなかった。この研究は、高トリプシン血症の新生児においてヘテロ接合体の割合が予想よりも有意に高いという点で、これまでの研究と一致していた。

Kabraら(2000)はパキスタンの嚢胞性線維症患者(219700)でL997F変異を同定したが、2番目の変異は同定しなかった。

Derichsら(2005年)は、血縁関係にあるトルコ人の両親から生まれた、L997F置換のホモ接合体の子供を報告した。その子供は正常な発育を示し、膵不全や嚢胞性線維症の所見は認められなかった。汗の塩化物検査と腸の塩化物分泌は正常であった。Derichsら(2005)は、L997F変異は嚢胞性線維症を引き起こさないと結論づけた。

0.0125嚢胞性線維症
CFTR、1-bp ins、3622t
嚢胞性線維症(CF; 219700)のインド人小児において、Kabraら(2000)は、CFTR遺伝子のヌクレオチド3622に1-bpの挿入(T)を同定した。

.0126 嚢胞性線維症
CFTR、3601、T-C、-20
嚢胞性線維症(CF; 219700)の2人のインド人患者において、Kabraら(2000)は、CFTR遺伝子のヌクレオチド3601から-20位のTからCへの変化を同定した。

.0127嚢胞性線維症
CFTR、1bp欠損、3876a
Wangら(2000)は、嚢胞性線維症(CF; 219700)のヒスパニック患者29人中7人が、ヌクレオチド3876(3876delA)の1塩基対欠失により、フレームシフトを起こし、残基1258(L1258X)で終止するヘテロ接合体であることを発見した。この変異はこのグループの変異対立遺伝子の10.3%を占めた。この変異を持つ患者は、診断時年齢が早く、塩化物汗が多く、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、膵不全、肝疾患、肺性心疾患、早期死亡などの重篤な表現型を有していた。Wangら(2000年)は、この突然変異は他の民族グループでは報告されていないと述べている。

.0128嚢胞性線維症
CFTR、2bp欠損、394TT
嚢胞性線維症(CF; 219700)を引き起こすCFTRの394delTT変異は、「北欧の変異」と呼ばれ、バルト海および関連水路に接する国々(スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、エストニア、ロシアなど)で高頻度にみられる。この突然変異はほとんど単一の染色体ハプロタイプにのみ関連しており、この地域を中心とした単一の起源を示唆している(Schwartz et al., 1994)。

.0129は602421.0022へ移動

.0130 嚢胞性線維症
CFTR、Ala445glu
Kulczyckiら(2003)による嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において複合ヘテロ接合状態で発見されたCFTR遺伝子のala445-to-glu変異についての議論は、602421.0022を参照。

.0131嚢胞性線維症
CFTR、GLU7TER
Wongら(2003)は、嚢胞性線維症(CF; 219700)の1歳半の台湾人男児において、CFTR遺伝子に2つの新規変異、すなわち、エクソン1のヌクレオチド151におけるGからTへの転座により、タンパク質の第一膜貫通ドメインにglu7からterへの置換(E7X)が生じたことと、エクソン6bに1bpの挿入(989_992insA)が生じたことの複合ヘテロ接合を発見した。この挿入によりフレームシフトが生じ、306アミノ酸のCFTRタンパク質が切断された。

.0132嚢胞性線維症
CFTR、1-bp挿入、989a
Wongら(2003)による嚢胞性線維症(CF; 219700)の台湾人男児に複合ヘテロ接合状態で見つかったCFTR遺伝子の1-bp挿入(989_992insA)についての考察は、602421.0131を参照。

.0133嚢胞性線維症
CFTR、GLN1352HIS
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Leeら(2003)は、CFTR遺伝子のエクソン22のヌクレオチド4188において、gln1352からhis(Q1352H)へのアミノ酸変化をもたらすGからCへの転座を同定した。

.0134嚢胞性線維症
CFTR、glu217gly
嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Leeら(2003)は、CFTR遺伝子のエクソン6aにおける782A-Gの転移を同定し、glu217からgly(E217G)へのアミノ酸置換をもたらした。

.0135 のう胞性線維症
CFTR、Gly1244VALおよびSER912Leu
重症の嚢胞性線維症(CF; 219700)患者において、Savovら(1995)は、CFTR遺伝子における変異の複合ヘテロ接合を同定した。一方の対立遺伝子はG542X置換(602421.0009)を有していた。もう1つの対立遺伝子は2つの変異を有していた: S912L(602421.0100参照)とエクソン20の3863G-T転位で、第2ヌクレオチド結合ドメインにgly1244からvalへの置換(G1244V)が生じた。

In vitroでの機能発現研究により、Clainら(2005年)は、S912L置換は単独では疾患の原因とはならないが、G1244V変異とシスに遺伝するとCFTRの機能を著しく損なうことを証明した。G1244V変異体単独では、cAMP依存性塩化物伝導の低下(コントロール値の43%)をもたらしたが、G1244V/S912L複合対立遺伝子では、G1244V変異体単独と比較して、塩化物伝導がほぼ20倍低下した(コントロール値の2.4%)。

.0136嚢胞性線維症
CFTR、Ala561Glu
Mendesら(2003)は、CFTR遺伝子のエクソン12におけるala561からgluへの置換(A561E)は、ポルトガルの嚢胞性線維症(CF;219700)患者の間で2番目に多い変異であり、変異対立遺伝子の3%を占めると述べている。A561E変異タンパク質をベビーハムスター腎臓細胞で過剰発現させたところ、小胞体内でミスプロセッシングされ、保持されていることがわかった。低温処理により、A561E-CFTRチャネルの機能が部分的に回復し、一般的なF508del変異の所見と同様であった(602421.0001)。

.0137 嚢胞性線維症
CFTR、MET1101LYS(rs36210737)
Stuhrmannら(1997)は、南チロルの嚢胞性線維症(CF; 219700)の1人の個体において、CFTR遺伝子のヌクレオチド3302におけるTからAへの転座を同定し、コドン1101におけるmetからlysへの置換(M1101K)をもたらした。

Chongら(2012)は、米国の1,644人のSchmiedeleut(S-leut)Hutteritesを対象とした常染色体劣性突然変異のキャリアスクリーニングにおいて、スクリーニングされた1,473人のうち108人にヘテロ接合体、6人にホモ接合体のこの突然変異を同定し、キャリア頻度は0.073(13.5人に1人)であった。Chongら(2012年)は、南チロルがハッター派の創始者の出身地であることを指摘している。

.0138嚢胞性線維症
CFTR、EX16-17b DEL
Girardetら(2007)は、シチリア人の父親から受け継いだエクソン2に関与する欠失と、韓国人の母親から受け継いだエクソン16、17a、17bを除去する欠失(c.2908+1085_c.3367+260del7201、NM_000492.2)の2つの大きなCFTR再配列の複合ヘテロ接合体である嚢胞性線維症(CF;219700)の男性新生児を報告した。欠失は遺伝子のイントロン15からイントロン17bにまで及んでいた。この変異の番号付けでは、ATG開始コドンのAを+1位としている。

Nakakukiら(2012)は、慢性呼吸器感染と汗の塩化物濃度の上昇を根拠にCFと診断された日本人男児において、従来の解析では変異が同定されなかったが、直接塩基配列決定を用いて、Girardetら(2007)が同定した7.2kbの欠失を検出した。もう一方の対立遺伝子にはスプライシングの欠損が認められた。Nakakukiら(2012)は、変異タンパク質は膜貫通領域9、10、11に相当するアミノ酸970から1122を欠くだろうと予測した。

Sohnら(2019)は、嚢胞性線維症の5家族から6人の韓国人患者を対象に、CFTRの臨床的特徴づけと遺伝子解析を行った。12の対立遺伝子のうち6つ(50%)が16-17bマルチエクソン欠失を示した。6人全員が典型的な嚢胞性線維症の表現型を示し、6人中5人がメコニウムイレウスを呈した。全患者は8歳から19歳の年齢で支持療法により生存していた。Sohnら(2019)は、韓国や日本を含むアジアの集団におけるこの欠失変異の分子学的調査を示唆した。

Wakabayashi-Nakaoら(2019)は、CFTRのエクソン16-17bの欠失が最も一般的な日本人の嚢胞性線維症変異体として同定され、確実に診断された日本人CF患者の頻度が約70%であることを報告した。この変異は、CFTRタンパク質の970位のグリシン(G970)から1122位のスレオニン(T1122)までの153個のアミノ酸がフレームシフトすることなく欠失したもので、著者らはこの変異をdelta-(G970-T1122)と呼んでいる。著者らは、免疫ブロットと超解像顕微鏡を用いて、この欠失を持つCFTRの変異体をCHO細胞で特徴付けた。このタンパク質は合成され、コアグリコシル化されているが、複合型グリコシル化はされていない。ルマカフトール(VX-809)はδ-(G970-T1122)タンパク質の成熟障害を救済できなかった。Wakabayashi-Nakaoら(2019)は、この変異はクラスII変異体として特徴づけられるべきであると示唆した。

参考文献

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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