この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

男性不妊症の遺伝子検査(NGSパネル)は、無精子症・乏精子症・精子無力症などの原因になる181の遺伝子を一度に調べる検査です。男性不妊の多くは、遺伝子1つで原因が決まるものではありません。それでも、遺伝子の原因がわかる型では、ホルモン治療で精子ができる可能性や、精巣から精子を取り出す手術を検討する際の判断材料、生まれてくるお子さんへの遺伝的な影響など、次の選択を考える手がかりになります。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。このページでは、この検査でわかること・わからないこと、結果が出たあとにできることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. 男性不妊の遺伝子検査で何がわかりますか?
精子をつくる・運ぶ・動かすしくみや、精子をつくる指令を出すホルモンに関わる181遺伝子に、病気の原因となる変化があるかを調べます。染色体の数の異常(クラインフェルター症候群)とY染色体微小欠失は、この検査では調べられません。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
無精子症・乏精子症・精子無力症・奇形精子症で原因がわからない方、思春期の遅れや嗅覚の低下がある方、精管がない(精管欠損)と言われた方、慢性副鼻腔炎など線毛の病気の症状がある方、ご家族に男性不妊の方がいる方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜で、オンライン診療でも受けられます。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。治療の選び方、パートナーの検査、お子さんへの伝わり方、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。不妊治療そのものは、不妊治療の医療機関で受けていただきます。
1. 男性不妊の遺伝子検査とは:181遺伝子で「精子をつくる・運ぶ・動かす」しくみを調べる
男性不妊の遺伝子検査は、精子の数・形・動きや、精子をつくる指令を出すホルモンに関わる遺伝子に、病気の原因となる変化がないかを調べる検査です。ただし、男性不妊の多くは遺伝子1つで原因が決まるものではなく、この検査で全員の原因がわかるわけではありません。
米国泌尿器科学会と米国生殖医学会の診療ガイドライン(2020年・2024年改訂)によると、不妊に悩むカップルは約15%で、男性側の原因が単独で関わるのは約20%、さらに30〜40%では男性側の原因も関わっています[1]。男性不妊は、男女どちらか一方の問題ではなく、ご夫婦で向き合うことの多いテーマです。
男性不妊の原因を調べた系統的レビュー(2021年)では、男性不妊は世界の男性の少なくとも7%にみられます。一方で、遺伝の原因で診断がつくのは不妊男性の約4%にとどまり、60〜70%は原因がはっきりしないままとされています[2]。「遺伝子検査を受ければ必ず原因がわかる」わけではありません。それでも、原因がわかる型では、その後の治療の選び方や、お子さんへの影響が大きく変わります。だからこそ、どんな人が、どの順番で検査を受けるとよいかを知っておくことが大切です。
精子は、精巣の中で減数分裂を経てつくられ、頭・首・しっぽ(鞭毛)の形を整えて成熟します(くわしくは精子形成、配偶子形成と受精のしくみ)。この検査の181遺伝子は、この流れのどこかに関わる遺伝子です。
2. 男性不妊の原因と、遺伝子が関わる型
男性不妊の原因でよく知られる遺伝の要因は、染色体の数の異常(クラインフェルター症候群)、Y染色体微小欠失、そしてCFTRなど1つの遺伝子の変化です。このうち、この検査で調べられるのは「1つの遺伝子の変化」です。精液の検査結果やほかの症状によって、疑う原因が変わります。
無精子症(閉塞性・非閉塞性)と遺伝子
無精子症は、精液の中に精子が見つからない状態です。精子の通り道がふさがったり欠けたりしている「閉塞性」と、精巣で精子が十分につくられない「非閉塞性無精子症」に分けられます。
無精子症の遺伝の原因をまとめた総説(2021年)によると、クラインフェルター症候群は不妊男性の3〜4%、無精子症の男性の10〜12%にみられます。原因のわからない非閉塞性無精子症の5〜10%にはY染色体のAZF領域の完全な欠失があり、X染色体のTEX11遺伝子の変化は非閉塞性無精子症の1%を超えるとされています[3]。
閉塞性のうち、生まれつき両側の精管がない先天性両側精管欠損症(腎臓の異常を伴わないもの)では、75〜80%がCFTR遺伝子の変化によるとされています[3]。CFTRは嚢胞性線維症の原因遺伝子でもあります。
乏精子症・精子無力症・奇形精子症と遺伝子
精子の数が少ない乏精子症、動きが悪い精子無力症、形の異常が多い奇形精子症(くわしくは精子の奇形率・精子の運動率)にも、遺伝子の原因がわかっている型があります。たとえば、頭が丸く先体がない円頭精子症(DPY19L2など)、頭としっぽが離れてしまう断頭精子症(SUN5・PMFBP1など)、しっぽ(鞭毛)が短い・曲がるなど形の異常が重なるタイプ(DNAH1・CFAP43・CFAP44など)です。受精のときに卵子を活性化できないPLCZ1の変化も含まれます。
低ゴナドトロピン性性腺機能低下症・カルマン症候群:ホルモンで治療できる型
脳(視床下部・下垂体)から精巣への指令ホルモンが出ないために、精子がつくられない病気を低ゴナドトロピン性性腺機能低下症といいます。嗅覚の低下を伴うものがカルマン症候群です(X連鎖カルマン症候群・FGFR1によるカルマン症候群など)。総説(2021年)では、先天性の低ゴナドトロピン性性腺機能低下症では、遺伝子パネル検査で約50%に遺伝の診断がつくとされています[3]。
この型は、男性不妊の中でも治療の道がはっきりしている型です。ゴナドトロピン療法を受けた男性のメタ解析(2014年)では、75%で精子ができるようになったと報告されています[4]。
ほかの症状を伴う型(線毛の病気・症候群)
精子のしっぽと、気道の表面で異物を運ぶ線毛は、よく似たしくみで動いています。そのため、線毛がうまく動かない原発性線毛機能不全症(PCD)では、慢性副鼻腔炎や気管支拡張症とともに、精子の動きが悪くなることがあります(線毛の病気の総称はシリオパチー)。ほかにも、肥満・網膜の病気・多指症などを伴うバルデー・ビードル症候群、難聴や色素の異常を伴うワーデンブルグ症候群、CHARGE症候群、男性ホルモンの合成や働きの病気などでも、性腺の働きや精子の数に影響が出ることがあります。
男性不妊の原因・検査・治療の全体像は、男性不妊の原因・検査・治療を解説したコラムでもまとめています。
3. どんな人が受けるとよいか/別の検査が向く場合
無精子症・高度の乏精子症の方は、まず染色体検査とY染色体微小欠失の検査を受け、そのうえで原因がわからないときにこのパネル検査を考えるのが基本の順番です。思春期の遅れ・嗅覚の低下・精管欠損・線毛の病気の症状など、手がかりがある方は、はじめから遺伝子検査が役に立ちます。
米国の診療ガイドラインは、無精子症や精子濃度が1mLあたり500万未満で精巣の機能が落ちている所見がある男性には染色体検査を、無精子症や1mLあたり100万以下の男性にはY染色体微小欠失の検査を勧めています。精管がない男性や原因不明の閉塞性無精子症の男性にはCFTRの検査を、CFTRに変化がある男性や精管がない男性では、パートナーの遺伝学的な評価を勧めています[1]。欧州の指針では、Y染色体微小欠失を調べる精子濃度の目安は1mLあたり500万未満とされていますが、100万〜500万の間で議論が続いています[5]。
こんな方に向いています
- ●原因がわからない無精子症・乏精子症(染色体検査・Y染色体微小欠失の検査で原因が見つからなかった方)
- ●精子の動きや形の異常(精子無力症・奇形精子症・円頭精子症など)が強い方
- ●思春期が来ない・遅い、嗅覚が弱いなど、ホルモンの指令の病気を疑う方
- ●精管がない(精管欠損)と言われた方
- ●慢性副鼻腔炎・気管支拡張症など、線毛の病気の症状がある方
- ●ご家族(兄弟・父・おじなど)に男性不妊の方がいる方
見た目や精液の数値、家族歴だけでは、遺伝の原因があるかどうかは判断できません。迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
症状・検査の結果から選ぶ:どの検査がよいか
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※検査の順番は、米国の診療ガイドライン[1]と欧州の指針[5]をふまえた臨床遺伝専門医の判断です。どの検査が合うかは、精液検査・ホルモン値・診察所見・ご家族の情報で変わります。
4. この検査で調べられるもの・調べられないもの
この検査で調べられるのは、181遺伝子の中の小さな変化(1文字の変化や小さな欠失・挿入)と、遺伝子単位の大きな欠失・重複です。染色体の数・構造の異常(クラインフェルター症候群など)とY染色体微小欠失は調べられません。これらは男性不妊の遺伝の原因としてよく見つかるものなので、別の検査で先に調べておくことが大切です。
このパネルでは調べられないもの
- ●染色体の数・構造の異常:クラインフェルター症候群(47,XXY)や転座などは、染色体検査(Gバンド法)で調べます。
- ●Y染色体微小欠失(AZF欠失):Y染色体のAZFa・AZFb・AZFcという領域の欠失は、専用の検査で調べます(AZFc欠失の解説)。このパネルにはAZFa領域の遺伝子のひとつ(USP9Y)が入っていますが、AZF領域の欠失を調べる検査の代わりにはなりません。
- ●リピート伸長:SOX3遺伝子の3塩基の繰り返しの伸長は評価していません。
- ●そのほか:遺伝子の調節領域や、遺伝子の中の深い部分(エクソンから20塩基を超えて離れた場所)の変化、体の一部の細胞だけにある変化(モザイク)は、この検査では見つけにくい・見つけられないことがあります。
足りない遺伝子は、追加して調べられます
このパネルに入っていない遺伝子もあります。たとえば、原発性線毛機能不全症(PCD)の原因遺伝子の一つとして知られるDNAH5遺伝子[6]は、このパネルには入っていません(当院のPCD遺伝子パネル検査には入っています)。このパネルに入っていない遺伝子も、追加して調べることができます。遺伝カウンセリングのときにご相談ください。(カスタマイズ遺伝子パネル検査)
検査の技術的なくわしい説明(クリックで開く)
この検査は、次世代シーケンシング(NGS)という方法で、遺伝子のたんぱく質をつくる部分(エクソン)と、その境目(スプライス部位)を読みます。対象の領域の99%以上を読めることを品質の目安にしています。
読み取りの質が低かった変化は、サンガー法という別の方法で確かめます。欠失・重複の解析では、遺伝子1つ分の欠失・重複(血液・頬粘膜の検体)と、2つ以上続くエクソンの欠失・重複(血液の検体のみ)を見つけられます。エクソン1つだけの欠失・重複は、見つかることもありますが、ふだんは見つけられません。見つかった欠失・重複は、qPCR法やMLPA法など別の原理の方法でもう一度確かめてから報告します。
よく似た配列(偽遺伝子など)があると、読み取りがじゃまされることがあります。転座・逆位などの構造の変化は、この検査では見つけられません。
5. 調べる181遺伝子と、それぞれの遺伝子でわかる病気
この検査では、精子をつくる・形を整える・動かす・運ぶ、そして精子をつくる指令を出すホルモンや精巣の発生に関わる181遺伝子を調べます。遺伝子ごとの病名と遺伝のしかたは、OMIM(遺伝性疾患のデータベース)に登録されている情報にもとづいて整理しました。病名の中の「精子形成障害〇型」は、OMIMで「Spermatogenic failure」として登録されている型です。
🧬 ⑥ホルモンの指令(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症・カルマン症候群・下垂体)
※SOX3遺伝子は、3塩基の繰り返しの伸長は評価していません。「研究中」とした遺伝子は、男性不妊との関係が報告されているものの、OMIMにまだ病名が登録されていない遺伝子です。遺伝のしかたは、病名ごとのOMIMの登録にもとづきます。
6. 病的変異が見つかったら、次にできること
原因の遺伝子がわかると、精子を得られる見込み、治療の選び方、お子さんへの伝わり方、ご家族の検査まで、次に考えることが具体的になります。ここでは、読む方の立場ごとに整理します。当院は不妊治療・体外受精・顕微授精・精巣内精子採取術(TESE)・着床前検査(PGT)を行っていません。当院でできるのは、遺伝カウンセリング・遺伝子検査・出生前診断です。治療は不妊治療の医療機関で受けていただきます。
① ご本人:治療の選び方が変わる
- ●ホルモンの指令の病気(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症):ホルモン治療で精子ができる見込みがあります。メタ解析では、ゴナドトロピン療法で75%、GnRH療法で75%の男性に精子ができました[4]。
- ●非閉塞性無精子症:精巣から精子を探す手術(TESE)を考えます。メタ解析では、1回の手術で精子が回収できた割合は47%でした。従来法(cTESE)と顕微鏡を使う方法(micro-TESE)の比較では、どちらも46%で差はみられませんでした[7]。一方、米国の診療ガイドラインは、非閉塞性無精子症の精子回収ではmicro-TESEを行うよう勧めています[1]。
- ●Y染色体微小欠失がわかっている場合(別の検査):AZFa・AZFbの完全な欠失では、TESEで精子が得られた報告がありません。AZFcの欠失では約50%で精子が得られると報告されています(研究によって15〜71%)[5][1]。これらは集団の数字で、個人の見込みは診察と検査の結果で変わります。
- ●精子の形・動きの異常:原因がわかると、顕微授精を選ぶ根拠や、受精のときに追加の処置を考える手がかりになります。どの方法を選ぶかは、不妊治療の医療機関でご相談ください。
② お子さんへの影響:男の子に伝わるか、パートナーの検査が必要か
Y染色体微小欠失は、顕微授精で生まれた男の子に必ず受け継がれます[5]。このパネルで見つかる遺伝子の変化も、遺伝のしかたによってお子さんへの伝わり方が違います。
- ●常染色体潜性(劣性)遺伝:ご本人が2つの病的変異をもつ場合、お子さんには父親から病的変異が必ず1つ伝わります。パートナーが同じ遺伝子の病的変異をもたなければ、お子さんは原則として保因者になります。パートナーも病的変異をもつ場合は、お子さんが発症する可能性があります。
- ●常染色体顕性(優性)遺伝:お子さん1人あたり2分の1の確率で、同じ変化を受け継ぎます。
- ●X連鎖:男性のX染色体は娘さんにだけ伝わるため、父親がもつ病的変異は娘さん全員に伝わり、息子さんには伝わりません。娘さんが保因者となるか、症状が現れるかは疾患によって異なります。
- ●Y連鎖:息子さんには必ず伝わり、娘さんには伝わりません。
CFTRに変化がある男性や精管がない男性では、パートナーの遺伝学的な評価が勧められています[1]。CFTRは当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の対象遺伝子です。男性版は男性版714遺伝子です。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります。
③ 子どもを持つときの選択肢
原因の遺伝子の変化がわかっていると、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べることができます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針をふまえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください(羊水検査・絨毛検査)。
このパネルの遺伝子のうちFGFR1・CHD7・SOX9は、当院のNIPTのダイヤモンドプラン・インペリアルプランの対象遺伝子にも入っています。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。ご家族でわかっている変化をNIPTでどう扱えるかは、遺伝カウンセリングでご説明します。
日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-M(着床前遺伝学的検査)が行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へのコラムで解説しています。精子提供や養子縁組、何もしないでそのまま進むことも、同じように選べる選択肢です。どれを選ぶかは、ご夫婦の考えで決めてよいことです。
④ ご家族:兄弟・お父さんの検査
ご本人の原因がわかると、兄弟やお父さんなどの血縁者は、同じ場所だけを調べて、同じ変化をもっているかを確かめられます。症状のないご家族の検査は、ご本人の同意のもとで行います。無精子症の総説は、遺伝カウンセリングを女性の血縁者にも広げることを勧めています[3]。たとえばX連鎖の変化なら、姉妹が保因者で、その息子さんに伝わる可能性があるためです。
⑤ 当院でのその後
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果の意味、治療の選び方で不妊治療の医療機関に伝えること、パートナーやご家族の検査、妊娠したときの出生前診断まで、次にどうするかを一緒に考えます。
⚠️ 不妊治療は不妊治療の医療機関で
当院は体外受精・顕微授精・人工授精・精巣内精子採取術(TESE)・着床前検査(PGT)を行っていません。当院の遺伝子検査の結果と報告書は、不妊治療の医療機関での治療方針を考えるときにお役立てください。
7. 陰性・VUS(意義がまだわからない変化)のとき
この検査で原因が見つからなくても、遺伝の原因が否定されたわけではありません。染色体やY染色体微小欠失など、この検査で調べていない原因がある可能性や、まだわかっていない遺伝子が関わっている可能性があります。精索静脈瘤やホルモンの病気など、遺伝以外の原因も考えます。
- ●陰性のとき:染色体検査・Y染色体微小欠失の検査をまだ受けていなければ、それを考えます。症状が広い場合は全エクソーム検査(WES)も選択肢です。
- ●VUSのとき:病気の原因かどうかまだ判断できない変化です。VUSだけで診断したり、ご家族の検査に使ったりはしません(VUSの臨床的な扱い)。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。
- ●調べた目的と別の病気の手がかりが見つかったとき:当院の二次的所見の開示方針にもとづいてご説明します。
8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜で、どの検体でもオンライン診療で受けられます。
ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取お支払い後にキット
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質を保つため、ご自身の判断で先に検体を採取しないでください。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご夫婦やご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
9. 院長コラム
🩺 院長コラム【「原因不明」で止まらず、次の一手を決めるために】
男性不妊は、ご本人がひとりで抱え込みやすいテーマだと感じています。けれども、原因がわかる型では、ホルモン治療で精子ができる可能性や、手術で精子を探すかを検討する際の判断材料、生まれてくるお子さんへの遺伝的な影響など、次の選択を考える手がかりが得られます。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります(遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由)。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。知ったうえで子どもを持つかどうか、どんな方法を選ぶかを決められるよう、検査・遺伝カウンセリング・出生前診断まで、当院で続けて支えます。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 男性不妊の原因でいちばん多いのは何ですか?
男性不妊の原因はさまざまで、系統的レビューでは60〜70%が原因不明とされています。遺伝の原因としては、無精子症の男性の10〜12%にみられるクラインフェルター症候群や、原因不明の非閉塞性無精子症の5〜10%にみられるY染色体のAZF欠失がよく知られています。精子をつくる働きの問題か、精子の通り道の問題かによって、調べる検査が変わります。
Q2. 無精子症は遺伝しますか?子どもに伝わりますか?
原因によります。Y染色体微小欠失は、顕微授精で生まれた男の子に必ず受け継がれます。遺伝子の変化の場合は、常染色体潜性・常染色体顕性・X連鎖・Y連鎖のどれかによって、お子さんへの伝わり方が違います。原因がわかると、お子さんへの影響を具体的に考えられるようになります。
Q3. 男性不妊でも子どもを持てますか?
原因によって見込みは違います。ホルモンの指令の病気(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)では、ゴナドトロピン療法で75%の男性に精子ができたと報告されています。非閉塞性無精子症では、1回の手術で精子が回収できた割合は47%というメタ解析があります。どれも集団の数字で、個人の見込みは診察と検査で変わります。治療は不妊治療の医療機関で受けていただきます。
Q4. 染色体検査やY染色体微小欠失の検査とは何が違いますか?
染色体検査は染色体の数や大きな構造の異常(クラインフェルター症候群など)を、Y染色体微小欠失の検査はY染色体のAZF領域の欠失を調べます。この遺伝子パネル検査は、181遺伝子の中の小さな変化を調べる検査で、染色体の異常やY染色体微小欠失は調べられません。無精子症の方は、まず染色体検査とY染色体微小欠失の検査を受けるのが基本です。
Q5. 費用はいくらですか?保険は使えますか?
検査費用は税込330,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
Q6. 夫婦で一緒に検査を受けられますか?
受けられます。男性側に潜性遺伝の変化が見つかった場合は、パートナーが同じ遺伝子の変化をもつかを調べることが大切です。同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
Q7. 無精子症だと結婚に差し支えますか?
無精子症であることや、遺伝の原因があることで、結婚できない・すべきでないということはありません。原因がわかれば、治療の見込み、お子さんへの伝わり方、パートナーの検査など、ご夫婦で考えるための材料がそろいます。知ったうえで、どのように子どもを持つか、持たないかを選ぶことができます。
Q8. このパネルに入っていない遺伝子も調べられますか?
調べられます。このパネルに入っていない遺伝子も、追加して調べることができます。遺伝カウンセリングのときにご相談ください。
🧬 一度の検査で、ご夫婦のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。男性不妊の原因がわかれば、治療の選び方だけでなく、パートナーの検査や、生まれてくるお子さんへの影響まで考える手がかりになります。当院では、臨床遺伝専門医による検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
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- [4] Rastrelli G, Corona G, Mannucci E, Maggi M. Factors affecting spermatogenesis upon gonadotropin-replacement therapy: a meta-analytic study. Andrology. 2014;2(6):794-808. [DOI: 10.1111/andr.262]
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