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男性不妊症の遺伝子検査|無精子症・乏精子症・精子無力症の原因を181遺伝子で調べる

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

男性不妊症の遺伝子検査

男性不妊症の遺伝子検査(NGSパネル)は、無精子症・乏精子症・精子無力症などの原因になる181の遺伝子を一度に調べる検査です。男性不妊の多くは、遺伝子1つで原因が決まるものではありません。それでも、遺伝子の原因がわかる型では、ホルモン治療で精子ができる可能性や、精巣から精子を取り出す手術を検討する際の判断材料、生まれてくるお子さんへの遺伝的な影響など、次の選択を考える手がかりになります。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。このページでは、この検査でわかること・わからないこと、結果が出たあとにできることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. 男性不妊の遺伝子検査で何がわかりますか?

精子をつくる・運ぶ・動かすしくみや、精子をつくる指令を出すホルモンに関わる181遺伝子に、病気の原因となる変化があるかを調べます。染色体の数の異常(クラインフェルター症候群)とY染色体微小欠失は、この検査では調べられません。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

無精子症・乏精子症・精子無力症・奇形精子症で原因がわからない方、思春期の遅れや嗅覚の低下がある方、精管がない(精管欠損)と言われた方、慢性副鼻腔炎など線毛の病気の症状がある方、ご家族に男性不妊の方がいる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜で、オンライン診療でも受けられます。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。治療の選び方、パートナーの検査、お子さんへの伝わり方、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。不妊治療そのものは、不妊治療の医療機関で受けていただきます。

\ 原因がわかれば、次の一手が決まります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 男女の不妊症遺伝子検査を比べたい方へ | どの検査がよいか迷う方へ

1. 男性不妊の遺伝子検査とは:181遺伝子で「精子をつくる・運ぶ・動かす」しくみを調べる

男性不妊の遺伝子検査は、精子の数・形・動きや、精子をつくる指令を出すホルモンに関わる遺伝子に、病気の原因となる変化がないかを調べる検査です。ただし、男性不妊の多くは遺伝子1つで原因が決まるものではなく、この検査で全員の原因がわかるわけではありません。

米国泌尿器科学会と米国生殖医学会の診療ガイドライン(2020年・2024年改訂)によると、不妊に悩むカップルは約15%で、男性側の原因が単独で関わるのは約20%、さらに30〜40%では男性側の原因も関わっています[1]。男性不妊は、男女どちらか一方の問題ではなく、ご夫婦で向き合うことの多いテーマです。

男性不妊の原因を調べた系統的レビュー(2021年)では、男性不妊は世界の男性の少なくとも7%にみられます。一方で、遺伝の原因で診断がつくのは不妊男性の約4%にとどまり、60〜70%は原因がはっきりしないままとされています[2]。「遺伝子検査を受ければ必ず原因がわかる」わけではありません。それでも、原因がわかる型では、その後の治療の選び方や、お子さんへの影響が大きく変わります。だからこそ、どんな人が、どの順番で検査を受けるとよいかを知っておくことが大切です。

精子は、精巣の中で減数分裂を経てつくられ、頭・首・しっぽ(鞭毛)の形を整えて成熟します(くわしくは精子形成、配偶子形成と受精のしくみ)。この検査の181遺伝子は、この流れのどこかに関わる遺伝子です。

2. 男性不妊の原因と、遺伝子が関わる型

男性不妊の原因でよく知られる遺伝の要因は、染色体の数の異常(クラインフェルター症候群)、Y染色体微小欠失、そしてCFTRなど1つの遺伝子の変化です。このうち、この検査で調べられるのは「1つの遺伝子の変化」です。精液の検査結果やほかの症状によって、疑う原因が変わります。

無精子症(閉塞性・非閉塞性)と遺伝子

無精子症は、精液の中に精子が見つからない状態です。精子の通り道がふさがったり欠けたりしている「閉塞性」と、精巣で精子が十分につくられない「非閉塞性無精子症」に分けられます。

無精子症の遺伝の原因をまとめた総説(2021年)によると、クラインフェルター症候群は不妊男性の3〜4%、無精子症の男性の10〜12%にみられます。原因のわからない非閉塞性無精子症の5〜10%にはY染色体のAZF領域の完全な欠失があり、X染色体のTEX11遺伝子の変化は非閉塞性無精子症の1%を超えるとされています[3]。

閉塞性のうち、生まれつき両側の精管がない先天性両側精管欠損症(腎臓の異常を伴わないもの)では、75〜80%がCFTR遺伝子の変化によるとされています[3]。CFTRは嚢胞性線維症の原因遺伝子でもあります。

乏精子症・精子無力症・奇形精子症と遺伝子

精子の数が少ない乏精子症、動きが悪い精子無力症、形の異常が多い奇形精子症(くわしくは精子の奇形率・精子の運動率)にも、遺伝子の原因がわかっている型があります。たとえば、頭が丸く先体がない円頭精子症(DPY19L2など)、頭としっぽが離れてしまう断頭精子症(SUN5・PMFBP1など)、しっぽ(鞭毛)が短い・曲がるなど形の異常が重なるタイプ(DNAH1・CFAP43・CFAP44など)です。受精のときに卵子を活性化できないPLCZ1の変化も含まれます。

低ゴナドトロピン性性腺機能低下症・カルマン症候群:ホルモンで治療できる型

脳(視床下部・下垂体)から精巣への指令ホルモンが出ないために、精子がつくられない病気を低ゴナドトロピン性性腺機能低下症といいます。嗅覚の低下を伴うものがカルマン症候群です(X連鎖カルマン症候群・FGFR1によるカルマン症候群など)。総説(2021年)では、先天性の低ゴナドトロピン性性腺機能低下症では、遺伝子パネル検査で約50%に遺伝の診断がつくとされています[3]。

この型は、男性不妊の中でも治療の道がはっきりしている型です。ゴナドトロピン療法を受けた男性のメタ解析(2014年)では、75%で精子ができるようになったと報告されています[4]。

ほかの症状を伴う型(線毛の病気・症候群)

精子のしっぽと、気道の表面で異物を運ぶ線毛は、よく似たしくみで動いています。そのため、線毛がうまく動かない原発性線毛機能不全症(PCD)では、慢性副鼻腔炎や気管支拡張症とともに、精子の動きが悪くなることがあります(線毛の病気の総称はシリオパチー)。ほかにも、肥満・網膜の病気・多指症などを伴うバルデー・ビードル症候群、難聴や色素の異常を伴うワーデンブルグ症候群、CHARGE症候群、男性ホルモンの合成や働きの病気などでも、性腺の働きや精子の数に影響が出ることがあります。

男性不妊の原因・検査・治療の全体像は、男性不妊の原因・検査・治療を解説したコラムでもまとめています。

3. どんな人が受けるとよいか/別の検査が向く場合

無精子症・高度の乏精子症の方は、まず染色体検査とY染色体微小欠失の検査を受け、そのうえで原因がわからないときにこのパネル検査を考えるのが基本の順番です。思春期の遅れ・嗅覚の低下・精管欠損・線毛の病気の症状など、手がかりがある方は、はじめから遺伝子検査が役に立ちます。

米国の診療ガイドラインは、無精子症や精子濃度が1mLあたり500万未満で精巣の機能が落ちている所見がある男性には染色体検査を、無精子症や1mLあたり100万以下の男性にはY染色体微小欠失の検査を勧めています。精管がない男性や原因不明の閉塞性無精子症の男性にはCFTRの検査を、CFTRに変化がある男性や精管がない男性では、パートナーの遺伝学的な評価を勧めています[1]。欧州の指針では、Y染色体微小欠失を調べる精子濃度の目安は1mLあたり500万未満とされていますが、100万〜500万の間で議論が続いています[5]。

こんな方に向いています

  • ●原因がわからない無精子症・乏精子症(染色体検査・Y染色体微小欠失の検査で原因が見つからなかった方)
  • ●精子の動きや形の異常(精子無力症・奇形精子症・円頭精子症など)が強い方
  • ●思春期が来ない・遅い、嗅覚が弱いなど、ホルモンの指令の病気を疑う方
  • ●精管がない(精管欠損)と言われた方
  • ●慢性副鼻腔炎・気管支拡張症など、線毛の病気の症状がある方
  • ●ご家族(兄弟・父・おじなど)に男性不妊の方がいる方

見た目や精液の数値、家族歴だけでは、遺伝の原因があるかどうかは判断できません。迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。

症状・検査の結果から選ぶ:どの検査がよいか

🔍 症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
無精子症・精子濃度がとても低い(最初の検査) 染色体検査(Gバンド法)と、Y染色体微小欠失の検査(Y染色体の異常の解説)
上の検査で原因がわからない無精子症・乏精子症、精子の動きや形の異常 このページの男性不妊症遺伝子パネル検査(181遺伝子)
思春期が来ない・嗅覚が弱い カルマン症候群遺伝子検査・低ゴナドトロピン性性腺機能低下症関連遺伝子検査
ほかの下垂体ホルモンも足りない 複合下垂体ホルモン欠損症(CPHD)遺伝子検査
慢性副鼻腔炎・気管支拡張症・内臓逆位がある 原発性線毛機能不全症候群(PCD)遺伝子パネル検査
外性器の形の違い・尿道下裂・停留精巣 46,XY性分化疾患遺伝子検査・性分化疾患(DSD)遺伝子検査・先天性副腎過形成(CAH)パネル検査
肥満・網膜の病気・多指症を伴う バルデー・ビードル症候群遺伝子パネル検査
難聴・目や髪の色の違いを伴う ワーデンブルグ症候群遺伝子パネル検査
ご夫婦で一緒に調べたい 不妊症遺伝子検査(男女)・女性不妊症遺伝子パネル検査
症状が多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)

※検査の順番は、米国の診療ガイドライン[1]と欧州の指針[5]をふまえた臨床遺伝専門医の判断です。どの検査が合うかは、精液検査・ホルモン値・診察所見・ご家族の情報で変わります。

\ パートナーの検査まで、妊娠の前に考えられます /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

CFTRなど潜性遺伝の変化が見つかった場合、パートナーの保因者検査まで当院でご相談いただけます。海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。

お問い合わせはこちら | 保因者検査(拡大版保因者スクリーニング) | どの検査がよいか迷う方へ

4. この検査で調べられるもの・調べられないもの

この検査で調べられるのは、181遺伝子の中の小さな変化(1文字の変化や小さな欠失・挿入)と、遺伝子単位の大きな欠失・重複です。染色体の数・構造の異常(クラインフェルター症候群など)とY染色体微小欠失は調べられません。これらは男性不妊の遺伝の原因としてよく見つかるものなので、別の検査で先に調べておくことが大切です。

このパネルでは調べられないもの

  • ●染色体の数・構造の異常:クラインフェルター症候群(47,XXY)や転座などは、染色体検査(Gバンド法)で調べます。
  • ●Y染色体微小欠失(AZF欠失):Y染色体のAZFa・AZFb・AZFcという領域の欠失は、専用の検査で調べます(AZFc欠失の解説)。このパネルにはAZFa領域の遺伝子のひとつ(USP9Y)が入っていますが、AZF領域の欠失を調べる検査の代わりにはなりません。
  • ●リピート伸長:SOX3遺伝子の3塩基の繰り返しの伸長は評価していません。
  • ●そのほか:遺伝子の調節領域や、遺伝子の中の深い部分(エクソンから20塩基を超えて離れた場所)の変化、体の一部の細胞だけにある変化(モザイク)は、この検査では見つけにくい・見つけられないことがあります。

足りない遺伝子は、追加して調べられます

このパネルに入っていない遺伝子もあります。たとえば、原発性線毛機能不全症(PCD)の原因遺伝子の一つとして知られるDNAH5遺伝子[6]は、このパネルには入っていません(当院のPCD遺伝子パネル検査には入っています)。このパネルに入っていない遺伝子も、追加して調べることができます。遺伝カウンセリングのときにご相談ください。(カスタマイズ遺伝子パネル検査)

検査の技術的なくわしい説明(クリックで開く)

この検査は、次世代シーケンシング(NGS)という方法で、遺伝子のたんぱく質をつくる部分(エクソン)と、その境目(スプライス部位)を読みます。対象の領域の99%以上を読めることを品質の目安にしています。

読み取りの質が低かった変化は、サンガー法という別の方法で確かめます。欠失・重複の解析では、遺伝子1つ分の欠失・重複(血液・頬粘膜の検体)と、2つ以上続くエクソンの欠失・重複(血液の検体のみ)を見つけられます。エクソン1つだけの欠失・重複は、見つかることもありますが、ふだんは見つけられません。見つかった欠失・重複は、qPCR法やMLPA法など別の原理の方法でもう一度確かめてから報告します。

よく似た配列(偽遺伝子など)があると、読み取りがじゃまされることがあります。転座・逆位などの構造の変化は、この検査では見つけられません。

5. 調べる181遺伝子と、それぞれの遺伝子でわかる病気

この検査では、精子をつくる・形を整える・動かす・運ぶ、そして精子をつくる指令を出すホルモンや精巣の発生に関わる181遺伝子を調べます。遺伝子ごとの病名と遺伝のしかたは、OMIM(遺伝性疾患のデータベース)に登録されている情報にもとづいて整理しました。病名の中の「精子形成障害〇型」は、OMIMで「Spermatogenic failure」として登録されている型です。

🧬 ①精子をつくる(減数分裂・精子形成)

遺伝子 関係する病気(OMIM) 遺伝のしかた
C14orf39 精子形成障害52型(非閉塞性無精子症)/早発卵巣不全18型 常染色体潜性(劣性)
CCDC155 精子形成障害88型(非閉塞性無精子症)/早発卵巣不全22型 常染色体潜性(劣性)
DMC1 男性不妊との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の登録なし) 研究中
DMRT1 精巣の発生との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の登録なし) 研究中
FANCM 精子形成障害28型(非閉塞性無精子症)/早発卵巣不全15型 常染色体潜性(劣性)
FBXO43 精子形成障害64型/卵子成熟障害12型 常染色体潜性(劣性)
HSF2 男性不妊との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の登録なし) 研究中
KLHL10 精子形成障害11型(乏精子症) 常染色体顕性(優性)
M1AP 精子形成障害48型(非閉塞性無精子症) 常染色体潜性(劣性)
MAGEB4 男性不妊との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の登録なし) 研究中
MEIOB 精子形成障害22型(非閉塞性無精子症)/早発卵巣不全23型 常染色体潜性(劣性)
MSH4 精子形成障害2型(非閉塞性無精子症)/早発卵巣不全20型 常染色体潜性(劣性)
MSH5 精子形成障害74型(非閉塞性無精子症)/早発卵巣不全13型 常染色体潜性(劣性)
NANOS1 精子形成障害12型(乏精子症〜無精子症) 常染色体顕性(優性)
NPAS2 男性不妊との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の登録なし) 研究中
NR5A1 精子形成障害8型/46,XY性分化疾患3型 常染色体顕性(優性)など
PIWIL1 男性不妊との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の登録なし) 研究中
PNLDC1 精子形成障害57型(非閉塞性無精子症) 常染色体潜性(劣性)
PPP2R3C 精子形成障害36型/性腺形成不全・網膜ジストロフィー・ミオパチー 常染色体顕性(優性)/常染色体潜性(劣性)
RHOXF1 男性不妊との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の登録なし) 研究中
SOHLH1 精子形成障害32型(非閉塞性無精子症)/卵巣形成不全5型 常染色体顕性(優性)/常染色体潜性(劣性)
SPINK2 精子形成障害29型(乏精子症〜無精子症) 常染色体潜性(劣性)
STAG3 精子形成障害61型/早発卵巣不全8型 常染色体潜性(劣性)
SYCE1 精子形成障害15型(非閉塞性無精子症)/早発卵巣不全12型 常染色体潜性(劣性)
SYCP2 精子形成障害1型 常染色体顕性(優性)
SYCP3 精子形成障害4型(無精子症) 常染色体顕性(優性)
TAF4B 精子形成障害13型(乏精子症〜無精子症) 常染色体潜性(劣性)
TDRD9 精子形成障害30型(非閉塞性無精子症) 常染色体潜性(劣性)
TEX11 X連鎖精子形成障害2型(非閉塞性無精子症) X連鎖
TEX14 精子形成障害23型(非閉塞性無精子症) 常染色体潜性(劣性)
TEX15 精子形成障害25型(非閉塞性無精子症) 常染色体潜性(劣性)
USP26 X連鎖精子形成障害6型 X連鎖
USP9Y Y連鎖精子形成障害2型(AZFa領域の遺伝子) Y連鎖
ZMYND15 精子形成障害14型(非閉塞性無精子症) 常染色体潜性(劣性)

🧬 ②精子の頭の形・受精(奇形精子症)

遺伝子 関係する病気(OMIM) 遺伝のしかた
ACTL7A 精子形成障害86型(先体の異常による受精障害) 常染色体潜性(劣性)
ACTL9 精子形成障害53型(先体の異常による受精障害) 常染色体潜性(劣性)
AURKC 大頭・多鞭毛精子症 常染色体潜性(劣性)
BRDT 精子形成障害21型(断頭精子症) 常染色体潜性(劣性)
CEP112 精子形成障害44型(断頭精子症) 常染色体潜性(劣性)
DPY19L2 円頭精子症(精子形成障害9型) 常染色体潜性(劣性)
GALNTL5 精子の形の異常との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の登録なし) 研究中
PLCZ1 精子形成障害17型(卵子を活性化できない受精障害) 常染色体潜性(劣性)
PMFBP1 断頭精子症(精子形成障害31型) 常染色体潜性(劣性)
SPATA16 円頭精子症(精子形成障害6型) 常染色体潜性(劣性)
SUN5 断頭精子症(精子形成障害16型) 常染色体潜性(劣性)
TSGA10 精子形成障害26型(断頭精子症) 常染色体潜性(劣性)

🧬 ③精子の動き(鞭毛の異常・精子無力症)

遺伝子 関係する病気(OMIM) 遺伝のしかた
ADCY10 吸収性高カルシウム尿症のなりやすさ(精子無力症との関係も報告) 常染色体顕性(優性)
AK7 精子形成障害27型(鞭毛の多発形態異常) 常染色体潜性(劣性)
ARMC2 精子形成障害38型(鞭毛の多発形態異常) 常染色体潜性(劣性)
CATSPER1 精子形成障害7型(精子無力症) 常染色体潜性(劣性)
CATSPER2 感音難聴と男性不妊/精子形成障害7型 常染色体潜性(劣性)
CFAP43 精子形成障害19型(鞭毛の多発形態異常)/正常圧水頭症1型 常染色体潜性(劣性)/常染色体顕性(優性)
CFAP44 精子形成障害20型(鞭毛の多発形態異常) 常染色体潜性(劣性)
CFAP58 精子形成障害49型(鞭毛の多発形態異常) 常染色体潜性(劣性)
CFAP65 精子形成障害40型(鞭毛の多発形態異常) 常染色体潜性(劣性)
CFAP69 精子形成障害24型(鞭毛の多発形態異常) 常染色体潜性(劣性)
CFAP70 精子形成障害41型(精子無力症) 常染色体潜性(劣性)
DNAH1 精子形成障害18型(鞭毛の多発形態異常)/原発性線毛機能不全37型 常染色体潜性(劣性)
DNAH10 精子形成障害56型(鞭毛の多発形態異常) 常染色体潜性(劣性)
DNAH17 精子形成障害39型(鞭毛の多発形態異常) 常染色体潜性(劣性)
DNAH2 精子形成障害45型(鞭毛の多発形態異常) 常染色体潜性(劣性)
DNAH6 精子の動きとの関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の登録なし) 研究中
DNAH8 精子形成障害46型(鞭毛の多発形態異常) 常染色体潜性(劣性)
DZIP1 精子形成障害47型(鞭毛の多発形態異常)/粘液腫様僧帽弁逸脱3型 常染色体潜性(劣性)/常染色体顕性(優性)
FSIP2 精子形成障害34型(鞭毛の多発形態異常) 常染色体潜性(劣性)
MAATS1 精子形成障害51型(鞭毛の多発形態異常) 常染色体潜性(劣性)
QRICH2 精子形成障害35型(鞭毛の多発形態異常) 常染色体潜性(劣性)
SEPT12 精子形成障害10型(精子無力症・奇形精子症) 常染色体顕性(優性)
SLC26A8 精子形成障害3型(精子無力症) 常染色体顕性(優性)
SLC9A3 先天性ナトリウム下痢症8型(精子無力症との関係も報告) 常染色体潜性(劣性)
SPAG17 精子形成障害55型(鞭毛の多発形態異常) 常染色体潜性(劣性)
SPEF2 精子形成障害43型(鞭毛の多発形態異常) 常染色体潜性(劣性)
TTC21A 精子の鞭毛との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の登録なし) 研究中
TTC29 精子形成障害42型(鞭毛の多発形態異常) 常染色体潜性(劣性)
WDR66 精子形成障害33型(鞭毛の多発形態異常) 常染色体潜性(劣性)

🧬 ④線毛の病気(原発性線毛機能不全症)

遺伝子 関係する病気(OMIM) 遺伝のしかた
ARL2BP 網膜色素変性症(内臓逆位を伴うことがある) 常染色体潜性(劣性)
ARMC4 原発性線毛機能不全23型 常染色体潜性(劣性)
CCDC151 原発性線毛機能不全30型 常染色体潜性(劣性)
CCNO 原発性線毛機能不全29型 常染色体潜性(劣性)
DNAAF1 原発性線毛機能不全13型 常染色体潜性(劣性)
DNAH11 原発性線毛機能不全7型 常染色体潜性(劣性)
DNAI1 原発性線毛機能不全1型(カルタゲナー症候群) 常染色体潜性(劣性)
RSPH4A 原発性線毛機能不全11型 常染色体潜性(劣性)
TTC12 原発性線毛機能不全45型 常染色体潜性(劣性)

🧬 ⑤精子の通り道(精管の欠損)

遺伝子 関係する病気(OMIM) 遺伝のしかた
CFTR 先天性両側精管欠損症/嚢胞性線維症 常染色体潜性(劣性)
ADGRG2 X連鎖先天性両側精管欠損症 X連鎖

🧬 ⑥ホルモンの指令(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症・カルマン症候群・下垂体)

遺伝子 関係する病気(OMIM) 遺伝のしかた
ANOS1 X連鎖カルマン症候群(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症1型) X連鎖
FGFR1 カルマン症候群(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症2型)/ファイファー症候群など 常染色体顕性(優性)
PROKR2 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症3型(嗅覚の異常を伴うことがある) 常染色体顕性(優性)
PROK2 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症4型(嗅覚の異常を伴うことがある) 常染色体顕性(優性)
CHD7 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症5型/CHARGE症候群 常染色体顕性(優性)
FGF8 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症6型 常染色体顕性(優性)
GNRHR 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症7型(嗅覚の異常を伴わない) 常染色体潜性(劣性)
KISS1R 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症8型/中枢性思春期早発症 常染色体潜性(劣性)/常染色体顕性(優性)
NSMF 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症9型 常染色体顕性(優性)
TAC3 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症10型 常染色体潜性(劣性)
TACR3 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症11型 常染色体潜性(劣性)
GNRH1 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症12型 常染色体潜性(劣性)
KISS1 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症13型 常染色体潜性(劣性)
WDR11 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症14型 常染色体顕性(優性)
HS6ST1 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症15型 常染色体顕性(優性)
SEMA3A 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症16型 常染色体顕性(優性)
SPRY4 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症17型 常染色体顕性(優性)
IL17RD 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症18型 常染色体顕性(優性)/常染色体潜性(劣性)
DUSP6 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症19型 常染色体顕性(優性)
FGF17 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症20型 常染色体顕性(優性)
FLRT3 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症21型 常染色体顕性(優性)
FEZF1 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症22型 常染色体潜性(劣性)
LHB 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症23型 常染色体潜性(劣性)
FSHB 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症24型 常染色体潜性(劣性)
AXL 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症との関係を研究中の遺伝子 研究中
CCDC141 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症との関係を研究中の遺伝子 研究中
SRA1 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症との関係を研究中の遺伝子 研究中
SOX10 ワーデンブルグ症候群(2E型・4C型) 常染色体顕性(優性)
HESX1 中隔視神経形成異常症 常染色体顕性(優性)/常染色体潜性(劣性)
LHX3 感音難聴を伴う下垂体性低身長(複合下垂体ホルモン欠損) 常染色体潜性(劣性)
LHX4 複合下垂体ホルモン欠損症4型 常染色体顕性(優性)
POU1F1 複合下垂体ホルモン欠損症1型 常染色体顕性(優性)/常染色体潜性(劣性)
PROP1 複合下垂体ホルモン欠損症2型 常染色体潜性(劣性)
SOX2 症候性小眼球症3型 常染色体顕性(優性)
SOX3 X連鎖汎下垂体機能低下症(※リピート伸長は調べていません) X連鎖
LEP 先天性レプチン欠損症 常染色体潜性(劣性)
LEPR レプチン受容体欠損症 常染色体潜性(劣性)
PCSK1 プロホルモン変換酵素1/3欠損症 常染色体潜性(劣性)
DCAF17 ウッドハウス・サカティ症候群 常染色体潜性(劣性)
RNF216 小脳失調と低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(Gordon-Holmes症候群) 常染色体潜性(劣性)
PNPLA6 ブーシェ・ノイハウザー症候群など 常染色体潜性(劣性)
POLR3A 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を伴うことがある髄鞘形成不全性白質ジストロフィー7型 常染色体潜性(劣性)
CLPP ペロー症候群3型 常染色体潜性(劣性)
LARS2 ペロー症候群4型 常染色体潜性(劣性)
TWNK ペロー症候群5型・ミトコンドリアDNA枯渇症候群など 常染色体潜性(劣性)/常染色体顕性(優性)

🧬 ⑦男性ホルモンの合成と働き

遺伝子 関係する病気(OMIM) 遺伝のしかた
AR アンドロゲン不応症候群(不全型を含む)/球脊髄性筋萎縮症 X連鎖
AKR1C4 46,XY性分化疾患8型 常染色体潜性(劣性)
CYP11A1 P450scc欠損症(46,XY性腺形成不全を伴う先天性副腎不全) 常染色体潜性(劣性)
CYP11B1 11β-水酸化酵素欠損による先天性副腎過形成 常染色体潜性(劣性)
CYP17A1 17α-水酸化酵素欠損による先天性副腎過形成 常染色体潜性(劣性)
CYP19A1 アロマターゼ欠損症 常染色体潜性(劣性)
CYP21A2 21-水酸化酵素欠損症 常染色体潜性(劣性)
HSD17B3 17β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素3欠損症(46,XY性分化疾患) 常染色体潜性(劣性)
HSD3B2 3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素2欠損による先天性副腎過形成 常染色体潜性(劣性)
SRD5A2 5α-還元酵素2欠損症(会陰陰嚢型尿道下裂) 常染色体潜性(劣性)
LHCGR 高ゴナドトロピン性性腺機能低下症(ライディッヒ細胞低形成)/男性思春期早発症 常染色体潜性(劣性)/常染色体顕性(優性)
FSHR 卵巣形成不全1型/卵巣過剰刺激症候群(女性で知られる病気) 常染色体潜性(劣性)/常染色体顕性(優性)
NR0B1 X連鎖先天性副腎低形成症/性逆転(重複による) X連鎖

🧬 ⑧精巣の発生・性分化

遺伝子 関係する病気(OMIM) 遺伝のしかた
SRY 46,XY性分化疾患1型/46,XX精巣性性分化疾患の原因になることがある Y連鎖
SOX9 屈曲肢異形成症/46,XX精巣性性分化疾患2型/46,XY性分化疾患10型 常染色体顕性(優性)
DHH 46,XY性分化疾患7型(ミニファシクル神経障害を伴うことがある) 常染色体潜性(劣性)
CBX2 46,XY性分化疾患5型 常染色体潜性(劣性)
MAP3K1 46,XY性分化疾患6型 常染色体顕性(優性)
WT1 Denys-Drash症候群/Frasier症候群/ウィルムス腫瘍など 常染色体顕性(優性)
GATA4 精巣の異常(先天性心疾患を伴うことがある)/心房中隔欠損など 常染色体顕性(優性)
AMH ミュラー管遺残症候群 常染色体潜性(劣性)
AMHR2 ミュラー管遺残症候群 常染色体潜性(劣性)
MAMLD1 X連鎖尿道下裂2型 X連鎖
INSL3 停留精巣 常染色体顕性(優性)
RXFP2 精巣の下降との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病名の登録なし) 研究中
WNT4 ミュラー管無形成と高アンドロゲン血症など(卵巣分化のシグナル) 常染色体顕性(優性)/常染色体潜性(劣性)
RSPO1 掌蹠角化症・皮膚扁平上皮がんと46,XX精巣性性分化疾患 常染色体潜性(劣性)
ARX 外性器の異常を伴う脳梁欠損など X連鎖

🧬 ⑨ほかの症状を伴う病気(症候群)

遺伝子 関係する病気(OMIM) 遺伝のしかた
BBS1 バルデー・ビードル症候群1型 常染色体潜性(劣性)
BBS2 バルデー・ビードル症候群2型 常染色体潜性(劣性)
ARL6 バルデー・ビードル症候群3型/網膜色素変性症55型 常染色体潜性(劣性)
BBS4 バルデー・ビードル症候群4型 常染色体潜性(劣性)
BBS5 バルデー・ビードル症候群5型 常染色体潜性(劣性)
MKKS バルデー・ビードル症候群6型/マクージック・カウフマン症候群 常染色体潜性(劣性)
BBS7 バルデー・ビードル症候群7型 常染色体潜性(劣性)
TTC8 バルデー・ビードル症候群8型/網膜色素変性症51型 常染色体潜性(劣性)
BBS9 バルデー・ビードル症候群9型 常染色体潜性(劣性)
BBS10 バルデー・ビードル症候群10型 常染色体潜性(劣性)
TRIM32 バルデー・ビードル症候群11型/肢帯型筋ジストロフィー2H型 常染色体潜性(劣性)
BBS12 バルデー・ビードル症候群12型 常染色体潜性(劣性)
MKS1 バルデー・ビードル症候群13型/メッケル症候群1型 常染色体潜性(劣性)
CEP290 バルデー・ビードル症候群14型/ジュベール症候群5型など 常染色体潜性(劣性)
WDPCP バルデー・ビードル症候群15型 常染色体潜性(劣性)
SDCCAG8 バルデー・ビードル症候群16型/シニア・ローケン症候群7型 常染色体潜性(劣性)
TRIM37 マリブレー小人症(Mulibrey nanism) 常染色体潜性(劣性)
SLC29A3 H症候群(組織球症・リンパ節腫脹プラス症候群) 常染色体潜性(劣性)
PLK4 小頭症と網脈絡膜症2型 常染色体潜性(劣性)
HFE 遺伝性ヘモクロマトーシス1型 常染色体潜性(劣性)
FANCA ファンコニ貧血A型 常染色体潜性(劣性)
BCORL1 シュクラ・ヴァーノン症候群 X連鎖

※SOX3遺伝子は、3塩基の繰り返しの伸長は評価していません。「研究中」とした遺伝子は、男性不妊との関係が報告されているものの、OMIMにまだ病名が登録されていない遺伝子です。遺伝のしかたは、病名ごとのOMIMの登録にもとづきます。

6. 病的変異が見つかったら、次にできること

原因の遺伝子がわかると、精子を得られる見込み、治療の選び方、お子さんへの伝わり方、ご家族の検査まで、次に考えることが具体的になります。ここでは、読む方の立場ごとに整理します。当院は不妊治療・体外受精・顕微授精・精巣内精子採取術(TESE)・着床前検査(PGT)を行っていません。当院でできるのは、遺伝カウンセリング・遺伝子検査・出生前診断です。治療は不妊治療の医療機関で受けていただきます。

① ご本人:治療の選び方が変わる

  • ●ホルモンの指令の病気(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症):ホルモン治療で精子ができる見込みがあります。メタ解析では、ゴナドトロピン療法で75%、GnRH療法で75%の男性に精子ができました[4]。
  • ●非閉塞性無精子症:精巣から精子を探す手術(TESE)を考えます。メタ解析では、1回の手術で精子が回収できた割合は47%でした。従来法(cTESE)と顕微鏡を使う方法(micro-TESE)の比較では、どちらも46%で差はみられませんでした[7]。一方、米国の診療ガイドラインは、非閉塞性無精子症の精子回収ではmicro-TESEを行うよう勧めています[1]。
  • ●Y染色体微小欠失がわかっている場合(別の検査):AZFa・AZFbの完全な欠失では、TESEで精子が得られた報告がありません。AZFcの欠失では約50%で精子が得られると報告されています(研究によって15〜71%)[5][1]。これらは集団の数字で、個人の見込みは診察と検査の結果で変わります。
  • ●精子の形・動きの異常:原因がわかると、顕微授精を選ぶ根拠や、受精のときに追加の処置を考える手がかりになります。どの方法を選ぶかは、不妊治療の医療機関でご相談ください。

② お子さんへの影響:男の子に伝わるか、パートナーの検査が必要か

Y染色体微小欠失は、顕微授精で生まれた男の子に必ず受け継がれます[5]。このパネルで見つかる遺伝子の変化も、遺伝のしかたによってお子さんへの伝わり方が違います。

  • ●常染色体潜性(劣性)遺伝:ご本人が2つの病的変異をもつ場合、お子さんには父親から病的変異が必ず1つ伝わります。パートナーが同じ遺伝子の病的変異をもたなければ、お子さんは原則として保因者になります。パートナーも病的変異をもつ場合は、お子さんが発症する可能性があります。
  • ●常染色体顕性(優性)遺伝:お子さん1人あたり2分の1の確率で、同じ変化を受け継ぎます。
  • ●X連鎖:男性のX染色体は娘さんにだけ伝わるため、父親がもつ病的変異は娘さん全員に伝わり、息子さんには伝わりません。娘さんが保因者となるか、症状が現れるかは疾患によって異なります。
  • ●Y連鎖:息子さんには必ず伝わり、娘さんには伝わりません。

CFTRに変化がある男性や精管がない男性では、パートナーの遺伝学的な評価が勧められています[1]。CFTRは当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の対象遺伝子です。男性版は男性版714遺伝子です。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります。

③ 子どもを持つときの選択肢

原因の遺伝子の変化がわかっていると、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べることができます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針をふまえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください(羊水検査・絨毛検査)。

このパネルの遺伝子のうちFGFR1・CHD7・SOX9は、当院のNIPTのダイヤモンドプラン・インペリアルプランの対象遺伝子にも入っています。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。ご家族でわかっている変化をNIPTでどう扱えるかは、遺伝カウンセリングでご説明します。

日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-M(着床前遺伝学的検査)が行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へのコラムで解説しています。精子提供や養子縁組、何もしないでそのまま進むことも、同じように選べる選択肢です。どれを選ぶかは、ご夫婦の考えで決めてよいことです。

④ ご家族:兄弟・お父さんの検査

ご本人の原因がわかると、兄弟やお父さんなどの血縁者は、同じ場所だけを調べて、同じ変化をもっているかを確かめられます。症状のないご家族の検査は、ご本人の同意のもとで行います。無精子症の総説は、遺伝カウンセリングを女性の血縁者にも広げることを勧めています[3]。たとえばX連鎖の変化なら、姉妹が保因者で、その息子さんに伝わる可能性があるためです。

⑤ 当院でのその後

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果の意味、治療の選び方で不妊治療の医療機関に伝えること、パートナーやご家族の検査、妊娠したときの出生前診断まで、次にどうするかを一緒に考えます。

⚠️ 不妊治療は不妊治療の医療機関で

当院は体外受精・顕微授精・人工授精・精巣内精子採取術(TESE)・着床前検査(PGT)を行っていません。当院の遺伝子検査の結果と報告書は、不妊治療の医療機関での治療方針を考えるときにお役立てください。

7. 陰性・VUS(意義がまだわからない変化)のとき

この検査で原因が見つからなくても、遺伝の原因が否定されたわけではありません。染色体やY染色体微小欠失など、この検査で調べていない原因がある可能性や、まだわかっていない遺伝子が関わっている可能性があります。精索静脈瘤やホルモンの病気など、遺伝以外の原因も考えます。

  • ●陰性のとき:染色体検査・Y染色体微小欠失の検査をまだ受けていなければ、それを考えます。症状が広い場合は全エクソーム検査(WES)も選択肢です。
  • ●VUSのとき:病気の原因かどうかまだ判断できない変化です。VUSだけで診断したり、ご家族の検査に使ったりはしません(VUSの臨床的な扱い)。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。
  • ●調べた目的と別の病気の手がかりが見つかったとき:当院の二次的所見の開示方針にもとづいてご説明します。

8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜で、どの検体でもオンライン診療で受けられます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取お支払い後にキット
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間(至急オプションで約7日短くなります:55,000円)
調べ方 遺伝子の配列(シーケンス)と欠失・重複の解析(どちらも料金に含まれます)
VUSの除外 ご希望により、意義がまだわからない変化(VUS)を報告から除けます(無料)
検体 血液(EDTA管4mL×2本)、抽出DNA、頬粘膜、唾液
オンライン診療 唾液・口の内側の粘膜・血液のいずれでも受けられます。血液の場合は全国の提携医療機関で採血します

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質を保つため、ご自身の判断で先に検体を採取しないでください。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご夫婦やご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

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臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

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9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「原因不明」で止まらず、次の一手を決めるために】

男性不妊は、ご本人がひとりで抱え込みやすいテーマだと感じています。けれども、原因がわかる型では、ホルモン治療で精子ができる可能性や、手術で精子を探すかを検討する際の判断材料、生まれてくるお子さんへの遺伝的な影響など、次の選択を考える手がかりが得られます。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります(遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由)。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。知ったうえで子どもを持つかどうか、どんな方法を選ぶかを決められるよう、検査・遺伝カウンセリング・出生前診断まで、当院で続けて支えます。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 男性不妊の原因でいちばん多いのは何ですか?

男性不妊の原因はさまざまで、系統的レビューでは60〜70%が原因不明とされています。遺伝の原因としては、無精子症の男性の10〜12%にみられるクラインフェルター症候群や、原因不明の非閉塞性無精子症の5〜10%にみられるY染色体のAZF欠失がよく知られています。精子をつくる働きの問題か、精子の通り道の問題かによって、調べる検査が変わります。

Q2. 無精子症は遺伝しますか?子どもに伝わりますか?

原因によります。Y染色体微小欠失は、顕微授精で生まれた男の子に必ず受け継がれます。遺伝子の変化の場合は、常染色体潜性・常染色体顕性・X連鎖・Y連鎖のどれかによって、お子さんへの伝わり方が違います。原因がわかると、お子さんへの影響を具体的に考えられるようになります。

Q3. 男性不妊でも子どもを持てますか?

原因によって見込みは違います。ホルモンの指令の病気(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)では、ゴナドトロピン療法で75%の男性に精子ができたと報告されています。非閉塞性無精子症では、1回の手術で精子が回収できた割合は47%というメタ解析があります。どれも集団の数字で、個人の見込みは診察と検査で変わります。治療は不妊治療の医療機関で受けていただきます。

Q4. 染色体検査やY染色体微小欠失の検査とは何が違いますか?

染色体検査は染色体の数や大きな構造の異常(クラインフェルター症候群など)を、Y染色体微小欠失の検査はY染色体のAZF領域の欠失を調べます。この遺伝子パネル検査は、181遺伝子の中の小さな変化を調べる検査で、染色体の異常やY染色体微小欠失は調べられません。無精子症の方は、まず染色体検査とY染色体微小欠失の検査を受けるのが基本です。

Q5. 費用はいくらですか?保険は使えますか?

検査費用は税込330,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

Q6. 夫婦で一緒に検査を受けられますか?

受けられます。男性側に潜性遺伝の変化が見つかった場合は、パートナーが同じ遺伝子の変化をもつかを調べることが大切です。同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

Q7. 無精子症だと結婚に差し支えますか?

無精子症であることや、遺伝の原因があることで、結婚できない・すべきでないということはありません。原因がわかれば、治療の見込み、お子さんへの伝わり方、パートナーの検査など、ご夫婦で考えるための材料がそろいます。知ったうえで、どのように子どもを持つか、持たないかを選ぶことができます。

Q8. このパネルに入っていない遺伝子も調べられますか?

調べられます。このパネルに入っていない遺伝子も、追加して調べることができます。遺伝カウンセリングのときにご相談ください。

🧬 一度の検査で、ご夫婦のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。男性不妊の原因がわかれば、治療の選び方だけでなく、パートナーの検査や、生まれてくるお子さんへの影響まで考える手がかりになります。当院では、臨床遺伝専門医による検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Schlegel PN, Sigman M, Collura B, et al. Diagnosis and Treatment of Infertility in Men: AUA/ASRM Guideline (2020; amended 2024, Brannigan RE, Tanrikut C). American Urological Association. [AUA Guideline]
  • [2] Houston BJ, Riera-Escamilla A, Wyrwoll MJ, et al. A systematic review of the validated monogenic causes of human male infertility: 2020 update and a discussion of emerging gene–disease relationships. Hum Reprod Update. 2021;28(1):15-29. [DOI: 10.1093/humupd/dmab030](PMID: 34498060)
  • [3] Cioppi F, Rosta V, Krausz C. Genetics of Azoospermia. Int J Mol Sci. 2021;22(6):3264. [DOI: 10.3390/ijms22063264]
  • [4] Rastrelli G, Corona G, Mannucci E, Maggi M. Factors affecting spermatogenesis upon gonadotropin-replacement therapy: a meta-analytic study. Andrology. 2014;2(6):794-808. [DOI: 10.1111/andr.262]
  • [5] Krausz C, Navarro-Costa P, Wilke M, Tüttelmann F. EAA/EMQN best practice guidelines for molecular diagnosis of Y-chromosomal microdeletions: State of the art 2023. Andrology. 2024;12(3):487-504. [DOI: 10.1111/andr.13514]
  • [6] Dong M, Shi X, Zhou Y, et al. Genetic spectrum and genotype–phenotype correlations in DNAH5-mutated primary ciliary dyskinesia: a systematic review. Orphanet J Rare Dis. 2025;20:97. [DOI: 10.1186/s13023-025-03596-5](PMID: 40033371)
  • [7] Corona G, Minhas S, Giwercman A, et al. Sperm recovery and ICSI outcomes in men with non-obstructive azoospermia: a systematic review and meta-analysis. Hum Reprod Update. 2019. [DOI: 10.1093/humupd/dmz028]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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