クラインフェルター症候群とは【医師執筆】|症状や治療法について解説

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クラインフェルター症候群は、男児の性染色体異常の中で最も発頻度が高い疾患です。実際に診断されるケースは少なく、不妊治療の際に発覚することがほとんどです。それぐらい社会生活に支障のない先天疾患ですが、場合によっては言語療法やホルモン治療、成人後は不妊治療が必要になることもあります。

出生前診断を受けて、お腹の赤ちゃんがクラインフェルター症候群であることが分かったとき、どのような疾患か正しい知識を持っておきたいですよね。
このページでは、クラインフェルター症候群の症状や検査方法、治療方法、遺伝の有無について解説します。

クラインフェルター症候群とは

Kleinfelter

クラインフェルター症候群とは、男児に見られる性染色体異常です。

通常、男児の性染色体はXYですが、クラインフェルター症候群の男児の場合、性染色体がXXYやXXXYとなっており、通常よりもX染色体を多く持って生まれてきます。X染色体の数が多いほど、身体に出る症状や知的障害の程度が重くなる傾向にあります。

クラインフェルター症候群は、性染色体異常の中でも最も発生頻度が高く、男児の出生500例当たり約1例の割合で発生します。

しかし中には、診断を受けないまま通常の社会生活を送っている人もおり、実際に診断される症例は30~40%にとどまるというデータもあります。

つまり、それほど目立つ症状がない場合が多く、二次性徴を迎える時期に発達の遅れを感じて医療機関を受診するケースが多い先天疾患になります。

一方で、言葉の発達に遅れが出たり、知能がやや低いという傾向もみられます。

また、男性ホルモンの量が少ないため思春期に脇毛や陰毛が生えてこなかったり、女性のように胸がふくらんできたりする現象が起きる可能性があります。女性のような体型になる恐れもあるので早い段階から治療が必要です。

クラインフェルター症候群の原因

子どもの性染色体は精子の「X」か「Y」、卵子の「X」染色体を一本ずつ持ち寄って作られてます。
「XY」になれば男の子、「XX」になれば女の子が生まれます。クラインフェルター症候群の男児は「XXY」「XXXY」などの余分なX染色体を持っているということは前述したとおりです。この余分なX染色体は母親由来のものであることが多いといわれています。
これは、高齢化になどの原因で母親の卵子の中の性染色体の分離がうまくできなかったことで、子供に余分なX染色体が引き継がれてしまうためです。

また、父親の「XY」染色体の分離不全や、受精卵の細胞分裂の不全でも引きこされます。染色体異常全般にいえることですが、予防したくてもそれができない先天異常です。

 

クラインフェルター症候群の見た目・体型

クラインフェルター症候群

クラインフェルター症候群は、乳幼児期に目立つ症状はあまりないのが一般的です。そのため、出生前診断などを受けていない場合、疾患が発覚することはほとんどありません。
しかし、男児が思春期を迎えると、二次性徴が起こらないといった症状が現れます。他にも以下のような見た目や体型の特徴があります。

  • ・高身長
  • ・手足が長い
  • ・やせ型

クラインフェルター症候群の症状

  • ・睾丸のサイズが小さい
  • ・生殖器で精子が作られない
  • ・ひげや陰毛の量が少ない
  • ・胸が膨らむ(女性化乳房)
  • ・知能障害
  • ・言語発達の遅れ

睾丸のサイズが小さくなることで、男性の性機能に影響を及ぼすテストステロンが生成されず、男性らしい身体的な特徴が発達しないという症状が出ます。よって、ひげや陰毛の量が少なくなったり、胸が膨らんだりします。また、精巣の機能にも影響を及ぼし、無精子症を引き起こします。

しかし、上記の症状には個人差があり、クラインフェルター症候群の男児でも精巣が正常に発達し生殖機能に問題がない場合もあります

クラインフェルター症候群の予後と合併症

クラインフェルター症候群の男性の寿命は健康な男性と比較してほぼ変わりありません。しかし以下の病気になりやすいことが分かっています。

  • ・乳がん
  • ・非ホジキンリンパ腫
  • ・骨粗しょう症
  • ・自己免疫疾患
  • ・糖尿病

乳がんや非ホジキンリンパ腫といった悪性腫瘍になりやすい原因ははっきりとは分かっていませんが、その一因だと考えられているのが、体内のホルモンバランスの崩れです。X染色体を余分に持っていることがホルモンバランスに影響するといわれています。

また、睾丸が小さくなると、男性ホルモンの「テストステロン」の分泌が少なくなるため、そこから産生される女性ホルモン「エストロゲン」も少なく、骨密度が低くなる傾向があります。

糖尿病も男性ホルモンの分泌量と関係しています。男性ホルモンの分泌が少ないと代謝異常によって肥満を招き、血糖値が高くなるのです。

クラインフェルター症候群の治療やサポート

医師が患者に話し掛ける

根本的な治療はなく、発現している症状に対しての対症療法となります。
クラインフェルター症候群の男児には、言語能力が不十分なことや、二次性徴が発来しないといった症状がみられます。

言語能力の遅延に対しては小児期からの療育が必要になります。また、二次性徴が発来しないなどの症状に対しては、思春期から生涯にわたるテストステロン補充療法が有効です。

言語療法とは

クラインフェルター症候群の男児の知能レベルは正常もしくはやや低いことが一般的です。
多くの場合、言葉を発することなどに障害があります。

言語能力に障害がある場合には、言語療法が有効です。
言語療法では、言葉を発出したり理解したりするために、発音や聞き取りの訓練を行い、より円滑なコミュニケーションを促すための支援を行います。
言語療法を通して発達を促し、社会で自立した生活が送れるようするのがねらいです。

また、言語療法とあわせて家庭で工夫することも大切です。
家庭で「〇〇を持ってきて」などはっきりとした指示を子どもに行い理解力を高めたり、子どもがしたいことを表現させて一緒に行ったりするとよいでしょう。

社会性を高めるために、地域の親子交流教室などに積極的に通うことも有意義といえます。

テストステロン補充療法

クラインフェルター症候群の人で二次性徴が発来しない場合などは、テストステロン補充療法が有効です。
男性ホルモンのテストステロンが少ない場合は、2週間~4週間に1回テストステロンを注射します。

思春期におけるテストステロン療法により、男性らしい体つきとなり、骨粗しょう症の予防効果も期待できます。
クラインフェルター症候群で症状が認められる場合は、思春期から生涯にわたってテストステロン療法を受けることが推奨されています。
思春期以降にも治療を受け続けることで肥満予防にもなり、糖尿病のリスク減少も期待できます。

なお、テストステロン補充療法では精子の数を増やすことはできないため、男性側に原因のある不妊治療には効果がないことも覚えておきましょう。

また、テストステロン補充療法では、にきびやむくみ、前立腺の疾患や赤血球の増加などの副作用がみられることがあります。
治療中には定期的に心臓や腎臓、前立腺などの検査を行うことも重要です。

不妊治療

医師から説明を受ける男性患者

クラインフェルター症候群だと判明するきっかけのほとんどは不妊治療です。なかなか子供ができず、医療機関にかかったところ男性不妊であることが判明し、その原因はクラインフェルター症候群だったという例がたくさんあります。
クラインフェルターの患者さんの中には、余分なX染色体を持つ性染色体と正常な性染色体が混在している方もいます(モザイク型)。その場合は、現代の生殖医療によって、自然妊娠は難しくても、顕微鏡下の人工授精によりお子さんを持てることも少なくありません。

しかし、モザイク型ではない場合は無精子症となる場合が多く、人工授精を行うことが難しくなってしまいます。

以下に、精子が存在する場合に取られる生殖補助医療をご紹介いたします。

精子の採取

精液の中に、健康な人よりは少ないものの精子が確認できる人もいます。そういった場合は精子を採取し、顕微鏡下で人工授精させて母体の中でうまく着床すれば挙児することができます。

精巣内精子回収法

精液の中に精子が確認できなくても、精巣の中から採取することができます。針を刺したり、切開したりして精子を採取し人工授精させます。

クラインフェルター症候群は遺伝する?

クラインフェルター症候群の原因はX染色体が過剰であることです。余分なX染色体は母親由来とされていますが、これは遺伝ではなく、卵子の性染色体の分離不全が原因です。

また、クラインフェルター症候群の男性が子供を得た場合は、クラインフェルター症候群の遺伝子が受け継がれることがありますが、生殖体医療を行っている機関の報告によると、体外受精を行うために採取された精子の性染色体数は正常であることが多く、ほとんどが正常な数のX染色体を持ったお子さんが生まれたそうです。

クラインフェルター症候群の有名人

クラインフェルター症候群だと告白した有名人はいません。アメリカや日本では何人かの有名人がクラインフェルター症候群ではないかと疑いを持たれていますが、確かな証拠は一つもありません。医学的なエビデンスもないので噂に惑わされないようご注意ください。

クラインフェルター症候群の診断方法

お腹の中の赤ちゃんがクラインフェルター症候群かどうかは、出生前診断で検査することができます。妊娠15週目以降に受けられる羊水検査や、妊娠10~13週に受けられる絨毛検査で診断することができます。
また、近年受検者が増えている新型出生前診断NIPT)でも検査することができます。羊水検査や絨毛検査が、流産や早産の可能性がある母体や胎児に負担のかかる検査なのに対して、NIPTは採血で胎児の染色体を調べる安全な検査です(精度の高い検査ですが、診断を確定させるには羊水検査や絨毛検査を受ける必要があります)。
しかし性染色体を検査できるNIPTを実施している施設は限られています。NIPTを検討される際は、検査項目を確認し専門医や遺伝カウンセラーのカウンセリングを受けることをおすすめします。

まとめ

仲の良い夫婦

性染色体異常の中で最もよくみられるクラインフェルター症候群。
乳幼児期には症状がなく、疾患があることに気付かず、思春期になって目立った症状が現れて初めて気付くケースも珍しくありません。

疾患の早期発見のためには、出生前診断が有効です。
検査方法や費用、リクスなどを把握して、出生前診断を受けるかどうかを決断しましょう。

ミネルバクリニックでは、精度が高く、クラインフェルター症候群も調べられる豊富な検査項目のNIPTを提供しています。全国どこからでも、オンラインで専門医によるカウンセリングを受けていただくことができます。

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この記事の筆者:仲田洋美(医師)