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バルデー・ビードル症候群(ローレンス・ムーン・ビードル症候群)の遺伝子検査|原因16遺伝子と遺伝する確率

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

バルデー・ビードル症候群(ローレンス・ムーン・ビードル症候群)の遺伝子検査

バルデー・ビードル症候群(ローレンス・ムーン・ビードル症候群)は、子どものころからの肥満、夜盲から始まる視力の低下、手足の指が多い多指症、腎臓の病気などが組み合わさって起こる、遺伝性の病気です。目は眼科、腎臓は腎臓内科、体重は小児科と、症状ごとに別々の科で診られているうちは、1つの病気としてつながらないことがあります。このページの遺伝子検査は、原因になる16の遺伝子を一度に調べます。原因の遺伝子がわかると、腎臓・目・代謝を見張る予定が立ち、ご家族と次のお子さんのことも具体的に考えられるようになります。症状・寿命の見通し・遺伝する確率と、この検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. バルデー・ビードル症候群の遺伝子検査で何がわかりますか?

原因として知られる16の遺伝子(BBS1・BBS10・BBS2など)に、病気の原因になる変化があるかを一度に調べます。どの遺伝子が原因かで、腎臓の病気の起こりやすさなど見通しに違いがあることがわかっています。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

子どものころからの肥満に、多指症・夜盲や視力の低下(網膜色素変性症)・腎臓の病気のどれかが重なる方、ご家族にこの病気の方がいる方、きょうだいが保因者かどうか知りたい方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。潜性遺伝(劣性遺伝)の病気なので、ご両親がともに保因者なら、次のお子さんに同じ病気が起こる確率は4分の1です。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ ばらばらに見えた症状を、1つの病名でつなぐ /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 繊毛病の型が絞れない方へ(繊毛病パネル)

1. バルデー・ビードル症候群(ローレンス・ムーン・ビードル症候群)とは

バルデー・ビードル症候群は、網膜の病気・体の中心につく肥満・多指症・学習の困難・性腺や泌尿生殖器の異常・腎臓の病気などが組み合わさって起こる、常染色体潜性(劣性)遺伝の病気です[1]。英語の Bardet-Biedl syndrome の頭文字をとって、BBSとも呼ばれます。表記は「バルデービードル症候群」「バーデ・ビードル症候群」などいくつかあります。

遺伝性疾患の解説書GeneReviewsは、少なくとも26の遺伝子が原因になるとしています。どの遺伝子でも、両親から受け継いだ2本の遺伝子が両方とも働かなくなったときに起こります[1]。症状が出そろうのは成長してからのことが多く、幼いうちは診断の基準を満たさないこともあります[1]。

「ローレンス・ムーン・ビードル症候群」との違い

日本では、この病気が「ローレンス・ムーン・ビードル症候群」と呼ばれることが多い一方、世界的には、その名前は肥満を伴わない別の病気を指すとされています(小児慢性特定疾病情報センターの解説による。2026年10月時点で確認)。ネットや古い資料で「ローレンス・ムーン・ビードル症候群」と書かれていても、肥満・網膜の病気・多指症・腎臓の病気がそろっているなら、多くの場合、このページのバルデー・ビードル症候群のことを指しています。名前の違いで迷ったときは、症状の組み合わせと遺伝子検査の結果で確かめるのが確実です。

原因:細胞のアンテナ「一次繊毛」がうまく働かない

バルデー・ビードル症候群は、体のほとんどの細胞にある一次繊毛という小さな突起の働きが損なわれて起こる「繊毛病(シリオパチー)」の1つです。一次繊毛は、細胞の外からの信号を受け取るアンテナのような役目をしています。網膜で光を感じる細胞や腎臓の細胞など、体のいろいろな場所で使われているため、1つの遺伝子の変化で、目・腎臓・体重・指の形成など離れた場所に症状が出ます。

原因の遺伝子の多くは、繊毛の中で荷物を運ぶBBSome(ビービーソーム)というたんぱく質の複合体の部品か、その複合体を組み立てたり働きを調節したりするたんぱく質を作っています[2]。BBSomeを組み立てる手伝いをするシャペロニンに似たたんぱく質(MKKS・BBS10・BBS12)の遺伝子も、原因になります。繊毛の中の物の運び方は繊毛内輸送(IFT)のページで解説しています。

どれくらいの人がなる病気か

小児慢性特定疾病情報センターの解説では、欧米での発生頻度は出生1万4,000〜16万人に1人とされ、日本ではそれより少ないと推定されています(2026年10月時点で確認)。また、カナダのニューファンドランドではBBS1、インド洋のレユニオン島ではARL6、南アフリカではBBS10に、その地域の祖先から受け継がれた共通の変化(創始者変異)が知られています[1]。地域によって数字が大きく違うので、目安として受け取ってください。病気のしくみをさらに詳しく知りたい方は、バルデー・ビードル症候群 総論もご覧ください。このページでは、検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。

2. バルデー・ビードル症候群の症状と寿命の見通し

主な症状は、網膜の病気(94%)、体の中心につく肥満(89%)、軸後性多指症(79%)、学習・認知の困難(66%)、性腺・泌尿生殖器の異常(59%)、腎臓の病気(52%)です[1][2]。これは文献に報告された899人をまとめた解析の数字で、全員にすべての症状が出るわけではありません。

🩺 バルデー・ビードル症候群の主な症状と頻度

症状 頻度 気づかれ方
網膜の病気(錐体杆体ジストロフィー) 94% 10歳までに夜盲(暗いところで見えにくい)から始まることが多い
体の中心につく肥満 89% 1歳までに体重が増えはじめる
軸後性多指症 79% 生まれたときに手の小指側・足の小指側の指が多い
学習・認知の困難 66% 発達の遅れ(81%)として気づかれることが多い
性腺・泌尿生殖器の異常 59% 停留精巣・思春期の遅れ・生殖器の形の違いなど
腎臓の病気 52% 健診の尿検査・超音波・血圧で見つかることがある
そのほか 下の本文で解説 肝臓の病気(30%)、においの感じ方の低下、行動・心の問題(35%)、てんかん(9.6%)など

※頻度はGeneReviews[1]の表(Niederlovaらの899人の解析[2]にもとづく)による。

目:夜盲から始まる網膜の病気

目の症状は、10歳までに夜盲から始まり、周りが見えにくくなる視野の狭まり、色の見分けにくさ、視力の低下へと進むのがふつうです[1]。GeneReviewsは、10代から20代で、法律上の視覚障害の基準に当たる程度まで見えにくくなることが多いとしています[1]。網膜の電気的な反応を調べる網膜電図(ERG)は、5歳を過ぎるとはっきりした異常が出やすくなります[1]。網膜の病気だけが目立つ場合は、網膜色素変性症として診られていることもあります。

肥満:1歳までに始まり、食欲の調節が関わる

体の中心につく肥満は、1歳までに始まることが多いとされています[1]。この病気の肥満は、本人の努力不足ではなく病気の症状として考えます。食欲の調節に関わるメラノコルチン4受容体(MC4R遺伝子が作るたんぱく質)に働く治療薬が、この病気の肥満に対して臨床試験で確かめられています(第7章)[4]。

なお、ふつうの肥満は、たくさんの遺伝子と食事・運動などの生活習慣が少しずつ関わって起こるもので、遺伝子1つで決まるものではありません。子どもが太っているだけで、この病気を心配する必要はありません。子どものころからの肥満に、多指症・目・腎臓の症状が重なるときに、この病気を考えます。

多指症:手足の小指側に指が多い(軸後性多指症)

多指症は、手の小指側・足の小指側に余分な指がある「軸後性多指症」が典型です[1]。生まれたときにわかる症状です。ただし、多指症だけがある赤ちゃんの多くは、この病気ではありません。指が多いことだけで起こる多指症は後軸性多指症A1型・B型のページで解説しています。

腎臓:見通しを左右するいちばん大事な合併症

英国の専門外来で診ていた350人の解析では、慢性腎臓病が子どもの31%、大人の42%にあり、重い慢性腎臓病(ステージ4〜5)は子どもの6%、大人の8%でした[3]。同じ研究では、超音波検査を受けた人の51%に腎臓の形の異常が見つかり、大人の35%に高血圧がありました[3]。GeneReviewsは、腎臓の病気をこの病気の健康と命に関わる大きな原因としています[1]。

性腺・学習・そのほかの症状

男の子では停留精巣が9%、ホルモンの検査で性腺の働きの低下が19.5%にみられます。妊娠しにくいことは多いものの、男女とも自分の子どもをもった方がいます[1]。学習・認知の困難は66%に報告されていますが、知的障害の基準に当てはまるのは20〜25%だったという研究もあり[1]、程度には大きな幅があります。においの感じ方の低下、歯の問題、肝臓の病気、てんかん、行動や心の問題が起こることもあります[1]。

寿命・予後:腎臓を見張ることが大切

バルデー・ビードル症候群の寿命について、はっきりした数字を示した一次情報は見当たりません。GeneReviewsが健康と命に関わる大きな原因として挙げているのは腎臓の病気で[1]、だからこそ、診断がついたら腎臓の働き・血圧を定期的に確かめることが勧められています(第7章)。「寿命は〇歳」と一律に言える病気ではなく、原因の遺伝子と腎臓の状態によって見通しが変わります。

3. 遺伝のしかたと遺伝する確率

バルデー・ビードル症候群は常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに、病気になる確率が4分の1、症状のない保因者になる確率が2分の1、病気にも保因者にもならない確率が4分の1です[1]。

常染色体潜性(劣性)遺伝:ご両親は保因者

常染色体潜性遺伝では、対になった2本の遺伝子の両方に原因となる変化があるときに病気になります。同じ変化が2本にある場合も、それぞれ違う変化が1つずつある場合(複合ヘテロ接合)もあります。1本だけに変化がある人は保因者と呼ばれ、ふつうは症状がありません。そのため、ご両親もご親戚も症状がなく、家族歴がまったくないところに、お子さんが初めて診断されることがよくあります。

確率は、お子さん1人ごとに同じです。上のお子さんが病気だったから、次のお子さんは大丈夫、ということにはなりません。きょうだいの場合、症状のないきょうだいが保因者である確率は3分の2になります(病気になる組み合わせを除いた残りのうち、保因者が3つ中2つのため)。

2つ以上の遺伝子が関わる?(三対立遺伝子仮説)

一部の家族では、2つの遺伝子の変化が組み合わさって起こる(オリゴジェニック遺伝、三対立遺伝子仮説)という考え方が出されましたが、別の研究では否定されています。GeneReviewsは、遺伝子の欠失・重複やイントロンの変化が見つかるにつれて、ふつうの常染色体潜性遺伝を支持する根拠が増えているとし、症状の重さを変える遺伝子(修飾遺伝子)の臨床的な意味も議論が分かれるとしています[1]。遺伝カウンセリングでは、常染色体潜性遺伝として確率を考えるのが基本です。考え方の背景は二遺伝子遺伝・三遺伝子遺伝・オリゴジェニック遺伝のページで解説しています。

保因者かどうかを知るには:ご家族の結果がわかっているかで変わる

ご家族がすでに遺伝子検査を受けて原因の変化がわかっていれば、その結果が保因者検査を考えるうえで最も重要な手がかりになります[1]。患者さんご本人の検査は、ご本人の診断と健康管理のために行うもので、きょうだいなどご家族の将来のためだけに行うことはできません(ご本人が同意できない場合、代わりに同意するのはご本人の利益のためであることが前提になるため)。どの遺伝子のどの変化かがわかっていれば、きょうだいや親戚は、その変化だけを調べて保因者かどうかを確かめられます。パートナーが保因者かどうかは、拡大版保因者スクリーニングで調べられます。当院の女性版787遺伝子の一覧には、このページの16遺伝子のうちWDPCPを除く15遺伝子が入っています(2026年10月時点で一覧を確認)。

4. どんな人がこの検査を受けるとよいか

子どものころからの肥満、多指症、夜盲や視力の低下、腎臓の病気のうち、いくつかが重なる方に向く検査です。GeneReviewsは、主な症状4つ、または主な症状3つとほかの症状2つがあれば、症状からこの病気と診断できるという基準を紹介しています[1]。ただし、症状が出そろう前の小さなお子さんでは、基準を満たさないことも多く[1]、遺伝子検査で早く確かめる意味があります。

症状が重なっていて、原因を知りたい方

  • ●網膜色素変性症・錐体杆体ジストロフィーと言われ、肥満や多指症もある方
  • ●生まれたときに多指症があり、その後に肥満や発達の遅れが出てきたお子さん
  • ●子どものころからの肥満に、腎臓の形の異常・尿の異常・高血圧が見つかった方
  • ●症状からバルデー・ビードル症候群と言われたが、遺伝子では確かめていない方

目・腎臓・体重を別々の科で診てもらってきた方にとって、病名がつくことは、長い回り道を終わらせるきっかけになります。名前がつけば、見張るべき合併症と検査の予定、使える制度(第8章)が決まります。

多指症だけ・肥満だけのとき

多指症だけ、または肥満だけで、ほかの症状がない場合、この病気の可能性は高くありません。幼いころからの強い食欲と重い肥満が中心で、目や指の症状がない場合は、食欲の調節に関わる遺伝子(MC4R・POMC・レプチンの関係する遺伝子など)を広く調べる糖尿病・肥満の遺伝子検査のほうが向いています。赤ちゃんのころの哺乳の弱さのあとに食欲が強くなる場合は、プラダー・ウィリ症候群のメチル化解析を考えることもあります。

ご家族にこの病気の方がいる方・きょうだいの方

お子さんやきょうだいがバルデー・ビードル症候群と診断されている方は、ご家族がすでに遺伝子検査を受けて原因の変化がわかっていれば、その結果を手がかりに、ご自身が保因者かどうか、また次のお子さんの確率を考えられます(第3章)。きょうだいの方が将来、結婚や妊娠を考えるときにも、ご家族の変化がわかっていれば、ご自身とパートナーの検査を計画できます。

この検査より別の検査が向いている場合

似た症状をもつ繊毛病はほかにもあり、症状の組み合わせによって向く検査が変わります。比べる相手は、当院で受けられる検査の種類です。

🔍 症状・検査の結果から、どのパネルを選ぶか

こんなとき 向いている検査
肥満・網膜の病気・多指症・腎臓の病気が重なる このページの検査(バルデー・ビードル症候群 16遺伝子)
繊毛病らしいが、型をしぼれない 繊毛病パネル検査
MRIで小脳の形の異常(臼歯徴候)/胎児で脳瘤と腎臓の嚢胞 ジュベール・メッケル症候群の遺伝子パネル検査
子どものころからの腎臓の病気(ネフロン癆)と網膜の病気 シニア・ローケン症候群の遺伝子検査
腎臓の病気(ネフロン癆)が中心 ネフロン癆の遺伝子パネル検査
肝臓の線維化・脾臓が大きい(門脈圧亢進症) 先天性肝線維症の遺伝子検査
網膜の病気だけで、ほかの症状がない 網膜色素変性症の遺伝子検査
幼いころからの強い食欲と重い肥満が中心(多指症・目の症状はない) 糖尿病・肥満の遺伝子検査
症状が広く、病気をしぼれない/パネルで原因がわからなかった 全エクソーム検査(WES)

※似た病気として、網膜の病気・肥満・腎臓の病気が重なるが、多指症がなく、心筋症や難聴を伴うアルストローム症候群、多指症と生殖器の異常は重なるが、網膜の病気・肥満・発達の問題がないマキューシック・カウフマン症候群があります[1]。どの検査が合うかは、遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

\ 原因がわかれば、次のお子さんへの備えも具体的に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご夫婦とも保因者だった場合、妊娠したときの出生前診断(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。

お問い合わせはこちら | パートナーの保因者検査について

5. この検査で調べる16遺伝子と、関係する病気

この検査では、バルデー・ビードル症候群の原因として知られる16の遺伝子を、次世代シーケンサー(NGS)で一度に調べます。GeneReviewsがまとめた923人の集計で多い順に、BBS1(23.4%)、BBS10(14.5%)、BBS2(9.6%)が上位の3つで、いずれもこの検査に含まれています[1]。表の割合は、その集計でその遺伝子が原因だった人の割合です。

🧬 調べる16遺伝子と、それぞれで起こりうる病気

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた BBSの中の割合
BBS1 バルデー・ビードル症候群1型 常染色体潜性 23.4%
BBS2 バルデー・ビードル症候群2型 常染色体潜性 9.6%
ARL6(BBS3) バルデー・ビードル症候群3型、網膜色素変性症55型(関係はまだ確定していない) 常染色体潜性 5.1%
BBS4 バルデー・ビードル症候群4型 常染色体潜性 5.3%
BBS5 バルデー・ビードル症候群5型 常染色体潜性 3.7%
MKKS(BBS6) バルデー・ビードル症候群6型、マキューシック・カウフマン症候群 常染色体潜性 6.3%
BBS7 バルデー・ビードル症候群7型 常染色体潜性 4.2%
TTC8(BBS8) バルデー・ビードル症候群8型 常染色体潜性 2.0%
BBS9 バルデー・ビードル症候群9型 常染色体潜性 3.4%
BBS10 バルデー・ビードル症候群10型 常染色体潜性 14.5%
TRIM32(BBS11) バルデー・ビードル症候群11型(1家系の報告で、関係はまだ確定していない)、肢帯型筋ジストロフィーR8型 常染色体潜性 まれ(集計で1%以上の遺伝子に入っていない)
BBS12 バルデー・ビードル症候群12型 常染色体潜性 6.4%
MKS1(BBS13) バルデー・ビードル症候群13型、メッケル症候群1型、ジュベール症候群28型 常染色体潜性 1.0%
CEP290(BBS14) バルデー・ビードル症候群14型、ジュベール症候群5型、レーバー先天性黒内障10型、メッケル症候群4型、シニア・ローケン症候群6型 常染色体潜性 6.3%
WDPCP(BBS15) バルデー・ビードル症候群15型、先天性心疾患・舌の過誤腫・多合指症 常染色体潜性 まれ(集計で1%以上の遺伝子に入っていない)
SDCCAG8(BBS16) バルデー・ビードル症候群16型、シニア・ローケン症候群7型 常染色体潜性 4.3%

※対象遺伝子は当院の検査内容による。病気の名前と遺伝のしかたは、OMIMの病気番号を載せている英国Genomics England PanelAppの遺伝子情報で確認(2026年10月20日)。割合はGeneReviews[1]の923人の集計による。

原因の遺伝子で、見通しが変わる

どの遺伝子が原因かによって、症状の出方に違いがあることがわかっています[1][2]。文献に報告された患者さんをまとめた解析では、BBSomeの中心の部品(BBS2・BBS7・BBS9)の遺伝子が原因の人は、周辺の部品(BBS1・BBS4・TTC8)の人より、腎臓の病気が多い傾向がありました[2]。

  • ●BBS1:症状の数が少なめで、腎臓の異常や多指症が起こりにくい傾向[1]。英国の350人の研究でも、BBS10の人より慢性腎臓病が軽いか、ない人が多い結果でした[3]。
  • ●BBS10:腎臓の働きの低下が最も重い傾向[1]。
  • ●BBS2・BBS7・BBS9:腎臓の異常が起こりやすい傾向[1][2]。
  • ●BBS4:腎臓の異常は少なめで、早くからの重い肥満が目立つ傾向[1]。
  • ●ARL6:症状の数が最も少なめで、学習の困難や腎臓の病気が起こりにくい傾向[1]。
  • ●MKKS:生まれつきの心臓の病気や、泌尿生殖器の形の異常が起こりやすい傾向[1]。

また、英国の研究では、2つの変化がどちらもたんぱく質を途中で切ってしまう変化(短縮型)の人に比べ、どちらもアミノ酸が1つ変わる変化(ミスセンス)の人は、大人の慢性腎臓病が軽い傾向がありました[3]。これらは多くの人をまとめた傾向で、同じ遺伝子でも一人ひとりの経過は違います。それでも、原因の遺伝子と変化の種類がわかれば、どの合併症をとくに気をつけて見張るかを考える手がかりになります。

6. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、16の遺伝子の中の、病気の原因になる小さな変化(1文字の変化や、小さな挿入・欠失)と、遺伝子の大きな欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

🧪 この検査の調べ方

項目 内容
調べる場所 16遺伝子の、たんぱく質を作る部分(エクソン)と、その境目(スプライス部位)
読み取りの深さ 調べる場所の99%以上を、20回以上読み取る(読み取る回数が多いほど、見落としが減ります)
欠失・重複の解析 料金に含まれます。遺伝子1つ全体の欠失・重複(血液・頬の粘膜)と、隣り合う2つ以上のエクソンの欠失・重複(血液のみ)を調べます
確認のしかた 読み取りの質が低い変化は、別の方法(サンガー法)で確かめます。見つかった欠失・重複も、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します
  • ●調べていない遺伝子:GeneReviewsは少なくとも26の遺伝子を原因として挙げており[1]、この検査の16遺伝子に入っていない遺伝子が原因のこともあります。
  • ●見つけにくい変化:1つのエクソンだけの欠失・重複はふつうは検出できません。染色体の一部の入れかわり(転座・逆位)、繰り返し配列が長くなる変化、遺伝子の働きを調節する場所(プロモーター)や、エクソンから20塩基より離れたイントロンの奥の変化も、この検査では調べられません。
  • ●よく似た配列:遺伝子によく似た配列(偽遺伝子など)がある場所では、まれに判定が難しくなることがあります。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態や、腫瘍の組織の変化は、この検査の対象外です。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知識では判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、バルデー・ビードル症候群ではないとは言い切れません。症状にもとづく診断と、合併症の見張りは続けます。

7. 病的変異が見つかったら、次にできること

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。病気の原因となる変化(病的変異)が2本とも見つかり、バルデー・ビードル症候群と確定したときに、立場ごとにできることをまとめます。

① ご本人(症状がある方):見張る予定が決まる

病名が決まると、どの臓器を、いつ、どの検査で確かめればよいかがはっきりします。GeneReviewsは、次のような定期的な確認を勧めています[1]。検査や治療は、それぞれの専門の医療機関で受けていただきます。

📅 診断がついたあとに勧められている主な見張り

見張るところ 内容と頻度の目安
目 眼科で診察。異常がなくても年1回、または主治医の指示どおり
腎臓・血圧 腎臓の超音波、血液検査(シスタチンCを含む)、血圧(必要なら24時間の血圧測定)。異常がなければ年1回
代謝・ホルモン 脂質・空腹時血糖・HbA1cを4歳から年1回。甲状腺の働きを年1回。性腺のホルモンは必要に応じて13歳から年1回
体重 受診のたびに身長・体重・頭囲・腹囲を測る。カロリーをおさえ、単純な糖質を控えた食事と、見えにくさに合わせた有酸素運動
そのほか 1歳から6か月ごとの歯科、肝臓の超音波を年1回、最初に心臓の超音波と腹部の超音波、1〜2年ごとに遺伝の専門医の診察

※GeneReviews[1]の表による。実際の検査の予定は主治医とご相談ください。

肥満には、原因の病気に合わせた治療薬があります。セトメラノチドは、食欲を調節するメラノコルチン4受容体(MC4R)に働く注射薬です。バルデー・ビードル症候群とアルストローム症候群の方を対象にした第3相試験では、52週の治療で、12歳以上の方の32.3%が体重を10%以上減らし、その全員がバルデー・ビードル症候群の方でした。最も多い副作用は皮膚の色が濃くなることでした[4]。なお、はじめの14週間のプラセボ(偽薬)との比較では、体重の変化の差は統計的にははっきりしませんでした[4]。

💡 日本での承認の状況(2026年10月時点)

セトメラノチドは、米国・欧州・英国では、バルデー・ビードル症候群の体重管理に承認されています。日本では2026年8月に「イムシブリー®」として製造販売が承認されましたが、承認された病気は後天性視床下部性肥満で、バルデー・ビードル症候群は対象になっていません(製造販売元の発表による)。これから変わる可能性がありますので、最新の状況は主治医にご確認ください。当院は治療を行っていません。

網膜の病気は10代から20代で見えにくさが進むことが多いため[1]、早くわかれば、見えにくさに合わせた補助具や歩行の訓練、学校や仕事の準備を前もって進められます。

② 症状のない方・保因者だった方:パートナーの検査

ご家族の検査で保因者とわかった方は、ご自身が病気になることはふつうありません。お子さんがこの病気になるのは、パートナーも同じ遺伝子の保因者だったときで、その場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率です。そこで、パートナーが同じ遺伝子の変化をもっているかを調べることが次の一歩になります。パートナーの方は、当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)や男性版714遺伝子でも調べられます(男性版の対象遺伝子は一覧でご確認ください)。妊娠中の方は、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(単独では受けられません)。

③ 子どもを持つときの選択肢

ご夫婦それぞれの変化がわかっていれば、次の妊娠で赤ちゃんが同じ変化を2本受け継いでいるかを、妊娠中に調べられます。GeneReviewsも、ご家族の変化がわかっていれば、出生前検査や着床前の検査が可能としたうえで、それは個人の判断であるとしています[1]。

絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。当院の羊水検査・絨毛検査は院内で受けていただけます(2025年6月から産婦人科を併設)。

日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-M(着床前遺伝学的検査)が行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へのコラムで解説しています。もちろん、何も調べずに妊娠・出産することも、そのまま選べる選択肢です。どの選択も尊重します。

④ ご家族:きょうだい・親戚がピンポイントで調べられる

ご家族の中で原因の変化がわかると、きょうだいや親戚は、その変化だけを調べて、保因者かどうか、または病気かどうかを確かめられます。症状のないきょうだいでも、まだ幼くて症状が出そろっていない場合があるため、診断されたお子さんのきょうだいの扱いは遺伝カウンセリングでご相談ください。症状のない大人のご家族の検査は、ご本人の同意のもとで行います。

⑤ 当院でのその後

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、次にどうするかを一緒に考えます。結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

陰性だったとき・1本だけ見つかったとき

病的な変化が見つからなかった場合でも、この検査に入っていない遺伝子や、見つけにくい種類の変化が原因の可能性は残ります(第6章)。症状に合わせて、繊毛病パネル検査や全エクソーム検査(WES)を考えます。潜性遺伝の病気で変化が1本だけ見つかった場合は、保因者である可能性と、もう1本に見つけにくい変化がある可能性の両方を考えて、症状とあわせて判断します。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的と別の病気の原因が見つかったときの扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

8. 日本の制度(2026年10月時点)

バルデー・ビードル症候群は、小児慢性特定疾病の対象疾病です。小児慢性特定疾病情報センターでは、内分泌疾患群の「内分泌疾患を伴うその他の症候群」の中に「バルデー・ビードル症候群」として掲載されています(2026年10月時点で確認)。

医療費の助成を受けるには、制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。診断書を書いてもらうときにも、遺伝子検査で原因が確定していることが手がかりになります。

9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円で、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜のいずれでも受けられ、オンライン診療にも対応しています。この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取お支払い後にキット送付
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査内容 バルデー・ビードル症候群に関係する16遺伝子(ARL6、BBS1、BBS10、BBS12、BBS2、BBS4、BBS5、BBS7、BBS9、CEP290、MKKS、MKS1、SDCCAG8、TRIM32、TTC8、WDPCP)の塩基配列と欠失・挿入
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間(至急オプションで約7日短くなります)
オプション 至急:55,000円/VUS除外(意義がまだわからない変化を報告に載せない):無料
検体 血液(EDTA採血管4ml×2本)、抽出したDNA(3μg)、頬の内側の粘膜、唾液
オンライン診療 唾液・頬の粘膜・血液のいずれでも可能。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体を採るキットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質の検体を採っていただくため、キットが届く前にご自身で検体を採らないでください。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 一生変わらない遺伝子を一度知って、これからの見張りの予定に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

16遺伝子を一度に調べ、結果は2〜3週間。臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

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10. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【ばらばらの症状を、1つの病名でつなぐ意味】

バルデー・ビードル症候群は、目・腎臓・体重・指と、症状の出る場所が離れています。それぞれの科で丁寧に診てもらっていても、全体を1つの病気として見る人がいないと、診断までに時間がかかることがあります。私は、原因の遺伝子を確かめることの意味は、病名がつくことそのものより、その先の見張りの予定と、ご家族の計画が立てられることにあると考えています。とくにこの病気では、腎臓の状態が見通しを大きく左右し、原因の遺伝子によって腎臓の病気の起こりやすさに差があることもわかっています。

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。潜性遺伝の病気では、ご両親は症状のない保因者で、家族歴がないのがふつうです。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。次のお子さんを考えるご夫婦にも、きょうだいの将来を考えるご家族にも、保因者検査から出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. バルデー・ビードル症候群の原因は何ですか?

細胞のアンテナのような役目をする一次繊毛の働きに関わる遺伝子の変化が原因です。少なくとも26の遺伝子が知られており、どの遺伝子でも、両親から受け継いだ2本がどちらも働かなくなったときに起こります(常染色体潜性遺伝)。この検査では、そのうち16の遺伝子を一度に調べます。

Q2. ローレンス・ムーン・ビードル症候群とは違う病気ですか?

日本では、バルデー・ビードル症候群が「ローレンス・ムーン・ビードル症候群」と呼ばれることが多いのですが、世界的には、その名前は肥満を伴わない別の病気を指すとされています。肥満・網膜の病気・多指症・腎臓の病気がそろっている場合は、多くはバルデー・ビードル症候群のことです。症状の組み合わせと遺伝子検査で確かめます。

Q3. 寿命はどれくらいですか?

寿命について、はっきりした数字を示した一次情報は見当たりません。健康と命に関わる大きな原因は腎臓の病気とされ、英国の350人の研究では慢性腎臓病が子どもの31%、大人の42%にありました。原因の遺伝子によって腎臓の病気の起こりやすさが違うため、診断がついたら腎臓の働きと血圧を定期的に確かめることが大切です。

Q4. 多指症があると、ほかの障害もありますか?

多指症だけがある赤ちゃんの多くは、ほかの病気を伴いません。ただし、手足の小指側に指が多い多指症に、その後の肥満・夜盲や視力の低下・腎臓の病気・発達の遅れが重なる場合は、バルデー・ビードル症候群などの病気を考えます。多指症はこの病気の79%にみられます。

Q5. 遺伝する確率はどれくらいですか?

常染色体潜性遺伝なので、ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに病気になる確率は4分の1、症状のない保因者になる確率は2分の1です。患者さんご本人が原因遺伝子の2本ともに病的な変化をもち、パートナーも同じ遺伝子の保因者である場合、お子さんがこの病気になる確率は原則2分の1です。そのため、パートナーの保因者検査が手がかりになります。

Q6. 家族にバルデー・ビードル症候群の人がいます。結婚や妊娠の前にできることはありますか?

あります。ご家族がすでに遺伝子検査を受けて原因の変化がわかっていれば、ご自身がその変化をもっているか(保因者か)を、その変化だけを調べて確かめられます。ご家族の原因がまだわかっていない場合も、症状のないご自身の検査について相談できます。保因者だった場合は、パートナーが同じ遺伝子の保因者かを調べます。ご夫婦とも保因者だった場合も、妊娠したときに絨毛検査・羊水検査で赤ちゃんを調べることができます。知ったうえで、どうするかを選べます。

Q7. 肥満の治療薬はありますか?

メラノコルチン4受容体(MC4R)に働くセトメラノチドという注射薬があり、米国・欧州・英国ではバルデー・ビードル症候群の体重管理に承認されています。日本では2026年8月に承認されましたが、対象は後天性視床下部性肥満で、バルデー・ビードル症候群は対象になっていません(2026年10月時点)。最新の状況は主治医にご確認ください。

Q8. 検査で原因が見つからなかったら、この病気ではないのですか?

そうとは言い切れません。この病気の原因として知られる遺伝子は少なくとも26あり、この検査の16遺伝子に入っていない遺伝子や、見つけにくい種類の変化が原因のこともあります。症状にもとづく診断と合併症の見張りは続け、必要に応じて繊毛病パネル検査や全エクソーム検査を考えます。

🧬 一度の検査で、ご本人の見張りとご家族の計画を

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。バルデー・ビードル症候群の原因の遺伝子がわかれば、腎臓・目・代謝を見張る予定が立ち、きょうだいの保因者検査や、次のお子さんのための出生前診断まで具体的に考えられます。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Forsyth R, Gunay-Aygun M. Bardet-Biedl Syndrome Overview. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2003 (Updated 2023 Mar 23). [NCBI Bookshelf NBK1363]
  • [2] Niederlova V, Modrak M, Tsyklauri O, et al. Meta-analysis of genotype-phenotype associations in Bardet-Biedl syndrome uncovers differences among causative genes. Hum Mutat. 2019;40(11):2068-2087. [DOI: 10.1002/humu.23862](PMID: 31283077)
  • [3] Forsythe E, Sparks K, Best S, et al. Risk factors for severe renal disease in Bardet-Biedl syndrome. J Am Soc Nephrol. 2017;28(3):963-970. [DOI: 10.1681/ASN.2015091029]
  • [4] Haqq AM, Chung WK, Dollfus H, et al. Efficacy and safety of setmelanotide, a melanocortin-4 receptor agonist, in patients with Bardet-Biedl syndrome and Alström syndrome: a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial with an open-label period. Lancet Diabetes Endocrinol. 2022;10(12):859-868. [DOI: 10.1016/S2213-8587(22)00277-7](PMID: 36356613)

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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