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ジュベール症候群・メッケル症候群の遺伝子検査(43遺伝子パネル)|原因・遺伝する確率・寿命と合併症の見張り

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

ジュベール症候群・メッケル症候群の遺伝子検査(43遺伝子パネル)

ジュベール症候群は、MRIで「臼歯徴候(モラー・トゥース・サイン)」と呼ばれる小脳と脳幹の形の変化が見つかる、生まれつきの病気です。メッケル症候群は、同じ「一次繊毛」の遺伝子が原因で起こる、胎児期に見つかることの多い重い型です。このページの遺伝子パネル検査は、2つの病気の原因として知られる43の遺伝子をまとめて調べます。原因の遺伝子がわかると、次のお子さんで同じ病気が起こる確率と、妊娠したときの備え方が具体的に決まります。また、遺伝子によって腎臓・肝臓・目の合併症の起こりやすさが違うため、何をいつ調べればよいかの見張りの予定も立てやすくなります。症状・寿命を左右する合併症・遺伝する確率と、この検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

ジュベール症候群・メッケル症候群の原因として知られる43遺伝子に、病気の原因となる変化があるかを一度に調べます。原因の遺伝子がわかると、病名が確定し、遺伝子ごとに起こりやすい腎臓・肝臓・目の合併症への備えが立てやすくなります。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

MRIで臼歯徴候・小脳虫部の低形成を言われたお子さん、妊娠中の超音波で脳瘤・腎臓の嚢胞・多指を指摘された方や、前のお子さんがジュベール症候群・メッケル症候群だったご両親です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療にも対応しています。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。ご両親とも保因者と確かめられれば、次のお子さんで同じ病気が起こる確率は4分の1です。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いや、出生前診断の計画もご説明します。

\ 原因がわかれば、次のお子さんへの備え方が決まります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 繊毛病の型がしぼれない方へ(繊毛病パネル)

1. ジュベール症候群・メッケル症候群とは:同じ遺伝子の病気の幅

ジュベール症候群とメッケル症候群は、どちらも細胞のアンテナにあたる「一次繊毛」がうまく働かないことで起こる、生まれつきの病気です。同じ遺伝子の変化が、比較的軽いジュベール症候群にも、胎児期に見つかる重いメッケル症候群にもなりうるため、1つの検査でまとめて調べます。英語ではJoubert syndrome(JS)、Meckel syndrome(Meckel-Gruber syndrome、MKS)と呼ばれます。

ジュベール症候群とは:MRIの臼歯徴候と小脳虫部の低形成

ジュベール症候群は、頭部MRIで臼歯徴候(molar tooth sign)が見つかることで診断される病気です。臼歯徴候とは、小脳の真ん中の部分(小脳虫部)が小さい「小脳虫部低形成」と、脳幹の形の変化が組み合わさり、断面が奥歯(臼歯)のように見える所見です。遺伝性疾患の解説書GeneReviews(2026年2月改訂)では、赤ちゃんのころに筋緊張の低下(体がやわらかい)、呼吸の乱れ、目の動きの異常で気づかれることが多いとされています[1]。

以前は、腎臓・肝臓・目などの合併症を伴うものを「ジュベール症候群関連疾患(JSRD)」と呼び分けていましたが、今は合併症の有無にかかわらず、まとめて「ジュベール症候群」と呼ぶようになっています[1]。日本の指定難病の名前は、今も「ジュベール症候群関連疾患」です(第8章)。日本で報告された有馬症候群も、この病気のグループに含まれます。

メッケル症候群とは:胎児期に見つかることの多い重い型

メッケル症候群(メッケル・グルーバー症候群)は、後頭部の脳瘤(頭の骨のすき間から脳の一部が外に出ている状態)、両側の腎臓が大きくなって多数の嚢胞ができる変化、肝臓の線維化を特徴とする病気です。手足の小指側の指が多い「多指」も70〜80%でみられます[2]。2017年の総説によると、生まれる赤ちゃん約13万5,000人に1人の病気で、多くは子宮の中か生まれてすぐに亡くなり、その主な原因は肺が十分に育たないことです[2]。

なお、「メッケル」の名前がつく病気には、腸の一部が袋状に残る「メッケル憩室」がありますが、メッケル症候群とはまったく別の病気です。また、名前が似ている「セッケル症候群」も別の病気で、原因の遺伝子が違います。セッケル症候群を調べる検査は原発性低身長症(原発性小人症)NGS遺伝子パネル検査でご案内しています。

2つは同じ遺伝子が原因になる「病気の幅」

TMEM67・RPGRIP1L・TMEM216・CEP290などの遺伝子は、ジュベール症候群の原因にも、メッケル症候群の原因にもなります[2]。同じ遺伝子でも、変化の種類や組み合わせによって症状の重さが大きく違うため、どちらの病気かを遺伝子だけで決めることはできません。そのため、胎児期に重い所見が見つかった場合も、お子さんがジュベール症候群と言われた場合も、同じ43遺伝子をまとめて調べることに意味があります。

💡 用語解説:一次繊毛(いちじせんもう)

体のほとんどの細胞の表面に1本ずつ生えている、細い毛のような構造です。周りからの信号を受け取るアンテナの役割をもち、脳・腎臓・肝臓・目(網膜)・手足の指などがつくられるときに大切な働きをします。一次繊毛の働きが損なわれて起こる病気をまとめてシリオパチー(繊毛病)と呼びます。くわしくは一次繊毛のページで解説しています。

どれくらいの人がなる病気か(日本の数字)

小児慢性特定疾病情報センターの解説(2014年版)では、ジュベール症候群は8〜10万人に1人程度と推測されています。難病情報センターでは、2015年の全国調査で約100人の患者さんが報告されたとしています(2026年10月時点で確認)。どちらも調べ方によって変わる数字なので、目安として受け取ってください。

2. ジュベール症候群の症状・合併症と寿命:腎臓・肝臓・目・脳

ジュベール症候群の見通し(予後)を大きく左右するのは、脳そのものよりも、腎臓・肝臓・目などの合併症です。GeneReviewsでは、1歳を過ぎてからの亡くなる原因として最も多いのが末期腎不全で、末期腎不全に至る年齢は平均13歳とされています[1]。合併症があるかどうか、どの臓器に出やすいかは人によって違い、原因の遺伝子が手がかりになります(第5章)。

🩺 ジュベール症候群でみられる主な合併症

臓器・症状 内容と頻度
腎臓 腎臓の病気(ネフロン癆・嚢胞など)が23〜38%。末期腎不全に至る年齢は平均13歳
肝臓 主に先天性肝線維症。食道や胃の静脈瘤が最大13%
目 網膜ジストロフィー(網膜の働きが落ちる病気)約30%、網脈絡膜・視神経のコロボーマ約17%、まぶたが下がる眼瞼下垂約19%
脳・神経 発達の遅れ・筋緊張の低下・運動失調。てんかん発作が約10%
骨・手足 骨の変化が13〜15%、多指が8〜19%
呼吸 赤ちゃんのころの無呼吸・速い呼吸。子どもや大人では睡眠中の無呼吸が起こりやすい

※頻度はGeneReviews(2026年2月改訂)[1]による。研究に参加した方の集団の値で、一人ひとりの確率ではありません。

赤ちゃんのころ:呼吸の乱れと目の動き

生まれてすぐのころは、息が止まる無呼吸と速い呼吸が交互に出る呼吸の乱れや、目の動きの異常(眼球運動失行など)がよくみられます[1]。小児慢性特定疾病情報センターの解説では、呼吸の異常は時に命にかかわることがあるものの、通常は年齢とともに改善するとされています。一方、GeneReviewsは、子どもや大人では睡眠中の無呼吸が起こりやすく、治療しないと肺高血圧につながることがあるとしています[1]。

ジュベール症候群の寿命・予後:大人になってからも続く見張り

ジュベール症候群の寿命について、一人ひとりに当てはまる数字はありません。見通しを左右するのは主に腎臓で、腎不全になった場合は透析や腎移植が必要になります。発達や生活への影響は一生続くとされ、大人のジュベール症候群についてはまだ研究が少ないことも指摘されています[1]。腎臓や肝臓の病気は、赤ちゃんのころに異常がなくても、あとから出てくることがあります。だからこそ、原因の遺伝子を知って、見張りの予定を立てておくことが大切です。

メッケル症候群の経過

メッケル症候群は、子宮の中か生まれてすぐに亡くなることがほとんどの病気です。2017年の総説では、28か月まで生きた例が1例報告されているとされています[2]。腎臓の働きが悪いために羊水が少なくなることが多く、それが超音波で見えにくくなる原因にもなります[2]。

3. ジュベール症候群の原因と遺伝のしかた:遺伝する確率

ジュベール症候群とメッケル症候群の多くは常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します[1][2]。ジュベール症候群に関わる遺伝子は40以上知られており[1]、難病情報センターでは48個の遺伝子に変化が見つかっているとしています(2026年10月時点で確認)。

常染色体潜性(劣性)遺伝:次のお子さんは4分の1

常染色体潜性(劣性)遺伝では、対になった2本の遺伝子の両方に変化があると発症します。ご両親はそれぞれ1本ずつ変化をもつ保因者で、ふつうは症状がありません。お子さんのきょうだいは、4分の1で発症し、2分の1で症状のない保因者になり、4分の1で変化を受け継ぎません[1]。この確率は妊娠ごとに同じで、前のお子さんが発症したかどうかで変わりません。

保因者は特別なことではなく、誰もが何かの病気の保因者である可能性があります。ご両親のどちらかのせいで起こるものではありません。

X連鎖のOFD1と、例外的な遺伝のしかた

43遺伝子のうち、OFD1遺伝子はX染色体にあり、X連鎖の遺伝のしかたをします。また、SUFU遺伝子が原因のジュベール症候群は、常染色体潜性のことも常染色体顕性(優性)のこともあるとされています[1]。そのほか、変化がご本人で新しく起きたり(新生突然変異)、親御さんが体の一部の細胞だけに変化をもっていたりすることもあります[1]。遺伝のしかたが変わると次のお子さんへの確率も変わるので、結果は必ず遺伝カウンセリングでご一緒に確かめます。

ご本人が子どもを持つとき・結婚を考えるとき

常染色体潜性遺伝のジュベール症候群のご本人がお子さんを持つ場合、お子さんは少なくとも1本の病的変異を受け継ぎます[1]。パートナーが同じ遺伝子の保因者でなければ、お子さんは原則として保因者になります。パートナーも同じ遺伝子に病的変異をもっている場合は、お子さんが発症する可能性があります。そのため、ご本人の原因の遺伝子がわかっていれば、パートナーがその遺伝子に病的変異をもっているかを調べることで、お子さんへの確率を具体的に考えられます。なお、X連鎖のOFD1や、顕性遺伝のこともあるSUFUが原因の場合は、お子さんへの伝わり方が違うので、遺伝のしかたを確かめてからご説明します。

ご本人やごきょうだいの病気が、結婚を考えるときの心配になることもあります。遺伝の確率は病気とご家族ごとに違い、検査で「わかること」があります。きょうだいの方が保因者かどうか、パートナーが保因者かどうかを知ることで、選べることが増えます。当院では、そうしたご相談も遺伝カウンセリングでお受けしています。

4. どんな人がこの検査を受けるとよいか

MRIで臼歯徴候を言われたお子さんの原因を知りたい方、妊娠中の超音波でメッケル症候群が疑われた方、前のお子さんがジュベール症候群・メッケル症候群で次の妊娠を考えているご両親に向く検査です。見た目や症状、ご家族の様子だけでは、原因の遺伝子も遺伝のしかたもわかりません。

MRIで臼歯徴候・小脳虫部の低形成を言われたお子さん

臼歯徴候があり、筋緊張の低下や発達の遅れ、呼吸の乱れ、目の動きの異常があるお子さんでは、ジュベール症候群が考えられます。原因の遺伝子がわかると、病名が確定し、腎臓・肝臓・目のどれを重点的に見張るかを決める手がかりになります。GeneReviewsは、ジュベール症候群では1つの遺伝子だけを調べる検査はほとんど役に立たず、勧められないとしています[1]。原因の候補が多いため、たくさんの遺伝子をまとめて調べる方法が使われます。

妊娠中の超音波で脳瘤・腎臓の嚢胞・多指を指摘された方

メッケル症候群は、妊娠初期から超音波で見つかることがあります。2017年の総説では、多数の嚢胞のある腎臓は妊娠9週から、多指は11週から、後頭部の脳瘤は13週から見えることがあるとされています[2]。胎児の脳瘤や腎臓の嚢胞を指摘されたときに、原因を確かめる方法として、赤ちゃんの細胞(絨毛・羊水)を使った遺伝子の検査があります。

妊娠中の赤ちゃんを直接調べる場合は、絨毛検査・羊水検査で赤ちゃんの細胞を採る必要があります。当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。超音波で見つかった所見が多い場合は、病気をしぼらずに調べる出生前全エクソーム(WES)検査が向くこともあります。

前のお子さんがジュベール症候群・メッケル症候群だったご両親

次の妊娠でいちばんの手がかりになるのは、ご家族の原因の遺伝子の変化がわかっていることです。GeneReviewsは、ご家族の変化がわかっていれば、妊娠中の出生前検査や着床前検査ができるとしています[1]。また、上のお子さんがジュベール症候群の場合、胎児の画像で小脳虫部の低形成が見つかれば診断につながる一方で、画像が正常でもジュベール症候群を否定できないとされています[1]。超音波やMRIだけに頼らず、遺伝子で確かめられるように準備しておくことが大切です。

亡くなったお子さんの検体が残っていない場合でも、ご両親それぞれが保因者かどうかを調べることで、手がかりが得られることがあります。どの方を検査するのがよいかは、ご家族の状況を伺って一緒に考えます。

腎臓・肝臓・目の病気が重なっているお子さん

お子さんに、子どものころからの腎臓の病気(ネフロン癆など)、先天性肝線維症、網膜の病気が重なっていて、発達の遅れやMRIの所見もある場合、ジュベール症候群が隠れていることがあります。いくつもの臓器の症状が1つの病気でつながると、診療科ごとにばらばらだった見張りの予定を、まとめて立てられるようになります。

この検査より別の検査が向いている場合

GeneReviewsは、関わる遺伝子が多く症状の幅も広いため、パネル検査では範囲が狭すぎることがあり、全エクソーム・全ゲノム検査が好まれるとしています[1]。症状がジュベール症候群・メッケル症候群に絞りきれないときは、次の検査を考えます。

🔍 症状・検査の結果から、どのパネルを選ぶか

こんなとき 向いている検査
MRIの臼歯徴候、胎児の脳瘤+腎臓の嚢胞+多指 このページのジュベール・メッケル症候群パネル(43遺伝子)
繊毛の病気が疑われるが、型がしぼれない 繊毛病NGS遺伝子検査パネル
肥満・多指・網膜の病気が組み合わさる バルデー・ビードル症候群NGSパネル遺伝子検査
腎臓の病気(ネフロン癆)と網膜の病気が中心で、脳の所見がない シニア・ローケン症候群NGS遺伝子検査/ネフロン癆NGS遺伝子パネル検査
肝臓の線維化・門脈圧亢進症が中心 先天性肝線維症NGS遺伝子検査パネル
胎児・お子さんの腎臓が大きく嚢胞が多い(脳の所見なし) 多発性嚢胞腎遺伝子パネル検査/多発性嚢胞腎・ネフロン癆遺伝子パネル検査
小脳が全体に小さい(臼歯徴候ではない) 小脳低形成NGSパネル遺伝子検査
小脳と橋(脳幹の一部)がともに小さい 橋小脳低形成症NGS遺伝子パネル検査
症状が多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)(妊娠中は出生前WES・出生前全ゲノム)

※どの検査が合うかは、症状・画像の所見・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。主な原因遺伝子がこのパネルに入っていない場合は、遺伝子を追加して調べることもできます。

\ 見た目や症状だけではわからないことを、検査で確かめる /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご両親とも保因者だった場合、妊娠したときの出生前診断(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。

海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

5. 調べる43遺伝子と、遺伝子ごとに起こりやすい合併症

この検査では、ジュベール症候群・メッケル症候群の原因として知られる43遺伝子の塩基配列を読み、あわせて遺伝子の一部または全体がなくなる・増える変化(欠失・重複)も調べます。ジュベール症候群で比較的多い遺伝子は、AHI1・CC2D2A・CEP290・CPLANE1・TMEM67で、それぞれ全体の5〜10%とされています[1]。メッケル症候群ではTMEM67が最も多く、約16%です[2]。

🧬 対象の43遺伝子と主な病気(JS=ジュベール症候群、MKS=メッケル症候群)

遺伝子 主な病気 遺伝のしかた
AHI1 JS(3型)。網膜ジストロフィーを伴いやすい 常染色体潜性
ARL13B JS(8型) 常染色体潜性
ARL3 JS 常染色体潜性
ARMC9 JS 常染色体潜性
B9D1 MKS・JS 常染色体潜性
B9D2 MKS・JS 常染色体潜性
C2CD3 口顔指症候群(口・顔・手足の指に変化が出る繊毛病) 常染色体潜性
CC2D2A JS(9型)・MKS(6型)・COACH症候群2 常染色体潜性
CEP104 JS 常染色体潜性
CEP120 JS・短肋骨胸郭異形成症 常染色体潜性
CEP290 JS(5型)・MKS(4型)・レーバー先天性黒内障10・シニア・ローケン症候群6・バルデー・ビードル症候群14。網膜・腎臓の病気を伴いやすい 常染色体潜性
CEP41 JS(15型) 常染色体潜性
CEP55 胎児期に腎臓・脳の重い変化を起こす病気(MARCH症候群) 常染色体潜性
CPLANE1(旧名C5orf42) JS(多指・口顔指症候群の特徴を伴いやすい) 常染色体潜性
CSPP1 JS 常染色体潜性
FAM149B1 JS 常染色体潜性
IFT172 短肋骨胸郭異形成症10型・バルデー・ビードル症候群20型 常染色体潜性
INPP5E JS(1型) 常染色体潜性
KIAA0556(現在の名前:KATNIP) JS 常染色体潜性
KIAA0586 JS・短肋骨胸郭異形成症 常染色体潜性
KIAA0753 JS・口顔指症候群 常染色体潜性
KIF14 MKS・小頭症 常染色体潜性
KIF7 JS・アクロカロサル症候群・胎児致死性水頭症候群2。脳梁欠損・多指を伴いやすい 常染色体潜性
MKS1 MKS(1型)・JS・バルデー・ビードル症候群 常染色体潜性
NPHP1 JS・ネフロン癆・シニア・ローケン症候群1。腎臓・網膜の病気を伴いやすい 常染色体潜性
NPHP3 ネフロン癆・MKS 常染色体潜性
OFD1 JS・口顔指症候群1型 X連鎖
PDE6D JS 常染色体潜性
PIBF1 JS 常染色体潜性
RPGRIP1L JS・MKS・COACH症候群。腎臓の病気を伴いやすい 常染色体潜性
SUFU JS・髄芽腫の感受性 JSは常染色体潜性または顕性
TCTN1 JS 常染色体潜性
TCTN2 MKS・JS。腎臓の病気・脳瘤・コロボーマを伴いやすい 常染色体潜性
TCTN3 JS・口顔指症候群 常染色体潜性
TMEM107 MKS・JS・口顔指症候群 常染色体潜性
TMEM138 JS 常染色体潜性
TMEM216 JS・MKS 常染色体潜性
TMEM231 JS・MKS 常染色体潜性
TMEM237 JS 常染色体潜性
TMEM67 JS・MKS(最も多い原因)・COACH症候群・ネフロン癆。肝線維症・腎臓・網膜・コロボーマを伴いやすい 常染色体潜性
TTC21B ネフロン癆・短肋骨胸郭異形成症 常染色体潜性
TXNDC15 MKS 常染色体潜性
ZNF423 JS・ネフロン癆 常染色体潜性(顕性の報告もある)

※対象遺伝子は当院の検査内容による(43遺伝子)。「伴いやすい」合併症はGeneReviews[1]と2015年の研究[3]、MKSでの頻度は2017年の総説[2]による。病気の名前は代表的なものだけを載せています。

遺伝子でわかる見張りのポイント

原因の遺伝子がわかると、合併症のうち何を特に見張るべきかが見えてきます。375家系・440人を調べた2015年の研究では、CEP290は網膜ジストロフィー・嚢胞のある腎臓の病気と、TMEM67は肝線維症・コロボーマと関係が強いことが示されました[3]。GeneReviewsでも、AHI1は網膜ジストロフィー、NPHP1・RPGRIP1Lは腎臓の病気、KIF7は脳梁欠損・多指を伴いやすいとされています[1]。

ただし、これは「起こりやすさ」の目安で、その遺伝子なら必ず起こる、ほかの遺伝子なら起こらない、という意味ではありません。どの遺伝子でも、腎臓・肝臓・目の基本的な見張りは続けます。

6. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、43遺伝子の小さな変化(1つの塩基の変化や、小さな挿入・欠失)と、遺伝子の一部または全体の欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●読む範囲:遺伝子のうちタンパク質の設計図になる部分(エクソン)と、その境目のすぐ近く(スプライス部位)を読みます。エクソンから20塩基より奥のイントロンや、遺伝子の働きを調節する領域(プロモーターなど)の変化は、ほとんど調べられません。
  • ●欠失・重複:遺伝子1つ全体、または2つ以上続くエクソンの欠失・重複を見つけられます(2つ以上続くエクソンは血液の検体の場合)。エクソン1つだけの欠失・重複は、見つからないことがあります。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
  • ●見つけられない変化:染色体の転座・逆位、繰り返し配列が長くなる変化(リピート伸長)は対象外です。体の一部の細胞だけに変化がある状態(モザイク)を見つけるようには作られていません。
  • ●調べていない遺伝子:原因の遺伝子は今も新しく報告されています。2017年の総説では、メッケル症候群のうち既知の遺伝子で説明できるのは約50〜60%とされています[2]。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、ジュベール症候群・メッケル症候群ではない、とは言えません。375家系を調べた2015年の研究でも、原因と考えられる変化が見つかったのは62%の家系でした[3]。MRIや超音波の所見と症状にもとづく診断と見張りは、結果にかかわらず続けます。

7. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。結果の報告書の読み方はNIPT/遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

病的変異が見つかったら、次にできること

原因の遺伝子に病的変異が見つかり、遺伝形式や変異の組み合わせ、症状・画像所見などからジュベール症候群またはメッケル症候群と診断されたとき、読む方の立場ごとに、次にできることがあります。常染色体潜性遺伝では、見つかった2つの病的変異が別々の染色体(父親由来と母親由来)にあるかを確かめることも大切で、そのためにご両親の検査をお勧めすることがあります。

① ご本人(症状のあるお子さん):病名が確定し、使える制度(第8章)の手がかりになります。GeneReviewsは、遺伝子の上で腎臓・肝臓の病気のリスクが高い方には、少なくとも20歳まで、腎臓は毎年の診察と1〜2年ごとの血液検査(クレアチニンなど)、肝臓は子どものうち毎年の腹部超音波と1〜2年ごとの血液検査(血小板・GGT・ALT)を勧めています。目は眼科の主治医の方針で検査し、発達・食事・成長も毎回の受診で確かめます[1]。治療やリハビリは、小児科・小児神経科・腎臓・肝臓・眼科などの専門の医療機関で受けていただきます。

② 症状のないご本人(保因者とわかった方):保因者の方ご自身に症状が出ることはふつうありません。お子さんが発症する可能性は、パートナーが同じ遺伝子に病的変異をもっているかどうかによって変わるため、必要に応じてパートナーの検査を考えます。

③ 次のお子さん・子どもを持つときの選択肢:ご両親とも保因者と確かめられれば、次のお子さんで同じ病気が起こる確率は4分の1です[1]。ご家族の変化がわかっていれば、妊娠中に赤ちゃんが同じ変化をもっているかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。出生前診断を行うかどうかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。体外受精で受精卵を調べるPGT-M(着床前遺伝学的検査)は、日本でも日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て行われており、海外で受ける方もいます(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。何も検査をせずに妊娠・出産することも、そのまま選べる選択肢です。

④ ご家族:ご家族の変化がわかると、ごきょうだいやご両親の血縁の方が、同じ変化をもつ保因者かどうかを、その場所だけピンポイントで調べられます。ごきょうだいが将来結婚・出産を考えるときの手がかりになります。

⑤ 当院でのその後:結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、次にどうするかを一緒に考えます(遺伝カウンセリング料は30分22,000円・税込、出生前診断の遺伝カウンセリングは30分33,000円・税込)。

海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます

PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。当院は体外受精・PGT-Mを行っていませんが、海外でPGT-Mを受けるときに使える英語の検査結果をお渡しできます。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。

欧州ヒト生殖胎生学会(ESHRE)の指針では、PGT-Mの準備として、①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、②どの遺伝子のどの変化かが書かれた元の報告書(認定を受けた検査室のもの)、③ご家族の検体、が求められています[5]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、2本ある遺伝子の片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあるため、変化の両側にある目印(STR・SNPなどの多型マーカー)で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます[5]。

ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。ジュベール症候群・メッケル症候群のような常染色体潜性遺伝の病気では、指針の目安として、発症した方(2つの変化をもつ方)・保因者・保因者でない方の検体が挙げられています[5]。血縁の方がいない場合について、指針はご夫婦で目印を調べたうえで、治療周期の受精卵などを調べて変化の乗った染色体を決める方法も挙げていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります[5]。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。

臨床遺伝専門医としての判断として、意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。また、潜性遺伝の病気では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります(パートナーの検査・保因者検査)。海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もって確認してください。

⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です

PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[6]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。絨毛検査・羊水検査は院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。

日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、有効な治療法がないか、あっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。

英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。一覧にない病気は、施設を通じて申請し、HFEAが審査します。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[7]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。くわしくは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。

陰性だったとき

原因の変化が見つからなかった場合も、第6章のとおり病気は否定できません。考えられる理由は、43遺伝子以外の遺伝子が原因であること、この検査で見つけにくい種類の変化であることなどです。次の選択肢として、全エクソーム検査(WES)や全ゲノムシークエンスを考えます。変化が1本だけ見つかった場合は、もう1本が見つけにくい種類の変化である可能性も含めて、結果の意味をご説明します。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合(二次的所見)の扱いは、当院の二次的所見の開示方針のとおりです。

妊娠を考えている方:保因者検査という方法

ご家族にジュベール症候群・メッケル症候群の方がいて、これから妊娠を考えている方は、ご自身とパートナーが保因者かどうかを調べる方法もあります。AHI1・CC2D2A・CEP290・CPLANE1・TMEM67など主な遺伝子は、当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の対象に含まれています。ただし、このパネルの43遺伝子がすべて含まれているわけではないので、対象かどうかは遺伝子一覧でご確認ください。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(単独では受けられません)。ご家族の原因の変化がすでにわかっている場合は、その変化をピンポイントで調べるほうが確かです。

8. 日本の制度:ジュベール症候群関連疾患は指定難病(2026年10月時点)

ジュベール症候群は、「ジュベール症候群関連疾患」として指定難病177に指定されています。難病情報センターでは、有馬症候群やCOACH症候群なども、この病気に含まれる、または深く関連する病名として挙げています。小児慢性特定疾病の対象疾病にも、ジュベール(Joubert)症候群関連疾患が掲載されています(いずれも2026年10月時点で確認)。

医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。関連する病名でも助成の対象にならないことがあるので、認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、主治医・お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

💡 有馬症候群とCEP290

有馬症候群は、1971年に有馬正高医師が報告した、日本で知られるジュベール症候群関連疾患の重い型です(難病情報センター)。乳児期からの重い発達の遅れ、視覚障害、早くから進む腎臓の病気、まぶたが下がったような顔つきが特徴です。2018年の日本の報告では、有馬症候群の患者さん4人(3家系)全員が、CEP290遺伝子のc.6012-12T>Aという同じ変化をもっていました[4]。CEP290はこの検査の43遺伝子に含まれています。

9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液のほか、唾液・頬の内側の粘膜でも行え、オンライン診療にも対応しています。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液など
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査内容 ジュベール症候群・メッケル症候群に関わる43遺伝子の塩基配列と欠失・重複
検査費用 税込330,000円(塩基配列・欠失重複の解析を含む)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急(結果までの期間が約7日短くなります)55,000円/VUS除外(病的意義がよくわかっていない変化を報告に載せない)無料
検体 血液(EDTA採血管4ml×2本)、抽出DNA、頬の内側の粘膜(スワブ)、唾液
オンライン診療 対応しています。血液の場合は全国の提携医療機関で採血をお願いします

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採らないでください。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

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10. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【原因を知ることは、次の妊娠への準備になる】

ジュベール症候群やメッケル症候群は、ご両親がともに保因者であることで起こることがほとんどの病気です。保因者は誰にでもありうることで、誰のせいでもありません。それでも、お子さんが病気だとわかったとき、あるいは妊娠中に重い所見を告げられたとき、ご自分を責めてしまう親御さんがいらっしゃることを、私は知っています。

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

この病気のように、原因の遺伝子が40を超える病気では、MRIや超音波の所見だけで原因を言い当てることはできません。遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

原因の遺伝子がわかっていれば、次の妊娠で何を調べればよいかがはっきりし、絨毛検査・羊水検査で確かめる道が開けます。わからないままでは、出生前に調べる的が決められません。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. ジュベール症候群の寿命・余命は?

一人ひとりに当てはまる寿命の数字はありません。見通しを大きく左右するのは腎臓の合併症で、遺伝性疾患の解説書(GeneReviews)では、1歳を過ぎてからの亡くなる原因として最も多いのが末期腎不全で、末期腎不全に至る年齢は平均13歳とされています。腎臓の病気は治療(透析・腎移植)の対象になるので、原因の遺伝子を知って定期的に見張ることが大切です。

Q2. ジュベール症候群は何人くらいいますか?

小児慢性特定疾病情報センターの解説(2014年版)では8〜10万人に1人程度と推測されています。難病情報センターでは、2015年の全国調査で約100人の患者さんが報告されたとしています(2026年10月時点で確認)。調べ方によって変わる数字なので、目安として受け取ってください。

Q3. ジュベール症候群は指定難病ですか?

はい。「ジュベール症候群関連疾患」として指定難病177に指定されています。小児慢性特定疾病の対象疾病にも掲載されています(2026年10月時点で確認)。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。

Q4. ジュベール症候群は妊娠中にわかりますか?いつわかりますか?

上のお子さんがジュベール症候群の場合、胎児の画像で小脳虫部の低形成が見つかれば診断につながりますが、画像が正常でも否定はできないとされています。ご家族の原因の遺伝子の変化がわかっていれば、絨毛検査・羊水検査で赤ちゃんが同じ変化をもっているかを調べられます。重い型のメッケル症候群では、妊娠初期の超音波で腎臓の嚢胞や多指、脳瘤が見つかることがあります。

Q5. 次の子どもがジュベール症候群になる確率は?

多くは常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します。この確率は妊娠ごとに同じです。ただし、X連鎖のOFD1遺伝子が原因の場合など、遺伝のしかたが違うと確率も変わるため、原因の遺伝子を確かめてからご説明します。

Q6. ジュベール症候群は治りますか?治療はありますか?

病気の原因そのものを治す治療は、今のところありません。難病情報センターでは、腎不全には腹膜透析・血液透析・腎移植、視覚の障害には適切な治療と支援、発達の遅れにはリハビリや療育で対応するとしています。治療やリハビリは、それぞれの専門の医療機関で受けていただきます。

Q7. 有馬症候群とはどのような病気ですか?

1971年に有馬正高医師が報告した、ジュベール症候群関連疾患の重い型です。乳児期からの重い発達の遅れ、視覚障害、早くから進む腎臓の病気、まぶたが下がったような顔つきが特徴です。2018年の日本の報告では、有馬症候群の患者さん4人全員がCEP290遺伝子の同じ変化をもっていました。CEP290はこの検査で調べる43遺伝子に含まれています。

Q8. ジュベール症候群に顔の特徴はありますか?

まぶたが下がる眼瞼下垂は約19%でみられるとされています。ただし、顔つきだけでジュベール症候群と診断することはできません。診断はMRIの臼歯徴候と症状にもとづいて行い、原因は遺伝子検査で確かめます。

Q9. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?

はい。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。ただし、ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。常染色体潜性遺伝の病気では、発症した方・保因者・保因者でない方などご家族の検体が求められます。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。

🧬 一度の検査で、次のお子さんへの備え方を決める

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ジュベール症候群・メッケル症候群の原因の遺伝子がわかれば、お子さんの腎臓・肝臓・目の見張りの予定だけでなく、次の妊娠でどう備えるかを具体的に考えられます。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Glass IA, Dempsey JC, Parisi M, Doherty D. Joubert Syndrome. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2003 (Updated 2026 Feb 12). [NCBI Bookshelf NBK1325]
  • [2] Hartill V, Szymanska K, Sharif SM, Wheway G, Johnson CA. Meckel-Gruber Syndrome: An Update on Diagnosis, Clinical Management, and Research Advances. Front Pediatr. 2017;5:244. [DOI: 10.3389/fped.2017.00244](PMID: 29209597)
  • [3] Bachmann-Gagescu R, Dempsey JC, Phelps IG, et al. Joubert syndrome: a model for untangling recessive disorders with extreme genetic heterogeneity. J Med Genet. 2015;52(8):514-522. [DOI: 10.1136/jmedgenet-2015-103087]
  • [4] Itoh M, Ide S, Iwasaki Y, et al. Arima syndrome caused by CEP290 specific variant and accompanied with pathological cilium; clinical comparison with Joubert syndrome and its related diseases. Brain Dev. 2018;40(4):259-267. [DOI: 10.1016/j.braindev.2017.11.002](PMID: 29217415)
  • [5] ESHRE PGT-M Working Group, Carvalho F, Moutou C, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the detection of monogenic disorders. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa018. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa018]
  • [6] ESHRE PGT Consortium Steering Committee, Carvalho F, Coonen E, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the organisation of PGT. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa021. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa021]
  • [7] Nakasato K, Yamamoto BA, Kato K. Evaluating standards for ‘serious’ disease for preimplantation genetic testing: a multi-case study on regulatory frameworks in Japan, the UK, and Western Australia. Hum Genomics. 2022;16:16. [DOI: 10.1186/s40246-022-00390-3]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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