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橋小脳低形成症(PCH)の遺伝子パネル検査|原因9遺伝子でわかること・CASK異常症・次のお子さんへの備え

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

橋小脳低形成症(PCH)の遺伝子パネル検査

橋小脳低形成症(PCH)は、脳幹の一部である「橋(きょう)」と「小脳」が十分に育たない、生まれつきの病気のグループです。原因となる遺伝子はいくつもあり、どの遺伝子が原因かで、症状の出方・見通し・次のお子さんで同じ病気が起こる確率が大きく変わります。原因がわかれば、次のお子さんで同じことが起こる可能性がどれくらいあるか、そして次の妊娠でどう備えられるかを、具体的に考えられるようになります。このページでは、橋小脳低形成症と小脳低形成の違い、CASK異常症との関係、原因9遺伝子をまとめて調べる遺伝子パネル検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

橋小脳低形成症(PCH)と、それによく似たCASK異常症などの原因になる9つの遺伝子(CASK・EXOSC3・OPHN1・RARS2・SEPSECS・TSEN2・TSEN34・TSEN54・VRK1)を一度に調べ、どの型の病気かを確かめます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

MRIで橋や小脳が小さいと言われ原因を知りたいお子さんとご家族、そして次の妊娠を考えていて、次のお子さんで同じ病気が起こる確率を知りたいご両親です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、ご両親の確認検査や、次の妊娠での羊水検査・絨毛検査(院内)まで計画できます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 原因を知ることが、次のお子さんへの備えの出発点に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 小脳低形成NGSパネル遺伝子検査との違い

1. 橋小脳低形成症(PCH)とは:小脳低形成との違い

橋小脳低形成症(pontocerebellar hypoplasia:PCH)は、橋と小脳が十分に育たず、多くは胎児期から始まる、まれな遺伝性の病気のグループです[1]。2018年の総説では11の型(PCH1〜PCH11)に分けられ、いずれも常染色体潜性(劣性)遺伝とされています[1]。

橋は脳幹の一部で、大脳と小脳をつなぐ通り道です。小脳は、体のバランスや手足の動きを細かく調整する場所です。「小脳低形成」は、小脳が小さいという画像の所見を指す言葉で、病名ではありません。橋小脳低形成症は、橋も一緒に小さく、特定の遺伝子が原因になる病気のグループで、総説では、よく似た画像を示すほかの病気とは区別して整理されています[1]。

どの型が多いか

総説では、最も多い型はPCH2Aとされています。PCH2Aは、tRNAを作る過程で働くTSEN54遺伝子の、特定の1か所の変化(p.Ala307Ser)を2本とももつことで起こります[1]。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsによると、PCH2の約88%がこの変化によるものです[2]。なお、TSEN54が原因の病気全体の有病率はわかっていないとされています[2]。

CASK異常症(MICPCH)との関係

X染色体にあるCASK遺伝子の変化による病気でも、MRIで橋と小脳がとても小さく見え、PCHによく似た所見になることがあります。総説では、このCASKによる病気はPCH1・PCH2とは区別して扱われています[1]。小頭症と橋小脳低形成を伴う知的発達症(MICPCH)と呼ばれ、日本では「CASK異常症」という名前でも知られています。

MRIの所見だけでは、PCHのどの型なのか、CASK異常症なのかを見分けきれないことがあります。この検査は、PCHの原因遺伝子とCASKを一緒に調べるため、似た画像の病気を1回の検査でまとめて確かめられます。

2. 症状と経過:型によって見通しが大きく違う

橋小脳低形成症の症状と寿命の見通しは、原因の遺伝子と型によって大きく違います。同じ「橋小脳低形成」という画像の所見でも、乳児期に命に関わる型もあれば、成人まで生活している方が報告されている型もあります。ここでは、検査を受けるかどうかを考えるうえで大事な点を、型ごとにまとめます。

PCH2(TSEN54型):最も多い型の症状

GeneReviewsによると、TSEN54が原因のPCH2では、生後6か月ごろまでに強い不随意運動(体が勝手に動く舞踏運動)が出てくることが多く、頭囲の伸びが生後1年の間に小さくなっていきます(進行性の小頭症)。哺乳や飲み込みの難しさはほぼすべての方にみられ、てんかん発作を伴うこともあります[2]。

PCH1(EXOSC3型など):脊髄の運動神経も弱る型

PCH1は、橋と小脳に加えて、脊髄の運動神経(前角細胞)も弱っていく型です。2012年の研究で、PCH1の家系の多くにEXOSC3遺伝子の変化が見つかりました(12家系中8家系)[4]。赤ちゃんのころから筋力が弱く、脊髄性筋萎縮症(SMA)に似た症状を示すのが特徴です。VRK1遺伝子はPCH1の原因として1家系で報告されましたが、その後の報告では、主に橋小脳低形成を伴わない運動ニューロンの病気と関わることがわかってきています[1]。

CASK異常症(MICPCH)の症状

GeneReviewsによると、CASK異常症の女の子では、中等度から重度の知的障害がみられます。生まれたときの頭囲は約3分の2の方で正常か正常の下限ですが、生後1年のうちに小頭症がはっきりしてきます。おすわりができる方は多い一方、歩けるようになるのは20〜25%とされています。約28%に感音難聴があり、10歳までに40%近くがてんかん発作を経験します。視神経の低形成や眼振・斜視などの目の所見もみられます[3]。男の子では、重い症状から、眼振を伴う軽めの知的障害まで、幅が広いとされています[3]。

寿命・予後の見通し

PCH2では、半数以上が思春期の前に亡くなるとされ、10歳より前に亡くなることが多い一方で、20歳を超えて生活している方も報告されています[1][2]。TSEN54が原因の病気のうち、PCH4とPCH5は新生児期に亡くなることが多い型です[2]。PCH1は、以前は新生児期に命に関わる病気と考えられていましたが、思春期まで生活した報告もあります[1]。CASK異常症の女の子では、病気による死亡は報告されていないとされています[3]。

GeneReviewsは、PCH2では胃ろうなど栄養の工夫が、生存期間を延ばしてきた可能性があるとしています[2]。現在、病気そのものを治す治療はなく、飲み込み・てんかん・見え方などに合わせた症状への治療が中心です[2]。だからこそ、どの型なのかを知ることが、これから何に備えるかを決める手がかりになります。

3. 原因と遺伝のしかた:次のお子さんの確率は原因で変わる

この検査で調べる9遺伝子のうち、7つは常染色体潜性(劣性)遺伝、CASKとOPHN1の2つはX連鎖の遺伝のしかたをします。次のお子さんで同じ病気が起こる確率(再発率)は、どちらの遺伝のしかたかで大きく違います。

常染色体潜性(劣性)遺伝の7遺伝子:次のお子さんは4分の1

TSEN54・TSEN2・TSEN34・SEPSECS・RARS2・EXOSC3・VRK1による病気は、常染色体潜性(劣性)遺伝をします[1]。ご両親はどちらも、変化を1本だけもつ「保因者」で、症状はありません。ご両親とも保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で病気になり、2分の1の確率で保因者になります[2]。上のお子さんが病気だったかどうかで、次のお子さんの確率は変わりません。

X連鎖のCASK・OPHN1:お母さんの検査が大切

X連鎖の病気では、お母さんが同じ変化をもっているかどうかで、次のお子さんの確率が変わります。お母さんが変化をもっている場合、お子さん1人ごとに2分の1の確率で、その変化が受け継がれます。OPHN1遺伝子では、5人の兄弟に、知的障害・てんかん・小脳低形成をそろって認めた家系が報告されています[5]。

CASK異常症の女の子では、多くがお子さんで新しく起きた変化(de novo)によるものです。この場合、ご両親の通常の体細胞に同じ変化が確認されなくても、性腺モザイクなどの可能性は残ります。遺伝子の変化は、ご両親の行動や育て方によって起こるものではありません。この場合、次のお子さんで同じ変化が起こる確率は低いと考えられますが、性腺モザイクなどの可能性があるため、ゼロではありません。ご両親のどちらかの卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化がある「性腺モザイク」の可能性があるためです[3]。

⚠️ 「新しく起きた変化だから、次は大丈夫」とは言えません

性腺モザイクがある場合、変化をもつ細胞からできる卵子・精子は、2分の1の確率でその変化をもちます。ただし、卵子や精子のもとになる細胞のうち、どれくらいが変化をもっているかは人によって違い、実際の診療ではわかりません。血液で測った結果も、その割合の目安にはなりません。そのため、次のお子さんの確率は「最大で2分の1」と考えて、次の妊娠での備えを一緒に考えます。

きょうだいが将来、結婚・出産を考えるとき

常染色体潜性遺伝の病気では、病気のお子さんのきょうだいは、保因者である可能性があります。きょうだいが将来、結婚や出産を考えるとき、ご家族の原因の変化がわかっていれば、同じ場所を調べて保因者かどうかを確かめられます[2]。原因がわかっていることは、ご両親だけでなく、ほかのお子さんの将来にとっても手がかりになります。

4. どんな人がこの検査を受けるとよいか

MRIで橋や小脳が小さいと言われ、原因を知りたいお子さんとご家族、そして次の妊娠を考えているご両親に向く検査です。原因がわからないまま病院を回る時間を、1回の検査で短くできる可能性があります。ただし、検査を受けた方の全員に原因が見つかるわけではありません。

MRIで所見があり、原因を知りたいお子さんとご家族

  • ●MRIで、橋と小脳が小さいと言われた
  • ●頭囲の伸びが小さい(小頭症)、発達の遅れ、哺乳や飲み込みの難しさ、体が勝手に動く運動などがある
  • ●赤ちゃんのころから筋力が弱く、SMAに似ていると言われたが、SMAの検査では原因が見つからなかった
  • ●上のお子さんが橋小脳低形成症と言われたが、原因の遺伝子はわかっていない

次の妊娠を考えているご両親

次のお子さんで同じ病気が起こる確率は、原因と遺伝のしかたで大きく違います。4分の1のこともあれば、お子さんで新しく起きた変化で「一般の方より高い」とされる場合もあります(第3章)。原因の遺伝子と変化がわかっていれば、次の妊娠で赤ちゃんを調べる出生前検査が可能とされています[2][3]。原因がわからないままでは、出生前に何を調べればよいかという「的」を決められません。

見た目や家族歴だけでは判断できない

ご両親が保因者でも、症状はありません。ご家族に同じ病気の方がいないことも多く、見た目や家族歴だけでは、原因も次のお子さんの確率もわかりません。だからこそ、症状のあるお子さんの検査で原因を確かめることが、ご家族みんなの計画の出発点になります。

この検査より別の検査が向いている場合

症状や画像の所見によっては、別の検査のほうが向いていることがあります。比べる相手は検査の種類です。

🔍 症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
MRIで橋と小脳がどちらも小さい/PCHかCASK異常症が疑われる このページの検査(9遺伝子)
小脳低形成が中心で、赤ちゃんのころからの筋力の弱さ(PCH1を思わせる所見)はない 小脳低形成NGSパネル遺伝子検査(このページの9遺伝子からEXOSC3を除いた8遺伝子)
小頭症が中心で、橋や小脳の所見ははっきりしない 小頭症NGS遺伝子パネル検査
大脳のしわの異常(多小脳回)がある 多小脳回症NGS遺伝子検査パネル
染色体の数や構造の変化が疑われる マイクロアレイ染色体検査(CMA)
症状が広く、病気をしぼれない/この検査で原因が見つからなかった 全エクソーム検査(WES)
妊娠中の赤ちゃんに脳の所見があり、原因を調べたい 出生前全エクソーム(WES)検査

※どの検査が合うかは、症状・画像の所見・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングでご説明します。

\ 次のお子さんで同じことが起こる確率を、原因から考える /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

原因がわかれば、次の妊娠での羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

5. 調べる9遺伝子と、それぞれでわかる病気

この検査では、橋小脳低形成症と、それによく似たCASK異常症などの原因になる9遺伝子をまとめて調べます。遺伝子と病気の対応は、2018年の総説[1]とGeneReviews[2][3]、原著論文[4][5]によります。

🧬 調べる9遺伝子と関係する病気

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
TSEN54 PCH2A(最も多い型)・PCH4・PCH5 常染色体潜性
TSEN2 PCH2 常染色体潜性
TSEN34 PCH2 常染色体潜性
SEPSECS PCH2D 常染色体潜性
RARS2 PCH6(ミトコンドリアで働く遺伝子) 常染色体潜性
EXOSC3 PCH1(脊髄の運動神経も弱る型) 常染色体潜性
VRK1 PCH1(1家系で報告)・運動ニューロンの病気 常染色体潜性
CASK MICPCH(CASK異常症)・FG症候群4型・眼振を伴うまたは伴わない知的発達障害 X連鎖
OPHN1 小脳低形成を伴うX連鎖知的障害 X連鎖

※TSEN2とTSEN34が、PCH2のどの細かい型に当たるかは、文献によって書き方が異なるため、ここでは「PCH2」とまとめています。

TSEN54・TSEN2・TSEN34は、tRNAという分子を完成させる過程ではたらく酵素のなかまで、SEPSECSとRARS2もtRNAに関わる遺伝子です[1]。RARS2は細胞の中のミトコンドリアではたらきます。EXOSC3は、細胞の中でRNAを分解・加工する「RNAエキソソーム」という複合体の部品です[4]。

6. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、9遺伝子の中にある小さな変化(1つの文字の変化や、小さな挿入・欠失)と、遺伝子全体やエクソン単位の大きめの欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●調べていない遺伝子:この検査は9遺伝子だけを調べます。橋小脳低形成症には、ほかにも原因遺伝子が報告されています[1]。
  • ●見つけられない変化の種類:染色体の一部の入れ替わり(転座・逆位)、同じ配列の繰り返しが長くなる変化(リピート伸長)、遺伝子のはたらきを調節する領域の多くや、エクソンから離れたイントロンの奥の変化は調べられません。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけることは目的にしていません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知識ではまだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、橋小脳低形成症ではないとは言い切れません。
🔬 検査の技術的なくわしい説明(ひらく)

この検査は、次世代シーケンサー(NGS)で、9遺伝子のたんぱく質の設計図になる部分(コード領域)と、その境目(スプライス部位)を読みます。対象の領域の99%以上を、同じ場所を20回以上読む深さで調べます。読む回数が多いほど、読み間違いを減らせます。

読み取りの質が十分でなかった場所は、別の方法(サンガー法)で読み直します。欠失・重複は、遺伝子まるごとの変化(頬の粘膜・血液の検体)と、となり合う2つ以上のエクソンにわたる変化(血液の検体のみ)を見つけられます。1つのエクソンだけの欠失・重複は、見つかることもありますが、通常は検出の対象外です。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。

遺伝子によく似た配列(偽遺伝子など)があると、変化を見つけにくくなることがあります。また、腫瘍の組織はこの検査の対象外です。

7. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。

原因が見つかったとき:病名と見通しが決まる

原因の遺伝子がわかると、PCHのどの型なのか、CASK異常症なのかがはっきりし、見通しや気をつけたい合併症の目安がわかります。たとえばCASK異常症なら、聴力・目・てんかんの確認が大切になり[3]、PCH2なら飲み込みと栄養の工夫が大切になります[2]。病名がわかると、受けるべき検査や使える制度(第8章)も決まってきます。

ご両親の確認検査

お子さんで原因の変化が見つかったら、ご両親が同じ変化をもっているかを調べます。常染色体潜性遺伝なら、ご両親とも保因者かどうかを確かめます。CASKやOPHN1なら、お母さんが同じ変化をもっているかどうかを確かめます。ご両親の血液検査で同じ変化が確認されなければ、お子さんで新しく起きた変化(de novo)が疑われます。ただし、性腺モザイクや低頻度モザイクの可能性は残ります(第3章)。

原因が見つからなかったとき

この検査で原因が見つからなくても、ほかの遺伝子が原因のこともあれば、この検査では見つけられない種類の変化のこともあります。次の一歩として、全エクソーム検査(WES)で、より多くの遺伝子を調べる方法があります。お子さんとご両親を一緒に調べる「トリオWES」という考え方もあります。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。VUSの扱いについてはVUS(意義不明変異)の臨床的取り扱い、調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いについては当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

次の妊娠を考えている方:出生前診断と保因者検査

ご家族の原因の変化がわかっていれば、次の妊娠で赤ちゃんを調べる出生前検査が可能とされています[2][3]。当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。妊娠を考えている段階から、どの時期にどの検査で何を調べるかをご相談いただけます。

また、病気のお子さんのきょうだいや、ご親戚が将来の結婚・妊娠を考えるときには、拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)と男性版714遺伝子も選択肢になります。当院の遺伝子一覧で確かめたところ、TSEN54・TSEN2・TSEN34・EXOSC3・VRK1・RARS2・SEPSECSの7遺伝子は女性版・男性版の両方に、OPHN1は女性版に含まれています。CASKはどちらにも含まれていません。ご家族の原因の変化がすでにわかっている場合は、その変化を直接調べる方法もありますので、どちらがよいかは遺伝カウンセリングでご説明します。

8. 日本の制度(2026年10月時点)

CASK異常症は、小児慢性特定疾病情報センターの対象疾病の解説に、神経・筋疾患(脳形成障害)のひとつとして掲載されています。解説では、橋小脳低形成を伴う知的障害・小頭症で、X連鎖顕性遺伝の病気と説明されています(2026年10月時点で確認)。

一方、難病情報センターのサイト内で「橋小脳」と検索した範囲では、橋小脳低形成症という名前の指定難病の項目は見当たりませんでした(2026年10月時点)。原因の遺伝子や症状によって使える制度が変わることがあるため、病名が確定したら、主治医やお住まいの自治体の窓口でご確認ください。

なお、このページの検査は自費診療(保険適用外)です。

9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・口の内側の粘膜・血液のいずれでも、オンライン診療で受けられます。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取・発送お支払い後にキット送付
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
調べる遺伝子 CASK、EXOSC3、OPHN1、RARS2、SEPSECS、TSEN2、TSEN34、TSEN54、VRK1(9遺伝子)
検査費用 税込330,000円(塩基配列と欠失・挿入の解析を含む)
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急(結果までの期間が約7日短くなります):55,000円/VUS除外:無料
検体 血液(EDTA採血管4ml×2本)、抽出DNA、頬の粘膜(口の内側の粘膜)、唾液(採取キットをお送りします)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
オンライン診療 唾液・口の内側の粘膜・血液のいずれも可能。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします

※オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

※検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、ご家族のこれからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

お問い合わせはこちら | 全エクソーム検査(WES)と比べる

10. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【原因を知ることは、誰かを責めるためではありません】

お子さんの脳の画像に「橋と小脳が小さい」という所見があると言われたご両親が、次に知りたいと考えることのひとつは、「次の子でも同じことが起こるのか」ではないかと思います。その答えは、原因の遺伝子と遺伝のしかたによって大きく違い、4分の1のこともあれば、新しく起きた変化でもゼロではない、という場合もあります。原因がわからないままでは、この大事な問いに答えることができません。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。お子さんで新しく起きた変化だとわかれば、ご両親のせいではないことがはっきりします。ご両親とも保因者だったとしても、保因者であることは珍しいことではなく、症状もありません。私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。原因がわかれば、次の妊娠で羊水検査・絨毛検査による出生前診断を計画することも、計画しないことも、知ったうえで選べます。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 橋小脳低形成症の寿命・予後は?

型によって大きく違います。最も多いPCH2では、半数以上が思春期の前に亡くなるとされる一方、20歳を超えて生活している方も報告されています。PCH4とPCH5は新生児期に亡くなることが多い型です。CASK異常症の女の子では、病気による死亡は報告されていないとされています。どの型かを知るには、原因の遺伝子を調べる必要があります。

Q2. 小脳低形成と橋小脳低形成症は違うのですか?

小脳低形成は、小脳が小さいという画像の所見を指す言葉で、病名ではありません。橋小脳低形成症は、橋と小脳がどちらも小さく、特定の遺伝子が原因になる病気のグループです。MRIの所見だけでは型を見分けきれないことがあるため、原因の遺伝子を調べて確かめます。

Q3. 小脳低形成はいつわかりますか?

橋小脳低形成症は、主に胎児期に始まる病気とされています。一方、CASK異常症では、生まれたときの頭囲は約3分の2の女の子で正常か正常の下限で、生後1年のうちに小頭症がはっきりしてきます。このように、型によって気づかれる時期が違います。

Q4. 次の子どもで同じ病気になる確率は?

原因によって違います。常染色体潜性遺伝の7遺伝子が原因でご両親とも保因者の場合は、お子さん1人ごとに4分の1です。CASKやOPHN1のようなX連鎖の病気では、お母さんが同じ変化をもっているかどうかで変わります。お子さんで新しく起きた変化でも、性腺モザイクの可能性があるため、確率はゼロではありません。

Q5. 治療法はありますか?

現在、病気そのものを治す治療はなく、飲み込み・てんかん・見え方などに合わせた症状への治療が中心です。PCH2では、胃ろうなど栄養の工夫が生存期間を延ばしてきた可能性があるとされています。どの型かがわかると、何に備えるかの目安になります。

Q6. 小脳低形成NGSパネル遺伝子検査とは何が違いますか?

小脳低形成NGSパネル遺伝子検査は8遺伝子を調べる検査で、このページの9遺伝子からEXOSC3を除いたものです。EXOSC3は、脊髄の運動神経も弱るPCH1の主な原因遺伝子です。赤ちゃんのころからの筋力の弱さがある場合は、EXOSC3を含むこのページの検査が向いています。

Q7. オンラインで受けられますか?保険は使えますか?

唾液・口の内側の粘膜・血液のいずれでも、オンライン診療で受けられます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。この検査は自費診療(保険適用外)です。

Q8. 次の妊娠で出生前診断はできますか?

ご家族の原因の変化がわかっていれば、次の妊娠で赤ちゃんを調べる出生前検査が可能とされています。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っていますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。原因がわからないままでは、出生前に何を調べればよいかを決められません。

🧬 原因を知って、次のお子さんとご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。橋小脳低形成症の原因がわかれば、お子さんの見通しや合併症への備えだけでなく、次の妊娠の計画や、きょうだいの将来を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] van Dijk T, Baas F, Barth PG, Poll-The BT. What’s new in pontocerebellar hypoplasia? An update on genes and subtypes. Orphanet J Rare Dis. 2018;13:92. [DOI: 10.1186/s13023-018-0826-2]
  • [2] van Dijk T, Baas F. TSEN54 Pontocerebellar Hypoplasia. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2009 (Updated 2020 May 28). [NCBI Bookshelf NBK9673]
  • [3] Moog U, Kutsche K. CASK Disorders. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2013 (Updated 2020 May 21). [NCBI Bookshelf NBK169825]
  • [4] Wan J, Yourshaw M, Mamsa H, et al. Mutations in the RNA exosome component gene EXOSC3 cause pontocerebellar hypoplasia and spinal motor neuron degeneration. Nat Genet. 2012;44(6):704-708. [DOI: 10.1038/ng.2254](PMID: 22544365)
  • [5] Bergmann C, Zerres K, Senderek J, et al. Oligophrenin 1 (OPHN1) gene mutation causes syndromic X-linked mental retardation with epilepsy, rostral ventricular enlargement and cerebellar hypoplasia. Brain. 2003;126(7):1537-1544. [DOI: 10.1093/brain/awg173]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

記事の作り方と生成AIの使い方は、編集方針をご覧ください。