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多小脳回症(ポリマイクロジリア)NGS遺伝子検査パネル|ミネルバクリニック

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

多小脳回症の遺伝子検査

多小脳回症(たしょうのうかいしょう)は、脳の表面のしわ(脳回)が小さく、数多くできてしまう、生まれつきの脳の形の病気です。原因は遺伝子の変化だけでなく、染色体の変化や、妊娠中の感染症などもあり、MRIの画像だけでは見分けられません。原因がわかれば、次のお子さんで同じことが起こる可能性がどれくらいあるか、そして次の妊娠でどう備えられるかを、具体的に考えられるようになります。このページでは、「脳回とは何か」から、多小脳回症の症状・原因・遺伝のしかた、7つの遺伝子を調べる検査でわかること・わからないことまで、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

脳回(脳の表面のしわ)が小さく数多くできる多小脳回症の原因として報告されている7つの遺伝子(ADGRG1・KIF1BP・SRPX2・TUBA1A・TUBA8・TUBB2B・TUBB3)に、病気の原因となる変化があるかを一度に調べます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

MRIで多小脳回と言われたお子さんとご家族、次のお子さんを考えていて原因を知りたいご両親です。多小脳回のある方を幅広い遺伝子検査で調べた研究では、約3割で原因が見つかりました。これは本検査の7遺伝子パネル単独の診断率ではありません。原因をしぼりきれない場合は、より多くの遺伝子を調べる検査も選べます。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、どれもオンライン診療で受けられます。検査費用は税込330,000円です。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、次のお子さんへの確率と、次の妊娠での出生前診断(羊水検査・絨毛検査を院内で)を考えられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子から、原因と次の備えを /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 大脳皮質形成異常をまとめて調べる検査

1. 脳回とは?脳のしわのでき方

脳回(のうかい)とは、大脳の表面にある「しわ」の盛り上がった部分のことです。盛り上がりと盛り上がりのあいだの溝は脳溝(のうこう)と呼ばれ、脳回と脳溝が組み合わさって、大脳の表面のしわ模様ができています。英語では脳回を gyrus(複数形 gyri)、脳溝を sulcus(複数形 sulci)といいます。

大脳の表面には、神経細胞が層になって並ぶ「大脳皮質」があります。しわがあることで、限られた頭の大きさの中に、広い面積の大脳皮質をおさめることができます。脳回のひとつひとつには「中心前回」「上側頭回」のような名前がついていて、場所ごとに体を動かす・言葉を理解するなどの役割を分担しています。

脳回と脳溝の違い

脳回は「山」、脳溝は「谷」と考えるとわかりやすくなります。どちらも大脳皮質でできていて、谷の深いところにも神経細胞が並んでいます。特に深く大きな溝は「裂(れつ)」と呼ばれ、側頭葉と前頭葉・頭頂葉を分ける「シルビウス裂(外側溝)」がその代表です。このシルビウス裂のまわりは、後でご説明する多小脳回症がいちばん起こりやすい場所でもあります。

脳のしわはおなかの中でできる

脳のしわは、赤ちゃんがおなかの中にいる間、妊娠の中ごろから後半にかけて、月を追うごとに形づくられていきます。10〜44週の赤ちゃんの脳を調べた研究では、それぞれの溝やしわが現れる順番が、妊娠中期・後期の月ごとに記録されています[8]。このしわができる時期に、大脳皮質の層の並び方がうまくいかないと、しわの形の異常が起こります。

🧠 ふつうの脳回と多小脳回(イメージ図)

ふつうの脳回 多小脳回 脳回(山) 脳溝(谷) 小さな脳回が数多く並ぶ 皮質の層の並び方が乱れる

※わかりやすくするために単純化した模式図です。実際の脳の形を正確に表したものではありません。

しわの形の異常には、しわがほとんどない・少なくて太い「無脳回・厚脳回(滑脳症)」と、反対に小さなしわが数多くできる「多小脳回」があります。どちらも、大脳皮質がつくられる途中の異常によって起こる「大脳皮質形成異常」のなかまです。

2. 多小脳回症とは:症状と見通し

多小脳回症は、大脳皮質の層の並び方の異常によって、小さな脳回が数多くできる生まれつきの脳の形の病気です[1]。英語では polymicrogyria(ポリマイクロジリア、略してPMG)と呼ばれます。脳の片側だけのこともあれば両側のこともあり、範囲もごく一部から脳全体までさまざまです。

どれくらい多い病気か

遺伝性疾患の解説書GeneReviewsでは、多小脳回は最も多い脳の形の異常のひとつで、大脳皮質形成異常全体の約20%を占めるとされています[1]。なお、この解説書の多小脳回の章は2018年に最終更新され、2024年に公開を終えて参照用として残されているものです。

いちばん多いのはシルビウス裂のまわり

多小脳回の患者さん328人のMRIを調べた研究では、いちばん多かったのはシルビウス裂のまわりに多小脳回がある型で、61%でした[2]。ほかに、前頭葉や頭頂葉、脳全体に広がる型などがあります[1]。どの型かによって、出やすい症状や、考えられる原因が変わります。

主な症状

同じ研究で、臨床の情報がそろっていた183人では、多かった症状は次のとおりでした[2]。

  • ●てんかん発作:78%
  • ●全体的な発達の遅れ:70%
  • ●手足のつっぱり(痙性):51%
  • ●頭が小さい(小頭症):50%

シルビウス裂のまわりに両側の多小脳回がある型では、口や舌・のどの動き(話す・食べる・飲み込む)の障害と、てんかん発作がみられることが多く、最大75%に軽度から中等度の知的障害がみられるとされています[1]。

経過と見通し(寿命)

多小脳回の範囲が広い型ほど、症状が早く現れ、重くなりやすいと報告されています[2]。反対に、範囲がせまい場合は症状が軽いこともあります。寿命についての信頼できるまとまったデータは確かめられませんでした。見通しは、多小脳回の範囲、原因、てんかんや飲み込みなどの合併症によって大きく変わるため、一人ひとりで考える必要があります。

原因がわかると、同じ原因の方の報告を手がかりに、見通しや合併症への備えを考えやすくなります。この点が、MRIで形がわかったあとに、遺伝子検査で原因を調べる意味のひとつです。

3. 多小脳回症の原因:遺伝子・染色体・妊娠中の感染

多小脳回症の原因は1つではなく、遺伝子の変化、染色体の変化、妊娠中の感染症など、さまざまです[1][3]。MRIで見える形が同じでも原因は違うことがあり、原因によって次のお子さんへの確率も大きく変わります。

遺伝子以外の原因:妊娠中の感染など

GeneReviewsでは、多小脳回は先天性サイトメガロウイルス感染症としばしば関連するとされ、妊娠中の感染症・けが・多胎妊娠などに注意して妊娠中の経過をくわしく聞くことが勧められています[1]。2023年の研究でも、遺伝以外の原因として、おなかの中での感染症や血流不足(虚血)が挙げられています[3]。

染色体の変化

染色体の一部が欠けたり増えたりする変化でも、多小脳回が起こります。GeneReviewsでは、最も多いものとして22q11.2欠失と1p36欠失が挙げられています[1]。こうした染色体の変化は、このページの遺伝子パネル検査ではなく、マイクロアレイ染色体検査で調べます。

遺伝子の変化:原因がわかるのは3割ほど

多小脳回のある275家系を、遺伝子パネル検査や全エクソーム検査で調べた2023年の研究では、原因と考えられる遺伝子の変化が見つかったのは90家系(32.7%)でした[3]。多かったのはPIK3R2(9家系)とTUBB2B(6家系)で、COL4A1またはCOL4A2も6家系でした[3]。この研究は、広く調べる検査のほうが、しぼった検査より原因が見つかりやすいと結論づけています[3]。

多小脳回に関係する遺伝子には、神経細胞の骨組みである微小管をつくるチューブリンの遺伝子(TUBA1A・TUBB2B・TUBB3など。まとめてチューブリン異常症と呼ばれます)や、脳の細胞の増え方を調節する遺伝子(PIK3R2・AKT3など。巨脳症・多小脳回・多指症・水頭症症候群(MPPH)の原因)などがあります[1]。このページの検査で調べるのは、このうち7つの遺伝子です(第6章)。

💡 MRIだけでは原因はわかりません

MRIでわかるのは「脳の形」です。同じように見える多小脳回でも、感染症が原因のこともあれば、遺伝子や染色体の変化が原因のこともあります。原因によって、次のお子さんへの確率も、次の妊娠での備え方も変わります。原因をしぼるには、妊娠中の経過・ご家族の情報・MRIの型に、遺伝子や染色体の検査を組み合わせて考えます。

4. 次のお子さんへの遺伝(再発率)は原因で大きく違う

次のお子さんで同じ病気が起こる確率(再発率)は、原因と遺伝のしかたによって大きく変わります。原因がわからないままでは、この確率をはっきりお伝えすることができません。主な遺伝のしかたごとに整理します。

お子さんで新しく起きた変化(de novo)の場合

GeneReviewsでは、多小脳回と診断された方の多くは、ご両親から受け継いだのではなく、お子さんで新しく起きた遺伝子の変化(de novo変異)によるとされています[1]。お子さんで新しく起きた変化なら、ご両親のせいで起きたのではないことがはっきりします。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

ただし、新しく起きた変化でも、次のお子さんへの確率はゼロではありません。ご両親のどちらかの卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)にだけ同じ変化がある「性腺モザイク」の場合があるからです。性腺モザイクの場合、その細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化をもちますが、生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは、実際の診療ではわかりません。血液で調べた結果も、生殖細胞の割合の目安にはなりません。

⚠️ 「新しく起きた変化だから次は大丈夫」とは言い切れません

ご両親の血液で同じ変化が見つからなくても、性腺モザイクの可能性は残ります。そのため、次のお子さんへの確率は「最大で2分の1」と考えます。多くの家族を平均した数字は、目の前のご両親一人ひとりの上限にはなりません。小さく見積もらず、次の妊娠でどう備えるかを、原因がわかったうえで一緒に考えることが大切です。

常染色体潜性(劣性)遺伝の場合:次のお子さんで4分の1

常染色体潜性(劣性)遺伝の病気では、ご両親はともに症状のない保因者で、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します[1]。このページの検査の遺伝子では、ADGRG1・KIF1BP・TUBA8がこの遺伝のしかたです[1][6]。ほかのお子さん(きょうだい)が保因者かどうかは、将来そのお子さんが結婚・出産を考えるときの手がかりにもなります。

常染色体顕性(優性)遺伝・X染色体の遺伝子の場合

常染色体顕性(優性)遺伝の遺伝子(このページではTUBA1A・TUBB2B・TUBB3)は、変化をもつ親から子へ、お子さん1人ごとに2分の1の確率で伝わります[1]。多小脳回では、お子さんで新しく起きた変化によるものも多いとされ[1]、その場合は上の「新しく起きた変化」の考え方になります。X染色体にある遺伝子(このページではSRPX2)の場合は、お母さんが保因者かどうかで、次のお子さんへの確率が変わります(X連鎖遺伝)。

感染症が原因の場合・原因がわからない場合

先天性サイトメガロウイルス感染症のように、妊娠中の感染が原因の場合は、遺伝子の変化が原因の場合とは考え方が違います。一方、原因がわからないままでは、次のお子さんへの確率をしぼりこめず、次の妊娠で出生前診断をするときにも、調べる的を決められません。原因を調べることは、次の妊娠への備えの出発点になります。

5. どんな人がこの検査を受けるとよいか

MRIで多小脳回と言われたお子さんとご家族、次のお子さんを考えていて原因を知りたいご両親に向く検査です。原因がわからないまま病院を回る時間を、検査で短くできる可能性があります。ただし、検査を受けても全員に原因が見つかるわけではありません(第3章)。

MRIで多小脳回と言われた方

  • ●MRIで多小脳回、または多小脳回を含む大脳皮質形成異常と言われた方
  • ●多小脳回があり、てんかん発作・発達の遅れ・話す食べるの難しさなどがある方
  • ●ご家族(きょうだいなど)に多小脳回の方がいる方

次のお子さんを考えているご両親

多小脳回のお子さんの原因がわかれば、次のお子さんで同じことが起こる確率を、遺伝のしかたに合わせて考えられます。原因がわかっていれば、次の妊娠で赤ちゃんを調べる出生前検査が可能になるとされています[1]。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行えるので、検査から次の妊娠の計画まで、続けてご相談いただけます(第8章)。

この検査より別の検査が向いている場合

このパネルで調べるのは7つの遺伝子です。2023年の研究で多かったPIK3R2やCOL4A1・COL4A2[3]は、このパネルには含まれていません。症状やMRIの型によっては、次の検査のほうが向いていることがあります。比べるのは検査の種類で、どれが合うかは遺伝カウンセリングで一緒に決めます。

🔍 状況に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
多小脳回で、このページの7遺伝子にしぼって調べたい このページの検査(7遺伝子)
多小脳回のほかにも皮質の形の異常がある・型をしぼれない 大脳皮質形成異常NGSパネル遺伝子検査(42遺伝子。SRPX2以外の6遺伝子を含む)
頭が大きい・指が多いなど、PIK3R2やAKT3の病気も考えたい 神経細胞遊走障害NGSパネル遺伝子検査(84遺伝子。7遺伝子すべてとPIK3R2・AKT3・COL4A1などを含む)
しわが少ない(滑脳症・厚脳回) 滑脳症NGS遺伝子パネル検査
頭の小ささ(小頭症)が目立つ 小頭症NGS遺伝子パネル検査
てんかんが中心で、脳の形の異常ははっきりしない てんかん包括的遺伝子検査
心臓や顔つきなど、脳以外の特徴もある(22q11.2欠失などを考える) マイクロアレイ染色体検査
症状が広く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)

※遺伝子の数と中身は、それぞれの検査ページに載っている遺伝子リストによる(2026年10月15日に確認)。

\ 次のお子さんのことを、原因から考える /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

原因がわかれば、次の妊娠での羊水検査・絨毛検査も院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

6. 調べる7つの遺伝子と、関係する病気

この検査では、多小脳回の原因として報告されている7つの遺伝子(ADGRG1、KIF1BP、SRPX2、TUBA1A、TUBA8、TUBB2B、TUBB3)を、まとめて調べます。遺伝子ごとに、関係する病気と遺伝のしかたが違います。

🧬 多小脳回症の遺伝子検査で調べる7遺伝子

遺伝子 関係する病気・特徴 遺伝のしかた
ADGRG1(旧名GPR56) 両側前頭頭頂部多小脳回(前頭葉で最も強い多小脳回)[4] 常染色体潜性(劣性)[1]
KIF1BP(KIFBP) ゴールドバーグ・シュプリンツェン症候群:小頭症・知的障害に、腸の神経の病気(ヒルシュスプルング病)を伴い、脳全体の多小脳回が報告されている[7] 常染色体潜性(劣性)[1][7]
SRPX2 ローランド発作(てんかん)と、口や言葉の動きの障害・知的障害がみられる家系で報告され、両側シルビウス裂周囲多小脳回のある男性も報告された[9]。ただし、その後の研究では、ローランドてんかんの主な原因とは考えにくいとされている[10] X染色体(Xq22)にある遺伝子。報告された家系では男性が発症し、女性の血縁者は軽い知的障害か、症状のない保因者だった[9]
TUBA1A チューブリン異常症。多小脳回より厚脳回のほうが多い[1](滑脳症3型など) 常染色体顕性(優性)[1]
TUBA8 脳全体の多小脳回と、視神経の低形成[6] 常染色体潜性(劣性)[6]
TUBB2B チューブリン異常症。左右で程度の違う(非対称な)両側の多小脳回[5] 常染色体顕性(優性)。最初の報告ではお子さんで新しく起きた変化[1][5]
TUBB3 チューブリン異常症(他の脳奇形を伴う複雑性皮質異形成1など)[1] 常染色体顕性(優性)[1]

※対象遺伝子は当院の検査内容による。関係する病気と遺伝のしかたは文献[1][4][5][6][7][9][10]による。KIF1BPは、現在の解説書ではKIFBPと表記されています[1]。

チューブリンの遺伝子(TUBA1A・TUBA8・TUBB2B・TUBB3)

7つのうち4つは、チューブリンというタンパク質の遺伝子です。チューブリンは微小管という細い管をつくり、生まれる前の脳で神経細胞が正しい場所へ移動し、皮質の層をつくるのに欠かせません。TUBB2Bの変化を最初に報告した研究では、左右で程度の違う両側の多小脳回がある4人と妊娠27週の胎児で、お子さんで新しく起きた変化が見つかりました[5]。

ADGRG1:前頭葉で強い多小脳回

ADGRG1(以前の名前はGPR56)は、両側前頭頭頂部多小脳回の原因として2004年に報告された遺伝子で、この病気では皮質の層の乱れが前頭葉で最も強いとされています[4]。常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親はともに保因者であることが多く、次のお子さんへの確率は4分の1です[1]。

7. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、7つの遺伝子の小さな変化(1文字の変化や、小さな挿入・欠失)と、遺伝子のまとまった欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

わかること

  • ●遺伝子のたんぱく質をつくる部分と、その前後のつなぎ目(スプライス部位)の変化
  • ●遺伝子1つまるごとの欠失・重複(頬の粘膜・血液)と、2つ以上続くエクソンの大きさの欠失・重複(血液のみ)。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します
  • ●読み取りの質が十分でない部分や、見つかった変化は、サンガー法という別の方法で確かめます
専門家向けの詳しい数値(読み取りの深さ)

調べる遺伝子の領域の99%以上を、20回以上(20x)くり返し読み取ります。同じ場所を何度も読むことで、読み間違いによる誤った判定を減らせます。

わからないこと

  • ●調べていない遺伝子:この検査は7つの遺伝子だけです。PIK3R2・COL4A1など、多小脳回の原因として多く見つかる遺伝子でも、このパネルに含まれないものがあります[3]。
  • ●染色体の変化:22q11.2欠失のような染色体の欠失・重複や、染色体の組み換わり(転座・逆位)はわかりません。マイクロアレイ染色体検査などで調べます。
  • ●見つけにくい変化:1つのエクソンだけの欠失・重複はふつうは検出されません。同じ配列のくり返しが伸びる変化(リピート伸長)、遺伝子のスイッチの部分(プロモーター)やエクソンから20塩基以上離れたイントロンの奥の変化も、この検査ではわかりません。よく似た配列(偽遺伝子など)があると、見つけにくくなることがあります。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(体細胞モザイク)を見つけることを目的とした検査ではありません。多小脳回を伴う病気のなかには、報告された方の多くが体細胞モザイクだったものもあります[1]。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知識ではまだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、ほかの遺伝子・染色体の変化や、妊娠中の感染症など遺伝以外の原因が残ります。「陰性=遺伝ではない」ではありません。

8. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。

原因が見つかったとき

病名と遺伝のしかたがはっきりし、同じ原因の方の報告を手がかりに、見通しや合併症への備えを考えられます。たとえばKIF1BPの病気では腸の神経の病気(ヒルシュスプルング病)を伴うことがあるなど[7]、遺伝子によって気をつけたい点が変わります。ご両親の検査で、受け継いだ変化か新しく起きた変化かを確かめると、次のお子さんへの確率をより具体的に考えられます(第4章)。

原因が見つからなかったとき

原因が見つからなかった場合でも、ほかの原因の可能性は残ります(第7章)。症状やMRIの型に合わせて、より多くの遺伝子を調べる神経細胞遊走障害パネル検査や全エクソーム検査、染色体を調べるマイクロアレイ検査を考えます。広く調べるほうが原因が見つかりやすいという報告もあります[3]。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断を確定したり、ご家族の発症リスクを判定したり、出生前診断の判断に用いたりはしません。ただし、病原性を評価するために、ご両親などの家族検査を行う場合があります。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。この検査には、VUSを結果の報告に含めない選択肢(VUS除外)もあります。結果の伝え方については、当院の二次的所見の開示方針もあわせてご覧ください。

次の妊娠を考えているご両親へ:保因者検査と出生前診断

ご家族で原因となる変化がわかっていれば、次の妊娠で赤ちゃんを調べる出生前検査が可能とされています[1]。当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。妊娠を考えている段階から、出生前診断をどう進めるかをご相談いただけます。原因がわからないまま次の妊娠を迎える場合の選択肢として、赤ちゃんの全エクソーム検査(出生前WES)もあります。

常染色体潜性(劣性)遺伝のADGRG1は、当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子)の対象遺伝子に含まれています(遺伝子一覧で2026年10月15日に確認)。多小脳回のお子さんのきょうだいが将来、結婚や出産を考えるときに、保因者かどうかを知る手がかりになります。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(単独では受けられません)。

9. 日本の制度(2026年10月時点)

多小脳回は、指定難病138「神経細胞移動異常症」の対象に含まれています。難病情報センターに掲載されている概要・診断基準では、狭い意味では滑脳症を指すものの、広い意味では多小脳回・異所性灰白質・裂脳症などを含むとされています(2026年10月時点で確認)。

この診断基準では、診断はMRIなどの画像検査で病型を確かめて行うとされ、遺伝子検査は診断に必須ではありません。一方で、遺伝性が疑われる場合は原因遺伝子の解析が望ましいとも書かれています。医療費の助成の対象となるのは、てんかんの程度などの重症度の基準を満たす方で、申請が必要です。小児慢性特定疾病の対象になるかどうかも含めて、くわしい条件は難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、どれもオンライン診療で受けられます。お子さんの場合は、唾液や頬の粘膜でも検査ができます。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医・オンライン可
▶
検体の採取キットは支払い後に送付
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
調べる遺伝子 ADGRG1、KIF1BP、SRPX2、TUBA1A、TUBA8、TUBB2B、TUBB3(7遺伝子)
調べる内容 塩基配列・欠失/挿入(どちらも料金に含まれる)
検体 血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(採取キットをお送りします)
結果までの期間 2〜3週間
至急オプション 結果までの期間が約7日短くなります:55,000円
VUS除外 意義がまだわからない変化(VUS)を報告に含めない選択(無料)
検査費用 税込330,000円(自費診療)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
オンライン診療 唾液・口の内側の粘膜・血液のいずれもオンライン診療で受けられます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします

※オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。決まった容器と手順で採らないと、検体の取り違えや品質の低下で、正しい結果が出せなくなるためです。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族や次のお子さんにとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、ご家族のこれからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

唾液・口の内側の粘膜・血液のいずれもオンライン診療で受けられ、結果は臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

お問い合わせはこちら | より多くの遺伝子を調べる検査

11. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【原因を知ることは、誰かを責めるためではない】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

多小脳回では、お子さんで新しく起きた遺伝子の変化によるものが多いとされています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。原因を調べるのは、誰かを責めるためではなく、お子さんのこれからと、ご家族の次の一歩を考えるためです。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに、念のため検査を受けた方に、まったく別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。次のお子さんを考えるご両親には、原因の検査から、次の妊娠での出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。知る・知らない、次のお子さんを持つ・持たない、出生前診断を受ける・受けない、どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 脳回とは何ですか?

脳回とは、大脳の表面にある「しわ」の盛り上がった部分のことです。盛り上がりのあいだの溝は脳溝と呼ばれます。脳のしわは、赤ちゃんがおなかの中にいる間、妊娠の中ごろから後半にかけて形づくられます。多小脳回症は、この脳回が小さく、数多くできてしまう病気です。

Q2. 多小脳回症の原因は何ですか?

原因は1つではありません。遺伝子の変化、22q11.2欠失などの染色体の変化、先天性サイトメガロウイルス感染症などの妊娠中の感染が知られています。多小脳回のある275家系を調べた研究では、原因と考えられる遺伝子の変化が見つかったのは32.7%でした。

Q3. 多小脳回症の寿命や見通しはどうですか?

多小脳回の範囲が広い型ほど、症状が早く現れ、重くなりやすいと報告されています。寿命についての信頼できるまとまったデータは確かめられませんでした。見通しは、範囲・原因・てんかんや飲み込みなどの合併症によって大きく変わります。

Q4. 子どもにはどんな症状が出ますか?

多小脳回の患者さんを調べた研究では、てんかん発作が78%、全体的な発達の遅れが70%、手足のつっぱりが51%、小頭症が50%にみられました。シルビウス裂のまわりの型では、話す・食べる・飲み込むことの難しさが出やすいとされています。

Q5. 次の子どもにも遺伝しますか?

原因によって大きく違います。常染色体潜性(劣性)遺伝なら、次のお子さんで4分の1です。お子さんで新しく起きた変化なら低くなりますが、ご両親の生殖細胞にだけ変化がある性腺モザイクの可能性があるため、最大で2分の1と考えます。原因を調べることが、確率を考える出発点になります。

Q6. 検査で原因が見つからなかったらどうなりますか?

この検査は7つの遺伝子だけを調べるので、原因が見つからなくても、ほかの遺伝子や染色体の変化、妊娠中の感染など遺伝以外の原因の可能性は残ります。より多くの遺伝子を調べる検査や全エクソーム検査、マイクロアレイ染色体検査を考えます。

Q7. 子どもでも受けられますか?検体は何ですか?

受けられます。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、どれもオンライン診療で受けられます。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りしますので、ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

Q8. 保険は使えますか?

当院のこの検査は自費診療です。検査費用は税込330,000円です。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が検査費用とは別にかかります。

🧬 原因を知ることから、次のお子さんへの備えを

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。多小脳回症の原因がわかれば、お子さんの見通しや合併症への備えだけでなく、次のお子さんへの確率や、きょうだいの将来を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による次の妊娠での出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。

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参考文献

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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