この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

滑脳症(かつのうしょう)は、お腹の中で脳がつくられるときに神経細胞がうまく移動できず、脳のしわ(脳回)が少なくなったり、なくなったりする病気です。てんかん発作や発達の遅れが起こり、重さや見通しは、しわの少なさの程度と原因によって大きく変わります。原因の多くは遺伝子の変化で、原因がわかれば、次のお子さんで同じことが起こる可能性がどれくらいあるか、次の妊娠でどう備えられるかを、具体的に考えられるようになります。この記事では、滑脳症の症状・寿命・原因遺伝子と、15遺伝子を一度に調べる当院の遺伝子検査を、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. 滑脳症とは?この検査で何がわかる?
脳のしわが少なくなる生まれつきの病気です。この検査は、滑脳症の原因として知られる15の遺伝子をまとめて調べ、原因の遺伝子の変化があるかを確かめます。
👪 Q. どんな人が受けるとよい?
MRIで滑脳症(無脳回・厚脳回・皮質下帯状異所性灰白質)と言われたお子さんと、そのご家族です。原因がわかると、次のお子さんでの確率と備え方が決まります。
💴 Q. 費用・日数・検体は?
検査料は税込330,000円(遺伝カウンセリング料30分22,000円は別)。結果まで2〜3週間。血液・唾液・頬の内側の粘膜で調べられ、オンライン診療にも対応しています。
📋 Q. 結果のあとは?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることもあります。次の妊娠では、羊水検査・絨毛検査を院内で受けられます。
1. 滑脳症とは:脳のしわが少なくなる病気
滑脳症は、大脳の表面のしわ(脳回)が少ない、またはない状態で生まれてくる病気で、「神経細胞移動異常症」の代表的な病気です。難病情報センターは、神経細胞の移動の異常によって大脳皮質が正常につくられず、脳のしわのパターンに異常が生じる病気としてまとめています。
お腹の中で脳がつくられるとき、神経細胞は脳の内側で生まれ、表面に向かって移動して何層もの大脳皮質をつくります。この移動がうまくいかないと、皮質が厚くなってしわが少なくなります。神経細胞が移動するときには、細胞の中の「レール」にあたる微小管や、レールの上で荷物を運ぶダイニンが働いています。滑脳症の原因遺伝子の多くは、このしくみに関わっています。くわしいしくみは古典型滑脳症のしくみで解説しています。
無脳回・厚脳回・皮質下帯状異所性灰白質:重さには幅がある
滑脳症は、しわがまったくない「無脳回」から、しわが少なく幅の広い「厚脳回」、そして軽い型の「皮質下帯状異所性灰白質(SBH)」まで、ひと続きの幅をもつ病気です。SBHは、皮質の下に神経細胞の帯が残る状態で、「二重の皮質」のように見えることから、ダブルコルテックスとも呼ばれます。用語は無脳回・厚脳回で詳しく説明しています。
米国の遺伝性疾患の解説書GeneReviewsは、滑脳症とSBHの重さを、知的障害の程度と見通しから3段階に分けています。いちばん軽い段階は境界〜中等度の知的障害で成人まで生きることが見込まれ、中間の段階は中等度〜重度の知的障害で寿命が短くなることがあり、いちばん重い段階は重度の知的障害で、生きられる期間が短いのが典型とされています[1]。
古典型と敷石様型:このパネルに筋ジストロフィーの遺伝子が入っている理由
滑脳症には、神経細胞が表面まで届かない「古典型」のほかに、神経細胞が脳の表面を越えて出てしまう「敷石様(コブルストーン)型」があります。難病情報センターは後者を「敷石様皮質異形成」と呼び、脳の表面が石を敷きつめたように見える状態としています。
敷石様型は、筋肉の病気(先天性筋ジストロフィー)といっしょに起こることが多く、ジストログリカンというタンパク質に糖の鎖を付ける働きに関わる遺伝子(FKTN・FKRP・POMT1・POMT2・POMGNT1・LARGE1など)が原因になり、常染色体潜性(劣性)遺伝のしかたをとります[5][8]。日本では福山型先天性筋ジストロフィーが最も多い型で[5]、脳には敷石様の滑脳症がみられることが特徴とされています[4]。この検査に筋ジストロフィーの遺伝子が入っているのは、このためです。
どれくらいの頻度で起こるか
古典型滑脳症の頻度は、出生100万人あたり11.7〜40人と推定されています(原因を問わない古典型全体)[1]。日本の小児慢性特定疾病情報センターは、出生10万あたり1.18という報告を紹介していますが、MRIが普及する前の調査のため正確な頻度は不明としています。難病情報センターも、患者数は正確にはわかっておらず、MRIで診断されるようになって患者数が増えているとしています。
2. 滑脳症の症状
滑脳症の主な症状は、てんかん発作、発達の遅れ、知的障害、運動の障害です。難病情報センターと小児慢性特定疾病情報センターは、古典型ではてんかん、特に点頭てんかんと、筋肉の張りが弱いタイプの脳性麻痺、知的障害をあわせ持つことが多いとしています。
てんかん(点頭てんかん)
PAFAH1B1(LIS1)による滑脳症では、90%を超える人にてんかん発作がみられます。発作はふつう生後2年以内に始まり、始まる時期は平均して生後5か月ごろです。約80%に点頭てんかん(West症候群)の発作がみられ、65%を超える人で薬が効きにくいと報告されています[1]。DCXによる男性の滑脳症では、てんかんは約75%にみられます[2]。
発達・運動・飲み込み・呼吸
しわの少なさが重い型では、発達の多くの段階が早い時期にとどまり、生涯にわたって介護が必要になることが多くなります。難病情報センターは、病気そのものは進行せず慢性に経過する一方、重い場合には肺炎などの感染症や、栄養・呼吸の障害で全身の状態が悪くなることがあるとしています。飲み込みがうまくいかないことによる誤嚥性肺炎は、命に関わる合併症として最も多いものとされています[1]。
軽い型(皮質下帯状異所性灰白質)と大人になってからの症状
軽い型のSBHでは、てんかん発作がふつう10歳ごろまでに始まり、薬が効きにくいことも多いとされています[1]。DCXによるSBHの女性では、小児期に80%を超える人にてんかんがみられます[2]。一方で、軽い人は知的な発達が平均的なこともあり、DCXの変化を持つお母さん25人のうち14人(56%)は症状がなく、脳のMRIも正常だったと報告されています[2]。お子さんの診断をきっかけに、大人のご家族が同じ変化を持っていたとわかることがあるのは、このためです。
3. 滑脳症の寿命と見通し
滑脳症の寿命は、しわの少なさの程度と原因によって大きく変わります。重い型ほど短く、軽い型のSBHは一般に成人まで生きるとされています。以下の数字は、研究で報告された集団のもので、一人ひとりのお子さんの見通しをそのまま表すものではありません。
📊 型ごとに報告されている見通し
※GeneReviews[1][2]による。対象は報告された患者さんの集団で、診断の時期や医療の状況によって変わります。
何で見通しが変わるか
見通しを左右する大きな要素は、しわの少なさの程度(MRIの所見)、原因の遺伝子、そして合併症です。とくに、てんかん発作をどれだけ抑えられるか、飲み込みや呼吸をどう支えるかが、日々の生活と命に関わります。原因の遺伝子がわかると、その遺伝子で報告されている経過を参考に、起こりやすい合併症に前もって備えることができます。
歩ける?治る?
PAFAH1B1(LIS1)による重い滑脳症では、寝返りや限られたはいはいはできることがありますが、座れるようになるのはまれで、支えがあれば歩けた人は少数と報告されています[1]。軽い型では発達の幅が広がります。難病情報センターは、根本的な治療法はなく、薬や療育などの対症療法が中心としています。脳の形そのものを治すことはできませんが、てんかんの治療、リハビリ、栄養や呼吸の管理で、お子さんの生活を支えていきます。
ミラー・ディーカー症候群の場合
ミラー・ディーカー症候群は、17番染色体の17p13.3という場所で、少なくともPAFAH1B1とYWHAEの2つの遺伝子を含む大きな欠失が起きたものです。重い滑脳症に、特徴的な顔立ちが加わり、見通しはよくありません[1]。複数の遺伝子がまとめて欠ける「隣接遺伝子症候群」の一つです。
4. 滑脳症はいつわかる?エコー・MRIでの見つかり方
滑脳症の診断の中心は、生まれてからの頭部MRIです。難病情報センターも、現在はMRIで診断されるようになったとしています。乳児期のてんかん発作や発達の遅れをきっかけにMRIを撮って、わかることが多い病気です。
妊娠中の超音波(エコー)や胎児MRIで、脳溝・脳回の発達の異常から見つかった報告もあります。敷石様の滑脳症が妊娠中期の超音波と胎児MRIで見つかった症例の報告では、脳溝・脳回の発達の異常を示すことで出生前の診断ができること、MRIは皮質の発達の異常の見つけやすさを高めうることが述べられています[7]。ただし、これは症例報告で、妊娠中のエコーで滑脳症をどのくらい見つけられるかを示すものではありません。エコーで胎児の脳室拡大などを指摘されたときは、赤ちゃんの遺伝子を広く調べる出生前全エクソーム(WES)検査も選択肢になります。
💡 原因がわかっていれば、次の妊娠では遺伝子で確かめられる
エコーで見えるかどうかに頼らなくても、ご家族の原因の遺伝子の変化がわかっていれば、次の妊娠では羊水検査・絨毛検査でその変化を直接調べることができます[1][2]。上のお子さんの原因を先に確かめておくことが、次の妊娠への備えの出発点になります。
5. 原因と遺伝のしかた
滑脳症の原因の多くは遺伝子の変化です。滑脳症とSBHの患者さん811人を調べた研究では、81%で原因の遺伝子の変化が見つかりました。原因の内訳は、PAFAH1B1(LIS1)が40%、DCXが23%、TUBA1Aが5%、DYNC1H1が3%で、そのほかの遺伝子はそれぞれ1%以下でした。残りの19%は原因がわからないままで、まだ見つかっていない原因遺伝子があると考えられています[3]。この研究は17の遺伝子のパネル検査または全エクソーム解析で行われたもので、当院の15遺伝子パネルでの検出率を示すものではありません。
主な原因遺伝子
PAFAH1B1(LIS1)は最も多い原因で、多くは前のほうが厚脳回、後ろのほうが無脳回という形になります[3]。遺伝のしかたは常染色体顕性(優性)で、典型的にはお子さんで新しく起きた変化(de novo変異)です[1]。詳しくはLIS1(PAFAH1B1)遺伝子で解説しています。
DCXはX染色体にある遺伝子で、男性では全体または前のほうに強い滑脳症、女性では主にSBHを起こします[2][3]。詳しくはDCX遺伝子とX連鎖性滑脳症をご覧ください。
TUBA1Aは微小管の部品をつくる遺伝子で、小脳の低形成を伴う滑脳症などに関わります(チューブリン異常症)。RELN・VLDLRは常染色体潜性(劣性)遺伝で、海馬や小脳の低形成を伴う滑脳症を起こし、それぞれ患者さんの1%未満です[3]。ACTB・ACTG1はBaraitser-Winter症候群に関わり、前のほうに軽い厚脳回がみられます。ARXはX連鎖の遺伝子で、外性器の異常を伴うX連鎖性滑脳症(XLAG)を起こします[3]。
17p13.3の欠失(ミラー・ディーカー症候群)とマイクロアレイ
ミラー・ディーカー症候群は、1つの遺伝子の小さな変化ではなく、PAFAH1B1とYWHAEを含む約1.3Mbの染色体の欠失で起こります[1]。この検査は遺伝子1つ分がまるごと欠けている変化も調べますが、YWHAEは対象に入っていないため、欠けている範囲がどこまで広がっているかは、この検査ではわかりません。ミラー・ディーカー症候群が疑われるときは、染色体の小さな欠失・重複を調べるマイクロアレイ染色体検査が向いています。
遺伝子以外の原因(先天性サイトメガロウイルス感染症)
難病情報センターは、神経細胞移動異常症の原因として、遺伝子の変化のほかに、先天性サイトメガロウイルス感染症などの胎内感染を挙げています。感染が原因の場合は、遺伝子検査では原因の変化は見つかりません。
6. どんな人が受けるとよいか・どの検査を選ぶか
この検査は、MRIで滑脳症の幅(無脳回・厚脳回・SBH)にあたると言われたお子さんの原因を確かめたい方と、そのご家族に向いています。原因がわからないまま病院を回る時間を、1回の検査で短くできる可能性があります。ただし、滑脳症の研究でも19%は原因がわからないままで[3]、検査を受けても全員に原因が見つかるわけではありません。
受けるとよい人
- MRIで無脳回・厚脳回・皮質下帯状異所性灰白質と言われ、原因を知りたいお子さん
- 滑脳症のお子さんがいて、次の妊娠を考えているご両親
- きょうだいが滑脳症で、自分が将来子どもを持つときのことを知りたい方(原因の遺伝子が潜性遺伝・X連鎖の場合)
- ほかの検査(染色体検査など)で原因がわからなかった方
原因の遺伝子がわかっていない段階では、次の妊娠で赤ちゃんの何を調べればよいかを決められません。上のお子さんの原因を確かめることは、ご家族のこれからの計画の土台になります。結果によっては、ご両親の検査が、次のお子さんの確率を考える手がかりになります。
この検査・ほかのパネル・全エクソーム・マイクロアレイの選び分け
どの検査が合うかは、MRIの所見と、ほかに疑われる病気で決まります。当院には、滑脳症の遺伝子を含むパネルがほかに2つあり、料金(税込330,000円)と結果までの日数(2〜3週間)はこの検査と同じです。
🧭 MRIの所見から選ぶ検査
※遺伝子数・料金・日数は、当院の各検査ページの記載による。
どれを選ぶか迷うときは、MRIの結果をお持ちいただければ、遺伝カウンセリングで臨床遺伝専門医がご一緒に検査を選びます。
7. 調べる15遺伝子と関係する病気
この検査では、ACTB・ACTG1・ARX・DCX・FKRP・FKTN・LARGE1・MACF1・PAFAH1B1・POMGNT1・POMT1・POMT2・RELN・TUBA1A・VLDLRの15遺伝子をまとめて調べます。古典型の原因の遺伝子と、敷石様型の原因の遺伝子の両方を含んでいます。
8. 検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、15遺伝子の中の小さな変化(1文字の違いや、小さな挿入・欠失)と、遺伝子がまるごと、または連続した2つ以上のエクソンが欠けたり重複したりしている変化です。遺伝子の配列は、対象の領域の99%以上を20回以上ずつ読み取ります。同じ場所をくり返し読むほど、読み間違いと本当の変化を見分けやすくなります。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
⚠️ この検査ではわからないこと
・15遺伝子以外の遺伝子の変化/・染色体の転座や逆位、くり返し配列の伸長/・遺伝子の働きを調節する領域の多くや、エクソンから離れた場所の変化/・1つのエクソンだけの欠失・重複(見つかることはありますが、ふつうは検出の対象ではありません)/・体の一部の細胞だけに変化がある「モザイク」(この検査はモザイクを見つけるようには作られていません)/・感染など遺伝子以外の原因
特にモザイクは滑脳症で大切な点です。PAFAH1B1による後ろのほうのSBHでは、変化の多くがモザイクで、変化を持つ細胞の割合は約30%だったと報告されています[3]。検査で変化が見つからなくても、滑脳症ではないということにはなりません。また、意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることがあります。VUSは、それだけで診断やご家族の検査に使いません。
9. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけを郵送やメールでお送りすることはありません。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、二次的所見の開示方針のとおりです。
陽性・陰性・VUSのとき
陽性(原因の変化が見つかった)のときは、診断が確かになり、その遺伝子で報告されている経過をもとに、てんかんや飲み込み・呼吸の合併症への備えを考えられます。病名がわかると、受けるべき検査や使える制度が決まります。全エクソーム・全ゲノム検査の研究167件をまとめた米国臨床遺伝・ゲノム学会の系統的レビューでは、95%が患者さんかご家族の診療方針に何らかの変化があったと報告していました[6](変化の中身や大きさは研究ごとに異なります)。
陰性(原因の変化が見つからなかった)ときは、15遺伝子以外の原因、この検査で見つけにくい変化(モザイク・染色体の欠失など)、感染などが考えられます。MRIの所見に応じて、全エクソーム検査やマイクロアレイ染色体検査が次の選択肢になります。VUSのときは、ご両親の検査や今後の研究で評価が変わることがあるため、その扱いを遺伝カウンセリングでご説明します。
次のお子さんで同じ病気が起こる確率
次のお子さんで同じ病気が起こる確率(再発率)は、原因の遺伝子と遺伝のしかたで大きく変わります。原因がわかってはじめて、ご家族ごとの数字を考えられます。
👶 原因ごとの次のお子さんの確率
※GeneReviews[1][2][4]による。実際の確率は、ご家族の検査結果をもとに遺伝カウンセリングでご説明します。
親の生殖細胞(卵子・精子のもとになる細胞)にだけ変化がある状態を性腺モザイクといいます。ご両親の血液で変化が見つからなくても、次のお子さんの確率がゼロとは言えないのはこのためです。
次の妊娠での備え
ご家族の原因の変化がわかっていれば、次の妊娠では出生前検査でその変化を調べることができます[1][2]。当院では2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。原因がわからないままでは、出生前に何を調べればよいかの的を決められません。妊娠中にエコーで脳の異常を指摘された場合は、出生前全エクソーム(WES)検査も選択肢になります。
きょうだいの将来と保因者検査
原因が常染色体潜性遺伝やX連鎖の遺伝子だった場合、症状のないきょうだいが保因者であることがあります。きょうだいが将来、結婚や妊娠を考えるとき、ご家族の原因がわかっていれば、何を調べればよいかがはっきりします。日本では福山型先天性筋ジストロフィーの保因者は約188人に1人と推定され、出生1万人あたり0.7〜1.2人に発症するとされています[4]。当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)には、この検査の遺伝子のうちFKTN・FKRP・POMT1・POMT2・POMGNT1・VLDLR・DCX・ARXが含まれています(RELN・LARGE1は含まれていません)。
新しく起きた変化なら、ご両親のせいではない
PAFAH1B1やTUBA1Aによる滑脳症の多くは、お子さんで新しく起きた変化によるものです[1][3]。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。原因を確かめることで、「妊娠中の何かがいけなかったのでは」という思いに、医学的な答えが出せることがあります。
10. 日本の制度(指定難病・小児慢性特定疾病)
滑脳症は、指定難病138「神経細胞移動異常症」に含まれます。また、小児慢性特定疾病(神経・筋疾患の脳形成障害)の対象疾病にも「滑脳症」が載っています(2026年10月時点、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターで確認)。医療費の助成を受けられるかどうかは、症状の程度などの基準で決まります。
当院のこの検査は自費診療で、保険は使えません。
11. 検査の流れ・費用・日数・検体
予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
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結果のご説明2〜3週間後
検査の前に、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行います。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。当院の遺伝カウンセリングは、検査を受けることを前提にしたものです。
💴 費用・日数・検体
※遺伝子1つ分がまるごと欠けている変化は頬の粘膜・血液のどちらでも、連続した2つ以上のエクソンの欠失・重複は血液でのみ調べられます。腫瘍の組織での検査は対象外です。
オンライン診療では、ビデオ通話で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金のお支払いのあとにお送りします。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、ご自身の判断で先に検体を採らないでください。
12. 院長コラム
🩺 院長コラム【わからないまま悩むより、わかったことから次を考える】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です(遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由)。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。
滑脳症の原因の多くは、お子さんで新しく起きた変化です。一方で、DCXのように、お母さんが症状なく変化を持っていることもあります。どちらなのかは、調べてみなければわかりません。わからないまま「自分のせいかもしれない」「次の子も同じかもしれない」と悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と私は考えています。
次のお子さんを持つかどうかは、ご家族の生き方そのものに関わる大きな選択です。調べる・調べない、次の妊娠で出生前検査を受ける・受けない、どの選択も尊重されるべきものです。当院は、検査から遺伝カウンセリング、次の妊娠での羊水検査・絨毛検査まで、同じ場所で続けて支えられる体制を整えています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 滑脳症になるとどうなりますか?
脳のしわ(脳回)が少ないため、てんかん発作、発達の遅れ、知的障害、運動の障害が起こります。PAFAH1B1(LIS1)による滑脳症では90%を超える人にてんかん発作がみられ、多くは生後2年以内、平均して生後5か月ごろに始まります。重さは、しわの少なさの程度と原因の遺伝子によって大きく違います。
Q2. 滑脳症の寿命はどれくらいですか?
重さと原因によって大きく変わります。PAFAH1B1(LIS1)による重い滑脳症では、10歳まで生きる人が約半数で、20歳に達する人はごくわずかと報告されています。ミラー・ディーカー症候群では多くが2歳までに亡くなると報告されています。一方、軽い型の皮質下帯状異所性灰白質は、一般に成人まで生きるとされています。個々のお子さんの見通しは、MRIの所見と原因をもとに主治医と相談してください。
Q3. 滑脳症の子は歩けるようになりますか?治りますか?
PAFAH1B1(LIS1)による重い滑脳症では、寝返りや限られたはいはいはできることがありますが、座れるようになるのはまれで、支えがあれば歩けた人は少数と報告されています。軽い型では発達の幅が広がります。脳の形そのものを治す治療はなく、てんかんの治療や療育、栄養・呼吸の管理などで、生活を支えます。
Q4. 滑脳症はエコーでわかりますか?
妊娠中の超音波や胎児MRIで、脳溝・脳回の発達の異常から見つかった報告はあります。ただし、診断の中心は生まれてからのMRIです。ご家族の原因の遺伝子の変化がわかっていれば、次の妊娠では羊水検査・絨毛検査でその変化を直接調べることができます。
Q5. 滑脳症は遺伝しますか?次の子で起こる確率は?
原因の遺伝子によって違います。PAFAH1B1(LIS1)では多くがお子さんで新しく起きた変化で、ご両親が持っていなければ確率は低いものの、親の生殖細胞にだけ変化がある場合があるため、ゼロではありません。DCXでは、お母さんの血液で変化が見つからなくても5〜10%とされています。常染色体潜性遺伝の遺伝子で、ご両親とも保因者なら4分の1です。
Q6. 大人になってから症状が出ることはありますか?
軽い型の皮質下帯状異所性灰白質では、てんかん発作が10歳ごろまでに始まることが多いとされています。また、DCXの変化を持つお母さんのなかには、症状がなく、脳のMRIも正常な人がいると報告されています。お子さんの診断をきっかけに、ご家族が同じ変化を持っていたとわかることがあります。
Q7. 滑脳症は指定難病ですか?
滑脳症は、指定難病138「神経細胞移動異常症」に含まれます。小児慢性特定疾病(神経・筋疾患)の対象疾病にも「滑脳症」が載っています(2026年10月時点)。助成を受けられるかどうかは、症状の程度などの基準によって決まります。
Q8. 検査の費用と、結果が出るまでの日数は?
検査料は税込330,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。結果が出るまでは2〜3週間で、至急オプション(55,000円)を使うと約7日短くなります。結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。
滑脳症の原因を、ご家族のこれからのために
15遺伝子をまとめて調べ、結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明します。原因がわかれば、次の妊娠では羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます。
お電話:03-3478-3768(代表)
参考文献
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