この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

46,XY性分化疾患は、染色体は46,XYなのに、精巣のでき方や男性ホルモンの働き方の違いによって、からだの性の発達が典型的な男性の形とは異なる、生まれつきの体質の総称です。スワイヤー症候群やアンドロゲン不応症がその代表です。原因の遺伝子がわかると、性腺の腫瘍への備え方、副腎の確認、妊娠の可能性、ご家族へ伝わる確率まで、次に何をすればよいかが決まります。このページでは、SRY・NR5A1・ARなど10遺伝子を一度に調べる遺伝子検査でわかることと、わかったあとにできることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
46,XY性分化疾患の原因になる10遺伝子(SRY・NR5A1・MAP3K1・DHH・CBX2・DMRT1・ZFPM2・NR0B1・AR・AKR1C4)を一度に調べ、スワイヤー症候群(完全型性腺形成不全)やアンドロゲン不応症などの原因の遺伝子を確かめます。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
染色体検査で46,XYとわかっていて、生まれたときの外性器の形の違い、思春期に月経が来ない(原発性無月経)、二次性徴が来ないなどがある方、ご家族に同じ病気の方がいる方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、唾液・頬の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因の遺伝子によって、性腺の腫瘍への備え、副腎の確認、お母さま・きょうだいへの影響が変わります。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. 46,XY性分化疾患(DSD)とは
性分化疾患(DSD)は、染色体・性腺(精巣や卵巣)・外性器などのからだの性の発達が、典型的な形と異なる、生まれつきの状態の総称です[1]。そのうち、染色体の組み合わせ(核型)が46,XYのものを、46,XY性分化疾患と呼びます。
2006年の国際的な合意声明で、当事者を傷つけることのあった古い呼び方に代わって、disorders of sex development(DSD)という呼び方が提案されました[1]。日本では「性分化疾患」と訳されています。からだの発達の状態を表す言葉であって、「男でも女でもない」という意味ではありません。
性染色体が46,XYであることは、からだの性が決まる出発点にすぎません。その先で、精巣ができるか、精巣から男性ホルモンが出るか、男性ホルモンがからだに働くか、という段階のどこかで違いが起こると、46,XY性分化疾患になります。
からだの性は「染色体→性腺→ホルモン」の3段階でできる
46,XYの胎児では、Y染色体のSRY遺伝子などが働いて、もとの性腺が精巣になります。精巣から出るホルモンによって、外性器が男性型に発達します。どの段階に関わる遺伝子かによって、起こる病気の形が変わります。
染色体46,XY
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精巣ができるSRY・NR5A1など
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男性ホルモンが出る精巣のホルモン
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ホルモンが働く受け取り手はAR
このパネルの10遺伝子は、ほとんどが2つめの「精巣ができる」段階に関わります。SRY・NR5A1・MAP3K1・DHH・CBX2・DMRT1・ZFPM2が、精巣をつくる流れに関わります。NR0B1は、量が増えすぎる(重複する)と精巣ができにくくなる遺伝子です[3]。精巣の中では、セルトリ細胞などがこれらの遺伝子の働きで育ちます。
4つめの「ホルモンが働く」段階を担うのがAR遺伝子です。ARは男性ホルモン(アンドロゲン)を受け取る受容体をつくり、ここに変化があるとアンドロゲン不応症になります[2]。AR・NR5A1・NR0B1の3つは、いずれも核内受容体と呼ばれるタンパク質の仲間です。AKR1C4は、男性ホルモンの材料を変える酵素の遺伝子です。
主な型:スワイヤー症候群とアンドロゲン不応症の違い
スワイヤー症候群は「精巣ができない」型、アンドロゲン不応症は「精巣はあるが男性ホルモンが効かない」型です。どちらも外性器は女性型になることが多いのですが、子宮があるかどうか、性腺の状態、遺伝のしかたが違います。
🧬 46,XY性分化疾患の主な型
※スワイヤー症候群は米国国立医学図書館のMedlinePlus Genetics、アンドロゲン不応症はGeneReviews[2]と小児慢性特定疾病情報センターの解説による。
米国国立医学図書館の解説(MedlinePlus Genetics)によると、スワイヤー症候群の方は子宮と卵管をもつことが多く、性腺は働かない索状の組織になっています。アンドロゲン不応症では精巣があり男性ホルモンも作られますが、からだがそれに反応できません。完全型では外性器が女性型になり、部分型では男性化の程度に幅があります[2]。アンドロゲン不応症は、古い資料では「精巣性女性化症候群」と呼ばれていました。
いつ・どうやってわかる?
46,XY性分化疾患は、生まれたとき、思春期、大人になってからの不妊の検査など、さまざまな時期に見つかります。どの時期に気づかれるかは、型と、からだの性の発達の程度によって違います。
- ●生まれたとき:外性器の形がはっきりしない、尿道の出口の位置が違う(尿道下裂)、停留精巣などをきっかけに見つかります。
- ●思春期:女性として育った方で、月経が来ない(原発性無月経)、胸がふくらまないなど二次性徴が来ないことから見つかります。16歳で原発性無月経と思春期の遅れから、スワイヤー症候群とわかった方の報告もあります[8]。
- ●大人になってから:不妊の検査で、性腺や精子をつくる働きの問題が見つかることがあります[7]。
- ●妊娠中:家族歴のない妊娠で、出生前に見つかった報告もあります[2]。NIPTで調べた赤ちゃんの性別と、エコーで見た外性器の形が食い違うことがきっかけになることもあります(NIPTの性別が外れたと言われる原因)。
何人に1人? 性分化疾患の割合
2006年の国際的な合意声明は、性器の形の違いは出生約4,500人に1人と推定しています[1]。型ごとにみると、スワイヤー症候群は約8万人に1人(MedlinePlus Genetics)、完全型アンドロゲン不応症は10万人あたり2〜5人とされています[2]。どれもまれな病気で、身近に同じ立場の人がいないことが、ご本人やご家族の悩みを深くすることがあります。
性分化疾患と性別違和(トランスジェンダー)は別のもの
性分化疾患は、染色体・性腺・外性器という「からだの性の発達」の違いを指す言葉です[1]。ご本人がご自身の性をどう感じているか(性自認)とは、別の話です。からだの違いがあることと、その方の性自認を、同じものとして扱わないことが大切です。
2. どんな人がこの検査を受けるとよいか
染色体検査で46,XYとわかっていて、性腺の発達や男性ホルモンの働きの違いが疑われる方に向く検査です。病名と原因の遺伝子がはっきりすると、このあと受けるべき検査、性腺の腫瘍への備え、ご家族の検査など、次の一手が決まります。
この検査を受けるとよい場面
- ●生まれたときに外性器の形の違い(尿道下裂・小陰茎・停留精巣など)があり、染色体が46,XYだった
- ●女性として育ち、原発性無月経や二次性徴が来ないことから、46,XYとわかった
- ●スワイヤー症候群やアンドロゲン不応症と言われたが、原因の遺伝子はまだわかっていない
- ●性腺をとる手術の時期を考える前に、性腺の腫瘍への備え方を決めたい
- ●ご家族(姉妹・おば・いとこなど)に同じ病気の方がいて、お母さまやご自身が変化をもっているか知りたい
性分化疾患では、病名がつくまでに、いくつもの検査や病院を回ることが少なくありません。原因の遺伝子がわかれば、その回り道を短くできる可能性があります。ただし、この検査ですべての方に原因が見つかるわけではありません(第4章)。
この検査より別の検査が向いている場合
この検査は、染色体が46,XYだとわかっている方のための検査です。染色体をまだ調べていない方や、ホルモンの検査で別の病気が疑われる方は、次の検査のほうが向いていることがあります。比べるのは検査の種類で、どれを選ぶかは遺伝カウンセリングで一緒に決めます。
🔍 状況に合わせた検査の選び方
※ゴナドトロピンが高いのは性腺そのものの問題、低いのは性腺を動かす脳の側の問題、というのがおおまかな目安です。実際の選び方は、ホルモンの検査値・画像・診察所見をあわせて決めます。
46,XY性分化疾患パネル(10遺伝子)と性分化疾患(DSD)パネル(200遺伝子)の選び分け
当院の性分化疾患(DSD)遺伝子検査パネルは200遺伝子を調べ、このページの10遺伝子をすべて含んでいます。料金(税込330,000円)と結果までの日数(2〜3週間)は同じです。どちらを選ぶかは、調べたい範囲で決めます。
⚖️ 2つのパネルの違い
※調べる遺伝子が少ないほど、意義がまだわからない変化(VUS)や、調べた目的と別の所見に出会う機会は少なくなります。一方で、範囲の外にある原因は見つかりません。
3. 調べる10遺伝子と、それぞれでわかる病気
この検査では、46,XY性分化疾患の原因として知られる10遺伝子を、まとめて調べます。遺伝子ごとに、起こる病気、遺伝のしかた、わかったあとに気をつけることが違います。
🧬 調べる10遺伝子と、わかる病気・遺伝のしかた
※対象の遺伝子は当院の検査内容(2026年10月20日に確認)による。病名と遺伝のしかたはOMIM、GeneReviews[2][3]、文献[6][7][9]、MedlinePlus Geneticsによる。
米国国立医学図書館の解説(MedlinePlus Genetics)によると、スワイヤー症候群の約15%はSRY遺伝子の変化によるもので、MAP3K1は最大で約18%を占めるとされています。NR5A1とDHHの変化も、一部の方で見つかっています。NR5A1は、46,XYの性腺形成不全の最大20%を占めるという報告もあります[7]。
NR5A1は、同じ変化が家族の中で性別によって違う形で現れることが知られています。2009年の研究では、46,XY性分化疾患のお子さんと、早発卵巣不全の46,XXの女性(お母さまや姉妹)が、同じNR5A1の変化をもっていた4家系が報告されました。変化をもちながら症状のなかったお母さまもいました[6]。
この検査で調べない主な遺伝子
46,XY性分化疾患の原因の遺伝子は、この10遺伝子だけではありません。たとえば次の遺伝子は、このパネルには入っていません。
これらは、200遺伝子の性分化疾患(DSD)遺伝子検査パネルに入っています。男性ホルモンを作る酵素の病気が疑われる場合や、型がしぼれない場合は、そちらを選びます。
4. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、10遺伝子の中の小さな変化(一塩基の変化・小さな挿入や欠失)と、遺伝子のまとまった欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があり、陰性でも病気を否定することはできません。
わかること・わからないこと
- ●わかること:遺伝子のタンパク質をつくる部分(エクソン)と、その境目の小さな変化。欠失・重複の解析では、遺伝子1つ分まるごとの欠失・重複(血液・頬の粘膜)と、隣り合う2つ以上のエクソンの欠失・重複(血液のみ)を見つけられます。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
- ●NR0B1とDMRT1:NR0B1は量が増える(重複する)ことで、DMRT1は9番染色体の端の欠失で病気になります[3]。欠失・重複が見つかったときは、その範囲がどこまで広いかをマイクロアレイ染色体検査で確かめることがあります。
- ●わからないこと:染色体の転座・逆位、繰り返し配列の伸長、遺伝子の働きを調節する部分(プロモーター)や、エクソンから離れた深い部分の変化。たとえば、AR遺伝子の中の繰り返し配列(CAGリピート)が長くなって起こる球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は、この検査の対象ではありません。単一エクソンの欠失・重複は、ふだんは検出の対象にしていません。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)は、この検査で見つけることを目的にしていません。45,X/46,XYのような染色体のモザイクは、染色体検査で調べます。
- ●調べていない遺伝子:前の章の「この検査で調べない主な遺伝子」の原因は見つかりません。
専門的な精度の情報(カバレッジ)
調べる領域の99%以上を、同じ場所を20回以上読み取る精度(≥99% at 20x)で読み取ります。同じ場所を何度も読むほど、読み間違いと本当の変化を見分けやすくなります。読み取りの質が基準に届かない部分は、サンガー法という別の方法で確かめます。
陰性でも否定できない理由と、意義がまだわからない変化(VUS)
46,XY性分化疾患は、遺伝子をたくさん調べても、原因が見つからない方が多い病気です。64の診断遺伝子を調べた国際的な研究では、46,XY性分化疾患の278人のうち、遺伝的な診断がついた見込みが高いのは43%でした[4]。10遺伝子にしぼったこの検査で原因が見つからなくても、調べていない遺伝子や、今の方法では見つけられない変化が原因のことがあります。
また、病気の原因かどうかまだ判断できない変化(VUS)が見つかることがあります。VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、あとから意味がはっきりすることもあります。ご希望により、VUSを結果の報告に含めない設定(VUS除外、無料)も選べます。
5. 病的変異が見つかったら、次にできること
原因の遺伝子がわかるだけでは意味がありません。わかったあとに何ができるかが大切です。46,XY性分化疾患では、原因の遺伝子によって、性腺の腫瘍への備え方、副腎の確認、妊娠の可能性、ご家族への影響がはっきり変わります。治療やホルモン補充は、小児内分泌科・婦人科・泌尿器科など、性分化疾患を専門に診る医療機関で受けていただきます。
ご本人:性腺の腫瘍への備えと、性腺をとる時期の判断
46,XY性分化疾患では、性腺に腫瘍(性腺芽腫などの胚細胞腫瘍)ができやすいことがあり、そのリスクは型によって大きく違います。2010年のまとめでは、性腺形成不全では胚細胞腫瘍が30%を超え、部分型アンドロゲン不応症では15%、完全型アンドロゲン不応症では悪性の腫瘍は0.8%と報告されています。ただし、これらの数字には偏りがありうると、著者ら自身が述べています[5]。
🩺 型によって違う、性腺の腫瘍のリスクと備え方
※リスクは文献[5]による。研究によって数字に幅があり、一人ひとりの確率ではありません。
GeneReviewsによると、完全型アンドロゲン不応症では、思春期の女性化が終わってから性腺をとるのがよく行われている方法です。そけい部の精巣が痛む場合や、ヘルニアの手術が必要な場合には、思春期の前にとることも考えます[2]。原因の遺伝子がわかると、型がはっきりするので、いつ・どのように性腺を扱うかを、根拠をもって決められます。
ご本人:副腎の確認とホルモン補充
NR0B1の欠失や変化が見つかった場合は、副腎の働きを確かめることがとくに大切です。X連鎖先天性副腎低形成症では、副腎の働きが足りなくなる時期が、約60%は乳児期(平均で生後3週)、約40%は小児期とされ、思春期の遅れ(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)も伴います[3]。副腎のホルモンが足りない状態は命に関わることがあるので、早く気づくことに意味があります。
一方、NR5A1の変化で副腎の働きが足りなくなることは、まれとされています[7]。2009年の4家系の研究でも、はっきりした副腎不全の方はいませんでした[6]。性腺がない、または性腺をとった方では、思春期を起こすためや骨を丈夫に保つために、ホルモン療法が使われます(MedlinePlus Genetics)。
ご本人:性分化疾患でも妊娠できる?
妊娠できるかどうかは、型によって違います。スワイヤー症候群の方は子宮をもつことが多く、ご自身の卵子はつくれませんが、提供された卵子や胚で妊娠できる可能性があります(MedlinePlus Genetics)。46,XYのスワイヤー症候群の女性が、卵子提供による体外受精で2回妊娠し、2人のお子さんを出産したという報告もあります[8]。
アンドロゲン不応症の方は子宮がなく、46,XYの方はほぼ全員が不妊とされています[2]。NR5A1の変化は男性不妊の原因にもなり、精子が少ない・ない方では、精子の保存について相談することが勧められています[7]。不妊の原因を広く調べたい方は、男性不妊症遺伝子検査・女性不妊症NGS遺伝子パネル検査もあります。当院は体外受精・卵子提供を行っていません。不妊治療は専門の医療機関でご相談ください。
ご家族:お母さま・姉妹が同じ変化をもつか
ARとNR0B1はX染色体にある遺伝子です。お母さまが同じ変化をもつ保因者かどうかで、ご家族の見通しが変わります。アンドロゲン不応症では、家族の中でほかに患者さんがいない方のうち、約30%は新しく起きた変化(新生突然変異)とされています[2]。逆に言えば、多くはお母さまから受け継いだ変化です。
お母さまが保因者の場合、46,XYのきょうだいは同じ病気になる可能性があり、46,XXの姉妹は保因者である可能性があります[2]。姉妹が保因者かどうかを知っておくと、ご自身が妊娠を考えるときの手がかりになります。症状のないご家族は、ご家族の中でわかった変化の場所だけを、ご本人の同意のうえでピンポイントで調べられます。
NR5A1の場合は、お母さまや姉妹が同じ変化をもち、早発卵巣不全になることがあるので、そのことを踏まえた相談が勧められています[7]。同じ変化をもっていても症状のない方がいることを、「浸透率が100%ではない」といいます[6]。
次のお子さんへ遺伝する確率と、知ってから選べること
次のお子さんに同じ病気が起こる確率は、原因の遺伝子と遺伝のしかたで大きく変わります。原因がわかってはじめて、具体的な確率と備え方を考えられます。
👪 遺伝のしかたごとの、次のお子さんへの確率
※遺伝のしかたはGeneReviews[2][3]、MedlinePlus Genetics、OMIMによる。実際の確率は、ご家族ごとに遺伝カウンセリングで確かめます。
ご両親のどちらも変化をもっていないとわかっても、親の卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)にだけ変化がある「モザイク」の可能性が残ります。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。
知ってから選べることは、次のとおりです。
- ●妊娠の前に保因者かどうかを知る:AR・NR0B1は、当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の対象です。ご家族の変化がわかっていれば、その場所だけを調べることもできます。
- ●自然に妊娠して、出生前診断を受ける:ご家族の変化がわかっていれば、妊娠中に赤ちゃんに同じ変化があるかを調べられます[2]。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。
- ●着床前遺伝学的検査(PGT-M):日本では日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。
- ●何もしないで産む:これも、そのまま選べる大切な選択肢です。
どの選択をされても、その選択を尊重します。出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。
6. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。
陽性だったとき
原因の遺伝子が確定すると、型がはっきりし、前の章の「次にできること」を、その遺伝子に合わせて具体的に決められます。専門の医療機関に結果を持っていくことで、性腺の扱い、副腎の検査、ホルモン療法の計画が立てやすくなります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたでも解説しています。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。
ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで解説しています。
陰性だったとき
10遺伝子に原因が見つからなかった場合は、調べていない遺伝子や、この検査では見つけられない変化が原因の可能性があります(第4章)。ホルモンの検査値や画像をもう一度見直し、性分化疾患(DSD)遺伝子検査パネルや全エクソーム検査など、次の検査を一緒に考えます。
意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき
VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。ご家族の結果や症状とあわせて考えたり、のちの研究で意味がはっきりするのを待ったりします。調べた目的と別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針のとおりです。
7. 日本の制度(2026年10月時点)
小児慢性特定疾病の「内分泌疾患」には、「アンドロゲン不応症」と「46,XY性分化疾患」がそれぞれ対象疾病として載っています(小児慢性特定疾病情報センター、2026年10月時点で確認)。「46,XY性分化疾患」の項目は、アンドロゲン不応症・5α還元酵素欠損症などを除いた46,XYの性分化疾患を対象にしています。
医療費の助成を受けるには、制度の認定の基準を満たし、申請する必要があります。どの病名で申請できるかは診断名によって変わるため、遺伝子検査で原因と型がはっきりしていることが手がかりになります。認定の基準や申請の方法は、小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の粘膜の検体なら、オンライン診療で遺伝カウンセリングを受けたあと、ご自宅で採取して送っていただけます。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取唾液・頬の粘膜・血液
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
💴 費用・日数・検体
※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体の採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質を保つために、キットが届く前にご自身で検体を採取することはお控えください。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご本人とご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
9. 院長コラム
🩺 院長コラム【からだの違いの「理由」を知ることは、自分を責めないための材料になる】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
46,XY性分化疾患では、「染色体はXY」という事実だけが一人歩きしてしまうことがあります。けれども、染色体は出発点にすぎず、その先のどの段階で、どの遺伝子が違ったのかによって、からだの成り立ちも、気をつけることも、ご家族への影響もまったく違います。原因の遺伝子がわかることは、ご本人にとって、ご自身のからだを説明できる言葉を持つことでもあると考えています。
X連鎖の病気では、お母さまが「自分が渡してしまった」とご自身を責めることがあります。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。わかったことは、姉妹やいとこが自分のことを考える手がかりにもなり、ご家族の選択肢を増やすことにつながります。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 性分化疾患の原因は何ですか?
46,XY性分化疾患は、精巣をつくる遺伝子(SRY・NR5A1・MAP3K1など)や、男性ホルモンを受け取るAR遺伝子などの変化によって起こります。ただし、64の遺伝子を調べた国際的な研究でも、46,XY性分化疾患で遺伝的な診断がついた見込みが高いのは43%で、原因が見つからない方も多くいます。
Q2. 性分化疾患でも妊娠できますか?
型によって違います。スワイヤー症候群の方は子宮をもつことが多く、提供された卵子で妊娠・出産した報告があります。アンドロゲン不応症の方は子宮がなく、ほぼ全員が不妊とされています。原因の遺伝子と型がわかると、妊娠の可能性を具体的に考えられます。
Q3. アンドロゲン不応症とスワイヤー症候群の違いは何ですか?
スワイヤー症候群は精巣ができない型で、性腺は働かない索状の組織になり、子宮があることが多いです。アンドロゲン不応症は精巣があって男性ホルモンも作られますが、からだがそれに反応できない型で、子宮はありません。原因の遺伝子も、スワイヤー症候群はSRY・MAP3K1など、アンドロゲン不応症はARと違います。
Q4. アンドロゲン不応症は遺伝しますか?遺伝する確率は?
AR遺伝子はX染色体にあり、X連鎖の遺伝のしかたをします。お母さまが保因者なら、妊娠ごとに2分の1の確率で変化を受け継ぎ、受け継いだ46,XYのお子さんは発症する可能性があり、46,XXのお子さんは一般に保因者となりますが、症状が現れる場合もあります。家族の中でほかに患者さんがいない方の約30%は、新しく起きた変化とされています。
Q5. 性分化疾患は結婚に差し支えますか?
性分化疾患であることは、結婚できるかどうかを決めるものではありません。気になるのが妊娠やお子さんへの遺伝であれば、原因の遺伝子がわかると、妊娠の可能性、お子さんへの確率、パートナーの検査の必要性を、事実にもとづいて考えられます。ご家族の誰かが性分化疾患の場合も、ご自身が変化をもつかどうかを調べられます。
Q6. 性腺の腫瘍のリスクはどのくらいですか?
型によって大きく違います。2010年のまとめでは、性腺形成不全では胚細胞腫瘍が30%を超え、部分型アンドロゲン不応症では15%、完全型アンドロゲン不応症では悪性の腫瘍は0.8%と報告されています。数字には偏りがありうるため、性腺をとる時期は、型と年齢を踏まえて専門の医療機関で決めます。
Q7. 性分化疾患は何科に相談すればよいですか?
治療やホルモン補充は、小児内分泌科・婦人科・泌尿器科など、性分化疾患を専門に診る医療機関で受けます。当院では、原因の遺伝子を調べる検査と、結果がご本人とご家族にとって何を意味するかを、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明します。
Q8. 検査で原因が見つからなかったらどうなりますか?
原因が見つからなくても、性分化疾患が否定されるわけではありません。この検査で調べていない遺伝子や、今の方法では見つけられない変化が原因のことがあります。200遺伝子の性分化疾患(DSD)遺伝子検査パネルや全エクソーム検査など、次の検査を一緒に考えます。
🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。46,XY性分化疾患の原因がわかれば、性腺の腫瘍への備えや副腎の確認だけでなく、お母さま・姉妹の検査や、これからの妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
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