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セルトリ細胞とは?精子形成を支える「支持細胞」の役割・血液精巣関門・セルトリ細胞単独症候群(SCOS)

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。国際医療誌『Medical Care Review APAC』『Global Woman Leader』の2誌で表紙を飾り、「Top Prenatal Testing Service in APAC 2025」に選出されるなど、世界基準の遺伝医療を提供。

精子は、自分ひとりでは育つことができません。精巣の中で栄養・足場・成熟の合図をすべて供給しているのがセルトリ細胞(Sertoli cell)です。しかもこの細胞は、胎児期には精巣という臓器そのものを設計する司令塔でもあり、成人では体の免疫から精子を守る「関所」を築いています。男性不妊で最も多い組織像であるセルトリ細胞単独症候群(SCOS)、遺伝性腫瘍症候群と結びつくセルトリ細胞腫瘍、そして再生医療への応用まで、遺伝専門医がやさしく解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約18分
🧬 血液精巣関門・SCOS・AZF欠失
臨床遺伝専門医監修

Q. セルトリ細胞とは何をする細胞ですか?まず結論だけ知りたいです

A. 精細管の中で生殖細胞を抱え込み、栄養・足場・ホルモンの合図を渡して精子まで育て上げる体細胞です。胎児期にはSRYを受けて最初に分化し、精巣という臓器の設計図を実行する司令塔として働きます。精細管の中でFSHとテストステロンを受け取れる細胞はセルトリ細胞だけで、血液精巣関門をつくって精子を免疫から隔離し、いらなくなった細胞を食べて片づける役割も担っています。

  • 性決定での役割 → SRYで分化し、SOX9・FGF9・AMH・PGD2のカスケードを起動して精巣をつくる
  • 血液精巣関門(BTB) → 減数分裂開始の「許可証」。完成が遅れると精子形成もそのぶん止まる
  • ホルモンの読み方 → インヒビンBは「セルトリ細胞と生殖細胞の共同作業」を映す指標
  • セルトリ細胞単独症候群(SCOS) → 非閉塞性無精子症の26〜57%。AZF欠失の部位で見通しが変わる
  • 遺伝カウンセリングの要点 → AZFc欠失は男児に必ず伝わる。妊娠成立の前に共有すべき情報

1. セルトリ細胞とは ─ 精巣の「保育士」であり「建築家」

セルトリ細胞は、精巣の中にある精細管という細い管の内側を裏打ちしている、大型の体細胞です。1865年にイタリアのエンリコ・セルトリが記載したことにちなんで名づけられました。精細管の壁は、セルトリ細胞と生殖細胞というまったく性質の異なる2種類の細胞だけで構成されており、セルトリ細胞は基底膜に足をつけたまま管腔側まで背を伸ばし、その広い細胞質のあちこちに、精原細胞から精母細胞、精子細胞に至るあらゆる段階の生殖細胞を抱え込んでいます[1]。生殖細胞は自力では成熟できず、栄養も、足場も、次の段階へ進む合図も、すべてセルトリ細胞から受け取ります。「保育士(nurse cell)」と呼ばれるゆえんです。

ただし、その仕事は世話係にとどまりません。胎児期のセルトリ細胞は、精巣という臓器そのものを設計する建築家でもあります。精巣内でいちばん早く分化する体細胞であり、精細管の骨格をつくり、精巣らしい血管パターンを引き、テストステロンを産生するライディッヒ細胞や、精細管を取り囲む周細管マイオイド細胞の運命まで方向づけていきます[2]。そして成人期には、免疫システムから精子を守る関所を築き、ホルモンを受け取って指令に翻訳し、いらなくなった細胞を食べて片づけ、生殖細胞にエネルギー源を配給します。ひとつの細胞が、これだけの役割を同時に担っているのです。

臨床の視点から重要なのは、セルトリ細胞が遺伝子診断・遺伝形式・遺伝カウンセリングのすべてに関わる細胞だという点です。セルトリ細胞への分化を決める遺伝子群は性分化疾患(DSD)の原因遺伝子そのものであり、セルトリ細胞だけが残った精巣(SCOS)ではY染色体の欠失検査が手術の適応判断を左右し、セルトリ細胞が腫瘍化した場合には遺伝性腫瘍症候群が背景に隠れていることがあります。この記事では、基礎の生物学から、そのまま臨床判断につながる部分までを順に見ていきます。

💡 用語解説:精細管と精上皮

精細管は、精巣の中で精子がつくられる細い管です。その壁をつくっている上皮を精上皮と呼びます。精上皮に含まれる細胞は2種類だけで、支える側がセルトリ細胞、支えられる側が生殖細胞です。精巣生検の顕微鏡写真で「管の中に細胞がぎっしり詰まっている」ように見えるのは、セルトリ細胞のあいだに生殖細胞が抱え込まれているためです。生殖細胞が失われると、管の中はセルトリ細胞だけになり、見た目にすかすかになります。

2. 性決定のスイッチ ─ SRYからSOX9へ

ヒトの胎児の性腺は、はじめは精巣にも卵巣にもなれる「未分化性腺」です。ここでY染色体上のSRY遺伝子が一過性に発現すると、支持細胞の前駆細胞がセルトリ細胞へと運命づけられます。分化したセルトリ細胞は、SOX9・FGF9・AMH・PGD2といった下流の遺伝子カスケードを次々に起動し、精索(のちの精細管)の形成と、雄性特異的な血管の発達を主導します[2]。「男性になる」という決定は全身のどこかで下されるのではなく、この一群の細胞の中で始まり、そこから外へ広がっていくのです。

この経路には、SOX8DMRT1NR5A1(SF-1)GATA4といった転写因子が並んでいます。これらはいずれも性分化疾患の原因遺伝子として知られており、後で述べる人工セルトリ細胞の作製にそのまま使われる「セルトリ細胞のアイデンティティ因子」でもあります。興味深いのは、セルトリ細胞は一度分化すればそれで安泰というわけではない点です。DMRT1などが働き続けることで、成人になってもなお「卵巣側の細胞に転換しない」よう能動的に抑え込まれています。逆に卵巣側ではFOXL2が同じ役割を果たしており、性は「一度決めたら固定される」のではなく、生涯にわたって拮抗する2つの遺伝子プログラムの綱引きで維持されているのです。

3. 精子形成を支えるニッチ ─ ヒトと実験動物は同じではありません

セルトリ細胞は、精原幹細胞が自己複製するか分化するかを決める微小環境、いわゆるニッチそのものです。ここで気をつけたいのは、教科書に載っている図の多くがマウスやラットのものであり、ヒトの精巣はかなり様子が違うということです。齧歯類では精子形成の周期が精細管の長軸に沿って規則正しく並ぶため、ある断面を見ると同じ段階の生殖細胞がきれいに揃います。ところがヒトやサルの精細管では、複数の周期がモザイク状に入り組んでおり、ひとつの断面にさまざまな段階が同居します。ヒトの精巣生検を見て「教科書の図のように整然としていない」と感じても、それは異常ではなく、霊長類では正常な姿です。

精原細胞の分類にも種差があります。霊長類では核の染まり方によって暗調A型(Adark)・明調A型(Apale)・B型に分けられ、齧歯類のAsingle/Apaired/Aaligned(未分化型)とA1〜A4・中間型・B型(分化型)に対応づけられます[3]。ただし「どちらが真の幹細胞か」は今も決着していません。1959年に提唱された当初のモデルではAdarkが幹細胞とされましたが、提唱者自身が1969年にこれを改訂し、通常はApaleが分裂を担う活動的な幹細胞、Adarkは化学療法などの侵襲を受けたときに動員される予備の幹細胞、という見方が広まりました[3]。さらに近年の1細胞RNAシークエンス解析では、幹細胞プールはAdarkの中に収まるという結果も報告されています[4]断定を避けて読むべき領域であり、「ヒトの精原幹細胞はこれだと決まっている」と書かれた資料には注意が必要です。

項目 ヒト・サル(霊長類) マウス・ラット(齧歯類)
精細管内の周期構造 複数の周期が入り組むモザイク状 長軸に沿って順序よく並ぶ連続構造
未分化精原細胞 Adark・Apale(どちらが幹細胞かは諸説あり) Asingle・Apaired・Aaligned
分化・減数分裂への移行 B型精原細胞から一次精母細胞へ A1〜A4・中間型・B型を経て減数分裂へ
セルトリ細胞の支持のしかた 異なる段階の生殖細胞を同時に支持 同調した段階をまとめて支持

もうひとつ、セルトリ細胞の数には決定的な意味があります。セルトリ細胞が増殖できるのは胎児期から思春期までで、思春期にテストステロンが上昇すると増殖を止めて成熟します。1個のセルトリ細胞が抱えられる生殖細胞の数には上限があるため、成人の精子産生能の上限は、思春期までに確保されたセルトリ細胞の数でほぼ決まってしまうのです。小児期の停留精巣や抗がん治療が、何十年も後の妊孕性に影響し続ける理由のひとつがここにあります。

4. 血液精巣関門(BTB) ─ 体内でもっとも堅い関所

血液精巣関門(blood-testis barrier:BTB)は、隣り合うセルトリ細胞どうしが手をつなぐことでつくられる関所で、精上皮を基底側区画と管腔側区画に二分します[5]。存在意義は大きく2つあります。ひとつは免疫学的な意味です。減数分裂以降に現れる半数体の生殖細胞は、免疫系にとっては「生まれて初めて見る他人」であり、無防備にさらせば自己免疫による攻撃を受けかねません。BTBはこれを全身の免疫から物理的に隔離します。もうひとつは環境の意味で、イオン・水・アミノ酸・高分子の出入りを厳密に管理し、精子形成に最適化された独自の液体環境を管腔内につくり出しています。

構造も特殊です。血液脳関門が内皮細胞どうしのタイト結合だけでできているのに対し、BTBはタイト結合・基底側外質特殊化(basal ES)・デスモソーム様結合・ギャップ結合が同じ場所に共存する複合構造になっています[5]。タイト結合を構成するのはオクルディン、ZO-1、そしてクローディン類(とくにクローディン11)です。ギャップ結合を担うコネキシン43(GJA1)をセルトリ細胞だけで欠失させたマウスは不妊となり、精原細胞から減数分裂へ切り替わるスイッチが入らなくなります[6]。関所は「閉じるための壁」であると同時に、細胞どうしが会話する場でもあるということです。

💡 用語解説:タイト結合と外質特殊化(ES)

タイト結合は、細胞と細胞のすき間を密閉して物質の通り抜けを止める「パッキン」のような装置です。一方外質特殊化(ES)はセルトリ細胞に特有の接着装置で、アクチンという細い繊維が束になって整然と並び、細胞膜を裏側からがっちり支えています。基底膜側にあるものを basal ES といい、BTBの一部として強い引っ張りに耐えます。管腔側にあるものは apical ES と呼ばれ、伸びきった精子細胞をつかんでいます。精子が「放出」されるのは、この apical ES がほどけるからです。

この壁は固定物ではありません。精細管周期のステージⅧからⅨにかけて、基底側で分裂を終えた精母細胞が管腔側へ引っ越す必要があり、そのつどBTBは局所的にほどけ、細胞が通り過ぎた背後で組み直されます。前を開ける前に後ろを閉じる、二重扉の構造です。この解体と再構築は、セルトリ細胞自身が分泌するTGF-β3やTNF-αといったサイトカインが、MAPK経路を介してタイト結合タンパク質のリン酸化や取り込み動態を変化させることで制御されています[5]。さらにBTBには、P糖タンパク質やMRP1といった薬物排出トランスポーターも組み込まれており、薬剤や毒物を管腔内へ入れないための能動的なポンプとしても働いています。

関門の完成時期にも意味があります。ヒトでは思春期に、ラットでは生後2〜3週に機能的なBTBが完成しますが、これはB型精原細胞が減数分裂へ突入する時期とちょうど重なります。この一致が偶然でないことを示したのが、新生仔ラットへのジエチルスチルベストロール(DES)投与実験です。DESでBTBの成立を約4週間遅らせると、精子形成もぴたりと足踏みし、パキテン期の精母細胞は減数分裂を完了できないまま精上皮から脱落しました[7]。その後の研究でも、BTBの構築が遅れると精子放出の第一波が同じだけ遅れ、精母細胞が変性することが確認されています[8]BTBの完成は、減数分裂を始めてよいという「許可証」なのです。

もうひとつ、研究論文を読むときに知っておくと役に立つギャップがあります。生体内では極めて堅固なBTBですが、単離したセルトリ細胞を培養して測定した経上皮電気抵抗(TER)は60〜80 Ω/cm²程度にすぎず、血液脳関門モデルの1,500〜2,000 Ω/cm²とは桁違いに「漏れやすい」のです[5]。この差は、培養系に周細管マイオイド細胞や生殖細胞との相互作用が欠けていることによると考えられています[5]。培養皿の中のセルトリ細胞は、本来の実力の一部しか発揮できていません。精巣の微小環境を再現するには、複数の細胞種を混ぜた三次元の培養系が必要だということを示しています。

機能 担う構造・分子 壊れたときに起こること
物理的関門 タイト結合(オクルディン・ZO-1・クローディン11)+basal ES 溶質が素通りし、減数分裂が進まなくなる
排出(薬物)関門 P糖タンパク質・MRP1 薬剤・毒物が管腔内へ入り込みやすくなる
免疫学的関門 FasL・DAF(CD55)・CD59・クラスターリン 自己抗原が露出し、自己免疫性の炎症の引き金になる

5. ホルモンの受け皿 ─ 精細管の中で「聞こえている」のはセルトリ細胞だけ

意外に知られていないことですが、生殖細胞そのものはFSH受容体もアンドロゲン受容体も持っていません。下垂体から届くFSHも、ライディッヒ細胞がつくるテストステロンも、精細管の中でそれを受け取って意味のある指令に翻訳できるのはセルトリ細胞だけです。FSH受容体を介した刺激はcAMP/PKA経路を動かして幼若期の増殖と各種因子の産生を促し、テストステロンはアンドロゲン受容体を介して減数分裂の完了、伸長精子細胞の接着、成熟精子の放出を支えます。アンドロゲン受容体が働かないアンドロゲン不応症候群で造精機能が保たれないのも、この受け皿が機能しないためです。ホルモン療法の効果も副作用も、まずセルトリ細胞というフィルターを通ってから生殖細胞に届きます。

セルトリ細胞が外に出すホルモンのうち、臨床でよく使われるものを3つ取り上げます[1]

インヒビンB ─ 「造精機能の返事」を運ぶホルモン

インヒビンBは、共通のαサブユニットとβBサブユニットが結合した約32 kDaのヘテロ二量体で、下垂体に働いてFSHの分泌を選択的に抑えます[9]。血中濃度は精巣容積や精子数と正の相関を示すため、造精機能のマーカーとして用いられます[10]。ただし「セルトリ細胞の数だけを映す鏡」と単純化するのは誤りです。成人のヒト精巣では、βBサブユニットはパキテン期精母細胞や円形精細胞に局在しており、セルトリ細胞側にあるのはαサブユニットです。そのため生殖細胞が失われた精巣では、生物学的に不活性なαサブユニットしか作られなくなります[10]。インヒビンBが低いという所見は、「セルトリ細胞と生殖細胞の共同作業が途切れている」というサインとして読むのが正確です。

AMH ─ 未熟なセルトリ細胞の指標

抗ミュラー管ホルモン(AMH)は、TGF-βスーパーファミリーに属する約140 kDaのホモ二量体糖タンパク質です。胎児期にはミュラー管(女性内性器のもと)を退縮させる働きを担い、出生後も思春期前の未熟なセルトリ細胞から高い濃度で分泌され続けます。制御はきれいに三方向で、FSHが促進、テストステロンが強力に抑制、そして減数分裂前期に入った精母細胞との接触が発現を止めます。思春期にAMHが急激に下がるのは、テストステロンの上昇とセルトリ細胞の成熟(増殖停止)が同時に起きるためです。小児領域でAMHが「精巣が存在して機能しているか」の指標に使われるのは、この性質によります。女性で卵巣予備能の指標として使われるAMHと同じ分子ですが、男性では意味づけがまったく異なる点に注意が必要です。

アンドロゲン結合タンパク質(ABP) ─ 局所にテストステロンを閉じ込める

ABPはFSH刺激下でセルトリ細胞から分泌され、管腔内でテストステロンと強く結合してこれを閉じ込めます[1]。脂溶性で拡散しやすいテストステロンを精細管内および精巣上体に高い濃度で保持することにより、減数分裂とその後の精子成熟が局所的に保証されます。血中のテストステロンが正常値でも造精機能が保たれるとは限らない理由の一端が、ここにあります。血液検査で測っているのは「全身を回っている量」であって、「精細管の中に届いている量」ではないのです。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【血液検査の「一段深い読み方」】

男性不妊の初診でFSH・LH・テストステロンを測る施設は多いのですが、そこにインヒビンBとAMHを足すと、見える景色が変わります。FSHが高いというのは、下垂体が「精巣から返事が来ない」と感じて声を大きくしている状態です。その返事の実体がインヒビンBであり、しかもインヒビンBはセルトリ細胞単独ではなく、生殖細胞との共同作業でつくられています。

ここを押さえておくと、「FSHが高い=もう打つ手がない」という早すぎる結論を避けられます。数値は結論ではなく、精巣の中で何と何の対話が途切れているのかを推定するための材料です。そして分からない部分を「異常なし」と言い換えないことが、私たちの仕事だと思っています。

6. 代謝共役 ─ 精子の主食は「ブドウ糖」ではなく「乳酸」

BTBによって管腔側に隔離された生殖細胞は、血流から直接ブドウ糖を受け取ることができません。しかも、分化の進んだパキテン期精母細胞や円形精細胞は、ブドウ糖を解糖系で分解してATPをつくる効率が低く、エネルギー源として乳酸を好みます。そこで成立しているのが「乳酸シャトル」です。セルトリ細胞は基底側からGLUT1などの糖輸送体を介してブドウ糖を取り込み、解糖系を高速で回して乳酸を大量に合成し、MCT4という輸送体を介して管腔側へ放出します。生殖細胞はMCT1やMCT2でこれを取り込み、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化に用います[11]。セルトリ細胞は保育士であると同時に、給食センターでもあるわけです。

🔄 乳酸シャトルの流れ

血管(基底側)ブドウ糖
セルトリ細胞GLUT1で取り込み→解糖系→乳酸に変換
生殖細胞(管腔側)MCT1/MCT2で乳酸を受け取りATP産生

BTBの内側にいる生殖細胞は血液に直接触れられないため、セルトリ細胞が「調理してから渡す」しくみになっています。

この経路が本当に必須であることは、遺伝学的な実験で示されました。乳酸合成を触媒する乳酸脱水素酵素A(Ldha)をセルトリ細胞だけで欠失させたマウスでは、精巣重量が減り、精子の運動性が著しく低下し、形態異常が増え、卵子を受精させる能力が損なわれます[12]。障害の出方も特徴的で、精原細胞と精母細胞にはほとんど影響が出ず、精子完成期が選択的に壊れました。さらに、乳酸の下流でコリンという物質の代謝が鍵を握っており、食事によるコリン補充で表現型と妊孕性が回復したことも報告されています[12]。代謝の破綻は必ずしも取り返しがつかないものではない、という点で示唆に富む結果です。

この共同作業は、全身の代謝異常であっけなく崩れます。糖尿病では、慢性的な高血糖とインスリンシグナルの乱れによって、精巣細胞のブドウ糖取り込みはむしろ増える一方で乳酸産生は低下し、生殖細胞は「目の前に材料はあるのに調理されない」状態に置かれます[13]。加えて、高カロリー食・運動不足・腸内細菌叢の乱れによる腸管バリアの破綻が血中への内毒素の流入を招き、精巣局所の酸化ストレスと炎症がクローディン11やオクルディンの分解を進めてBTBを傷つけます[14]。逆に、短鎖脂肪酸などの腸内細菌代謝産物がバリア機能を高め炎症を抑えるという「腸-精巣軸」の報告も蓄積しています[14]。生活習慣が精液所見に効いてくるのは、精神論ではなく、この一連の分子経路を通じてです。

7. 貪食とオートファジー ─ 片づけまで自分でこなす

精子形成は、大量に「捨てる」工程を伴うプロセスです。正常な精巣であっても、発生する生殖細胞の半数以上は分化の途中でアポトーシスに陥って脱落します[15]。さらに、精子細胞が精子へ姿を変える最終段階では、余った細胞質が「残余体」として切り離され、管腔内に放出されます。これらが片づけられずに溜まれば、自己融解して管腔内の環境を乱すだけでなく、隠されていた自己抗原を露出させ、自己免疫による精巣の炎症の引き金になりかねません。

この掃除を担うのもセルトリ細胞です。マクロファージのような専門の食細胞ではないにもかかわらず、非常に高い貪食活性を持っています。アポトーシスに陥った生殖細胞や残余体では、通常は細胞膜の内側にあるホスファチジルセリンが外側に反転して露出します。セルトリ細胞はクラスBスカベンジャー受容体(SR-BI)、CD36、MERTKなどでこの目印を認識し、アクチン骨格を組み替えて食胞のカップをつくり、短時間のうちに取り込みます。この過程にはオートファジー関連分子も動員されており、LC3が食胞の膜に集まる LC3-associated phagocytosis(LAP)が効率的な処理に必要であることが、セルトリ細胞特異的なノックアウトマウスで示されています[15]

この掃除には、きちんとブレーキも用意されています。セルトリ細胞が分泌する鉄輸送タンパク質トランスフェリンのうち、鉄を結合した二量体・四量体の形が、残余体の貪食を選択的に抑制することが分かっています。単量体にはこの作用がなく、鉄の結合が抑制活性に必須でした[16]。掃除は強ければ強いほど良いのではなく、必要なときに必要なだけ働くよう調節されているのです。もし常時全開なら、まだ生きている生殖細胞まで巻き込みかねません。

さらに巧妙なのが、取り込んだものの「素性」による処理の使い分けです。自分の生殖細胞に由来するアポトーシス体や残余体(正当な基質)は通常の分解経路で穏やかに処理され、回収された脂質やタンパク質はセルトリ細胞自身の栄養として再利用されます。ところが、網膜外節のような他の組織に由来する物質(不適格な基質)を実験的に取り込ませると、セルトリ細胞はオートファジー機構を緊急動員し、二重膜構造の形成とLC3-IIの集積、p62の減少を伴う強力な分解モードに切り替わりました[17]。専門の食細胞ではないはずの細胞が、二段構えの分解エンジンを備えているということになります。

8. セルトリ細胞単独症候群(SCOS)とAZF欠失

セルトリ細胞の異常がもっとも劇的に表れる病態が、セルトリ細胞単独症候群(Sertoli cell-only syndrome:SCOS、Del Castillo症候群、生殖細胞無形成)です。精細管の中に生殖細胞がまったく見当たらず、セルトリ細胞だけが並んでいる状態を指します。非閉塞性無精子症(NOA)の背景としては最も多く、報告により患者の26〜57%を占めます[18][19]。二次性徴や外見は正常で、不妊を主訴に受診して精液検査で無精子症と判明する例がほとんどです。FSHは9割前後の患者で正常の2〜3倍に上昇し、テストステロンは正常であることが多いとされます[20]。確定診断には精巣生検による組織学的評価が必要です[20]

一次性(完全型)と二次性(不完全型)を分けて考える

一次性(完全型)は、胎生期に始原生殖細胞が精巣原基へたどり着けなかった、あるいは到達直後に失われた結果、はじめから生殖細胞が一つも存在しないタイプです。セルトリ細胞は未熟な形態(輪郭の整った円形〜卵円形の核、未発達な核小体)にとどまります。一方の二次性(不完全型)は、化学療法・放射線治療・精巣外傷・ムンプス精巣炎・停留精巣・精巣捻転などによって、いったん存在した生殖細胞が後天的に失われたタイプです[18]。セルトリ細胞は成熟した形態を保ちながらも変性し、精細管周囲の線維化やセルトリ細胞内のグリコーゲン蓄積・空胞形成が目立ちます。この「グリコーゲンが溜まる」という所見は、乳酸を渡す相手を失った代謝共役の停滞が形になったもの、として読むことができます。

臨床的にいちばん重要なのは、不完全型では一部の精細管に微小な精子形成巣が島のように残っていることがある、という点です。実際、SCOSと診断された男性の約6割で、ごく少数の精細管に精子形成が保たれているとされ[21]、精巣内精子採取術により約20%で精子が回収できたという報告もあります[19]。診断名がついた時点で、子どもを持つ可能性が完全に閉ざされるわけではありません。

遺伝学的背景 ─ AZF欠失が見通しを変える

SCOSの原因は多様ですが、遺伝学的には染色体異常(47,XXYのクラインフェルター症候群、45,X/46,XYモザイク、SRY陽性46,XX男性など)と、Y染色体長腕のAZF領域の微小欠失が二本柱になります。とくにAZF欠失は、どの区域が欠けているかによって精子回収の見通しがはっきり変わるため、外科的な精子採取を検討する前に調べておく意義が大きい検査です[21]

💡 用語解説:AZF(無精子症因子)領域

Y染色体の長腕には、精子をつくるために必要な遺伝子がまとまって並んでいる区画があり、AZF(azoospermia factor)領域と呼ばれます。AZFa・AZFb・AZFcの3つに分けられ、どこが欠けているかで精巣の様子と治療方針が変わります。この欠失は顕微鏡で染色体を見ても分からない小さな抜け落ちで、血液を使ったPCR検査で調べます。父親から息子へは、Y染色体ごとそのまま受け継がれます。

欠失部位 主な組織像 精子回収の見通し
AZFa 完全欠失 典型的なSCOS 回収はほとんど期待できません。手術を見送る判断材料になります
AZFb 完全欠失 精母細胞の段階での成熟停止 同じくほとんど期待できません。事前に分かれば不要な手術を避けられます
AZFc 欠失 SCOSから低造精機能まで幅があります 多くで回収可能とされます。ただし男児には必ず同じ欠失が伝わります

AZFaとAZFbの完全欠失で精子が得られにくいのは、これらの区域にある遺伝子に常染色体上の「予備コピー」が存在しないためと説明されています。一方でAZFcの見通しが比較的良いのは、そこに含まれるDAZ遺伝子群に、常染色体上の相同遺伝子であるDAZLという控えが存在し、わずかな造精機能を下支えしていると考えられているからです[21]。なお、AZF欠失以外にも減数分裂に関わる遺伝子(TEX11SYCP3SYCE1STAG3など)の変化が無精子症の背景として報告されており、男性不妊症の遺伝子検査(NGSパネル)のように複数の遺伝子をまとめて調べる方法もあります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【検査は「あきらめる材料」ではなく「順番を決める材料」】

Y染色体微小欠失の検査は、ときに「結果が悪ければ落ち込むだけでは」と敬遠されます。けれども実際は逆で、AZFaやAZFbの完全欠失が分かれば、成功の見込みが乏しい精巣手術と、その後の落胆を回避できます。AZFcであれば、むしろ前向きに精子採取へ進む根拠になります。

同時に、生まれてくる男児に何が受け継がれるのかを、妊娠が成立する前にご夫婦で共有できます。遺伝学的検査の価値は白黒をつけることではなく、限られた時間と体力をどこに使うかを、ご本人が納得して決められるようにすることだと考えています。当院では臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを担当し、検査を受けるかどうかから一緒に考えます。

9. セルトリ細胞腫瘍 ─ 遺伝性腫瘍症候群が隠れていることがあります

セルトリ細胞が腫瘍化することもあります。精巣にできる腫瘍の95%は胚細胞腫瘍で、残る5%を占めるのが性索間質性腫瘍です。セルトリ細胞腫瘍はそのなかでも稀で、精巣腫瘍全体の1%未満にとどまります[22][23]。多くは良性で、悪性の頻度は約10%程度とされます[22]。主訴は無痛性の精巣のしこりであることが多く、診断は触診と超音波検査を経て、精巣摘除術で得られた組織の病理学的検査によって確定します。

遺伝の観点から見逃せないのが、内分泌活性と症候群との結びつきです。腫瘍化したセルトリ細胞がエストロゲンを産生することがあり、およそ3分の1の症例で女性化乳房を伴います。小児に発生した場合には思春期早発症の原因となることもあります。そして良性のセルトリ細胞腫瘍の相当数、とくに両側性や多発性の症例では、ポイツ・ジェガース症候群(原因遺伝子STK11)やカーニー複合体(原因遺伝子PRKAR1A)といった遺伝性腫瘍症候群に合併することが報告されています[23]。とりわけ大細胞石灰化型セルトリ細胞腫瘍は思春期前の男児に多く、これらの症候群との関連が強いことが知られています[23]

つまり、若い男性、両側性、あるいは石灰化を伴うセルトリ細胞腫瘍では、腫瘍を切除して終わりにするのではなく、背景に遺伝性腫瘍症候群がないかを念頭に置いた評価と、ご家族歴の丁寧な聴取が意味を持ちます。これらの症候群では消化管ポリープや心臓粘液腫など他臓器の管理も必要になるため、精巣の病変が全身の診療計画を変えるきっかけになり得るのです。

10. 再生医療・細胞治療への応用 ─ どこまで来ているのか

人工セルトリ細胞(hiSC)をつくる

ヒトの精巣からセルトリ細胞を直接採取するのは、倫理的にも技術的にも簡単ではありません。そこで進んでいるのが、皮膚などの線維芽細胞から直接セルトリ細胞へ運命を切り替えるダイレクトリプログラミング(細胞転換)です。マウスではNr5a1・Wt1・Dmrt1・Gata4・Sox9の5因子で胚性セルトリ様細胞が誘導され[24]、ヒトでは同じ5因子から出発して、最終的にNR5A1とGATA4の2因子だけでヒト誘導セルトリ様細胞(hiSC)が得られることが示されました[2]。このhiSCは初代セルトリ細胞に近い遺伝子発現を示し、マウス精原細胞の生存を支え、ヒトTリンパ球の増殖を抑え、免疫が正常なマウスに移植されたヒト細胞を保護しました[2]iPS細胞を経由せずに目的の細胞へ直接変えるため、時間と安全性の面で利点があると考えられています。

セルトリ細胞から精原幹細胞へ「戻す」試み

さらに踏み込んだ報告として、終末分化したヒトのセルトリ細胞に、生殖系列特異的なRNA結合タンパク質の遺伝子であるDAZL・DAZ2・BOULEを強制発現させることで、精原幹細胞の性質を持つ細胞へ転換させたという研究があります。得られた細胞は精細管に生着して増殖し、体外では精母細胞や半数体の円形精細胞にまで分化しました[25]。2025年には、この転換にコヒーシン関連因子RAD21L1が十分かつ有効であるという続報も出ています[26]。ただし、これらはいずれも特定の研究グループによる報告であり、得られた半数体の細胞から健康な次世代が生まれたことを示すものではありません。臨床応用にはまだ距離がある、という前提で読んでいただく必要があります。

免疫特権を「借りる」細胞治療

セルトリ細胞は、DAF(CD55)・CD59・クラスターリンといった補体を抑える因子や、FasL・TGF-β1などの免疫制御分子を産生し、抗体による攻撃と細胞性免疫の両方を局所で抑え込みます。この性質は免疫寛容の一種で、精巣の外へ移植しても働くため、他の細胞を守る「盾」として使えるのではないかという発想が1990年代から追求されてきました。膵島細胞とセルトリ細胞を同時に移植すると、全身の免疫抑制薬を使わなくても糖尿病モデル動物の血糖が長期に保たれること[27]、ラットの脳へ異種移植したセルトリ細胞が生着して周囲の異種細胞を保護すること[28]が報告されています。近年では、アミロイドβで海馬を傷害したラットにセルトリ細胞を移植したところ、アポトーシスとアストロサイトの異常な遊走が減り、記憶・学習課題の成績が改善したという報告もあります[29]

一方で、期待だけを語るのは公平ではありません。不死化したセルトリ細胞株にヒトプロインスリン遺伝子を導入した株は、移植後20日で88%、50日で75%という高い生着率を示し、インスリンのmRNAを出し続けました。しかしインスリンのタンパク質は移植片の一部にしか検出されず、血糖の低下は得られませんでした[30]。同種・異種移植での保護効果にも報告間のばらつきが大きく、100%の移植片が守られることは稀だと総説でも指摘されています[31]。「移植した細胞が生き残ること」と「治療効果が出ること」は別の問題であり、現時点でヒトの標準治療になったものはありません。

11. よくある誤解

誤解①「セルトリ細胞は栄養を渡すだけの脇役」

胎児期には精巣という臓器そのものを設計し、成人期にはホルモンを受け取り、関門を築き、掃除まで行います。精細管の中でFSHとテストステロンを受け取れるのはセルトリ細胞だけで、生殖細胞はこれらの受容体を持っていません。

誤解②「SCOSと診断されたら子どもは持てない」

不完全型では微小な精子形成巣が残っていることがあり、SCOS男性の約6割で少数の精細管に精子形成が保たれているとされます。見通しは組織像とAZF欠失の有無で大きく変わりますので、一律に結論づけることはできません。

誤解③「インヒビンBはセルトリ細胞の数を映す」

成人ではβBサブユニットが生殖細胞側に局在しており、生殖細胞が失われると不活性なαサブユニットしか作られなくなります。インヒビンBはセルトリ細胞と生殖細胞の共同作業を映す指標です。

誤解④「人工セルトリ細胞でもう治療できる」

線維芽細胞からの誘導も、セルトリ細胞から精原幹細胞への転換も報告はありますが、いずれも細胞実験と動物実験の段階です。ヒトで健康な児が得られた実績はなく、現時点で確立した治療ではありません。

よくある質問(FAQ)

Q1. セルトリ細胞は大人になっても増えますか?

いいえ、増えません。セルトリ細胞が増殖するのは胎児期から思春期までで、思春期にテストステロンが上昇すると増殖を止めて成熟します。1個のセルトリ細胞が支えられる生殖細胞の数には上限があるため、成人の精子産生能の上限は、この時期までに確保されたセルトリ細胞の数でほぼ決まると考えられています。小児期の停留精巣や抗がん治療が、その後の妊孕性に長く影響する理由のひとつがここにあります。

Q2. 血液精巣関門があるのに、抗がん剤で精子がつくれなくなるのはなぜですか?

関門は完全な遮断ではなく、P糖タンパク質などによる能動的な排出も含めた選択的な関所だからです。分子の性質によっては通過しますし、そもそも関門の外側にあたる基底側区画にいる精原幹細胞は、この関門に守られていません。精原幹細胞が失われれば、その後の供給が止まります。治療の内容によっては、開始前に精子を凍結保存しておく方法が検討されます。

Q3. 精子形成の途中で半分以上が死んでしまうのは異常ではないのですか?

異常ではありません。哺乳類の精子形成では、正常な環境下でも発生する生殖細胞の半数以上がアポトーシスで脱落し、セルトリ細胞に片づけられます。多めにつくってから選別する仕組みで、品質管理の一部と考えられています。片づけが滞ると自己抗原が露出して炎症の原因になるため、この掃除自体が精巣の恒常性を支える重要な機能です。

Q4. 糖尿病だと本当に精子に影響が出ますか?

動物実験とヒトを対象とした系統的レビューの双方で、高血糖がセルトリ細胞のブドウ糖代謝と乳酸産生を乱し、精液所見を悪化させることが示されています。加えて腸内環境の乱れが血中への内毒素の流入を招き、血液精巣関門のタンパク質分解を進めることも報告されています。血糖のコントロールや体重管理は、精神論ではなく分子レベルの根拠がある取り組みです。

Q5. Y染色体微小欠失の検査は、いつ受けるとよいですか?

非閉塞性無精子症や高度の乏精子症と分かった時点、つまり外科的な精子採取を検討する前が適切とされています。AZFaやAZFbの完全欠失が判明すれば、成功の見込みが乏しい手術を回避できますし、AZFc欠失であれば前向きに進む根拠になります。検査を受けるかどうかを含めて、臨床遺伝専門医とご相談のうえ計画を立てることをおすすめします。

Q6. AZFc欠失で子どもを授かった場合、その子に影響はありますか?

女児には影響しませんが、男児にはY染色体ごと父親と同じ欠失が受け継がれ、将来同じような造精機能の障害を持つ可能性が高くなります。知的発達や身体的な発達への影響は通常ありません。妊娠が成立する前に、この点をご夫婦で共有しておくことが大切です。当院では臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行っています。

Q7. セルトリ細胞腫瘍と診断されました。遺伝の検査は必要ですか?

一律に必要というわけではありませんが、両側性・多発性の場合や、思春期前の男児に生じた大細胞石灰化型の場合には、ポイツ・ジェガース症候群やカーニー複合体といった遺伝性腫瘍症候群との関連が報告されています。これらの症候群では消化管や心臓など他の臓器の管理も必要になるため、ご家族歴や他の症状とあわせて評価する意義があります。

Q8. 人工セルトリ細胞で不妊治療ができるようになりますか?

現時点では研究段階です。線維芽細胞から人工セルトリ細胞を誘導する技術、セルトリ細胞を精原幹細胞へ転換する技術はいずれも報告されていますが、ヒトで健康な児が得られた実績はありません。移植した細胞が生き残ることと、治療効果が出ることは別の問題です。過度な期待も頭ごなしの否定も避け、進展を見守る段階だと考えています。

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参考文献

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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