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おたふく風邪で男性不妊になる確率は?大人の男性のムンプス精巣炎・精巣萎縮と精子への影響、父親になれるか・赤ちゃんへの影響を臨床遺伝専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

大人の男性がおたふく風邪(ムンプス、流行性耳下腺炎)にかかると、精巣に炎症が起こる「ムンプス精巣炎」を合併することがあり、そのあとに精巣が小さくなる(萎縮する)と、妊娠させる力が下がることがあります。ただし、精巣炎を起こした人がみな男性不妊になるわけではなく、子どもがまったくできなくなるのはまれです。この記事では、当院にいただいたご質問をもとに、精巣炎・両側の炎症・萎縮・不妊それぞれの頻度、精液検査の相談先、生まれてくる赤ちゃんへの影響を、臨床遺伝専門医の立場から整理します。妊娠後に赤ちゃんの染色体などを調べたい方は、東京のNIPT(新型出生前診断)のページもあわせてご覧ください。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. おたふく風邪で男性不妊になる確率は?

一つの数字では言えません。思春期以降の男性が感染すると精巣炎を合併することがあり、精巣炎のうち両側に起こるのは10〜30%、精巣が萎縮するのは約半数と報告されています。妊娠しにくくなる人はいますが、妊よう性が完全に失われることはまれとされています。

🧬 Q. 子どもの頃にかかった場合も不妊になりますか?

ムンプス精巣炎は精子がつくられ始める前の子どもにはまれで、問題になるのは主に思春期以降に感染した場合です。

🧬 Q. 父親の精巣萎縮は赤ちゃんに影響しますか?

おたふく風邪は遺伝する病気ではありません。米国の40年間の住民調査では、父親がムンプス精巣炎になったあとに授かった男の子に、生殖器・尿路の先天異常が増える傾向は見られませんでした。

🧬 Q. 子どもを望むとき、まず何をすればいいですか?

今の精子の状態は精液検査でわかります。相談先は泌尿器科や男性不妊の専門外来です。妊娠後の赤ちゃんの検査や遺伝の相談は、臨床遺伝専門医が常駐する当院で受けられます。

この記事でわかること
📖 読了時間:約10分
🦠 おたふく風邪・精巣炎・男性不妊
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤男性不妊の確率 → 精巣炎・両側・萎縮・妊よう性低下を段階ごとに整理
  • ➤子どもの頃の感染との違い → 精巣炎は主に思春期以降の問題
  • ➤精子への影響 → 片側か両側か、精液検査で今の状態を確かめる
  • ➤赤ちゃんへの影響 → ウイルスの影響と遺伝の影響を分けて考える
  • ➤予防と相談先 → ワクチンの日本での扱いと、泌尿器科・不妊治療施設・遺伝カウンセリング

おたふく風邪で男性不妊になる確率と、精巣炎・精巣萎縮が精子と赤ちゃんに与える影響を解説するインフォグラフィック

いただいたご質問

💬 ご相談の内容(要約)

30代の男性です。20代前半におたふく風邪にかかり、ムンプス精巣炎で片側の精巣が萎縮しました。それから10年ほどたち、子どもが欲しいと考えるようになりました。精子がきちんとつくられているのか、また子どもができたとして、おなかの赤ちゃんに何か影響が出ないかが心配です。

おたふく風邪のあとに精巣が萎縮した方や、そのパートナーの方からは、「そもそも子どもができるのか」と「できた子どもに影響はないのか」という二つの心配について、ご相談を受けることがあります。二つは似ているようで、医学的には別々に考える問題です。前者は精子の数や動きの問題、後者は遺伝やウイルスの影響の問題だからです。この記事では、この二つを分けたうえで、それぞれ何がわかっているかを順にお答えします。

1. おたふく風邪で男性不妊になる確率は?

おたふく風邪で男性不妊になる確率は、一つの数字では答えられません。「感染する」「精巣炎になる」「炎症が両側に及ぶ」「精巣が萎縮する」「精子の数や動きが落ちる」という段階が重なってはじめて、妊娠しにくさにつながるからです。そこで、段階ごとに報告されている数字を並べて見ていきます。

段階ごとに報告されている数字

まず、感染した大人の男性のうち、どのくらいが精巣炎になるかです。国立感染症研究所のファクトシートは、自然感染での精巣炎(資料では睾丸炎)の頻度を20〜40%とし、ワクチン接種後の精巣炎は「ほとんどなし」としています[4]。オランダで2009〜2011年に届け出られたおたふく風邪の患者さんを調べた研究では、12歳以上の男性のうち、ワクチンを受けていなかった人の23%(86人中20人)に精巣炎が起こりました[2]。

次に、精巣炎になった人のその後です。2021年の総説は、精巣炎は多くが片側だけに起こり、両側に起こるのは10〜30%、精巣の萎縮は精巣炎の人の約半数に起こりうるとまとめています[1]。米国ミネソタ州ロチェスターの40年間の住民調査では、ムンプス精巣炎になった男性132人のうち47人に、のちに精巣の萎縮が見られました[3]。

そして妊娠させる力への影響です。同じ総説は、思春期以降にムンプス精巣炎を起こした男性の約30%に不妊や妊よう性(妊娠させる力)の低下が見られるという報告を紹介しています[1]。一方、MSDマニュアルは、両側に精巣炎が起きた場合や思春期以降に起きた場合に妊よう性が下がることがあるものの、妊よう性が完全に失われることはまれだとしています[5]。

📊 おたふく風邪から男性不妊までの段階と、報告されている数字

段階 報告されている数字 対象・出典
感染 → 精巣炎 20〜40% 自然感染(国立感染症研究所)[4]
感染 → 精巣炎(ワクチン未接種) 23%(86人中20人) オランダ・12歳以上の男性の届出例[2]
精巣炎 → 両側 10〜30% 総説[1]
精巣炎 → 精巣の萎縮 約半数/132人中47人 総説[1]/米国の住民調査[3]
精巣炎 → 不妊・妊よう性低下 約30% 思春期以降の精巣炎(総説が紹介する報告)[1]
妊よう性の完全な喪失 まれ MSDマニュアル[5]

※数字は研究ごとに対象や調べ方が違います。上から順にかけ算して「あなたの確率」を出すことはできません。

「妊よう性の低下」と「妊よう性の完全な喪失」は別のこと

「妊よう性が下がること」と「妊よう性が完全に失われること」は同じではありません。精子の数や運動率が下がって妊娠しにくくなる場合もあれば、精液の中に精子が見つからない無精子症になる場合もあります。ただし、無精子症でも精巣の中に精子が残っていることがあります。約30%という数字は妊よう性の低下を含む報告で、妊娠が永久にできなくなる割合を示すものではありません。

精液の中に精子が見つからない状態は無精子症と呼ばれます。精子をつくる働きそのものが落ちているタイプは非閉塞性無精子症と呼ばれ、両側の精巣が強くダメージを受けた場合に問題になります。

なぜ個人の確率として言えないのか

表の数字は、多くの人を集めた集団の割合です。実際に妊娠しにくくなるかどうかは、炎症が片側だったか両側だったか、どのくらい強かったか、萎縮がどの程度か、そして残った精巣がどれだけ精子をつくれているかで決まります。そのため、ご質問の方のように片側だけが萎縮した場合、集団の数字をそのまま当てはめるより、今の精液を調べて実際の数と動きを見るほうが、ずっと確かな答えになります。

2. ムンプス精巣炎とは?大人の男性に多い理由

ムンプス精巣炎は、おたふく風邪の原因であるムンプスウイルスが精巣に炎症を起こす病気で、大人の男性ではおたふく風邪のいちばん多い合併症とされています[1]。耳の下の腫れ(耳下腺炎)で知られる病気ですが、ウイルスは全身に広がるため、精巣や卵巣、髄膜などにも炎症が起こることがあります[4]。

💡 用語解説:ムンプスウイルス

おたふく風邪(流行性耳下腺炎)を起こすウイルスで、せきやくしゃみのしぶき、接触でうつります。日本でもワクチンで予防できますが、2026年10月時点では公費の定期接種ではなく、希望する人が受ける任意接種です(第5章)。

子どもの頃の感染と、思春期以降の感染の違い

ムンプス精巣炎は、精巣でまだ精子がつくられていない子どもにはまれです[1]。精巣炎が問題になるのは、主に思春期以降に感染した場合です。米国の住民調査でも、おたふく風邪全体の患者さんの年齢の中央値が8歳だったのに対し、精巣炎になった男性の年齢の中央値は29歳でした[3]。

「男の子がおたふく風邪にかかると不妊になるのでは」と心配される方がいますが、思春期前の感染で精巣炎が起こることはまれで、将来の不妊を過度に心配する必要はありません。ただし、思春期以降に感染すると精巣炎のリスクがあるため、子どもの頃にかからなかった人が大人になってから感染するほうが、精巣への影響という点では問題になります。

症状と起こる時期

ムンプス精巣炎は、多くの場合、耳下腺の腫れが出てから約1週間後に始まり、急性の症状は2週間ほどでおさまるとされています[1]。陰嚢の腫れと強い痛み、発熱などが典型的です。ただし、急に強い精巣の痛みが出た場合は、すぐに治療が必要な精巣捻転(精巣がねじれて血流が止まる状態)の可能性もあります。おたふく風邪による炎症と自己判断せず、すぐに救急外来や泌尿器科を受診してください。

精巣が萎縮するしくみ

精巣の中には、精子をつくる細い管(精細管)がぎっしり詰まっています。ムンプスウイルスによる炎症で、この管の中にある精子のもとになる細胞が傷つくと、炎症がおさまったあとも精子をつくる組織が減り、精巣が小さくなります。これが精巣の萎縮です。精子がどのような段階を経てつくられるかは、精子形成のしくみの解説で詳しく説明しています。

一方、男性ホルモン(テストステロン)をつくる細胞は、精子をつくる細胞とは別にあります。MSDマニュアルは、精巣が萎縮してもテストステロンの量は通常は減らないとしています[5]。精巣が小さくなったことと、男性らしさや性機能が失われることは、同じではありません。

3. 精子への影響と、片側・両側の違い

おたふく風邪の精巣炎のあと、精子の数・動き・形の異常が、回復してから何年も続くことがあると報告されています[1]。ただ、その程度は人によって大きく違い、とくに炎症が片側か両側かで見通しが変わります。

片側だけの萎縮なら

精巣は左右に1つずつあり、どちらも精子をつくっています。片側だけが萎縮した場合、もう片方の精巣が精子をつくり続けているため、妊娠させる力が保たれている可能性があります。MSDマニュアルが妊よう性の低下が起こりやすい場合として挙げているのも、両側に精巣炎が起きた場合と思春期以降に起きた場合です[5]。

ただし、片側に萎縮があるからといって、反対側にまったく炎症がなかったとは言い切れません。症状が出なかった軽い炎症が反対側にあった可能性もあるため、「片側だから大丈夫」と決めつけず、精液検査で確かめることをおすすめします。

両側に炎症が起きた場合

両側の精巣に炎症が起きると、精子をつくる組織が両方とも傷つくため、精子の数が大きく減ったり、精液の中に精子が見つからなくなったりすることがあります。それでも、精巣の中にわずかに精子がつくられている場合があり、不妊治療施設では精巣から直接精子を取り出す方法が検討されることがあります。どの方法が向くかは精液検査や診察の結果で変わるため、まず検査を受けることが出発点です。

精液検査で「今」の状態を確かめる

今の精子の数・運動率・形などは、精液検査で調べられます。萎縮から何年たったかより、現在の検査結果のほうが、これからの妊娠の見通しを考えるうえで役に立ちます。ただし、検査結果だけで自然妊娠ができるかどうかが決まるわけではありません。また、精液の所見は日によって変わるため、異常が見つかった場合は再検査が必要になることがあります。相談先は、泌尿器科や男性不妊の専門外来、不妊治療施設です。男性不妊の原因・検査・治療の全体像は、男性不妊の原因・検査・治療の解説にまとめています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【精子の「質」と赤ちゃんへの「影響」は分けて考える】

「精子にダメージがあると聞いて、生まれてくる子どもに何か問題が出るのではないか」というご相談をよくいただきます。これはとても自然な連想ですが、医学的には「精子の数や動きが落ちて妊娠しにくい」ことと、「生まれてくる赤ちゃんに病気が出る」ことは、分けて考える必要があると考えています。

精巣炎で起こるのは、主に精子をつくる組織が減ることです。それは妊娠までの時間や方法に関わる問題で、赤ちゃんの体の設計図そのものを書き換える話とは別のものです。このことを理解していただくだけで、多くの方の不安はかなり和らぎます。まずは精液検査で今の状態を知り、妊娠したら赤ちゃんのことを考える、という順番で整理すると、不安が一つずつ小さくなっていくと考えています。

4. 生まれてくる赤ちゃんへの影響は?

父親が過去にムンプス精巣炎になったことで、生まれてくる赤ちゃんの先天異常が増えるという根拠は、今回確かめた研究の中にはありませんでした。ここでは、ウイルスの影響と遺伝の影響を分けて説明します。

ウイルスの影響と遺伝の影響を分ける

おたふく風邪はウイルスによる感染症で、遺伝する病気ではありません。父親がおたふく風邪にかかったという病歴が、遺伝の形で子どもに受け継がれることはありません。ご質問の方のように、感染から10年ほどたってからの妊娠であれば、そのときの感染が今の妊娠に直接関わることは考えにくいと考えています。

一方、遺伝の面で赤ちゃんに関わるのは、精子や卵子が持っている遺伝情報です。精巣の萎縮で変わるのは主に精子をつくる組織の量で、精巣が小さくなったから遺伝の病気が生まれやすくなる、という関係は確かめられていません。生まれつきの病気(先天異常)は、父親の病歴とは関係なく、どの妊娠にも一定の割合で起こります。

研究でわかっていること

米国ミネソタ州ロチェスターで1935〜1974年の40年間の医療記録を調べた住民調査では、ムンプス精巣炎の男性132人について、精巣炎のあとに授かった男の子の先天異常も調べられました。その結果、生殖器や尿路の先天異常が増える傾向は見られなかったと報告されています[3]。

ただし、この研究が調べたのは男の子の生殖器・尿路の先天異常で、あらゆる病気を調べたわけではありません。また、規模の大きい研究がほかに多くあるわけでもありません。そのため「影響はゼロ」と言い切るのではなく、「増えるという根拠は見つかっていない」というのが、今言える正確な表現だと考えています。

妊娠中のパートナーがおたふく風邪にかかった場合

父親の過去の病歴とは別に、妊娠中の女性がおたふく風邪にかかった場合についても触れておきます。米国疾病対策センター(CDC)は、妊娠中のおたふく風邪はふつう妊娠していない人より重くなることはないとしています。妊娠初期の感染と流産・子宮内での胎児死亡との関係を報告した1966年の研究がある一方、ほかの研究ではこの関係は見られておらず、前向きの対照研究では先天奇形の割合は同じだったとしています[6]。

家族がおたふく風邪にかかり、妊娠中のパートナーが心配な場合は、かかっている産科に相談してください。妊娠中の感染症全般と流産の関係は、感染による流産のリスクの解説で扱っています。

5. 予防:おたふく風邪ワクチンと日本の制度

おたふく風邪ワクチンは、精巣炎を減らす効果が報告されています。オランダの研究では、12歳以上の男性の患者さんのうち、精巣炎はワクチンを受けていなかった人で23%、1回接種で10%、2回接種で9%に起こり、年齢をそろえて計算したワクチンの精巣炎予防効果は1回で66%(95%信頼区間1〜88%)、2回で74%(同49〜87%)でした[2]。ワクチンを受けていてもかかることはありますが、精巣炎のリスクは下がると考えられます。

日本では、2026年10月時点でおたふく風邪ワクチンは公費の定期接種ではなく、任意接種です。2026年7月には厚生労働省の専門家の小委員会がおたふく風邪ワクチンの定期接種化を支持する意見をまとめ、正式に決まれば2027年度にも1歳と就学前の2回で定期接種になる見通しと報道されています[7]。

大人の男性で、子どもの頃にかかったかどうかも接種したかどうかもわからない場合は、かかりつけ医などで接種について相談するとよいと考えています。

6. 父親になるためにできること・相談先

おたふく風邪で精巣が萎縮したあとに子どもを望むときは、「精液検査で今の状態を知る」「自然妊娠が難しければ不妊治療施設で方法を相談する」「妊娠したら赤ちゃんの検査や遺伝の相談を考える」という順番で進めると整理しやすくなります。

自然妊娠が難しいとき

精液検査で精子が少ない、または見つからないとわかった場合でも、方法が残されていることがあります。不妊治療施設では、精子の状態に応じて人工授精、体外受精、顕微授精(精子1個を卵子に直接入れる方法)、精巣から精子を取り出す手術などが検討されます。どの方法がよいかは、精液検査と診察の結果をもとに、泌尿器科や不妊治療施設で相談してください。

精子の質は、年齢や生活習慣の影響も受けます。精巣炎の既往がある方も、そうでない方も、睡眠や体調の管理は妊娠に向けて意味があります。体調・ストレスと精子の関係は、仕事のストレス・疲労と精子の質の解説で扱っています。

妊娠したら:出生前の検査と遺伝カウンセリング

父親の過去のムンプス精巣炎だけを理由に、赤ちゃんの染色体や遺伝子の病気のリスクが高いと考える根拠はなく、この既往だけでNIPTが特別に必要になるわけではありません。一方で、どの妊娠にも、染色体の数の変化や遺伝子の新しい変化による病気は一定の割合で起こります。「念のため赤ちゃんの状態を知っておきたい」と考える場合は、検査でわかることと限界を理解したうえで受けるかどうかを決められるよう、母体の血液で赤ちゃんの染色体などを調べるNIPTとは何かを知っておくと、選択肢を考えやすくなります。

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。受けられる時期の上限は設けていません。NIPTは確定診断ではないため、陽性の場合は確定検査で確かめます。当院では、確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます(NIPT陽性後の確定検査)。父親の年齢とともに増える遺伝子の新しい変化については、単一遺伝子疾患とNIPTの解説をご覧ください。

妊娠前や妊娠中に、自分たちの病歴が赤ちゃんにどう関わるかを整理したい場合は、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングで相談できます。当院には臨床遺伝専門医が常駐し、全室個室・90分の受診枠でほかの患者さんと顔を合わせずに相談できます。当院の遺伝子検査・NIPT・遺伝カウンセリングは自費診療です。

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仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「念のために調べておきたい」という気持ちについて】

「過去の病歴があるから、赤ちゃんに何かあったら自分のせいだ」と自分を責めるパートナーの方に、これまで何人も出会ってきました。その気持ちはよくわかります。けれども、今回確かめた研究の範囲では、精巣炎の既往が赤ちゃんの先天異常を増やすという根拠はありません。

それでも「念のために調べておきたい」という気持ちは、とても健全な判断だと思います。妊娠中の検査は、漠然とした不安を具体的な情報に置き換えるための手段の一つです。受けるかどうかも含めて、検査で何がわかり、何がわからないかを知ったうえで決めることが大切だと考えています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 大人がおたふく風邪にかかると不妊になりますか?

思春期以降の男性がかかると精巣炎を合併することがあり、そのあとに精巣が萎縮すると、妊娠させる力が下がることがあります。ただし、精巣炎を起こした人がみな妊娠しにくくなるわけではなく、妊よう性が完全に失われることはまれです。今の状態は精液検査で確かめられます。

Q2. 男の子がおたふく風邪にかかると将来不妊になりますか?

ムンプス精巣炎は、精巣でまだ精子がつくられていない子どもにはまれです。精巣炎が問題になるのは主に思春期以降に感染した場合で、思春期前の感染で将来の不妊を過度に心配する必要はありません。

Q3. 片側の精巣が萎縮していても自然妊娠できますか?

片側だけの萎縮であれば、もう片方の精巣が精子をつくり続けているため、妊娠させる力が保たれている可能性があります。ただし反対側にも軽い炎症があった可能性はあるため、精液検査で精子の数や動きを確かめることをおすすめします。

Q4. 父親がムンプス精巣炎になったことは、赤ちゃんに影響しますか?

おたふく風邪は遺伝する病気ではありません。米国の40年間の住民調査では、父親がムンプス精巣炎になったあとに授かった男の子に、生殖器・尿路の先天異常が増える傾向は見られませんでした。父親のムンプス精巣炎の既往で赤ちゃんの先天異常が増えるという報告は、今回確かめた研究にはありません。ただし、調べられている研究は限られていて、すべての先天異常について増加を否定できるわけではありません。

Q5. おたふく風邪の精巣炎や男性不妊の検査・治療はどこに相談すればよいですか?

精巣炎の治療や精液検査、男性不妊の相談は、泌尿器科や男性不妊の専門外来、不妊治療施設が相談先です。妊娠に向けた遺伝の相談や、妊娠後のNIPT・確定検査(絨毛検査・羊水検査)は、臨床遺伝専門医が常駐する当院で受けられます。

Q6. おたふく風邪ワクチンで精巣炎は防げますか?

オランダの研究では、ワクチンの精巣炎予防効果は1回接種で66%、2回接種で74%と報告されています。完全に防げるわけではありませんが、リスクは下がると考えられます。日本では2026年10月時点で任意接種です。

まとめ

おたふく風邪で男性不妊になる確率は一つの数字では言えませんが、段階ごとに見ると、自然感染での精巣炎が20〜40%、精巣炎のうち両側が10〜30%、萎縮が約半数、不妊・妊よう性の低下が約30%と報告されています[1][4]。一方で、妊よう性が完全に失われることはまれです[5]。

片側だけが萎縮した場合は、もう片方の精巣が働いている可能性があり、今の状態は精液検査でわかります。父親のムンプス精巣炎の既往で赤ちゃんの先天異常が増えるという報告は、今回確かめた研究にはありません[3]。ただし、調べられている研究は限られていて、すべての先天異常について増加を否定できるわけではありません。妊娠したあとに赤ちゃんの状態を知りたい場合は、NIPT(新型出生前診断)や遺伝カウンセリングという選択肢があります。

🏥 ミネルバクリニックで受けられること

当院には臨床遺伝専門医が常駐し、妊娠に向けた遺伝の相談(遺伝カウンセリング)と、妊娠9週から受けられるNIPT(妊娠6〜8週は臨床研究)を行っています。NIPTで陽性だった場合は、確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。精液検査や男性不妊の治療は、泌尿器科や不妊治療施設にご相談ください。検査を受けるか迷っている方は、先に遺伝カウンセリングとはやNIPTでわかることをご覧ください。

参考文献

  • [1] Wu H, Wang F, Tang D, Han D. Mumps Orchitis: Clinical Aspects and Mechanisms. Front Immunol. 2021;12:582946. doi:10.3389/fimmu.2021.582946 [Frontiers]
  • [2] Hahné S, Whelan J, van Binnendijk R, Swaan C, Fanoy E, Boot H, de Melker H. Mumps vaccine effectiveness against orchitis. Emerg Infect Dis. 2012;18(1):191-193. doi:10.3201/eid1801.111178 [PMC3381682]
  • [3] Beard CM, Benson RC Jr, Kelalis PP, Elveback LR, Kurland LT. The incidence and outcome of mumps orchitis in Rochester, Minnesota, 1935 to 1974. Mayo Clin Proc. 1977;52(1):3-7. [PubMed 609284]
  • [4] 国立感染症研究所. おたふくかぜワクチンに関するファクトシート(平成22年7月7日版). [厚生労働省掲載PDF]
  • [5] Shenot PJ. 精巣炎. MSDマニュアル家庭版(最終更新2023年8月). [MSDマニュアル]
  • [6] Centers for Disease Control and Prevention. Clinical Overview of Mumps (last reviewed January 17, 2025). [CDC]
  • [7] 熊本日日新聞(共同通信配信). おたふくかぜ定期接種化を支持 厚労省の専門家小委. 2026年7月22日. [熊本日日新聞]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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