目次
細菌感染や一部のウイルス感染は、流産の原因になることがあります。ただし、妊娠12週未満の早期流産で最も多い原因は赤ちゃん側の染色体の変化で、感染が関わりやすいのは妊娠12週以降の後期流産です[1][2]。感染症にかかったからといって、必ず流産するわけではありません。このページでは、感染による流産のリスクを時期と病原体ごとに整理し、妊娠中にできる予防をまとめます。
⏱️ 30秒でわかる要約
🦠 Q. 細菌感染は流産の原因になりますか?
なることがあります。とくに妊娠12週以降の後期流産では、細菌性腟症や子宮内の細菌感染(絨毛膜羊膜炎)との関連が報告されています。
🦠 Q. 妊娠初期の流産も感染が原因ですか?
多くは違います。妊娠12週未満の流産で最も多い原因は赤ちゃん側の染色体の変化で、流産した組織の約80%に染色体の異常が見つかったと報告されています。
🦠 Q. 感染で流産する確率は?
海外のレビューでは、予防できる可能性のある感染が早期流産の最大15%、後期流産の最大66%に関わると推定されています。一人ひとりの確率ではなく、上限の推定です。
🦠 Q. 妊娠中にできる予防は?
肉の十分な加熱、生ハムや加熱殺菌されていないチーズを避ける、子どもの唾液や尿に触れたあとの手洗いなどで、一部の感染は防げます。
感染とは別に、妊娠中の赤ちゃんの染色体を調べる検査として、東京のNIPT(新型出生前診断)があります。流産の原因の多くを占める染色体の変化と、感染による流産は、分けて考える必要があります。
- ➤早期流産と後期流産 → 原因の中心が違う(染色体の変化/感染など)
- ➤細菌感染と流産 → 細菌性腟症・絨毛膜羊膜炎・感染流産
- ➤病原体ごとの違い → リステリア・トキソプラズマ・りんご病・風しんなどの表
- ➤予防 → 食べ物・手洗い・猫のトイレ・ワクチン
- ➤流産の原因を知りたいとき → 染色体の検査と遺伝カウンセリング

💬 このページでお答えする疑問
「感染症にかかると流産するのでしょうか。どんな感染に気をつければよいのか、流産したのは感染のせいだったのかを知りたい」という疑問に、臨床遺伝専門医の立場からお答えします。
1. 感染症は流産の原因になる?早期流産と後期流産で違う
感染症は流産の原因の一つですが、どのくらい関わるかは妊娠の時期で大きく違います。日本では、妊娠22週より前に妊娠が終わることを流産と呼び、妊娠12週未満を早期流産、12週以降を後期流産と分けています[1]。妊娠の約15%は自然流産に終わるとされ、流産そのものは決してまれなことではありません[1]。
妊娠12週未満の流産は、多くが赤ちゃん側の染色体の変化
妊娠12週未満の早期流産で最も多い原因は、赤ちゃん側の異常です。日本産科婦人科学会は、流産した組織(将来胎盤になる絨毛組織)の染色体を調べると、約80%に異常が見つかったという報告を紹介しています[1]。MSDマニュアルも、妊娠10〜11週までに起こる流産はしばしば染色体の異常によるものだと説明しています[3]。
妊娠初期の流産の原因の中心は赤ちゃん側の染色体の変化で、感染はその一部にとどまる、ということは知っておいてほしいと思います。妊娠初期の流産の原因や兆候は、流産しやすいのはどんな人?妊娠初期の流産の原因で詳しく説明しています。
妊娠12週以降の後期流産では、感染が関わる割合が高くなる
妊娠12週を過ぎると、流産の原因に占める感染の割合が高くなります。感染と流産の関係をまとめた海外のレビューは、予防できる可能性のある感染が、早期流産の最大15%、後期流産の最大66%に関わっている可能性があると述べています[2]。このレビューは後期流産を妊娠12〜24週としており、日本の定義(22週未満)とは少しずれます。
この「最大15%」「最大66%」は、過去の研究から推定した上限の値です。あなたが感染して流産する確率を表す数字ではありません。数字の大きさよりも、「時期によって、流産の原因として感染が占める重みが変わる」と受け取るのが正確です。
📅 早期流産と後期流産で、感染の関わり方はどう違う?
※「最大15%・最大66%」は、予防できる可能性のある感染が関わる割合を海外の研究から推定した上限の値で、レビューでは後期流産を妊娠12〜24週としています[2]。日本の妊婦さん一人ひとりの確率ではありません。
2. 細菌感染で流産が起こるのはどんなとき?
流産の原因になる細菌感染として、腟内の細菌のバランスが崩れる細菌性腟症と、子宮の中の細菌感染(絨毛膜羊膜炎)が報告されています。ここでは、検索でよく調べられている「流産 細菌感染 原因」の中身を、報告されていることに沿って整理します。
細菌性腟症(腟内の細菌のバランスの乱れ)
細菌性腟症は、乳酸桿菌(ラクトバチルス)が優位な腟内細菌叢のバランスが崩れ、嫌気性菌などが増加した状態で、流産との関連が報告されています。前述のレビューでは、ベルギーの研究として、細菌性腟症のある妊婦さんでは妊娠25週未満の流産が多かった(オッズ比6.6、95%信頼区間2.1〜20.9)ことや、腟内にふだんいる乳酸桿菌がいない状態と流産との関連(オッズ比4.9)が紹介されています[2]。
オッズ比は「関連の強さ」を表す数字で、「細菌性腟症があると6.6倍の確率で流産する」という意味ではありません。研究の対象も限られています。おりものの量やにおい、色がいつもと違うと感じたときは、自己判断せずにかかりつけの産科で相談してください。
子宮の中の細菌感染(絨毛膜羊膜炎)
絨毛膜羊膜炎とは、赤ちゃんを包む卵膜の絨毛膜や羊膜に炎症が生じた状態です。細菌感染が関与することがありますが、組織学的な炎症所見だけで感染の存在や流産との因果関係が確定するわけではありません。同じレビューでは、流産した組織101検体のうち78%に絨毛膜羊膜炎が認められ、比較対象の人工妊娠中絶組織では認められなかったという研究が紹介されています[2]。ただし、この結果は特定の研究集団での所見であり、すべての流産に当てはまる割合ではありません。
破水と感染の関係や、前期破水が起きたときの対応は、前期破水とは?原因と対処法で詳しく説明しています。
「感染流産」とは
感染流産とは、流産の経過に子宮内の感染を伴う状態を指します。感染が流産の原因となる場合もあれば、流産の経過中に感染が合併する場合もあります。感染が重症化すると敗血症に進展することがあるため、注意が必要です[1]。流産の前後に発熱、強い腹痛、悪臭のあるおりものなどがみられる場合は、速やかに産科を受診してください。感染の診断と治療は、診てもらっている産科で行います。
クラミジア・マイコプラズマはどうか
クラミジアと流産の関係は、研究によって結果が分かれています。前述のレビューでは、クラミジア・トラコマティスは流産のリスクを上げるとする研究と上げないとする研究があり、結論が出ていないとされています。マイコプラズマ・ジェニタリウムについては、今のところ流産との関連を示す証拠はないとされています[2]。ただし、性感染症は妊娠中に治療が必要になることがあるので、妊婦健診の検査結果はかかりつけの産科で確かめてください。
3. 病原体ごとに、流産・胎児への影響は違う
流産や死産との関係が報告されている病原体は、細菌・ウイルス・原虫にわたります。同じ病原体でも、感染した時期や、初めての感染かどうかで赤ちゃんへの影響は変わります。下の表は、流産・死産との関係が報告されている主なものです。
🦠 流産・死産との関係が報告されている主な病原体
| 病原体 | 主なうつり方 | 流産・胎児への影響(報告されていること) | 予防・対応 |
|---|---|---|---|
| 細菌性腟症(腟内の細菌のバランスの乱れ) | もともと腟にいる菌のバランスが崩れる | ベルギーの研究で、妊娠25週未満の流産との関連(オッズ比6.6)が報告されている[2] | おりものの変化などがあれば産科で相談 |
| 子宮内の細菌感染(絨毛膜羊膜炎) | 腟・子宮頸部の細菌 | 流産した組織の多くで細菌感染が見られたという報告がある[2]。子宮内の感染による流産を「感染流産」と呼ぶ[1] | 発熱・腹痛があればすぐに産科へ |
| リステリア菌 | 食品(加熱されていないチーズ・生ハムなど) | 母体は重くなりにくいが、流産・早産・死産の原因になる[6] | 食品の加熱、避けたい食品を知る |
| トキソプラズマ(原虫) | 加熱が足りない肉、猫のふん、土 | 妊娠14週以前の初感染では胎児感染率は10%以下だが、流早産・死産を起こすことがあり重症になりやすい[5] | 肉の十分な加熱、猫のトイレは妊婦以外が毎日交換[5] |
| パルボウイルスB19(りんご病) | せき・くしゃみなどのしぶき | 流産・死産、胎児の重い貧血(胎児水腫)を起こすことがある。母体感染後の胎児死亡のリスクは約2〜6%で、妊娠前半の感染で最も高い[4] | 流行時は手洗い。感染が疑われたら産科へ |
| 風しんウイルス | せき・くしゃみなどのしぶき | 妊娠16週までの感染で流産することがある[2]。生まれた子に眼・耳・心臓の障害(先天性風しん症候群)が出ることがある[7] | 妊娠前のワクチン。妊娠中は接種できない[7] |
| サイトメガロウイルス | 小さな子どもの唾液・尿 | 流産が起こることがある[3]。ただし流産との関係を示す最近の研究は少ない[2] | 子どもの唾液・尿に触れたら手洗い、食器を共有しない[8] |
| 梅毒 | 性行為 | 流産との関連が示されている[2] | 感染がわかったら産科で治療を受ける |
※表は、流産・死産との関係が報告されている主なものを挙げたもので、すべての病原体ではありません。影響の大きさは、感染した時期や初めての感染かどうかで変わります。
リステリア菌:食品からうつり、流産・早産・死産の原因になる
リステリア菌は、食品からうつる細菌で、妊婦さんでは母体が重い症状になることはまれでも、流産や早産、死産の原因になります。厚生労働省は、妊娠中は加熱殺菌されていないナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモンを避け、加熱した食品を食べるよう呼びかけています[6]。リステリア菌は加熱に弱いので、食べる前の十分な加熱が予防になります。
トキソプラズマ:妊娠初期の初感染は、胎児感染は少ないが重くなりやすい
トキソプラズマは、妊娠中に初めて感染したときに赤ちゃんに影響が出ることがある原虫です。日本の研究班のトキソプラズマ妊娠管理マニュアル(第6版)では、感染した時期ごとの胎児感染率を、妊娠14週以前で10%以下、15〜30週で約20%、31週以降で60〜70%としています。妊娠14週以前の感染では胎児に感染する割合は低いものの、流早産や死産を起こすことがあり、重症度が高いとされています[5]。
パルボウイルスB19(りんご病):胎児死亡のリスクは約2〜6%
りんご病の原因ウイルスは胎盤を通って赤ちゃんに感染することがあり、ときに流産や死産、重い貧血による胎児水腫を起こします。MSDマニュアルでは、母体が感染したあとの胎児死亡のリスクは約2〜6%で、妊娠前半の感染で最も高いとされています。また、妊婦さんの約半数は過去の感染で免疫を持っているとされています[4]。上の子の保育園や学校でりんご病がはやっているときは、かかりつけの産科に相談しておくと安心です。
風しん・サイトメガロウイルス:流産との関係と、生まれた子への影響
風しんは妊娠16週までの感染で流産することがあり、生まれた子に眼・耳・心臓の障害(先天性風しん症候群)が出ることがあります。前述のレビューでは、妊婦健診での抗体検査が広まって、流産との関連の報告は減ったとされています[2][7]。
サイトメガロウイルスも、流産が起こることがあるウイルスとして挙げられています[3]。ただし、流産との関係を示す最近の研究は少なく、本当の役割はまだはっきりしていません[2]。生まれた子への影響については、先天性サイトメガロウイルス感染症とはで説明しています。
4. 妊娠中にできる感染予防
流産の原因のうち、感染は日々の生活で減らせる数少ないものです。すべての感染を防ぐことはできませんが、食べ物、子どもの世話、ペット、ワクチンの4つの場面で、できることがはっきりしています。
🛡️ 妊娠中にできる感染予防
| 場面 | すること | 防ぎたい感染 |
|---|---|---|
| 食べ物 | 肉は中まで十分に加熱する(調理の前に数日冷凍するとより効果が高い)[5] | トキソプラズマ |
| 食べ物 | 加熱殺菌されていないナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモンは避け、加熱した食品を食べる[6] | リステリア菌 |
| 食べ物 | 生野菜や果物は食べる前によく洗う。開封した食品は早めに食べきる[6] | リステリア菌 |
| 子どもの世話 | よだれを拭いたり、おむつを替えたりしたあとはよく手を洗う。子どもと食器・歯ブラシを共有せず、食べ残しを食べない[8] | サイトメガロウイルス |
| ペット | 猫のトイレの砂は妊婦以外の人が毎日交換する[5] | トキソプラズマ |
| ワクチン | 風しんの抗体が少ない場合、妊娠中は接種できないので、同居の家族の接種を検討する。接種後2か月ほどは避妊する[7] | 風しん |
食べ物:肉は中まで加熱し、避けたい食品を知っておく
トキソプラズマとリステリア菌は、食べ物からうつります。肉は中まで十分に加熱しましょう。トキソプラズマ妊娠管理マニュアルでは、調理の前に数日冷凍すると、より効果が高いとしています[5]。リステリア菌については、加熱殺菌されていないナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモンを避け、生野菜や果物は食べる前によく洗い、開封した食品は期限にかかわらず早めに食べきることが勧められています[6]。
上の子の世話:唾液や尿に触れたら手を洗う
サイトメガロウイルスは、小さな子どもの唾液や尿にふくまれることがあるウイルスです。埼玉県の資料では、子どもの唾液や尿に触れたとき(よだれを拭く、おむつを替えるなど)はその後よく手を洗うこと、子どもと食器や歯ブラシを共有したり食べ残しを食べたりしないことを勧めています[8]。
ペット:猫のトイレの砂は、妊婦さん以外が毎日交換する
猫のふんは、トキソプラズマの感染源の一つです。トキソプラズマ妊娠管理マニュアルでは、猫のトイレの砂は妊婦以外の人が毎日交換することを勧めています[5]。猫を飼っていること自体を心配しすぎる必要はありませんが、妊娠中は家族に役割を代わってもらいましょう。
ワクチン:風しんは妊娠前に。妊娠中は家族の接種を
妊娠中は、風しんのワクチンを接種できません。厚生労働省は、妊娠を希望する女性にワクチン接種後2か月ほどは避妊するよう呼びかけ、妊婦さんの同居家族にも接種を検討するよう勧めています[7]。妊婦健診で風しんの抗体が少ないとわかったときは、家族の接種を考えてください。
⚠️ すぐに産科に連絡してほしいとき
熱が出た、お腹の痛みや張りが続く、出血がある、水のようなおりものが出る(破水かもしれない)、りんご病や風しんの人と接したかもしれない、といったときは、次の健診を待たずにかかりつけの産科に連絡してください。感染症の診断と治療は、産科で行います。
5. 流産の原因を知りたいとき・次の妊娠に向けて
流産のあと、「感染のせいだったのか」を知りたいと思うのは自然なことです。ただ、妊娠初期の流産の多くは赤ちゃん側の染色体の変化によるもので[1]、感染によるものかどうかは、診てもらった産科での診察や検査の結果で判断します。
流産をくり返すとき:不育症と、ご夫婦の染色体検査
流産をくり返す場合は、不育症として原因を調べることがあります。原因の一つに、ご夫婦のどちらかが持つ染色体の構造の変化(均衡型転座など)があり、ご夫婦それぞれの血液で調べる染色体検査(Gバンド法)は当院でも受けられます。不育症の考え方と検査は、不育症とは?基礎知識と検査方法にまとめています。
次の妊娠で、赤ちゃんの染色体を調べたいとき:NIPT
NIPTは、妊婦さんの血液中に含まれる主に胎盤由来のDNA断片を解析し、胎児の染色体の数の変化などについて調べるスクリーニング検査です。NIPTは流産を予防する検査でも、流産の原因を確定する検査でもありません。検査プランによって調べられる染色体異常の範囲は異なり、すべての染色体異常を検出できるわけではありません。NIPTとは何か、何がわかって何がわからないかを知ったうえで、受けるかどうかを考えてください。
当院のNIPTは通常妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。受けられる時期についてはNIPTはいつからいつまで受けられる?で詳しく説明しています。当院でNIPTを受けた方は、陽性の場合も確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。2つの検査の違いは絨毛検査と羊水検査の違いをご覧ください。
NIPTが陰性だったのに流産した場合の考え方は、NIPTで陰性だったのに流産…不育症の検査は必要?にまとめています。
当院で相談できること
当院は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリング、遺伝子検査、NIPT、確定検査を行うクリニックです。流産の原因として多い染色体の変化について、次の妊娠でどんな検査があるか、ご夫婦の染色体検査を受けるかどうかなどを一緒に整理できます。当院の遺伝子検査・NIPT・遺伝カウンセリングは自費診療です。感染症の診断や治療、妊娠の経過の管理は、かかりつけの産科で受けてください。
🩺 院長コラム【「何かのせいで流産した」と自分を責めないために】
流産のあと、多くの方が「あのとき食べたものが悪かったのでは」「風邪をひいたせいでは」と、自分の行動の中に原因を探そうとします。けれども、妊娠初期の流産で最も多い原因は、赤ちゃん側の染色体の変化です。
感染は、流産の原因の中でも、日々の生活で減らせる数少ないものです。だからこそ、肉の加熱や手洗いといった「できること」はしっかり行い、「防ぎようのなかったこと」まで背負い込まないでほしいと考えています。原因を知りたいときは、事実を一つずつ確かめていくことが、次の妊娠への一番の近道です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 細菌感染は流産の原因になりますか?
なることがあります。とくに妊娠12週以降の後期流産では、腟や子宮の細菌感染(細菌性腟症や絨毛膜羊膜炎など)との関連が報告されています。一方、妊娠12週未満の早期流産で最も多い原因は赤ちゃん側の染色体の変化で、感染が原因になるのは一部です。
Q2. 感染症で流産する確率はどのくらいですか?
流産全体の中で感染が関わる割合は、時期によって違います。海外のレビューでは、予防できる可能性のある感染が、早期流産の最大15%、後期流産の最大66%に関わっている可能性があると推定されています。「最大」の推定で、日本の妊婦さん一人ひとりの確率を表す数字ではありません。
Q3. 妊娠中に感染症にかかったら、必ず流産しますか?
いいえ、必ず流産するわけではありません。たとえばりんご病(パルボウイルスB19)では、母体が感染したあとの胎児死亡のリスクは約2〜6%とされ、多くの赤ちゃんは影響を受けません。病原体や感染した時期によって影響は違うので、感染が疑われるときは早めにかかりつけの産科に相談してください。
Q4. 感染流産とは何ですか?
流産の経過に子宮内感染を伴う状態です。感染が流産の原因となる場合もあれば、流産の経過中に感染が合併する場合もあります。重症化すると敗血症に進展することがあるため、発熱、強い腹痛、悪臭のあるおりものなどがみられる場合は、速やかに産科を受診してください。
Q5. 妊娠中の感染症を防ぐために、食べ物で気をつけることは?
肉は中まで十分に加熱し、加熱殺菌されていないナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモンは避けます。生野菜や果物は食べる前によく洗いましょう。リステリア菌やトキソプラズマの感染を防ぐためです。
Q6. 流産の原因を調べることはできますか?
妊娠初期の流産の多くは赤ちゃん側の染色体の変化によるものです。流産をくり返す場合には、ご夫婦それぞれの血液で染色体を調べる検査(Gバンド法)があり、当院でも受けられます。感染が原因かどうかの診断と治療は、診てもらっている産科で行います。
まとめ
細菌感染や一部のウイルス感染は、流産の原因になることがあります。ただし、妊娠12週未満の早期流産で最も多い原因は赤ちゃん側の染色体の変化で、感染が関わる割合が高くなるのは12週以降の後期流産です[1][2]。細菌性腟症や子宮内の細菌感染(絨毛膜羊膜炎)は後期流産との関連が報告されており、リステリア菌、トキソプラズマ、りんご病のウイルス、風しんなども流産・死産との関係が知られています。
肉の十分な加熱、避けたい食品を知ること、子どもの唾液や尿に触れたあとの手洗い、猫のトイレを家族に任せること、妊娠前の風しんワクチンで、一部の感染は防げます。気になる症状があれば、かかりつけの産科にすぐ相談してください。流産の原因として多い染色体の変化について知りたいときは、NIPT(新型出生前診断)や遺伝カウンセリングで相談できます。
🧬 赤ちゃんの染色体のこと、臨床遺伝専門医に相談しませんか
東京・北青山のミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医がNIPTと遺伝カウンセリングを行っています。NIPTは通常妊娠9週から、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられ、陽性の場合も確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。感染症の診断・治療は、かかりつけの産科で受けてください。
参考文献
- [1] 日本産科婦人科学会. 流産・切迫流産. [日本産科婦人科学会]
- [2] Giakoumelou S, Wheelhouse N, Cuschieri K, Entrican G, Howie SEM, Horne AW. The role of infection in miscarriage. Hum Reprod Update. 2016;22(1):116-133. doi:10.1093/humupd/dmv041 [PMC4664130]
- [3] Sridhar A. 流産(家庭版). MSDマニュアル家庭版(2025年7月更新). [MSDマニュアル]
- [4] Tesini BL. 伝染性紅斑(パルボウイルスB19感染症). MSDマニュアル プロフェッショナル版(2023年10月更新). [MSDマニュアル]
- [5] サイトメガロウイルス、トキソプラズマ等の母子感染の予防と診療に関する研究班. トキソプラズマ妊娠管理マニュアル 第6版(2023年12月1日). [PDF]
- [6] 厚生労働省 健康・生活衛生局 食品監視安全課. 妊娠中・育児中の食中毒予防について(保健師中央会議 行政説明資料). [厚生労働省 PDF]
- [7] 厚生労働省. 妊娠を希望する女性、妊婦とそのご家族へ(風しん). [厚生労働省 PDF]
- [8] 埼玉県 保健医療部 健康長寿課. 妊婦さん気をつけて!(妊娠中に特に気をつけたい感染症). [埼玉県 PDF]



