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減数分裂とは?体細胞分裂との違い・染色体数が半分になる仕組みを図解でわかりやすく解説【組換え・不分離】

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

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📚 入門シリーズ

この記事は「遺伝病を理解するためのヒトゲノム入門編」の1本です。全記事の一覧と学ぶ順番はヒトゲノム入門編・索引ページからご覧いただけます。

減数分裂(げんすうぶんれつ)とは、精子や卵子をつくるときだけに行われる特別な細胞分裂で、DNAを1回複製したあと2回続けて分裂し、染色体の数を46本から23本へ半分に減らすしくみです。私たちのからだの細胞は46本の染色体を持っていますが、精子や卵子は23本しか持っていません。この記事では、体細胞分裂との違い、DNA量と染色体数の変化、相同染色体の対合と組換え、遺伝的多様性が生まれる理由、そして染色体不分離によって起こる異数性(ダウン症候群など)や不妊との関わりまでを、臨床遺伝専門医が図と表でわかりやすく解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. 減数分裂とは?わかりやすく言うと?

精子や卵子(配偶子)をつくるときだけに行われる細胞分裂です。DNAを1回複製したあと2回続けて分裂し、染色体の数を46本(2n)から23本(n)へ半分にします。精子と卵子が受精すると、子どもの染色体はふたたび46本に戻ります。

🔍 Q. 体細胞分裂との違いは?

体細胞分裂は1回の分裂で、親と同じ染色体数の細胞が2個できます。減数分裂は2回の分裂で、染色体数が半分の細胞が4個できます。相同染色体の対合と組換え(乗換え)が起こるのは、減数第一分裂だけです。

📈 Q. DNAが複製されるのはいつ?なぜ2回分裂するの?

DNAの複製は第一分裂の前(間期のS期)の1回だけで、第一分裂と第二分裂のあいだには起こりません。第一分裂で相同染色体を、第二分裂で姉妹染色分体を分けるので、2回の分裂が必要です。DNA量は相対値で2→4→2→1と変わります。

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1. 減数分裂とは?──染色体数を半分にする「いのちのリレー」

減数分裂は、有性生殖を行う生き物にとって欠かせない、次の世代へゲノム(遺伝情報の全体)を正しく引き継ぐためのしくみです。ふだん私たちの体をつくっている細胞は、傷ついた組織を修復したり、成長のために増えたりするときに「体細胞分裂(有糸分裂)」を行います。この分裂では、親細胞とまったく同じ遺伝情報を持つ細胞が2つできます。これに対して減数分裂は、精子や卵子といった生殖細胞(配偶子)をつくるためだけに行われる、特別な分裂です。

減数分裂の最大の特徴は、1回のDNA複製のあとに、2回続けて細胞分裂を行うという点です[2]。1回目を減数第一分裂(Meiosis I)、2回目を減数第二分裂(Meiosis II)と呼びます。DNAは分裂の前に1回だけコピーされますが、細胞分裂は2回起こるため、最終的に染色体の数は親細胞の半分になります。ヒトの体細胞は46本(23対)の染色体を持つ「二倍体(2n)」ですが、減数分裂を終えた配偶子は23本の「一倍体(n)」になります。そして受精のときに精子(23本)と卵子(23本)が合体することで、子どもはふたたび46本の二倍体に戻ります。もし減数分裂がなければ、世代を重ねるごとに染色体数が倍々に増えてしまいます。この「半分に減らす」しくみが、世代をまたいで染色体数を一定に保つ土台になっています。

💡 用語解説:相同染色体(そうどうせんしょくたい)

ヒトは同じ種類の染色体を父由来・母由来で1本ずつ、合計2本ペアで持っています。この「同じ番号どうしのペア」を相同染色体といいます。たとえば1番染色体は、お父さんから受け継いだ1番とお母さんから受け継いだ1番の2本があります。見た目や遺伝子の並びは似ていますが、中身の細かな配列(対立遺伝子)は父母で少しずつ違います。減数第一分裂では、この相同染色体のペアがいったん出会い、正しく1本ずつに分かれていきます。詳しくは相同染色体とはをご覧ください。

減数分裂の過程を示した模式図

減数分裂の流れを模式図にしたものです。1つの細胞が2回の分裂を経て、染色体数が半分になった配偶子へと変化していきます。

減数分裂の始まりに先立つ「間期」は、体細胞分裂と同じようにG1期・S期・G2期に分かれ、S期でDNAが複製されます。減数分裂を理解する前段階として、細胞の増え方そのもののリズムを知っておくと理解が深まります。細胞周期の詳しいしくみについては、シリーズ前回の細胞周期の解説【第6回】をあわせてご覧ください。

2. 体細胞分裂とどう違う?──2回分裂で4つの配偶子ができる

減数分裂の各ステージを示す模式図

減数分裂の各ステージを段階ごとに示した図です。染色体がどのように整列し、2回の分裂を経て配偶子へと分かれていくかを示しています。

体細胞分裂と減数分裂の違いをひとことで言うと、体細胞分裂は「同じ細胞を2つ」、減数分裂は「染色体数が半分の、遺伝的にそれぞれ異なる細胞を4つ」つくる分裂です。この違いを生むのが、2回の分裂で「何が分かれるか」の違いです。減数第一分裂では、ペアになった相同染色体どうしが分かれます(このため染色体数がここで半分になります)。続く減数第二分裂では、1本の染色体をつくっている2本の姉妹染色分体が分かれます。この第二分裂は、染色体数がすでに半減しているという点を除けば、体細胞分裂とよく似た分かれ方をします。

減数分裂の全体像:1回の複製 → 2回の分裂 → 4つの配偶子

精母細胞・卵母細胞
二倍体(2n・4c)/DNA複製ずみ
↓ 減数第一分裂(相同染色体が分かれる)
娘細胞
一倍体(n・2c)
娘細胞
一倍体(n・2c)
↓ 減数第二分裂(姉妹染色分体が分かれる)
配偶子
n・1c
配偶子
n・1c
配偶子
n・1c
配偶子
n・1c

「2n・4c」の c はDNA量を表す記号です。第一分裂で相同染色体が分かれて n・2c になり、第二分裂で姉妹染色分体が分かれて n・1c の配偶子が4つ完成します。

下の表に、体細胞分裂・減数第一分裂・減数第二分裂の主なちがいを整理しました。ポイントは、相同染色体の対合(ペアづくり)と組換えが起こるのは減数第一分裂だけであること、そして「分離の対象」が第一分裂と第二分裂で異なることです。

📊 体細胞分裂・減数第一分裂・減数第二分裂の違い

比較項目 体細胞分裂 減数第一分裂 減数第二分裂
主な目的 増殖・成長・修復 相同染色体の分離(数を半減) 姉妹染色分体の分離
分裂前のDNA複製 あり あり なし
開始→終了の染色体 2n・4c → 2n・2c 2n・4c → n・2c n・2c → n・1c
相同染色体の対合 起こらない 前期Iで二価染色体を形成 起こらない
組換え(乗換え) 原則として起こらない 前期Iで起こる 起こらない
分離するもの 姉妹染色分体 相同染色体のペア 姉妹染色分体
できる細胞 同じ染色体数の細胞が2個 染色体数が半分の細胞が4個(第一・第二分裂を通して)

DNA量と染色体数はどう変わる?──DNAが複製されるのは第一分裂の前の1回だけ

減数分裂でDNAが複製されるのは、第一分裂の前(間期のS期)の1回だけです。第一分裂が終わったあと、DNA合成の時期をはさまずに、そのまま第二分裂が続きます[2][1]。そのため、細胞1個あたりのDNA量は、相対値で「2 → 4 → 2 → 1」と変化します。高校生物でよく出てくる「DNA量のグラフ」は、この変化を表したものです。

📈 減数分裂での染色体数(核相)とDNA量の変化(ヒトの場合)

時期 核相(染色体の組) 染色体の数 DNA量(相対値)
間期(G1期) 2n 46本 2
S期のあと〜第一分裂の前 2n 46本(それぞれ2本の姉妹染色分体) 4
第一分裂のあと n 23本(それぞれ2本の姉妹染色分体) 2
第二分裂のあと(配偶子) n 23本 1

染色体の数が半分になるのは第一分裂、DNA量が半分になるのは第一分裂と第二分裂のそれぞれです。

「なぜ2回も分裂するのか」という疑問も、この表から答えられます。DNAを1回複製した細胞では、1本の染色体が2本の姉妹染色分体でできています。第一分裂で相同染色体のペアを分けても、まだ姉妹染色分体はつながったままなので、第二分裂で姉妹染色分体を分けて、ようやくDNA量1の配偶子になります。

減数分裂はいつ・どこで起こる?──男性と女性の違い

ヒトの減数分裂は、男性では精巣、女性では卵巣で行われます。男性の精子形成は思春期に始まり、その後も長く続きます。1つの精母細胞から、減数分裂によって4つの一倍体の精子細胞ができます[10]。一方、女性の卵母細胞は胎児期の卵巣で減数分裂を始め、第一分裂前期で長いあいだ止まります[4]。卵子形成では細胞質が等しく分かれず、大きな卵子と小さな「極体(きょくたい)」に分かれるきわめて非対称な分裂で、極体はやがて消えていきます[1]。

男性と女性の減数分裂の違い(精子形成と卵子形成の比較図)

男性(精子形成)と女性(卵子形成)の減数分裂の違いを示した図です。男性は4つの精子ができるのに対し、女性は1つの卵子と小さな極体へと非対称に分かれます。

この男女差については、シリーズ次回の配偶子形成と受精【第8回】で詳しく扱います。

3. 減数第一分裂前期の5段階──染色体が出会い、DNAを交換するまで

減数分裂をもっとも特徴づけるのが、減数第一分裂の前期(Prophase I)です。この段階は体細胞分裂の前期に比べてはるかに長く、ヒトの卵子では数十年に及ぶこともあります[4]。染色体の凝縮の進み具合と、相同染色体どうしの近づき方によって、前期Iはさらに5つの段階に分けられます。それぞれの段階で、染色体が「出会い」「密着し」「DNAを交換し」「離れはじめる」という一連の流れが進みます。

① レプトテン期(細糸期)

染色体が細い糸のように見えはじめ、SPO11という酵素がDNAに計画的な二本鎖切断を入れます。組換えのスタート地点です。

② ジゴテン期(接合糸期)

相同染色体どうしが近づき、シナプトネマ複合体というタンパク質の橋で結ばれて対合(シナプシス)が始まります。

③ パキテン期(太糸期)

相同染色体が完全にペアになり、非姉妹染色分体のあいだでDNAの乗換え(交差)が進みます。

④ ディプロテン期(複糸期)

対合の橋がほどけ、相同染色体は離れようとしますが、乗換えの結合点である「キアズマ」でつながったまま保たれます。

⑤ ディアキネシス期(移動期)

染色体の凝縮が最大になり、核膜が壊れて紡錘体ができ始めます。いよいよ中期へ進む準備が整います。

相同染色体をつなぐタンパク質の橋についてはシナプトネマ複合体で詳しく解説しています。

💡 用語解説:二価染色体(にかせんしょくたい)とキアズマ

相同染色体のペアがぴったり対合したものを二価染色体と呼びます。1本の染色体は複製ずみで2本の姉妹染色分体からなるため、ペアになると合計4本の糸が束になった構造になります。この二価染色体の中で、非姉妹染色分体どうしがDNAを交換した結合点をキアズマ(chiasma)といいます。キアズマは、相同染色体を物理的につなぎとめる「かすがい」の役割を果たし、これがあることで染色体が中期の赤道面に正しく並び、後期にきちんと両極へ引っ張られます。

なお、ヒトを含む哺乳類の卵子形成では、このディプロテン期で減数分裂がいったん長期間ストップします。網糸期(ディクチオテン期)と呼ばれるこの停止は胎児期から始まり、排卵されるまで数か月から数十年続きます[4]。この長い停止が、後で述べる母体年齢と染色体の数の変化の関係を理解する鍵になります(ディクチオテン期停止(網糸期))。

4. 遺伝的組換え(乗換え)の分子メカニズム

組換え(乗換え、クロスオーバー)は、遺伝子の多様性を生むためだけのしくみではありません。相同染色体を物理的につなぎとめ、減数第一分裂で正しく整列・分離させるためにも欠かせません。哺乳類では、相同染色体のペアごとに少なくとも1か所の交差が形成されるように調節されており(オブリゲート・クロスオーバー)、これが第一分裂での正確な分配を支えています[4]。ですから組換えは、多様性という「攻め」の意味と、正確な分配という「守り」の意味の両方を担っています。

組換えの引き金を引くのがSPO11というトポイソメラーゼに似た酵素で、DNAに二本鎖切断(DSB)を入れます[3]。切断されたDNAの末端は削られて長い一本鎖DNAが露出し、そこに組換え酵素(RAD51・DMC1)が結合してフィラメントをつくります。このフィラメントが相同な配列を探し出し、相手方の二本鎖DNAに入り込むことで、DNAどうしがつながった中間構造ができます[3]。

この中間構造(二重ホリデイジャンクションなど)は、乗換え(交差)として処理される場合と、乗換えを伴わない「非交差」として処理される場合があります。減数分裂の交差の多くは、MutLγ(MLH1とMLH3の複合体)という酵素のはたらきでつくられます[3]。ヒトの減数分裂では1つの染色体対あたり平均して2〜3回の交差が起こります[2]。

💡 用語解説:組換え(乗換え・クロスオーバー)

父由来の染色体と母由来の染色体のあいだで、対応する部分どうしを物理的に交換することです。これによって、もともと同じ染色体上に並んでいた遺伝子どうしの結びつき(連鎖)がほどけ、親のどちらにもなかった新しい遺伝子の組み合わせが生まれます。交差が起こりやすい場所(ホットスポット)と起こりにくい場所(コールドスポット)があることも知られています[2]。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「なぜ兄弟でも顔が違うのか」の答え】

同じ両親から生まれたのに、どうしてきょうだいでこんなに違うのか。その答えの大きな部分が、この組換えにあると考えています。両親から受け継いだ染色体は、そのまま丸ごと子に渡るのではなく、減数分裂のたびに切り貼りされ、新しい組み合わせに編み直されて配偶子に入ります。

つまり、あなたが持つ1本の染色体は、祖父母それぞれに由来する断片がつなぎ合わさったパッチワークになっているのです。この「毎回シャッフルされる」しくみがあるからこそ、私たち一人ひとりは唯一無二の存在になります。遺伝を学ぶと、家族の似ているところも違うところも、いっそう愛おしく感じられるようになります。

5. 染色体を正しく分ける分子装置──コヒーシン・動原体・シュゴシン

減数分裂で染色体を2回にわたって正しく分けるためには、体細胞分裂とは異なる精密な「装置」が必要です。その中心を担うのが、複製された姉妹染色分体をつなぎとめるコヒーシンというリング状のタンパク質複合体です。減数分裂ではREC8という減数分裂専用の部品を持つコヒーシンが使われます[4]。

💡 用語解説:動原体(キネトコア)と紡錘体

染色体を両極へ引っ張る「ロープ」が紡錘体(ぼうすいたい)という微小管の束で、そのロープが結びつく染色体側の「取っ手」が動原体(キネトコア)です。動原体はセントロメア領域に組み立てられます。体細胞分裂では姉妹染色分体の動原体がそれぞれ反対の極を向きます。ところが減数第一分裂では、姉妹の動原体が同じ極を向く特別な配置(一方向性結合)になります[5]。この向きの切り替えがあるからこそ、第一分裂では姉妹ではなく相同染色体どうしが分かれるのです。

この動原体の向きの切り替えには、MEIKINという減数分裂に特化したタンパク質が重要な役割を果たします。MEIKINは、姉妹の動原体が同じ極を向くことと、セントロメア付近のコヒーシンを守ることの両方に関わり、これらのはたらきは主にPolo様キナーゼ1(PLK1)の活性を介していると報告されています[5]。

もう一つの巧妙な工夫が、コヒーシンの「段階的なはがし方」です。第一分裂の後期に相同染色体を両極へ分けるためには、セパラーゼという酵素がREC8を切断し、染色体の腕の部分のコヒーシンを取り除く必要があります。このとき、セントロメア付近のコヒーシンはシュゴシン(哺乳類ではSGO2)という「守り神」のタンパク質に守られます[4]。MEIKINはこのシュゴシンの局在を安定させることでも守りに関わります[5]。この保護があるおかげで、第二分裂まで姉妹染色分体の結びつきが温存され、最後にきちんと1本ずつに分けられるのです。「腕は切るがセントロメアは守る」という段階的な制御が、減数分裂の正確さの要になっています。

6. なぜ子は親と違うのか──遺伝的多様性のしくみ

減数分裂が生み出す遺伝的多様性は、大きく分けて3つのしくみの掛け算で生まれます。1つ目が「相同染色体の独立した組み合わせ」、2つ目が「組換え(乗換え)」、3つ目が「受精のときのランダムな組み合わせ」です。

まず1つ目の独立の組み合わせについて考えます。減数第一分裂の中期で、二価染色体が赤道面に並ぶとき、父由来の染色体と母由来の染色体のどちらがどちらの極を向くかは、他の染色体ペアとは無関係に、ランダムに決まります。ゲノム中の相同染色体対の数を n とすると、この独立分配だけで生じる配偶子の染色体の組み合わせは 2 の n 乗通りになります。

ヒトは23対の相同染色体を持つので……

223 = 8,388,608 通り

組換えを考えなくても、1人が理論上つくり得る配偶子の染色体の組み合わせは約840万通りにのぼります[1]。

2つ目の組換えが加わると、この組み合わせはさらに細かく枝分かれします。同じ染色体上に並んでいた対立遺伝子(アレル)どうしの結びつきが乗換えでほどけるため、配偶子のバリエーションはさらに広がります。そして3つ目の受精のランダムな組み合わせを考えると、多様性はさらに跳ね上がります。組換えを考えず、独立分配だけを考えたとしても、両親から生まれる子どものゲノムの組み合わせは、父側の配偶子(約840万通り)と母側の配偶子(約840万通り)の積になります。

父の配偶子 × 母の配偶子(独立分配のみで計算)

223 × 223 = 約 70 兆通り

これに、23対それぞれで平均2〜3回起こる交差[2]と、新しく生じるバリアントが加わります。一卵性双生児を除けば、遺伝的にまったく同じきょうだいが生まれることは、事実上ないと考えられます。

こうして生まれる新しい組み合わせは、環境の変化に対する種の適応力を支えています。新しいバリアント(新生突然変異=de novo変異)がどこから生じるのかについては、遺伝子のバリアントの起源と頻度【第20回】もあわせてご覧ください。

7. 減数分裂の失敗──染色体不分離・異数性・不妊

減数分裂の染色体分配は精密に制御されていますが、まれに失敗が起こります。減数分裂でもっとも多い誤りが、この分配の失敗である染色体不分離(nondisjunction)です[1]。不分離が起こると、本来23本ずつに分かれるはずの染色体が偏り、24本または22本の配偶子ができてしまいます。この配偶子が受精すると、特定の染色体が3本になったり(トリソミー)、1本しかなくなったり(モノソミー)する状態、すなわち異数性(異数体)が生じます。

💡 用語解説:異数性(いすうせい)とトリソミー

染色体の数が本来の46本より多かったり少なかったりする状態を異数性といいます。ある番号の染色体が3本ある状態がトリソミー、1本しかない状態がモノソミーです。染色体には多数の遺伝子が乗っているため、本数が1本増減するだけで、はたらく遺伝子の量(遺伝子量)のバランスが崩れ、からだの発達に影響が出ます。なぜ本数が変わると影響が出るのかについては、遺伝子量の解説【第29回】で詳しく扱っています。

代表的な異数性の病気を下の表にまとめました。染色体の本数の変化が、どのようなしくみで生じ、どのような特徴につながるかを示しています。

🧬 染色体の数の変化で起こる代表的な病気

病気の名前 染色体の変化 起こるしくみ・特徴
ダウン症候群 21トリソミー(21番が3本) 約95%は減数分裂での不分離によるもので、頻度は母体年齢とともに高くなります[6]。
18トリソミー(エドワーズ症候群) 18番が3本 重い発達の遅れや体のつくりの異常を伴うことが多い病気です。
13トリソミー(パトー症候群) 13番が3本 重い先天異常を伴うことが多い病気です。
ターナー症候群 Xモノソミー(X染色体が1本) 性染色体の数の変化で、低身長や卵巣機能不全を特徴とします。
クラインフェルター症候群 47,XXY(X染色体が1本多い) 性染色体の数の異常の一つで、男性不妊などと関連します。

なぜ母体年齢が上がると不分離が増えるのか

女性の卵母細胞は、胎児期の卵巣で減数分裂を始め、第一分裂前期(ディプロテン期=網糸期)で止まったまま、排卵されるまで数か月から数十年保たれます[4]。マウスの研究では、この長い停止のあいだ染色体をつなぎとめるコヒーシン(REC8)はほとんど入れ替わらず、年齢とともに染色体に付いているコヒーシンが減っていくことが示されています[4]。

コヒーシンが減ると、相同染色体や姉妹染色分体をつなぎとめる力が弱まり、染色体の分配の誤り(不分離)が起こりやすくなると考えられています。これが加齢に伴うコヒーシン劣化説です。ただし、この説は主にマウスで確かめられたもので、ヒトでも同じしくみがどこまで当てはまるかは、まだはっきりしていません[4]。卵子で異数性が起こるしくみはなぜ卵子で染色体異常(異数性)が起こるのか?母体の加齢との関係で、年齢と確率についてはダウン症を産む人の特徴は?母親が原因?年齢と確率の真実で詳しく解説しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「年齢のせい」ではなく「しくみ」を知ってほしい】

母体年齢と染色体の数の変化の関係は、お母さんの努力不足や生活習慣のせいではない、ということをまずお伝えしたいと考えています。卵子が胎児のころから長く減数分裂を止めているという生物学的なしくみが背景にあり、誰かが悪いわけではありません。

しくみを正しく知ることは、いたずらに不安になったり、自分を責めたりしないための力になります。数字だけにとらわれず、ご自身の状況にとって何が意味を持つのかを一緒に整理していくのが、遺伝カウンセリングの役割だと考えています。

不分離による染色体の数の変化は、妊娠中に調べられる?

不分離で起こる染色体の数の変化は、妊娠中にお母さんの採血で調べるNIPT(新型出生前診断)で、その可能性を調べることができます。NIPTはスクリーニング検査なので、陽性のときは羊水検査や絨毛検査などの確定検査で確かめます。

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。調べられる染色体の範囲はプランによって異なります。13・18・21トリソミーは、スタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・双子マックス・インペリアルのすべてのプランで調べられます。15・16・22トリソミーは、プレミアム・ダイヤモンド・双子マックス・インペリアルで調べられます(双子マックスとインペリアルは全常染色体の数の異常を調べるため、これに含まれます)。すべての常染色体の数の異常は、双子マックスとインペリアルで調べられます。性染色体の数の異常は、スタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアルで調べ、双子マックスでは調べません。陽性のときは、羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます(NIPT陽性後の確定検査)。

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減数分裂と不妊のつながり

染色体不分離だけでなく、組換えに関わる遺伝子そのものの変化も、不妊の原因になり得ます。総説によると、男性の非閉塞性無精子症(NOA)では少なくとも26種類の減数分裂の組換えに関わる遺伝子の変化が報告されており、そのうち10種類は女性の早発卵巣不全(POI)でも見つかっています[7]。減数分裂がうまく進まないと、精子や卵子が育たなくなることがあるのです。減数分裂の理解は、染色体の数の変化だけでなく、不妊の背景を読み解くうえでも大切になっています。

なお、不分離によって生じたトリソミーの受精卵が、その後の細胞分裂で余分な1本を失って2本に戻ることがあります(トリソミーレスキュー)。このとき、残った2本がたまたま同じ親由来になってしまうと、片親性ダイソミー(UPD)という状態になり、一部の病気の原因になります。この現象については片親性ダイソミー【第35回】で詳しく解説しています。染色体不分離が生む臨床像の全体像は、染色体の数的異常【第30回】や染色体が増えると何故赤ちゃんに障害が出るの?もあわせてご覧ください。

8. 減数分裂はどこから来たのか──進化的な起源

減数分裂は、真核生物の生活環で広く保たれてきた、祖先的で保存性の高いしくみです[8]。なかでも、第一分裂前期の相同染色体の対合・DNA二本鎖切断・相同組換えによる修復は、減数分裂の中でもっとも省けない要素とされ、組換えよりも酸化によるDNAの傷の修復に適したしくみだとする見方があります[8]。この総説は、減数分裂のいちばんの役割は多様性をつくることよりも、DNAを修復して元に戻すことにある、という説を支持しています[8]。

興味深いことに、減数分裂は「公平なルール」だけで動いているわけではありません。メンデル遺伝の分離の法則は、自分が次の世代に伝わる割合を高めようとする利己的な遺伝因子によって破られることがあり、これを「減数分裂駆動(meiotic drive)」と呼びます[9]。卵子形成では分裂がきわめて非対称で、卵子に入った染色体だけが子に伝わり、残りは極体として失われます。このため、サテライト配列が増えた大きなセントロメアを持つ染色体が卵子側に入りやすくなる「セントロメア・ドライブ」が、マウスなどで研究されています[9]。減数分裂は、正確さと多様性、そして遺伝子どうしの競争が同時に折り重なった、奥の深いしくみなのです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 減数分裂と体細胞分裂の違いは何ですか?

いちばんの違いは「分裂の回数」と「できる細胞」です。体細胞分裂は1回のDNA複製のあと1回だけ分裂し、親と同じ染色体数の細胞が2つできます。減数分裂は1回のDNA複製のあと2回続けて分裂し、染色体数が半分になった細胞が4つできます。また、相同染色体の対合と組換えが起こるのは減数分裂だけです。

Q2. 生殖細胞が受精しても、子の染色体の数が親と同じになるのはなぜですか?

精子や卵子をつくるときの減数分裂で、染色体の数をあらかじめ半分(46本から23本)に減らしているからです。23本の精子と23本の卵子が受精すると46本に戻り、世代を通じて染色体数が一定に保たれます。もし配偶子が46本のまま受精すると、子どもは92本になってしまいます。

Q3. 減数分裂でDNAが複製されるのはいつですか?

第一分裂の前(間期のS期)の1回だけです。第一分裂と第二分裂のあいだにはDNAの複製は起こりません。そのため、細胞1個あたりのDNA量は相対値で2→4→2→1と変化します。

Q4. 減数分裂はなぜ2回分裂するのですか?

DNAを1回複製した細胞では、1本の染色体が2本の姉妹染色分体でできているからです。第一分裂で相同染色体のペアを分けて染色体の数を半分にし、第二分裂で姉妹染色分体を分けることで、DNA量も半分になった配偶子ができます。

Q5. 減数第一分裂と第二分裂の違いは何ですか?

第一分裂では相同染色体のペアが分かれ、染色体の数が半分(2nからn)になります。相同染色体の対合と組換えが起こるのも第一分裂です。第二分裂では姉妹染色分体が分かれ、染色体の数は変わらずにDNA量が半分になります。第二分裂の前にDNAの複製はありません。

Q6. 組換え(乗換え)は減数分裂のどの段階で起こりますか?

減数第一分裂の前期に起こります。レプトテン期にSPO11がDNAに切断を入れて組換えが始まり、パキテン期に非姉妹染色分体どうしの乗換え(交差)が進みます。ヒトでは1つの染色体対あたり平均2〜3回の交差が起こり、この結合点(キアズマ)が相同染色体を正しく分けるための「かすがい」にもなっています。

Q7. 減数分裂はいつ、どこで起こりますか?

ヒトでは、男性は精巣、女性は卵巣で起こります。男性の精子形成は思春期に始まります。女性の卵母細胞は胎児期の卵巣で減数分裂を始め、第一分裂前期で止まったまま、排卵されるまで数か月から数十年保たれます。

Q8. 染色体不分離が起こるとどうなりますか?

染色体が偏って分かれるため、染色体を1本多く(または少なく)持つ配偶子ができます。これが受精すると、特定の染色体が3本になるトリソミー(ダウン症候群など)や1本になるモノソミー(ターナー症候群など)といった異数性が生じます。染色体には多くの遺伝子が乗っているため、本数の変化が発達に影響を与えます。

Q9. なぜ母親の年齢が上がると染色体の数の変化が増えるのですか?

卵子は胎児のころに減数分裂を途中で止め、排卵まで長いあいだ止まっています。マウスの研究では、そのあいだ染色体をつなぐコヒーシンはほとんど入れ替わらず、年齢とともに減っていくことが示されており、これが不分離の増える理由の一つと考えられています(ヒトで同じかはまだはっきりしていません)。これは生物学的なしくみによるもので、本人の努力や生活習慣のせいではありません。

Q10. 減数分裂の異常による染色体の数の変化は、出生前に調べられますか?

染色体の数の変化は、妊娠中にお母さんの採血で調べるNIPT(新型出生前診断)で可能性を調べられます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。NIPTはスクリーニング検査なので、陽性のときは羊水検査や絨毛検査などの確定検査で確かめます。検査の意味については遺伝カウンセリングで臨床遺伝専門医が説明します。

Q11. 減数分裂は不妊とも関係があるのですか?

はい、関係があります。組換えに関わる遺伝子に生まれつきの変化があると、精子や卵子が育たなくなることがあります。総説では、男性の非閉塞性無精子症で少なくとも26種類の減数分裂の組換えに関わる遺伝子の変化が報告され、そのうち10種類は女性の早発卵巣不全でも見つかっています。

🏥 染色体の数の変化を、妊娠中に調べる

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。全常染色体の数の異常まで調べられるプランがあり、臨床遺伝専門医が常駐し、陽性なら羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます。

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参考文献

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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・検査の選択を示すものではありません。検査については臨床遺伝専門医にご相談ください。

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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