ゲノム情報伝達の仕組み:基礎編
ゲノム情報を伝達するとはどういうことなのか?
遺伝とは生殖により親から子へと生物のもつ性質や特徴(形質)が伝わるという現象のことを言います。
遺伝の仕組み
遺伝とは、遺伝情報を子孫に伝えることといえます。その遺伝情報があるのが染色体を構成するゲノムになります。
中学校の理科で出てくるのでご存知と思いますが、配偶子(精子・卵子)は減数分裂という特殊な分裂をして、46本(2コピー)ではなく23本(1コピー)しか染色体がない細胞になっています。
そして、それが合わさって受精卵になったときに46本となります。
言葉でいうと簡単なのですが、この過程を理解しないと遺伝病がどうして起こるのかについて理解できないので順を追ってみていきましょう。
染色体からみた遺伝情報伝達
1.同一個体内で細胞分裂においてゲノム情報が複製されて子(娘)細胞へと伝わること
2.生殖において各々の親由来の1コピー分のゲノム情報が受精胚で合わさり次世代に伝わること
の2通りがあります。
これら二つのゲノム情報の伝達は似てはいるのですが性質は異なっていて、体細胞分裂と減数分裂と呼ばれる2種類の細胞分裂方法があります。
体細胞分裂(mitosis)
体細胞(生殖細胞系列以外の細胞をこう呼びます)における通常の細胞分裂を体細胞分裂と呼びます。からだが成長したり傷ついたときに組織の再生を引き起こして修復したりするのに必要です。体細胞分裂では2つの娘細胞ができ、各娘細胞の染色体や遺伝子は分裂前の親細胞とまったく同じです。1つの系列の体細胞で、体細胞分裂が連続して何回おこったとしても、その細胞の遺伝子発現パターンもそのまま受け継がれます。そうしないと、例えば肝臓の細胞が脱落して隣の細胞が分裂して穴埋めするときに、心筋を構成する細胞の遺伝子を発現したら肝臓の中に心筋が出来てしまいます。しかし、もともとの我々の細胞はたった一つの受精卵からできるので、すべての細胞に同じすべての遺伝情報がのっていますので肝臓の細胞であっても心筋になるための遺伝子は備わっています。肝臓と心臓の違いは同じ遺伝情報を全部持った同じ細胞であっても、肝臓は肝臓に分化するように遺伝子発現をコントロールされた細胞が、心筋には心筋になるように遺伝子発現をコントロールされた細胞が並んでそれぞれの組織を作っています。なので、肝臓を修復しようとしたら心筋ができるのは非常にまずいので、体細胞分裂では遺伝子の発現をコントロールするエピゲノム(ヒストンコード)もそっくりそのまま受け継がれるのが基本です。
減数分裂(meiosis)
生殖細胞系列でのみ起こる分裂方法です。
生殖機能をもつ細胞(配偶子:gamete)が形成されます。
配偶子は常染色体(1~22)を各1本ずつと性染色体(XかY)1本の合計23本の染色体しかもっていません。
染色体セットを構成する染色体数をnとあらわしますので、体細胞は二倍体(diploid)2nと表現します。ヒトではn=23となります。
配偶子は一倍体(haploid)でnと表現します。
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