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遺伝性がん遺伝子検査(154遺伝子)|がん家系かどうか、がんのなりやすさを調べる検査の費用とわかること

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

遺伝性がん遺伝子検査(154遺伝子)

遺伝性がん遺伝子検査は、血液や唾液から生まれ持った遺伝子を調べ、がんのなりやすさにつながる変化があるかを確かめる検査です。当院では、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)やリンチ症候群などに関係する154の遺伝子を一度に調べます。生まれ持った遺伝子は一生変わらないので、一度わかったことは、ご自身のがん検診の計画にも、ご家族が自分のことを考える手がかりにも、ずっと使えます。このページでは、「がん家系かもしれない」と気になっている方に向けて、この検査でわかること・わからないこと、費用、結果が出たあとにできることを、臨床遺伝専門医・がん薬物療法専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この遺伝子検査で、がんの何がわかりますか?

生まれ持った遺伝子のうち、遺伝性がん症候群に関係する154遺伝子に、がんのなりやすさを高める変化(病的バリアント)があるかがわかります。がんがあるかどうかを調べる検査ではありません。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

50歳より前にがんになった方、1人で2回以上別のがんになった方、血縁者に何人もがんの方がいる方など、「がん家系かもしれない」と感じている大人の方が目安です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です(至急オプション+55,000円で約7日短縮)。検体は血液・唾液・口腔粘膜ぬぐい液です。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。変化が見つかれば、がん検診の始め方・予防の手段・治療薬の選び方・ご家族の検査まで、次にできることが具体的になります。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからのがん対策に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | がん診療専門外来(セカンドオピニオン)

1. 遺伝性がん遺伝子検査とは:生まれ持った「がんのなりやすさ」を調べる検査

遺伝性がん遺伝子検査は、生まれたときから体のすべての細胞にある遺伝子(生殖細胞系列の遺伝子)を調べて、がんのなりやすさを大きく高める変化があるかを確かめる検査です。今がんがあるかどうかを調べる検査ではなく、「これから何に気をつければよいか」を知るための検査です。

遺伝子の変化によってがんになりやすい体質のことを、医学では「がんの易罹患性(いりかんせい)」といいます。こうした変化をもっていても、全員ががんになるわけではありません。変化があるのは「がんになりやすい素因」であり、がんそのものではないことが、この検査を考えるときのいちばん大切な前提です。

がん家系とは:遺伝性のがんはどれくらいあるか

「がん家系」に医学的に決まった定義はありませんが、ご家族に同じ種類のがんが多い・若くしてがんになった方がいる場合、生まれ持った遺伝子の変化が関わっていることがあります。33種類のがんの患者さん10,389人の遺伝子を調べた研究では、約8%の方に、がんのなりやすさに関わる生まれ持った変化(病的・病的な可能性の高いバリアント)が見つかりました[1]。

裏を返せば、がんの多くは、生まれ持った変化だけで起こるわけではありません。年齢や生活習慣など、ほかの要因も大きく関わります。ご家族にがんの方が多くても、それが遺伝によるものか、たまたま重なったものかは、見た目の家族歴だけでは決められません。だからこそ、検査で確かめる意味があります。

「がんの遺伝子検査」には2種類ある

「がん 遺伝子検査」と呼ばれる検査には、生まれ持った遺伝子を調べる検査(このページの検査)と、がん細胞にある遺伝子の変化を調べて治療薬を探す検査の2つがあり、目的も受ける場所も違います。

🔍 「がん 遺伝子検査」の種類と違い

検査 調べるもの 主な目的 当院
遺伝性がん遺伝子検査(このページ) 血液・唾液などから、生まれ持った遺伝子(154遺伝子) がんのなりやすさを知り、見張り・予防・家族の検査に役立てる 行っています(税込330,000円)
アクショナブル遺伝子パネル 生まれ持った遺伝子のうち、心臓病・がんなど、わかれば対策をとれる84遺伝子 がんに限らず、対策のある病気のなりやすさを知る 行っています
リキッドバイオプシー 血液中に流れ出たがん由来のDNA がんの治療効果や再発の見張り 行っています
がん遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング検査) がんの組織などにある、がん細胞の遺伝子の変化 治療薬を探す(保険診療は国が指定した医療機関で) 行っていません

※がん遺伝子パネル検査(組織などを使う検査)は、保険診療では、がんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院・連携病院で行われています(国立がん研究センター がんゲノム情報管理センターの患者さん向けページ、2026年10月に確認)。

当院のがんと遺伝の相談の入口は、がん診療専門外来(腫瘍内科)・セカンドオピニオンのページにまとめています。このページでは、生まれ持った遺伝子を調べる検査の中身を、受けるかどうかを決めるために必要なところまで詳しくお伝えします。

2. 遺伝性がん症候群とは:この検査で調べる主な病気

遺伝性がん症候群(家族性腫瘍)とは、特定の遺伝子の変化を生まれ持っていることで、特定の種類のがんになりやすくなる病気の総称です。多くは親から子へ2分の1の確率で受け継がれる常染色体顕性(優性)遺伝で、家族の中で決まったパターンでがんが出やすくなります。

遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC):BRCA1・BRCA2

遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)は、BRCA1遺伝子やBRCA2遺伝子の変化で起こる、乳がん・卵巣がんになりやすい体質です。BRCA1またはBRCA2の病的バリアントをもつ女性9,856人を追った研究では、80歳までに乳がんになる確率はBRCA1で72%、BRCA2で69%、卵巣がんはBRCA1で44%、BRCA2で17%と推定されました[2]。

この研究の参加者の多くは、欧米の家族性腫瘍の外来から登録された方です。数字はその集団での推定であり、目の前の一人ひとりの確率をそのまま表すものではありません。それでも、一般の方よりはっきり高いことは確かで、見張りや予防の計画を立てる大切な手がかりになります。

リンチ症候群:大腸がん・子宮体がん

リンチ症候群は、DNAの複製の間違いを直すしくみ(ミスマッチ修復)に関わる遺伝子、MLH1・MSH2・MSH6・PMS2やEPCAMの変化で起こり、大腸がんや子宮体がんなどになりやすくなる体質です。この検査では5つすべてを調べます。

そのほかの遺伝性がん症候群

154遺伝子の中には、大人のがんだけでなく、子どものうちに起こりやすい腫瘍や、血液・骨髄の病気に関わる遺伝子も含まれています。主なものを表にまとめます(すべての遺伝子は第4章の表をご覧ください)。

🧬 この検査に含まれる主な遺伝性がん症候群

病気 主な遺伝子 気をつけたいがん・腫瘍の例
リ・フラウメニ症候群 TP53 多くの種類のがん
PTEN過誤腫腫瘍症候群(カウデン症候群など) PTEN 乳がん・甲状腺がん・子宮体がんなど
家族性大腸腺腫症(FAP) APC 大腸のポリープ・大腸がん
ポイツ・ジェガース症候群 STK11 消化管・乳房・卵巣・膵臓などのがん
多発性内分泌腫瘍症1型・2型 MEN1・RET 内分泌の腫瘍・甲状腺髄様がん
フォン・ヒッペル・リンドウ病 VHL 腎細胞がん・血管芽腫・褐色細胞腫など
遺伝性褐色細胞腫・パラガングリオーマ SDHA・SDHB・SDHC・SDHD など 褐色細胞腫・パラガングリオーマ
網膜芽細胞腫 RB1 網膜芽細胞腫(子ども)・肉腫など
ファンコニ貧血・先天性角化不全症 FANCA・DKC1 など 骨髄不全・血液のがん・頭頸部がんなど

※病気と遺伝子の関係は、検査のおおもとの遺伝子説明による。がんの種類は代表的なものだけを挙げています。

3. どんな人がこの検査を受けるとよいか:がん家系の不安

ご自身やご家族のがんの経歴から、遺伝性がん症候群が考えられる大人の方に向く検査です。見た目の家族歴だけでは判断できないことも多いので、迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。

受ける目安:がん家系かどうかのサイン

当院では、次のような方を、この検査を考える目安にしています。

  • ●50歳より前にがんになった方、またはそうした血縁者がいる方
  • ●1人で2回以上、別のがん(原発がん)になった方、またはそうした血縁者がいる方
  • ●血縁者に何人もがんの方がいる方(同じ種類のがんが多いとき、とくに)
  • ●ご家族がすでに遺伝子検査を受けたが、どの遺伝子に変化があるかわかっていない方

ご家族がすでに遺伝子検査を受けていて原因がわかっている場合は、その報告書がいちばんの手がかりになります。同じ変化だけを調べる既知の変異検査で、ご自身が同じ変化を持っているかを確かめられます。わかっていなければ、症状のないあなたご自身を、この154遺伝子の検査で調べます。危険因子が多い場合には、一部のお子さんでもこの検査が役立つことがあるため、お子さんの検査も遺伝カウンセリングでご相談ください。

「自分もなるかもしれない」という不安を抱えている方へ

親やきょうだいが若くしてがんになったことで、「次は自分かもしれない」という不安を抱えながら暮らしている方もいます。当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。

ご家族の原因となった変化を受け継いでいないとわかれば、そのがんについて、ご家族と同じ高さのリスクを前提に考える必要はなくなります。受け継いでいるとわかった場合は、どのがんを、いつから、どんな検査で見張るかを具体的に決めて、計画を立てられます(第6章)。結果を知ったあとの気持ちの変化は、陽性でも陰性でも起こりえます。当院では、結果をお伝えしたあとも遺伝カウンセリングで相談を続けていただけます。

結婚・妊娠を考えている方:がん家系と結婚

ご自身やパートナーの家族にがんの方が多いことを、結婚を考えるときに気にする方もいます。がんのなりやすさは、ご家族の誰かががんになったことだけでは決まりません。生まれ持った変化があるかどうかは検査でわかり、変化があってもなくても、知ったうえで見張りや予防の計画を立てられます。お子さんへの受け継がれ方も、遺伝子と遺伝のしかたで具体的にお伝えできます。結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。知ってから選べるように、検査・遺伝カウンセリング・出生前診断の相談まで、当院で続けてお手伝いします。

BRCA1・BRCA2だけの検査との違い

遺伝性のがんの原因は、BRCA1・BRCA2だけではありません。米国のがん患者2,984人に、多くの遺伝子をまとめて調べる検査を行った研究では、13.3%の方に病的バリアントが見つかりました。そのうち6.4%(全体に対する割合)は、がんの種類や家族歴にもとづく従来の基準だけで検査を選んでいたら見逃されていた可能性がある、と報告されています[3]。この検査は、BRCA1・BRCA2を含む154の遺伝子を一度に調べるので、1つずつ検査を重ねる必要がありません。

一方で、調べる遺伝子が多いほど、意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることもあります。また、154遺伝子の中には、がんとの関係がはっきりしている遺伝子だけでなく、関係を研究中の「候補遺伝子」も含まれています(第4章の表で「研究中」としたもの)。こうした結果の受け止め方も、遺伝カウンセリングでご説明します。

この検査より別の検査が向いている場合

知りたいことによって、向いている検査は変わります。比べる相手は検査の種類です。

🔍 どの検査を選ぶか

こんなとき 向いている検査
がんのなりやすさを知りたい、がん家系が気になる このページの遺伝性がん遺伝子検査(154遺伝子)
ご家族の遺伝子の変化(バリアント)がすでにわかっている 既知の変異検査(1か所 税込242,000円)
原因の遺伝子が1つに決まっている 単一遺伝子検査
がん以外も含め、わかれば対策をとれる病気をまとめて知りたい アクショナブル遺伝子パネル(84遺伝子)
病名がほぼ決まっている(がん以外の病気) 病気ごとの遺伝子パネル検査(税込330,000円。当院の遺伝子検査一覧へ)
病名が決まらない・いくつもの症状がある クリニカルエクソーム→全エクソーム(WES)→全ゲノム(WGS)
染色体の数や大きな構造を調べたい マイクロアレイ染色体検査・染色体シーケンス解析(CSA)
子どもを持つ前に、潜性遺伝の病気の保因者か知りたい 保因者検査(ブライダルチェック)

※どの検査が合うかは、ご本人とご家族の状況で変わります。

\ わかったうえで、がん検診と人生の計画を /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご家族がすでに検査を受けていれば、その報告書を持ってお越しください。同じ変化だけを調べる検査もご案内できます。

ご家族の検査(既知の変異検査) | どの検査がよいか迷う方へ

4. 調べる154遺伝子と、それぞれの遺伝子でわかる病気

この検査では、遺伝性がん症候群に関係する154の遺伝子を調べます。がんのリスクを高めることが確かめられている遺伝子に加え、最近がんとの関係がわかってきた候補遺伝子も含まれています。分野ごとに分けた表を、タップすると開けるようにしています。遺伝子名から、それぞれの遺伝子の解説ページへ進めます。

💡 表の見方:遺伝のしかた

「常染色体顕性」は、2本ある遺伝子のうち1本に変化があればなりやすくなる遺伝のしかたで、お子さんへは2分の1の確率で受け継がれます。「常染色体潜性」は2本とも変化があると起こる病気で、1本だけ変化がある方は保因者です。「X連鎖」はX染色体にある遺伝子です。「研究中」は、がんとの関係をまだ研究している遺伝子です。

🧬 乳がん・卵巣がん・前立腺がん・膵がんに関係する遺伝子(28遺伝子)

🧬 乳がん・卵巣がん・前立腺がん・膵がんに関係する遺伝子

遺伝子 主に関係する病気・がん 遺伝のしかた
BRCA1 遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC) 常染色体顕性
BRCA2 遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)(2つとも変化があるとファンコニ貧血) 常染色体顕性(2つとも変化があると潜性の病気)
PALB2 乳がん・膵がん(2つとも変化があるとファンコニ貧血) 常染色体顕性(2つとも変化があると潜性の病気)
ATM 乳がん・膵がん(2つとも変化があると毛細血管拡張性運動失調症) 常染色体顕性(2つとも変化があると潜性の病気)
CHEK2 乳がん・前立腺がん・大腸がん・甲状腺がん・黒色腫 常染色体顕性
BARD1 乳がん 常染色体顕性
BRIP1 卵巣がん(2つとも変化があるとファンコニ貧血) 常染色体顕性(2つとも変化があると潜性の病気)
RAD51C 卵巣がん・乳がん(2つとも変化があるとファンコニ貧血) 常染色体顕性(2つとも変化があると潜性の病気)
RAD51D 乳がん・卵巣がん 常染色体顕性
CDH1 びまん型胃がん・小葉乳がん 常染色体顕性
CTNNA1 びまん型胃がん・小葉乳がん 常染色体顕性
TP53 リ・フラウメニ症候群(多くの種類のがん) 常染色体顕性
PTEN PTEN過誤腫腫瘍症候群(カウデン症候群など。乳がん・甲状腺がん・子宮体がんなど) 常染色体顕性
AKT1 カウデン症候群・カウデン様症候群(報告あり) 常染色体顕性
STK11 ポイツ・ジェガース症候群 常染色体顕性
NBN 乳がんなど(2つとも変化があるとナイミーヘン染色体不安定症候群) 常染色体顕性(2つとも変化があると潜性の病気)
MRE11 乳がん(2つとも変化があると毛細血管拡張性運動失調症に似た病気) 常染色体顕性(2つとも変化があると潜性の病気)
RAD50 乳がん(研究によって結果が分かれる) 常染色体顕性(2つとも変化があると潜性の病気)
XRCC2 乳がん(可能性。2つとも変化があるとファンコニ貧血) 常染色体顕性(2つとも変化があると潜性の病気)
ABRAXAS1 卵巣がん・前立腺がんとの関係を研究中 研究中
HOXB13 前立腺がん 常染色体顕性
GEN1 前立腺がんとの関係を研究中 研究中
RECQL 病気との関係を研究中の遺伝子 研究中
PALLD 膵がんとの関係を研究中 研究中
PRSS1 遺伝性膵炎(膵がんのリスクにつながる) 常染色体顕性
SPINK1 遺伝性膵炎(膵がんとの関係は研究中) 複雑な遺伝形式(感受性因子・常染色体潜性など)
CTRC 膵炎のなりやすさ(膵がんとの関係は研究中) 研究中
CASR 慢性膵炎との関係を研究中 研究中
🧬 大腸がん・消化管のがんに関係する遺伝子(25遺伝子)

🧬 大腸がん・消化管のがんに関係する遺伝子

遺伝子 主に関係する病気・がん 遺伝のしかた
MLH1 リンチ症候群(2つとも変化があると体質性ミスマッチ修復欠損症) 常染色体顕性(2つとも変化があると潜性の病気)
MSH2 リンチ症候群(2つとも変化があると体質性ミスマッチ修復欠損症) 常染色体顕性(2つとも変化があると潜性の病気)
MSH6 リンチ症候群(2つとも変化があると体質性ミスマッチ修復欠損症) 常染色体顕性(2つとも変化があると潜性の病気)
PMS2 リンチ症候群(2つとも変化があると体質性ミスマッチ修復欠損症) 常染色体顕性(2つとも変化があると潜性の病気)
EPCAM リンチ症候群 常染色体顕性
MLH3 大腸がん・ポリポーシスとの関係を研究中(リンチ症候群の原因遺伝子としては未確立) 研究中
MSH3 腺腫性ポリポーシス 常染色体潜性
APC 家族性大腸腺腫症(FAP) 常染色体顕性
MUTYH MUTYH関連ポリポーシス 常染色体潜性
NTHL1 NTHL1関連ポリポーシス 常染色体潜性
MBD4 MBD4関連の腫瘍素因症候群(大腸がん) 常染色体潜性
POLE ポリメラーゼ校正関連ポリポーシス(大腸がん) 常染色体顕性
POLD1 ポリメラーゼ校正関連ポリポーシス(大腸がん・子宮体がん) 常染色体顕性
AXIN2 歯の欠損と大腸がんを伴う症候群 常染色体顕性
BMPR1A 若年性ポリポーシス症候群 常染色体顕性
SMAD4 若年性ポリポーシス症候群 常染色体顕性
GREM1 遺伝性混合ポリポーシス症候群(遺伝子の手前の重複) 常染色体顕性
RNF43 鋸歯状ポリポーシス症候群 常染色体顕性
RPS20 大腸がん(ポリポーシスを伴わない) 常染色体顕性
GALNT12 大腸がんとの関係を研究中 研究中
FAN1 大腸がんとの関係を研究中 研究中
EXO1 がんとの関係を研究中 研究中
RHBDF2 食道がんを伴う掌蹠角化症(ティロシス) 常染色体顕性
PDGFRA 家族性消化管間質腫瘍(GIST) 常染色体顕性
KIT 家族性消化管間質腫瘍(GIST)・肥満細胞症など 常染色体顕性
🧬 内分泌・腎臓・皮膚のがんに関係する遺伝子(40遺伝子)

🧬 内分泌・腎臓・皮膚のがんに関係する遺伝子

遺伝子 主に関係する病気・がん 遺伝のしかた
MEN1 多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1) 常染色体顕性
RET 多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)(甲状腺髄様がん・褐色細胞腫) 常染色体顕性
CDKN1B 多発性内分泌腫瘍症4型 常染色体顕性
CDC73 副甲状腺機能亢進症-顎腫瘍症候群 常染色体顕性
AIP 家族性下垂体腺腫 常染色体顕性
PRKAR1A カーニー複合 常染色体顕性
SDHA 遺伝性褐色細胞腫・パラガングリオーマ 常染色体顕性
SDHB 遺伝性褐色細胞腫・パラガングリオーマ 常染色体顕性
SDHC 遺伝性褐色細胞腫・パラガングリオーマ 常染色体顕性
SDHD 遺伝性褐色細胞腫・パラガングリオーマ 常染色体顕性
SDHAF2 遺伝性パラガングリオーマ 常染色体顕性
MAX 遺伝性褐色細胞腫・パラガングリオーマ 常染色体顕性
TMEM127 遺伝性褐色細胞腫 常染色体顕性
EGLN1 褐色細胞腫・パラガングリオーマとの関係を研究中 研究中
KIF1B 褐色細胞腫・神経芽腫との関係を研究中 研究中
VHL フォン・ヒッペル・リンドウ病(腎細胞がん・血管芽腫など) 常染色体顕性
FH 遺伝性平滑筋腫症・腎細胞がん(2つとも変化があるとフマル酸ヒドラターゼ欠損症) 常染色体顕性(2つとも変化があると潜性の病気)
FLCN バート・ホッグ・デュベ症候群(腎腫瘍) 常染色体顕性
MET 遺伝性乳頭状腎細胞がん(まれ) 常染色体顕性
BAP1 BAP1腫瘍素因症候群(中皮腫・黒色腫・腎細胞がん) 常染色体顕性
CDKN2A 遺伝性黒色腫・家族性異型多発母斑黒色腫-膵がん症候群 常染色体顕性
CDK4 黒色腫(膵がんの可能性) 常染色体顕性
MITF 黒色腫(腎細胞がんの可能性) 常染色体顕性
POT1 黒色腫・神経膠腫 常染色体顕性
PTCH1 基底細胞母斑症候群(ゴーリン症候群) 常染色体顕性
PTCH2 基底細胞母斑症候群(少数の報告・研究中) 常染色体顕性
SUFU 基底細胞母斑症候群(ゴーリン症候群) 常染色体顕性
CYLD ブルック・シュピーグラー症候群(皮膚の腫瘍) 常染色体顕性
TYR 眼皮膚白皮症1型(黒色腫との関係は研究中) 常染色体潜性
SLC45A2 眼皮膚白皮症4型(黒色腫のリスク) 常染色体潜性
XPA 色素性乾皮症 常染色体潜性
XPC 色素性乾皮症 常染色体潜性
ERCC2 色素性乾皮症など 常染色体潜性
ERCC3 色素性乾皮症 常染色体潜性
ERCC4 色素性乾皮症・ファンコニ貧血など 常染色体潜性
ERCC5 色素性乾皮症 常染色体潜性
ERCC1 色素性乾皮症(まれ) 常染色体潜性
DDB2 色素性乾皮症 常染色体潜性
POLH 色素性乾皮症バリアント型 常染色体潜性
EGFR 非小細胞肺がん(生まれ持った変化はまれ) 常染色体顕性
🧬 脳・神経・骨・血管と、子どものがんに関係する遺伝子(28遺伝子)

🧬 脳・神経・骨・血管と、子どものがんに関係する遺伝子

遺伝子 主に関係する病気・がん 遺伝のしかた
NF1 神経線維腫症1型 常染色体顕性
NF2 NF2関連シュワノマトーシス(旧神経線維腫症2型) 常染色体顕性
LZTR1 シュワノマトーシス 常染色体顕性
SMARCB1 ラブドイド腫瘍素因症候群・シュワノマトーシス 常染色体顕性
SMARCA4 ラブドイド腫瘍素因症候群 常染色体顕性
SMARCE1 髄膜腫との関係を研究中 常染色体顕性
TSC1 結節性硬化症 常染色体顕性
TSC2 結節性硬化症 常染色体顕性
RB1 網膜芽細胞腫 常染色体顕性
DICER1 DICER1症候群 常染色体顕性
WT1 ウィルムス腫瘍 常染色体顕性
REST ウィルムス腫瘍のなりやすさ 常染色体顕性
CDKN1C ベックウィズ・ヴィーデマン症候群(母親から受け継いだ変化) 常染色体顕性
GPC3 シンプソン・ゴラビ・ベーメル症候群 X連鎖
DIS3L2 パールマン症候群(ウィルムス腫瘍) 常染色体潜性
BUB1B モザイク多様性異数性症候群 常染色体潜性
CEP57 モザイク多様性異数性症候群2型 常染色体潜性
TRIP13 モザイク多様性異数性症候群(がんとの関係は研究中) 常染色体潜性
ALK 家族性神経芽腫 常染色体顕性
PHOX2B 家族性神経芽腫 常染色体顕性
EZH2 EZH2関連過成長症候群(神経芽腫) 常染色体顕性
PIK3CA PIK3CA関連過成長スペクトラム(多くは体の一部の細胞だけの変化) —
HRAS コステロ症候群 常染色体顕性
EXT1 遺伝性多発性外骨腫 常染色体顕性
EXT2 遺伝性多発性外骨腫 常染色体顕性
TGFBR1 ロイス・ディーツ症候群1型 常染色体顕性
ENG 遺伝性出血性毛細血管拡張症 常染色体顕性
ATR 家族性皮膚毛細血管拡張症・がん症候群(口腔・咽頭がん) 常染色体顕性
🧬 血液・骨髄のがんと、骨髄不全・DNA修復の病気に関係する遺伝子(33遺伝子)

🧬 血液・骨髄のがんと、骨髄不全・DNA修復の病気に関係する遺伝子

遺伝子 主に関係する病気・がん 遺伝のしかた
RUNX1 家族性血小板異常症(骨髄性腫瘍のなりやすさ) 常染色体顕性
CEBPA 骨髄性腫瘍のなりやすさ 常染色体顕性
GATA2 GATA2欠損症(骨髄異形成症候群・急性骨髄性白血病) 常染色体顕性
DDX41 家族性骨髄異形成症候群・急性骨髄性白血病 常染色体顕性
ANKRD26 血小板減少症2型(骨髄性腫瘍のなりやすさ) 常染色体顕性
ELANE 周期性好中球減少症・重症先天性好中球減少症 常染色体顕性
SAMD9L モノソミー7を伴う骨髄異形成・白血病 常染色体顕性
SRP72 骨髄不全症候群 常染色体顕性
IKZF1 分類不能型免疫不全症(B細胞性急性リンパ性白血病) 常染色体顕性
PAX5 前駆B細胞性急性リンパ性白血病 常染色体顕性
SBDS シュワックマン・ダイアモンド症候群 常染色体潜性
FANCA ファンコニ貧血 常染色体潜性
FANCB ファンコニ貧血 X連鎖
FANCC ファンコニ貧血 常染色体潜性
FANCD2 ファンコニ貧血 常染色体潜性
FANCE ファンコニ貧血 常染色体潜性
FANCF ファンコニ貧血 常染色体潜性
FANCG ファンコニ貧血 常染色体潜性
FANCI ファンコニ貧血 常染色体潜性
FANCL ファンコニ貧血 常染色体潜性
FANCM ファンコニ貧血(報告は少数) 常染色体潜性
SLX4 ファンコニ貧血(まれ) 常染色体潜性
DKC1 先天性角化不全症 X連鎖
TERC 先天性角化不全症 常染色体顕性
TERT 先天性角化不全症 常染色体顕性(2つとも変化があると潜性の病気)
TINF2 先天性角化不全症 常染色体顕性
WRAP53 先天性角化不全症 常染色体潜性
NOP10 先天性角化不全症 常染色体潜性
NHP2 先天性角化不全症 常染色体潜性
CTC1 先天性角化不全症 常染色体潜性
BLM ブルーム症候群 常染色体潜性
WRN ウェルナー症候群 常染色体潜性
RECQL4 ロートムンド・トムソン症候群など 常染色体潜性

※病名と遺伝のしかたは、検査のおおもとの遺伝子説明にもとづいて当院でまとめたものです(2026年10月確認)。

お調べになりたい遺伝子がこの154遺伝子に入っていないときは、カスタマイズ遺伝子パネル検査で追加して調べられることがあります。遺伝カウンセリングのときにご相談ください。

5. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、154遺伝子の塩基配列の変化(一塩基の変化・小さな挿入や欠失)と、エクソン単位の欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、この検査で検出できない変化や、まだ見つかっていない原因が残る可能性があります。
  • ●調べていない場所:遺伝子の働きを調節する領域や、エクソンから離れたイントロンの深い場所(エクソンから20塩基より遠い場所)の変化は検出されません。
  • ●モザイク:体の一部の細胞だけに変化がある状態(モザイク)は、20%以下の割合では検出できるか確かめられていません。
  • ●がんの組織では調べません:この検査は生まれ持った遺伝子を調べる検査です。がんの組織を使う検査ではありません。
  • ●骨髄移植を受けた方・血液のがんの方:血液・唾液・口腔粘膜では正しく調べられないため、皮膚の細胞を育てたもの(培養線維芽細胞)から取り出したDNAで調べる必要があります。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうかまだ判断できない変化が見つかることがあります。VUSは、それだけで診断や見張りの方針、ご家族の検査に使いません。

💡 遺伝子ごとの注意点

MSH2遺伝子のエクソン1〜7の逆位(Boland逆位)も評価します。GALNT12遺伝子のエクソン1のコピー数の変化は、確実には検出できないため報告されません。PIK3CA遺伝子の変化は多くが体の一部の細胞だけに起こるため、見つからなくても、PIK3CA関連の過成長の病気は否定できません。

6. 病的変異が見つかったら、次にできること

病的バリアント(病的変異)が見つかると、遺伝子と病的バリアントの種類によっては、どのがんを、いつから、どんな方法で見張るか、予防の手段や治療薬の選び方、ご家族の検査など、次にできることが具体的になります。わかるだけで終わらせないことが、この検査のいちばんの価値です。

結果の受け取り方

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

ご本人:がんの見張り・予防・治療薬の選び方

米国のがん患者を対象にした先ほどの研究では、がんのなりやすさを大きく高める変化が見つかった方の28.2%で、その結果をもとに治療の内容が変わりました[3]。具体的にできることの例を挙げます。

  • ●見張り(サーベイランス):遺伝子ごとに、気をつけたいがんの種類と、検査を始める年齢・間隔の考え方があります。一般のがん検診より早く・こまめに受けることで、がんを早い段階で見つける計画を立てます。
  • ●予防の手段:BRCA1またはBRCA2の病的バリアントをもつ女性2,482人の研究では、卵巣・卵管を予防のために切除した方は、しなかった方より死亡の割合が低いことが報告されており、乳房を予防のために切除した247人では、観察期間中に乳がんは見つかりませんでした[4]。受けるかどうかは、年齢や出産の希望もふまえて、専門の医療機関でよく話し合って決めます。
  • ●治療薬の選び方:BRCA1・BRCA2の生まれ持った変化があり、再発のリスクが高いHER2陰性の早期乳がんの方1,836人の試験では、手術や抗がん剤治療のあとにPARP阻害薬(オラパリブ)を1年間飲んだ群で、3年後に再発などがなかった方は85.9%と、偽薬の群の77.1%より多くなりました[5]。PARP阻害薬のように、生まれ持った変化が治療薬の選び方に関わることがあります。

治療や手術は、がんの専門の医療機関で行います。当院の院長はがん薬物療法専門医でもあり、がん診療専門外来・セカンドオピニオンで、結果をもとにした治療の考え方もご相談いただけます。また、指定された遺伝子の結果とは別に、調べた目的と違う病気に関わる変化(二次的所見)の扱いは、当院の二次的所見の開示方針に沿ってご説明します。

ご家族:同じ変化を持っているかを調べられる

あなたに病的バリアントが見つかった場合、ご両親・きょうだい・お子さんも同じ変化を持っている可能性があります。常染色体顕性遺伝の遺伝子なら、あなたのお子さんへは1人あたり2分の1の確率で受け継がれます。ご家族は、あなたの報告書をもとに、同じ1か所だけを調べる既知の変異検査で、受け継いでいるかを確かめられます。

ただ、実際にはご家族の検査はあまり進んでいません。先ほどの米国の研究では、ご家族の検査が無料で受けられる条件でも、病的バリアントが見つかった方のうち、ご家族が検査を受けたのは17.6%にとどまりました[3]。あなたの1回の検査結果は、ご家族ががんの見張りを始めるきっかけになります。ご家族に伝えるときの言葉選びも、遺伝カウンセリングでご相談ください。症状のないご家族の検査は、本人が知りたいと決めたうえで行います。

子どもを持つときの選択肢

ご家族でわかっている遺伝子の変化があれば、妊娠したときに赤ちゃんが同じ変化を持っているかを調べることも考えられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。ただし、大人になってから発症するがんの体質について出生前診断を行うかどうかは、病気の重さや国内の指針をふまえて個別に考える必要があり、どの遺伝子でも必ずできるわけではありません。妊娠を考えている段階からご相談ください。

また、154遺伝子のうちTSC1・TSC2・HRASは当院のNIPTのダイヤモンドプランとインペリアルプランの両方で、NF1・NF2・PIK3CA・PRKAR1A・SMAD4・SMARCA4・SMARCB1・SMARCE1・LZTR1・TGFBR1はインペリアルプランで、赤ちゃんに新しく起きた変化を調べる対象に入っています。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。何もせずにそのまま妊娠・出産を迎えることも、もちろん選べる選択肢です。

海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます

PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因の遺伝子の確定、英語の検査結果の用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査です。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。

欧州ヒト生殖胚学会(ESHRE)の指針は、PGT-Mの準備として、病気の原因と確かめられた変化があること、変化の内容が書かれた元の報告書を取り寄せることを勧めています[6]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、変化を直接読むだけでは判定を誤るおそれがあるため、変化のある場所の両側にある目印で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます。そのため、ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。常染色体顕性遺伝の場合、指針の目安は、ご夫婦に加えて、同じ変化をもつ患者さん少なくとも1人(できれば2人)、および/または発症していない方1人のDNAです[6]。血縁者の協力が難しい場合の方法も指針に挙げられていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります。

臨床遺伝専門医としての判断では、意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もって確認してください。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。くわしくは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。

⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です

受精卵のごく一部の細胞を調べる検査なので、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[7]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えており、院内で行っています。

PGT-Mの対象になる病気は、国によって違います。日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、症例ごとに学会の審査を受け、実施施設の倫理委員会の承認を経て行われます。学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。英国では公的機関(HFEA)がPGT-Mを行ってよい病気の一覧を公表しており、2026年9月17日更新の一覧には2,067の病気が載っています。BRCA1・BRCA2などの遺伝性乳がん卵巣がん、リンチ症候群、家族性大腸腺腫症、リ・フラウメニ症候群もこの一覧に載っています(2026年9月時点)。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[8]。米国生殖医学会の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気のうち、ほぼ確実に発症する病気や、病気のなりやすさにつながる病気に対するPGT-Mは倫理的に正当化されうるという意見を出しています[9]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。

陰性・VUSだったとき

病的バリアントが見つからなかった場合も、がんにならないということではありません(第5章)。年齢に合ったがん検診は続けてください。ご家族の誰かに原因がわかっている場合に、ご自身がその変化を受け継いでいないとわかったときは、意味が変わります。結果の受け止め方を、遺伝カウンセリングでご説明します。VUSが見つかった場合、それだけで見張りの方針やご家族の検査を決めることはしません。研究が進んで、あとから意味がはっきりすることもあります。

7. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円で、結果までは2〜3週間です。唾液や口腔粘膜ぬぐい液の場合は、遠方の方でもクリニックにお越しにならずに、オンライン診療で検査を受けられます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・口腔粘膜
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
調べる遺伝子 遺伝性がん症候群に関係する154遺伝子
調べる方法 塩基配列の解析と、欠失・重複の解析(どちらも料金に含まれます)
検査費用 税込330,000円
至急オプション 追加料金55,000円(税込)で、結果までの期間が約7日短くなります
VUSを除く報告 意義がまだわからない変化(VUS)を報告に含めないこともできます(無料)
結果までの期間 2〜3週間
検体 血液・唾液・口腔粘膜ぬぐい液
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
オンライン診療 唾液・口腔粘膜ぬぐい液なら、オンライン診療で遺伝カウンセリングを受け、検体を当院にお送りいただけます

※オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。検体はご自身で勝手に採取せず、当院の案内に沿って採取してください(検体の取り違えや品質の低下を防ぐためです)。

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臨床遺伝専門医・がん薬物療法専門医の院長が、結果をもとにした見張りや治療の考え方までご説明します。

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8. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「がん家系だから」で終わらせない】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。「うちはがん家系だから」と、不安なまま何となく過ごすことも、「家族は家族、自分は大丈夫」と考えないようにすることも、どちらも気持ちとしてはよくわかります。けれども、がんのなりやすさは、生まれ持った遺伝子を調べればわかることがあり、わかれば、見張りや予防、治療薬の選び方まで、打てる手が具体的になります。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 遺伝子検査でがんのリスクはわかりますか?

生まれ持った遺伝子に、がんのなりやすさを大きく高める変化(病的バリアント)があるかどうかはわかります。見つかれば、どのがんに気をつけ、いつからどんな検査で見張ればよいかを決める手がかりになります。ただし、がんの多くは生まれ持った変化だけで起こるわけではないため、変化が見つからなくても、がんにならないとは言えません。

Q2. がん家系とは、どこまでのことを言いますか?

医学的に決まった定義はありません。当院では、50歳より前にがんになった方がいる、1人が2回以上別のがんになった、血縁者に何人もがんの方がいる、といったことを、遺伝性のがんを考える目安にしています。どこまでの血縁を見るかやがんの種類によって考え方が変わるので、ご家族の情報をもとに遺伝カウンセリングで伺い、必要なら検査で確かめます。

Q3. 費用はいくらですか?保険はききますか?

遺伝性がん遺伝子検査(154遺伝子)は税込330,000円です。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

Q4. 結果が出るまでの期間はどれくらいですか?

2〜3週間です。至急オプション(追加料金55,000円・税込)を使うと、結果までの期間が約7日短くなります。結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明してから、マイページにアップします。

Q5. BRCA1・BRCA2だけの検査とは何が違いますか?

この検査はBRCA1・BRCA2を含む154の遺伝子を一度に調べます。米国のがん患者2,984人に多くの遺伝子をまとめて調べた研究では、13.3%に病的バリアントが見つかり、6.4%は、家族歴などにもとづく従来の基準だけでは見逃されていた可能性があると報告されています。一方で、調べる遺伝子が多いほど、意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることもあります。

Q6. 陰性なら、がんにならないということですか?

いいえ。この検査で調べていない場所の変化や、まだ見つかっていない原因があるかもしれません。また、がんの多くは生まれ持った変化がなくても起こります。陰性の場合も、年齢に合ったがん検診は続けてください。

Q7. がん家系だと結婚に差し支えますか?

がんのなりやすさは、ご家族の誰かががんになったことだけでは決まりません。生まれ持った変化があるかどうかは検査でわかり、変化があってもなくても、知ったうえで見張りや予防の計画を立てられます。お子さんへの受け継がれ方も、遺伝子と遺伝のしかたで具体的にお伝えできます。結婚を考えるうえで不安があれば、パートナーの方と一緒に遺伝カウンセリングを受けることもできます。

Q8. がんの治療薬を選ぶための遺伝子検査(がんゲノム検査)とは違いますか?

違います。この検査は、血液や唾液から生まれ持った遺伝子を調べる検査です。がんの組織などを使い、がん細胞にある遺伝子の変化を調べて治療薬を探す検査(がん遺伝子パネル検査)は、国が指定した医療機関で行われており、当院では行っていません。

🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからのがん対策を

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。がんのなりやすさにつながる変化がわかれば、ご自身のがん検診の計画だけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、ご家族の検査、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Huang KL, Mashl RJ, Wu Y, et al. Pathogenic Germline Variants in 10,389 Adult Cancers. Cell. 2018;173(2):355-370.e14. [DOI: 10.1016/j.cell.2018.03.039]
  • [2] Kuchenbaecker KB, Hopper JL, Barnes DR, et al. Risks of breast, ovarian, and contralateral breast cancer for BRCA1 and BRCA2 mutation carriers. JAMA. 2017;317(23):2402-2416. [DOI: 10.1001/jama.2017.7112]
  • [3] Samadder NJ, Riegert-Johnson D, Boardman L, et al. Comparison of Universal Genetic Testing vs Guideline-Directed Targeted Testing for Patients With Hereditary Cancer Syndrome. JAMA Oncol. 2021;7(2):230-237. [DOI: 10.1001/jamaoncol.2020.6252](PMID: 33126242)
  • [4] Domchek SM, Friebel TM, Singer CF, et al. Association of risk-reducing surgery in BRCA1 or BRCA2 mutation carriers with cancer risk and mortality. JAMA. 2010;304(9):967-975. [DOI: 10.1001/jama.2010.1237](PMID: 20810374)
  • [5] Tutt ANJ, Garber JE, Kaufman B, et al. Adjuvant Olaparib for Patients with BRCA1- or BRCA2-Mutated Breast Cancer. N Engl J Med. 2021;384(25):2394-2405. [DOI: 10.1056/NEJMoa2105215]
  • [6] ESHRE PGT-M Working Group, Carvalho F, Moutou C, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the detection of monogenic disorders. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa018. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa018]
  • [7] ESHRE PGT Consortium Steering Committee, Carvalho F, Coonen E, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the organisation of PGT. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa021. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa021]
  • [8] Nakasato K, Yamamoto BA, Kato K. Evaluating standards for ‘serious’ disease for preimplantation genetic testing: a multi-case study on regulatory frameworks in Japan, the UK, and Western Australia. Hum Genomics. 2022;16:16. [DOI: 10.1186/s40246-022-00390-3]
  • [9] Ethics Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Use of preimplantation genetic testing for monogenic adult-onset conditions: an Ethics Committee opinion. Fertil Steril. 2024;122(4):607-611. [DOI: 10.1016/j.fertnstert.2024.05.165]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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