この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

先天性腎尿路異常(CAKUT)の遺伝子検査は、生まれつき腎臓が一つ・小さい・形が違う(腎無形成・低形成腎・異形成腎・多嚢胞性異形成腎など)原因になる88の遺伝子を、一度に調べる検査です。原因がわからないまま経過を見てきた方にとって、原因がわかれば、腎臓以外に気をつけたい臓器や、ご家族・次のお子さんへの影響を具体的に考えられるようになります。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の健康管理だけでなく、これからの妊娠・出産の計画や、ご家族の健康を考えるときにも、ずっと役に立ちます。このページでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果が出たあとに何ができるかを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. 先天性腎尿路異常(CAKUT)の遺伝子検査で何がわかりますか?
腎臓・尿管・膀胱の形の異常の原因になる88の遺伝子に、病気の原因となる変化があるかを調べます。鰓耳腎症候群・腎嚢胞糖尿病症候群(HNF1B)など、腎臓以外の臓器にも関わる病気がわかることがあります。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
生まれつき腎臓が一つ・小さい・形が違うと言われた方、多嚢胞性異形成腎・水腎症・膀胱尿管逆流がある方、耳・目・指などほかの症状もある方、ご家族に同じ異常がある方、胎児エコーで腎臓の異常を言われたことがある方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
税込330,000円・結果まで2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、オンライン診療でもお受けできます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、ご家族の検査や、妊娠したときの出生前診断(絨毛検査・羊水検査)を院内で計画できます。意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることもあります。
1. 先天性腎尿路異常(CAKUT)とは:生まれつき腎臓が一つ・小さい・形が違う病気のまとまり
先天性腎尿路異常(CAKUT)は、おなかの中で腎臓・尿管・膀胱・尿道ができるときに形がうまく作られなかった状態を、まとめて呼ぶ名前です。英語のCongenital Anomalies of the Kidney and Urinary Tractの頭文字をとって、CAKUT(カクート)と呼ばれます。「生まれつき腎臓が一つしかない」「腎臓が小さい」「腎臓に水がたまっている」と言われた状態の多くが、このまとまりに入ります。
腎臓の形の異常と、尿の通り道(尿路)の異常は、一人の方に重なって見つかることもあります。病気の成り立ちや、型ごとの長い経過は、先天性腎尿路異常(CAKUT)の詳しい解説で取り上げています。このページでは、遺伝子検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。
腎臓の異常と尿路の異常
🫘 先天性腎尿路異常(CAKUT)に含まれる主な状態
※両側の腎臓がほとんど働かないと、胎児期に羊水が少なくなり、肺や顔つきにも影響が出ることがあります(ポッターシーケンス)。
子どもの慢性腎臓病のいちばん大きな原因
先天性腎尿路異常は、日本の子どもの慢性腎臓病のいちばん大きな原因です。日本の小児の慢性腎臓病(ステージ3〜5)447人を追った研究では、278人(約62%)の原因が先天性腎尿路異常でした[1]。一方で、片方の腎臓だけの軽い異常では、健康な方と同じように暮らしている方も多く、重さには大きな幅があります。
多嚢胞性異形成腎は、小児慢性特定疾病情報センターの解説で、出生4,300人に1人と、先天性腎尿路奇形の中では頻度が高いとされています。嚢胞は自然に小さくなることが多いとされます(2026年10月時点で確認)。同じ頻度は、観察研究をまとめた解析でも示されており、その解析では、反対側の腎臓にも約3人に1人で異常(主に膀胱尿管逆流)が見つかっていました[2]。
2. 生まれつき腎臓が一つ・小さいのは遺伝?原因と、遺伝子でわかる割合
生まれつき腎臓が一つ・小さいことには、遺伝子の変化・染色体の変化・おなかの中の環境が関わり、遺伝子や染色体の検査で原因がはっきりするのは一部の方です。それでも、原因がわかった方では、腎臓以外の見張りや、ご家族への影響が具体的に考えられるようになります。
原因は遺伝子・染色体・環境(17q12欠失とHNF1Bを含む)
約2,000人の先天性腎尿路異常の患者さん(主に欧州の集団)を調べた2025年の研究では、遺伝子(エクソーム)とマイクロアレイの解析で原因が確定したのは205人(10.3%)、確定に近い候補まで含めると14.1%でした。原因になっていた染色体の構造の変化のうち、いちばん多かったのは17q12欠失(72人中29人、40.3%)でした[3]。
17q12欠失で失われる領域にはHNF1B遺伝子が含まれます。HNF1Bは、腎臓の発生にかかわる病気の原因として、単一の遺伝子では最も多いことがわかっている遺伝子です。腎臓の嚢胞がいちばんよくみられる所見で、腎臓の形の異常や電解質の異常、糖尿病、生殖器の形の異常、肝臓の異常、痛風なども起こりうるとされています[4]。くわしくは腎嚢胞糖尿病症候群(RCAD)と17q12微小欠失症候群のページをご覧ください。
妊娠中の環境(母体の病気や薬など)が関わることもあるとされますが、一人ひとりの原因をそこから決めることはできません。原因を調べる手がかりになるのが、遺伝子検査です。
腎臓だけの場合と、ほかの症状を伴う場合では、見つかる割合が違う
同じ2025年の研究では、腎臓以外にも形の異常がある方で、原因が見つかる割合が高くなっていました(12%と9%)[3]。耳の形や難聴、目、指、肛門、心臓、性器などにも異常がある場合は、鰓耳腎症候群やタウンズ・ブロックス症候群のような、全身にかかわる病気(症候群)の可能性を考えます。
親やきょうだいの超音波で、同じ異常が見つかることがある
ご家族に同じ異常があることに、誰も気づいていない場合があります。トルコの1施設で、先天性腎尿路異常のお子さん218人のご家族を調べた研究では、症状のない第一度近親者(親・きょうだい・子)を超音波で調べると、116人(23%)に腎臓や尿路の異常が新たに見つかりました。家族歴と超音波の結果をあわせると、180家系のうち92家系(51.1%)で、ほかにも異常のある第一度近親者がいました[5]。
同じ遺伝子の変化を持っていても、症状が出ない方や、軽い方がいます。これを「浸透率が100%ではない」「表現型の多様性」といいます。2025年の研究でも、顕性遺伝の原因がわかり家族の情報があった25人のうち、5人は異常を指摘されていない親から変化を受け継いでいました[3]。
⚠️ 「親が元気だから、子どもも軽い」とは言えません
ご両親に症状がなくても、同じ変化を受け継いだお子さんで重い異常が出ることがあります。反対に、お子さんの異常をきっかけに、ご両親のどちらかが同じ変化を持っていたとわかることもあります。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。前もって知っておくことは、その後の選択肢を増やすことにつながります。
3. どんな人がこの遺伝子検査を受けるとよいか
生まれつき腎臓の形の異常があり、原因を知りたい方、ご家族の情報がほしい方、妊娠を考えている方に向く検査です。見た目や家族歴だけでは判断できないことが多いので、迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
- ●生まれつき腎臓が一つ(腎無形成)、腎臓が小さい(低形成腎)、異形成腎、多嚢胞性異形成腎と言われた方
- ●水腎症・膀胱尿管逆流・後部尿道弁など、尿路の異常がある方
- ●耳の形・難聴、目(コロボーマなど)、指、肛門、心臓、性器などにも異常がある方
- ●原因のわからない腎臓の働きの低下が、子どものころからある方
- ●ご家族に、腎臓の形の異常や、若いころからの腎臓病の方がいる方
- ●胎児エコーで腎臓や尿路の異常を指摘されたお子さんがいて、次の妊娠を考えている方
遺伝子検査の基本(何がわかり、何がわからないか)は、遺伝子検査とはでも解説しています。
💡 やってみないとわからない
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく関係のない別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。(院長 仲田洋美)
受けなくてよい場合・別の検査が向く場合
腎臓の異常が、尿路の感染症や結石などのあとから起きたものとはっきりしている場合は、この検査の対象ではありません。また、知的な発達の遅れや多くの臓器の異常がある場合は、大きな染色体の変化(17q12欠失など)も含めて調べるマイクロアレイ染色体検査や、主にたんぱく質を作る領域を広く調べる全エクソーム検査(WES)・全ゲノム検査のほうが向いていることがあります。
尿・血液の検査や画像の結果から、どのパネルを選ぶか
🔍 腎臓の遺伝子検査の選び方
※どの検査が合うかは、画像・検査値・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めます。
4. 胎児エコーで腎臓の異常(水腎症・多嚢胞性異形成腎など)を言われた方へ
胎児エコーで腎臓の異常を言われたら、まずは異常の種類と程度、ほかの臓器にも異常がないかを確かめることが出発点です。腎臓の異常は、軽い水腎症のように生まれたあと自然に良くなるものから、両方の腎臓がほとんど働かないものまで幅があります。胎児の腎盂が広がって見える状態については、胎児尿路拡張(胎児水腎症)や胎児膀胱肥大(巨大膀胱)のページでも解説しています。
まず遺伝カウンセリングと、診断のための検査を考える
米国産科婦人科学会(ACOG)の指針は、胎児の超音波で形の異常が見つかったときは、遺伝カウンセリングと、遺伝の病気を調べる診断のための検査を提案すべきとしています[6]。染色体の大きな変化を調べるのか、遺伝子まで調べるのかは、見つかった異常の種類やほかの所見によって変わります。
赤ちゃんの遺伝子を調べる方法(絨毛・羊水、出生前の全エクソーム・全ゲノム)
赤ちゃんの細胞を調べるには、絨毛検査か羊水検査が必要です。当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っており(2025年6月から産婦人科を併設)、染色体の検査に加えて、出生前全エクソーム(WES)検査や出生前全ゲノム(WGS)検査もご相談いただけます。ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、次の妊娠で、赤ちゃんに同じ変化があるかをピンポイントで調べられます。
当院のNIPTで調べられる、この検査の遺伝子
この検査の88遺伝子のうち、一部は、赤ちゃんで新しく起きた遺伝子の変化を調べる当院のNIPTでも調べられます。FGFR2・FREM1・NIPBLはダイヤモンドプランとインペリアルプランの両方、GLI3はダイヤモンドプランだけ、ACTG2・FOXP1・PIK3CAはインペリアルプランだけが対象です。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性の場合は、確定検査(羊水検査・絨毛検査)を院内で受けられます。
ただし、NIPTはスクリーニング検査で、腎臓の形の異常の原因になる遺伝子の多くは、NIPTでは調べられません。胎児エコーで異常が見つかっている場合は、まず確定のための検査を考えます。
5. この検査で調べる88遺伝子と、関係する病気
この検査では、腎臓・尿路の形の異常と関係が報告されている88の遺伝子を、まとめて調べます。腎臓だけの異常の原因になる遺伝子に加えて、腎臓以外にも症状が出る症候群の遺伝子が含まれています。
腎臓以外の症状から見つかる、主な症候群
🧩 腎臓の異常を伴うことがある主な症候群
※病名と遺伝子の対応はOMIMの登録(ヒト表現型オントロジーの注釈データ経由、2025年1月版)による。腎臓以外の特徴は主なものだけを記載。
鰓耳腎症候群が疑われる場合の検査の選び方は、鰓耳腎症候群の遺伝子検査でもご案内しています。コルネリア・デ・ランゲ症候群やバルデー・ビードル症候群が主に疑われる場合は、コルネリア・デ・ランゲ症候群パネルやバルデー・ビードル症候群パネルも選べます。
88遺伝子の一覧(遺伝子・関係する病気・遺伝のしかた)
🧬 先天性腎尿路異常(CAKUT)パネルで調べる88遺伝子
※病名と遺伝のしかたは、OMIMの登録をもとにしたヒト表現型オントロジー(HPO)の注釈データ(2025年1月版)による。1つの遺伝子で複数の病気がある場合は主なものを記載。「研究中」の遺伝子は、腎臓・尿路の形の異常との関係が研究で報告されているが、OMIMに病気としての登録がまだない遺伝子。遺伝のしかたの基本は常染色体顕性(優性)遺伝・常染色体潜性(劣性)遺伝で解説しています。
6. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、88の遺伝子の小さな変化(1文字の変化や、小さな挿入・欠失)と、遺伝子まるごと・連続する2つ以上のエクソンの大きな欠失・重複です。一方で、どの遺伝子検査にも限界があります。
わかること
- ●遺伝子の配列の変化:主に、たんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)と、そのつなぎ目(スプライス部位)の変化。RNU4ATACのように、たんぱく質を作らずRNAとして働く遺伝子も対象に含まれます
- ●遺伝子の大きな欠失・重複:遺伝子まるごと(血液・頬の粘膜の検体)や、連続する2つ以上のエクソンの欠失・重複(血液の検体のみ)。見つかったものは、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します
- ●読み取りの精度:調べる領域の99%以上を、20回以上くり返し読み取ります。読み取りが不十分なところは、サンガー法で補います
わからないこと
- ●大きな染色体の変化の全体像:17q12欠失のように、いくつもの遺伝子にまたがる欠失は、範囲全体を調べるにはマイクロアレイ染色体検査が向いています
- ●1つのエクソンだけの欠失・重複:見つかることはありますが、いつも検出できるわけではありません
- ●そのほかの変化:染色体の転座・逆位、繰り返し配列の伸び、遺伝子のスイッチの部分(プロモーター)や、エクソンから離れたイントロンの変化
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけある変化は、検出を目的に作られていません。とくにPIK3CAの変化の多くはモザイクのため、見つからなくても関連する過成長の病気は否定できません
- ●遺伝子ごとの限界:MUC1の繰り返し配列(VNTR)の中にある病気の原因の変化と、HOXA13の繰り返し配列の伸びは調べられません
陰性でも否定できない・意義がまだわからない変化(VUS)
原因が見つからなくても、先天性腎尿路異常を否定することにはなりません。先に紹介した研究でも、原因が確定したのは1割ほどで[3]、まだ原因のわかっていない遺伝子や、この検査で見つけにくい変化が残っている可能性があります。また、病気の原因かどうかまだ判断できない変化(VUS)が見つかることもあります。VUSは、それだけで診断や、ご家族の検査に使うことはしません。
7. 病的変異が見つかったら、次にできること
原因の遺伝子がわかると、病名が決まり、腎臓以外に何を見張ればよいか、ご家族や次のお子さんにどう影響するかを、具体的に考えられるようになります。わかるだけで終わらせず、次の一手につなげるのが、この検査の目的です。結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。
ご本人(症状がある方):病名が決まり、見張る臓器がわかる
- ●腎臓の経過観察:血圧・尿の蛋白・腎臓の働きを、腎臓内科・小児腎臓の専門の医療機関で定期的に確かめます(当院は腎臓の治療・透析・移植は行っていません)
- ●HNF1Bの変化なら:糖尿病・膵臓・肝臓・電解質の見張りにつながります[4]。糖尿病についてはMODY・新生児糖尿病の遺伝子検査のページもご覧ください
- ●鰓耳腎症候群・HDR症候群などなら:聴力の検査につながります(症候性難聴の遺伝子検査)
- ●PAX2の変化なら:目(視神経乳頭)の検査につながります(小眼球症・眼球コロボーマの遺伝子検査)
- ●WT1の変化なら:腎臓の腫瘍(ウィルムス腫瘍)や性の分化に関わる見張りにつながります
症状のないご家族:同じ変化をピンポイントで調べられる
原因の変化がわかると、ご両親・きょうだい・お子さんは、同じ変化を持っているかを、その1か所だけで調べられます。先に紹介したように、症状のないご家族に異常が見つかることは珍しくありません[5]。ご家族の誰かが腎臓移植のドナーになることを考えるときにも、同じ変化を持っていないかの確認が、判断の材料のひとつになります。症状のない方の検査は、ご本人の同意のうえで、遺伝カウンセリングを経て行います。
次のお子さん・ご自身の妊娠:確率がわかり、出生前診断を計画できる
- ●常染色体顕性(優性)遺伝の変化を親が持っている場合:お子さん1人あたり2分の1の確率で受け継ぎます。症状の重さは同じとは限りません
- ●常染色体潜性(劣性)遺伝の場合:ご両親がともに保因者なら、次のお子さんが発症する確率は4分の1です
- ●X連鎖の場合(ANOS1・FANCBなど):お母さんが保因者かどうかで確率が変わります
- ●お子さんで新しく起きた変化(de novo)の場合:確率は低くなりますが、ゼロではありません。親の卵子や精子のもとになる細胞だけに変化がある場合があるためです(性腺モザイク)
ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに、赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。潜性遺伝の遺伝子が原因の場合は、パートナーの拡大版保因者スクリーニングや、妊娠中にNIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」も選べます(その遺伝子が対象かどうかは、それぞれの遺伝子一覧でご確認ください)。
日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、着床前遺伝学的検査(PGT-M)が行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは、海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。
当院でのその後
結果をお伝えしたあとも、遺伝カウンセリングで、ご家族の検査、妊娠の計画、腎臓以外の見張りなど、次にどうするかを一緒に考えます。二次的所見(調べた目的とは別の病気の原因が見つかること)の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。
8. 日本の制度(2026年10月時点)
小児慢性特定疾病の「慢性腎疾患」には、腎奇形として、低形成腎・腎無形成・ポッター(Potter)症候群・多嚢胞性異形成腎・鰓耳腎症候群などが掲載されています。小児慢性特定疾病情報センターの疾患一覧(2026年10月時点で確認)では、腎奇形の項目に、多発性嚢胞腎・低形成腎・腎無形成・ポッター症候群・多嚢胞性異形成腎・寡巨大糸球体症・鰓耳腎症候群と、「これら以外の腎奇形」が並んでいます。
医療費の助成を受けるには、それぞれの認定の基準を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・抽出DNA・頬の内側の粘膜・唾液のいずれかで、オンライン診療でもお受けできます。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。検体を採取するキットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、ご自身の判断で先に検体を採取しないでください。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は、遺伝子検査結果の見かたをご覧ください。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
検査を受けるかどうかは、遺伝カウンセリングで、何がわかり何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをお聞きになり、納得してから決めていただきます。
10. 院長コラム
🩺 院長コラム【腎臓の形の違いを「原因がわからないまま」にしないために】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
生まれつき腎臓が一つ、腎臓が小さいと言われても、「片方が元気なら大丈夫」「家族に同じ人はいないから」と、原因を調べないまま過ごしている方は少なくないと思います。けれども、症状のないご家族の超音波で同じ異常が見つかることがあり、同じ遺伝子の変化でも重さが人によって大きく違うことがわかっています。見た目の印象だけで、次のお子さんのことやご家族の健康を決めてしまわないでほしいと考えています。
原因がわかれば、腎臓以外に何を見張ればよいかがはっきりし、ご家族は同じ変化を1か所だけ調べられ、次の妊娠では出生前診断を計画できます。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 生まれつき腎臓が一つしかないのは遺伝ですか?
遺伝が関わることも、関わらないこともあります。生まれつき腎臓が一つ(腎無形成)や、片方の腎臓が働かない多嚢胞性異形成腎は、先天性腎尿路異常(CAKUT)のひとつです。約2,000人のCAKUTの患者さんを調べた研究では、遺伝子や染色体の検査で原因が確定したのは10.3%でした。一方、症状のない親やきょうだいを超音波で調べると、腎臓や尿路の異常が新たに見つかることがあると報告されています。遺伝が関わっているかどうかは、遺伝子検査とご家族の情報をあわせて判断します。
Q2. 多嚢胞性異形成腎は遺伝しますか?次の子に起こる確率は?
多嚢胞性異形成腎の多くは原因がはっきりしませんが、遺伝子や染色体の変化が見つかることがあります。次のお子さんに起こる確率は、原因と遺伝のしかたで変わります。たとえば常染色体顕性(優性)遺伝の変化を親が持っていれば、お子さん1人あたり2分の1です。お子さんで新しく起きた変化なら低くなりますが、親の卵子や精子のもとになる細胞だけに変化がある場合もあるため、ゼロとは言えません。原因がわかると、確率をより具体的にお伝えできます。
Q3. 生まれつき腎臓が一つの人の寿命や、気をつけることは?
小児慢性特定疾病情報センターの解説では、多嚢胞性異形成腎は、反対側の腎臓に異常がなければ腎機能の予後は良好とされ、基本の方針は合併症と腎機能の経過観察とされています。ただし、反対側の腎臓にも膀胱尿管逆流などの異常が見つかることがあるため、腎臓の専門の医療機関で、血圧・尿・腎機能を定期的に確かめていくことが大切です。寿命の見通しは、反対側の腎臓の状態や、ほかの症状があるかで一人ひとり違います。
Q4. 胎児エコーで水腎症や腎臓の異常と言われました。遺伝子検査は必要ですか?
まずは産科で、異常の種類と程度、ほかの臓器に異常がないかを確かめます。米国産科婦人科学会の指針は、胎児の超音波で形の異常が見つかったときは、遺伝カウンセリングと、遺伝の病気を調べる診断のための検査を提案すべきとしています。当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行い、必要に応じて赤ちゃんの全エクソーム・全ゲノム検査もご相談いただけます。どの検査がよいかは、遺伝カウンセリングで一緒に考えます。
Q5. 先天性腎尿路異常(CAKUT)があると、結婚や出産に差し支えますか?子どもに遺伝しますか?
CAKUTがあることだけで、結婚や出産ができないということはありません。お子さんに受け継がれるかどうかは、原因の遺伝子と遺伝のしかたによって大きく違い、原因がわからないままでは確率をはっきりお伝えできません。ご自身の遺伝子検査、必要に応じてパートナーの保因者検査を受けておくと、妊娠したときの出生前診断を前もって計画できます。結婚や妊娠を考えている段階からご相談ください。
Q6. 検査で原因が見つからなかったら、どうなりますか?
原因が見つからなくても、先天性腎尿路異常(CAKUT)を否定することにはなりません。原因がわかっていない遺伝子や、この検査では見つけにくい変化(大きな染色体の変化、繰り返し配列の変化など)が残っている可能性があります。腎臓以外の症状がある場合は、マイクロアレイ染色体検査や全エクソーム検査など、次の検査を考えます。腎臓の経過観察は、検査の結果にかかわらず続けることが大切です。
Q7. 費用と、結果が出るまでの日数は?
検査費用は税込330,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。結果までは2〜3週間です(至急オプション55,000円で約7日短くなります)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。
🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。先天性腎尿路異常(CAKUT)の原因がわかれば、腎臓以外の見張りだけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
- [1] Ishikura K, Uemura O, Hamasaki Y, et al. Insignificant impact of VUR on the progression of CKD in children with CAKUT. Pediatr Nephrol. 2016;31:105-112. [DOI: 10.1007/s00467-015-3196-1]
- [2] Schreuder MF, Westland R, van Wijk JA. Unilateral multicystic dysplastic kidney: a meta-analysis of observational studies on the incidence, associated urinary tract malformations and the contralateral kidney. Nephrol Dial Transplant. 2009.(PMID: 19171687)
- [3] Milo Rasouly H, Krishna Murthy SB, et al. Exome analysis links kidney malformations to developmental disorders and reveals causal genes. Nat Commun. 2025;16:7290. [DOI: 10.1038/s41467-025-62319-3]
- [4] Clissold RL, Hamilton A, Hattersley AT, Ellard S, Bingham C. HNF1B-associated renal and extra-renal disease: an expanding clinical spectrum. Nat Rev Nephrol. 2015;11:102-112. [DOI: 10.1038/nrneph.2014.232]
- [5] Bulum B, Özçakar ZB, Üstüner E, et al. High frequency of kidney and urinary tract anomalies in asymptomatic first-degree relatives of patients with CAKUT. Pediatr Nephrol. 2013;28:2143-2147. [DOI: 10.1007/s00467-013-2530-8]
- [6] American College of Obstetricians and Gynecologists. Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities: ACOG Practice Bulletin, Number 226. Obstet Gynecol. 2020.(PMID: 32804883)