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コルネリア・デランゲ症候群の遺伝子検査(NGSパネル)|原因遺伝子5つでわかること

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

コルネリア・デランゲ症候群の遺伝子検査(NGSパネル)

コルネリア・デランゲ症候群(CdLS)は、濃くつながった眉毛などの特徴的な顔立ち、生まれる前からの成長の遅れ、発達の遅れ、手の形の違いなどがみられる生まれつきの病気です。原因の多くは、染色体をまとめるタンパク質「コヒーシン」に関わる遺伝子の変化で、このパネル検査ではその代表的な5つの遺伝子(NIPBL・SMC1A・HDAC8・RAD21・SMC3)を一度に調べます。原因がわかると、病名と見通しがはっきりするだけでなく、次のお子さんで同じことが起こる可能性と、次の妊娠での備え方を具体的に考えられるようになります。このページでは、症状・顔つきの特徴・寿命の見通し・遺伝のしかたと、この検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

コルネリア・デランゲ症候群の原因になる5つの遺伝子(NIPBL・SMC1A・HDAC8・RAD21・SMC3)に、病気の原因となる変化があるかを一度に調べます。最も多い原因のNIPBLは、全体の約70%を占めると報告されています。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

お子さんにコルネリア・デランゲ症候群が疑われる方、臨床診断はついていて原因を確かめたい方、次の妊娠を考えていて再発の可能性を知りたいご両親、血液の検査で原因が見つからなかった方に向く検査です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

結果までは2〜3週間です(至急オプションで約7日短くなります)。検体は血液・頬の内側の粘膜・唾液などで、オンライン診療でも受けられます。検査費用はお問い合わせください。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、次の妊娠で絨毛検査・羊水検査による出生前診断を計画できます(当院では院内で実施)。意義がまだわからない変化(VUS)が見つかった場合の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、ご家族のこれからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 知的障害の遺伝子パネル検査(689遺伝子)と比べたい方へ

1. コルネリア・デランゲ症候群とは

コルネリア・デランゲ症候群は、知的障害、はっきりした顔立ちの特徴、腕や手の形の違い、成長の遅れなどを特徴とする、生まれつきの遺伝性の病気です[1]。英語の Cornelia de Lange syndrome の頭文字をとってCdLSと呼ばれ、「コーネリア・デ・ランゲ症候群」「デランゲ症候群」と書かれることもあります。

原因の多くは、染色体をまとめて支える「コヒーシン」というタンパク質の複合体や、その働きを調節する遺伝子の変化です[1]。コヒーシンは細胞分裂のときに染色体を正しく分けるだけでなく、遺伝子の働き方(どの遺伝子をいつ、どれだけ働かせるか)の調節にも欠かせないことがわかっています[1]。ただし、病気が起こるくわしいしくみは、まだすべてがわかっているわけではありません[1]。コヒーシンに関わる遺伝子の変化で起こる病気をまとめて「コヒーシン病」と呼ぶこともあります。

何人に1人の病気か・日本には何人いるか

2018年の国際的な合意声明では、コルネリア・デランゲ症候群の頻度は出生1万人あたり1人から3万人あたり1人と推定されています[1]。日本では、小児慢性特定疾病情報センターの解説で、推定頻度から計算した患者さんの数は約4,000人とされています(同センターの掲載情報、2026年10月時点で確認)。調べ方によって数字は変わるため、目安として受け取ってください。

原因となる遺伝子と、型の分け方

最も多い原因はNIPBL遺伝子の変化で、全体の約70%を占めます。次いでSMC1A遺伝子が約5%と報告されています[1]。HDAC8・RAD21・SMC3の変化はさらにまれな原因です[1]。どの遺伝子に原因があるかによって「1型」「2型」のように型が分けられ、遺伝のしかたも違います。一覧は第6章の表にまとめました。

このパネル検査は、この5つの遺伝子をまとめて調べる検査です。なお、BRD4遺伝子もコルネリア・デランゲ症候群の原因になることがありますが、報告されている方はまだごく少なく[1]、このパネルの対象には入っていません(第5章の検査の選び方を参照)。

2. 症状と顔つきの特徴・いつわかるか

コルネリア・デランゲ症候群は、症状の幅がとても広い病気です。2018年の国際的な合意声明では、顔立ち・手・横隔膜の特徴を「主な特徴」、発達の遅れや成長の遅れなどを「示唆的な特徴」として点数化し、診断と遺伝子検査の目安にしています[1]。

🧬 国際的な合意声明による診断の目安(2018年)

区分 特徴
主な特徴(1つにつき2点) 眉毛がつながっている、または眉毛が濃い/鼻が短い・鼻すじがくぼむ・鼻先が上を向く/鼻の下の溝(人中)が長い、または平ら/上くちびるが薄い、または口角が下がっている/手の指が少ない、または指がない/生まれつきの横隔膜ヘルニア
示唆的な特徴(1つにつき1点) 全体的な発達の遅れ・知的障害/生まれる前の成長の遅れ/生まれたあとの成長の遅れ/小頭症(生まれる前・後)/手や足が小さい/小指が短い/体毛が濃い(多毛)
判定の目安 11点以上(主な特徴が3つ以上)で典型的なCdLS、9〜10点(主な特徴が2つ以上)で非典型的なCdLS、4点以上(主な特徴が1つ以上)で遺伝子検査を行う目安

※Kline AD, et al. Nat Rev Genet. 2018[1]の診断基準を日本語にしたもの。遺伝子の変化が確かめられない場合でも、診察で臨床的に診断できるとされています。

顔つきの特徴:なぜ眉毛が濃く、つながるのか

顔つきでとくに目立つのは、濃い眉毛や左右がつながった眉毛、短い鼻と上を向いた鼻先、長く平らな人中、薄い上くちびると下がった口角です[1]。こうした特徴は、顔がつくられる胎児期に、コヒーシンが関わる遺伝子の働き方の調節がうまくいかないことによると考えられています。ただし、眉毛の濃さなど一つひとつの特徴がどのようなしくみで生じるかまでは、まだ解明されていません[1]。

顔つきだけで診断することはできません。顔の特徴がはっきりしない非典型的な方もいれば、よく似た特徴をもつ別の病気(コフィン・シリス症候群、ルビンシュタイン・テイビ症候群など)もあります[1]。気になる場合は、遺伝子検査で原因を確かめます。

いつわかる? 生まれる前と、生まれたあと

典型的なコルネリア・デランゲ症候群は、経験のある小児科医や臨床遺伝専門医であれば、生まれたときから見分けられるとされています[1]。一方で、症状の現れ方は軽いものから重いものまで幅があり、顔や手の特徴の程度もさまざまです[1]。診断の目安に「生まれる前の成長の遅れ」「生まれつきの横隔膜ヘルニア」が入っているとおり[1]、妊娠中の超音波検査で、赤ちゃんの成長の遅れや腕・手の形の違いをきっかけに疑われることもあります。

出生前に確定させるには、赤ちゃんの細胞を調べる絨毛検査や羊水検査で、原因の遺伝子の変化を確かめる必要があります。ご家族の中で原因の変化がわかっていれば、次の妊娠で同じ変化があるかを調べられます[1][2](第8章)。

発達・行動の特徴

知的障害の程度も人によって違います。遺伝性の病気ごとに自閉スペクトラム症の特徴がみられる割合を比べた系統的レビューでは、コルネリア・デランゲ症候群でその割合は43%と推定されました[4]。また、自分の体を傷つける行動(自傷)が、ほかの病気のグループと比べて多いことも報告されています[5]。

合意声明は、体の痛みが大きな行動の問題につながりうることも指摘しています[1]。行動の変化の背景に、胃食道逆流や歯の痛みなど体のつらさが隠れていないかを確かめることが、支援の第一歩になります。

3. 寿命の見通しと、合併症への備え

遺伝性疾患の解説書GeneReviewsでは、内臓に重い生まれつきの異常がなければ、寿命は大きく短くならないとされています[2]。一方で、平均寿命を何歳と示せる大規模なデータは、確認できた範囲ではありません。

平均寿命は? 亡くなった方の調査からわかること

米国で、1966〜2007年に亡くなったコルネリア・デランゲ症候群の方426人を調べた研究では、亡くなった時期は胎児期から61歳までと幅がありました[3]。原因がわかった295人では、誤嚥・胃食道逆流・肺炎などの呼吸器の原因が最も多く(31%)、次いで腸閉塞や腸のねじれ(腸捻転)などの消化器の病気(19%)でした[3]。

この結果は、「寿命がどれくらいか」よりも、「何に気をつければ命に関わる合併症を防ぎやすいか」を教えてくれます。飲み込みや逆流、おなかの症状に早めに気づける体制をつくることが、見通しをよくする手がかりになります。

診断がついたら受けておきたい検査

合意声明は、診断された乳児・子どもには全員、心臓の超音波検査と腎臓の超音波検査を行うよう勧めています[1]。思春期以降は、症状に合わせて必要性を判断するとされています[1]。原因の遺伝子がわかり病名が確定すると、こうした検査や定期的な確認の予定が立てやすくなります。

治療の現状

今のところ、原因そのものを治す治療はありません。合併症や発達・行動の問題に合わせて、多くの診療科と専門職で支えていく治療が中心です。成長については、成長ホルモンの分泌はほとんどのお子さんで正常とされ、成長ホルモンの注射で身長を伸ばす利点は、毎日の注射の負担と比べて考えるべきとされています[1]。

4. 遺伝のしかたと、次のお子さんへの影響

コルネリア・デランゲ症候群の多くは、ご両親から受け継いだものではなく、お子さんの代で新しく起きた遺伝子の変化によって起こります。ただし、次のお子さんで同じことが起こる可能性は「ゼロ」ではなく、その見積もりは原因の遺伝子と、ご両親が同じ変化をもつかどうかで変わります。

多くはお子さんの代で新しく起きた変化(de novo)

ご両親にない変化がお子さんで新しく起きることを「新生突然変異(de novo)」といいます。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、ご両親の生活や妊娠中の過ごし方が原因ではありません。お子さんの検査で原因がわかり、ご両親を調べて同じ変化がなければ、新しく起きた変化であることがはっきりします。

ご両親に症状がなくても:性腺モザイク

ご家族の中で繰り返し起こったコルネリア・デランゲ症候群の多くは、症状のない親御さんの「性腺モザイク」によるものとされています[2]。性腺モザイクとは、親御さんの体の細胞にはほとんど変化がないのに、卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)の一部に変化がある状態です。症状のないご両親から、同じ病気のごきょうだいが生まれた例が報告されています[1]。

変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は、2分の1の確率でその変化をもちます。ただ、生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは人によって違い、実際の診療ではわかりません。血液で調べて変化が見つからなくても、生殖細胞の状態の目安にはなりません。「新しく起きた変化だから、次は大丈夫」と小さく見積もらず、次の妊娠でどう備えるかを前もって考えておくことが大切です。

SMC1A・HDAC8はX連鎖:お母さんが同じ変化をもつ場合

SMC1A遺伝子とHDAC8遺伝子はX染色体にあり、X連鎖のしかたで遺伝します[2]。お母さんが変化をもっている場合、妊娠のたびに2分の1の確率でお子さんに伝わり、変化を受け継いだ男の子は発症します[2]。

女性は2本あるX染色体のうち1本が細胞ごとに働かなくなる(X染色体不活性化)ため、HDAC8の変化をもつ女性は、症状が出る方もいれば、まったく症状のない方もいます。変化をもつ女性の多くでは、変化のないほうのX染色体が働くように偏っていることが報告されています[1]。つまり、症状のないお母さんが同じ変化をもっていることがあるということです。お子さんで原因がわかったら、お母さんが同じ変化をもつかを確かめることが、次のお子さんの見積もりに欠かせません。

NIPBL・RAD21・SMC3は常染色体顕性(優性)遺伝

NIPBL・RAD21・SMC3による型は、常染色体顕性(優性)遺伝のしかたをとります[2]。親御さんが変化をもっていれば、お子さん1人ごとに2分の1の確率で伝わります。多くは新しく起きた変化ですが、まれに、症状の軽い非典型的なコルネリア・デランゲ症候群が親から子へ伝わっている家系も報告されています[1][2]。

⚠️ 「自分が軽いから、子どもも軽い」とは言えません

コルネリア・デランゲ症候群は症状の幅がとても広い病気です。親御さんが軽い症状で気づいていなかったり、症状がまったくなかったりしても、同じ変化を受け継いだお子さんの症状が同じ程度になるとは限りません。だからこそ、症状の有無や見た目の印象だけで判断せず、知ったうえで次の妊娠を計画することに意味があります。

5. どんな人がこの検査を受けるとよいか

お子さんにコルネリア・デランゲ症候群が疑われる方、原因を確かめて次の妊娠を考えたいご両親、ほかの検査で原因が見つからなかった方に向く検査です。見た目や家族歴だけでは判断できないことが多いので、迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。

お子さんにコルネリア・デランゲ症候群が疑われる方

合意声明は、主な特徴が1つ以上あり合計4点以上になる場合を、遺伝子検査を行う目安としています[1](第2章の表)。原因がわかると病名と見通しがはっきりし、受けておきたい検査や、指定難病・小児慢性特定疾病などの制度を考える手がかりになります。先天異常や知的障害のあるお子さんにエクソーム・ゲノム検査を行った研究167件をまとめた系統的レビューでは、95%の研究で、患者さんやご家族の診療方針に何らかの変化があったと報告されています[6]。変化の中身や大きさは研究ごとに違いますが、「原因がわかること」が次の一手につながることを示す結果です。

臨床診断はついていて、原因を確かめて次の妊娠を考えたいご両親

診察でコルネリア・デランゲ症候群と診断されていても、原因の遺伝子が確かめられていないことがあります。原因がわかれば、次のお子さんで同じことが起こる可能性がどれくらいあるか、そして次の妊娠でどう備えられるかを、具体的に考えられるようになります。原因がわからないままでは、出生前に調べる的を決められません。

血液の検査で原因が見つからなかった方

典型的な特徴をもつ方の15〜20%は、NIPBLの変化が体の一部の細胞にだけある「モザイク」で、血液のリンパ球では見つからないとされています[1]。合意声明は、血液で見つからなかった場合は、血液以外の組織でモザイクを調べるよう勧めています[1]。この検査は、頬の内側の粘膜(頬粘膜スワブ)でも受けられます。以前に血液で調べて見つからなかった方も、ご相談ください。

ご家族にコルネリア・デランゲ症候群の方がいる方

ご家族で原因の変化がわかっている場合は、同じ変化を調べることで、受け継いでいるかどうかを確かめられます。とくにSMC1A・HDAC8による型では、症状のない女性が変化をもっていることがあります(第4章)。遺伝子検査は、やってみないとわからないことが少なくありません。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

この検査より別の検査が向いている場合

コルネリア・デランゲ症候群らしい特徴がそろっているなら、まずこの検査です。一方で、似た病気との区別が必要な場合や、症状が広く病気をしぼれない場合は、次の検査のほうが向いていることがあります。比べる相手は、当院の検査の種類です。

🔍 症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
コルネリア・デランゲ症候群らしい特徴がそろっている このページの検査(5遺伝子・結果まで2〜3週間)
似た病気との区別が必要/BRD4も調べたい/知的障害や発達の遅れが主な症状 発達障害・学習障害・知的障害遺伝子検査(689遺伝子。この5遺伝子とBRD4も含む・結果まで3〜5週間)
コフィン・シリス症候群らしい特徴がある コフィン・シリス症候群NGS遺伝子パネル検査
ルビンシュタイン・テイビ症候群らしい特徴がある ルビンシュタイン・テイビ症候群NGS遺伝子検査
自閉スペクトラム症の特徴が主で、病気をしぼれない 自閉症遺伝子検査
いくつもの臓器に症状があり、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)
染色体の大きな欠失・重複が疑われる マイクロアレイ染色体検査(CMA)

※689遺伝子の検査の内容・日数は、そのページの記載(2026年10月時点)による。似た病気は文献[1]による。どの検査が合うかは、症状・診察所見・ご家族の情報で変わります。

\ 原因を知ることが、次の妊娠の備えの出発点です /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

原因がわかれば、次の妊娠での絨毛検査・羊水検査まで院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

6. 調べる5つの遺伝子と、関係する病気

この検査では、HDAC8・NIPBL・RAD21・SMC1A・SMC3の5つの遺伝子を調べます。遺伝子によって、関係する型と遺伝のしかたが違います。

🧪 コルネリア・デランゲ症候群NGSパネル検査の対象遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた CdLS全体に占める割合
NIPBL コルネリア・デ・ランゲ症候群1型 常染色体顕性(優性) 約70%(最も多い)
SMC1A コルネリア・デ・ランゲ症候群2型/発達性およびてんかん性脳症85型 X連鎖(2型) 約5%
HDAC8 コルネリア・デ・ランゲ症候群5型 X連鎖 まれ(2018年までの報告は65人)
RAD21 コルネリア・デ・ランゲ症候群4型 常染色体顕性(優性) まれ
SMC3 コルネリア・デ・ランゲ症候群3型 常染色体顕性(優性) まれ

※対象遺伝子は当院の検査内容による。遺伝のしかたは文献[2]、割合は文献[1]による。

NIPBL遺伝子からつくられるタンパク質は、コヒーシンをDNAに乗せるのに必要な複合体をつくります。SMC1A・SMC3・RAD21は、コヒーシンの中心となる部品で、輪をつくって染色体をとらえると考えられています。HDAC8は、SMC3からアセチル基を外すことで、コヒーシンが染色体から離れる過程を調節する酵素です[1]。いずれも、コヒーシンが正しく働くために欠かせない遺伝子です。それぞれの遺伝子のくわしい働きは、表の遺伝子名から各ページをご覧ください。

7. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、5つの遺伝子の中にある小さな変化と、遺伝子のまとまった欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

わかること

  • ●遺伝子の文字の小さな変化:遺伝子のタンパク質をつくる部分(コード領域)と、その境目(スプライス部位)にある、1文字の置き換わりや、短い挿入・欠失を調べます。
  • ●遺伝子のまとまった欠失・重複:遺伝子が丸ごと1つ欠けている・増えている変化(頬粘膜・血液)と、隣り合う2つ以上のエクソンにわたる変化(血液のみ)を調べます。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
  • ●モザイク:次世代シーケンス(NGS)は同じ場所を何回も読むため、体の一部の細胞にだけある変化も見つけやすい方法です。

わからないこと

  • ●調べていない遺伝子:BRD4など、この5つ以外の遺伝子は調べていません。
  • ●見つけにくい変化:染色体の一部が入れ替わる変化(転座・逆位)、同じ配列の繰り返しが伸びる変化、遺伝子の働きを調節する領域(プロモーター)や、エクソンから離れたイントロンの奥の変化は、この検査では見つかりません。1つのエクソンだけの欠失・重複も、ふだんは検出の対象外です。
  • ●よく似た配列の影響:遺伝子によく似た配列がほかの場所にあると、まれに正しく判定しにくいことがあります。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知識では判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、コルネリア・デランゲ症候群ではないとは言い切れません。モザイクが血液以外の組織にだけある場合や、この検査で調べていない原因の場合があります。
専門的な数値(読み取りの精度)を見る

対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の読み取りで調べます(≥99% at 20x)。同じ場所を何回も読むほど、読み間違いと本当の変化を見分けやすくなります。読み取りの質が低かった部分は、別の方法(サンガー法)で確かめます。

モザイクと検体の選び方

前の章のとおり、血液では見つからないモザイクがあるため[1]、どの検体で調べるかは大切です。この検査は、血液・抽出したDNA・頬粘膜スワブ・唾液で受けられ、モザイクを調べるために、培養していない線維芽細胞・口の中の細胞・膀胱の上皮細胞での検査も可能です。どの検体がよいかは、これまでの検査の結果も含めて遺伝カウンセリングでご相談ください。

8. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。

陽性だったとき:診断の確定と、これからの見通し

原因の遺伝子がわかると、コルネリア・デランゲ症候群の診断が確定し、何に気をつけて過ごせばよいかがはっきりします。心臓・腎臓の超音波検査など、受けておきたい検査を計画しやすくなり[1]、指定難病や小児慢性特定疾病の申請を考えるときの手がかりにもなります(第9章)。

ご家族への影響と、ご両親の検査

お子さんで原因がわかったら、ご両親が同じ変化をもつかを、同じ場所を調べて確かめられます。ご両親とも変化がなければ、お子さんの代で新しく起きた変化であることがはっきりし、ご両親のせいではないことがわかります。SMC1A・HDAC8の変化では、お母さんの検査が次のお子さんの見積もりに欠かせません(第4章)。また、ほかのごきょうだいが将来、結婚や出産を考えるときにも、この結果が手がかりになります。

なお、拡大版保因者スクリーニングの対象にこの5つの遺伝子が含まれるかは、遺伝子一覧でご確認ください。ご家族の中で原因の変化がわかっている場合は、その同じ変化を調べるのが確実な方法です。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(単独では受けられません)。

陰性だったとき

5つの遺伝子に原因が見つからなかった場合も、コルネリア・デランゲ症候群ではないとは言い切れません(第7章)。血液で調べた場合は頬粘膜などほかの検体での検査、似た病気との区別が必要なら689遺伝子の知的障害の遺伝子パネル検査や全エクソーム検査など、次の選択肢を一緒に考えます。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。VUSの扱いはVUS(意義不明変異)の臨床的取り扱いで、調べた目的と別の病気の原因が見つかった場合の当院の方針は二次的所見の開示方針でご説明しています。

次の妊娠を考えている方:出生前診断の相談

ご家族で原因の変化がわかっていれば、次の妊娠で、絨毛検査や羊水検査で採った赤ちゃんの細胞を調べ、同じ変化があるかを確かめられます[1][2]。当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。合意声明は、出生前の検査を行う前に、その利点と難しい点をご両親と話し合うことを求めています[1]。妊娠を考えている段階から、どのように進めるかをご相談いただけます。

母体の血液で調べるNIPTについては、2018年の合意声明では、日常の診療で使える段階ではないとされていました[1]。現在、当院のNIPTでは、ダイヤモンドプランとインペリアルプランで、コルネリア・デランゲ症候群の原因になる遺伝子の新しい変化の一部を調べられます。NIPTはスクリーニング検査なので、陽性なら確定検査が必要です。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。ご家族で原因の変化がわかっている場合に、赤ちゃんが同じ変化をもつかを確かめるのは、絨毛検査・羊水検査です。

9. 日本の制度(2026年10月時点)

コルネリア・デランゲ症候群は、指定難病310「先天異常症候群」に含まれる病気です。厚生労働省の臨床調査個人票(310-3 先天異常症候群〔コルネリア・デランゲ症候群〕)には、遺伝学的検査の項目として、NIPBL・SMC1A・RAD21・SMC3・HDAC8などの遺伝子が挙げられています。また、小児慢性特定疾病情報センターの対象疾病(染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群)にも、コルネリア・デランゲ症候群が掲載されています(いずれも2026年10月時点で確認)。

医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。当院のこの検査は自費の検査です。

10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

結果までは2〜3週間で、至急オプションを使うと約7日短くなります。検体は唾液・頬粘膜・血液のいずれでも、オンライン診療で受けられます。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング来院またはオンライン
▶
検体の採取キットは検査料金のお支払い後に送付
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
対象遺伝子 HDAC8, NIPBL, RAD21, SMC1A, SMC3(5遺伝子)
調べる内容 塩基配列(料金に含まれる)/欠失・挿入(料金に含まれる)
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります(55,000円)/VUS除外(無料)
検体 血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)。モザイクを調べるため、培養していない線維芽細胞・口腔細胞・膀胱上皮細胞での検査も可能
検査費用 お問い合わせください
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
オンライン診療 唾液・頬粘膜・血液のいずれもオンライン診療で受けられます。血液の場合は全国の提携医療機関で採血します

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

オンライン診療(ビデオ通話での診療)では、遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採取しないでください。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族と次の妊娠にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、ご家族の次の計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

臨床遺伝専門医が常駐し、オンライン診療でも遺伝カウンセリングから結果のご説明まで受けられます。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

11. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【原因を知ることは、誰かを責めるためではない】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。コルネリア・デランゲ症候群の多くは、お子さんの代で新しく起きた変化によるものです。原因を確かめることは、ご両親を責めるためではなく、むしろ「ご両親のせいではない」ことをはっきりさせ、次の一歩を考えるためのものだと考えています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。次のお子さんを考えるご家族には、原因の確認から、絨毛検査・羊水検査による出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。知る・知らない、検査を受ける・受けない、どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. コルネリア・デランゲ症候群の平均寿命は?

平均寿命を何歳と示せる大規模なデータは、確認できた範囲ではありません。遺伝性疾患の解説書(GeneReviews)では、内臓に重い生まれつきの異常がなければ、寿命は大きく短くならないとされています。亡くなった方426人を調べた米国の研究では、死因で最も多かったのは誤嚥・胃食道逆流・肺炎などの呼吸器の原因(31%)でした。

Q2. 何人に1人の病気ですか?日本には何人いますか?

2018年の国際的な合意声明では、出生1万人あたり1人から3万人あたり1人と推定されています。日本では、小児慢性特定疾病情報センターの解説で、推定頻度から計算した患者さんの数は約4,000人とされています。

Q3. いつわかりますか?出生前に診断できますか?

典型的な場合は、経験のある小児科医や臨床遺伝専門医であれば、生まれたときから見分けられるとされています。出生前に確定させるには、絨毛検査や羊水検査で赤ちゃんの細胞の遺伝子を調べる必要があり、ご家族で原因の変化がわかっていれば、次の妊娠で同じ変化があるかを調べられます。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。

Q4. 顔つきや眉毛にはどんな特徴がありますか?

濃い眉毛や左右がつながった眉毛、短い鼻と上を向いた鼻先、長く平らな人中、薄い上くちびると下がった口角が、診断の目安となる主な特徴です。ただし顔つきだけで診断することはできず、よく似た特徴をもつ別の病気もあるため、遺伝子検査で原因を確かめます。

Q5. 原因は親のせいですか?

親のせいではありません。多くは、お子さんの代で新しく起きた遺伝子の変化によるもので、ご両親の生活や妊娠中の過ごし方が原因ではありません。お子さんで原因の変化がわかり、ご両親に同じ変化がなければ、新しく起きた変化であることがはっきりします。

Q6. 次の子どもで同じ病気が起こる確率は?

原因の遺伝子と、ご両親が同じ変化をもつかどうかで変わります。新しく起きた変化でも、親御さんの卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化がある「性腺モザイク」のためにゼロではなく、一人ひとりの確率は前もってわかりません。お母さんがSMC1AやHDAC8の変化をもつ場合は、妊娠のたびに2分の1の確率で伝わります。

Q7. コルネリア・デランゲ症候群は指定難病ですか?

はい。指定難病310「先天異常症候群」に含まれ、小児慢性特定疾病の対象疾病にも掲載されています(2026年10月時点)。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。

Q8. 知的障害の遺伝子パネル検査(689遺伝子)とどちらを選べばよいですか?

コルネリア・デランゲ症候群らしい特徴がそろっていれば、5つの遺伝子を調べるこの検査が向いています(結果まで2〜3週間)。似た病気との区別が必要な場合や、BRD4も調べたい場合は、この5つの遺伝子とBRD4を含む689遺伝子の検査(結果まで3〜5週間)が向いています。どちらが合うかは、遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

🧬 原因を知って、ご家族の次の一歩を

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。コルネリア・デランゲ症候群の原因がわかれば、お子さんの合併症への備えだけでなく、ご両親の検査や、次の妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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