InstagramInstagram

ルビンシュタイン・テイビ症候群の遺伝子検査|CREBBP・EP300・SRCAPの3遺伝子で原因を調べる・遺伝と次のお子さんへの確率

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

ルビンシュタイン・テイビ症候群の遺伝子検査(CREBBP・EP300・SRCAPの3遺伝子)

ルビンシュタイン・テイビ症候群(ルビンシュタインテイビ症候群、ルビンシュタイン症候群とも呼ばれます)は、幅広い親指・足の親指、特徴的な顔つき、発達の遅れを主な特徴とする、生まれつきの病気です。この検査では、原因となるCREBBP遺伝子・EP300遺伝子と、症状がよく似たフローティング・ハーバー症候群の原因であるSRCAP遺伝子の、3つの遺伝子を一度に調べます。「もしかして」と言われたまま、いくつもの病院で検査を重ねてきたご家族にとって、原因がはっきりすることは、見張るべき合併症や使える制度、次のお子さんのことを具体的に考える出発点になります。このページでは、病気の特徴・寿命の見通し・遺伝のしかたと、この遺伝子検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

ルビンシュタイン・テイビ症候群の原因であるCREBBP(1型)とEP300(2型)、症状の似たフローティング・ハーバー症候群のSRCAPの3遺伝子に、病気の原因となる変化があるかを調べます。日本では1〜2万出生に1人程度と考えられている病気です。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

幅広い親指・足の親指や特徴的な顔つき、発達の遅れがあり、ルビンシュタイン・テイビ症候群かどうかを遺伝子で確かめたい方、臨床的に診断されて原因の遺伝子を知りたい方、次のお子さんのことを考えたいご両親です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、唾液・粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。多くはお子さんで新しく起きた変化で、ご両親のせいではありません。次の妊娠では、インペリアルプランのNIPTや羊水検査・絨毛検査で備えることができます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

3つの遺伝子を2〜3週間で調べ、結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 発達の遅れの検査の選び方

1. ルビンシュタイン・テイビ症候群とは|何人に1人?原因と主な症状

ルビンシュタイン・テイビ症候群は、CREBBP遺伝子またはEP300遺伝子の変化によって起こる生まれつきの病気で、日本では1〜2万出生に1人程度と考えられています。ほとんどは、ご両親から受け継いだものではなく、お子さんの代で新しく起きた変化によるものです。英語では Rubinstein-Taybi syndrome(RSTS、RTS)といい、「ルビンシュタインテイビ」「ルビンシュタインデイビー症候群」と表記されることもあります。

頻度は調べ方によって違います。国立成育医療研究センターは、日本では1〜2万出生に1人程度、年間50〜100人ほどが生まれると考えられ、診断されていない方も多いと推測しています。一方、遺伝性疾患の解説書GeneReviewsは、オランダの研究で出生10万〜12.5万人に1人と推定されたことを紹介しています[1]。数字には幅があるので、目安として受け取ってください。

原因の遺伝子によって、CREBBP遺伝子によるルビンシュタイン・テイビ症候群1型と、EP300遺伝子によるルビンシュタイン・テイビ症候群2型に分けられます。2024年に発表された国際的な診療の合意文書(国際コンセンサス)でも、この2つの型を区別して診断の基準が示されています[2]。

顔つきや体の特徴(顔貌・幅広い親指)

いちばんの手がかりは、幅広い親指と足の親指です。GeneReviewsでは、親指と足の親指は「ほとんどいつも幅広く、しばしば曲がっている」とされています[1]。

顔つきの特徴としてよくみられるのは、頭が小さめであること、眉が高くアーチ状であること、目じりが下がっていること、鼻すじが高く、鼻の穴の間の部分(鼻柱)が小鼻より下まで伸びていること、笑ったときに目を細めるような独特の表情になることなどです[1]。こうした特徴は、成長とともに目立ち方が変わり、人によって程度もさまざまです。顔つきや体の特徴だけで診断を決めることはできないため、遺伝子検査で確かめることに意味があります。

発達・知能と行動の特徴

ほとんどの方に発達の遅れと知的障害がありますが、その程度には大きな幅があります。GeneReviewsでは平均のIQは35〜50とされていますが、「発達の経過は人によってかなり違う」と書かれています[1]。EP300遺伝子による2型では症状が軽めのことが多く、知能が正常の方もいます[1]。

行動の面では、人に親しげにふるまうことが特徴の一つとして挙げられています。一方で、年齢が上がるにつれて、不安やこだわり、気持ちの調整の難しさが目立ってくることがあり、国際コンセンサスは、知的障害のある方向けに作られた質問票で不安の状態を確かめることを勧めています。自閉症の評価では37〜44%が基準を満たしたと報告されていますが、くり返し行動の多さだけで基準に届くこともあり、評価には注意がいるとされています[2]。

気をつけたい合併症

ルビンシュタイン・テイビ症候群は、目・心臓・腎臓・歯・皮膚・おなかなど、全身に合併症が起こりうる病気です。どれが起こるかは人によって違うため、診断がついたら、決まった間隔で確かめていくことが大切になります。

  • ●目:生まれつきの緑内障は4〜11%と報告され、視力を大きく失うことがあるため、診断が疑われた時点で眼科の診察を受けることが勧められています[2]。
  • ●心臓・腎臓:GeneReviewsは、診断の時点で心臓と腎臓・泌尿器を調べることを勧めています[1]。
  • ●おなか:授乳や食事の難しさ、胃食道逆流、便秘がとても多く[1]、便秘はどの年代にもみられるとされています[2]。
  • ●皮膚:小さな傷からケロイドができやすく、国際コンセンサスは、ケロイドができやすい症候群の代表としています[2]。
  • ●耳・歯:GeneReviewsは、毎年の聴力検査と、1歳から半年ごとの歯科の診察を勧めています[1]。

腫瘍について:オランダでルビンシュタイン・テイビ症候群と診断された87人を調べた研究では、26人に良性・悪性あわせて35の腫瘍がみられ、良性の髄膜腫と毛母腫(皮膚の良性腫瘍)が一般の人より多くみられました。一方、悪性腫瘍が増えるという裏付けは得られませんでした(ただし人数が少ないため、完全には否定できないとされています)[3]。国際コンセンサスは、40歳未満で悪性腫瘍のための特別な検査を行うことは勧めていません[2]。

⚠️ 手術・麻酔の前に知っておきたいこと

顔や口の形の特徴から、麻酔のときのマスク換気や気管挿管が難しくなることがあり、国際コンセンサスは、ビデオ喉頭鏡や気管支ファイバーを使える準備など、この病気に合わせた麻酔の計画を勧めています。また、ある報告ではアトロピンやスキサメトニウム(筋弛緩薬)の使用時に不整脈がみられたことも紹介されています[2]。診断名がついていれば、歯科治療や手術の前に、麻酔科へこの病気であることを伝えられます。

寿命と大人になってから

GeneReviewsでは、ルビンシュタイン・テイビ症候群の方の90%以上が大人まで成長するとされています。ただし、寿命が一般の方と同じかどうかは、まだわかっていません[1]。難病情報センターは、呼吸器の感染を起こしやすい乳幼児期を過ぎると、全身の状態は比較的安定するとしています。

大人の平均身長は、GeneReviewsで男性162.6cm、女性151.0cmと紹介されています[1]。大人になってからは、不安などの気持ちの面や、ケロイド・便秘などの体の面のケアが中心になります[2]。寿命が一般の方と同じかどうかはまだわかっておらず、一生を通じた見守りが大切です。

似た病気と、同じ遺伝子で起こる別の病気

症状がよく似ていても、原因の遺伝子が違う病気や、同じ遺伝子でも別の病気になることがあります。このパネル検査は、こうした病気を見分けるためにも役立ちます。

  • ●フローティング・ハーバー症候群:SRCAP遺伝子の変化で起こり、SRCAPがCREBBPのはたらきを助けるたんぱく質であることが、症状が似る理由と考えられています。頭の大きさが正常で、目じりは下がらず、親指が曲がることは少ない点などが、見分ける手がかりです[1]。
  • ●メンケ・ヘネカム症候群1型・2型:CREBBP・EP300遺伝子の特定の場所(エクソン30の終わり〜31の始め付近)の変化で起こり、ルビンシュタイン・テイビ症候群に典型的な顔つきはみられません[1]。
  • ●16p13.3微小欠失症候群:CREBBPを含む染色体の一部がまとめて欠けている状態で、「重症型のルビンシュタイン・テイビ症候群」とも呼ばれ、成長の問題やけいれん、治りにくい感染症などを伴うことがあります[1](第4章)。

2. どんな人がこの検査を受けるとよいか

幅広い親指や足の親指、特徴的な顔つき、発達の遅れなどからルビンシュタイン・テイビ症候群が疑われる方、臨床的に診断されていて原因の遺伝子を確かめたい方に向く検査です。病名がはっきりすると、受けるべき検査、手術や麻酔のときの申し送り、使える制度(指定難病・小児慢性特定疾病)が決まり、次の一手が具体的になります。

  • ●幅広い親指・足の親指、特徴的な顔つき、発達の遅れがあり、原因を知りたい方
  • ●ルビンシュタイン・テイビ症候群と臨床的に診断され、1型か2型かを含めて遺伝子で確かめたい方
  • ●フローティング・ハーバー症候群など、症状の似た病気との区別がつかない方
  • ●お子さんがルビンシュタイン・テイビ症候群で、次の妊娠に備えて原因の変化を確かめておきたいご両親
  • ●ご本人がこの病気で、ご自身のお子さんへの影響を考えたい方

見た目や家族歴だけでは、判断できないことがあります。当院では、検査を受けてはじめて次の計画が立てられる、と考えています(第9章の院長コラム)。一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットも、あわせてご覧ください。

この検査より別の検査が向いている場合

ルビンシュタイン・テイビ症候群がはっきり疑われるなら、まずこの3遺伝子の検査です。症状が広く病気をしぼれないときや、染色体の大きな欠失が疑われるときは、次の検査のほうが向いていることがあります。

🔍 症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
ルビンシュタイン・テイビ症候群が疑われる この検査(CREBBP・EP300・SRCAPの3遺伝子)
発達の遅れが中心で、病気をしぼれない 知的障害の遺伝子検査(689遺伝子)、発達障害の遺伝子検査の選び方
低身長が中心で、ほかの原因も一緒に調べたい 低身長の遺伝子パネル検査(153遺伝子):CREBBP・EP300・SRCAPも含まれています
けいれんや重い感染症もあり、染色体の大きな欠失が疑われる マイクロアレイ染色体検査
コルネリア・デ・ランゲ症候群や歌舞伎症候群とも迷う コルネリア・デ・ランゲ症候群パネル、歌舞伎症候群パネル
症状が多くの臓器にわたり、病気をしぼれない クリニカルエクソーム検査、全エクソーム検査(WES)

※どの検査が合うかは、症状・診察所見・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

\ 病名がわかると、次の一手が決まります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どの検査が合うかからご一緒に考えます。唾液・頬の粘膜の検体なら、オンライン診療でも受けられます。

お問い合わせはこちら | 知的障害の遺伝子検査

3. 調べる3つの遺伝子と、わかる病気

この検査では、CREBBP・EP300・SRCAPの3つの遺伝子を調べます。CREBBPとEP300がルビンシュタイン・テイビ症候群の原因で、SRCAPは症状のよく似たフローティング・ハーバー症候群を見分けるために入っています。

🧬 ルビンシュタイン・テイビ症候群パネルで調べる遺伝子

遺伝子(染色体の位置) 関係する病気 遺伝のしかた ルビンシュタイン・テイビ症候群に占める割合
CREBBP(16p13.3) ルビンシュタイン・テイビ症候群1型/メンケ・ヘネカム症候群1型 常染色体顕性(優性) 55〜60%[1](55〜75%[2])
EP300(22q13.2) ルビンシュタイン・テイビ症候群2型/メンケ・ヘネカム症候群2型 常染色体顕性(優性) 8〜10%[1](8〜11%[2])
SRCAP(16p11.2) フローティング・ハーバー症候群/SRCAP関連の神経発達症(DEHMBA) 常染色体顕性(優性) (ルビンシュタイン・テイビ症候群の原因ではなく、見分けるために調べる)

※病名と遺伝のしかたはOMIM(RSTS1 #180849・RSTS2 #613684・メンケ・ヘネカム症候群1型 #618332・2型 #618333・フローティング・ハーバー症候群 #136140・DEHMBA #619595)で確認。割合はGeneReviews[1]と国際コンセンサス[2]で値に幅があるため両方を示しました。

CREBBP遺伝子とEP300遺伝子のちがい(1型と2型)

CREBBPとEP300は、よく似たはたらきをもつ「きょうだい」のような遺伝子です。どちらも、たくさんの遺伝子のスイッチの入り方を調節するたんぱく質(CBPとp300)の設計図になっています[2]。

CBPとp300は、DNAが巻きついているヒストンというたんぱく質に「アセチル基」という目印をつけることで、近くの遺伝子が働きやすい状態にします[2]。遺伝子の文字(塩基配列)を変えずに遺伝子の働き方を調節するこうしたしくみの異常で起こる病気をまとめて、クロマチノパチーと呼ぶことがあります。2本ある遺伝子のうち1本が働かなくなるだけで症状が出る(ハプロ不全)ことが、この病気の特徴です。

EP300による2型は、1型にくらべて顔つきの特徴がはっきりしないことが多く(鼻柱が下に伸びる特徴は除く)、知能が正常のこともあり、親指が曲がることはごくまれとされています[1]。また、2型のお子さんを妊娠したお母さんでは妊娠高血圧腎症が多かったという報告があり、GeneReviewsは、EP300の52妊娠のうち12、CREBBPの59妊娠のうち2で妊娠高血圧腎症がみられたという研究を紹介しています[1]。

SRCAP遺伝子を一緒に調べる理由

SRCAPは、CBP(CREBBPから作られるたんぱく質)のはたらきを助けるたんぱく質の設計図で、この遺伝子の変化はフローティング・ハーバー症候群を起こします。低身長や言葉の遅れ、特徴的な顔つきなどが重なるため、ルビンシュタイン・テイビ症候群と区別がつきにくいことがあります[1]。1回の検査で3つの遺伝子を同時に調べることで、「1つ調べて違ったら次」という回り道を減らせます。

4. この検査でわかること・わからないこと

この検査で原因が見つからなくても、「ルビンシュタイン・テイビ症候群ではない」とは言い切れません。ルビンシュタイン・テイビ症候群と臨床的に診断された方でも、原因の変化が見つからない方がいて、その割合はGeneReviewsで約30%、国際コンセンサスで15〜20%とされています[1][2]。

この検査は、次世代シークエンサーで遺伝子のうちたんぱく質の設計図になる部分(コード領域)と、その境目(スプライス部位)を読みます。調べたい場所の99%以上を、20回以上くり返し読んで確かめます(同じ場所を何度も読むほど、読み間違いを見分けやすくなります)。

  • ●わかること:遺伝子の文字1つの変化や、小さな挿入・欠失。あわせて、遺伝子まるごとの欠失や重複、2つ以上続くエクソンの欠失・重複(エクソンの欠失・重複は血液の検体のみ)も調べます。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
  • ●わかりにくいこと:エクソン1つだけの欠失・重複は、見つかることもありますが、ふだんは見つけられません。
  • ●わからないこと:染色体の転座や逆位、くり返し配列の伸長、遺伝子のスイッチ部分(プロモーター)やエクソンから離れた場所の変化。体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけることは、この検査の目的に入っていません。

CREBBPを含む大きな欠失(16p13.3)は見つかるか

CREBBP遺伝子がまるごと欠けている場合は、この検査の欠失・重複の解析で見つけられます。ただし、欠けている範囲がCREBBPの外までどこまで広がっているかは、この検査ではわかりません。

GeneReviewsによると、16p13.3(CREBBP)や22q13.2(EP300)の欠失は、ルビンシュタイン・テイビ症候群の約10%を占めます。遺伝子にしぼった欠失の検査では、大きな欠失の端の位置や、まわりの遺伝子まで欠けているかを見落とすことがあるとされています[1]。けいれんや治りにくい感染症など、典型より重い症状がある場合は、染色体全体を調べるマイクロアレイ染色体検査で欠失の範囲を確かめることを考えます(くわしくは16p13.3微小欠失症候群)。

原因が見つからない場合と、意義がまだわからない変化(VUS)

原因が見つからなかった場合も、臨床症状からルビンシュタイン・テイビ症候群と診断されることがあります。国際コンセンサスは、結果が陰性や判断に迷う場合に、遺伝子全体のメチル化のパターンを調べる解析が行われることがあるとしています[2]。症状に合わせて、マイクロアレイ検査やエクソーム検査に進むことや、このパネルに入っていないほかの遺伝子をカスタマイズ遺伝子パネル検査で追加して調べることもできます。遺伝カウンセリングのときにご相談ください。

また、病気の原因かどうかまだ判断できない変化(VUS)が見つかることがあります。VUSは、それだけで診断や、ご家族の検査・出生前診断に使うことはしません。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

5. 遺伝のしかたと、次のお子さんへの確率

ルビンシュタイン・テイビ症候群の多くは、お子さんの代で新しく起きた変化(新生突然変異)によるもので、ご両親のせいではありません。次のお子さんへの確率は低いものの、ゼロではありません。

この病気は常染色体顕性(優性)遺伝で、2本ある遺伝子のうち1本に原因の変化があれば発症します。国際コンセンサスによると、99%を超える方で変化は新生突然変異(de novo)として起きています[2]。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、妊娠中の過ごし方などで起きるものではありません。

ご両親に症状がない場合:「低いがゼロではない」理由

ご両親に変化が見つからなくても、親御さんの卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)の一部にだけ変化がある「生殖細胞系列モザイク」のことがあり、そのために同じ病気のきょうだいが生まれた家族も報告されています[2]。多くの家族を平均した経験的な再発率は、GeneReviewsで1%未満、国際コンセンサスで0.5〜1%とされています[1][2]。

⚠️ 平均の数字は、一組のご夫婦の確率の上限ではありません

再発率の「1%未満」は、多くの家族を平均した数字です。親御さんの生殖細胞にモザイクがある場合、変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。血液で調べた結果も、生殖細胞の状態の目安にはなりません。だからこそ、次の妊娠では、赤ちゃんそのものを調べる選択肢を前もって知っておくことに意味があります(第6章)。

ご本人がお子さんを持つ場合

ルビンシュタイン・テイビ症候群の方のお子さんは、1人ごとに2分の1の確率で原因の変化を受け継ぎます[1][2]。難病情報センターも、患者さんのお子さんが同じ病気である確率を50%としています。EP300による2型など症状の軽い方では、ご自身がお子さんを持つことを考える場面もあります。受け継いだお子さんの症状がご本人と同じ程度になるとは限らないため、知ったうえで計画することが大切です。

6. 病的変異が見つかったら、次にできること

原因の変化がわかると、「何に気をつけて、いつ何を調べるか」「次の妊娠でどう備えるか」が決まります。結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。

ご本人:診断の確定と、合併症の見張りの予定

ルビンシュタイン・テイビ症候群と確定すると、GeneReviewsや国際コンセンサスに沿った見張りの予定を立てられます。たとえば、眼科の診察(緑内障など)、毎年の聴力検査、診断時の心臓と腎臓・泌尿器の検査、1歳から半年ごとの歯科の診察、便秘やケロイドのケア、成長の確認などです[1][2]。歯科治療や手術の前には、麻酔科にこの病気であることを伝えておけます(第1章)。

原因の遺伝子そのものを治す治療はまだありませんが、合併症に合わせた治療と、療育・リハビリテーションなどの発達の支援を、小児科を中心に各科が連携して行います。治療や支援は、専門の医療機関で受けていただきます。指定難病・小児慢性特定疾病の申請にも、原因の確定が手がかりになります(第7章)。同じ病気のご家族どうしがつながる患者会・家族会もあり、情報や経験を分かち合う場になっています。

ご家族:新しく起きた変化か、受け継いだものかを確かめる

お子さんに原因の変化が見つかったら、ご両親が同じ変化をもっていないかを、その場所だけピンポイントで調べられます。ご両親に見つからなければ、お子さんの代で新しく起きた変化と考えられます。ただし、生殖細胞系列モザイクの可能性は残るため、次のお子さんへの確率がゼロになるわけではありません。症状のないご家族の検査は、ご本人の同意のうえで行い、検査の前に遺伝カウンセリングで、知ることの意味をよく考えていただきます。

次のお子さんを考えるとき:NIPT・出生前診断という選択肢

原因の変化がわかっていれば、次の妊娠で、赤ちゃんに同じ変化があるかを調べられます。GeneReviewsも、ご家族の原因の変化がわかれば、出生前検査が可能としています[1]。原因がわからないままでは、出生前に何を調べればよいかの的を決められません。

絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。出生前診断をどのように進められるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。

また、CREBBP・EP300・SRCAPの3遺伝子は、当院のNIPTのインペリアルプランでも調べられます(ダイヤモンドプランには入っていません)。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。NIPTは赤ちゃんのすべての病気がわかる検査ではなく、陽性の場合は羊水検査・絨毛検査で確かめます(院内で受けられます)。

体外受精でできた受精卵を調べるPGT-M(着床前遺伝学的検査)について、日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。

どの検査も受けずに自然に出産を迎えることも、そのまま選べる大切な選択肢です。どの選択をされても、当院はその選択を尊重し、遺伝カウンセリングで一緒に考えます。

陰性・VUSだったとき

3つの遺伝子に原因が見つからなかった場合でも、ルビンシュタイン・テイビ症候群を否定することはできません(第4章)。症状やご家族の情報をもとに、マイクロアレイ染色体検査、エクソーム検査、ほかの遺伝子の追加など、次の検査の選択肢を一緒に考えます。VUSが見つかった場合は、それだけで診断やご家族の検査には使わず、研究が進んで意味がはっきりするのを待つこともあります。

7. 日本の制度:指定難病102・小児慢性特定疾病(2026年10月時点)

ルビンシュタイン・テイビ症候群は、指定難病102に指定されています(難病情報センター、2026年10月時点で確認)。また、小児慢性特定疾病の「染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群」の対象疾病として、小児慢性特定疾病情報センターに掲載されています(2026年10月時点で確認)。

医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の診断の基準や重症度などの条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

8. 検査の流れと、費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円で、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、唾液・頬の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医・オンライン可
▶
検体の採取・発送お支払い後にキット
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

💴 費用・日数・検体

項目 内容
調べる遺伝子 CREBBP・EP300・SRCAP(3遺伝子)
調べる内容 遺伝子の配列(料金に含む)/欠失・重複(料金に含む)
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間(至急オプション:約7日短くなります・55,000円)
検体 血液(EDTA採血管4ml×2本)・抽出DNA・頬の内側の粘膜・唾液
オプション VUS除外(無料):意義がまだわからない変化(VUS)を報告に含めない選択ができます
オンライン診療 唾液・頬の粘膜・血液いずれも可(血液は全国の提携医療機関で採血)

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質の検体を確実に採るため、ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、ご家族とこれからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

結果は臨床遺伝専門医が直接ご説明し、次の妊娠ではインペリアルプランのNIPTから羊水検査・絨毛検査まで院内で続けられます。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「誰のせいでもない」とわかることから、次が始まる】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

ルビンシュタイン・テイビ症候群は、ほとんどがお子さんの代で新しく起きた変化によるものです。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。原因の遺伝子がわかることは、ご両親がご自分を責める理由がないことを、はっきりさせることでもあります。そのうえで、見張るべき合併症、使える制度、次の妊娠での備えまで、具体的に考えられるようになります。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく関係のない別の遺伝子の病的な変化が、体の細胞の一部だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。次のお子さんを考えるご両親には、遺伝カウンセリングから出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. ルビンシュタイン・テイビ症候群の寿命は?

遺伝性疾患の解説書(GeneReviews)では、90%以上の方が大人まで成長するとされていますが、寿命が一般の方と同じかどうかはまだわかっていません。呼吸器の感染を起こしやすい乳幼児期を過ぎると、全身の状態は比較的安定するとされています。合併症に合わせた見守りは一生を通じて大切です。

Q2. ルビンシュタイン・テイビ症候群は何人に1人の病気ですか?

国立成育医療研究センターは、日本では1〜2万出生に1人程度と考えられるとしています。オランダの研究では出生10万〜12.5万人に1人と推定されており、調べ方によって数字に幅があります。診断されていない方もいると考えられています。

Q3. 顔つきにはどんな特徴がありますか?

眉が高くアーチ状であること、目じりが下がっていること、鼻の穴の間の部分(鼻柱)が小鼻より下まで伸びていること、笑ったときの独特の表情などがよくみられます。いちばんの手がかりは幅広い親指と足の親指です。程度は人によって違い、顔つきだけで診断することはできません。

Q4. 知的障害はありますか?知能はどのくらいですか?

ほとんどの方に発達の遅れと知的障害がありますが、程度には大きな幅があります。GeneReviewsでは平均のIQは35〜50とされていますが、発達の経過は人によってかなり違います。EP300遺伝子による2型では、知能が正常の方もいます。

Q5. 性格や行動に特徴はありますか?

人に親しげにふるまうことが特徴の一つとして挙げられています。一方で、年齢が上がるにつれて不安やこだわりが目立つことがあり、国際的な診療の合意文書は、知的障害のある方向けの質問票で不安の状態を確かめることを勧めています。性格は一人ひとり違うため、病名だけで決めつけないことが大切です。

Q6. 遺伝しますか?次の子が同じ病気になる確率は?

99%を超える方で、変化はお子さんの代で新しく起きています。多くの家族を平均した再発率は1%未満とされていますが、親の生殖細胞にだけ変化がある(モザイク)場合もあり、一組のご夫婦の確率は「最大で2分の1」と考えます。ご本人がお子さんを持つ場合は、お子さん1人ごとに2分の1の確率で受け継ぎます。

Q7. 1型と2型のちがいは何ですか?

CREBBP遺伝子による1型と、EP300遺伝子による2型があります。2型は1型にくらべて顔つきの特徴がはっきりしないことが多く、知能が正常の方もいて、親指が曲がることはごくまれとされています。2型のお子さんを妊娠したお母さんで、妊娠高血圧腎症が多かったという報告もあります。

Q8. 検査で原因が見つからなかったら、この病気ではないのですか?

いいえ。臨床的にルビンシュタイン・テイビ症候群と診断された方でも、原因の変化が見つからない方が15〜30%ほどいると報告されています。症状に合わせて、マイクロアレイ染色体検査やエクソーム検査、ほかの遺伝子の追加などを考えます。

Q9. 次の妊娠で、NIPTで調べられますか?

CREBBP・EP300・SRCAPの3遺伝子は、当院のNIPTのインペリアルプランで調べられます(ダイヤモンドプランには入っていません)。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性の場合は、羊水検査・絨毛検査で確かめます(院内で受けられます)。

Q10. 指定難病の申請はできますか?

ルビンシュタイン・テイビ症候群は指定難病102に指定されており、小児慢性特定疾病の対象疾病にも掲載されています(2026年10月時点)。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の条件を満たして申請する必要があります。くわしくはお住まいの自治体の窓口でご確認ください。

🧬 原因がわかることから、ご家族のこれからが始まる

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ルビンシュタイン・テイビ症候群の原因がわかれば、合併症の見張りや麻酔の申し送り、制度の申請だけでなく、次のお子さんをどう迎えるかを考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、インペリアルプランのNIPT、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Stevens CA. Rubinstein-Taybi Syndrome. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2002 (Updated 2023 Nov 9). [NCBI Bookshelf NBK1526]
  • [2] Lacombe D, Bloch-Zupan A, Bredrup C, et al. Diagnosis and management in Rubinstein-Taybi syndrome: first international consensus statement. J Med Genet. 2024;61(6):503-519. [DOI: 10.1136/jmg-2023-109438]
  • [3] Boot MV, van Belzen MJ, Overbeek LI, et al. Benign and malignant tumors in Rubinstein-Taybi syndrome. Am J Med Genet A. 2018;176(3):597-608. [DOI: 10.1002/ajmg.a.38603]

関連記事

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

記事の作り方と生成AIの使い方は、編集方針をご覧ください。