目次
📍 クイックナビゲーション
- ➤ コルネリア・デ・ランゲ症候群とはどのような疾患か
- ➤ あるご家族との出会いが生んだ、医師としてのデノボ変異検査への決意
- ➤ 2020年6月から始まったデノボ変異検査への取り組みの軌跡
- ➤ 25遺伝子から56遺伝子へ──検査技術進化の4年間
- ➤ 現在のコルネリア・デ・ランゲ症候群検出率(約85%)と今後の展望
ミネルバクリニックでは、出生前診断や遺伝子検査を通じて、患者様一人ひとりのライフステージにおける様々なお悩みに寄り添っています。私たちが大切にしているのは、どのような状況であっても患者様とご家族に寄り添い、共に歩むことです。
今回は、コルネリア・デ・ランゲ症候群のお子さんを授かったご家族との経験を通じて、改めて感じた想いと、それがきっかけとなって始まった当院の「デノボ変異検査」への取り組みの軌跡をお伝えしたいと思います。
転機となったコルネリア・デ・ランゲ症候群との出会い
数年前、コルネリア・デ・ランゲ症候群のお子さんがお生まれになったケースがありました。このケースのご家族は、NIPTの染色体検査は受けられていましたが、当時はまだ当院でコルネリア・デ・ランゲ症候群の遺伝子検査ができる体制が整っていませんでした。
コルネリア・デ・ランゲ症候群(Cornelia de Lange syndrome;CdLS)は、発達遅延・特徴的な顔貌・成長障害などを特徴とする先天性の希少疾患です。多くの場合、複数の臓器に影響を及ぼし、お子さんとご家族にとって大きな挑戦を伴います。発症頻度は約10,000〜30,000人に1人とされており、原因遺伝子としてNIPBL遺伝子(60%以上)のほか、SMC1A・SMC3・HDAC8・RAD21・BRD4・ANKRD11などが知られています。その多くは親から受け継ぐのではなく、精子や卵子の形成過程で新たに生じる「デノボ変異」が原因です。
この疾患の多くは、父親の高齢化により起こる精子の突然変異(デノボ変異)が原因とされています。
デノボ変異(de novo mutation)とは、両親が正常な遺伝子を持っているにもかかわらず、精子や卵子の形成過程で新たに生じる遺伝子変異のことです。特に父親の年齢が高くなるほど精子におけるデノボ変異のリスクが増加することが知られており、高齢男性のご夫婦にとって特に関係性の高い検査項目です。
コロナ禍での特別な困難と、深いトラウマ
特にこのケースが心に残っているのは、ちょうどコロナ禍の時期と重なったことです。感染対策のため直接お会いしてお話しすることができず、電話での状況確認が中心となりました。
お子さんは1歳頃に天国へと旅立たれました。その間、何度も電話でお話しする中で、お母様から聞かせていただいた言葉が今でも心に深く刻まれています。
「目を覚ましたら子どもが息をしていないかもしれない」
そう思いながら毎日を過ごす大変さ、その重みを思い知らされました。医師として多くの患者様と接してきましたが、このお母様の言葉は、ご家族が抱えておられる不安や恐怖の深さを改めて実感させてくれました。
様々なお声がけをさせていただきましたが、お子さんを亡くされたことがご夫婦にとって深いトラウマとなってしまいました。「次の妊娠を考えたくない」「もう二度と妊娠したくない」というお気持ちが固くなってしまわれたのです。
一つの命を失う悲しみ、それまでの不安に満ちた日々への恐怖。ご夫婦のそのお気持ちは当然のことだと思います。同時に、医師として強く思ったのは、「もし事前にデノボ変異の検査ができていたらどうだったのだろうか」ということでした。
「なんとかデノボ変異を扱わないといけない」
デノボ変異検査への道のり:2020年6月の始まり
このご家族との出会いを機に、私たちは世界からデノボ変異の検査を出せるところを必死で探しました。当時、日本国内でNIPTによるデノボ変異検査を提供できる機関はほとんどありませんでした。
様々な海外の検査機関と交渉を重ね、技術的な課題や検査精度、コストの問題などを一つひとつクリアしていきました。そして、2020年6月、ついに25個の遺伝子をNIPTで検査できる体制を整えることができました。
- ✓ 25個の遺伝子によるデノボ変異検査開始
- ✓ コルネリア・デ・ランゲ症候群関連遺伝子を含む
- ✓ 日本初のNIPTによる包括的デノボ変異検査
さらなる進歩:2024年、56遺伝子による高精度検査
2020年から4年間、デノボ変異検査の経験を積み重ね、さらなる技術革新を追求し続けました。そして2024年、56個の遺伝子が検査できる「NEWデノボ(ダイヤモンドコース)」を採用することができました。
この新しい検査体制により、検出力は飛躍的に向上し、より多くの単一遺伝子疾患を妊娠早期から検出することが可能になりました。
検査技術の進歩の軌跡
コルネリア・デ・ランゲ症候群の検出力向上
現在では、コルネリア・デ・ランゲ症候群の約85%のケースを検出可能となり、数年前のあのご家族にお伝えできなかった選択肢を、今なら提供できるようになりました。
「健常なお子さんを抱かせてあげたい」という想いの実現
このご家族との出会いを通じて生まれた想いは、技術革新とともにより具体的な形となりました。
「健常なお子さんを抱かせてあげたい」
この想いが、技術革新を通じて現実のものとなりました
もちろん、どのようなお子さんであっても、生まれてくる命は尊いものです。しかし同時に、ご家族が安心して妊娠期間を過ごし、お子さんを迎えられる環境を整えることも、私たちの大切な役割だと感じています。そして今、その想いを実現する技術を提供できるようになったことを、心から嬉しく思っています。
現在の検査体制が提供できること
妊娠6週から検査可能で、ご家族が十分な時間をかけて情報を整理できます
30以上の単一遺伝子疾患を一度の検査で検出可能
父親の年齢が高い場合のデノボ変異リスクに対応
臨床遺伝専門医による継続的なサポート体制
私たちができること
検査前のカウンセリング
- → デノボ変異を含む検査の内容や限界について詳しくご説明
- → ご家族の価値観や希望を丁寧にお聞きします
- → 様々な選択肢について一緒に考えます
検査後のフォロー
- → 結果についての詳細な説明
- → 今後の選択肢についてのご相談
- → 継続的なサポート体制の提供
- ✓ 患者様がどのような決断をされても支持します
- ✓ 判断に迷われる場合は、一緒に考えます
- ✓ 一人ひとりの「最善の選択」を見つけるお手伝いをします
最後に
コルネリア・デ・ランゲ症候群のお子さんとそのご家族との出会いは、私にとって医師としての使命を改めて考える大きなきっかけとなりました。そして、その経験から生まれた「なんとかデノボを扱わないといけない」という想いが、今日の56遺伝子による高精度検査体制につながっています。
生命の尊さと、同時にご家族が直面する現実の重さ。その両方を深く理解し、患者様一人ひとりにとっての「最善」を一緒に探していくことが、私たちの役割だと考えています。
出生前診断は、単なる検査ではありません。ご家族の人生、お子さんの未来、そして家族全体の幸せを考える上での大切な情報提供ツールです。そして今、私たちはかつてそのご家族にお伝えできなかった選択肢を、多くの方々に提供できるようになりました。
よくある質問(FAQ)
🏥 NIPTと遺伝カウンセリングのご相談はミネルバクリニックへ
ミネルバクリニックでは、NIPT(新型出生前診断)を専門に提供しています。56遺伝子によるデノボ変異検査を含む包括的な検査体制で、検査前後の遺伝カウンセリングでは、検査の内容や意味、結果の解釈について詳しくご説明します。不安やご質問があれば、専門医にご相談ください。
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参考文献
- Kline AD, et al. “Diagnosis and management of Cornelia de Lange syndrome: first international consensus statement.” Nat Rev Genet. 2018;19(10):649-666. [DOI]
- Krantz ID, et al. “Missense mutations in the cohesin factor NIPBL causing Cornelia de Lange syndrome.” Nat Genet. 2004;38(6):631-635. [DOI]
- Kong A, et al. “Rate of de novo mutations and the importance of father’s age to disease risk.” Nature. 2012;488(7412):471-475. [DOI]
- Wou K, et al. “Cell-free DNA analysis as a screening tool for single-gene disorders in high-risk pregnancies.” Prenat Diagn. 2018;38(7):498-510. [DOI]
- OMIM – Cornelia de Lange Syndrome 1 (#122470). Online Mendelian Inheritance in Man. [OMIM]
- ミネルバクリニック「ダイヤモンドプラン(78項目の包括的出生前診断)」 [公式サイト]

