目次
📍 クイックナビゲーション
- ➤ 一組の20代夫婦の体験から骨系統疾患NIPTが生まれた背景
- ➤ 日本医学会会長からの依頼がきっかけとなった経緯
- ➤ 米国・欧州を渡り歩いた交渉の舞台裏
- ➤ ベルギー留学で培った「個人の意思を尊重する」という信念
- ➤ 現在56遺伝子に拡大した骨系統疾患NIPTの全貌
これは、一組の20代夫婦の辛い体験から始まった、日本の医療制度に風穴を開けるまでの真実の物語です。ミネルバクリニックがなぜ骨系統疾患を含むNIPT検査をいち早く導入したのか――その背景には、患者さん一人ひとりの人生を主体的に歩んでもらいたいという、揺るぎない信念がありました。
日本の産婦人科学会主導の制度に疑問を抱き、世界中を探し回って検査を実現するまでの道のりを、院長・仲田洋美が自ら語ります。
突然の宣告 ― 20代夫婦に降りかかった現実
20代夫婦、第1子妊娠20週に突然、かかりつけの産婦人科で胎児の手足が短いと言われ、国立成育医療センターへ紹介になりました。レントゲンも撮影し、やはり骨の成長が悪い骨系統症候群だろうと診断がつきました。
骨系統疾患とは
骨系統疾患は、骨や軟骨の発達や形成に異常をきたす病気の総称です。多くは遺伝子の変異が原因で、出生時から骨格の長さや形、脊椎や胸郭、頭蓋骨などに特徴的な変化が見られます。発症頻度はまれですが、生命予後や生活の質に影響を与えることがあります。
国際的には450種類以上が分類されており、その中には単一遺伝子の変異が原因で起こる疾患も多く含まれます。軟骨無形成症、致死性骨異形成症、低軟骨形成症などが代表例です。海外ではNIPTや羊水検査などの出生前診断で特定できるようになってきていますが、日本では制度や技術の制限により検査可能な施設が限られていました。
時間のない中での決断を迫られる
何も受け止められないまま、中絶できるのは21週まで。手術室の準備の関係もあるので今日中に産むか産まないかを決めるよう迫られました。産まないことにしたが、気持ちを整理する時間も全くないまま、時間的な余裕を持たせてもらえなかったのです。
中絶と通常の出産の病棟がほとんどの医療機関では分かれていないため、赤ちゃんが生まれて幸せそうにしている人がいる中で死産しなければならないという状況は本当につらいものがあります。若い夫婦は二人で励まし合いながら、その困難を乗り越えてきました。
希望を求めてミネルバクリニックへ
第2子を妊娠したことがわかり、血相を変えてミネルバクリニックへ来院されました。「前回こんなことがあったので、今回はなんとか無事に出産にたどり着きたい。ああいう疾患はNIPTでチェックできないんですか」と。
うろたえる若夫婦を前に、「現在の当院では扱っていません。次に妊娠されるときにはそういう検査が世界にあればできる体制を整えておきますのでご容赦ください」とお返事しました。当時はベリナタというところに検査を出していて、全染色体のトリソミーと5か所の微小欠失しか調べることができませんでした。
幸い、NIPTで何も引っかからず、中期のエコーでも骨も大丈夫そうということで、第2子は無事にお生まれになりました。しかし私の胸には、あの夫婦への約束が深く刻まれていました。
約束を果たすための世界への挑戦
このご夫婦がミネルバクリニックでNIPT検査を受けた後、私は英語でネットサーフィンをして、世界からそういう検査をしているところがないか、毎日ずっと探しました。欧米では、骨系統疾患のうち単一遺伝子疾患であることがはっきりしているものに関して、いくつかの遺伝子を調べることができるようになっていました。
単一遺伝子疾患とは、1つの遺伝子の変異によって引き起こされる疾患のことです。骨系統疾患の多くはこれに該当し、FGFR3遺伝子変異による軟骨無形成症などが代表例です。原因遺伝子が特定されているため、NIPTでターゲットを絞ったスクリーニングが技術的に可能となります。
1. アメリカ・ナテラ社との交渉と決裂
まず、アメリカの会社にミネルバクリニックの検体を受け入れてもらえないかと聞いたのですが、ナテラという会社は日本では名古屋の鈴森先生の会社が扱っていました。ナテラの日本担当者がわざわざ私に会いに来てくれたのですが、鈴森先生の許可が必要だと言われました。
そこで、私は指導医を通じて鈴森先生と会えるようにしてもらい、会いに行ったのですが。鈴森先生は相手が私だとわかると顔をしかめ、「あなたはやってはいけないことをしている」と言いました。
「どうしてですか?出生前診断を遺伝専門医が扱うのは当然ですよ。産婦人科と小児科じゃないと扱えないなんて日本だけです。先生たちこそ利権を守り患者不在じゃないですか。」
そしてナテラの検査を入れることはできませんでした。しかし、私はこれで良かったと思っています。なぜならナテラの検査は当院がナテラに支払う部分だけで当時のレートで40万円以上でしたので、皆さんにもっと安く提供したかった私は価格帯が飲めなかったからです。
2. ユーロフィンとの交渉も難航
次に、アメリカのユーロフィンと交渉しましたが、こちらも日本法人を通せという話でした。日本法人は認証施設でないところとは契約しないと言います。厚生労働省と医学会からの圧力がかかっているからです。正式に遺伝学を学んでスキルを保証されて臨床遺伝専門医になっているのに、おかしすぎる日本の医療の現実でした。
日本では、出生前検査認証制度等運営委員会(JAMS)が定める基準を満たした施設のみが「認証施設」としてNIPT実施を認められています。その基準の策定背景には産婦人科学会主導の歴史があり、臨床遺伝専門医が院長であっても産婦人科・小児科の標榜のない施設は認証を得られないケースがありました。ミネルバクリニックはこの制度に縛られない非認証施設として、患者主体の検査を提供しています。
3. 欧州での突破口
アメリカの2社に断られ、心折れそうになりましたが、アメリカがダメなら欧州に目を向けようと思って探しました。そして、ついに突破口が見つかったのです。
すべてのきっかけ ― 日本医学会会長からの個人的依頼
そもそも私がNIPTに踏み出したのは、当時の日本医学会会長だった高久史麿先生から、「NIPTの仕組みがおかしいので問題点を調べるように」と指示されたからです。
調べていくと、患者不在の実態が見えてきました。「産婦人科学会よりも産婦人科医会(中絶医の集まりとして始まった開業医の団体)が強い」産婦人科業界の中で、大きな病院側の医師たちが主導権を握っている日本産婦人科学会が、「産婦人科医会にNIPTをさせない」ことを目的に、日本医学会をほとんど隠れ蓑にして産婦人科学会が運営するという形の制度を作ったのでした。
こうした実態が明らかとなり、私は「初めての妊娠出産で一卵性双生児の一人を36週6日で突然失った」母親の一人として、かつ臨床遺伝専門医として、日本産婦人科学会に反旗を翻すことにしたのです。
私は高久先生に「NIPTをやれる準備をしました」と宣言し、この世界に風穴を開けるのだと決心しました。それが2017年3月のことです。実際に検査を始めたのは2017年10月近くですので、日本医学会会長の高久先生と仲の良い私が、形としては日本医学会に反旗を翻すことになることに、しばらく逡巡していたということです。そうして私は、決して簡単ではない決意をもって、NIPTの世界に踏み出しました。
ベルギーで培った価値観 ― 個人主義への目覚め
なぜ私は、こんなにも「患者主体」にこだわるのか。それは私のお育ちに原因があるかもしれません。ハイティーンのときにたった一人でベルギーの田舎町で高校に通いました。個人主義の国で、「個人の意思を尊重する」ことの大切さを身に着けて帰国したからです。
欧州では、日本のように転んだ子供を抱きかかえて起こしたりしません。自分で立ち上がったら、ほめたたえて抱きしめるのです。そんな小さなころから「自分の人生は自分で歩む」ということを教えているのです。
ベルギーでの教育には、実現したいことがある場合にどういう経路を複数考えるかというトレーニングや、ディベート、交渉術なども含まれていました。日本式でない教育を多感な時期に受けた私だからこそ、あの困難な交渉を続けられたのかもしれないと、いろんな教育を受けさせてもらった環境に心から感謝しました。
約束の実現 ― ついに骨系統疾患NIPTが可能に
2019年当時、AIなんてありませんでしたので、自力で一生懸命英語でメールを書いて交渉する日々でした。あの20代という若い夫婦が来て「前のようなことがあるかもしれないと思うと怖くてたまらない、何とかしてほしい」とおっしゃっている姿を思い出して。なにがなんでも絶対、海外にはもうある検査なのだから実現せねば、と粘り強く交渉し続けました。
2020年7月から、骨系統疾患を含む25遺伝子のNIPTを取り扱うことができるようになりました。
現在では、56遺伝子に増えたNIPTを取り扱うことができています。世界は臨床遺伝専門医の私に対して「この検査を扱うな、産婦人科じゃないんだから」なんて絶対言いません。むしろ、私ががん薬物療法専門医という日本のがんの専門医も持っていることに対して、すごく敬意を払っていただけます。こんなマニアックな医者は世界でも珍しいので。
現在の56遺伝子パネルについて
現在、ミネルバクリニックでスクリーニングが可能な遺伝子は以下の56遺伝子です。これらは骨や軟骨の形成異常、頭蓋骨癒合症、発達遅延や特徴的顔貌を伴う症候群など、30種類以上の単一遺伝子疾患をカバーしています。
ASXL1, BRAF, CBL, CD96, CDKL5, CHD7, COL10A1, COL11A1, COL1A1, COL1A2, COL2A1, EBP, EFNB1, ERF, FGFR1, FGFR2, FGFR3, FLNB, FREM1, GLI3, HDAC8, HNRNPK, HRAS, KAT6B, KMT2D, KRAS, LMNA, MAP2K1, MAP2K2, MECP2, NIPBL, NRAS, NSD1, NSDHL, PTPN11, RAD21, RAF1, RIT1, RUNX2, SHOC2, SKI, SLC25A24, SMC1A, SMC3, SNRPB, SOS1, SOS2, SOX9, SPECC1L, STAT3, TCF12, TRAF7, TSC1, TSC2, TWIST1, ZIC1
患者主体の医療への信念
こうして私は、日本の「産婦人科と小児科がこれがいいと思うことを押し付ける出生前診断」を打破し、「自分たちがファミリーとして歩んでいくために主導権・選択権が患者側にある出生前診断」を提供すべく頑張ってきました。
あなたの人生ですから、ご自分で決めてください
その代わり決めるにあたり必要な情報は余すことなくお伝えします
患者さんと築いてきた信頼関係
そうして私は、障害のあるお子さんがいるご家庭の状況や、どういうクリニックに行って何を言えばいいのかをお伝えしています。どういうクリニックがいいのかということは、今までミネルバに来た患者さんたちが「ここがよかった」「ここはこうだった」と伝えてくれたからこその財産です。
物事には段階があるので、陽性になっていないのに、大切にしているクリニックの固有名詞をお伝えすることはしておりません。患者さんのプライバシーと情報の正確性を重視しています。
物語の完結 ― そのご夫婦のその後
このご夫婦は、3回目の妊娠時に再度ミネルバクリニックを訪れました。今度は骨系統疾患が検査できるようになっていたので、涙ぐんで喜ばれていました。
「ついに検査していただけるんですね」
全体として現在までに3人のお子さんを無事にお迎えになりました。
あの20代のご夫婦との出会いから始まった私たちの挑戦は、今では多くの患者さんに新しい選択肢を提供できるまでになりました。ミネルバクリニックは2025年6月より自院で羊水・絨毛検査が可能な体制をとることができるようになっています。一人ひとりの患者さんが、ご自身の価値観に基づいて最良の選択ができるよう、私たちはこれからも最新の医療技術と正確な情報を提供し続けてまいります。
🏥 ミネルバクリニックでのご相談
骨系統疾患NIPTを含む出生前診断のご相談は、臨床遺伝専門医が常駐するミネルバクリニックへお気軽にお問い合わせください。
🏥 ミネルバクリニックの特徴
✓ 日本初、院長自身が臨床遺伝専門医であるNIPTクリニック
✓ 骨系統疾患を含む56遺伝子のde novo変異NIPTに対応
✓ 2025年6月から確定検査(絨毛検査・羊水検査)を自院で実施
✓ 患者さん主体の出生前診断を一貫して提供
「患者のための医療を実現することを貫いています」
よくある質問(FAQ)
参考文献
- Unger S, et al. “Nosology of Genetic Skeletal Disorders: 2023 Revision.” American Journal of Medical Genetics Part A. 2023. [PubMed]
- Chitty LS, et al. “NIPT for single-gene disorders: current status and future prospects.” Best Practice & Research Clinical Obstetrics & Gynaecology. 2022. [PubMed]
- Vora NL, et al. “Cell-free DNA screening for skeletal dysplasias.” Prenatal Diagnosis. 2020. [PubMed]
- 出生前検査認証制度等運営委員会「NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)とは」 [公式サイト]
- ミネルバクリニック「父親の加齢で増える赤ちゃんの疾患を検査|56遺伝子de novo変異NIPT」 [公式サイト]

