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コフィン・シリス症候群とは?症状・顔の特徴・寿命と原因遺伝子を調べる検査

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

コフィン・シリス症候群とは?症状・顔の特徴・寿命と原因遺伝子を調べる検査

コフィン・シリス症候群(コフィンシリス症候群)は、発達の遅れ・知的障害、手足の小指の爪や指先の骨が小さいこと、特徴的な顔立ちなどがみられる、生まれつきの病気です。原因は、遺伝子の働きを調節するしくみに関わる複数の遺伝子の変化で、ほとんどはお子さんの代で新しく起きた変化です。原因の遺伝子がわかれば、病名と見通し、気をつけたい合併症、使える制度が決まり、次のお子さんで同じことが起こる可能性と、次の妊娠での備え方も具体的に考えられるようになります。このページでは、症状・顔の特徴・寿命の見通し・遺伝のしかたと、原因の11遺伝子を一度に調べる遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

コフィン・シリス症候群とその近縁の病気の原因になる11の遺伝子(ARID1B・SMARCB1・SMARCA4など)を一度に調べ、病気の原因となる変化があるかを確かめます。最も多い原因はARID1Bで、全体の約37%です。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

発達の遅れがあり、小指の爪や指先の骨が小さい、顔立ちに特徴があるなどでコフィン・シリス症候群が疑われるお子さんと、そのご家族です。原因を知って、次の妊娠に備えたいご両親にも向いています。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、唾液・頬の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、次の妊娠で絨毛検査・羊水検査による出生前診断を院内で計画できます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 原因を知ることが、次の一歩の出発点です /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 知的障害の原因を広く調べる検査 | どの検査がよいか迷う方へ

1. コフィン・シリス症候群とは

コフィン・シリス症候群は、発達の遅れ・知的障害、小指の爪や指先の骨(末節骨)が小さい・ないこと、特徴的な顔立ち、体毛が濃いこと(多毛)などがみられる、生まれつきの病気です。1970年にコフィン医師とシリス医師が初めて報告したことから、この名前がついています(難病情報センター)。英語では Coffin-Siris syndrome といい、CSSと略されます。

日本では指定難病185に指定され、小児慢性特定疾病の対象疾病にもなっています(第9章)。病気の詳しいしくみや型ごとの違いはコフィン・シリス症候群総論で解説しています。このページでは、遺伝子検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。

どれくらいの人がなる病気か

正確な頻度はわかっていません。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsは、これまでの報告から「生まれる赤ちゃん10万人に1人」というおおまかな推定を示し、実際にはもっと多い可能性があるとしています。遺伝子で確定した方は、患者さんの登録で530人を超えて報告されています[1]。日本の小児慢性特定疾病情報センターの概要(2018年作成)では、患者数は100人未満とされています。

原因:遺伝子の働きを調節するSWI/SNF(BAF)複合体

コフィン・シリス症候群は、DNAの巻きつき方を変えて遺伝子のスイッチを入れたり切ったりする「SWI/SNF(BAF)複合体」に関わる遺伝子の変化で起こります。この働きをクロマチンリモデリングといいます。

2012年、日本の研究グループが、典型的なコフィン・シリス症候群の23人のうち20人(87%)で、SWI/SNF複合体を作る6つの遺伝子(SMARCB1・SMARCA4・SMARCA2・SMARCE1・ARID1A・ARID1B)のどれかに変化があることを報告しました[2]。同じ号で、オランダのグループもARID1Bの変化が原因になることを報告しています[3]。いまでは原因遺伝子は14まで増えていますが、臨床的にこの病気と考えられる方の約40%では、既知の遺伝子に原因が見つかっていません[1]。

🧬 原因遺伝子ごとの割合(GeneReviewsによる)

遺伝子 コフィン・シリス症候群に占める割合
ARID1B 約37%
SMARCA4 約7%
SMARCB1 約7%
ARID1A 5%未満
SMARCA2・SMARCE1・SOX11 それぞれ約2%
ARID2・BICRA・DPF2・PHF6・SMARCC2・SMARCD1・SOX4 まれ
原因がわからない 約40%

※文献[1]の表による。このページの検査で調べる遺伝子は第6章をご覧ください(ARID2・BICRA・DPF2・SMARCC2・SMARCD1・SOX4は対象外)。

2. 症状と顔の特徴

ほぼすべての方に発達の遅れ・知的障害がみられ、多くは中等度から重度です。そのほか、哺乳・食事の問題、筋肉の張りの弱さ(筋緊張低下)、小指の爪の低形成、顔立ちの特徴などが多くみられます[1]。症状の組み合わせと重さは、一人ひとり大きく違います。

小指の爪・指先の骨が小さい

この病気の名前のもとになった特徴です。手足の小指(第5指)の爪や指先の骨が小さい、またはないことがあり、GeneReviewsでは65〜80%の方にみられるとされています[1]。逆に言えば、小指に特徴がない方もいるので、小指だけで判断はできません。

顔の特徴

GeneReviewsでは、粗い顔立ち、薄い頭髪、濃い眉毛などが、この病気を疑う手がかりに挙げられています。顔立ちの特徴は約65%の方にみられるとされ[1]、特徴がはっきりしない方もいます。顔つきだけで診断することはできないので、確かめるには遺伝子検査が必要です。

発達・合併症の頻度

📋 主な症状と、みられる割合

症状 割合
発達の遅れ・知的障害 98%(多くは中等度〜重度)
哺乳・食事の問題 90%
筋緊張低下 75%
小指・爪の低形成 65〜80%
顔立ちの特徴 65%
感染症をくり返す 60%
てんかん 50%
難聴(感音性・伝音性) 45%
目の症状(まぶたが下がる・斜視・近視) 約40%
先天性心疾患 35%
腎臓・尿路・生殖器の形の違い 33%
行動の問題 25%

※GeneReviews(2025年5月更新)の表[1]による。脳の画像では、脳梁(左右の脳をつなぐ線維の束)が欠けている・薄いなどの所見がみられることがあり、ARID1Bが原因の方では約3人に1人で脳梁が薄いとされています。

原因遺伝子による違い

GeneReviewsによると、最も多いARID1Bが原因の方は症状が比較的軽い側にあることが多く、成長はふつうのことも多いとされています。一方、SMARCB1が原因の方は重いことが多く、発達の遅れが強く、脳の形の違いを伴い、多くは言葉を話さないとされています[1]。同じ病名でも原因遺伝子で見通しが違うので、どの遺伝子が原因かを知ることに意味があります。

3. 寿命・予後と、診断後の健康管理

GeneReviewsでは、コフィン・シリス症候群で寿命が短くなるかどうかはわかっていないとされ、69歳で存命の方の報告もあります[1]。小児慢性特定疾病情報センターの解説では、難治性のてんかんや心臓の病気を合併しているかどうかが生命予後に関わるとされています。つまり、合併症を早く見つけて治療することが、見通しを左右します。

診断後に勧められている定期チェック

根本的な治療法はまだなく、症状に合わせて多くの診療科で支えていきます。GeneReviewsでは、次のような定期チェックが勧められています[1]。

  • ●成長・栄養・食べ方の安全(むせ・誤嚥)、てんかん、発達と行動、睡眠、感染症の確認
  • ●目と耳の検査を年1回(または必要に応じて)
  • ●歯が生えたら、歯科の診察を6か月ごと
  • ●食べることの困難が続くときは、摂食の訓練や胃ろうの検討

原因遺伝子で変わる注意点(腫瘍)

原因遺伝子によって、気をつける腫瘍が違います。GeneReviewsでは、ARID1Aが原因の方で肝芽腫(子どもの肝臓のがん)の頻度が約3.6%と見積もられ、4歳まで3か月ごとに血液のAFP(腫瘍マーカー)を測り、肝臓の超音波検査も考えることが勧められています。SMARCA4とSMARCB1の変化は、別の病気としてラブドイド腫瘍素因症候群の原因にもなり、SMARCB1では神経鞘腫に注意が必要とされています。一方、成人35人の集団ではがんは見られず、肝芽腫以外の定期的ながん検診は勧められていません[1]。

米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の系統的レビューでは、先天異常や知的障害のある子どもにエクソーム・ゲノム解析を行った研究167件のうち95%で、患者さんまたはご家族の診療方針に何らかの変化があったと報告されています(変化の中身や大きさは研究ごとに違います)[9]。病名と原因遺伝子がわかると、受けるべき検査と、使える制度が決まります。

4. 遺伝のしかた:ほとんどは新しく起きた変化

コフィン・シリス症候群は常染色体顕性(優性)遺伝の病気ですが、ほとんどの方は、ご両親から受け継いだのではなく、お子さんの代で新しく起きた変化(de novo変異)によるものです[1]。難病情報センターも、突然変異で起こるので、どの家族に生まれる可能性もあると説明しています。

ご両親のせいではありません

遺伝子の変化は、卵子や精子ができるときなどに、誰にでも起こりうるものです。妊娠中の過ごし方や、ご両親の体質のせいで起きるものではありません。お子さんで新しく起きた変化と確かめられることは、それ自体がご両親にとって大切な答えになります。

次のお子さんで同じことが起こる可能性

お子さんで新しく起きた変化であれば、次のお子さんで同じ病気になる可能性は低いと考えられますが、ゼロではありません。ご両親の血液で変化が見つからなくても、卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)にだけ変化がある「性腺モザイク」の場合があるためです。実際に、ARID1Bが原因のコフィン・シリス症候群が、性腺モザイクと考えられる形できょうだいで再発した報告があります[4]。

変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。「新しく起きた変化だから次は大丈夫」と小さく見積もらず、次の妊娠で確かめる方法を前もって知っておくことが大切です。体の一部の細胞にだけ変化がある状態については体細胞モザイクと生殖細胞系列モザイクで詳しく解説しています。

ご本人のお子さんへは2分の1

常染色体顕性遺伝なので、ご本人がお子さんを持つ場合、お子さん1人あたり2分の1の確率で同じ変化を受け継ぎます(難病情報センター)。また、ご両親のどちらかが同じ変化を持っていた場合も、次のお子さんへの確率は2分の1です。どちらに当たるかは、お子さんの結果をもとにご両親を調べるとわかります。

5. どんな人がこの検査を受けるとよいか

コフィン・シリス症候群が疑われるお子さんと、原因を知って次の妊娠に備えたいご両親に向く検査です。見た目や症状だけでは判断できないことが多いので、迷う場合は遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。

症状からコフィン・シリス症候群が疑われる方

  • ●発達の遅れ・知的障害があり、手足の小指の爪や指先の骨が小さい・ない
  • ●粗い顔立ち、薄い頭髪、濃い眉毛、多毛などの特徴がある
  • ●筋緊張低下、哺乳・食事の問題、感染症をくり返す、てんかん、難聴、先天性心疾患などを伴う
  • ●ほかの検査で原因がわからず、診断がつかないまま病院を回っている

日本の未診断疾患イニシアチブ(IRUD)の6年間のまとめでは、エクソーム解析を終えた5,136家系のうち2,247家系(43.8%)で診断が確定しました[10]。原因がわからないまま病院を回る時間を、検査で短くできる可能性があります。ただし、全員に診断がつくわけではなく、IRUDでも半数以上は診断に至っていません。この病気でも約40%は既知の遺伝子に原因が見つからないので[1]、陰性でも次の選択肢があることを知っておいてください(第8章)。

原因を知って、次の妊娠を考えたいご両親

原因の遺伝子の変化がわかっていれば、次の妊娠で、赤ちゃんに同じ変化があるかを絨毛検査・羊水検査で調べる出生前診断を計画できます。GeneReviewsも、ご家族で原因の変化がわかっていれば出生前の検査は可能としています[1]。原因がわからないままでは、出生前に何を調べるかの的を決められません。だからこそ、お子さんの原因を先に確かめておくことが出発点になります。

この検査より別の検査が向いている場合

症状がコフィン・シリス症候群らしい場合は、まずこの検査です。症状が広く病気をしぼれない場合は、次の検査のほうが向いていることがあります。比べる相手は検査の種類です。

🔍 症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
小指の爪・指先の骨の低形成、顔立ちの特徴など、コフィン・シリス症候群らしい このページの検査(11遺伝子)
知的障害・発達の遅れがあるが、病名をしぼれない 発達障害・学習障害・知的障害遺伝子検査
自閉スペクトラム症の原因を調べたい 自閉症遺伝子検査
染色体の欠けや重なり(大きな変化)が疑われる マイクロアレイ染色体検査(CMA)
症状が多くの臓器にわたり、原因を広く調べたい 全エクソーム検査(WES)

※どの検査が合うかは、症状・診察所見・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングでご説明します。

\ 原因がわかれば、次の妊娠への備え方が決まります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

原因の変化がわかっていれば、次の妊娠での羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

6. この検査で調べる11遺伝子

この検査では、コフィン・シリス症候群とその近縁の病気の原因になる11遺伝子(ADNP、ANKRD11、ARID1A、ARID1B、PHF6、SMARCA2、SMARCA4、SMARCB1、SMARCE1、SOX11、TBC1D24)を一度に調べます。コフィン・シリス症候群そのものの原因遺伝子に加え、小指の低形成や顔立ちなど症状が重なり、見分けが難しい病気の遺伝子も含まれています。

🧪 対象遺伝子と、関係する主な病気

遺伝子 関係する主な病気 遺伝のしかた 当院のNIPT
ARID1B コフィン・シリス症候群1型 常染色体顕性 インペリアル
ARID1A コフィン・シリス症候群2型 常染色体顕性 インペリアル
SMARCB1 コフィン・シリス症候群3型/ラブドイド腫瘍素因症候群1型/SMARCB1関連神経鞘腫症 常染色体顕性 インペリアル
SMARCA4 コフィン・シリス症候群4型/ラブドイド腫瘍素因症候群2型 常染色体顕性 インペリアル
SMARCE1 コフィン・シリス症候群5型 常染色体顕性 インペリアル
SOX11 コフィン・シリス症候群9型 常染色体顕性 対象外
SMARCA2 ニコライデス・バライツァー症候群(コフィン・シリス症候群の原因になることもある) 常染色体顕性 インペリアル
PHF6 ボルイェソン・フォルスマン・レーマン症候群(まれにコフィン・シリス症候群の原因) X連鎖 対象外
ADNP ADNP症候群(Helsmoortel-Van der Aa症候群) 常染色体顕性 インペリアル
ANKRD11 KBG症候群 常染色体顕性 インペリアル
TBC1D24 DOORS症候群(難聴・爪の異常・骨の異常・知的障害・てんかん)、てんかんの病気、難聴 主に常染色体潜性(難聴には顕性の型もある) 対象外

※対象遺伝子は当院の検査内容による。病気と遺伝のしかたは文献[1][2][3][5][6][7][8]による。PHF6の病気はX染色体上の遺伝子の病気です[8]。「当院のNIPT」はインペリアルプランの対象遺伝子に含まれるか(ダイヤモンドプランにはどれも含まれません)。

ADNPとANKRD11は、知的障害・発達の遅れ・顔立ちの特徴が重なる別の病気(ADNP症候群・KBG症候群)の原因遺伝子です。ADNPの新しく起きた変化は、自閉スペクトラム症・知的障害・顔立ちの特徴を伴う症候群の原因として報告されています[5]。KBG症候群は常染色体顕性遺伝の神経発達の病気です[6]。TBC1D24によるDOORS症候群は、GeneReviewsでコフィン・シリス症候群と見分ける病気として挙げられています[1][7]。

当院のNIPT(インペリアルプラン)で調べられる遺伝子

このページの対象遺伝子のうち、ARID1B・ARID1A・SMARCB1・SMARCA4・SMARCE1・SMARCA2・ADNP・ANKRD11の8つは、当院のNIPTのインペリアルプランでも調べられます。SOX11・PHF6・TBC1D24はインペリアルプランの対象外で、ダイヤモンドプランには11遺伝子のどれも含まれていません。

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。この病気のほとんどは新しく起きた変化なので、ご家族に患者さんがいなくても、赤ちゃんに起こりうるものです。NIPTはスクリーニング検査なので、陽性の場合は絨毛検査・羊水検査で確かめます(院内で受けられます)。ご家族ですでに原因の変化がわかっている場合は、NIPTではなく、絨毛検査・羊水検査でその変化を直接調べるのが基本です。NIPTの詳しい内容はNIPTトップをご覧ください。

7. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、11遺伝子の小さな変化(1つの塩基の置き換わりや、小さな欠け・入り込み)と、遺伝子全体などの大きめの欠け・重なり(欠失・重複)です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●陰性でも否定はできません:臨床的にこの病気と考えられる方の約40%では、既知の遺伝子に原因が見つかっていません[1]。この検査で原因が見つからなくても、コフィン・シリス症候群でないとは言い切れません。
  • ●調べていない遺伝子:ARID2・BICRA・DPF2・SMARCC2・SMARCD1・SOX4など、まれな原因遺伝子は対象外です[1]。
  • ●見つけにくい変化:染色体の一部が入れ替わる変化(転座・逆位)、同じ配列のくり返しが長くなる変化、遺伝子のスイッチ部分や遺伝子の奥深く(エクソンから20塩基より離れた部分)の変化は、この検査では見つけられません。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけることは、この検査の目的に入っていません。
  • ●欠け・重なりの範囲:欠失・重複は、遺伝子全体(頬の粘膜・血液)と、隣り合う2つ以上のエクソン(血液のみ)の大きさの変化を調べます。エクソン1つだけの変化は、ふだんは検出の対象外です。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、いまはまだ判断できない変化が見つかることがあります。VUSは、それだけで診断を確定したり否定したりはできません[1]。
🔬 検査の精度について(専門的な内容)

調べる範囲の99%以上を、それぞれ20回以上読み取ります(≥99% at 20x)。同じ場所を何度も読むほど、読み間違いを見分けやすくなります。読み取りの質が基準に届かない部分は、別の方法(サンガー法)で確かめます。

8. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。報告書の読み方はNIPT/遺伝子検査結果の見かたでも解説しています。

原因が見つかったとき

病名と原因遺伝子が確定すると、第3章のような原因遺伝子に合わせた健康管理(ARID1Aなら肝芽腫のチェックなど)を始められ、指定難病などの制度の申請にもつながります。次に、ご両親が同じ変化を持っているかを調べると、お子さんで新しく起きた変化か、受け継いだ変化かがわかり、次のお子さんへの可能性を考える手がかりになります(第4章)。

次の妊娠を考えているご両親へ

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに、赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。この病気でどのように出生前診断を進めるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に考えますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。羊水検査・絨毛検査のページもあわせてご覧ください。

原因が見つからなかったとき

この検査で原因が見つからなくても、コフィン・シリス症候群でないとは言い切れません(第7章)。症状に合わせて、全エクソーム検査(WES)やマイクロアレイ染色体検査など、より広く調べる検査を考えます。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。ご両親の検査や研究の進みによって、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

結果の報告書の言語

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。

9. 日本の制度(2026年10月時点)

コフィン・シリス症候群は指定難病185です。難病情報センターのページ(情報更新 2023年1月)で確認しました。また、小児慢性特定疾病情報センターの対象疾病にも、「染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群」の1つとして掲載されています(2026年10月時点で確認)。

医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜・血液のいずれでもオンライン診療で受けられます。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
お支払い・検体キットをお送りします
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間
至急オプション 結果までの期間が約7日短くなります(55,000円)
VUS除外オプション 無料
調べる変化 塩基配列の変化と、欠失・挿入(料金に含まれる)
検体 血液(EDTA採血管〔紫のキャップ〕4ml×2本)、抽出したDNA(3μg)、頬の内側の粘膜(スワブ)、唾液
オンライン診療 可能(唾液・頬の粘膜・血液)。血液の場合は全国の提携医療機関で採血

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

ほとんどの方は、唾液か頬の内側の粘膜で検査できます。オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質を保つため、キットが届く前にご自身で検体を採取しないでください。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、ご家族のこれからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

お問い合わせはこちら | 次の妊娠でNIPTを考える方へ(インペリアルプラン)

11. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「誰のせいでもない」を確かめることから】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

コフィン・シリス症候群は、ほとんどがお子さんの代で新しく起きた遺伝子の変化で起こる病気です。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。原因を確かめることは、ご両親の心の荷物を下ろすことにも、次のお子さんのことを具体的に考えることにもつながると考えています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。原因がわかったご家族には、次の妊娠での出生前診断まで、院内で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. コフィン・シリス症候群とはどんな病気ですか?

発達の遅れ・知的障害、手足の小指の爪や指先の骨が小さい(またはない)こと、特徴的な顔立ちなどがみられる、生まれつきの病気です。1970年にコフィン医師とシリス医師が初めて報告しました。細胞の中で遺伝子の働きを調節するSWI/SNF(BAF)複合体に関わる遺伝子の変化で起こり、日本では指定難病185に指定されています(2026年10月時点)。

Q2. 顔つきに特徴はありますか?

遺伝性疾患の解説書GeneReviewsでは、粗い顔立ち、薄い頭髪、濃い眉毛などが、この病気を疑う手がかりに挙げられています。ただし、顔立ちの特徴がはっきりしない方もいて、顔つきだけで診断することはできません。確かめるには遺伝子検査が必要です。

Q3. 寿命はどれくらいですか?

GeneReviewsでは、コフィン・シリス症候群で寿命が短くなるかどうかはわかっていないとされ、69歳で存命の方の報告もあります。小児慢性特定疾病情報センターの解説では、難治性のてんかんや心臓の病気を合併しているかどうかが生命予後に関わるとされています。合併症を早く見つけて治療することが大切です。

Q4. 原因は何ですか?親から遺伝するのですか?

原因は、ARID1B・SMARCB1・SMARCA4などの遺伝子の変化です。遺伝のしかたは常染色体顕性(優性)遺伝ですが、ほとんどの方は、ご両親から受け継いだのではなく、お子さんの代で新しく起きた変化(de novo)によるものです。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、ご両親のせいではありません。

Q5. 次の子どもも同じ病気になる可能性はありますか?

お子さんで新しく起きた変化であれば、次のお子さんで同じ病気になる可能性は低いと考えられますが、ゼロではありません。ご両親の卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化がある場合(性腺モザイク)があり、きょうだいで再発した報告もあります。原因の遺伝子の変化がわかっていれば、次の妊娠で絨毛検査・羊水検査による出生前診断を計画できます。

Q6. 指定難病や小児慢性特定疾病の対象ですか?

はい。コフィン・シリス症候群は指定難病185で、小児慢性特定疾病の対象疾病(染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群)にも掲載されています(2026年10月時点で確認)。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たして申請する必要があります。

Q7. 日本に患者さんは何人くらいいますか?

全国の正確な人数はわかっていません。小児慢性特定疾病情報センターの概要(2018年作成)では100人未満とされています。GeneReviewsは、生まれる赤ちゃん10万人に1人というおおまかな推定を示したうえで、実際にはもっと多い可能性があるとしています。

Q8. コフィン・シリス症候群はNIPTでわかりますか?

このページの検査の対象遺伝子のうち、ARID1B・ARID1A・SMARCB1・SMARCA4・SMARCE1・SMARCA2・ADNP・ANKRD11の8つは、当院のNIPTのインペリアルプランでも調べられます。SOX11・PHF6・TBC1D24は対象外で、ダイヤモンドプランにはどれも含まれていません。NIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。NIPTはスクリーニング検査なので、陽性の場合は絨毛検査・羊水検査で確かめます。

🧬 一度の検査で、お子さんとご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。コフィン・シリス症候群の原因遺伝子がわかれば、お子さんの合併症への備えや制度の利用だけでなく、次の妊娠の計画を考える手がかりになります。ミネルバクリニックは臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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