この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

原発性高シュウ酸尿症の遺伝子検査は、AGXT・GRHPR・HOGA1の3つの遺伝子を一度に調べ、1型・2型・3型のどれに当たるかを確かめる検査です。くり返す尿路結石、子どもの結石、原因のわからない腎石灰化の陰に、この病気が隠れていることがあります。型がわかると、ビタミンB6を試す意味があるか、海外で使われている新しい治療薬の対象になるか、移植をどう考えるかが変わります。生まれ持った遺伝子は一生変わらないため、一度の検査でわかったことは、ご自身の治療だけでなく、きょうだいの検査や、これからの結婚・妊娠の計画にもずっと使える情報になります。このページでは、病気のしくみ、検査でわかること・わからないこと、結果が出たあとにできることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. 原発性高シュウ酸尿症の遺伝子検査で何がわかりますか?
原因となる3つの遺伝子(AGXT・GRHPR・HOGA1)を一度に調べ、1型・2型・3型のどれに当たるかを確かめます。型によって、治療の選び方や腎臓の見通しが変わります。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
尿路結石をくり返す方、子どものうちに結石や腎石灰化が見つかった方、尿のシュウ酸が多いと言われた方、ご家族に原発性高シュウ酸尿症の方がいる方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療にも対応しています。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、きょうだいは症状がなくても同じ変化を調べられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. 原発性高シュウ酸尿症とは|シュウ酸が体の中で作られすぎ、尿路結石・腎石灰化をくり返す遺伝性の病気
原発性高シュウ酸尿症(高シュウ酸尿症・PH)は、肝臓などで働く酵素が生まれつき十分に働かないために、体の中でシュウ酸が作られすぎる遺伝性の病気です。作られすぎたシュウ酸は尿に出ていき、尿の中でカルシウムと結びついて、シュウ酸カルシウムの結石や、腎臓そのものへのカルシウムの沈着(腎石灰化)を起こします。
原因の遺伝子によって1型・2型・3型に分かれ、型によって重さや治療の考え方が違います。病気のしくみや治療の歴史をさらに詳しく知りたい方は、原発性高シュウ酸尿症(PH1・PH2・PH3)の解説もご覧ください。このページでは、遺伝子検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。
どれくらいの人がなる病気か(患者数)
米国の研究で、遺伝子のデータから推定した原発性高シュウ酸尿症の有病率は約5万8千人に1人、原因となる変化を1つもつ保因者は、3つの型を合わせて約70人に1人とされています[4]。一方、実際に診断された患者さんの数からの推定では、1型は100万人あたり1〜3人、出生12万人に1人とされています[1]。数字の違いは、調べ方の違いによるものです。
西ヨーロッパと北米では、末期腎不全になった子どもの1〜2%が1型によるものとされています[1]。日本での正確な患者数は、確かめられる統計がありません。
尿検査でシュウ酸カルシウムが出た・シュウ酸カルシウム結石と言われた方へ:食事でできる結石との違い
原発性高シュウ酸尿症はまれな病気なので、シュウ酸カルシウム結石と言われた方や、尿検査でシュウ酸カルシウムが出た方の多くは、この病気ではありません。ただし、結石をくり返す、子どものうちに結石ができた、腎石灰化があるといった場合には、この病気を考えて調べる意味があります。欧州の専門家の推奨は、この病気が強く疑われる方には遺伝子検査を行うことを勧め、遺伝子検査を3つの型すべての診断の基本としています[5]。
食事が大きく関わるシュウ酸結石と違い、原発性高シュウ酸尿症では、シュウ酸の多くが体の中で作られます。そのため、食事のシュウ酸を控えるだけでは十分ではありません。欧州の専門家の推奨では、生活の質への影響から厳しい低シュウ酸食は勧めず、シュウ酸がとても多い食品をとりすぎないようにすることを提案しています[5]。GeneReviewsでは、1型の方が避けたいこととして、チョコレート・ルバーブ・スターフルーツなどシュウ酸の多い食品の大量摂取と、推奨量を超えるビタミンCの摂取が挙げられています[1]。
原発性高シュウ酸尿症1型・2型・3型の違い
最も多く、最も重くなりやすいのが1型です。3型は子どものうちに結石で見つかることが多い一方、腎臓の働きが失われることは少ないとされています。下の表は、遺伝性疾患の解説書GeneReviewsと米国の研究をもとにまとめたものです。
🧬 原発性高シュウ酸尿症1型・2型・3型の違い
※割合は文献[1][3][4]、40歳までに腎不全になる割合は3型のGeneReviewsに示された比較[3]、2型の特徴は文献[2]による。
腎石灰化とは?子どもの結石・腎石灰化と主な症状
腎石灰化とは、腎臓の組織そのものにカルシウムがたまった状態です。腎臓の中の尿の通り道にできる石(腎結石)とは違い、健診の超音波検査などで偶然見つかることもあります。腎石灰化の原因はいろいろあり、原発性高シュウ酸尿症はその1つです(第2章の表で、ほかの原因の検査との選び分けをまとめています)。
1型では、およそ10%が1歳未満、約70%が1〜17歳、約20%が大人になってから見つかるとされています。乳児期に見つかる重い型では、生後4〜6か月で末期腎不全になることもあります。反対に、60歳代まで症状がほとんどない方もいます[1]。大人の約10%は、腎移植を受けたあとに、移植した腎臓で病気が再び起きたことがきっかけで診断されているとされています[1]。
3型では、結石による症状で見つかる年齢の中央値は2〜3歳で、多くは5歳までに結石ができます。結石の発作は60歳代までくり返すことがあり、腎石灰化は7〜10%にみられます[3]。2型も多くは子どものうちに始まりますが、診断までに何年もかかることがあるとされています[2]。
腎臓の働きが落ちると全身に広がる:全身性シュウ酸症
腎臓の働きが落ちてシュウ酸を尿に出せなくなると、シュウ酸カルシウムが体のあちこちにたまる「全身性シュウ酸症」が起こります。1型では、骨・心臓・網膜にたまることが最も多く、血管・骨髄・皮膚の下・末梢神経・関節にたまることもあるとされています[1]。3型では、全身性シュウ酸症の報告はありません[3]。腎臓の働きが落ちる前に病気を見つけ、治療につなげることが大切な理由がここにあります。
尿路結石は遺伝する?原発性高シュウ酸尿症の遺伝のしかたと確率
原発性高シュウ酸尿症は、1型・2型・3型とも常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)です。ご両親がともに保因者のとき、お子さん1人ごとに、発症する確率は4分の1(25%)、保因者になる確率は2分の1(50%)、どちらでもない確率は4分の1(25%)です[1][2][3]。
発症するのは、同じ遺伝子の2本ともに原因となる変化をもつ場合です。2本が同じ変化のこともあれば、父親由来と母親由来で違う変化のこと(複合ヘテロ接合)もあります。保因者は1本だけに変化をもつ方で、症状はありません[1]。保因者は、3つの型を合わせて約70人に1人と推定されており[4]、ご家族に患者さんがいなくても、お子さんで初めて見つかることがあります。
2. どんな人が原発性高シュウ酸尿症の遺伝子検査を受けるとよいか
尿路結石や腎石灰化の原因を知りたい方、ご家族に原発性高シュウ酸尿症の方がいる方、結婚や妊娠を考えている方に向く検査です。見た目や家族歴だけでは判断できないことが多いので、迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
尿路結石をくり返す・子どもに結石や腎石灰化が見つかった・腎臓の働きが落ちてきた
結石の治療を何度受けても原因がわからないまま、病院を回っている方もいます。原因の遺伝子がわかれば、結石を「その場で取る」治療から、「作られすぎを抑える」治療へ考え方を進められる可能性があります。次のような方は、この検査を考える意味があります。
- ●子どものうちに尿路結石や腎石灰化が見つかった方
- ●大人で、シュウ酸カルシウム結石をくり返している方
- ●尿のシュウ酸が多いと言われた方
- ●結石や腎石灰化があり、原因がわからないまま腎臓の働きが落ちてきた方
- ●移植した腎臓に結石やシュウ酸の沈着が見つかった方
ただし、全員に原因が見つかるわけではありません(第4章)。見つからなかった場合も、次に考える検査があります。
きょうだい・家族に原発性高シュウ酸尿症の人がいる
あなたの1回の検査が、ご両親・きょうだい・お子さんが自分の状態を知る手がかりになります。3型のGeneReviewsは、患者さんのきょうだい全員に、年齢や症状にかかわらず検査を勧めています[3]。1型でも、とくにきょうだいの検査が勧められています[1]。症状が出る前に見つかれば、水分のとり方などの対策を早くから始め、腎臓の働きを見守ることができます。
また、ご家族の中で腎移植のドナーを考えるときにも、ドナー候補のきょうだいが同じ病気をもっていないかを確かめる手がかりになります。症状のないご家族の検査は、遺伝カウンセリングで、知ることの意味をよく考えてから行います。
尿・血液・画像の結果から選ぶ腎臓の遺伝子検査:この検査より別の検査が向いている場合
結石がシュウ酸カルシウムで、尿のシュウ酸が多いなら、まずこの検査です。腎石灰化や結石の原因はほかにもあるので、尿・血液・画像の結果によっては、次の検査のほうが向いていることがあります。
🔍 結石・腎石灰化の原因に合わせた検査の選び方
※どの検査が合うかは、結石の成分・尿や血液の検査・画像・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。このほか、デント病など、腎石灰化を起こす遺伝性の病気はほかにもあります。
3. 原発性高シュウ酸尿症の遺伝子検査で調べる3つの遺伝子と、わかる病気
この検査では、原発性高シュウ酸尿症の原因として知られている3つの遺伝子を一度に調べます。1つずつ順番に調べる場合と違い、どの型でも1回の検査で確かめられます。
🧪 調べる遺伝子と関係する病気(3遺伝子)
※対象遺伝子は当院の検査内容による。染色体の位置は米国国立生物工学情報センター(NCBI)の遺伝子検査登録、遺伝のしかたは文献[1][2][3]による。
AGXT:1型の原因と、ビタミンB6に関わる変化
AGXTがつくるAGTは、肝臓のペルオキシソームで、シュウ酸のもとになるグリオキシル酸をグリシンに変える酵素です[1]。AGXTの変化のうちp.Gly170Argは全体の約30%を占め、ほかの変化に比べて尿のシュウ酸が少なく、腎臓の働きの落ち方がゆるやかで、末期腎不全になる時期も遅いとされています[1]。どの変化をもつかは、ビタミンB6が効くかどうかの目安にもなります(第6章)。
GRHPRとHOGA1:2型・3型の原因
2型では、尿のL-グリセリン酸が増えることが診断の手がかりになりますが、測り方によって結果がばらつくとされています[2]。遺伝子で確かめると、型をはっきり決められます。
3型のHOGA1では、c.700+5G>Tが最も多い変化です。イスラエルのアシュケナージ系ユダヤ人では保因者が約55人に1人と多く、その変化の約66%がp.Glu315delとされています[3]。特定の集団で同じ変化が多くみられるのは、創始者効果と呼ばれる現象によるものです。
4. 原発性高シュウ酸尿症の遺伝子検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、3つの遺伝子の小さな変化と、一定の大きさ以上の欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
わかること
次世代シークエンサーで、3つの遺伝子のたんぱく質をつくる部分(エクソン)と、その境目を読みます。遺伝子の文字(塩基)が1つ変わる変化や、小さな欠失・挿入がわかります(料金に含まれます)。対象の領域の99%以上を、20回以上くり返して読み取る精度で調べます。読み取りの質が低い部分は、別の方法(サンガー法)で確かめます。
遺伝子の一部がまとまって抜けたり増えたりする大きな変化(欠失・重複)は、遺伝子1つ分の大きさ(血液・頬の粘膜の検体)や、2つ以上続くエクソンの大きさ(血液の検体のみ)であれば見つけられます。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。1型では、原因の変化の97%超が配列を読むことで見つかり、欠失・重複は3%未満とされています[1]。
わからないこと
- ●3つの遺伝子に原因が見つからない方がいます:臨床的に原発性高シュウ酸尿症が疑われる方の最大10%は、遺伝子で原因がわからないとされています[1]。米国の研究でも、家系の11.3%で原因の変化が見つかりませんでした[4]。
- ●調べていない場所の変化:エクソンから20塩基以上離れた場所(深いイントロン)や、遺伝子のスイッチの部分(プロモーター)の多くの変化、染色体の組み換わり(転座・逆位)は、この検査では見つかりません。
- ●よく似た配列の影響:よく似た配列(偽遺伝子など)があると、まれに変化を正しく読み取れないことがあります。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけある変化を見つけるようには作られていません。がんなどの組織の検査にも使えません。
- ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、この病気を完全に否定することはできません。尿や血液のシュウ酸の値、画像の結果とあわせて考えます。
意義がまだわからない変化(VUS)
病気の原因かどうか、まだ判断できない変化(VUS)が見つかることがあります。VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。ご希望により、VUSを報告に含めない設定(VUS除外)も選べます。
5. 結果が出たあと:陽性・陰性・VUS
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたでも解説しています。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。
陽性:2つの変化がそろっていたとき・1つだけだったとき
同じ遺伝子の2本ともに原因となる変化が見つかれば、原発性高シュウ酸尿症の診断と型が確定します。治療の選び方は第6章でご説明します。原因となる変化が1本だけに見つかった場合は、保因者の可能性がありますが、この結果だけで保因者と断定したり、この病気を否定したりはできません。ただし、症状があって検査を受けた方では、もう1つの変化がこの検査で見つからない場所にある可能性も考えて、結果を読み解きます。
陰性のとき
3つの遺伝子に原因が見つからなかった場合も、この病気が完全に否定されるわけではありません(第4章)。症状や検査の結果に合わせて、腎石灰化のほかの原因を調べる検査や全エクソーム検査などを考えます。
VUSのとき
VUSだけで診断はしません。VUSの考え方はVUS(意義不明変異)の臨床的取り扱いで詳しく解説しています。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。
6. 病的変異が見つかったら、次にできること
原発性高シュウ酸尿症は、型がわかると治療の選び方が大きく変わる病気です。ご本人、ご家族、これからお子さんを考える方それぞれに、知ったあとにできることがあります。治療は、腎臓内科・泌尿器科など専門の医療機関で受けていただきます。
ご本人:型がわかると治療の選び方が変わる
どの型でも、治療の土台は水分を多くとり、尿を薄く保つことです。欧州の専門家の推奨では、大人は1日3.5〜4リットル、子どもは体の表面積1平方メートルあたり1日2〜3リットルを、1日を通してとることを勧めています。腎臓の働きが保たれている方には、クエン酸カリウムの内服も勧められています[5]。3型でも、水分を多くとることとクエン酸の内服が治療の中心です[3]。
1型のビタミンB6(ピリドキシン):1型の30〜50%の方はビタミンB6が効くとされ、p.Phe152Ile・p.Gly170Arg・p.Ile244Thrのいずれかを2本ともにもつ方では、大量のビタミンB6でシュウ酸の産生が減ることが示されています[1]。欧州の専門家の推奨は、1型のすべての方でビタミンB6が効くかを確かめることを勧めています[5]。2型では、ビタミンB6が効くという根拠はありません[2]。
1型の新しい治療薬(RNA干渉を使った薬):肝臓でシュウ酸が作られる流れを抑える薬として、ルマシランは米国と欧州で全年齢の1型に、ネドシランは米国で2歳以上・腎臓の働きが一定以上の1型に承認されています[1]。欧州の専門家の推奨は、遺伝子で1型と確定し、ビタミンB6が効かない方などをこうした薬の対象としています[5]。日本では、2026年10月時点で、どちらの薬も承認されていません。ルマシランは、厚生労働省の未承認薬の検討会議(2025年)で医療上の必要性が高いと評価されましたが、同じ目的の薬(ネドシラン)の開発が進んでいることから、開発の要請は行われていません。ネドシランは、国内で第3相試験の段階とされています(開発企業の公表情報、2026年10月時点で確認)。承認の状況は変わることがあるため、最新の情報は主治医にご確認ください。
どの治療を選べるかは、遺伝子で型と変化が確定していることが出発点になります。「名前がつくと、次の一手が決まる」――これが、この検査を受けるいちばんの意味です。
腎移植を考えるとき:腎臓だけの移植では足りないことがある
1型では、腎臓の働きが大きく落ちたときに、腎臓だけを移植するか、肝臓と腎臓の両方を移植するかを考えます。シュウ酸を作りすぎているのは肝臓なので、腎臓だけを移植すると、移植した腎臓にまたシュウ酸がたまるおそれがあるためです[1]。
欧州の専門家の推奨では、ビタミンB6が効かず、RNA干渉の薬を使えない1型の方には、肝臓と腎臓の移植を組み合わせることを勧めています。腎臓だけの移植は、ビタミンB6が効く一部の方で検討するとしています。また、ルマシランを使っている方で肝臓の移植をしないと決めるときは、慎重に判断すべきとしています[5]。2型では、病気が進んだ方に肝臓の移植が提案されることがあります[5]。3型は、腎不全になる方が少なく、移植の経験はまだ限られています[3]。どの方法が合うかは、型と変化の種類によって変わります。
ご家族:症状のないきょうだいの検査と、腎移植のドナーを考えるとき
ご本人の原因の変化がわかると、ご家族は同じ変化があるかどうかを、ピンポイントで調べられます[1]。とくに、ご両親から同じ確率で受け継ぎうるきょうだいは、症状がなくても調べる意味があります[3]。親・きょうだい・子どもといった第一度近親の方の確率は、保因者の仕組みと子どもへ遺伝する確率でも解説しています。
ご家族からの腎移植を考えるときは、ドナー候補の方がこの病気をもっていないかを確かめておくことが、計画の手がかりになります。症状のない方の検査は、ご本人の同意のもとで、遺伝カウンセリングを受けてから行います。
次のお子さん・結婚や妊娠を考えるきょうだいへ
原発性高シュウ酸尿症は常染色体潜性遺伝で、ご夫婦が同じ原因遺伝子の保因者である場合、お子さんが発症する確率は妊娠ごとに4分の1です。患者さんご本人と同じ原因遺伝子の保因者との間では2分の1となり、ご夫婦とも同じ型の患者さんである場合は、お子さん全員が発症に関わる変化を両親から受け継ぎます。患者さんご本人やきょうだいが結婚・妊娠を考えるときは、パートナーが同じ病気の保因者かどうかを調べることで、お子さんへの確率を具体的に考えられます。当院の拡大版保因者スクリーニングの遺伝子一覧には、AGXT・GRHPR・HOGA1の3つとも含まれています。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラスもあります。
ご家族で原因の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べる出生前検査や、着床前検査が可能とされています[1][2][3]。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください(羊水検査・絨毛検査)。
日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へのコラムで解説しています。もちろん、何も検査をせずに妊娠・出産することも、そのまま選べる選択肢です。どの選択も尊重します。
当院でのその後
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、ご本人の治療をどこで相談するか、ご家族に何を伝えるか、妊娠の計画をどう立てるかを一緒に考えます。遺伝カウンセリング料は30分22,000円(税込)です。
7. 日本の制度:原発性高シュウ酸尿症と小児慢性特定疾病(2026年10月時点)
原発性高シュウ酸尿症は、小児慢性特定疾病の対象疾病(先天性代謝異常の群)に掲載されています(2026年10月時点で、小児慢性特定疾病情報センターと厚生労働省の資料で確認)。医療費の助成を受けるには、認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。遺伝子検査で原因が確定していることは、診断の確かな根拠になります。
8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜・血液のいずれでも、オンライン診療で受けられます。この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
9. 院長コラム
🩺 院長コラム【結石を「取る」から「原因を知る」へ】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
原発性高シュウ酸尿症は潜性遺伝の病気なので、ご両親はふつう症状のない保因者です。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。一方で、型がわかるかどうかで、ビタミンB6を試す意味があるか、新しい薬の対象になるか、移植をどう考えるかが変わる、という点で、原因を知ることの意味がとても大きい病気だと考えています。結石を取り続けるだけでなく、なぜできるのかを知ることが、次の一手につながります。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、保因者検査から出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 尿検査でシュウ酸カルシウムが多いと言われました。原発性高シュウ酸尿症ですか?
原発性高シュウ酸尿症は、遺伝子のデータからの推定で約5万8千人に1人のまれな病気なので、尿検査でシュウ酸カルシウムが出た方の多くは、この病気ではありません。ただし、結石をくり返す、子どものうちに結石や腎石灰化が見つかった、ご家族に同じ病気の方がいるといった場合は、遺伝子検査で原因を確かめる意味があります。
Q2. 尿路結石は遺伝しますか?きょうだいや子どもに遺伝する確率は?
原発性高シュウ酸尿症は常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)です。ご両親が同じ原因遺伝子の保因者のとき、お子さん1人ごとに発症する確率は4分の1、保因者になる確率は2分の1です。このご両親から生まれる患者さんのきょうだいにも同じ確率が当てはまるため、症状がなくても検査が勧められています。ご自身のお子さんへの確率は、ご自身とパートナーの検査結果によって異なります。同じ原因遺伝子の保因者同士なら4分の1、患者さんご本人と同じ原因遺伝子の保因者との間では2分の1です。
Q3. シュウ酸の多い食べ物を控えれば、結石は防げますか?
原発性高シュウ酸尿症では、シュウ酸の多くが体の中で作られるため、食事を控えるだけでは十分ではありません。欧州の専門家の推奨では、厳しい低シュウ酸食は勧めず、シュウ酸がとても多い食品をとりすぎないことを提案しています。治療の土台は水分を多くとることで、型によってはビタミンB6や新しい治療薬が検討されます。
Q4. 原発性高シュウ酸尿症の1型・2型・3型の違いは何ですか?
原因の遺伝子が違い、1型はAGXT、2型はGRHPR、3型はHOGA1です。最も多く重くなりやすいのは1型で、40歳までに腎不全になる割合は1型64%、2型34%、3型3%と示されています。1型にはビタミンB6が効く方がいます。3型は子どものうちに結石で見つかることが多い一方、腎臓の働きが失われることは少ないとされています。
Q5. 子どもに腎石灰化が見つかりました。遺伝子検査は必要ですか?
腎石灰化の原因は原発性高シュウ酸尿症のほかにもあり、尿細管性アシドーシスやバーター症候群なども考えます。尿や血液の検査で原因の見当をつけ、それに合った遺伝子検査を選ぶのが基本です。尿のシュウ酸が多い場合や、結石の成分がシュウ酸カルシウムの場合は、この検査が向いています。
Q6. 検査で変異が見つからなかったら、原発性高シュウ酸尿症ではないのですか?
完全には否定できません。臨床的にこの病気が疑われる方の最大10%は、遺伝子で原因がわからないとされています。尿や血液のシュウ酸の値、画像の結果とあわせて考え、必要に応じてほかの検査を検討します。
Q7. 原発性高シュウ酸尿症の治療薬はありますか?
1型では、肝臓でシュウ酸が作られる流れを抑えるRNA干渉の薬(ルマシラン・ネドシラン)が米国などで承認されています。日本では、2026年10月時点でどちらも承認されておらず、ネドシランは国内で第3相試験の段階とされています。1型の一部の方にはビタミンB6が効きます。どの治療が選べるかは、遺伝子で型と変化が確定していることが出発点になります。
Q8. きょうだいが原発性高シュウ酸尿症です。結婚や妊娠の前にできることは?
まず、ご自身が家族と同じ原因の変化をもつかを調べ、保因者か、症状がなくても病気に当たるかを確認できます。ご自身とパートナーの検査結果をもとに、お子さんへの確率を具体的に考えられます。同じ原因遺伝子の保因者同士なら発症する確率は妊娠ごとに4分の1、患者さんご本人と同じ原因遺伝子の保因者との間では2分の1です。ご家族で原因の変化がわかっていれば、妊娠したときの出生前診断も可能とされています。当院では、保因者検査から羊水検査・絨毛検査まで続けてご相談いただけます。
🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。原発性高シュウ酸尿症の型がわかれば、ご自身の治療の選び方だけでなく、きょうだいの検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
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- [2] Rumsby G, Hulton SA. Primary Hyperoxaluria Type 2. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2008 (Updated 2017 Dec 21). [NCBI Bookshelf NBK2692]
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