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第一度近親者とは?範囲・一親等との違いと血縁度(いとこ・兄弟)の早見表を臨床遺伝専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として、遺伝医学・遺伝学的検査に関する情報を監修しています。

がんの遺伝カウンセリングや遺伝子検査の説明書、診療ガイドラインでは、「第一度近親者に同じ病気の人がいるか」という表現がよく使われます。第一度近親者(first-degree relative)は、遺伝医学で血のつながりの近さを遺伝情報をどれだけ共有しているかという物差しで表した言葉です。一方、日常生活や法律で使う「一親等」「二親等」は世代の距離を数える別の物差しであり、きょうだいは第一度近親者なのに二親等という食い違いが生じます。この記事では、第一度近親者の範囲と「含まれない人」、第二度・第三度近親との違い、いとこや異父きょうだいの血縁度とその計算方法、そして医療の現場でなぜこの区分が問われるのかを、臨床遺伝専門医が一次資料に基づいて解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🧬 第一度近親者・血縁度・親等・家族歴
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 第一度近親者とは誰のことですか?まず結論だけ知りたいです

A. 第一度近親者(first-degree relative)とは、自分と遺伝情報を平均して約50%共有する血縁者で、父母・きょうだい(父母が同じ)・子どもを指します。血縁のない配偶者や養子、父母の片方だけが同じ異父・異母きょうだいは含まれません(異父母きょうだいは第二度近親者です)。法律上の「一親等」は父母と子どもだけなので、きょうだいは第一度近親者でありながら二親等にあたります。

  • ➤範囲 → 父母・同父母きょうだい・子ども(配偶者・養子・異父母きょうだいは含まない)
  • ➤共有率 → 親子は常染色体の半分を必ず受け渡す。きょうだいは平均約50%で、実際には約37〜62%の幅がある
  • ➤第二度・第三度 → 第二度は約25%(祖父母・孫・おじおば・おいめい・異父母きょうだい)、第三度は約12.5%(いとこ・曽祖父母など)
  • ➤血縁度 → 近親度を数値で表したもの。第一度は1/2、いとこは1/8、はとこは1/32
  • ➤医療での意味 → 家族歴・家系図の整理、遺伝性腫瘍のリスク評価、血縁者の遺伝学的検査の基本となる区分

第一度・第二度・第三度近親と血縁度の早見インフォグラフィック

🧬 第一度近親者の基本情報

項目 内容
読み方・英語 だいいちどきんしんしゃ/first-degree relative(略語 FDR)。第一度近親、第1度近親者とも表記
定義 個人にとっての親・きょうだい・子[1]。遺伝情報の共有の程度(期待値1/2)で決まる区分
含まれない人 配偶者、養子・養親(血縁がない)、異父・異母きょうだい(第二度近親)
よく混同される言葉 一親等(法律上の世代の距離)。きょうだいは第一度近親だが二親等
数値で表すと 血縁度(血縁係数 r)=1/2(50%)
使われる場面 家族歴の聴取、家系図の作成、遺伝性腫瘍などのリスク評価、血縁者への遺伝学的検査の検討

※本記事は用語解説です。個別のリスク評価は、家族歴全体と遺伝形式を踏まえて臨床遺伝専門医にご相談ください。

1. 第一度近親者とは?意味と範囲

第一度近親者とは、自分と遺伝情報を平均して約半分共有している血縁者のことで、父母・きょうだい・子どもの3種類だけが該当します。米国国立がん研究所(NCI)の遺伝学用語辞典も、第一度近親者を「個人の親、きょうだい、または子」と定義しています[1]。

この区分の軸は、家族としての近さや同居しているかどうかではなく、遺伝情報をどれだけ共有しているかです。ヒトは父と母から染色体を1本ずつ受け継ぎ、それぞれの遺伝子を2コピー(対立遺伝子)持っています。親から子へは、各遺伝子の2コピーのうち1つが伝わります。この「半分ずつ伝わる」という仕組みを出発点に、血縁者どうしがどのくらい同じ遺伝情報を持っていると期待できるかを段階的に分類したのが、第一度・第二度・第三度という近親度です。

第一度近親者に含まれる人(父母・きょうだい・子)

第一度近親者に含まれるのは、次の3つの関係です。

① 父母(生物学的な両親):自分の遺伝情報の半分は父から、残りの半分は母から受け継いでいます。
② きょうだい(父母が同じ兄・姉・弟・妹):同じ両親から、それぞれ半分ずつを受け継いでいます。
③ 子ども(生物学的な息子・娘):自分の遺伝情報の半分を受け継いでいます。

親と子は「上下」の関係、きょうだいは「横」の関係ですが、どちらも遺伝情報の共有の期待値が1/2であるため、同じ第一度近親者に分類されます。ここが、後で説明する法律上の「親等」と大きく異なる点です。

第一度近親者に含まれない人(配偶者・養子・異父母きょうだい)

配偶者、養子・養親、異父・異母きょうだいは第一度近親者に含まれません。近親度は血縁(遺伝情報の共有)に基づく区分なので、血縁のない配偶者や養子縁組による親子は、家族として最も近い関係であっても対象外になります。

見落とされやすいのが異父・異母きょうだいです。父母のどちらか一方だけが同じきょうだいは、共通の親を1人しか経由しないため、遺伝情報の共有は約25%になります。日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC)のガイドブックも、父母が同じきょうだいは第1度近親者で遺伝情報を50%共有するのに対し、異父・異母の場合は第2度近親者で25%の共有になると説明しています[6]。GeneReviewsの用語集でも、異父母きょうだい(half-sib)は第二度近親者に含まれています[2]。

また、家族歴を記録するときには、生殖補助医療(配偶子提供など)によって「育ての親」と「生物学的な親」が異なる場合もあります。遺伝的リスクの評価では、生物学的な血縁関係に基づいて近親度を考えます。

「遺伝情報の50%を共有」の本当の意味

「50%共有」は、親子では常染色体について毎回成り立つ値ですが、きょうだいでは平均値であり、実際の共有率には幅があります。この違いは、一般向けの解説ではほとんど触れられませんが、遺伝医学では重要なポイントです。

親子の場合、子は親の常染色体の各ペアから必ず1本分(組換えを経たもの)を受け取るため、常染色体上の遺伝情報の半分を親と共有します。一方、きょうだいどうしは、両親から「どちらの半分を受け継いだか」がそれぞれ偶然で決まります。精子や卵子がつくられる減数分裂では、相同染色体の間で相同組換えが起こり、さらにどちらの染色体が配偶子に入るかもランダムに決まるからです。

この「ばらつき」は実際のゲノムデータで確かめられています。全きょうだい4,401組のゲノムを解析した研究では、きょうだい間で共通祖先由来の遺伝情報を共有する割合(同祖性共有、identity-by-descent:IBD)は0.374〜0.617の範囲に分布し、平均0.498、標準偏差0.036でした[3]。つまり、きょうだいの共有率は理論どおり平均すると約50%ですが、ペアによっては約37%のこともあれば約62%のこともあります。

💡 補足:性染色体とミトコンドリアDNAは例外

「親子は半分を共有」という説明は常染色体についてのものです。ミトコンドリアDNAは母親からのみ子に伝わり、Y染色体は父から息子にだけ伝わります。また、X染色体は父から娘には必ず伝わりますが、父から息子には伝わりません。伴性遺伝やミトコンドリア遺伝の病気では、近親度だけでなく遺伝形式に基づいて考える必要があります。

なお、一卵性双生児は1つの受精卵から生じるため、遺伝情報はほぼ同一です。ただし完全に同一ではなく、アイスランドの大規模研究では、一卵性双生児は平均5.2個の発生初期の変異で互いに異なり、約15%のペアでは一方に特有の変異がまとまって見られました[4]。一卵性双生児も続柄としてはきょうだいであり第一度近親者に含まれますが、遺伝情報の共有率は通常の同父母きょうだいの平均約50%ではなく、ほぼ100%という特殊な関係です。

2. 第一度・第二度・第三度近親の違い【早見表】

近親度は1段階遠くなるごとに、遺伝情報の共有の期待値が半分になります。第一度は1/2(50%)、第二度は1/4(25%)、第三度は1/8(12.5%)です。日本の家系図の解説でも、自分と同じ遺伝子を1/2持つ者(両親・同胞・子ども)を第1度近親、1/4持つ者(祖父母・叔父叔母・甥姪・孫)を第2度近親、1/8持つ者(いとこなど)を第3度近親と整理しています[7]。

📊 続柄別:近親度・血縁度・共有率・親等の早見表

続柄(自分から見て) 近親度 血縁度 r 共有率(期待値) 親等(法律)
父・母/子ども 第一度 1/2 50% 1親等
きょうだい(父母が同じ) 第一度 1/2 約50%(実測は幅あり) 2親等
異父・異母きょうだい 第二度 1/4 25% 2親等
祖父母/孫 第二度 1/4 25% 2親等
おじ・おば/おい・めい 第二度 1/4 25% 3親等
曽祖父母/ひ孫 第三度 1/8 12.5% 3親等
大おじ・大おば(祖父母のきょうだい) 第三度 1/8 12.5% 4親等
いとこ 第三度 1/8 12.5% 4親等
はとこ(またいとこ) ― 1/32 約3.1% 6親等
一卵性双生児(特殊) 第一度(続柄上) ほぼ1 ほぼ100% 2親等

※血縁度・共有率は、両親が血縁関係にない家系を前提とした期待値(平均)です。実際の共有率には個人差があり、両親が血縁関係にある家系では表より高くなります。はとこは近親度の呼び方が資料によって異なるため、血縁度のみを示しています。

この表で注目していただきたいのは、「近親度」と「親等」が一致しない行があることです。同じ第二度近親でも、祖父母は2親等、おじ・おばは3親等です。これは、近親度が「遺伝情報の共有の期待値」、親等が「世代をいくつ隔てるか」という別々の物差しで数えられているためです(詳しくは第4章で解説します)。

第二度近親者とは(遺伝情報の共有は約25%)

第二度近親者(second-degree relative)とは、遺伝情報の約1/4を共有する血縁者で、祖父母・孫・おじ・おば・おい・めい・異父母きょうだいが該当します。GeneReviewsの用語集も、第二度近親者を「個人の遺伝子の1/4を共有する血縁者(祖父母、孫、おじ、おば、おい、めい、異父母きょうだい)」と定義しています[2]。

共通しているのは、自分との間に血縁者が1人はさまっているか、共通の親が1人だけという点です。たとえば祖父母は「自分→親→祖父母」と親を1人はさみ、おじ・おばは「自分の親のきょうだい」です。いずれも、半分ずつの受け渡しが2回分重なるため、期待値は1/2×1/2=1/4になります。

第三度近親者とは(遺伝情報の共有は約12.5%)

第三度近親者(third-degree relative)とは、遺伝情報の約1/8を共有する血縁者で、いとこ・曽祖父母・ひ孫・大おじ・大おば(祖父母のきょうだい)などが該当します。遺伝性大腸癌の診療ガイドラインにも、発端者から見た第1・第2・第3度近親者を示す図が掲載されています[8]。

第三度近親者は、臨床的には「家族歴をどこまでさかのぼって聞くか」の目安として重要です。遺伝性のがんの遺伝カウンセリングでは、多くの場合、自分を中心に3世代(第3度近親者)までの病歴を尋ねます[6]。いとこは身近な親族ですが、共有率はきょうだいの4分の1程度であり、「いとこに病気がある」ことの遺伝的な意味は、きょうだいや親の場合とは重みが異なります。

3. 血縁度とは?近親度との関係と求め方

血縁度(血縁係数、coefficient of relationship:r)とは、2人が共通の祖先から受け継いだ同じ遺伝子を共有していると期待される割合を数値で表したもので、第一度近親者では1/2になります。近親度(第一度・第二度…)を、いとこやはとこまで含めて連続的な数値で表したものと考えると理解しやすくなります。

血縁度(r)の意味

血縁度の考え方は、集団遺伝学者シューアル・ライト(Sewall Wright)が1922年に発表した論文「Coefficients of Inbreeding and Relationship(近交係数と血縁係数)」で定式化されました[5]。両親が互いに血縁関係にない(近親交配でない)集団では、血縁係数は、血縁者どうしが共通祖先に由来する同一のアレル(IBDアレル)を共有する割合の期待値にあたります[3]。

ここで大切なのは「共通祖先に由来する」という条件です。ヒトどうしは、血縁がなくても遺伝情報の大部分が共通しています。血縁度が表しているのは、そうした人類共通の部分ではなく、同じ祖先から受け継いだために一致している部分の割合です。そのため、他人どうしの血縁度は0、親子は1/2、一卵性双生児はほぼ1になります。

血縁度の求め方(家系図の経路の数え方)

血縁度は、家系図上で2人を結ぶ共通祖先を経由する経路ごとに「(1/2)の人と人の間のつながりの数乗」を計算し、すべての経路を足し合わせて求めます。これがライトの経路法の考え方です[5]。1本のつながり(親子の受け渡し1回)ごとに、同じ遺伝子が伝わる確率が1/2になるからです。

例1:同父母きょうだい
共通祖先は父と母の2人です。父を経由する経路は「自分→父→きょうだい」でつながりが2本なので(1/2)²=1/4、母を経由する経路も同じく1/4です。合計すると1/4+1/4=1/2になります。異父母きょうだいでは共通祖先が1人だけなので、1/4のみになります。

例2:いとこ
共通祖先は祖父母の2人です。祖父を経由する経路は「自分→親→祖父→おじ(おば)→いとこ」でつながりが4本なので(1/2)⁴=1/16。祖母を経由する経路も1/16です。合計は1/16+1/16=1/8です。

例3:はとこ
共通祖先は曽祖父母の2人です。1経路あたりのつながりは6本なので(1/2)⁶=1/64、2経路で合計1/32(約3.1%)になります。

共通祖先を見つける家系図で2人の共通の祖先
▶
経路ごとに数えるつながりの数n
▶
(1/2)のn乗を計算受け渡し1回ごとに1/2
▶
全経路を合計これが血縁度r

この計算は、両親や共通祖先自身が血縁婚から生まれていない場合を前提としています。家系の中に血縁婚が重なっている場合は、共通祖先の近交係数を補正に加える必要があり、同じ続柄でも血縁度は表の値より高くなります[5]。

続柄別の血縁度(いとこ・異父兄弟・孫・はとこ)

検索で特に多い質問に、結論から答えます。

いとこ同士の血縁度は? → 1/8(12.5%)で、第三度近親者です。自分と親の血縁度(1/2)と比べると4分の1です。
異父(異母)兄弟の血縁度は? → 1/4(25%)で、第二度近親者です。同父母きょうだい(1/2)の半分です。
孫の血縁度は? → 1/4(25%)で、第二度近親者です。祖父母から見ても同じ値です。
叔父(叔母)と姪(甥)の血縁度は? → 1/4(25%)で、第二度近親者です。
はとこの血縁度は? → 1/32(約3.1%)です。

これらはいずれも期待値です。きょうだいで示したように、実際に共有している割合には個人差があり、関係が遠くなるほど、ゲノム上で共有する区間がまったく検出されないペアも出てきます[3]。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【血縁度は「病気が遺伝する確率」ではない】

血縁度1/2という数字を見て、「親に病気があれば子は50%の確率で同じ病気になる」と読み取られることがあります。しかし、血縁度はゲノム全体で共通祖先由来の遺伝情報を共有する割合の期待値であり、特定の病気が遺伝する確率とは別のものです。

遺伝医学では、特定の病気が遺伝する確率は遺伝形式によって決まります。たとえば常染色体潜性(劣性)遺伝の病気では、患者さんのきょうだい(血縁度1/2)が同じ病気を発症する確率は、両親がともに保因者の場合で1/4です。さらに、病的バリアントを持っていても発症するかどうかは浸透率に左右されます。近親度や血縁度は「誰の情報がどれくらい重いか」を整理する物差しであり、個人のリスクそのものは、家族歴全体と遺伝形式を合わせて評価することが重要です。

補足:生物学の教科書でいう「血縁度」と近交係数

生物学(進化生物学)の教科書にも「血縁度」という言葉が登場します。ミツバチなどの社会性昆虫の利他行動を説明する血縁淘汰の文脈で使われる概念で、考え方の出発点は同じですが、集団平均を基準とした定義など、扱い方に違いがあります。本記事では、ヒトの家系と遺伝医療で用いる血縁度に限って解説しています。

血縁度とよく似た言葉に近交係数(inbreeding coefficient:F)があります。血縁度が「2人の関係」を表すのに対し、近交係数は「その2人の間に生まれる子ども」について、両親から受け継いだ2つのアレルが同じ祖先由来である確率を表します[5]。両親が血縁関係にない場合、子の近交係数は両親の血縁度の半分になり、たとえばいとこ同士(血縁度1/8)の間に生まれる子の近交係数は1/16です。近交係数が高いと、同じ祖先由来の遺伝子がそろう(ホモ接合になる)領域が増え、ゲノム上ではホモ接合領域(ROH)として観察されることがあります。

誤解①「きょうだいは必ず50%同じ」

50%は平均値です。ゲノム解析では、きょうだいの共有率は約37〜62%に分布していました。親子とは違い、きょうだいの共有率はペアごとに異なります。

誤解②「一卵性双生児は100%同一」

遺伝情報はほぼ同一ですが、発生初期に生じた変異によりわずかな違いがあります。平均5.2個の違いが報告されています。

誤解③「血縁度1/2=病気が遺伝する確率50%」

血縁度はゲノム全体の共有の期待値です。病気が遺伝する確率は遺伝形式と浸透率で決まり、血縁度とは別に評価します。

誤解④「第一度近親=一親等」

一親等は父母と子のみです。きょうだいは第一度近親ですが二親等で、物差しが違うため一致しません。

4. 第一度近親と「一親等」の違い

第一度近親は遺伝情報の共有の程度を表す医学用語、一親等は世代の距離を表す法律用語で、物差しがまったく異なります。そのため、きょうだいは第一度近親でありながら二親等になります。

親等は法律上の世代距離、近親度は遺伝情報の共有度

JOHBOCのガイドブックは、「第1度近親者」「第2度近親者」という言い方は遺伝情報の共有の程度を表しており、法的な親類関係の遠近を表す「1親等」「2親等」とは異なると明記しています[6]。家族性腫瘍の家系図解説でも、法律などで用いる「親等」と医学で用いる「近親」は定義が異なり、親等は本人からの距離を示すもので、同胞は2親等、いとこは4親等であると整理されています[7]。

親等は、自分から相手まで世代をいくつ上り下りするかで数えます。親や子は1世代なので1親等、祖父母や孫は2世代なので2親等です。横のつながりであるきょうだいは、「自分→親→きょうだい」と一度親までさかのぼってから下るため、2親等になります。いとこは「自分→親→祖父母→おじ・おば→いとこ」で4親等です。

一方、近親度は遺伝情報がどれだけ受け渡されたかで決まります。親もきょうだいも共有率の期待値は1/2なので、同じ第一度です。親等が「距離の物差し」、近親度が「共有量の物差し」と考えると、両者のずれが理解しやすくなります。

きょうだいは「第一度近親」なのに「二親等」

最も誤解されやすいのが、きょうだいの位置づけです。医療機関の問診票で「第一度近親者にがんの方はいますか」と聞かれたときに、「一親等=親と子だけ」と考えてきょうだいを除いてしまうと、家族歴として重要な情報が抜け落ちます。遺伝のリスク評価では、きょうだいは親や子と同じ重みを持つ第一度近親者として扱われます。

⚠️ 問診票・家族歴を記入するときの注意

「第一度近親者」と書かれていたら、父・母・きょうだい(父母が同じ)・子どもを含めてください。異父・異母きょうだいは第二度近親者として、祖父母・おじ・おばと同じ段に書くのが正確です。養子縁組や配偶子提供などで生物学的な親子関係が異なる場合は、その事実を医療者に伝えることで、より正確なリスク評価につながります。

5. 医療で第一度近親者が問われる理由

医療で第一度近親者が問われるのは、血縁者に同じ病気がある場合、その血縁者が近いほど自分と共通する遺伝的要因を持っている可能性が高く、遺伝性疾患のリスク評価の手がかりになるからです。家族歴の聴取、家系図の作成、遺伝学的検査の検討は、いずれもこの近親度を基本に組み立てられます。

家族歴を聞く3世代・第三度まで
▶
家系図を作る標準記号で記録
▶
近親度で整理誰が・何の病気・何歳
▶
リスク評価検査やサーベイランスを検討

家族歴と家系図:3世代(第三度近親)まで確認する

遺伝医療では、自分を中心に3世代、つまり第三度近親者までの家族歴を確認するのが基本です。JOHBOCのガイドブックも、遺伝性のがんの遺伝カウンセリングでは多くの場合、自分を中心に3世代(第3度近親者)までを尋ねるとしています[6]。

聞き取った家族歴は、国際的に標準化された記号を使って家系図(pedigree)に記録します。家系図の記載法は米国遺伝カウンセラー学会(NSGC)の推奨が標準とされ、2008年の更新版が現在も有効とされたうえで、2022年に性とジェンダーの記載に関する部分が改訂されました[9][10]。家系図では、遺伝的な評価の起点となる人を発端者と呼び、そこから見た近親度で血縁者を整理します。

家族歴で特に役立つのは、「誰が(近親度と父方・母方の別)」「何の病気に」「何歳で」という3点です。同じ「いとこにがんがある」という情報でも、父方と母方のどちらか、何歳で何のがんか、によって意味が変わります。

遺伝性腫瘍(HBOC・リンチ症候群)のリスク評価と第一度近親

遺伝性腫瘍の診療では、家族の中でどの近親度の人が、どのがんを、何歳で発症したかが、遺伝学的検査を検討するかどうかの判断材料になります。代表的な疾患が遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)とリンチ症候群で、いずれも国内外の診療ガイドラインで、第一度・第二度近親者などの発症歴が評価項目に使われています[6][8]。

一般に、第一度近親者の発症は第二度・第三度近親者の発症よりも重みが大きく扱われます。共有する遺伝情報が多いほど、同じ病的バリアントを共有している可能性が高くなるためです。ただし、具体的な受検基準(何人・何歳未満など)は疾患やガイドラインの版によって異なり、改訂もされます。ここに挙げた一般論だけで自分が検査の対象かどうかを判断しないでください。家族歴全体を臨床遺伝専門医が評価することで、判断が可能になります。

血縁者への遺伝学的検査(カスケード検査)と保因者

家族の中で病的バリアントが見つかった場合、その情報をもとに近い血縁者から順に検査を検討していく方法を「カスケード検査(カスケードスクリーニング)」といいます。近親度は、この「誰から順に検討するか」を決める基本になります。

カスケード検査では、まず第一度近親者(親・きょうだい・子)が対象として検討され、その結果に応じて第二度・第三度の血縁者へと広がっていきます。ある血縁者が同じバリアントを持っている確率は、近親度だけでなく遺伝形式と、間の世代の検査結果によって変わります。たとえば常染色体顕性(優性)遺伝では、病的バリアントを持つ人の子は1/2の確率でそのバリアントを受け継ぎます。

常染色体潜性(劣性)遺伝の病気では、発症していない保因者の存在が重要になります。患者さんのきょうだいや親族は保因者である可能性があり、その評価にも近親度の考え方が使われます。

また、血縁者どうしの結婚(近親婚・血族婚)では、夫婦が同じ祖先から同じ潜性の病的バリアントを受け継いでいる可能性があるため、常染色体潜性遺伝の病気をもつ子が生まれる可能性が一般集団より高くなります。米国遺伝カウンセラー学会の実践資料でも、いとこ婚の子に見られるリスクの増加は主に常染色体潜性疾患によるものと整理されています[11]。ただし、その増加の程度は家系や集団によって異なり、個々のカップルのリスクを近親度だけで決めることはできません。家族歴や民族的背景を踏まえ、遺伝カウンセリングで個別に評価することが勧められます。

6. よくある質問(FAQ)

Q1. 配偶者は第一度近親者に入りますか?

入りません。第一度近親者は遺伝情報の共有に基づく区分で、親・きょうだい・子を指します。配偶者は血縁がないため、どの近親度にも含まれません。同じ理由で、養子と養親も近親度の対象外です。法律上、配偶者は親族にあたりますが、親等はありません。

Q2. 異父(異母)兄弟は第何度近親ですか?

第二度近親者です。共通の親が1人だけなので、遺伝情報の共有の期待値は1/4(25%)で、血縁度も1/4です。父母が同じきょうだい(第一度近親者、1/2)の半分にあたります。なお、法律上は同父母きょうだいと同じく二親等です。

Q3. いとこ同士の血縁度はどれくらいですか?

いとこ同士の血縁度は1/8(12.5%)で、第三度近親者にあたります。共通の祖父母2人を経由する経路がそれぞれ1/16で、合計1/8になります。これは両親が血縁関係にない場合の期待値で、実際の共有率には個人差があります。法律上は四親等です。

Q4. 近親婚は何親等まで禁止されていますか?

日本の民法第734条では、直系血族または三親等内の傍系血族の間の婚姻が禁止されています(養子と養方の傍系血族との間は例外)。親子・祖父母と孫・きょうだい・おじおばと甥姪は婚姻できませんが、四親等のいとこ同士は婚姻できます。遺伝的には、いとこは第三度近親者で血縁度は1/8です。いとこ婚で子に生じうる遺伝的なリスクは、家系ごとに遺伝カウンセリングで評価することが勧められます。

Q5. 一卵性双生児は第一度近親ですか?

はい。続柄としてはきょうだいなので第一度近親者に含まれます。ただし、1つの受精卵から生じるため遺伝情報はほぼ同一で、血縁度はほぼ1です。通常の同父母きょうだいが平均約50%を共有するのに対し、一卵性双生児はほぼ100%を共有する特殊な関係です。なお完全に同一ではなく、発生初期に生じた変異によって平均5.2個の違いがあると報告されています。

Q6. 家族歴はどこまで把握すればよいですか?

遺伝医療では、自分を中心に3世代、つまり第三度近親者(いとこ・曽祖父母など)までの家族歴を確認するのが基本です。父方・母方を分けて、誰が・何の病気に・何歳でかかったかを、わかる範囲で整理しておくと、医療者が遺伝的なリスクを評価しやすくなります。わからない項目があっても問題ありません。

7. まとめ

第一度近親者とは、自分と遺伝情報を平均して約50%共有する父母・きょうだい・子どものことです。配偶者・養子・異父母きょうだいは含まれません。

近親度は1段階ごとに共有率が半分になり、第二度(祖父母・孫・おじおば・おいめい・異父母きょうだい)は約25%、第三度(いとこ・曽祖父母など)は約12.5%です。これを数値で表したものが血縁度で、家系図の経路ごとに(1/2)のつながりの数乗を合計して求めます。いとこは1/8、はとこは1/32です。ただし、きょうだいの共有率は実際には約37〜62%の幅があり、一卵性双生児も完全には同一でないなど、これらの値は期待値であることを押さえておく必要があります。

法律上の親等は世代の距離を表す別の物差しで、きょうだいは第一度近親者なのに二親等です。医療で家族歴を伝えるときには、この違いに注意して、きょうだいを含めて記入してください。また、血縁度は病気が遺伝する確率そのものではなく、個人のリスクは遺伝形式と家族歴全体を踏まえて評価されます。家族歴に気になる点がある場合は、遺伝カウンセリングで、臨床遺伝専門医に家系全体を評価してもらうことができます。

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参考文献

  • [1] National Cancer Institute. NCI Dictionary of Genetics Terms: first-degree relative. [NCI]
  • [2] GeneReviews Glossary: second-degree relative. NCBI Bookshelf. [NCBI Bookshelf]
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  • [7] 家系図について. 家族性腫瘍. 2004;4(1):39. [J-STAGE]
  • [8] 大腸癌研究会. 遺伝性大腸癌診療ガイドライン2020年版 付録. [大腸癌研究会]
  • [9] Bennett RL, French KS, Resta RG, Doyle DL. Standardized human pedigree nomenclature: update and assessment of the recommendations of the National Society of Genetic Counselors. J Genet Couns. 2008;17(5):424-433. [DOI 10.1007/s10897-008-9169-9]
  • [10] Bennett RL, French KS, Resta RG, Austin J. Practice resource-focused revision: Standardized pedigree nomenclature update centered on sex and gender inclusivity: A practice resource of the National Society of Genetic Counselors. J Genet Couns. 2022;31(6):1238-1248. [PubMed 36106433]
  • [11] Genetic counseling and screening of consanguineous couples and their offspring practice resource: Focused Revision. J Genet Couns. 2021. [PubMed 34309119]
  • [12] 民法(明治29年法律第89号)第734条(近親者間の婚姻の禁止). [e-Gov法令検索]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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