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シスチン尿症の遺伝子検査(3遺伝子パネル)|繰り返すシスチン結石の原因と遺伝、ご家族への影響

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

シスチン尿症の遺伝子検査

シスチン尿症は、腎臓でシスチンというアミノ酸を体に取り戻すしくみがうまく働かず、尿の中のシスチンが増えて結石ができやすくなる遺伝性の病気です。若いうちから尿路結石を繰り返す方、結石の分析で「シスチン結石」と言われた方は、この病気の可能性があります。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、再発予防の方針だけでなく、きょうだいやお子さん、これからの妊娠の計画を考えるときにも、ずっと使える情報になります。このページでは、シスチン尿症の症状・遺伝のしかたと、原因遺伝子SLC3A1・SLC7A9・PREPLを調べる遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

シスチン尿症の原因遺伝子SLC3A1・SLC7A9と、隣り合うPREPLの3遺伝子を一度に調べます。病名の確定とタイプ(A・B)の分類、2番染色体の欠失による低緊張・シスチン尿症症候群の手がかりがわかります。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

若いうちから尿路結石を繰り返す方、結石の分析でシスチン結石と言われた方、ご家族にシスチン尿症の方がいる方、結婚や妊娠を考えていて家族歴が気になる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

結果までは2〜3週間です(至急オプションで約7日短縮)。検体は血液・唾液・頬の粘膜などで、唾液・頬の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。検査費用はお問い合わせください。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。ご両親とも保因者なら、きょうだいが発症している確率は4分の1です。ご家族の検査や、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を、一度で知る /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

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1. シスチン尿症とは

シスチン尿症は、腎臓の尿細管でシスチンなどのアミノ酸を体に取り戻す「運び役」のたんぱく質がうまく働かないために、尿の中のシスチンが増え、結石ができやすくなる遺伝性の病気です。英語ではcystinuriaといいます[1][2]。

シスチンは、アミノ酸のシステインが2つつながったものです。健康な人では、腎臓でいったんこし出されたシスチンのほとんどが、尿細管で体に取り戻されます。シスチン尿症では、シスチンと一緒に、性質の似たほかのアミノ酸(二塩基性アミノ酸)も尿に出てしまいます。このうち結石を作るのはシスチンで、シスチンは尿に溶けにくいため、濃くなると結晶になり、腎臓・尿管・膀胱に結石を作ります[1][2]。

欧州腎臓病ネットワーク(ERKNet)などがまとめた診療の推奨によると、シスチンが尿に溶ける量は、尿が酸性(pH6未満)では1リットルあたり250mg未満ですが、アルカリ性(pH7.5超)では500mgまで増えます。健康な人の尿に出るシスチンは1日50mg以下ですが、シスチン尿症の方では1日600〜1,400mgと、溶けきれない量になるのがふつうです[1]。

どれくらいの人がなる病気か

シスチン尿症は世界全体で約7,000人に1人とされ、地域や民族によって頻度が大きく違います[1][2]。総説では、イスラエルのリビア系ユダヤ人で2,500人に1人、アメリカで15,000人に1人、スウェーデンで10万人に1人と、大きな幅が示されています[2]。日本では、小児慢性特定疾病情報センターの解説で約2万人に1人とされています(2026年10月時点で確認)。

尿路結石全体のなかでは、シスチン結石は大人の結石の1〜2%、子どもの結石の6〜8%を占めるとされます[2]。フランスの研究では大人で約1%、子どもで4〜5%と報告されており、数字は調べた集団によって変わります[1]。結石の病気のなかでは少数ですが、子どもや若い人の結石では、見逃せない原因のひとつです。

シスチン症(シスチノーシス)・ホモシスチン尿症との違い

名前がよく似ていますが、次の2つはシスチン尿症とはまったく別の病気です。原因遺伝子も、調べる検査も違います。

🔤 名前の似た病気との違い

病名 何が起きているか
シスチン尿症(このページ) 腎臓でシスチンを取り戻す運び役がうまく働かず、尿のシスチンが増えて結石ができる[1]
シスチン症(シスチノーシス) 細胞の中の小さな袋(リソソーム)にシスチンがたまり、腎臓や目などに障害が起こる。原因遺伝子はCTNS
ホモシスチン尿症 アミノ酸(メチオニン)の代謝の途中が止まり、ホモシステインがたまる代謝の病気

※シスチン症・ホモシスチン尿症の詳しい内容は、それぞれのページで解説しています。

2. 症状と経過:若いうちから繰り返す結石

シスチン尿症の症状は、結石による症状がほとんどです。多くの方は20歳までに最初の結石ができ、その後も結石を繰り返しやすいのが特徴です[1][2]。

主な症状

  • ●結石が尿管に詰まったときの、わき腹から背中・下腹部にかけての強い痛み(腎疝痛)
  • ●血尿(目で見てわかる血尿、検査でわかる血尿)
  • ●尿路感染症(頻尿・排尿時の痛み・発熱)
  • ●結石が尿の流れをふさぐことによる腎臓の働きの低下(閉塞性腎不全)

小児慢性特定疾病情報センターの解説では、乳児期には症状がなく、10〜30歳で発症することが多いとされています。症状が出る前に、ご家族の検査などで尿のシスチンの増加から見つかることもあります。

何歳ごろ発症するか

最初の結石ができた年齢の中央値は、欧州の研究で13歳、フランスの研究で16歳でした[1]。総説では、80%以上の方が20歳までに最初の結石を作るとされる一方、生涯結石を作らない方も約6%いるとされています[2]。大人になってから診断される方もいます[1]。

男女差については、男性のほうが結石が多く、早く、重くなりやすいとする報告があります[2][3]。ただし、ほかの研究ではこの差は確かめられておらず[1]、性別だけで先の見通しを決めることはできません。

結石の特徴と見つけ方

尿を顕微鏡で見ると、シスチンの結晶は六角形の形をしていて、これがシスチン尿症を見つける手がかりになります[2]。結石を探す画像検査は、造影剤を使わないCTが最も確実で、子どもや、結石を繰り返す方の経過観察には超音波検査が勧められています[1]。

診断の決め手は、取り出した結石の成分分析でシスチンとわかること、または尿のシスチンの量を測ることです。欧州の診療の推奨では、遺伝子検査は診断に必須ではないとされています[1]。そのうえで、遺伝子検査がどんなときに役立つかは、第5章でご説明します。

腎臓への影響と見通し

シスチン尿症は、結石を繰り返すうちに腎臓の働きが落ちることがある病気です。フランスの大人314人(平均38.7歳)を調べた研究では、26.8%で腎臓の働きの目安(eGFR)が60未満に下がり、12%に尿たんぱくがみられました。別の研究ではeGFR60未満は17.8%で、高血圧は大人の29〜51%にみられたと報告されています[1]。イタリア・スペインなどの患者を調べた研究でも、17%で腎臓の働きがはっきり低下していました[3]。

結石の痛みがおさまっても、治療と経過観察を続けることが、腎臓を守るうえで大切です。一方で、結石の起こりやすさは、遺伝子のタイプ(AかBか)だけでは予測できないとされています[1][3]。

3. 治療と再発予防:生涯続ける管理

シスチン尿症の治療の目標は、尿の中のシスチンを溶ける範囲にとどめ、新しい結石を作らないことです。遺伝子の働きそのものを治す治療は、今のところありません。欧州の診療の推奨(2021年)の内容は、次のとおりです[1]。

💧 欧州の診療の推奨(2021年)による再発予防の目安

項目 目安
水分(尿の量) 大人は1日の尿量3リットル以上。子どもは体表面積1.73m²あたり1日2リットル超
尿のアルカリ化 尿のpHを7.5〜8.0に保つ。薬はクエン酸カリウムが重炭酸ナトリウムより勧められる
塩分 大人で食塩1日約6g(ナトリウム約100mEq)を目安にとりすぎない
たんぱく質 大人は理想体重1kgあたり1日1g未満。子どもでは制限しない
チオール薬(チオプロニン、D-ペニシラミン) 水分・食事・尿のアルカリ化をきちんと続けても結石が再発する場合に使う。妊娠中は使わない

※文献[1]による。実際の治療は、泌尿器科・腎臓内科の主治医と相談して決めます。

日本では、チオラ錠(一般名チオプロニン)の効能・効果に「シスチン尿症」が含まれています。添付文書では、水分と尿のアルカリ化で尿のシスチン濃度を溶ける量(一般に1リットルあたり250mg)未満に保てない場合に使うことを検討する、とされています(2026年10月時点、2024年7月改訂の添付文書で確認)。

できてしまった結石が大きい場合や、尿の流れをふさいでいる場合は、泌尿器科で結石を砕いたり取り出したりする治療が行われます。

4. 原因と遺伝のしかた

シスチン尿症は、主にSLC3A1とSLC7A9という2つの遺伝子の変化で起こり、基本は常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します[1][2]。

原因遺伝子SLC3A1とSLC7A9

尿細管でシスチンを取り戻す運び役は、2つのたんぱく質が組み合わさってできています。2番染色体(2p21)にあるSLC3A1遺伝子がrBATというたんぱく質を、19番染色体にあるSLC7A9遺伝子がb0,+ATというたんぱく質を作ります。どちらも、細胞の膜で物質を運ぶSLC(溶質キャリア)と呼ばれるたんぱく質の仲間です[1][2]。

今は、原因遺伝子で分ける分類が使われています。SLC3A1の変化によるものを「タイプA」、SLC7A9の変化によるものを「タイプB」と呼びます[1][3]。2002年の研究では、患者さんのデータベースのうちタイプAが45.2%、タイプBが53.2%、両方の遺伝子に1つずつ変化がある「タイプAB」が1.6%でした[3]。総説では、日本人の集団ではSLC7A9のp.Pro482Leuという変化が、SLC7A9の変化の84%以上を占めたと紹介されています[2]。

常染色体潜性遺伝:きょうだい・お子さんへの確率

常染色体潜性(劣性)遺伝では、対になった2本の遺伝子の両方に変化があると発症します。1本だけに変化がある人は保因者と呼ばれます。ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに、発症する確率が4分の1、保因者になる確率が2分の1、どちらも受け継がない確率が4分の1です。上のお子さんの結果によって、下のお子さんの確率が変わることはありません。

2本の遺伝子に、それぞれ違う変化があることもあります(複合ヘテロ接合)。総説では、変化が3つ見つかるまれな例もあり、ご両親の検査で変化がどちらから来たかを確かめることが勧められています[2]。

保因者でも尿のシスチンが増えることがある(タイプB)

SLC3A1の保因者は、ほとんどの方で尿のシスチンが正常です。これに対して、SLC7A9の保因者では尿のシスチンが増えていることが多く、2002年の研究では、SLC7A9の保因者のうち尿のアミノ酸の出方が正常だったのは14%で、残りはシスチンなどの排泄が増えるタイプでした(タイプIIIが80.5%、タイプIIが5.5%)[3]。欧州の診療の推奨では、1日の尿のシスチンの目安を、SLC3A1の保因者で100mg未満、SLC7A9の保因者で40〜400mg、患者さんで400mg超としています[1]。

総説では、タイプBでは保因者にも影響が現れうるため、きょうだいが結石を作る確率が4分の1よりやや高くなる可能性が指摘されています[2]。「保因者だから尿は正常」とは言い切れないのが、タイプBの特徴です。

2p21欠失と低緊張・シスチン尿症症候群(PREPL遺伝子)

PREPL遺伝子は、2番染色体(2p21)でSLC3A1のすぐ隣にあります。SLC3A1とPREPLを一緒に含む小さな欠失を両親から1本ずつ受け継ぐと、シスチン尿症に加えて、生まれたときからの筋緊張の弱さ(低緊張)、成長ホルモンの不足、哺乳の弱さと体重の増えにくさ、その後の食欲の増加と急な体重増加などがみられる「低緊張・シスチン尿症症候群」になります。2006年の研究では11人の患者さんが報告され、シスチン尿症以外の症状はPREPLの欠失によると考えられました[4]。

欠失がさらに広い場合は、新生児のけいれんや重い発達の遅れを伴う「2p21欠失症候群」として報告されています[2]。このように、隣り合う複数の遺伝子が一緒に失われて起こる病気を隣接遺伝子症候群といいます。欧州の診療の推奨は、シスチン尿症にほかの症状を伴う方では、2p21の欠失を調べるよう勧めています[1]。

5. どんな人がこの検査を受けるとよいか

シスチン尿症と診断された方、またはシスチン尿症が疑われる方で、原因を確定したい方、ご家族のことや妊娠を考えたい方に向く検査です。欧州の診療の推奨は、診断の確定、タイプの分類、ご家族への説明のために遺伝子検査を行うことを勧めています[1]。

結石を繰り返す方・若くして結石ができた方

子どもや若い人の結石、何度も繰り返す結石は、シスチン尿症を考えるきっかけになります。病名がはっきりすると、水分の目標、尿のアルカリ化、チオール薬を使うかどうかなど、再発予防の方針が決まります。すでに結石の分析でシスチン結石とわかっている方でも、原因遺伝子を確かめることで、タイプ(AかBか)とご家族への影響がはっきりします[1]。

ご家族にシスチン尿症の方がいる方

きょうだいがシスチン尿症の場合、ご自身も同じ組み合わせを受け継いでいる可能性があります。症状がなくても、尿のシスチンが多ければ結石の予防を早くから始められます。ご家族の原因遺伝子がわかっていれば、同じ場所を調べることで、ご自身が発症する組み合わせか、保因者か、受け継いでいないかを確かめられます。

生まれたときから筋緊張が弱く、シスチン尿もある方

赤ちゃんのころからの低緊張や成長の問題に、シスチン尿症を伴う場合は、低緊張・シスチン尿症症候群が考えられます[4]。この検査では、SLC3A1と一緒にPREPLも調べます。

結婚・妊娠を考えている方

結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。ご自身がシスチン尿症の方、きょうだいにシスチン尿症の方がいる方は、ご自身とパートナーの遺伝子の状態を妊娠の前に知っておくと、選べることが増えます。当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)と男性版714遺伝子には、SLC3A1とSLC7A9が含まれています。パートナーの方が保因者かどうかを調べるときの選択肢になります。

この検査より別の検査が向いている場合

シスチン尿症が疑われる場合は、結石の成分分析や尿中シスチンの測定が診断の基本です。原因遺伝子や遺伝形式を確認したい場合には、この遺伝子検査が選択肢になります。ただし、結石の成分がシスチンではない場合や、結石以外の症状が多い場合は、別の検査のほうが向いていることがあります。

🔍 状況に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
シスチン結石・尿のシスチン増加、ご家族にシスチン尿症の方 このページの検査(SLC3A1・SLC7A9・PREPL)
結石の成分がシュウ酸カルシウムで、子どものころから結石を繰り返す 原発性高シュウ酸尿症NGS遺伝子パネル検査
シスチン尿症に、筋緊張の低下や発達の遅れなど多くの症状を伴い、欠失の広がりを知りたい マイクロアレイ染色体検査(CMA)を組み合わせることがある
腎臓以外の症状も多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)
ご自身ではなく、妊娠前にカップルで保因者かどうかを知りたい 遺伝子ブライダルチェック(保因者検査)

※どの検査が合うかは、結石の成分・症状・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。シュウ酸の結石を繰り返す病気は原発性高シュウ酸尿症で解説しています。

\ 妊娠の前に知れば、選べることが増えます /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご夫婦とも保因者だった場合、妊娠したときの出生前診断(羊水検査・絨毛検査)のご相談まで院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

パートナーと受ける保因者検査について | どの検査がよいか迷う方へ

6. この検査で調べる遺伝子

この検査では、シスチン尿症の原因遺伝子SLC3A1・SLC7A9と、低緊張・シスチン尿症症候群に関わるPREPLの3遺伝子を、次世代シークエンサーで一度に調べます。総説では、この2つの原因遺伝子での変化の検出率は85%を超えるとされています[2]。

🧬 シスチン尿症遺伝子パネル検査で調べる3遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
SLC3A1 シスチン尿症(タイプA) 常染色体潜性(劣性)遺伝
SLC7A9 シスチン尿症(タイプB) 常染色体潜性(劣性)遺伝。保因者でも尿のシスチンが増えることがある
PREPL 低緊張・シスチン尿症症候群(SLC3A1とPREPLを含む2p21の欠失) 常染色体潜性(劣性)遺伝

※対象遺伝子は当院の検査内容による。病気と遺伝のしかたは文献[1][2][3][4]による。

調べ方

遺伝子のたんぱく質を作る部分(エクソン)と、その境目(スプライス部位)の配列を読み、一塩基の変化や小さな挿入・欠失を探します。調べる遺伝子の領域の99%以上を、20回以上重ねて読み取る精度で調べます。読み取りの質が十分でない部分は、サンガー法という別の方法で確かめます。

遺伝子がまるごと、または一部が失われたり(欠失)、重なったり(重複)する変化も調べます。遺伝子1つまるごとの欠失・重複は血液・頬の粘膜の検体で、2つ以上続くエクソンの欠失・重複は血液の検体で見つけることができます。見つかった欠失・重複は、qPCR法やMLPA法という別の原理の方法でもう一度確かめてから報告します。

7. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、3つの遺伝子の配列の変化と、遺伝子単位の大きな欠失・重複です。ただし、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●見つけにくい変化:エクソン1つだけの欠失・重複は、見つかることもありますが、ふだんは検出の対象外です。
  • ●調べていない種類の変化:染色体の一部が入れ替わる変化(転座・逆位)、繰り返し配列の伸長、遺伝子の働きを調節する領域の多く、エクソンから離れたイントロンの奥の変化は調べていません。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけるための検査ではありません。また、腫瘍の組織は検査の対象外です。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知見ではまだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因となる変化が見つからなくても、シスチン尿症を完全に否定することはできません。結石の成分分析や尿のシスチンの測定とあわせて判断します。

8. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。

原因がわかったとき:病名の確定と再発予防

同じ原因遺伝子の2つのコピー(両アレル)に病的な変化が見つかれば、シスチン尿症の診断を遺伝学的に裏づけることができます。タイプ(A・B・AB)がわかり、水分・尿のアルカリ化・食事・チオール薬など、主治医と再発予防の方針を立てる土台になります[1]。PREPLを含む欠失が見つかった場合は、低緊張・シスチン尿症症候群として、成長や栄養など結石以外の面も含めた見守りを考えます[4]。

ご家族への影響と、ご家族が検査を受けるとき

あなたの1回の検査が、ご両親・きょうだい・お子さんが自分のことを考える手がかりになります。ご両親がともに保因者なら、きょうだいがシスチン尿症である確率は4分の1、保因者である確率は2分の1です。ご家族の原因がわかっていると、ほかのご家族は同じ場所を調べることで、受け継いでいるかどうかを確かめられます。症状がなくても尿のシスチンが多ければ、早くから結石の予防を始められます。

陰性だったとき

3つの遺伝子に原因となる変化が見つからなかった場合でも、シスチン尿症を完全に否定することはできません(第7章)。結石の成分分析や尿のシスチンの量とあわせて、もう一度考えます。結石の成分がシスチンでない場合は、ほかの遺伝性の結石の病気の検査を考えます(第5章)。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで確定診断やご家族の発症リスクの判定には使いません。ただし、病気との関係を調べるため、ご家族にも同じ変化があるかを確認することがあります。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。結果の伝え方については、当院の二次的所見の開示方針もあわせてご覧ください。

妊娠を考えている方

ご自身がシスチン尿症で妊娠を考えている場合は、治療の薬を妊娠前に主治医と見直すことが大切です。欧州の診療の推奨では、チオール薬は妊娠中には使わないとされています[1]。

お子さんへの影響は、パートナーの方が保因者かどうかで大きく変わります。パートナーの方が保因者でなければ、お子さんが常染色体潜性遺伝のシスチン尿症になる可能性は低くなります。パートナーの方の検査には、拡大版保因者スクリーニングが選択肢になります。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(単独では受けられません)。

当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。出生前診断を考えるかどうか、考える場合にどう進められるかも含めて、妊娠を考えている段階からご相談いただけます。

9. 日本の制度(2026年10月時点)

シスチン尿症は、小児慢性特定疾病の対象疾病に掲載されています。小児慢性特定疾病情報センターでは、疾患群「先天性代謝異常」の大分類「アミノ酸代謝異常症」に「シスチン尿症」が載っています(2026年10月時点で確認)。

18歳以降に使う指定難病の医療費助成の対象かどうかは、難病情報センターの最新の一覧でご確認ください。どちらの制度も、医療費の助成を受けるには認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、小児慢性特定疾病情報センター・難病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

薬については、チオラ錠(チオプロニン)の効能・効果にシスチン尿症が含まれています(2024年7月改訂の添付文書で確認)。この検査は自費診療で、保険は適用されません。

10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の粘膜などで、唾液・頬の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
対象遺伝子 SLC3A1・SLC7A9・PREPL(3遺伝子)
調べる変化 配列の変化(一塩基の変化・小さな挿入や欠失)と、欠失・重複(料金に含まれる)
検体 血液(採血管4mL×2本)、抽出済みのDNA、頬の粘膜、唾液
結果までの期間 2〜3週間
至急オプション 結果までの期間が約7日短くなります。55,000円
VUS除外オプション 無料
検査費用 お問い合わせください
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
オンライン診療 唾液・頬の粘膜・血液のいずれでも可能。血液の場合は全国の提携医療機関で採血します。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。検体を採るキットは、検査料金のお支払いを確認してからお送りします。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採らないでください。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、再発予防とご家族の計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

唾液・頬の粘膜の検体なら、オンライン診療で全国どこからでも受けられます。結果は臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

11. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【結石の病気を、ご家族の計画につなげる】

シスチン尿症は、結石の痛みと治療を一生にわたって繰り返しうる病気で、腎臓の働きが落ちることもあります。だからこそ、結石が出るたびに対処するだけでなく、原因をはっきりさせて、再発予防と、ご家族のこれからを一緒に考える価値があると考えています。

シスチン尿症のように、潜性(劣性)遺伝の病気の保因者は、ふだんは何の症状もなく暮らしています。ご自身が保因者だと知らないまま家庭を持ち、お子さんが発症してはじめて知る、ということも珍しくありません。タイプBのように、保因者でも尿のシスチンが増えることがある病気もあります。見た目や症状だけでは、誰が保因者かはわかりません。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、パートナーの保因者検査から出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. シスチン尿症は遺伝しますか?遺伝のしかたは?

はい、遺伝する病気です。基本は常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します。原因遺伝子がSLC7A9の場合(タイプB)は、保因者でも尿のシスチンが増えることがあります。

Q2. シスチン尿症は治りますか?

遺伝子の働きそのものを治す治療は、今のところありません。ただし、水分を多くとって尿を増やす、尿をアルカリ性に保つ、塩分やたんぱく質をとりすぎない、必要に応じてチオール薬を使う、といった治療で、結石ができにくい状態を保つことが目標になります。治療は生涯続けることが前提です。

Q3. シスチン尿症は難病(医療費助成の対象)ですか?

シスチン尿症は、小児慢性特定疾病(先天性代謝異常・アミノ酸代謝異常症)の対象疾病に掲載されています(2026年10月時点、小児慢性特定疾病情報センターで確認)。18歳以降の指定難病の対象かどうかは、難病情報センターの最新の一覧でご確認ください。助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たして申請する必要があります。

Q4. ホモシスチン尿症やシスチン症(シスチノーシス)とは違う病気ですか?

まったく別の病気です。シスチン尿症は、腎臓でシスチンを取り戻す運び役のたんぱく質がうまく働かず、尿のシスチンが増えて結石ができる病気です。シスチン症(シスチノーシス)は細胞の中にシスチンがたまる病気、ホモシスチン尿症はアミノ酸の代謝の病気で、原因遺伝子も検査も違います。

Q5. シスチン尿症で知的な発達の遅れは起こりますか?

シスチン尿症で主に問題になるのは、腎臓と尿路の結石です。ただし、SLC3A1と隣のPREPLを含む2番染色体(2p21)の欠失による低緊張・シスチン尿症症候群では、生まれたときからの筋緊張の弱さや成長の問題が報告されており、さらに広い欠失では重い発達の遅れも報告されています。この検査ではPREPLも一緒に調べます。

Q6. チオラ(チオプロニン)はどんな薬ですか?

チオプロニンは、チオール薬と呼ばれる種類の薬で、シスチン結石の再発予防に使われます。日本ではチオラ錠の効能・効果にシスチン尿症が含まれています(2026年10月時点、添付文書で確認)。欧州の診療の推奨では、水分・食事・尿のアルカリ化をきちんと続けても結石が再発する場合に使うとされ、妊娠中は使わないとされています。

Q7. 遺伝子検査をしないと診断できないのですか?

いいえ。シスチン尿症の診断は、結石の成分分析や尿のシスチンの測定でつけられ、欧州の診療の推奨でも遺伝子検査は診断に必須ではないとされています。そのうえで、診断の確定、タイプの分類、ご家族への説明のために遺伝子検査を行うことが勧められています。

Q8. 大人になってから受ける意味はありますか?

あります。シスチン尿症は大人になってから診断されることもあります。原因遺伝子がわかると、きょうだいやお子さんが自分のことを考える手がかりになり、結婚や妊娠を考えるときの計画にも役立ちます。生まれ持った遺伝子は一生変わらないので、一度の検査結果をこの先ずっと使えます。

🧬 一度の検査で、再発予防とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。シスチン尿症の原因がわかれば、ご自身の再発予防の方針だけでなく、きょうだいやお子さんの検査、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、パートナーの保因者検査、羊水検査・絨毛検査による出生前診断のご相談まで、院内で続けて受けていただけます。

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参考文献

  • [1] Servais A, Thomas K, Dello Strologo L, et al. Cystinuria: clinical practice recommendation. Kidney Int. 2021;99(1):48-58. [DOI: 10.1016/j.kint.2020.06.035](PMID: 32918941)
  • [2] Eggermann T, Venghaus A, Zerres K. Cystinuria: an inborn cause of urolithiasis. Orphanet J Rare Dis. 2012;7:19. [DOI: 10.1186/1750-1172-7-19](PMID: 22480232)
  • [3] Dello Strologo L, Pras E, Pontesilli C, et al. Comparison between SLC3A1 and SLC7A9 cystinuria patients and carriers: a need for a new classification. J Am Soc Nephrol. 2002;13(10):2547-2553. [DOI: 10.1097/01.ASN.0000029586.17680.E5](PMID: 12239244)
  • [4] Jaeken J, Martens K, Francois I, et al. Deletion of PREPL, a gene encoding a putative serine oligopeptidase, in patients with hypotonia-cystinuria syndrome. Am J Hum Genet. 2006;78:38-51. [DOI: 10.1086/498852](PMID: 16385448)

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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