Chapter2-2 シークエンスの方法1:サンガー法

東京でNIPT新型出生前診断/非侵襲的出生前検査)などの遺伝子検査を提供するミネルバクリニックです。このページでは塩基配列を決定するサンガー法について説明しています。サンガー法は4つの塩基(AGCT)に対して色素をつけておいて光る色でその塩基の種類を決定するやり方です。
文責:仲田洋美 臨床遺伝専門医がん薬物療法専門医総合内科専門医

サンガー法とは?

「次世代シークエンシング」(NGS)という言葉を聞くと,その前の「第一世代シークエンシング」ってどういうものだったのかな?とか,NGSとどこが似ていてどう違うのかなとか気になりますよね.

初めてDNA塩基配列を決定する方法を開発したのは,Sangerさんという人で1970年代のことでした.

 

ジデオキシ法(サンガー法)の原理とは?

 DNA合成反応では,DNA合成に必要な4種の基質dNTP(デオキシヌクレオチド;dATP, dGTP, dCTP, dTTP)を加えると,試験管内での一本鎖DNAを鋳型としてDNAポリメラーゼが鋳型DNA相補的な配列をもつプライマーをもとに塩基配列を1個ずつ伸長させていきます. 

 

DNAの塩基配列決定法は,1975年にジデオキシ法(別名,サンガー法)が発表されたことで幕を開けました.

DNAの複製についてちょっと振り返ると.

鋳型DNA(複製したい元となるDNAをこう呼びます)に相補的(塩基には手が2本のものと3本のものがあるので普通は仲間同士でくっつきます.アデニンAはグアニンG,シトシンCはチミンTでしたね!)なDNA鎖を任意の長さまで伸長させることができます.例えば鋳型DNA鎖中のチミン(T)の塩基のところで新規合成を止めたいとしましょう.DNAの合成をアデニン(A)で止めるということです.

 

同じ鋳型DNAを準備する

鋳型DNA相補的DNA断片(プライマーと呼びます)を加えてアニーリング(一本鎖核酸どうしの相補的な塩基対を会合させて二本鎖にすることを言います)させる.

DNAポリメラーゼ,dNTP,ddATPを加えてDNAの新規合成を開始します.

DNAポリメラーゼ:プライマーからDNAを5’→3’の方向に伸長する酵素です.dNTP:デオキシヌクレオチド三リン酸.塩基はA,T,G,Cの4種類あるためdNTPも4種類(dATP,dTTP,dGTP,dCTP).

ddATP:dATPの3’部位のヒドロキシ基(-OH)がデオキシ(酸素が取れること)されて水素に置換された構造.DNAの新規合成ではDNA鎖の3’末端のヒドロキシ基とdNTPの5’リン酸基がリン酸結合によってつながるのですが,ddATPがDNA鎖に取り込まれると,OHではなくHなので,リン酸基と結合することが出来ないため,その先に伸長することができなくなります.

 

同様にして残りの3塩基についてもこの作業を行うことで,鋳型DNA中の異なる位置で合成が停止したDNA断片の全ての組み合わせを得ることができます.

 

 こうして,dNTP(dATP, dGTP, dCTP, dTTP)以外に,DNA鎖の伸長を停止させるddNTP(2′,3′-ジデオキシヌクレオチド;ddATP,ddGTP,ddCTP,ddTTPのいずれか)を少量加えておくと,ddNTPが取り込まれた時点でDNAの合成反応が停止する,つまりddNTPが伸長中のDNA鎖に取り込まれると,伸長末端にあるヌクレオチドの3’末端が-OH基(ヒドロキシ基)ではなく-Hとなってしまうために,次の塩基が結合できず,DNA鎖の伸長が停止することになりますが,この鎖停止反応はランダムな位置で生じ,鎖長の異なるさまざまなDNA断片が得られることになります.そして,これらのDNA断片の3’末端は加えたddNTPによって決まっていますので,例えばddATPを加えた場合には,DNA断片の3’末端は,必ずA(アデノシン)であるということがわかります.

 このような原理から,「ジデオキシ法」では,まず,4種類のdNTP(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)と1種類のddNTP(ddATP,ddGTP,ddCTP,ddTTPのいずれか)の混合溶液を用意します.そして,この溶液を用いてDNA合成を行なうと,それぞれのddNTPを取り込んだ時点で反応が停止し,鎖の長さの異なる様々なDNA断片が得られ,これをddATP,ddGTP,ddCTP,ddTTPの4種類ごとに行うことで,DNAの塩基配列を解読することができます.

※32P標識したdCTPなども加えておくことにより,合成されたDNA鎖のみを変性ゲル電気泳動後にオートラジオグラフィーで観察します.DNAの変性とは,二本鎖DNAを一本鎖DNAに解離することをいいます.

 

 この方法は,ジデオキシヌクレオチドを加えるということから「ジデオキシ法」と呼ばれていますが,開発者であるサンガーという人物にちなんで「サンガー法」とも呼ばれることもあります.

Chapter2-3
DNAシークエンサーを用いたジデオキシ法

 

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