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小眼球症・無眼球症・コロボーマ(ぶどう膜欠損)の遺伝子検査|原因となる104遺伝子を調べるパネル検査

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

小眼球症・無眼球症・コロボーマ(ぶどう膜欠損)の遺伝子検査

小眼球症・無眼球症・コロボーマ(ぶどう膜欠損)は、おなかの中で目がつくられる時期に、目の育ち方に変化が起きて生まれつき現れる病気で、まとめて「MAC」と呼ばれます。原因は遺伝子・染色体・妊娠中の環境などさまざまで、見た目だけでは区別できません。この検査では、原因となる104の遺伝子をまとめて調べます。原因がわかると、目以外に気をつけたい合併症や、次のお子さんで同じことが起こる確率、次の妊娠でどう備えられるかを、具体的に考えられるようになります。このページでは、病気のこと、検査でわかること・わからないこと、結果が出たあとのことを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

小眼球症・無眼球症・コロボーマの原因として知られる104の遺伝子(SOX2・OTX2・PAX6など)に、病気の原因となる変化がないかを調べます。原因がわかれば、病名と、目以外に気をつけたい合併症の見通しがつきます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

お子さんに小眼球症・無眼球症・コロボーマがあり原因を知りたいご両親、次のお子さんで同じことが起こる確率を知りたい方、ご本人やご家族にこれらの病気があり、結婚や妊娠を考えている方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は330,000円(税込)、結果までは3〜5週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜のいずれかです。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。保険は使えません。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、次のお子さんへの確率と、次の妊娠での出生前診断の計画をご説明します。意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることもあります。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

1. 小眼球症・無眼球症・コロボーマ(ぶどう膜欠損)とは

小眼球症は眼球が小さい状態、無眼球症は眼球がつくられなかった状態、コロボーマ(ぶどう膜欠損)は目の一部に生まれつき切れ込み(欠け)がある状態です。3つは互いに関係が深く、同じ人に一緒に見られることも多いため、英語の頭文字をとって「MAC(Microphthalmia・Anophthalmia・Coloboma)」とまとめて呼ばれます[4]。

片方の目だけのことも、両方の目のこともあります。英国の調査では、両方の目に見られた子どもは55.5%でした[3]。見え方は、目の大きさや、ほかの部分の変化によって一人ひとり大きく違います。

小眼球症と無眼球症の違い

小眼球症は、眼球が年齢の標準より小さい状態です。無眼球症は、本来は眼球ができない状態を指しますが、実際には、目のあるべき場所に小さな袋のような名残が見つかる「臨床的な無眼球症」のほうが多いとされています[1]。小眼球症のとても重いものと無眼球症は、ひと続きの病気として扱われます。

コロボーマ(ぶどう膜欠損)とは

コロボーマは、おなかの中で目がつくられるときに、目の下側にある「眼裂」という切れ目が閉じきらずに残った状態です。ヒトでは、この切れ目は妊娠のごく早い時期(胎児の発生の5週目ごろ)に閉じ始め、7週目ごろまでに閉じ終わるとされています[4]。

閉じなかった場所によって、虹彩(茶目)・毛様体・脈絡膜・網膜・視神経のどこにでも欠けが生じます[4]。虹彩に起これば「虹彩コロボーマ(虹彩欠損)」、脈絡膜に起これば「脈絡膜コロボーマ」と呼ばれます。虹彩・毛様体・脈絡膜をまとめて「ぶどう膜」と呼ぶため、日本語では「ぶどう膜欠損」ともいいます。コロボーマは、子どもの失明の原因の3.2〜11.2%を占めると推定されています[4]。

何人に1人くらいの病気か

英国全体を対象にした前向き調査では、16歳までに小眼球症・無眼球症・典型的なコロボーマと診断された子どもは、10万人あたり11.9人でした[3]。病型ではコロボーマが最も多く、無眼球症はまれでした[3]。

病型ごとの数字では、小眼球症の出生時の有病率は10万人あたり2〜17人[2]、無眼球症は1万人あたり0.18〜0.6人と報告されています[1]。数字に幅があるのは、国・調べ方・診断の基準によって違いが出るためです。

いつわかる?妊娠中の超音波と生まれてから

腟から当てる超音波検査では、妊娠12週ごろから無眼球症や小眼球症を見つけられることがあると報告されています[1][2]。一方で、特に早い時期の超音波では、病気があっても正常に見えることがあるとされています[1]。生まれてから目の大きさや形の違いで気づかれることも多く、コロボーマは眼科の診察ではじめてわかることもあります。

妊娠中の検査とNIPTの関係は、小眼球症とNIPT(妊娠中の方へのコラム)で解説しています。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。

2. 原因:遺伝子・染色体・妊娠中の環境

MACの原因は、①遺伝子の変化、②染色体の変化、③妊娠中の環境の大きく3つに分けられ、同じ見た目でも原因は人によって違います。目は、多くの遺伝子が決まった順番で働いてつくられるため、そのうちのどれに変化があっても、目の育ち方が変わることがあります。

どの遺伝子が多いか:SOX2・OTX2など

両方の目の無眼球症や重い小眼球症では、SOX2遺伝子の変化が最も多い原因で、最大40%を占めると報告されています。2番目に多いのがOTX2遺伝子です[1]。MAC全体で見ると、SOX2が原因の割合は最大10%ほどです[2]。重い無眼球症・小眼球症の51人を調べた研究では、SOX2・OTX2・STRA6の3つの遺伝子で、15人(29.4%)に原因と考えられる変化が見つかりました[7]。

そのほか、両方の目の無眼球症・小眼球症の最大10%でALDH1A3遺伝子、無眼球症・小眼球症の2〜3%でRAX遺伝子、MACの1〜2%でPAX6遺伝子の変化が見つかると報告されています[1]。1つの遺伝子で多くを説明できる病気ではなく、原因の遺伝子が多いことが、この病気で「まとめて調べる検査」が使われる理由です。

症候群の一部として起こるとき

MACは、目だけに起こることもあれば、心臓・耳・腎臓・脳などの変化と一緒に、ある症候群の一部として起こることもあります。無眼球症について、既知の症候群によるものは20〜45%、目以外の変化が見られるのは33〜95%と報告されています[1]。代表的なものに、CHD7遺伝子が原因のCHARGE症候群があります。

目のことで見つかっても、原因の遺伝子がわかると、目以外にどんな検査や経過観察が必要かが見えてきます。遺伝子検査は、目の病名を確かめるだけでなく、全身の健康管理の計画を立てるための手がかりにもなります。

遺伝子の変化以外の原因

染色体の一部が欠けたり増えたりする変化でも、MACが起こることがあります。また、妊娠初期の喫煙、一部の薬、風疹・サイトメガロウイルス・インフルエンザなどのウイルス感染といった妊娠中の環境も、関わりが報告されています[1]。こうした原因によるものは、遺伝子の変化を調べるこの検査ではわかりません(第5章)。

3. どんな人がこの検査を受けるとよいか

お子さんにMACがあり原因を知りたいご両親、次のお子さんのことを考えているご両親、ご本人やご家族にMACがあり結婚や妊娠を考えている方に向く検査です。片方の目だけでも、目以外に症状がなくても、検査で原因が見つかることがあります。

お子さんにMACがあり、原因を知りたいご両親

原因がわからないまま、いくつもの病院や検査を回ることになるご家族もいます。原因の遺伝子がわかると、病名が決まり、目以外に気をつけたい合併症、受けておきたい検査、使える制度が見えてきます。先天異常や知的障害のある子どもを対象にエクソーム・ゲノム検査の結果を調べた研究のまとめでは、167件の研究のうち95%が、患者さんやご家族の診療方針に何らかの変化があったと報告していました[8]。変化の中身や大きさは研究ごとに違いますが、「名前がつくと、次の一手が決まる」ことを示す結果です。

英国で50人を前向きに調べた研究では、遺伝子検査を受けた45人のうち15人(33%)で原因が見つかり、その割合は両方の目(30人中10人)でも片方の目(15人中5人)でも同じでした。原因がわかった方は、その原因に合わせた専門の診療科へ紹介されています[5]。「片目だけだから」「目以外は元気だから」という理由だけで、検査の対象外と考える必要はありません。

次のお子さんのことを考えているご両親

次のお子さんで同じことが起こる確率(再発率)は、原因と遺伝のしかたによって大きく変わります。原因がわからないままだと、この確率をはっきりお伝えすることができず、次の妊娠で出生前診断を考えても、何を調べればよいかが決められません。お子さんの原因がわかっていれば、次の妊娠で、絨毛検査・羊水検査による出生前診断を計画できます。確率の考え方は第6章でご説明します。

お子さんで新しく起きた変化であれば、ご両親のせいではないことがはっきりします。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

ご本人やご家族にMACがあり、結婚・妊娠を考えている方

コロボーマなどが軽く、大人になってからも大きな不便なく過ごしている方もいます。ただし、遺伝子によっては、同じ変化を持っていても症状の重さが人によって大きく違ったり、変化を持っていても症状が出なかったりすることがあります(表現型の多様性・浸透率)。たとえばOTX2遺伝子では、変化を持っていた親御さんの3分の2に症状がなかったと報告されています[1]。「自分が軽いから、子どもも軽い」とは言えないため、妊娠の前に原因を知っておくと、選べることが増えます。

この検査より別の検査が向いている場合

目の所見がMACにしぼれる場合、この検査が選択肢になります。一方で、症状や、すでに受けた検査によっては、別の検査のほうが向いていることがあります。比べる相手は検査の種類で、どれが合うかは遺伝カウンセリングでご説明します。

🔍 症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
小眼球症・無眼球症・コロボーマがある このページの検査(104遺伝子)
白内障・網膜・角膜・緑内障など、目のほかの病気も広く調べたい 包括的眼疾患遺伝子検査(510遺伝子)
目以外の症状が多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)
発達の遅れなどがあり、染色体の一部が欠けたり増えたりする変化を調べたい マイクロアレイ染色体検査(CMA)
妊娠中の超音波検査で、赤ちゃんの目の異常を指摘された 出生前全エクソーム(WES)検査・出生前全ゲノム(WGS)検査

※無眼球症の診療では、はじめに染色体の欠失・重複を調べる検査を行うことがあるとされています[1]。どの順番で調べるかは、症状とこれまでの検査をうかがって決めます。

\ 原因がわかれば、次の妊娠の備え方が決まります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

お問い合わせはこちら | 目の病気を広く調べる検査はこちら

4. 調べる104の遺伝子と、関係する病気

この検査では、目だけに起こるMACと、症候群の一部として起こるMACの両方に関係する104の遺伝子を、一度に調べます。下の1つ目の表は、小眼球症の病型として分類されている主な遺伝子、2つ目の表は、症候群の一部としてMACやそれに近い目の変化を起こすことがある遺伝子です。最後に、104の遺伝子すべてを載せています。

🧬 主な遺伝子と病型・遺伝のしかた

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
SOX2 症候性小眼球症3型 常染色体顕性(優性)
OTX2 症候性小眼球症5型 常染色体顕性(優性)
BMP4 症候性小眼球症6型 常染色体顕性(優性)
SIX6 単独性小眼球症 常染色体潜性(劣性)
STRA6 症候性小眼球症9型 常染色体潜性(劣性)
VAX1 症候性小眼球症11型 常染色体潜性(劣性)
RARB 症候性小眼球症12型 常染色体顕性・潜性
NAA10 症候性小眼球症1型 X連鎖(顕性・潜性)
BCOR 症候性小眼球症2型 X連鎖(顕性・潜性)
VSX2 単独の小眼球症2型/コロボーマを伴う単独の小眼球症3型 常染色体潜性(劣性)
RAX 単独の小眼球症3型 常染色体潜性(劣性)
GDF6 単独の小眼球症4型 常染色体顕性(優性)
ALDH1A3 単独の小眼球症8型 常染色体潜性(劣性)
RBP4 コロボーマを伴う単独の小眼球症10型 常染色体顕性(優性)
MAB21L2 小眼球症・コロボーマと骨格の異形成を伴う症候群 常染色体顕性・潜性
SMOC1 手足の異常を伴う小眼球症 常染色体潜性(劣性)
PAX6 無虹彩症1型 常染色体顕性(優性)
SMCHD1 ボスマ無鼻症・小眼球症候群 常染色体顕性(優性)
TFAP2A 鰓眼顔症候群 常染色体顕性(優性)
MITF COMMAD症候群 常染色体潜性(劣性)
PORCN 限局性真皮低形成 X連鎖顕性
FRAS1 フレーザー症候群1型 常染色体潜性(劣性)
FREM1 マニトバ眼・毛髪・肛門症候群 常染色体潜性(劣性)
GLI2 全前脳胞症9型 常染色体顕性(優性)
HCCS 多発先天異常を伴う線状皮膚欠損症1型 X連鎖顕性

※病気の名前と遺伝のしかたは、無眼球症の遺伝子診断についての手引き[1]の表による(日本語名は当院で訳したもの)。「症候性」は目以外の症状を伴うもの、「単独」は目だけに起こるものを指します。

🧬 症候群の一部として目の変化を起こすことがある遺伝子

※米国国立医学図書館の遺伝子解説(MedlinePlus Genetics)で、その遺伝子と関係する病気として挙げられているものを載せています(2026年10月時点で確認)。遺伝のしかたは病気ごとに違うため、遺伝カウンセリングでご説明します。

104の遺伝子すべて

この検査で調べる104の遺伝子の一覧です。下線のある遺伝子は、当院の遺伝子の解説ページにつながっています。この一覧にない遺伝子は、この検査では調べません。

ABCB6ACTBACTG1ADAMTS18ALDH1A3ATOH7BCORBMP4BMP7C12orf57CAPN15CC2D2ACDK9CHD7CLDN19COL4A1COX7BCRYAACRYBA4CYP1B1DHX38ERCC1ERCC2ERCC5ERCC6FAT1FIBPFOXC1FOXE3FOXL2FRAS1FREM1FREM2FZD5GDF3GDF6GJA1GJA8GLI2GRIP1HCCSHESX1HMGB3HMX1IGBP1IPO13LRP5MAB21L2MAFMFRPMITFNAA10NDPNDUFB11NHSOCRLOTX2PAX2PAX6PIGLPITX2PITX3POLR1CPOLR1DPORCNPQBP1PRR12PRSS56PUF60PXDNRAB18RAB3GAP1RAB3GAP2RARBRAXRBP4RPGRIP1LSALL1SALL2SALL4SEMA3ESHHSIX3SIX6SLC38A8SMCHD1SMOSMOC1SOX2SRD5A3STRA6TBC1D20TCOF1TENM3TFAP2ATGIF1TMEM67TMEM98VAX1VPS13BVSX1VSX2YAP1ZIC2

日本の研究で見つかった遺伝子

主に日本人を対象にした2026年の研究では、小眼球症・無眼球症の14家系のうち、5家系で原因となる遺伝子の変化が見つかりました。見つかった遺伝子はABCB6・BMP4・OTX2・RARB・SOX2の5つで、それぞれ1家系ずつでした[6]。この5つの遺伝子は、いずれもこの検査の対象に入っています。

同じ研究では、BMP4とRARBの変化が見つかったお子さんに、神経の病気に関係する目以外の症状がありました[6]。日本人でも原因の遺伝子は1つにしぼれず、さまざまな遺伝子が関わっていることがわかります。

5. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、104の遺伝子の中にある、文字(塩基)1つの変化や、小さな挿入・欠失などの変化です。遺伝子の配列を一度にたくさん読む次世代シークエンサーを使い、主にたんぱく質の設計図になる部分(コーディング領域)と、そのつなぎ目(スプライシング部位)を調べます。読み取りの質が十分でない部分は、別の方法(サンガー法)で読み直して補います。

一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●調べていない遺伝子:104の遺伝子以外に原因がある場合は見つかりません。MACの原因になる遺伝子は、まだすべてがわかっているわけではありません。
  • ●染色体の大きな変化:染色体の数の変化や、大きな欠失・重複・構造の変化は、この検査の対象ではありません。疑われるときはマイクロアレイ染色体検査などを考えます。
  • ●小さな欠失・重複:遺伝子の一部が欠けたり増えたりする変化(コピー数の変化)を調べる場合でも、エクソン1つ分だけの小さな欠失・重複は見つからないことがあります。
  • ●よく似た配列がある場所:偽遺伝子など、よく似た配列がゲノムのほかの場所にあると、変化を正しく見つけにくいことがあります。
  • ●繰り返し配列:ZIC2遺伝子の中にある、3つの塩基の繰り返しが長くなる変化は調べていません。
  • ●遺伝子以外の原因:妊娠中の感染症や薬など、環境による原因はわかりません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知識では判断できない変化が見つかることがあります。

⚠️ 陰性でも「遺伝ではない」とは言えません

原因が見つからなかったとしても、この検査で調べられない原因が残っている可能性があります。片方の目だけの方では、遺伝子検査で原因が見つかる割合は、両方の目の重い方より低いと報告されています[1]。陰性は「遺伝の病気ではない」という意味ではなく、「この検査の範囲では原因が見つからなかった」という意味です。

6. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。原因が見つかった場合・見つからなかった場合・VUSが見つかった場合で、次にできることが違います。

原因が見つかったとき

原因の遺伝子がわかると、病名がはっきりし、目以外にどの臓器を確かめておくとよいかが決まります。症候群の一部とわかった場合は、その症候群で起こりやすい合併症(心臓・耳・腎臓・ホルモンなど)について、主治医と相談しながら必要な検査を受けていくことができます。「わかるだけで何もできない」のではなく、わかったことから、ご本人の健康管理とご家族の計画を具体的に立てられるようになります。

次のお子さんへの確率(再発率)

確率は、原因と遺伝のしかたで次のように変わります。

👪 遺伝のしかたと、次のお子さんへの確率の考え方

原因と遺伝のしかた 次のお子さんへの確率の考え方
常染色体潜性(劣性)遺伝 ご両親がともに保因者で、お子さん1人ごとに4分の1
常染色体顕性(優性)遺伝で、親御さんも同じ変化をもつ お子さん1人ごとに2分の1(症状の重さは同じとは限らない)
X連鎖 お母さんが同じ変化をもっているかどうかと、お子さんの性別で変わる
お子さんで新しく起きた変化(de novo) 低いがゼロではない。親御さんの卵子・精子のもとになる細胞に変化がある場合は、最大で2分の1

※どれに当てはまるかは、原因の遺伝子と、必要に応じてご両親の検査で確かめます。

最も多い原因のSOX2では、変化の60%は新しく起きたもので、親から受け継いだとわかっているのは8%です。受け継いだ場合の親御さんには、症状のある方だけでなく、症状のない方や、体の一部の細胞だけに変化をもつ「モザイク」の方もいると報告されています[1]。OTX2では、卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化がある「性腺モザイク」の例が複数確かめられています[1]。こうした理由から、遺伝子が原因のMACでは、再発率の予測が難しいとされています[1][2]。

💡 用語解説:モザイクと「最大で2分の1」

変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は、2分の1の確率でその変化をもちます。ただし、生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは人によって違い、実際の診療ではわかりません。血液で測ったモザイクの割合も、生殖細胞の割合の目安にはなりません。そのため、お子さん1人あたりの確率は「最大で2分の1」と考えます。「新しく起きた変化だから、次は大丈夫」と小さく見積もらないことが大切です。

原因が見つからなかったとき

原因が見つからない方も少なくありません。英国の研究でも、遺伝子検査を受けた方の多くは原因がわからないままでした[5]。その場合は、症状に合わせて、マイクロアレイ染色体検査や全エクソーム検査など、調べる範囲の違う検査を考えます。研究が進むと、のちに新しい原因がわかることもあります。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。ご両親の検査結果などで、意味がはっきりすることもあります。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

妊娠を考えている方:出生前診断と保因者検査

ご家族の原因となる変化がわかっていれば、次の妊娠で、赤ちゃんに同じ変化があるかを調べる出生前診断が可能とされています[2]。指針では、絨毛検査は妊娠10〜12週、羊水検査は妊娠14週以降に行われるとされ、母体の血液だけで無眼球症を調べる方法は、今のところないとされています[1]。当院は、母体の血液で単一遺伝子の病気を調べる検査(NIPD)は扱っていません。

当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。原因がわかっていることが、出生前診断を計画するための出発点になります。

ALDH1A3・STRA6・RAX・VSX2のように常染色体潜性(劣性)遺伝の遺伝子が原因だった場合は、ご夫婦がともに保因者であることが前提になります。ご自身やパートナーが保因者かどうかを妊娠の前に知りたい方には、拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子など)があります。調べたい遺伝子が対象かどうかは、遺伝子一覧でご確認ください。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラスもあります(単独ではお受けできません)。

7. 日本の制度(2026年10月時点)

原因の病気がわかると、その病気が国の指定難病に当たることがあります。たとえば、厚生労働省の指定難病の一覧(令和8年4月時点)には、CHD7遺伝子が原因のチャージ症候群(告示番号105)と、中隔視神経形成異常症/ドモルシア症候群(告示番号134)が載っています。チャージ症候群の原因遺伝子であるCHD7と、中隔視神経形成異常症に関係するHESX1は、いずれもこの検査の対象です。

医療費の助成を受けるには、病名が当てはまるだけでなく、それぞれの制度の認定の基準を満たして申請する必要があります。どの制度が使えるかは、原因の病名と症状の程度で変わるため、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。この検査は保険適用外の自費の検査です。

8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は330,000円(税込)、結果までは3〜5週間で、検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜のいずれかです。検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
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結果のご説明3〜5週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査内容 小眼球症・無眼球症・コロボーマに関係する104遺伝子
検査費用 330,000円(税込)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 3〜5週間
検体 血液・唾液・頬の内側の粘膜のいずれか
保険 保険適用外(自費)

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。お子さんの検査では、ご両親の検査もあわせて検討することがあります。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、ご家族とこれからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【原因を知ることは、次を考えるための出発点】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。小眼球症・無眼球症・コロボーマは、原因の遺伝子がとても多く、同じ変化をもっていても症状の重さに差があったり、親御さんに症状がなかったりすることもある病気です。だからこそ、「親の自分は目に問題がないから」「片目だけだから」という見た目の印象だけで、次の計画を決めてしまわないでほしいと考えています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。原因がわかれば、次のお子さんへの確率をお伝えでき、出生前診断まで当院で続けて支えることができます。知ること・知らないこと、次のお子さんを考えること・考えないこと、どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 小眼球症・無眼球症・コロボーマは何人に1人くらいですか?

英国全体を対象にした前向き調査では、16歳までに小眼球症・無眼球症・典型的なコロボーマと診断された子どもは、10万人あたり11.9人でした。病型ではコロボーマが最も多く、無眼球症はまれでした。国や調べ方によって数字には幅があります。

Q2. 小眼球症の原因は何ですか?

遺伝子の変化、染色体の変化、妊娠中の環境(喫煙・一部の薬・ウイルス感染など)が報告されています。両方の目の無眼球症や重い小眼球症では、SOX2遺伝子の変化が最も多い原因で、最大40%を占めると報告されています。見た目だけでは原因を区別できません。

Q3. 小眼球症は遺伝しますか?次の子どもにも起こりますか?

原因によって違います。常染色体潜性(劣性)遺伝ならお子さん1人ごとに4分の1、親御さんも同じ変化をもつ常染色体顕性(優性)遺伝なら2分の1です。お子さんで新しく起きた変化なら確率は低いものの、親御さんの卵子・精子のもとになる細胞に変化がある場合は最大で2分の1と考えます。原因を調べることで、確率を具体的にお伝えできるようになります。

Q4. 無眼球症や小眼球症は、妊娠中のエコーでいつわかりますか?

腟から当てる超音波検査で、妊娠12週ごろから見つけられることがあると報告されています。一方で、特に早い時期の超音波では、病気があっても正常に見えることがあるとされています。生まれてから気づかれることも多い病気です。

Q5. 片方の目だけでも、遺伝子検査を受ける意味はありますか?

あります。英国で50人を前向きに調べた研究では、遺伝子検査で原因が見つかった割合は、両方の目(30人中10人)でも片方の目(15人中5人)でも同じでした。一方、従来の方法では、片方の目だけの方で原因が見つかる割合は低いという報告もあり、陰性でも遺伝ではないとは言えません。

Q6. 小眼球症は難病指定されていますか?

原因の病気がわかると、その病気が指定難病に当たることがあります。たとえば、CHD7遺伝子が原因のチャージ症候群(告示番号105)や、中隔視神経形成異常症/ドモルシア症候群(告示番号134)は、厚生労働省の指定難病の一覧(令和8年4月時点)に載っています。助成を受けるには、認定の基準を満たして申請する必要があります。

Q7. 検査の費用と、結果が出るまでの期間を教えてください。

検査費用は330,000円(税込)で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。結果までは3〜5週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜のいずれかです。保険は使えません。

Q8. 検査で原因が見つからなかったら、遺伝の心配はないということですか?

いいえ。この検査で調べられない遺伝子や、染色体の大きな変化が原因のこともあります。陰性は「この検査の範囲では原因が見つからなかった」という意味です。症状に合わせて、マイクロアレイ染色体検査や全エクソーム検査など、別の検査を考えます。

🧬 一度の検査で、お子さんとご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。小眼球症・無眼球症・コロボーマの原因がわかれば、お子さんの合併症への備えだけでなく、次のお子さんへの確率や、次の妊娠での出生前診断の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。

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参考文献

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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