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子どもの小脳失調・運動失調は遺伝?早期発症運動失調症の遺伝子検査(134遺伝子パネル)でわかること

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

子どもの小脳失調・運動失調の遺伝子検査

歩き方がふらつく、呂律が回りにくい、手の動きがぎこちない。子どものうちに始まる小脳失調(運動失調)には、遺伝子の変化が原因のものが多くあります。原因がわからないまま病院を回る時間を、1回の検査で短くできる可能性があります。このページでは、早期発症運動失調症に関係する134遺伝子をまとめて調べる遺伝子パネル検査でわかること・わからないこと、次のお子さんへの遺伝の確率、結果が出たあとにできることを、臨床遺伝専門医が解説します。あらかじめお伝えしておきたいのは、大人の脊髄小脳変性症に多い型やフリードライヒ運動失調症の多くは「リピート伸長」が原因で、この検査では見つけられないということです。その場合に選ぶ検査も、あわせてご案内します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

子どものうちに始まる小脳失調・運動失調の原因として知られる134遺伝子の小さな変化(一塩基の変化・小さな挿入や欠失)と、欠失・重複をまとめて調べます。一方で、リピート伸長(脊髄小脳失調症1・2・3・6・7型、フリードライヒ運動失調症の多く)は調べられません。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

18歳未満で歩行のふらつき・呂律の回りにくさ・手足のぎこちなさが出てきた方、MRIで小脳の萎縮や形の変化を指摘された方、ご家族に運動失調の方がいる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、合併症への備えや、次のお子さんで同じ病気が起こる確率と出生前診断まで具体的に考えられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 発症年齢を問わず調べたい方へ(運動失調症遺伝子検査パネル)

1. 子どもの小脳失調・運動失調は遺伝?この検査でわかること

子どものうちに始まる小脳失調・運動失調には、遺伝子の変化が原因のものが多く含まれます。この検査は、その原因として知られる134遺伝子をまとめて調べ、原因が見つかれば病名と、ご家族への遺伝の確率がわかります。ただし、すべての運動失調が遺伝性というわけではなく、またリピート伸長が原因の病気はこの検査では見つけられません(第4章)。

早期発症運動失調症(Early-Onset Ataxia)は、主に18歳未満で発症する遺伝性の運動失調症をまとめた呼び方です。ひとつの病気の名前ではなく、原因の遺伝子が違う多くの病気が含まれます。原因がわからないまま病院を回る期間は、希少疾患では長くなりがちです。欧州の41か国で希少疾患をもつ6,507人に尋ねた調査では、診断が確定するまでにかかった期間(総診断期間)は平均4.7年でした[1]。日本の未診断疾患イニシアチブ(IRUD)では、診断がついていなかった5,136家系に全エクソーム解析を行い、43.8%(2,247家系)で診断が確定しています[2]。逆にいえば、半数以上の家系ではこの時点で診断がついておらず、遺伝子検査で全員の原因がわかるわけではありません。

小脳失調(運動失調)とは:ふらつき・呂律・手のふるえの症状

小脳失調(運動失調)とは、筋力は保たれているのに、体の動きをなめらかにそろえる働きがうまくいかなくなる状態です。小脳や、小脳とつながる神経の通り道の障害で起こります。小脳失調の症状として、次のようなものがあります。

  • ●歩くとふらつく、足を広げて歩く、転びやすい(歩行失調)
  • ●座っている・立っているときに体が揺れる(体幹失調)
  • ●手足の動きがぎこちない、物を取ろうとすると手がふるえる・行き過ぎる
  • ●呂律が回りにくい、言葉が不明瞭(構音障害)
  • ●目が揺れる(眼振)、目の動きがぎこちない

こうした症状は、感染症のあとの一時的な小脳失調や、薬・中毒、脳腫瘍など、遺伝子以外の原因でも起こります。遺伝子検査を考えるのは、症状がゆっくり進む、ほかの原因が見つからない、ご家族にも同じ症状の方がいる、といった場合です。

子どもで発症する遺伝性の運動失調の主な病気

この検査の対象には、次のような病気が含まれます。いずれも、このパネルの遺伝子で調べられる型です。

  • ●毛細血管拡張性運動失調症(ATM):典型的な型では、座る・歩くようになったころから運動失調がみられます。悪性腫瘍が起こりやすく(典型的な型で25%、診断の年齢の中央値12.5歳)、放射線に対する感受性が高いことが知られています[3]。
  • ●眼球運動失行を伴う運動失調症(AOA1・AOA2・AOA4):APTX・SETX・PNKPなどが原因です。くわしくは眼球運動失行を伴う運動失調症遺伝子検査でも解説しています。
  • ●シャルルボワ・サグネ型痙性運動失調症(SACS):運動失調に、足のつっぱり(痙性)が加わる病気です。
  • ●ジュベール症候群とその関連疾患:AHI1・CEP290など多くの遺伝子が原因になり、MRIで小脳の形の変化がみられます。
  • ●白質の病気:アレキサンダー病(GFAP)、白質消失病(EIF2B1〜5)、ペリツェウス・メルツバッハ病(PLP1)など。
  • ●発作性に起こる運動失調:反復発作性運動失調症1型(KCNA1)・6型(SLC1A3)など。発作のあいだは症状が軽くなるか、なくなります。
  • ●治療につながる病気:ビタミンE単独欠乏性運動失調症(TTPA)、脳腱黄色腫症(CYP27A1)など(第5章)。

フリードライヒ運動失調症(FXN)も子どものうちに始まる代表的な病気で、平均の発症年齢は10〜15歳とされています[4]。ただし、この病気は原因のほとんどがリピート伸長なので、選ぶ検査が違います(第2章・第4章)。

遺伝のしかたは4通り:潜性(劣性)・顕性(優性)・X連鎖・ミトコンドリア

子どもで始まる運動失調は、遺伝形式もさまざまです。このパネルの134遺伝子の多くは常染色体潜性(劣性)遺伝の病気の遺伝子ですが、常染色体顕性(優性)遺伝やX連鎖の病気の遺伝子、ミトコンドリアの働きに関わる遺伝子も含まれます(遺伝のしかたは第3章の表に1つずつ書いています)。遺伝のしかたが違えば、ご家族やこれから生まれるお子さんへの影響も大きく変わります。だからこそ、原因の遺伝子を特定する意味があります。

2. どんな人が受けるとよいか

18歳未満で運動失調の症状が出てきた方、MRIで小脳の変化を指摘された方、ご家族に運動失調の方がいる方に向く検査です。一方で、疑われる病気によっては、この検査より別の検査のほうが向いています。

症状・MRIの所見から考える

次のような場合に、この検査を考えます。

  • ●18歳未満で、歩行のふらつき・手足のぎこちなさ・呂律の回りにくさが出てきた
  • ●眼振など、目の動きの異常がある
  • ●MRIで小脳の萎縮や、白質の変化を指摘された
  • ●運動失調が発作のように出たり引いたりする
  • ●運動失調に、目の白目や顔の細い血管の拡張・感染症へのかかりやすさを伴う
  • ●ご家族(きょうだい・親)に、子どものうちに運動失調が始まった方がいる
  • ●フリードライヒ運動失調症などのリピート伸長検査で原因が見つからなかった

見た目や家族歴だけでは、原因が遺伝子にあるかどうかは判断できません。遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査を受けてはじめて、病名と、次にどうするかの計画が立てられます。

受けなくてよい場合・別の検査が向く場合

脊髄小脳変性症の遺伝を調べる方法は、疑う病気によって変わります。日本の脊髄小脳変性症では、遺伝性の病型としてSCA1・2・3・6・7・17・31やDRPLAなどが挙げられています(難病情報センター、2026年10月確認)。これらの多くは同じ配列のくり返しが長くなる「リピート伸長」が原因で、この検査では見つけられません。比べる相手は検査の種類です。次の表を目安にしてください。

🔍 疑う病気に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
18歳未満で発症し、原因の病気をしぼれない このページの検査(早期発症運動失調症 134遺伝子パネル)
大人の脊髄小脳失調症(SCA1・2・3・6・7など)やDRPLA、フリードライヒ運動失調症を疑う 運動失調リピート伸長遺伝子パネル検査(複数の遺伝子のリピート伸長をまとめて調べる。税込495,000円)
ご家族の病型(原因の遺伝子)がすでにわかっている 単一遺伝子のリピート伸長検査(税込275,000円)、またはご家族と同じ変化だけを調べる検査
中年期以降に進む小脳失調(SCA27B) FGF14遺伝子GAAリピート伸長検査(脊髄小脳失調症27B型)
発症年齢を問わず広く調べたい 運動失調症遺伝子検査パネル(153遺伝子)
18歳以降に発症した 遅発性運動失調症遺伝子パネル検査(57遺伝子)
MRIで小脳低形成・臼歯の形の所見が中心 小脳低形成NGSパネル遺伝子検査、ジュベール・メッケル症候群の遺伝子パネル検査
運動失調以外の症状も多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)
発達の遅れなどがあり、染色体の大きな変化を疑う マイクロアレイ染色体検査

※料金は各検査のページの記載(税込)。どの検査が合うかは、症状・診察所見・MRI・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

\ 病名がわかると、次の一手が決まります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

病名がわかると、見張るべき合併症や使える制度が決まります。どの検査が合うかも、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご一緒に考えます。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

3. 調べる134遺伝子と、それぞれでわかる病気

この検査では、次の134遺伝子の小さな変化と欠失・重複を調べます。表の病気の名前と遺伝のしかたは、OMIM(遺伝性疾患のデータベース)の登録にもとづいています。1つの遺伝子が、重さや症状の違う複数の病気に関わることもあります。リンクのある遺伝子名・病気の名前からは、当院の詳しい解説ページに進めます。

🧬 早期発症運動失調症パネルの対象遺伝子(134遺伝子)

遺伝子 関係する主な病気 遺伝のしかた
ABCB7 鉄芽球性貧血と脊髄小脳失調症 X連鎖
ABHD12 PHARC(多発ニューロパチー・難聴・運動失調・網膜色素変性・白内障) 常染色体潜性(劣性)
ACO2 乳児期発症の小脳・網膜変性症/視神経萎縮9型 常染色体潜性(劣性)
AFG3L2 脊髄小脳失調症28型(SCA28)/常染色体潜性痙性運動失調症5型 常染色体顕性(優性)・常染色体潜性(劣性)
AHI1 ジュベール症候群3型 常染色体潜性(劣性)
ALDH5A1 コハク酸セミアルデヒド脱水素酵素欠損症 常染色体潜性(劣性)
ALS2 若年性筋萎縮性側索硬化症2型/乳児発症上行性痙性麻痺 常染色体潜性(劣性)
ANO10 常染色体潜性脊髄小脳失調症10型(SCAR10) 常染色体潜性(劣性)
APTX 眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う早発型失調症(AOA1) 常染色体潜性(劣性)
ARL13B ジュベール症候群8型 常染色体潜性(劣性)
ATCAY ケイマン型小脳失調症 常染色体潜性(劣性)
ATL1 痙性対麻痺3A型/遺伝性感覚ニューロパチー1D型 常染色体顕性(優性)
ATM 毛細血管拡張性運動失調症(片方だけの変化をもつ保因者では乳がんのリスクが上がる) 常染色体潜性(劣性)
ATP8A2 小脳失調・知的発達症・平衡障害症候群4型(CAMRQ4) 常染色体潜性(劣性)
B9D1 ジュベール症候群27型/メッケル症候群9型 常染色体潜性(劣性)
BBS1 バルデー・ビードル症候群1型 常染色体潜性(劣性)
BBS12 バルデー・ビードル症候群12型 常染色体潜性(劣性)
BSCL2 先天性全身性リポジストロフィー2型(潜性)/痙性対麻痺17型(顕性)など 常染色体顕性(優性)・常染色体潜性(劣性)
C12orf65 痙性対麻痺55型/複合酸化的リン酸化欠損症7型(現在の遺伝子名:MTRFR) 常染色体潜性(劣性)
C19orf12 MPAN(脳内鉄沈着を伴う神経変性症4型)/痙性対麻痺43型 常染色体潜性(劣性)・常染色体顕性(優性)
CA8 常染色体潜性脊髄小脳失調症34型 常染色体潜性(劣性)
CAMTA1 認知・行動の異常を伴う小脳機能障害(CECBA) 常染色体顕性(優性)
CC2D2A ジュベール症候群9型/メッケル症候群6型/COACH症候群2型 常染色体潜性(劣性)
CEP290 ジュベール症候群5型/メッケル症候群4型/バルデー・ビードル症候群14型/レーバー先天黒内障10型/シニア・ローケン症候群6型 常染色体潜性(劣性)
CEP41 ジュベール症候群15型 常染色体潜性(劣性)
CLCN2 運動失調を伴う白質脳症 常染色体潜性(劣性)
CLN5 神経セロイドリポフスチン症5型 常染色体潜性(劣性)
CLPP ペロー症候群3型 常染色体潜性(劣性)
COQ2 原発性コエンザイムQ10欠乏症1型 常染色体潜性(劣性)
COQ6 原発性コエンザイムQ10欠乏症6型 常染色体潜性(劣性)
COQ8A 原発性コエンザイムQ10欠乏症4型 常染色体潜性(劣性)
COQ9 原発性コエンザイムQ10欠乏症5型 常染色体潜性(劣性)
COX20 ミトコンドリア複合体IV欠損症(核遺伝子型11) 常染色体潜性(劣性)
CPLANE1 ジュベール症候群17型/口顔指症候群6型 常染色体潜性(劣性)
CSTB 進行性ミオクローヌスてんかん1A型(ウンフェルリヒト・ルントボルク病) 常染色体潜性(劣性)
CWF19L1 常染色体潜性脊髄小脳失調症17型 常染色体潜性(劣性)
CYP27A1 脳腱黄色腫症 常染色体潜性(劣性)
CYP7B1 痙性対麻痺5A型 常染色体潜性(劣性)
DNAJC19 3-メチルグルタコン酸尿症5型 常染色体潜性(劣性)
EIF2B1 白質消失病(1型) 常染色体潜性(劣性)
EIF2B2 白質消失病2型 常染色体潜性(劣性)
EIF2B3 白質消失病3型 常染色体潜性(劣性)
EIF2B4 白質消失病4型 常染色体潜性(劣性)
EIF2B5 白質消失病5型 常染色体潜性(劣性)
FA2H 痙性対麻痺35型 常染色体潜性(劣性)
FBXL4 ミトコンドリアDNA枯渇症候群13型 常染色体潜性(劣性)
FGF14 脊髄小脳失調症27A型(SCA27A、別名:先天性眼振4型)。脊髄小脳失調症27B型(SCA27B)の原因であるGAAリピート伸長は、このパネルでは調べられません 常染色体顕性(優性)
FLVCR1 網膜色素変性を伴う後索性運動失調症 常染色体潜性(劣性)
FXN フリードライヒ運動失調症(主な原因はGAAリピート伸長で、このパネルでは調べられない) 常染色体潜性(劣性)
GALC クラッベ病 常染色体潜性(劣性)
GBA2 痙性対麻痺46型 常染色体潜性(劣性)
GFAP アレキサンダー病 常染色体顕性(優性)
GJC2 低髄鞘性白質ジストロフィー2型/痙性対麻痺44型 常染色体潜性(劣性)
GOSR2 進行性ミオクローヌスてんかん6型 常染色体潜性(劣性)
GRID2 常染色体潜性脊髄小脳失調症18型 常染色体潜性(劣性)
GRM1 脊髄小脳失調症44型(顕性)/常染色体潜性脊髄小脳失調症13型(潜性) 常染色体顕性(優性)・常染色体潜性(劣性)
GSS グルタチオン合成酵素欠損症 常染色体潜性(劣性)
HEPACAM 皮質下嚢胞をもつ大頭型白質脳症2A型(潜性)・2B型(顕性) 常染色体潜性(劣性)・常染色体顕性(優性)
INPP5E ジュベール症候群1型 常染色体潜性(劣性)
ITPR1 脊髄小脳失調症15型・29型/ギレスピー症候群 常染色体顕性(優性)(ギレスピー症候群は潜性もある)
KCNA1 反復発作性運動失調症1型(EA1) 常染色体顕性(優性)
KCNC3 脊髄小脳失調症13型(SCA13) 常染色体顕性(優性)
KCND3 脊髄小脳失調症19型(SCA19) 常染色体顕性(優性)
KCNJ10 SeSAME症候群(てんかん・運動失調・難聴・尿細管の異常) 常染色体潜性(劣性)
KIF1A KIF1A関連神経疾患(痙性対麻痺30型(顕性)・30B型(潜性)・NESCAV症候群など) 常染色体顕性(優性)・常染色体潜性(劣性)
KIF1C 常染色体潜性痙性運動失調症2型 常染色体潜性(劣性)
KIF5A 痙性対麻痺10型 常染色体顕性(優性)
KIF7 アクロカロサル症候群など 常染色体潜性(劣性)
LAMA1 ポレッティ・ボルツハウザー症候群 常染色体潜性(劣性)
MLC1 皮質下嚢胞をもつ大頭型白質脳症1型 常染色体潜性(劣性)
MRE11 毛細血管拡張性運動失調症様疾患1型 常染色体潜性(劣性)
MTPAP 常染色体潜性痙性運動失調症4型 常染色体潜性(劣性)
NDUFS1 ミトコンドリア複合体I欠損症(核遺伝子型5) 常染色体潜性(劣性)
NDUFS7 ミトコンドリア複合体I欠損症(核遺伝子型3) 常染色体潜性(劣性)
OFD1 口顔指症候群1型/ジュベール症候群10型 X連鎖
OPA1 視神経萎縮1型/運動失調などを伴う視神経萎縮(顕性)/ベール症候群(潜性) 常染色体顕性(優性)・常染色体潜性(劣性)
OPA3 3-メチルグルタコン酸尿症3型(潜性)/視神経萎縮3型(顕性) 常染色体潜性(劣性)・常染色体顕性(優性)
OPHN1 X連鎖性症候群性知的発達症(ビヤール型) X連鎖
PAX6 無虹彩症などの目の発生の病気 常染色体顕性(優性)
PDSS1 原発性コエンザイムQ10欠乏症2型 常染色体潜性(劣性)
PDSS2 原発性コエンザイムQ10欠乏症3型 常染色体潜性(劣性)
PEX10 ペルオキシソーム形成異常症6A型(ツェルベーガー)・6B型 常染色体潜性(劣性)
PEX7 レフサム病/近位肢節型点状軟骨異形成症1型 常染色体潜性(劣性)
PHYH レフサム病 常染色体潜性(劣性)
PLP1 ペリツェウス・メルツバッハ病/痙性対麻痺2型 X連鎖
PNKD 発作性非運動誘発性ジスキネジア1型 常染色体顕性(優性)
PNKP 眼球運動失行を伴う運動失調症4型(AOA4) 常染色体潜性(劣性)
PNPLA6 ブーシェ・ノイハウザー症候群/痙性対麻痺39型など 常染色体潜性(劣性)
POLG POLG関連疾患(アルパース症候群、感覚性失調性ニューロパチー・構音障害・眼筋麻痺〔SANDO〕など) 常染色体潜性(劣性)(一部は顕性)
POLR3A 低髄鞘性白質ジストロフィー7型 常染色体潜性(劣性)
POLR3B 低髄鞘性白質ジストロフィー7型・8型 常染色体潜性(劣性)
PRKCG 脊髄小脳失調症14型(SCA14) 常染色体顕性(優性)
PRRT2 発作性運動誘発性ジスキネジア1型/良性家族性乳児けいれん2型 常染色体顕性(優性)
RORA てんかんや小脳失調を伴うことがある知的発達症 常染色体顕性(優性)
RPGRIP1L ジュベール症候群7型/メッケル症候群5型 常染色体潜性(劣性)
RRM2B ミトコンドリアDNA枯渇症候群8A型など 常染色体潜性(劣性)(一部は顕性)
RUBCN 常染色体潜性脊髄小脳失調症15型 常染色体潜性(劣性)
SACS シャルルボワ・サグネ型痙性運動失調症(ARSACS) 常染色体潜性(劣性)
SETX 眼球運動失行を伴う運動失調症2型(AOA2)(潜性)/若年性筋萎縮性側索硬化症4型(顕性) 常染色体潜性(劣性)・常染色体顕性(優性)
SIL1 マリネスコ・シェーグレン症候群 常染色体潜性(劣性)
SLC16A2 アラン・ハーンドン・ダドリー症候群 X連鎖
SLC1A3 反復発作性運動失調症6型 常染色体顕性(優性)
SLC2A1 GLUT1欠損症候群 常染色体顕性(優性)(まれに潜性)
SLC52A2 ブラウン・ビアレット・バン・ラーレ症候群2型 常染色体潜性(劣性)
SLC52A3 ブラウン・ビアレット・バン・ラーレ症候群1型 常染色体潜性(劣性)
SLC9A6 クリスチャンソン型X連鎖性症候群性知的発達症 X連鎖
SNX14 常染色体潜性脊髄小脳失調症20型 常染色体潜性(劣性)
SPAST 痙性対麻痺4型(遺伝性痙性対麻痺で最も多い型のひとつ) 常染色体顕性(優性)
SPG11 痙性対麻痺11型 常染色体潜性(劣性)
SPR セピアプテリン還元酵素欠損症 常染色体潜性(劣性)
SPTBN2 脊髄小脳失調症5型(SCA5)(顕性)/常染色体潜性脊髄小脳失調症14型(潜性) 常染色体顕性(優性)・常染色体潜性(劣性)
STUB1 脊髄小脳失調症48型(SCA48)(顕性)/常染色体潜性脊髄小脳失調症16型(潜性) 常染色体顕性(優性)・常染色体潜性(劣性)
TCTN1 ジュベール症候群13型 常染色体潜性(劣性)
TCTN2 ジュベール症候群24型/メッケル症候群8型 常染色体潜性(劣性)
TCTN3 ジュベール症候群18型/口顔指症候群4型 常染色体潜性(劣性)
TDP1 軸索性ニューロパチーを伴う脊髄小脳失調症1型(SCAN1) 常染色体潜性(劣性)
TGM6 脊髄小脳失調症35型(SCA35) 常染色体顕性(優性)
TMEM216 ジュベール症候群2型/メッケル症候群2型 常染色体潜性(劣性)
TMEM231 ジュベール症候群20型/メッケル症候群11型 常染色体潜性(劣性)
TMEM237 ジュベール症候群14型 常染色体潜性(劣性)
TMEM240 脊髄小脳失調症21型(SCA21) 常染色体顕性(優性)
TMEM67 ジュベール症候群6型/メッケル症候群3型/COACH症候群1型など 常染色体潜性(劣性)
TPP1 神経セロイドリポフスチン症2型/常染色体潜性脊髄小脳失調症7型 常染色体潜性(劣性)
TTPA ビタミンE単独欠乏性運動失調症(AVED) 常染色体潜性(劣性)
TUBB4A 髄鞘化不全性白質ジストロフィー6型(H-ABC)/ジストニア4型 常染色体顕性(優性)
TWNK ミトコンドリアDNA枯渇症候群7型(肝脳型)など 常染色体潜性(劣性)(一部は顕性)
TYMP ミトコンドリア神経胃腸脳筋症(MNGIE) 常染色体潜性(劣性)
VAMP1 常染色体顕性痙性運動失調症1型(顕性)/先天性筋無力症候群25型(潜性) 常染色体顕性(優性)・常染色体潜性(劣性)
VLDLR 小脳低形成・知的発達症・平衡障害症候群1型(CAMRQ1) 常染色体潜性(劣性)
WDR73 ギャロウェイ・モワト症候群1型 常染色体潜性(劣性)
WDR81 小脳失調・知的発達症・平衡障害症候群2型(CAMRQ2) 常染色体潜性(劣性)
WFS1 ウォルフラム症候群1型(潜性)/常染色体顕性難聴6型など(顕性) 常染色体潜性(劣性)・常染色体顕性(優性)
WWOX 常染色体潜性脊髄小脳失調症12型/発達性てんかん性脳症28型 常染色体潜性(劣性)
ZNF423 ネフロン癆14型 常染色体顕性(優性)・常染色体潜性(劣性)

※病気の名前と遺伝のしかたはOMIMの登録(HPOのアノテーション、2026年9月版で照合)による。病気の名前は、関係する主なものに絞って記載しています。C12orf65は現在MTRFRという名前で登録されています。

当院のNIPT(インペリアルプラン)でも調べられる4遺伝子

このパネルの遺伝子のうち、CAMTA1・GFAP・KIF1A・TUBB4Aの4つは、当院のNIPTのインペリアルプランでも調べられます。ダイヤモンドプランの対象遺伝子には、このパネルの遺伝子は含まれていません。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性の場合は、確定検査(羊水検査・絨毛検査)を院内で受けられます。

4. この検査でわからないこと(検査の限界)

この検査が調べるのは、134遺伝子の中の小さな変化と、欠失・重複です。同じ配列のくり返しが長くなる「リピート伸長」や、調べていない遺伝子の変化は見つけられません。遺伝子検査には、どれにも必ず限界があります。

リピート伸長は調べられない:フリードライヒ運動失調症と脊髄小脳失調症

この検査は、次世代シーケンサーで遺伝子の文字(塩基)を読む方法です。この方法では、同じ配列のくり返しが長くなる変化を正しく測れません。

⚠️ フリードライヒ運動失調症は、この検査だけでは確かめられません

フリードライヒ運動失調症の約96%は、FXN遺伝子の2本ともにGAAのくり返しが長くなる変化(GAAリピート伸長)が原因です。残りの約4%も、片方はGAAリピート伸長で、もう片方が遺伝子の小さな変化や大きな欠失です[4]。つまり、この病気のほぼすべてでGAAリピート伸長が関わっており、このパネルだけでは診断を確かめられません。フリードライヒ運動失調症を疑うときは、リピート伸長検査を選びます。

脊髄小脳失調症のSCA1・2・3・6・7やDRPLAも、リピート伸長が原因です。たとえばSCA6の原因遺伝子CACNA1Aは、このパネルの134遺伝子に入っていません。これらを疑うときは、第2章の表のリピート伸長検査を選んでください。リピート伸長の病気では、世代を重ねるごとに発症が早く、重くなる「表現促進現象」がみられることがあります。

そのほかに見つけられない変化

  • ●染色体の位置が入れ替わる変化(転座・逆位)
  • ●遺伝子のスイッチの部分(プロモーター)や、遺伝子の中の読まれない部分の深いところ(タンパク質の設計図の部分から20塩基以上離れた場所)の変化
  • ●体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク):この検査は、モザイクを見つけることを目的に作られていません。
  • ●1つのエクソンだけの欠失・重複:見つかることもありますが、いつも見つけられるわけではありません。
  • ●よく似た配列(偽遺伝子など)が別の場所にある部分:読み分けが難しく、判定に影響することがあります。
  • ●134遺伝子以外の遺伝子の変化

検査の精度を保つしくみもあります。遺伝子の対象の範囲の99%以上を、同じ場所を20回以上読み取る深さで調べます。読み取りの質が低かった変化は別の方法(サンガー法)で確かめ、見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。なお、1つの遺伝子まるごとの欠失・重複は血液でも頬の粘膜でも調べられますが、2つ以上つながったエクソンの大きさの欠失・重複を調べられるのは血液の検体だけです。

陰性でも否定できない理由と、VUS

病気の原因となる変化が見つからなくても、遺伝性の運動失調ではないとは言い切れません。上に書いたように、この検査では見つけられない種類の変化や、まだ原因として知られていない遺伝子があるためです。

また、病気の原因かどうかまだ判断できない変化(VUS:意義がまだわからない変化)が見つかることがあります。VUSは、それだけで診断や、ご家族の発症リスクの判断に使うことはしません。ただし、その変化が病気の原因かどうかを調べるために、ご家族の検査を行うことはあります。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。なお、ご希望により、VUSを報告に含めない設定(VUS除外、無料)も選べます。

5. 結果が出たあと:陽性・陰性・VUS

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。

病的変異が見つかったら、次にできること

わかるだけでは意味がありません。原因の遺伝子がわかったあとに何ができるかを、立場ごとにお伝えします。

① お子さんご本人:病名が決まり、見張ることが決まる
病名がわかると、その病気で起こりやすい合併症と、いつ何を調べればよいかが決まります。たとえばフリードライヒ運動失調症では、肥大型心筋症が約3分の2の方に、糖尿病が最大30%の方にみられるとされ、心臓と血糖の定期的な確認が大切になります[4]。毛細血管拡張性運動失調症では、放射線に対する感受性が高いため放射線治療は避けるべきとされ、悪性腫瘍への注意も必要です[3]。

病気によっては、治療に直接つながります。ビタミンE単独欠乏性運動失調症(TTPA)では、生涯にわたるビタミンEの補充が治療の中心で、症状が出る前のきょうだいに補充を始めると発症を防げるとされています[5]。脳腱黄色腫症(CYP27A1)では、ケノデオキシコール酸による治療があり、症状が出る前に始めると症状の出現を防げる可能性が示されています[6]。フリードライヒ運動失調症では、オマベロキソロンが米国と欧州で16歳以上の方に承認されています[4](日本で使えるかは主治医にご確認ください)。治療やリハビリテーションは、神経内科・小児神経科など専門の医療機関で受けていただきます。

ACMG(米国臨床遺伝・ゲノム学会)が行った系統的レビューでは、エクソーム・ゲノム検査の結果について報告した167件の研究で、最も多く報告された成果は「診療方針の変化」と「子どもを持つことに関する意思決定の変化」でした[7]。これは主に先天異常や知的障害のある子どもの研究ですが、病名がつくと次の一手が決まる、ということを示しています。

② 症状のないご両親・きょうだい:保因者かどうか、自分の健康で気をつけること
常染色体潜性(劣性)の病気では、ご両親はそれぞれ片方の遺伝子に変化をもつ保因者であることが多く、ふつう症状はありません。ただし、病気によっては保因者にも気をつけたいことがあります。毛細血管拡張性運動失調症の原因であるATMの変化を片方だけもつ方は、病気にはなりませんが、がんのリスクが一般の方より高く、とくに50歳未満の女性では乳がんのリスクが上がるとされ、年齢に合わせた乳がんの検診を強めることが勧められています[3]。お子さんの1回の検査が、ご両親ご自身の健康管理の手がかりになることもあるのです。

③ 次のお子さんを考えるとき:確率と、知ってから選べること
次のお子さんで同じ病気が起こる確率は、遺伝のしかたで大きく変わります。

  • ●常染色体潜性(劣性):ご両親がともに保因者なら、次のお子さんごとに4分の1の確率で発症し、2分の1の確率で保因者になります(フリードライヒ運動失調症・毛細血管拡張性運動失調症のGeneReviewsの記載)[3][4]。
  • ●常染色体顕性(優性)で、親が同じ変化をもつ場合:お子さんごとに2分の1です。同じ変化でも症状の重さは人によって違うことがあり、「親が軽いから子も軽い」とは言えません。
  • ●X連鎖:お母さんが保因者かどうかで変わります。お母さんが保因者なら、男のお子さんは2分の1の確率で受け継ぎます。
  • ●お子さんで新しく起きた変化(de novo)の場合:ご両親の血液に変化がなくても、卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化がある「性腺モザイク」のことがあります。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。

お子さんで新しく起きた変化だとわかった場合、それはご両親のせいではありません。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもないのです。

原因がわかっていれば、次の妊娠で備えることができます。ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。原因がわからないままでは、出生前に何を調べればよいかを決められません。

CAMTA1・GFAP・KIF1A・TUBB4Aの病気であれば、当院のNIPTのインペリアルプランでも調べられます(妊娠9週から、6〜8週は臨床研究)。体外受精でできた受精卵を調べるPGT-M(着床前遺伝学的検査)は、日本では日本産科婦人科学会の指針(2026年9月改定)にもとづく審査を経て行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。もちろん、何も検査をせずに妊娠・出産を迎えることも、そのまま選べる選択肢です。

④ ご家族:同じ変化があるかを、ピンポイントで調べられる
ご家族の中で原因の変化がわかると、きょうだい・ご両親・いとこなどは、同じ場所だけを調べて、変化をもっているかどうかを確かめられます。ほかのお子さん(きょうだい)が将来、結婚や妊娠を考えるときに、保因者かどうかを知る手がかりにもなります。症状のない方の検査は、ご本人の同意にもとづいて行います。

⑤ 当院でのその後
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、次にどうするかを一緒に考えます。ご家族の検査、パートナーの保因者検査、妊娠したときの出生前診断まで、当院で続けてご相談いただけます(遺伝カウンセリング料は第7章のとおりです)。

陰性・VUSだったとき

原因が見つからなかった場合は、症状に合わせて次の検査を考えます。リピート伸長の病気が疑われるなら運動失調リピート伸長遺伝子パネル検査、症状が広いなら全エクソーム検査(WES)が選択肢です。VUSが見つかった場合は、ご家族の検査結果や、今後の研究の進み方をふまえて意味を考えます。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

保因者検査:パートナーやきょうだいが知りたいとき

常染色体潜性の病気では、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかで、お子さんへの確率が変わります。妊娠の前に知りたい方には、拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子、さらに女性版1009遺伝子・男性版911遺伝子)があります。この病気の遺伝子が対象かどうかは、遺伝子一覧でご確認ください。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(女性787遺伝子・男性714遺伝子、単独では受けられません)もあります。

結果の報告書の言語

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

6. 日本の制度(2026年10月時点)

脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)は、指定難病18です。難病情報センターのページ(2025年12月情報更新)では、遺伝性の病型の例としてSCA1・2・3・6・7・17・31、DRPLAなどが挙げられ、平成15年の研究班の解析では、孤発性が67.2%、常染色体顕性(優性)遺伝性が27%、常染色体潜性(劣性)遺伝性が1.8%とされています。

18歳未満のお子さんでは、小児慢性特定疾病(神経・筋疾患)の資料に、脊髄小脳変性症、ジュベール症候群関連疾患、白質消失病、皮質下嚢胞をもつ大頭型白質脳症などの名前が掲載されています(小児慢性特定疾病情報センター、2026年10月確認)。お子さんの病気が対象になるか、認定の条件や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。制度の申請でも、遺伝子検査で病名が確定していることが手がかりになります。

7. 検査の流れと費用・日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、オンライン診療でも受けられます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査内容 早期発症運動失調症に関係する134遺伝子の塩基配列(一塩基の変化・小さな挿入や欠失)と、欠失・重複
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急(結果までの期間が約7日短くなります)55,000円/VUS除外(無料)
検体 血液(EDTAチューブ4mL×2本)、抽出DNA、頬の内側の粘膜(頬粘膜スワブ)、唾液
オンライン診療 唾液・頬の粘膜・血液のいずれでも可能(血液の場合は全国の提携医療機関で採血)

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

オンライン診療(ビデオ通話での診療)では、遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、決められたキットと手順で採取していただく必要があります。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

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唾液・頬の粘膜ならオンライン診療で受けられます。結果は臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

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8. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【原因がわかってはじめて、次の妊娠を考えられる】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

子どものうちに始まる運動失調では、検査を受けるのはお子さんでも、結果を受け止めて次を考えるのはご両親です。原因がわかれば、次のお子さんで同じことが起こる可能性がどれくらいあるか、そして次の妊娠でどう備えられるかを、具体的に考えられるようになります。原因がわからないままでは、出生前に何を調べればよいかも決められません。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで次の妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 脊髄小脳変性症は子どもや孫に遺伝しますか?

遺伝性の病型であれば、遺伝することがあります。日本の脊髄小脳変性症では、平成15年の研究班の解析で孤発性が67.2%、常染色体顕性(優性)遺伝性が27%、常染色体潜性(劣性)遺伝性が1.8%とされています(難病情報センター)。常染色体顕性の病型で親が原因の変化をもつ場合、お子さんごとに2分の1の確率で受け継ぎます。どの病型かによって確率が変わるため、まず原因を調べることが大切です。

Q2. この検査でフリードライヒ運動失調症はわかりますか?

この検査だけでは確かめられません。フリードライヒ運動失調症の約96%はFXN遺伝子の2本ともにGAAリピート伸長があり、残りの約4%も片方はGAAリピート伸長です。この検査はリピート伸長を調べられないため、フリードライヒ運動失調症を疑うときは、リピート伸長検査を選びます。

Q3. 脊髄小脳失調症(SCA)は調べられますか?

SCA5・13・14・15・19・21・28・35・44・48など、遺伝子の小さな変化が原因の型は、このパネルの遺伝子で調べられます。一方、SCA1・2・3・6・7やDRPLAはリピート伸長が原因のため、この検査では見つけられません。これらを疑うときは、運動失調リピート伸長遺伝子パネル検査(税込495,000円)や、単一遺伝子のリピート伸長検査(税込275,000円)を選びます。

Q4. 遺伝子検査の費用はいくらですか?保険は使えますか?

この検査の費用は税込330,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。結果を約7日早く知りたい方には、至急オプション(55,000円)があります。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

Q5. 次の子どもで同じ病気が起こる確率は?

遺伝のしかたで変わります。常染色体潜性(劣性)でご両親がともに保因者なら、お子さんごとに4分の1です。お子さんで新しく起きた変化の場合も、ご両親の卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化があることがあるため、確率は最大で2分の1とお伝えしています。原因がわかっていれば、次の妊娠で絨毛検査・羊水検査による出生前診断を計画できます。

Q6. 家族に運動失調の人がいると、結婚に差し支えますか?

遺伝の確率は、病気とご家族ごとに違います。検査で、ご自身が原因の変化をもっているか、パートナーが同じ遺伝子の保因者か、お子さんへの確率はどれくらいかがわかります。知ったうえで、出生前診断などの選択肢も含めて計画を立てられます。当院では、結婚や妊娠を考えている段階から遺伝カウンセリングでご相談いただけます。

Q7. 結果はどのように伝えられますか?

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。報告書は基本的に日本語版で、英語の原本が必要な方には英語版をお渡しします(検査の時にお申し出ください)。英語版と日本語版の双方は追加料金5,500円です。

Q8. 陰性だったら、遺伝性の運動失調ではないということですか?

言い切れません。この検査では、リピート伸長、モザイク、遺伝子の調節領域の変化、134遺伝子以外の遺伝子の変化などは見つけられません。症状に合わせて、リピート伸長検査や全エクソーム検査(WES)を考えます。

🧬 一度の検査で、お子さんとご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。運動失調の原因がわかれば、お子さんの合併症への備えだけでなく、ご家族の検査や、次の妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Faye F, Crocione C, Anido de Peña R, et al. Time to diagnosis and determinants of diagnostic delays of people living with a rare disease: results of a Rare Barometer retrospective patient survey. Eur J Hum Genet. 2024;32(9):1116-1126. [DOI: 10.1038/s41431-024-01604-z]
  • [2] Takahashi Y, Date H, Oi H, et al. Six years’ accomplishment of the Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases: nationwide project in Japan to discover causes, mechanisms, and cures. J Hum Genet. 2022;67(9):505-513. [DOI: 10.1038/s10038-022-01025-0]
  • [3] Veenhuis S, van Os N, Weemaes C, Kamsteeg EJ, Willemsen M. Ataxia-Telangiectasia. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 1999 (Last Revision 2025 Dec 4). [NCBI Bookshelf NBK26468]
  • [4] Bidichandani SI, Delatycki MB, Napierala M, Duquette A. Friedreich Ataxia. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 1998 (Updated 2025 Jun 26). [NCBI Bookshelf NBK1281]
  • [5] Schuelke M. Ataxia with Vitamin E Deficiency. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2005 (Updated 2023 Mar 16). [NCBI Bookshelf NBK1241]
  • [6] Federico A, Gallus GN. Cerebrotendinous Xanthomatosis. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2003 (Revised 2024 Nov 14). [NCBI Bookshelf NBK1409]
  • [7] Malinowski J, Miller DT, Demmer L, et al. Systematic evidence-based review: outcomes from exome and genome sequencing for pediatric patients with congenital anomalies or intellectual disability. Genet Med. 2020;22(6):986-1004. [DOI: 10.1038/s41436-020-0771-z](PMID: 32203227)

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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