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成人発症の脊髄小脳変性症(遅発性運動失調症)遺伝子パネル検査|57遺伝子でわかること・子どもに遺伝する確率・リピート伸長検査との違い

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

成人発症の脊髄小脳変性症(遅発性運動失調症)遺伝子パネル検査

脊髄小脳変性症(遅発性運動失調症)は、小脳や脊髄の神経がゆっくり衰えて、歩くときのふらつき・ろれつの回りにくさ・手の動かしにくさが少しずつ進む病気の総称です。この検査は、18歳以降に発症するタイプの原因として知られる57の遺伝子を一度に調べます。原因がわからないまま病院を回る時間を、1回の検査で短くできる可能性があります。ただし、日本で多い型の多くは「リピート伸長」という別の種類の変化が原因で、この検査では見つかりません。このページでは、脊髄小脳変性症がどれくらい遺伝するのか、どの検査を先に受けるとよいか、結果が出たあとに何ができるかを、臨床遺伝専門医が順番にご説明します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

18歳以降に発症する脊髄小脳変性症(遅発性運動失調症)の原因になる57遺伝子の小さな変化(一塩基の変化・小さな挿入や欠失、遺伝子単位の欠失・重複)を一度に調べます。日本で多いSCA3・SCA6・SCA31・DRPLAなどのリピート伸長は調べられないので、それらを先に別の検査で確かめます。

🧬 Q. 脊髄小脳変性症は遺伝しますか?

日本では約3分の2(67.2%)が遺伝しない孤発性で、遺伝性は約3分の1です。遺伝性の大部分は常染色体顕性(優性)遺伝で、お子さんに受け継がれる確率は1人ごとに2分の1です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。病名が決まると、ビタミンE欠乏性運動失調症や脳腱黄色腫症のように治療法がある型も見つかります。ご家族の検査、意義がまだわからない変化(VUS)の扱い、院内での出生前診断までご相談いただけます。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 発症年齢でしぼれない方は総合パネル(153遺伝子)へ

1. 脊髄小脳変性症(遅発性運動失調症)とは:遺伝するのは約3分の1

脊髄小脳変性症は、小脳や脊髄の神経が少しずつ衰えて、運動失調(ふらつき・手足の動きのぎこちなさ)が進む病気の総称です。日本では約3分の2が遺伝しない孤発性、約3分の1が遺伝性です。遺伝性のうち、18歳以降に発症するものを「遅発性(成人発症)」と呼び、このページの検査はその原因遺伝子を調べます。

日本の住民を対象にした調査では、脊髄小脳変性症の有病率は人口10万人あたり18.5人と推定され、そのうち67.2%が孤発性でした[2]。難病情報センターによると、遺伝性の内訳は常染色体顕性(優性)遺伝が27%、常染色体潜性(劣性)遺伝が1.8%で、残りは「その他」と「痙性対麻痺」です。指定難病18「脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)」の医療受給者証をもつ方は、平成24年度で25,447人でした(2026年10月時点で確認)。世界の調査をまとめた研究では、遺伝性の運動失調症と遺伝性痙性対麻痺を合わせると、おおよそ1万人に1人と見積もられています[3]。

体の動きの微調整をしている小脳では、プルキンエ細胞という神経細胞が中心的な役割を担っています。原因遺伝子の多くは、この細胞の電気の信号や、細胞の中のたんぱく質の処理にかかわっています。進み方や見通し(余命・寿命)は、型によって大きく違います。同じ「脊髄小脳変性症」でも、型がわからないと見通しを語れないことが、遺伝子検査で型を確かめる理由のひとつです。

脊髄小脳変性症の初期症状:ふらつき・ろれつ・手の動き・目の揺れ

初期症状として多いのは、歩くときのふらつき(足を広げて歩く・まっすぐ歩きにくい)、階段の下りがこわい、字が書きにくい・箸が使いにくいといった手のぎこちなさ、ろれつが回りにくい話し方(構音障害)、目が揺れて物が二重に見えることなどです。進むと、飲み込みにくさ(むせやすさ)が出ることもあります。

型によっては、運動失調だけでなく、足のつっぱり(痙性)、手足のしびれ(末梢神経の障害)、パーキンソン病のような症状、立ちくらみや排尿の障害(自律神経の症状)、物忘れなどを伴います。どの症状を伴うかが、型をしぼる手がかりになります。

多系統萎縮症とはどう違う?

多系統萎縮症は、孤発性(遺伝しないタイプ)の代表です。日本の調査では、孤発性のうち64.7%が、多系統萎縮症の一型であるオリーブ橋小脳萎縮症でした[2]。指定難病でも、脊髄小脳変性症(指定難病18)は「多系統萎縮症を除く」とされ、多系統萎縮症は別に扱われています。ご家族に同じ病気の方がいない場合でも、遺伝性の型が見つかることはありますが、ふらつきの原因が遺伝子にあるかどうかは、症状と家族歴だけでは決められません。

日本で多い型(SCA3・SCA6・SCA31・DRPLA)は、リピート伸長が原因

難病情報センターによると、日本で頻度が高い遺伝性脊髄小脳変性症は、SCA3(脊髄小脳失調症3型、マシャド・ジョセフ病)、SCA6、SCA31、DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)です。この4つはいずれも、DNAの中の短い繰り返し配列が異常に長くなる「リピート伸長」が原因です。SCA3・SCA6・DRPLAは、伸びた繰り返しがグルタミンという部品を長くつなげてしまう「ポリグルタミン病」の仲間です。

リピート伸長は、このページの57遺伝子パネル(配列を読む検査)では見つけられません。当院では、型ごとのリピート伸長検査(マシャド・ジョセフ病(SCA3)のATXN3リピート伸長検査、SCA6のリピート伸長検査、SCA31のリピート伸長検査、DRPLAのATN1遺伝子検査)と、まとめて調べる運動失調リピート伸長遺伝子パネル検査(18か所)をご用意しています。DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)の病気の解説は、疾患のページにまとめていきます。

また、2023年には、FGF14遺伝子の中(イントロン)にあるGAAという3文字の繰り返しが伸びる「SCA27B」が、成人になってから発症する小脳失調症の原因として報告されました。カナダ・ドイツ・オーストラリア・インドの患者さんを調べた研究では、遅発性小脳失調症の37%(128人)でこの伸長が見つかり、症状は50代で始まることが多いとされています[4]。日本人での頻度はこの研究からはわかりません。SCA27Bも配列を読む検査では見つからないため、FGF14遺伝子GAAリピート伸長検査(SCA27B)で調べます。

2. 脊髄小脳変性症は遺伝する?子ども・孫・きょうだいへの確率

遺伝性脊髄小脳変性症の大部分は常染色体顕性(優性)遺伝で、親が発症していても、お子さんが必ず発症するわけではありません。お子さんが原因を受け継ぐ確率は、1人ごとに2分の1です。型によって遺伝形式が違い、子ども・孫・きょうだいへの確率も変わります。だからこそ、型を確かめることに意味があります。

顕性(優性)遺伝:お子さんへは2分の1。表現促進現象と「父親から伝わるとき」の注意

常染色体顕性(優性)遺伝では、2本ある遺伝子のうち1本に原因があれば発症しうるため、お子さんが受け継ぐ確率は1人ごとに2分の1です[1]。性別には関係しません。上のお子さんが受け継いだかどうかで、下のお子さんの確率が変わることもありません。難病情報センターは、お子さんが2人いる場合、2人とも受け継ぐ確率が25%、1人だけが50%、2人とも受け継がない確率が25%と説明しています。

リピート伸長が原因の型では、世代を重ねるごとに繰り返しが長くなり、発症が早く・重くなることがあります。これを「表現促進現象」といいます。遺伝性疾患の解説書(GeneReviews)は、SCA1・SCA2・SCA7では父親から伝わるときに表現促進現象が起こりやすく、SCA3でも父親からのほうが起こりやすい可能性があるとしています。一方、SCA8やFXTASでは母親から伝わるときに起こりやすく、SCA6やフリードライヒ運動失調症では見られないとされています[1]。「父親から遺伝する?」という疑問への答えは、「父親からでも母親からでも受け継ぎます。型によっては、父親から伝わるときに発症が早まりやすいことがあります」です。

⚠️ 「自分が軽いから、子どもも軽い」とは言えません

表現促進現象がある型では、親御さんが軽い症状や遅い発症でも、受け継いだお子さんが早く・重く発症することがあります。症状の重さだけで判断せず、型を確かめたうえで計画することに意味があります。

潜性(劣性)遺伝:きょうだいは4分の1、お子さんはふつう保因者

常染色体潜性(劣性)遺伝の型(フリードライヒ運動失調症、ビタミンE欠乏性運動失調症、脳腱黄色腫症など)では、ご両親がともに保因者(変化を1本だけもち、発症しない人)で、患者さんのきょうだいが発症する確率は、受精の時点で4分の1です[1]。患者さんご本人のお子さんへの確率は、難病情報センターでは「非常に低い」とされています。お子さんは変化を1本受け継いで保因者になりますが、パートナーも同じ遺伝子の保因者でなければ発症しないためです。パートナーが保因者かどうかは、拡大版保因者スクリーニングなどで確かめられます(対象の遺伝子は一覧でご確認ください)。

X連鎖(FXTAS):お母さんから伝わるときに注意

このパネルに含まれるFMR1遺伝子は、FXTAS(脆弱X関連振戦/失調症候群)の原因です。X連鎖で伝わり、繰り返し配列が伸びるのは、ほとんどがお母さんから伝わるときとされています[1]。FXTASの多くは繰り返し配列(CGGリピート)の伸長が原因で、このパネルでは見つからないため、FMR1遺伝子リピート伸長検査で調べます。

脊髄小脳変性症は孫に遺伝する?隔世遺伝はある?

顕性遺伝の型では、お子さんが原因を受け継いでいなければ、そのお子さんから孫に伝わることはありません。お子さんが受け継いでいれば、孫が受け継ぐ確率は1人ごとに2分の1です。つまり、孫への確率は「間の世代が受け継いでいるか」で決まります。

「祖父母と孫だけが発症していて、間の親は元気」という家族では、隔世遺伝のように見えることがあります。多くは、親御さんも原因をもっているのに、まだ発症していない・症状がごく軽い、という状態です。原因をもっていても発症しない、または発症が遅い人がいることを「浸透率が100%ではない」といいます。症状の有無だけでは、その世代が受け継いでいるかどうかはわかりません。

結婚と遺伝:知ってから選べること

ご本人やご家族の病気を理由に、結婚に反対されて悩む方もいます。遺伝の確率は、型と家族ごとに違います。検査を受けると、ご自身が原因をもっているか、潜性遺伝ならパートナーが同じ遺伝子の保因者か、お子さんへの確率はどれくらいかが、具体的にわかります。そのうえで、妊娠したときの出生前診断や、海外でのPGT-M(着床前遺伝学的検査)など、選べる道があります。どの選択も、知ったうえでご本人とパートナーが決めることだと考えています。

3. この検査でわかること:57遺伝子パネルとリピート伸長検査の選び分け

成人になってから運動失調が出た方には、まずリピート伸長検査を、それで原因が見つからなければこの57遺伝子パネルを、という順番をおすすめします。日本で多い型の多くがリピート伸長によるもので、この検査ではそれが見つからないためです。この検査が調べるのは、リピート伸長以外の小さな変化(一塩基の変化・小さな挿入や欠失)と、遺伝子単位の欠失・重複です。

まずリピート伸長検査をすすめる理由

リピート伸長が原因の型には、SCA1・SCA2・SCA3・SCA6・SCA7・SCA8・SCA10・SCA12・SCA17・SCA27B・SCA31・SCA36・DRPLA・フリードライヒ運動失調症・FXTASなどがあります。このうち日本で多いSCA3・SCA6・SCA31・DRPLAを含むものは、運動失調リピート伸長遺伝子パネル検査でまとめて調べられます。ご家族の型がすでにわかっている場合は、その型の単独のリピート伸長検査を選びます。

💡 用語解説:リピート伸長と「配列を読む検査」

DNAには「CAGCAGCAG…」のような短い繰り返しの場所があり、これが異常に長くなる変化がリピート伸長です。このページの検査は、遺伝子の文字の並びを読んで1文字の違いなどを探す検査(次世代シーケンス)で、繰り返しの長さを正確に測ることはできません。繰り返しの長さを測るには、専用の検査が必要です。

総合パネル(153遺伝子)・早期発症パネル(134遺伝子)・痙性対麻痺パネルとの違い

🔍 症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
成人発症で、まだリピート伸長を調べていない/家族にSCA3・SCA6などの方 運動失調リピート伸長遺伝子パネル検査(18か所)、または型ごとの単独検査
18歳以降の発症で、リピート伸長検査では原因が見つからなかった このページの検査(遅発性運動失調症57遺伝子パネル)
18歳未満で発症した 早期発症運動失調症遺伝子検査パネル(134遺伝子)
発症の時期がはっきりしない、小児期発症の型も考えたい 運動失調症遺伝子検査パネル(153遺伝子)
ふらつきより足のつっぱり(痙性)が目立つ 遺伝性痙性対麻痺(HSP)遺伝子検査パネル
目を動かしにくい(眼球運動失行)を伴う 眼球運動失行を伴う運動失調症遺伝子検査

※どの検査が合うかは、発症の年齢・症状・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

全エクソーム・全ゲノムが向く場合

運動失調のほかに、知的な発達の遅れ・けいれん・ほかの臓器の症状など幅広い症状があって病気をしぼれない場合は、約2万の遺伝子をまとめて調べる全エクソーム検査(WES)や全ゲノム検査(WGS)のほうが向いていることがあります。

4. どんな人がこの検査を受けるとよいか

見た目・家族歴・症状だけでは、遺伝性かどうか、どの型かは決められません。家族に同じ病気の方がいなくても、遺伝性の型が見つかることがあります。次のような方に、この検査をおすすめしています。

症状があり、原因を確かめたい方

18歳以降に、歩くときのふらつき、手の動かしにくさ、ろれつの回りにくさ、目の揺れ、飲み込みにくさなどが出て、少しずつ進んでいる方です。とくに、リピート伸長検査で原因が見つからなかった方、画像検査で小脳の萎縮を指摘された方、運動失調に足のつっぱり・しびれ・物忘れなどを伴う方では、この検査で型がわかることがあります。

家族が発症し、ご自身の状態を知りたい方

ご家族にこのパネルの遺伝子で原因がわかった方がいれば、ご自身がその変化をもっているかを調べられます(症状がない方が受ける場合は、次の章の発症前診断にあたります)。ご家族の原因がまだわかっていない場合は、まず発症しているご家族が検査を受けると、ほかのご家族がピンポイントで調べられるようになります。

受けなくてよい場合・別の検査が向いている場合

ご家族の原因がSCA3・SCA6などのリピート伸長だとすでにわかっている方は、この検査ではなく、その型の単独のリピート伸長検査を受けます。18歳未満で発症した方は早期発症のパネル、症状が神経以外にも広い方は全エクソーム・全ゲノムが向いています。比べる相手は検査の種類で、どれが合うかは遺伝カウンセリングでご一緒に決めます。

\ あなたの1回の検査が、ご家族を守る手がかりに /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

あなたの結果が、ご両親・きょうだい・お子さんがご自身の状態を知る手がかりになります。海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。

ご家族が発症している方は、遺伝カウンセリングを予約する(ご希望があれば検査まで受けられます) | どの検査がよいか迷う方へ

5. 発症前診断:知って、人生の計画を立てる

症状のない方が、ご家族でわかっている原因を自分がもっているかを調べることを、発症前診断(予測的検査)といいます。英国でハンチントン病の発症前検査を受けた人の理由の1位は「先の見えなさ(不確実性)を減らすため」で、70.5%でした[9]。わかったうえで、仕事、結婚や出産、住まい、介護の準備、ご家族との話し合いを計画したいと考える方がいます。

当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しています。知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。とくに「結婚するか」「子どもを持つか」は生き方そのものに関わる選択で、知ってから決めるのと、知らずに決めるのとでは意味が違う、と考えています。

知った結果がもし陽性でも、そこで終わりではありません。結婚・妊娠を考える方には、パートナーの検査や、妊娠したときの出生前診断の計画まで、当院で一緒に考えられます。成人になってから発症する病気の出生前診断については国内の指針があり、妊娠を考えるときは、出生前診断ができるかどうかも含めて当院でご相談いただけます。同じ悩みを扱ったコラム「発症前診断を断られ続けた方へ(ハンチントン病)」もあわせてご覧ください。

「自分もなるかもしれない」という不安を抱えて暮らす方へ

親やきょうだいが発症した方の中には、ちょっとつまずいた、字が書きにくい、と感じるたびに「始まったのでは」とおびえながら暮らしている方もいます。こうした不安を抱えながら暮らしている方もいます。

検査で、ご家族の原因の変化を受け継いでいないとわかれば、その変化による病気について、ご家族と同じ確率を心配しなくてよくなります。ただし、ほかの原因による病気まで否定できるわけではありません。受け継いでいるとわかった場合は、型によって治療や見張りの方法があり、治験の情報を集めたり、生活の計画を早めに立てたりすることができます(8章)。知らないでいることも選べます。検査の前にもあとにも、臨床遺伝専門医と時間をかけて考えていただけます。

知らないでいることも選べます/未成年の発症前診断は原則行いません

発症前診断は、結果を知ったあとの気持ちの変化も大きい検査です。陰性でも「自分だけ助かった」と感じてつらくなる方、陽性で一時的に落ち込む方もいます。当院では、検査の前に遺伝カウンセリングで十分に考える時間をとり、結果のあとも相談を続けられるようにしています。

米国人類遺伝学会は、子どものうちに治療などの手立てがない成人発症の病気については、発症前の検査を大人になるまで待つよう勧めています[10]。当院でも、成人になってから発症する病気について、未成年の方の発症前診断は原則として行いません。ご本人が大人になってから、ご自身で決めていただくことを大切にしています。

6. 調べる57遺伝子と、それぞれでわかる病気

この検査は、18歳以降に発症する脊髄小脳変性症・遺伝性運動失調症の原因として報告されている57遺伝子を調べます。小脳失調症(SCA)だけでなく、遺伝性痙性対麻痺、白質の病気、ミトコンドリアの働きの病気、治療法のある代謝の病気も含まれます。

🧬 対象の57遺伝子と主な病気

遺伝子 主な病気 遺伝のしかた
ABHD12 PHARC(多発ニューロパチー・難聴・運動失調・網膜色素変性・白内障) 潜性
AFG3L2 脊髄小脳失調症28型(SCA28)/常染色体潜性痙性失調症5型 顕性/潜性
ALS2 若年性筋萎縮性側索硬化症2型・乳児期発症上行性痙性麻痺 潜性
ANO10 常染色体潜性脊髄小脳失調症10型(SCAR10) 潜性
APTX 眼球運動失行を伴う運動失調症1型(AOA1) 潜性
ATL1 遺伝性痙性対麻痺3A型(SPG3A)/遺伝性感覚ニューロパチー1D型 顕性
C19orf12 MPAN(脳内鉄沈着を伴う神経変性症の一型) 潜性(顕性の報告もある)
CACNA1A 脊髄小脳失調症6型(SCA6)※リピート伸長は対象外/反復発作性運動失調症2型(EA2)/家族性片麻痺性片頭痛1型 顕性
CACNB4 反復発作性運動失調症5型(EA5) 顕性
CCDC88C 脊髄小脳失調症40型(SCA40) 顕性
CLCN2 運動失調を伴う白質脳症 潜性
CYP27A1 脳腱黄色腫症(CTX)※治療法あり 潜性
CYP7B1 遺伝性痙性対麻痺5型(SPG5) 潜性
DNMT1 常染色体顕性小脳性運動失調・難聴・ナルコレプシー/遺伝性感覚ニューロパチー1E型 顕性
EEF2 脊髄小脳失調症26型(SCA26) 顕性
EIF2B1/EIF2B2/EIF2B3/EIF2B4/EIF2B5 白質消失病(VWM) 潜性
ELOVL4 脊髄小脳失調症34型(SCA34) 顕性
ELOVL5 脊髄小脳失調症38型(SCA38) 顕性
FGF14 脊髄小脳失調症27A型(配列の変化)※SCA27B(GAAリピート伸長)はこの検査では見つからない 顕性
FMR1 FXTAS(脆弱X関連振戦/失調症候群)※主な原因のリピート伸長は対象外 X連鎖
FXN フリードライヒ運動失調症※主な原因のGAAリピート伸長は対象外 潜性
GFAP アレキサンダー病 顕性
ITM2B 家族性英国型認知症・家族性デンマーク型認知症 顕性
ITPR1 脊髄小脳失調症15/16型・29型(SCA15/16・SCA29) 顕性
KCNC3 脊髄小脳失調症13型(SCA13) 顕性
KCND3 脊髄小脳失調症19/22型(SCA19/22) 顕性
KIF5A 遺伝性痙性対麻痺10型(SPG10) 顕性
NOL3 家族性皮質ミオクローヌス 顕性
NOTCH3 CADASIL(皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体顕性脳動脈症) 顕性
PDYN 脊髄小脳失調症23型(SCA23) 顕性
PEX7 レフサム病(成人型)/近位肢節型点状軟骨異形成症(1型の原因) 潜性
PHYH レフサム病 潜性
POLG POLG関連疾患(感覚性失調ニューロパチー・進行性外眼筋麻痺など)=ミトコンドリア病の一群 潜性・顕性
PRKCG 脊髄小脳失調症14型(SCA14) 顕性
RORA 小脳失調やてんかんを伴うことがある知的発達症 顕性・潜性
RRM2B ミトコンドリアDNA枯渇症候群・進行性外眼筋麻痺 潜性・顕性
SETX 眼球運動失行を伴う運動失調症2型(AOA2)/若年性筋萎縮性側索硬化症4型 潜性/顕性
SLC1A3 反復発作性運動失調症6型(EA6) 顕性
SPAST 遺伝性痙性対麻痺4型(SPG4)=遺伝性痙性対麻痺の顕性遺伝の型で最も多い 顕性
SPG11 遺伝性痙性対麻痺11型(SPG11) 潜性
SPG7 遺伝性痙性対麻痺7型(SPG7) 潜性
STUB1 SCAR16(脊髄小脳失調症16型)/SCA48(脊髄小脳失調症48型) 潜性/顕性
SYNE1 常染色体潜性脊髄小脳失調症8型(SCAR8/ARCA1) 潜性
SYT14 常染色体潜性脊髄小脳失調症11型(SCAR11) 潜性
TGM6 脊髄小脳失調症35型(SCA35) 顕性
TMEM240 脊髄小脳失調症21型(SCA21) 顕性
TTBK2 脊髄小脳失調症11型(SCA11) 顕性
TTPA ビタミンE欠乏性運動失調症(AVED)※治療法あり 潜性
TUBB4A 髄鞘化不全性白質ジストロフィー6型(H-ABC)/遺伝性ジストニア4型 顕性
TWNK 進行性外眼筋麻痺/乳児期発症脊髄小脳失調症 顕性/潜性
TYMP ミトコンドリア神経胃腸脳筋症(MNGIE) 潜性
VAMP1 痙性失調症1型(SPAX1) 顕性
WASHC5 遺伝性痙性対麻痺8型(SPG8) 顕性

※遺伝子は全部で57個(EIF2B1〜EIF2B5は5個として数えています)。顕性=常染色体顕性(優性)、潜性=常染色体潜性(劣性)。病気と遺伝のしかたは、GeneReviewsの運動失調症・痙性対麻痺の総論[1][7]などによります。遺伝性痙性対麻痺のうち顕性遺伝の型の約40%はSPAST遺伝子が原因とされています[7]。

このうちCACNA1A・GFAP・TUBB4Aの3つの遺伝子は、当院のNIPT(インペリアルプラン)でも調べられます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。それ以外の54遺伝子は、当院のNIPTでは調べられません。

7. この検査でわかること・わからないこと

わかるのは、57遺伝子の小さな変化と、遺伝子単位の欠失・重複です。わからないのは、リピート伸長、構造の大きな組み換え、遺伝子のスイッチ部分や奥深い部分の変化、体の一部の細胞だけにある変化(モザイク)、そして57遺伝子以外の原因です。遺伝子の文字の並びは次世代シークエンサーで読みます(遺伝子検査の基本は「遺伝子検査とは」で解説しています)。

🔬 わかること・わからないこと

区分 内容
わかること たんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)と、その境目(エクソンから20塩基以内)の一塩基の変化・小さな挿入や欠失
欠失・重複 遺伝子1つ全体の欠失・重複(頬の粘膜・血液)。連続した2つ以上のエクソンの欠失・重複(血液のみ)。1つのエクソンだけの欠失・重複は、見つかることはあるが日常的には検出できない。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告する
読み取りの深さ 対象の領域の99%以上を、同じ場所を20回以上読む深さで確かめる。読み取りの質が低い部分は、サンガー法という別の方法で確かめる
わからないこと リピート伸長(3文字・6文字などの繰り返しの伸長)、転座・逆位、プロモーター(遺伝子のスイッチ部分)の多く、エクソンから20塩基より奥のイントロンの変化、体細胞のモザイク、57遺伝子以外の原因。似た配列が別の場所にある部分は、読み取りが難しいことがある

※元の検査の説明(今のページの「検査の限界」)を、患者さん向けの言葉に直したものです。腫瘍の組織を使う検査には対応していません。

陰性(原因が見つからない)でも、遺伝性の運動失調症ではない、とは言えません。GeneReviewsは、家族歴のない成人発症の小脳失調症の方の最大40%は、詳しく調べても遺伝的な原因が見つからないとしています[1]。また、調べた目的とは別の病気の原因が見つかること(二次的所見)の扱いは、二次的所見の開示方針のとおりです。

8. 結果が出たあと

結果は必ず一度、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明してから、マイページにアップします。病名がわかると、受けるべき検査、気をつけたいこと、使える制度、ご家族の検査の道筋が決まります。主に小児の先天異常・知的障害を対象にしたエクソーム・ゲノム検査の研究167件をまとめた系統的レビューでは、95%の研究で、患者さんやご家族の診療方針に何らかの変化があったと報告されています(変化の中身や大きさは研究ごとに違います)[11]。

病的変異が見つかったら、次にできること

①ご本人(症状がある方):病名が決まり、型に合った見通しや合併症への備えを、神経内科など専門の医療機関で相談できます。このパネルには、治療法のある型が含まれています。

💊 このパネルで見つかる、治療法がある主な型

病気(遺伝子) わかっていること
ビタミンE欠乏性運動失調症(TTPA) 生涯にわたって高用量のビタミンEを飲み続ける治療があります。発症前に始めると症状が出ないとされ、発症後でも早く始めると運動失調がある程度よくなることがあります。年齢が進んでからの治療でも、進行を止められることがあります[5]。
脳腱黄色腫症(CYP27A1) ケノデオキシコール酸を長く飲み続ける治療があり、発症前に早く始めると症状が出るのを防げる可能性があるとされています。神経が回復できない傷を負う前に始めることが大切です[6]。
フリードライヒ運動失調症(FXN) オマベロキソロンという薬が、16歳以上の方を対象に米国と欧州で承認され、進行を遅らせることが示されています[1]。主な原因のGAAリピート伸長は、この検査では見つかりません。

※治療の適否や日本での使い方は、専門の医療機関でご相談ください。当院は治療を行っていません。

型にかかわらず、リハビリテーションも大切です。純粋小脳型の変性症の方42人を対象にした日本のランダム化比較試験では、集中的なリハビリで、運動失調・歩く速さ・日常生活の動作が、待機した群より有意によくなり、運動失調の改善は12週、歩行の改善は24週まで続きました[8]。難病情報センターは、失調症状全般に甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)やその誘導体が薬として使われることも紹介しています。

②症状のないご本人(家族歴で受けた方・保因者だった方):顕性遺伝の型なら、発症に備えた見張りと生活の計画を立てられます。潜性遺伝の保因者なら、ふつうご本人は発症しませんが、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかで、お子さんへの確率が変わります(両方が保因者なら、お子さんごとに4分の1)。

③子どもを持つときの選択肢:ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて一つひとつ判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください(羊水検査・絨毛検査)。CACNA1A・GFAP・TUBB4Aは、当院のNIPT(インペリアルプラン)でも調べられます(妊娠9週から。妊娠6〜8週は臨床研究)。体外受精でできた受精卵を調べるPGT-Mを海外で考える方もいます(下のH3)。何もしないで自然に妊娠・出産することも、そのまま選べる選択肢です。

④ご家族:きょうだい・親・いとこなどが同じ変化をもっているかを、その変化だけピンポイントで調べられます。症状のない方は、ご本人の同意のうえで受けていただきます。

⑤当院でのその後:結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、次にどうするかを一緒に考えます(遺伝カウンセリング料は30分22,000円・税込)。

陰性・意義がまだわからない変化(VUS)のとき

陰性の場合は、リピート伸長検査をまだ受けていなければそれを、受けていれば症状に合わせて総合パネル・全エクソーム・全ゲノムなどを考えます。病気との関係がまだはっきりしない変化(VUS)が見つかった場合、それだけで診断を決めたり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。研究が進むと評価が変わることがあります(VUSの臨床的な取り扱い)。

海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます

PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因遺伝子の確定、英語の検査結果の用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査です。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。

欧州ヒト生殖胚学会(ESHRE)の指針は、PGT-Mの準備として、病気の原因と確かめられた変化があること、その変化が書かれた元の報告書、そしてご家族の検体を挙げています[12]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、2本あるうちの片方が読めない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあります。そのため、変化の両側にある目印(STR・SNPなどの多型マーカー)で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます。目印は、変化も一緒に調べる場合は両側にSTR1個(またはSNP3個)以上、目印だけで調べる場合は両側にSTR2個(またはSNP6個)以上が目安です[12]。

ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。指針の目安では、顕性遺伝の型では患者さん少なくとも1人(できれば2人)、および/または発症していない方1人の検体が、潜性遺伝の型では患者さん(2つの変化をもつ方)・保因者・保因者でない方の検体が必要とされています。血縁者がいない場合は、ご夫婦で目印を調べたうえで、治療周期の受精卵や1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法も挙げられていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります[12]。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。

臨床遺伝専門医としての判断では、VUSは病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。潜性遺伝の型では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もってご確認ください。

⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です

PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[13]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。当院では絨毛検査・羊水検査を院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。

日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないが、日常生活が著しく損なわれる状態が現れる疾患では、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みになっています。対象になるかどうかは、審査で個別に決まります。

PGT-Mの対象になる病気は、国によって違います。日本では学会が症例ごとに審査しており、審査が続いている申請も多くあります(学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち37件が審査継続中。2026年9月発表)。英国では公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。脊髄小脳失調症は、SCA3(マシャド・ジョセフ病)を含む多くの型がこの一覧に載っています(2026年9月時点)。一覧にない病気は、施設を通じて申請し、HFEAが審査します。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[14]。米国生殖医学会(ASRM)の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気に対するPGT-Mも倫理的に許容されうるとする意見を出しています[15]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。くわしくは「海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へ」で解説しています。

9. 日本の制度:指定難病18「脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)」(2026年10月時点)

脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)は指定難病18で、医療費の助成の対象です(2026年10月時点、難病情報センターで確認)。難病情報センターの解説では、運動失調あるいは痙性対麻痺を主な症状とする病気として扱われています。助成を受けるには、診断基準と重症度などの認定の条件を満たす必要があります。このパネルで見つかる病気には、脊髄小脳変性症とは別の病名で扱われるものもあるため、制度の対象かどうかは、診断された病名ごとに難病情報センターでお確かめください。

10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜・血液のいずれでも、オンライン診療で受けられます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医・オンライン可
▶
検体の採取お支払い後にキット送付
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査内容 遅発性運動失調症に関係する57遺伝子の塩基配列と、欠失・挿入(料金に含まれる)
検査費用 税込330,000円
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急(結果までの期間が約7日短くなる):55,000円/VUS除外(意義がまだわからない変化):無料
検体 血液(EDTAチューブ4mL×2本・紫色のキャップ)、抽出したDNA、頬の内側の粘膜(スワブ)、唾液(採取キットをお送りします)
オンライン診療 可能。ほとんどの場合は唾液・頬の粘膜で受けられます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採取しないでください。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は「遺伝子検査結果の見かた」で解説しています。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します(遺伝カウンセリングとは)。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、これからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

57遺伝子を一度に調べ、結果は2〜3週間で、臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

お問い合わせはこちら | 先にリピート伸長を調べたい方へ

11. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【わからないまま悩むより、わかったことから次を考える】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。脊髄小脳変性症には、世代を重ねるごとに発症が早く重くなる型もあります。だからこそ、「親は軽かったから」「家族に同じ病気の人はいないから」という見た目の印象だけで、将来を決めてしまわないでほしいと考えています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、家族歴が濃いものの、ご本人は大学を卒業して会社に勤めていた方が、念のため検査を受けたところ、染色体の微小欠失が見つかったことがあります。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。治療法のある型が見つかることもあり、見つからなくても、次に調べるべき検査が見えてきます。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 脊髄小脳変性症は父親から遺伝しますか?

遺伝性の型なら、父親からも母親からも受け継ぎます。顕性(優性)遺伝の型では、性別に関係なく、お子さんが受け継ぐ確率は1人ごとに2分の1です。SCA1・SCA2・SCA7などリピート伸長が原因の一部の型では、父親から伝わるときに繰り返しが伸びやすく、発症が早まりやすいことが知られています。

Q2. 脊髄小脳変性症が子どもに遺伝する確率は?

日本では約3分の2が遺伝しない孤発性です。遺伝性の大部分は常染色体顕性(優性)遺伝で、お子さんが受け継ぐ確率は1人ごとに2分の1です。常染色体潜性(劣性)遺伝の型では、パートナーも同じ遺伝子の保因者でなければ、お子さんはふつう発症しません。確率は型によって違うため、まず型を確かめることが大切です。

Q3. 脊髄小脳変性症は孫に遺伝しますか?

顕性遺伝の型では、お子さんが原因を受け継いでいなければ、そのお子さんから孫に伝わることはありません。お子さんが受け継いでいれば、孫が受け継ぐ確率は1人ごとに2分の1です。親が元気に見えても、原因をもっていてまだ発症していないだけのことがあるため、隔世遺伝のように見えることがあります。

Q4. この検査でリピート伸長も調べられますか?

調べられません。日本で多いSCA3・SCA6・SCA31・DRPLAや、SCA27B・フリードライヒ運動失調症・FXTASの主な原因はリピート伸長で、この検査(配列を読む検査)では見つかりません。成人発症の方には、まず運動失調リピート伸長遺伝子パネル検査を受け、原因が見つからなければこの57遺伝子パネルを受ける順番をおすすめしています。

Q5. 症状がなくても検査を受けられますか?

受けられます。ご家族でわかっている原因をご自身がもっているかを調べる発症前診断は、遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合に行います。知らないでいる選択も尊重します。成人になってから発症する病気について、未成年の方の発症前診断は原則として行いません。

Q6. 脊髄小脳変性症の遺伝子検査は保険が使えますか?

当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。この検査の費用は税込330,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

Q7. 脊髄小脳変性症は結婚に差し支えますか?

遺伝の確率は、型とご家族ごとに違います。検査を受けると、ご自身が原因をもっているか、潜性遺伝ならパートナーが同じ遺伝子の保因者か、お子さんへの確率はどれくらいかが、具体的にわかります。そのうえで、妊娠したときの出生前診断や海外でのPGT-Mなど、選べる道があります。知ったうえで、ご本人とパートナーが決めていくことだと考えています。

Q8. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?

お渡しできます。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。ただし、ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。ご家族の検体が必要になることが多いため、検査の段階から、協力していただけるご家族がいるかを考えておくことが大切です。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。

🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。脊髄小脳変性症の型がわかれば、治療法のある型かどうか、ご家族の検査、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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