この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)は、ATN1遺伝子の中にある「CAG」という3文字の繰り返しが長く伸びることで起こる、日本人に比較的多い遺伝性の神経の病気です。運動失調(ふらつき)・てんかん・不随意運動・認知機能の低下などが、発症する年齢によって組み合わせを変えて現れます。このページの検査は、その繰り返しの数を測って、DRPLAかどうかを確かめるものです。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の今後の備えだけでなく、ご家族のこと、結婚や妊娠の計画を考えるときにも、ずっと使える情報になります。症状・遺伝のしかた・寿命の見通しと、検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
DRPLAの原因であるATN1遺伝子のCAGリピートの数を測ります。35回までは正常、48回以上は通常DRPLAを発症するとされる範囲で、その間は「中間型」と呼ばれます。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
ふらつき・てんかん・不随意運動・認知機能の低下などがあり原因を確かめたい方、ご家族にDRPLAの方がいて、ご自身が受け継いでいるか知ったうえで人生を計画したい方、結婚や妊娠を考えている方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は275,000円(税込)、結果までは2週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。DRPLAと確定すれば、お子さんに受け継がれる確率は1人ごとに2分の1です。ご家族の検査や、妊娠を考えるときの出生前診断の相談まで、当院で続けて受けられます。
1. DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)とは
DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)は、12番染色体にあるATN1遺伝子のCAGリピートが異常に伸びることで起こる、常染色体顕性(優性)遺伝の進行性の神経の病気です[1][2][3]。英語名 dentatorubral-pallidoluysian atrophy の頭文字をとってDRPLAと呼ばれ、内藤・小柳病(Naito-Oyanagi disease)という別名もあります[1]。
病名は、脳の中で傷みやすい4つの場所を並べたものです。小脳の「歯状核」、中脳の「赤核」、脳の奥にある「淡蒼球」と「ルイ体(視床下核)」で、いずれも体の動きを細かく調節する神経の通り道にあたります。ここが少しずつ傷むことで、ふらつき・不随意運動・てんかん・認知機能の低下など、さまざまな症状が出てきます。DRPLAのくわしい解説は、DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)の疾患ページにまとめています。このページでは、検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。
原因:ATN1遺伝子の「CAGの繰り返し」が伸びる
DRPLAの原因は、1994年に2つの研究グループが、同じ号の学術誌で報告しました。12番染色体にある遺伝子の中で、CAGという3つの塩基の繰り返し(CAGリピート)が、DRPLAの患者さんでは不安定に伸びていたのです[2][3]。この遺伝子がATN1で、アトロフィン-1というたんぱく質の設計図です(同じ仲間のたんぱく質についてはアトロフィン・ファミリーで解説しています)。
CAGはアミノ酸のグルタミンを指定する暗号なので、CAGが伸びると、グルタミンが長く連なったたんぱく質ができます。こうしたしくみで起こる病気をまとめてポリグルタミン病と呼び、ハンチントン病や一部の脊髄小脳失調症も同じ仲間です。DNAの繰り返し配列が伸びて起こる病気全体のしくみは、リピート伸長病(トリプレットリピート病)のページをご覧ください。
💡 用語解説:CAGリピート
遺伝子は、A・T・G・Cの4種類の文字(塩基)が並んだ文章のようなものです。ATN1遺伝子の中には「CAGCAGCAG…」と同じ3文字が何度も続く場所があり、その回数が人によって少しずつ違います。DRPLAでは、この回数が一定より多くなっています。文字が1つ入れ替わる変化とは違う「長さ」の変化なので、測るには専用の方法が必要です。
日本人に比較的多い病気
DRPLAは日本人に多く、遺伝性疾患の解説書GeneReviewsでは、日本人では10万人あたり0.2〜0.7人とされています[1]。日本の常染色体顕性遺伝の運動失調症のなかでは、3番目に多い病型(9.7%)と記載されています[1]。日本以外では頻度はずっと低いとされます。
難病情報センターの解説(2026年10月時点で確認)でも、日本で多い遺伝性の脊髄小脳変性症として、SCA3(マシャド・ジョセフ病)・SCA6・SCA31とならんでDRPLAが挙げられ、お子さんから大人まで、日本で比較的高い頻度で認められるとされています。
2. DRPLAの症状:発症する年齢で大きく変わる
DRPLAの主な症状は、運動失調(ふらつき)・認知機能の低下・ミオクローヌス・舞踏運動・てんかん・精神症状です。どの症状が目立つかは、発症した年齢によって大きく変わります[1]。同じ家族の中でも、親とお子さんで症状がまったく違って見えることがあるのは、このためです。
20歳未満で発症する場合(若年型):てんかんと発達・知的な面の後退
20歳未満で発症する方では、知的な面の後退が進むこと、ミオクローヌス(手足などが一瞬ぴくっと動く不随意運動)、てんかん発作が目立ちます。この組み合わせは「進行性ミオクローヌスてんかん」と呼ばれる病像で、運動失調や舞踏運動はあとから加わることがあります[1]。若年で発症する方の多くは、CAGリピートが65回以上とされています[1]。
20〜40歳で発症する場合(早期成人型)
20〜40歳で発症する方では、若年型と遅発成人型の中間のような症状になります。てんかん発作は若年型より少なくなりますが、起こることもあります[1]。
40歳以降で発症する場合(遅発成人型):ふらつき・舞踏運動・認知症
40歳以降に発症する方では、運動失調(歩くときのふらつき、手の動きのぎこちなさ、話しにくさ)や、舞踏アテトーゼ(手足や顔が勝手に、踊るように、くねるように動く不随意運動)、性格の変化、認知機能の低下が中心になります[1]。認知症や不随意運動が目立つと、その陰で運動失調が気づかれにくくなることがあります[1]。
MRIでみられること
頭のMRIでは、小脳と脳幹(とくに橋の背側)の萎縮がよくみられます。遅く発症した方では、大脳の白質にMRIで白く写る変化がみられることもありますが、これはDRPLAだけにみられるものではありません[1]。MRIだけでDRPLAと決めることはできず、診断の確定には遺伝子検査が必要です。
ハンチントン病・ほかの脊髄小脳変性症と見分けるには
成人でDRPLAを考えるとき、症状が似ている病気として、ハンチントン病や、遺伝性の脊髄小脳失調症(SCA)などが挙げられます。子どもでは、進行性ミオクローヌスてんかんを起こすほかの病気が見分ける相手になります[1]。どれもリピートの伸長などで起こり、症状だけでは区別しきれないことがあるため、最終的には遺伝子検査で原因を確かめます。
3. 発症年齢・進み方・寿命(予後)の見通し
GeneReviewsによると、DRPLAの発症年齢は0〜72歳と幅が広く、平均は31.5歳です。病気の期間は平均8年(0〜35年)、亡くなる年齢は平均49歳(18〜80歳)と報告されています[1]。ただし、これは多くの患者さんをまとめた平均で、一人ひとりの見通しは、リピートの数や発症年齢によって大きく違います。
リピートの数と、その後の経過
遺伝子検査で確定した日本人のDRPLA患者さん183人を長く追った研究では、車椅子が必要になった年齢の中央値は33歳(61人、3〜77歳)、亡くなった年齢の中央値は49歳(23人、18〜80歳)でした。車椅子が必要になる年齢と亡くなる年齢は、CAGリピートの長さと強く関係していました[4]。
同じ研究では、リピートが65回以上の方は、65回未満の方より若い年齢で症状が出て、長い目でみた障害も重い傾向がありました。一方で、発症してからの進み方の速さは、リピートの長さとは関係していませんでした[4]。リピートの数は「いつごろ、どのような形で発症しやすいか」の目安にはなりますが、それだけでご本人の将来が決まるわけではありません。
治療の現状(2026年10月時点)
DRPLAには、今のところ病気そのものを治す治療はありません。治療は症状に合わせたものが中心で、てんかん発作には一般的な抗てんかん薬を使い、運動失調にはリハビリテーションを行います。精神症状、飲み込みにくさ、話しにくさにも、それぞれの症状に応じた対応をします[1]。
また、GeneReviewsには、全身麻酔によってけいれん発作が起こりやすくなることがあると記載されています[1]。病名がはっきりしていれば、手術や検査で麻酔を受ける前に、そのことを医療者に伝えて備えることができます。原因に働きかける治療は研究の段階で、状況は時期によって変わるため、最新の情報は神経内科の主治医にご確認ください。
4. DRPLAの遺伝のしかた:お子さんへは2分の1、世代を重ねると早く重く
DRPLAは常染色体顕性(優性)遺伝で、親がDRPLAの場合、お子さんが伸びたCAGリピートを受け継ぐ確率は、1人ごとに2分の1(50%)です[1]。さらに、親から子へ伝わるときにリピートが伸びて、お子さんのほうが早く、重く発症することがあります。
常染色体顕性(優性)遺伝:お子さんへは1人ごとに2分の1
常染色体顕性(優性)遺伝では、対になった2本のATN1遺伝子のうち1本のリピートが伸びていれば発症しうるため、お子さんに伝わる確率は1人ごとに2分の1です。男の子か女の子かには関係しません。上のお子さんが受け継いだかどうかで、下のお子さんの確率が変わることもありません。きょうだいの方が受け継いでいる確率も、親御さんがDRPLAであれば2分の1です[1]。
表現促進現象:父親から伝わるときにとくに目立つ
DRPLAでは、親から子へ伝わるときにCAGリピートが伸びて、次の世代ほど発症が早くなる「表現促進現象」がみられます。GeneReviewsによると、お子さんの発症は、父親から受け継いだ場合は父親より26〜29年早く、母親から受け継いだ場合は母親より14〜15年早いとされ、とくに父親から伝わるときに目立ちます[1]。1994年の原因遺伝子の報告でも、リピートの長さが、発症年齢や症状の重さとよく関係していることが示されています[3]。
⚠️ 「自分が軽いから、子どもも軽い」とは言えません
40代以降にふらつきから始まった親御さんと、子どものころにてんかんで発症したお子さんが、同じ病気だった、ということが起こりうるのがDRPLAです。発症年齢によって症状の組み合わせが変わり、伝わるときにリピートが伸びることがあるためです[1]。親御さんの症状が軽い、あるいはまだ症状がないからといって、お子さんも同じ程度とは限りません。だからこそ、ご家族の誰かがDRPLAとわかったときは、知ったうえで計画することに意味があります。
中間型(35〜47回)のリピートとは
GeneReviewsでは、CAGリピートが6〜35回は正常範囲、35〜47回は発症する可能性のある範囲(中間型)、48〜93回は通常発症するとされる範囲として記載されています[1]。35回は正常範囲と中間型の両方に含まれる書き方になっているため、境目に近い結果は、検査を行う施設の判定基準とあわせて解釈します。中間型は、発症しないこともあり(不完全浸透)、発症しても症状が軽いことが多いとされます[1]。
中間型のリピートは不安定で、次の世代で発症する範囲まで伸びることがありますが、それは非常にまれとされています[1]。ご家族にはっきりした家族歴がない方でDRPLAがわかることがあるのは、こうした伸長や、親御さんが発症前に亡くなっていた、症状が軽くて気づかれていなかった、などの理由が考えられます。
5. どんな人がこの検査を受けるとよいか
症状があってDRPLAかどうかを確かめたい方、ご家族にDRPLAの方がいてご自身が受け継いでいるかを知りたい方、結婚や妊娠を考えている方に向く検査です。見た目や家族歴だけでは判断できないことが多いので、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
症状があり、原因を確かめたい方
- ●歩くときのふらつき、手の動きのぎこちなさ、話しにくさ(運動失調)がある方
- ●ミオクローヌスや舞踏アテトーゼなどの不随意運動、てんかん発作がある方
- ●認知機能の低下、性格の変化、幻覚・妄想などの精神症状が、運動の症状とあわせてみられる方
- ●脊髄小脳変性症と言われたものの、病型がはっきりしていない方
病名がはっきりすると、気をつけたい合併症(てんかん発作・麻酔のときの注意など)や、使える制度(第9章)が決まります。
ご家族にDRPLAの方がいて、ご自身が受け継いでいるか知りたい方(発症前の検査)
症状のない方が、将来発症する可能性を調べる検査を「発症前の検査(予測的検査)」といいます。GeneReviewsは、ご家族の中で原因がわかっていれば、リスクのある血縁者の発症前の検査は可能で、その前に遺伝カウンセリングを行うべきとしています[1]。
当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。
先が見えないまま過ごすより、わかったうえで、仕事の続け方、結婚や出産、住まい、ご家族の介護の準備、お金の備えなど、これからの人生を計画したいと考える方もいます。英国でハンチントン病の発症前検査を受けた人を22年間にわたってまとめた研究では、検査を受けた理由として最も多かったのは「不確実さを減らすため」(70.5%)でした[5]。病気は違いますが、同じポリグルタミン病で、同じように顕性遺伝する病気のご家族の思いとして、DRPLAのご家族にも通じるものだと考えています。
知ることへの不安もあると思います。アルツハイマー病のリスクに関わる遺伝子(APOE)の結果を伝えた人と伝えなかった人を比べた米国の研究(REVEAL研究)では、1年後までの不安・抑うつ・検査に関する苦痛に、はっきりした差はありませんでした。一方で、検査の前から気持ちのつらさが強かった人は、結果を知ったあとにもつらさを感じやすいこともわかっています[6]。だからこそ、検査の前の遺伝カウンセリングで時間をかけて考えること、結果のあとも相談を続けられることが大切です。当院では、陽性でも陰性でも、結果をお伝えしたあとも遺伝カウンセリングで相談を続けていただけます。
なお、日本医学会の「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」(2022年3月改定)は、成年期以降に発症する病気の未成年者への発症前の検査は、原則として本人が成人し自分で判断できるまで延期すべきで、両親などの代諾で行うべきではない、としています。GeneReviewsも、早く治療を始める利点がない病気について未成年者に発症前の検査をすることは適切でないとしています[1]。症状のないお子さんの検査については、この考え方を踏まえてご相談ください。一方、すでに症状があるお子さんで、ご家族の診断が確定している場合の検査は適切とされています[1]。
結婚・妊娠を考えている方
結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。知ってから決めるのと、知らずに決めるのとでは、同じ選択でも意味が変わると考えています。DRPLAの当事者の方にとっても、きょうだいや親御さんにDRPLAの方がいる方にとっても、ご自身が受け継いでいるかを妊娠の前に知っておくと、選べることが増えます。妊娠したときの出生前診断の考え方は、第8章でご説明します。
この検査より別の検査が向いている場合
ご家族でDRPLAと確定している方、症状からDRPLAが強く疑われる方は、まずこの検査です。一方、症状からは病型をしぼれない場合は、次の検査のほうが向いていることがあります。
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※遺伝子の配列を読むパネル検査(NGSパネル)は、リピートの長さを測るのが苦手です。DRPLAを調べるには、リピートの長さを測る検査が必要です。どの検査が合うかは、症状やご家族の情報で変わるので、遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。
6. この検査で調べること
この検査では、ATN1遺伝子(1遺伝子)のCAGリピートの数を測り、DRPLAの原因となる伸長があるかどうかを確かめます。
🧬 調べる遺伝子と、関係する病気
※調べる遺伝子は当院の検査内容による。病気と遺伝のしかたは文献[1]による。
CAGリピートの数の読み方
📏 ATN1遺伝子のCAGリピートの数と意味
※GeneReviews[1]による。GeneReviewsは正常を6〜35回、中間型を35〜47回と表記しており、35回は両方の区分に含まれます。境目に近い結果は、検査を行う施設の判定基準とあわせて解釈します。48〜93回の範囲では、51回で81歳まで症状がなかった1人の例外が記載されています。
検査の方法
この検査では、リピートの部分を目印にして増やす方法(リピートプライムドPCR法)と、増やしたDNAの長さを測る方法(アンプリコン長解析)を組み合わせて、CAGリピートの数を測ります。リピートの伸長があるかどうかを感度よく見つけられる方法です。
7. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、ATN1遺伝子のCAGリピートが伸びているかどうかと、その回数です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
- ●とても大きな伸長の正確な回数:伸長があることはわかりますが、非常に大きな伸長(93回を超えるような場合)では、正確な回数まで決められないことがあります。
- ●リピート以外の変化:ATN1遺伝子の配列を読む検査や、欠失・重複を調べる検査は含まれていません(別にご依頼いただけます)。同じATN1遺伝子の別の種類の変化で起こるCHEDDA症候群は、この検査では調べていません。メチル化の解析も含まれていません。
- ●モザイク:体の細胞によってリピートの数が違う状態(モザイク)を詳しく調べることは、この検査の主な目的ではありません。
- ●ほかの病気:ハンチントン病やマシャド・ジョセフ病など、DRPLAに似た症状を起こすほかのリピート伸長病は、この検査では調べていません。
- ●中間型の結果:35〜47回の中間型は、発症するかどうか、どの程度の症状になるかを、この結果だけでは決められません[1]。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):判定の境目に近い結果など、すぐには意味を決められない結果が出ることがあります。
- ●陰性でも、症状の原因がすべて否定されるわけではありません:伸長が見つからなければDRPLAの可能性は低くなりますが、ほかの脊髄小脳変性症やリピート伸長病など、別の原因が残ります。
8. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。リピートの数の意味、ご家族への影響、これからできることを、一緒に確かめます。
伸長が見つかったとき:診断の確定と、これからの備え
DRPLAと確定すると、病名がはっきりし、何に備えればよいかが決まります。てんかん発作があれば抗てんかん薬で治療し、ふらつきにはリハビリテーションを行います。手術などで全身麻酔を受けるときは、けいれん発作が起こりやすくなることがあるため、前もって病名を伝えておくことができます[1]。また、指定難病などの制度を使うときにも、遺伝子検査で原因が確定していることが手がかりになります(第9章)。
ご家族への影響と、ご家族が検査を受けるとき
あなたの1回の検査結果は、ご両親・きょうだい・お子さんが、ご自身のことを考える手がかりになります。DRPLAと確定した場合、ご両親のどちらか、きょうだい、お子さんも、伸びたリピートを持っている可能性があります[1]。ご家族の中で原因がわかっていると、ほかのご家族は同じATN1遺伝子のリピートを測ることで、受け継いでいるかどうかを確かめられます。症状のないご家族の検査は発症前の検査になるため、検査の前に遺伝カウンセリングで、知ることの意味をよく考えていただきます(第5章)。
伸長が見つからなかったとき
症状があって受けた方でCAGリピートの伸長が見つからなかった場合、DRPLAの可能性は低くなります。症状に合わせて、運動失調リピート伸長遺伝子パネル検査など、ほかの原因を調べる検査を考えます(第5章の表)。ご家族でDRPLAの原因となるATN1遺伝子のCAGリピート伸長が確認されており、発症前の検査でその伸長が検出されなかった場合は、家族内で確認された病的伸長を受け継いでいないと判断できます。その病的伸長をお子さんに伝えることもありません。
中間型・意義がまだわからない結果だったとき
中間型や、すぐに意味を決められない結果は、それだけで診断したり、ご家族の検査に使ったりはしません。症状やご家族の情報とあわせて、結果の意味を一緒に考えます。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。結果の伝え方については、当院の二次的所見の開示方針もあわせてご覧ください。
妊娠を考えている方:出生前診断の相談
GeneReviewsは、ご家族の中でATN1遺伝子のCAGリピートの伸長がわかっていれば、出生前の検査は可能としています[1]。日本産科婦人科学会の「出生前に行われる遺伝学的検査に関する留意点」(2026年9月)では、羊水検査・絨毛検査は定められた条件にあてはまる妊娠で、遺伝カウンセリングを行ったうえで実施するとされ、その条件のひとつに「新生児期もしくは小児期に発症する重篤な常染色体顕性遺伝病」が挙げられています。DRPLAは発症の年齢に幅があり、親から子へ伝わるときにリピートが伸びることもある病気です。
当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。DRPLAの出生前診断ができるかどうかも含めて、妊娠を考えている段階からご相談いただけます。パートナーの方と一緒に、妊娠したときの計画まで考えることができます。あらかじめご自身のリピートの数を確かめておくことが、出生前診断を計画するための出発点になります。
9. 日本の制度(2026年10月時点)
DRPLAは、指定難病18「脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)」に含まれる病型のひとつです。難病情報センターの解説では、日本で多い遺伝性の脊髄小脳変性症のひとつとしてDRPLAが挙げられています。DRPLAだけの指定難病の番号はありません(指定難病17は多系統萎縮症です)。小児慢性特定疾病では、神経・筋疾患の「脊髄小脳変性症」の解説の中で、頻度の高い遺伝性の病型としてDRPLAが挙げられています(いずれも2026年10月時点で確認)。
医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
遺伝学的検査の保険適用については、診療報酬で「脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)」が対象の病気に含まれています。ただし、症状があり、ほかの検査では診断がつかない患者さんの診断のために、国の基準を満たして届け出た医療機関で行う場合の扱いです。症状のない方の発症前の検査や、出生前の検査は、この保険の対象とは読めません。当院のこの検査は自費診療です。
10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は275,000円(税込)、結果までは2週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取お支払い後にキット発送
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結果のご説明2週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。
※検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質を保つため、ご自身の判断で検体を採取しないでください。
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れになります。遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
11. 院長コラム
🩺 院長コラム【知ってから選ぶ、という選択肢を】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。DRPLAは、親から子へ伝わるときにリピートが伸びて、お子さんのほうが早く、重く発症することがある病気です。親御さんがまだ症状のない年齢のうちに、お子さんが先に発症することさえあります。だからこそ、「自分は症状がないから」「親は年をとってからの発症だったから」という印象だけで、結婚や出産を決めてしまわないでほしいと考えています。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。知らずに決めるのと、知ってから決めるのとでは、同じ選択でも意味が違うと考えています。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進めます。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断の相談まで当院で続けて支えられる体制を整えています。知る・知らない、子どもを持つ・持たない、どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. DRPLAの寿命・予後は?
遺伝性疾患の解説書(GeneReviews)では、病気の期間は平均8年(0〜35年)、亡くなる年齢は平均49歳(18〜80歳)と報告されています。日本人183人の研究では、リピートが長いほど車椅子が必要になる年齢や亡くなる年齢が若い傾向がありましたが、発症してからの進み方の速さはリピートの長さと関係していませんでした。一人ひとりの見通しには大きな幅があります。
Q2. DRPLAは何歳ごろ発症しますか?
発症年齢は0〜72歳と幅が広く、平均は31.5歳と報告されています。20歳未満で発症する若年型ではてんかん・ミオクローヌス・知的な面の後退が、40歳以降に発症する遅発成人型ではふらつき・舞踏アテトーゼ・認知機能の低下が目立ちます。CAGリピートが65回以上の方の多くは20歳未満で発症するとされています。
Q3. DRPLAが遺伝する確率は?
DRPLAは常染色体顕性(優性)遺伝で、親がDRPLAの場合、お子さんが伸びたCAGリピートを受け継ぐ確率は1人ごとに2分の1です。親から子へ伝わるときにリピートが伸びることがあり、お子さんの発症は、父親から受け継いだ場合は父親より26〜29年、母親から受け継いだ場合は母親より14〜15年早いとされています。
Q4. DRPLAの原因遺伝子は?
原因は12番染色体にあるATN1遺伝子で、その中のCAGという3つの塩基の繰り返しが伸びることで起こります。1994年に報告されました。GeneReviewsでは、CAGリピートは6〜35回が正常範囲、35〜47回が発症する可能性のある範囲(中間型)、48〜93回が通常発症するとされる範囲と記載されています(35回は両方の区分に含まれる表記です)。
Q5. DRPLAは指定難病ですか?
DRPLAは、指定難病18「脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)」に含まれる病型のひとつです(2026年10月時点、難病情報センターの情報)。DRPLAだけの指定難病の番号はありません。医療費の助成を受けるには、認定の条件を満たして申請する必要があります。
Q6. DRPLAの治療法はありますか?
今のところ、病気そのものを治す治療はありません。てんかん発作には抗てんかん薬、運動失調にはリハビリテーションなど、症状に合わせた治療を行います。全身麻酔でけいれん発作が起こりやすくなることがあるため、病名がわかっていれば、手術などの前に備えることができます。
Q7. 症状のない子どもを検査できますか?
日本医学会のガイドラインは、成年期以降に発症する病気の未成年者への発症前の検査は、原則として本人が成人し自分で判断できるまで延期すべきとしています。症状のないお子さんの検査は、この考え方を踏まえてご相談ください。すでに症状があるお子さんで、ご家族の診断が確定している場合の検査は適切とされています。
Q8. 保険は使えますか?
当院のこの検査は自費診療で、検査費用は275,000円(税込)、遺伝カウンセリング料は30分22,000円(税込)が別にかかります。診療報酬では、症状があり、ほかの検査では診断がつかない患者さんの診断のために、届け出た医療機関で行う脊髄小脳変性症の遺伝学的検査が保険の対象とされています(2026年10月時点)。症状のない方の発症前の検査は、この対象とは読めません。
🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。DRPLAの原因がわかれば、ご自身の備えだけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
- [1] Prades S, Melo de Gusmao C, Grimaldi S, Shiloh-Malawsky Y, Felton T, Houlden H. DRPLA. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 1999 Aug 6 (Updated 2023 Sep 21). [NCBI Bookshelf NBK1491]
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