この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

進行性ミオクローヌスてんかん(PME)の遺伝子検査は、ミオクローヌス(ぴくっとする筋肉のふるえ)とてんかん発作がだんだん進む病気の原因を、血液や唾液から調べる検査です。このページの検査では、ラフォラ病・神経セロイドリポフスチン症・ゴーシェ病などの原因となる19の遺伝子を一度に調べます。PMEは原因の見つかりやすい病気で、イタリアのPMEの患者さんの集まりでは、遺伝子の解析で原因がわかった割合が8割を超えました[2]。原因の病気がわかると、避けたほうがよい薬や、きょうだい・次のお子さんへの遺伝の確率がはっきりします。一方で、ウンフェルリヒト・ルンドボルグ病の多くやDRPLAなど、この検査では見つけられない原因もあります。何がわかり、何がわからないかを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
進行性ミオクローヌスてんかんの原因となる19遺伝子の小さな変化を調べ、ラフォラ病・神経セロイドリポフスチン症(NCL)・ゴーシェ病などの原因を探します。くり返し配列が長くなる変化(リピート伸長)やミトコンドリアDNAの変化は調べられません。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
ミオクローヌスとてんかん発作があり、ふらつきや物忘れなどがだんだん進んでいる方、きょうだいなどご家族に進行性ミオクローヌスてんかんの方がいる方、ほかの検査で原因がわからなかった方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。多くは常染色体潜性(劣性)遺伝で、きょうだいが同じ病気である確率は4分の1です。ご家族の検査、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. 進行性ミオクローヌスてんかん(PME)とは:症状・原因・指定難病
進行性ミオクローヌスてんかん(PME)は、ミオクローヌス・てんかん発作・小脳の症状(ふらつき)・認知機能の低下が、年齢とともに進んでいく病気のグループです[1]。ひとつの病気の名前ではなく、原因の違う多くの病気をまとめた呼び名で、日本では指定難病309に指定されています。原因の多くは遺伝子の変化で、どの病気が原因かによって、進み方・使える薬・遺伝のしかたが大きく変わります。
なお、「ミオクローヌス 原因」で調べている方の多くが気にされる、寝入りばなに体がぴくっとする動きは、健康な人にも起こるもので、ほとんどはPMEとは関係ありません。PMEを考えるのは、ミオクローヌスやてんかん発作に加えて、ほかの神経の症状が少しずつ進んでいくときです。
ミオクローヌス・ミオクロニー発作・けいれんの違い
国際抗てんかん連盟(ILAE)は、ミオクロニー発作を「突然起こる、短い(100ミリ秒未満)、自分の意思によらない筋肉の収縮」と定義しています。そのうえで、症状としてのミオクローヌスには、てんかんによるものと、てんかんによらないものの両方がある、としています[11]。手足ががくがくと続けてふるえる、いわゆる「けいれん(間代)」とくらべると、ミオクローヌスは規則的にくり返しにくく、長く続かないのが違いです[11]。
PMEのミオクローヌスは、脳の表面(大脳皮質)から起こり、体を動かそうとしたときや、音・光・触られるなどの刺激で誘われやすいのが特徴です[10]。コップを持つ、字を書く、歩き出すといった動作のたびにぴくつきが出るため、全身のてんかん発作がなくても、生活のしにくさにつながります[10]。ミオクローヌスとてんかん発作は、PMEの別々の柱として考えます。
ミオクローヌスの原因になる主な病気と、始まる年齢
PMEの原因になる病気は、たくさん知られています。日本で主な原因として挙げられているのは、次の病気です[1]。表の右端の列が、このページの検査で原因を見つけられるかどうかです。
🧠 進行性ミオクローヌスてんかんの主な原因と、この検査で見つけられるか
※年齢・特徴はGeneReviewsの各章[3][4][6][7]、日本の主な原因は難病情報センターの解説による。「見つけられない」病気をどの検査で調べるかは第5章で説明します。
神経セロイドリポフスチン症は、PMEの原因のひとつであると同時に、それだけで1つの大きな病気のグループです。視力の低下や発達の後戻りが目立つ場合は、神経セロイドリポフスチン症(NCL)パネルのほうが合うことがあります。同じように、ゴーシェ病などのライソゾーム病や、DRPLAのように別の検査で調べる病気もあるので、「PMEかもしれない」と言われた段階で、どの検査が合うかを一緒に考えることが大切です。
寿命・予後は、原因の病気によって大きく違う
「進行性ミオクローヌスてんかんの寿命」は、原因の病気によってまったく違うため、ひとくくりには言えません。たとえばラフォラ病では、多くの方が発症から10年以内に亡くなるとされています[4]。一方、ウンフェルリヒト・ルンドボルグ病は進行性ではあるものの、40歳までの寿命は病気のない人と同じくらいで、長い目で見ると短くなるとされています[3]。かつては発症から8〜15年で亡くなる方が多かったのが、今はここまで変わってきています[3]。
見通しを考えるうえでも、使う薬を決めるうえでも、まず原因の病気をはっきりさせることが出発点になります。ご家族の経過がそのままご本人に当てはまるとは限らないので、個別の見通しは主治医・専門の医療機関でご確認ください。
指定難病309・小児慢性特定疾病の扱い(2026年10月時点)
進行性ミオクローヌスてんかんは指定難病309で、医療費の助成の対象は、ウンフェルリヒト・ルンドボルグ病・ラフォラ病・良性成人型家族性ミオクローヌスてんかんの3つです。難病情報センターの解説(令和7年10月更新)は、これらを、小児期から思春期に発症して成人以降も長く続く病気として位置づけています。
18歳未満で始まる病気は、小児慢性特定疾病の対象になっていることがあります。小児慢性特定疾病情報センターでは、神経・筋疾患の「進行性ミオクローヌスてんかん」の中にウンフェルリヒト・ルントボルク病とラフォラ病が、先天性代謝異常の「ライソゾーム病」の中に神経セロイドリポフスチン症・ゴーシェ病・シアリドーシスが載っています。ゴーシェ病は、指定難病19「ライソゾーム病」にも含まれています(いずれも2026年10月時点で確認)。助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たして申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
2. 進行性ミオクローヌスてんかんは遺伝する?遺伝する確率と、きょうだい・お子さんへの影響
このページで調べる病気の多くは常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親はふつう症状のない保因者で、きょうだいが同じ病気である確率は4分の1です。一方で、顕性(優性)遺伝や母系遺伝の病気もあり、遺伝する確率は原因の病気によって違います。難病情報センターも、原因や遺伝のしかたによって次の世代に遺伝する場合とそうでない場合がある、としています。
常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)の場合:ご両親・きょうだい・お子さん
常染色体潜性(劣性)遺伝では、対になった2本の遺伝子の両方に変化があるときに発症します。片方だけに変化がある人は「保因者」と呼ばれ、ふつう症状はありません。ウンフェルリヒト・ルンドボルグ病・ラフォラ病・神経セロイドリポフスチン症の多くは、この遺伝のしかたです[3][4]。
- ●ご両親:多くの場合、お二人とも保因者です。ご両親に症状がなくても、お子さんが発症することがあります。
- ●きょうだい:同じご両親から生まれたきょうだいは、お一人ごとに4分の1の確率で同じ病気、2分の1の確率で保因者、4分の1の確率でどちらでもありません。
- ●ご本人のお子さん:ご本人が病気で、パートナーの方が同じ病気の原因となる病的変異を持たない場合、お子さんは全員、保因者になります。パートナーの方も同じ病気の保因者の場合は、お子さん1人ごとに2分の1の確率で発症し、2分の1の確率で保因者になります。
「てんかんは母親から遺伝する?父親から遺伝する?」という疑問をよく見かけますが、潜性遺伝の病気では、ご両親それぞれから1つずつ変化を受け継いだときに発症するので、どちらか一方のせいではありません。保因者であることは、誰にでもありうることです。くわしくは保因者の仕組みと子どもへ遺伝する確率で解説しています。
顕性遺伝・母系遺伝(ミトコンドリア)の病気もある
BAFMEは浸透率の高い常染色体顕性(優性)遺伝、DRPLAも顕性遺伝で、親が病気の場合、お子さんは1人ごとに2分の1の確率で原因を受け継ぎます。DRPLAは、世代を重ねるごとに発症が早く重くなる「表現促進」がみられ、とくに父親から伝わるときに目立つとされています[6]。MERRFはミトコンドリア病のひとつで、母親から子へ伝わる母系遺伝です[7]。
このページの19遺伝子の中にも、顕性遺伝の病気の遺伝子(IRF2BPLなど)があります。顕性遺伝の病気では、ご両親にない変化がお子さんで新しく起きていること(新生突然変異)もあります。その場合も、親御さんの卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)にだけ同じ変化がある可能性は残ります。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。
「てんかんの遺伝」全体との違い
「てんかん 遺伝」と調べると、さまざまな情報が出てきます。てんかんの原因はさまざまですが、PMEは、遺伝子1つの変化で起こる病気が中心の、原因を確かめやすいグループです。イタリアのPMEの患者さん165人の集まりでは、遺伝子の解析で原因がわかった割合が8割を超え、PMEは遺伝的な原因が最もよくわかっているてんかんのひとつとされています[2]。だからこそ、検査で原因を確かめれば、ご家族ごとに具体的な確率をお伝えできます。
3. この検査で調べる19遺伝子と、それぞれでわかる病気
この検査では、次の19遺伝子(ADRA2B、ASAH1、CLN3、CLN5、CLN6、CLN8、CSTB、EPM2A、GBA、GOSR2、GRN、IRF2BPL、KCTD7、MFSD8、NHLRC1、PPT1、PRICKLE1、SCARB2、TPP1)をまとめて調べます。表の右端は、当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・1009遺伝子)の対象に入っているかどうかです。
🧬 進行性ミオクローヌスてんかんパネルの対象遺伝子(19遺伝子)
※病名と遺伝のしかたはOMIMの病名番号にもとづく(2026年10月確認)。保因者検査の欄は当院の遺伝子一覧(787遺伝子=拡大版保因者スクリーニング女性版、1009=1009遺伝子版)で確認。GBAは一覧ではGBAと表記されています。
19遺伝子のうち9遺伝子(CLN3・CLN5・CLN6・CLN8・GRN・KCTD7・MFSD8・PPT1・TPP1)は、神経セロイドリポフスチン症の原因遺伝子です。ウンフェルリヒト・ルンドボルグ病(CSTB)とラフォラ病(EPM2A・NHLRC1)の遺伝子は、保因者検査の対象には入っていません。
4. どんな人がこの検査を受けるとよいか
ミオクローヌスとてんかん発作があり、ほかの神経の症状がだんだん進んでいる方、きょうだいなどご家族に進行性ミオクローヌスてんかんの方がいる方に向く検査です。原因がわかれば、病名・見通し・避けたい薬・使える制度が決まり、次のお子さんで同じことが起こる確率もわかります。
この検査を受けるとよい方
- ●ミオクローヌス(動作や刺激でぴくっとする動き)とてんかん発作がある方
- ●ふらつき(小脳の症状)や、物忘れ・学業の遅れなどの認知機能の低下が少しずつ進んでいる方
- ●光の刺激で発作が起こりやすい方、脳波の検査で全般性の発作波を指摘された方
- ●視力の低下や、できていたことができなくなる「発達の後戻り」がある方
- ●きょうだいなどご家族に進行性ミオクローヌスてんかんの方がいる方
- ●脳のMRIや血液の検査では原因がわからなかった方
遺伝子検査は、やってみないとわからないことが多い検査です。症状やご家族の経過だけで原因の病気を言い当てることはできません。主治医から「PMEかもしれない」と言われた段階で、遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
「自分もなるかもしれない」と不安なご家族の方へ
きょうだいが進行性ミオクローヌスてんかんと診断されると、「自分も同じ病気なのでは」「このふらつきは始まりではないか」と、毎日の小さな体の変化におびえながら暮らしている方もいます。潜性遺伝の病気では、同じご両親から生まれたきょうだいが同じ病気である確率は4分の1です。BAFMEのように大人になってから始まる病気では、親御さんが病気の場合、2分の1の確率で受け継ぎます。
当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。症状のない方が将来の発症を調べる検査は「発症前の検査(予測的検査)」といい、ご家族の原因の変化がわかっていると、同じ場所をピンポイントで調べられます。
ご家族の原因の変化を受け継いでいないとわかれば、その病気について、ご家族と同じ確率を心配する必要はなくなります。受け継いでいるとわかった場合は、避けたい薬を前もって知る、見張る症状を決める、仕事・結婚や出産・住まいの計画を立てるなど、次にできることがあります(第6章)。英国でハンチントン病の発症前検査を受けた人の理由として最も多かったのは「不確実さを減らすため」(70.5%)でした[17]。病気は違いますが、「知って計画を立てたい」という思いは共通するものだと思います。
一方で、結果を知ったあとの気持ちの変化は、どちらの結果でも起こりえます。当院では、結果をお伝えしたあとも、遺伝カウンセリングで相談を続けていただけます。なお、日本医学会のガイドライン(2022年3月改定)は、未成年者の保因者の診断や、成年期以降に発症する病気の発症前の検査は、原則として本人が成人して自分で判断できるまで延期すべきとしています。お子さんの検査は、この考え方を踏まえてご相談ください。
この検査より別の検査が向いている場合
症状からPMEの原因の病気がある程度しぼれるなら、この検査です。反対に、てんかんの型がしぼれないときや、この検査で見つけられない病気を疑うときは、次の検査のほうが向いています。
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※DRPLA・MERRF・シアリドーシスを疑うときの検査は第5章で説明します。どの検査が合うかは、症状・診察所見・ご家族の情報で変わります。遺伝子検査全般のしくみは遺伝子検査とはで解説しています。
5. 検査でわかること・わからないこと(検査の限界)
この検査でわかるのは、19遺伝子の中の、塩基(遺伝子の文字)が1つ変わる変化や、小さな挿入・欠失です。遺伝子1つまるごと、または続いた2つ以上のエクソンの欠失・重複も、検体によっては調べられます(血液では2つ以上のエクソン、頬の粘膜では遺伝子1つまるごと。1つのエクソンだけの欠失・重複は、ふだんは検出できません)。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
このパネルでは見つけられない原因
この検査は、くり返し配列が長くなる変化(リピート伸長)や、ミトコンドリアDNAの変化は調べられません。PMEでは、ここに当たる原因が少なくないので、疑う病気によっては別の検査が必要です。
⚠️ この検査では見つけられないPMEの原因と、調べる方法
※検査の限界は当院の検査内容による。原因の病気の説明は各文献による。
陰性でも病気を否定できない理由と、VUS
- ●調べていない遺伝子:PMEの原因になる遺伝子は、この19遺伝子のほかにもたくさんあります。原因が見つからなくても、PMEではないとは言えません。
- ●見つけにくい変化:上の表のリピート伸長のほか、染色体の転座や逆位、遺伝子のスイッチの部分(プロモーター)やエクソンから20塩基以上離れたイントロンの奥の変化、よく似た配列が多い場所の変化は、見つけられないことがあります。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態は、この検査の対象として設計されていません。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。
調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針のとおりです。なお、検査の精度の目安として、対象遺伝子の99%以上の領域を20回以上読み取る設計になっています。読み取りの品質が低い場所は、サンガー法という別の方法で確かめます。
6. 病的変異が見つかったら、次にできること
原因の病気がわかると、受ける検査、気をつけたい薬、使える制度が決まり、ご家族や次のお子さんのことも具体的に考えられるようになります。エクソーム・ゲノム検査の研究167件をまとめた系統的レビューでは、最も多く報告された結果は、診療方針や、子どもを持つことについての判断が変わったことでした[16]。結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。
ご本人:病名が決まり、薬の選び方と見張ることが変わる
ウンフェルリヒト・ルンドボルグ病では、フェニトインが神経の症状を悪くし、小脳の変性を早めることもあるとされています。カルバマゼピン・オキシカルバゼピンなどのナトリウムチャネル遮断薬、チアガビン・ビガバトリン、ガバペンチン・プレガバリンも、ミオクローヌスを悪くしうると書かれています。一方で、レベチラセタム・ブリバラセタム・ペランパネルは、ミオクローヌスと全般発作の両方に効くようだとされています[3]。ラフォラ病でも、フェニトインは避けるべきとされています[4]。
ペランパネルについては、PMEの11人の症例集積で、9人の動作時のミオクローヌスによる生活のしにくさが改善しました(効かなかった2人はラフォラ病)。104人を対象にした文献のまとめでは、半数を超える方で動作時のミオクローヌスが減ったと報告されています。ただし、いずれも規模の小さな研究で、より大きな試験が必要とされています[10]。
原因の病気によっては、病気そのものに働く治療があります。神経セロイドリポフスチン症2型(CLN2病、TPP1遺伝子)では、脳室内に酵素を入れるセルリポナーゼ アルファで、運動と言葉の点数の下がり方が、治療を受けていない過去の患者さんより小さかったと報告されています[9]。日本では「ブリニューラ脳室内注射液」として、2019年9月20日に「セロイドリポフスチン症2型」の治療薬として承認されています(2026年10月時点、PMDAで確認)。ゴーシェ病には酵素補充療法などの治療薬がありますが、神経の症状の最終的な見通しは変わらないとされています[8]。日本で使われている飲み薬(サデルガ)の添付文書にも、神経症状への効果は期待できないと書かれています。
進んだときに気をつけたい合併症も、原因によって違います。SCARB2による型では腎不全を伴うことがあり、伴わないまま経過する方もいます[13]。神経セロイドリポフスチン症では視力の低下が問題になります。薬の調整や治療は、てんかん・神経の専門の医療機関で受けていただきます(当院は治療・処方は行っていません)。遺伝子で原因が確定していることは、指定難病などの制度を申請するときの手がかりにもなります。
ご両親・きょうだい:保因者かどうかと、ピンポイントの検査
潜性遺伝の病気とわかった場合、ご両親がそれぞれ同じ遺伝子の保因者かを確かめると、お子さんの変化がどこから来たのかがはっきりします。ご家族の中で原因の変化がわかっていると、きょうだい・いとこなどほかのご家族は、同じ場所をピンポイントで調べられます。症状のないご家族の検査は、ご本人の同意で行います。症状のないきょうだいの検査は、発症前の検査や保因者の診断にあたるので、前の章で書いたように、検査の前に遺伝カウンセリングで知ることの意味をよく考えていただきます。
次のお子さんを考えるとき:知ってから選べること
潜性遺伝の病気では、ご両親が保因者の場合、次のお子さんが同じ病気である確率は4分の1です。ご本人が大人になって子どもを持つときは、パートナーの方が同じ遺伝子の保因者かどうかが大切になります。このページの遺伝子のうち、神経セロイドリポフスチン症の遺伝子やGBA1などは拡大版保因者スクリーニングの対象ですが、ウンフェルリヒト・ルンドボルグ病・ラフォラ病の遺伝子は対象外です(第3章の表)。パートナーの方の調べ方は、遺伝カウンセリングでご相談ください。
ご家族の原因の変化がわかっていれば、妊娠したときに、赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断するので、妊娠を考えている段階からご相談ください。体外受精でできた受精卵を調べるPGT-M(着床前遺伝学的検査)という方法もあります。日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。何もしないで自然に妊娠・出産することも、同じように選べる選択肢です。どの選択も尊重します。
海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます
PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。海外でPGT-Mを受けたいというお問い合わせは多く、当院では、海外でPGT-Mを受けるときに使える英語の検査結果をお渡しできます。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因遺伝子の確定、英語の検査結果のご用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠したあとの絨毛検査・羊水検査です。
欧州ヒト生殖学会(ESHRE)の指針は、PGT-Mの準備として、病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、どの遺伝子のどの変化かが書かれた元の報告書、そしてご家族の検体を挙げています[18]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあります。そのため、変化のある場所の両側にある目印(多型マーカー)で、変化をもつ染色体を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます。潜性遺伝の病気では、指針の目安として、患者さん(2つの変化をもつ方)・保因者・保因者でない方のDNAが挙げられています[18]。ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。血縁者がいない場合、指針は、治療の周期の受精卵や1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法も挙げていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります[18]。
海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。臨床遺伝専門医としての判断では、意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。潜性遺伝の病気では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もってご確認ください。
⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です
PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[19]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。絨毛検査・羊水検査は院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。
日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる病気で、申請の時点で有効な治療法がないか、あっても高度で体への負担が大きいもの、とされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないが日常生活が著しく損なわれる病気では、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みがあります。学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。
英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2026年9月17日更新の一覧には2,067の病気が載っています。一覧にない病気は、施設を通じて申請し、HFEAが審査します。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[20]。米国生殖医学会の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気に対するPGT-Mも倫理的に許容されうるとする意見を出しています[21]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。くわしくは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。
陰性・VUSだったとき
19遺伝子に原因が見つからなかった場合も、PMEではないとは言えません(第5章)。遺伝子の解析で、すべての方に原因が見つかるわけではありません。日本の未診断疾患イニシアチブ(IRUD)でも、解析を終えた5,136家系のうち診断がついたのは2,247家系(43.8%)でした[15]。ウンフェルリヒト・ルンドボルグ病のリピート伸長、DRPLA、MERRF、シアリドーシスなど、この検査で見つけられない原因を、症状に合わせて別の検査で調べます。病気がしぼれないときは、てんかん包括的遺伝子検査や全エクソーム検査も考えます。VUSが見つかった場合は、それだけで診断やご家族の検査には使わず、研究が進んで意味がはっきりするのを待つこともあります。
7. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜・血液のいずれでも、オンライン診療で受けられます。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医・オンライン可
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検体の採取・送付お支払い後にキット
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
ほとんどの方は、唾液か頬の内側の粘膜で検査できます。血液で検査する場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採取しないでください。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の見かたは遺伝子検査結果の見かたで解説しています。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
8. 院長コラム
🩺 院長コラム【病名がわかって、はじめて次の計画が立てられる】
進行性ミオクローヌスてんかんは、ひとつの病気の名前ではありません。同じ「PME」でも、原因の病気によって、避けたい薬も、見通しも、ご家族への遺伝のしかたもまったく違います。だからこそ、症状の名前で止まらず、原因の病気の名前まで確かめることに大きな意味があると考えています。
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。PMEの多くは、症状のないご両親がそれぞれ保因者である潜性遺伝の病気です。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく関係のない別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったこともあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
きょうだいが発症して「自分もなるのでは」と不安を抱えている方にとっても、わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで仕事や結婚、妊娠を考えたい方には、ご家族の検査から出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。知らないでいることを選ぶ方も含めて、どの選択も尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 進行性ミオクローヌスてんかんは遺伝しますか?遺伝する確率は?
原因の病気によって違います。このページの検査で調べる病気の多くは常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親はふつう症状のない保因者です。この場合、同じご両親から生まれたきょうだいが同じ病気である確率は4分の1です。良性成人型家族性ミオクローヌスてんかんやDRPLAのような顕性(優性)遺伝の病気では、親が病気の場合、お子さんは2分の1の確率で原因を受け継ぎます。原因の病気を確かめると、ご家族ごとの確率をお伝えできます。
Q2. ミオクローヌスとミオクロニー発作(けいれん)の違いは?
国際抗てんかん連盟(ILAE)は、ミオクロニー発作を、突然起こる短い(100ミリ秒未満)、自分の意思によらない筋肉の収縮と定義し、症状としてのミオクローヌスには、てんかんによるものとよらないものがあるとしています。手足が続けてがくがくする「けいれん(間代)」より、規則的にくり返しにくく長く続かないのが違いです。進行性ミオクローヌスてんかんでは、動作や刺激で誘われるミオクローヌスが目立ちます。
Q3. 進行性ミオクローヌスてんかんの寿命・予後は?
原因の病気によって大きく違います。ラフォラ病では多くの方が発症から10年以内に亡くなるとされる一方、ウンフェルリヒト・ルンドボルグ病では40歳までの寿命は病気のない人と同じくらいで、長い目で見ると短くなるとされています。見通しを考えるうえでも、まず原因の病気をはっきりさせることが大切です。
Q4. 進行性ミオクローヌスてんかんは指定難病ですか?
はい。指定難病309で、医療費の助成の対象は、ウンフェルリヒト・ルンドボルグ病・ラフォラ病・良性成人型家族性ミオクローヌスてんかんの3つです(2026年10月時点、難病情報センターの情報)。ウンフェルリヒト・ルントボルク病とラフォラ病は小児慢性特定疾病の対象にも載っています。助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たして申請する必要があります。
Q5. この検査でラフォラ病やDRPLA、ウンフェルリヒト・ルンドボルグ病はわかりますか?
ラフォラ病の原因遺伝子(EPM2A・NHLRC1)は調べられます。ウンフェルリヒト・ルンドボルグ病は、CSTBの小さな変化は調べられますが、主な原因のくり返し配列の伸長は調べられません。小さな変化が1つ見つかっても、もう片方のくり返し配列の伸長を別の検査で調べる必要があります。DRPLAは原因のATN1遺伝子が対象に入っていないので、ATN1遺伝子検査で調べます。
Q6. 家族に進行性ミオクローヌスてんかんの人がいると、結婚に差し支えますか?
病気のご家族がいることが、結婚できない理由になることはありません。多くは潜性遺伝の病気で、お子さんが発症するのは、ご夫婦がともに同じ遺伝子の保因者だった場合です。ご家族の原因の変化がわかっていれば、ご自身が保因者かどうか、お子さんへの確率がどれくらいかを検査で確かめられます。知ったうえで、出生前診断なども含めて選ぶことができます。
Q7. きょうだいが発症しました。症状のない自分も検査を受けられますか?
受けられます。ご家族の原因の変化がわかっていれば、同じ場所をピンポイントで調べられます。症状のない方の検査は発症前の検査や保因者の診断にあたるため、検査の前に遺伝カウンセリングで、知ることの意味をよく考えていただきます。未成年の方の保因者の診断や、成年期以降に発症する病気の発症前の検査は、日本医学会のガイドラインにもとづき、原則として成人してご本人が判断できるまで延期します。小児期の健康管理や治療に役立つ検査は、ご本人の利益を踏まえて個別に検討します。
Q8. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?
はい。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。ただし、ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。潜性遺伝の病気では、患者さん・保因者・保因者でない方など、ご家族の検体が必要になることが多いです。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。くわしくは「海外でPGT-Mを考えている方へ」のコラムで解説しています。
🧬 原因の病気を知ることが、ご本人とご家族の次の一歩に
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。進行性ミオクローヌスてんかんの原因がわかれば、避けたい薬や見張ることが決まり、きょうだいの検査や、次のお子さんを考えるときの選択肢が具体的になります。当院では臨床遺伝専門医が検査の前後の遺伝カウンセリングを行い、ご家族の検査から羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
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