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『発症した本人でなければハンチントン病遺伝子検査はできない』と大学病院で断られ続けた方へ――日本の発症前診断のアクセス障壁と、欧米の臨床検査基準で運営する当院の立場

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。2025年国際誌『Global Woman Leader』表紙抜擢など、世界基準の出生前診断と遺伝カウンセリングを提供。

「家族にハンチントン病を発症した者がいるため、自分も将来の発症リスクを知りたい」と大学病院に相談したところ、「発症した本人でなければ遺伝子検査はできない」と説明され、何件かの大学病院を回っても同じ対応が続いた――そんなご相談が、当院に多く寄せられています。当院は米国FDA管轄下のCLIA認定臨床検査ラボで実施され、現地で保険償還の対象となっているHTT遺伝子CAGリピート伸長解析を、国際ガイドラインに準拠した発症前診断プロトコルのもとで提供しています。なぜ日本の大学病院では未発症者の検査が事実上受けられないのか、そして当院が同じ領域の検査を臨床診療として提供できる理由を、制度の構造から丁寧に解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約13分
🧬 ハンチントン病・発症前診断・遺伝カウンセリング
臨床遺伝専門医監修

Q. 発症していない未発症者がハンチントン病の遺伝子検査を大学病院で断られるのはなぜですか?

A. 日本の保険適応が「発症した患者の確定診断のみ」に限定されており、未発症者の発症前診断は自費診療となること、国際ガイドライン準拠のプロトコルを運用できる施設が限られること、さらに国内の主要受託検査機関であるSRLが2026年3月末でHTT検査の受託を中止することなど、複数の制度的構造が重なっているためです。検査そのものは世界的に確立されたエビデンスベースの臨床検査であり、「検査ができない」のではなく「日本国内で受けにくい」というのが実態です。

  • 「発症者のみ」と言われる理由 → 保険適応・実施体制・検査受託の三層構造によるアクセス障壁
  • 当院の立場 → 米国CLIA認定ラボ・現地保険償還対象の臨床検査のみ提供、研究用検査は一切扱わない
  • 検査内容 → HTT遺伝子CAGリピート伸長解析(repeat-primed PCR)、結果報告は2〜3週間
  • 国際的位置づけ → ハンチントン病の発症前診断は国際的なゴールドスタンダードのプロトコルモデル
  • 遺伝カウンセリング → IHA/WFN国際ガイドライン準拠の事前カウンセリング・クーリング期間・結果開示後の継続的フォロー

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1. 「発症した本人でなければ検査しない」と何件もの大学病院で言われた、というご相談

当院には、ハンチントン病の遺伝子検査について、こうしたご相談が多く寄せられます。「家族にハンチントン病を発症した者がいるため、自分も将来の発症リスクを知りたいと大学病院に相談した。しかし、『明らかに発症している本人でなければ検査は実施しない』とだけ説明され、なぜそうなのか、どうすればよいのかについて具体的な道筋は示されないまま断られた。何件か別の大学病院も訪ねてみたが、どこでも同じ対応が続いている」――このような戸惑いを抱えて、当院にお問い合わせくださる方がいらっしゃいます。

💡 用語解説:ハンチントン病(Huntington’s Disease, HD)

第4染色体短腕(4p16.3)に位置するHTT遺伝子のCAG三塩基反復配列の異常伸長によって発症する、進行性の神経変性疾患です。舞踏運動などの不随意運動・認知機能障害・精神症状の三徴を特徴とし、30〜50歳代での発症が多いとされます。常染色体顕性遺伝のため、患者の子どもには50%の確率で異常遺伝子が伝わります。CAGリピート数が40回以上でほぼ100%発症する完全浸透の疾患であり、世代を超えてリピート数が伸びやすい「表現促進現象」も知られています。日本では指定難病として認定されています。

ご家族にハンチントン病を発症された方がいて、ご自身の将来のリスクを知りたい――あるいは家族計画や人生設計の判断材料を得たい。そうした切実な願いに対して、「発症者でなければ検査できない」という一言だけが返ってきて、その先の選択肢を示されないまま立ち止まってしまう方が、確実に存在しています。

この記事は、そうした方々に向けて、「発症者でなければ検査しない」と言われる対応の背景にある日本の制度上の構造と、当院がなぜ同じ領域の遺伝子検査を臨床診療として提供できるのかを、丁寧にお伝えするものです。

2. 「発症者でなければ検査しない」と言われる対応の背景――日本の制度的アクセス障壁の三層構造

「発症した本人でなければ検査しない」という、一見シンプルな対応の背景には、実は日本の医療制度上の複数のレイヤーが折り重なっています。それを解きほぐすと、以下の三層の構造が見えてきます。

① 保険適応のレイヤー:未発症者は対象外

日本の保険診療下でのHTT遺伝学的検査(D006-4)は、「ハンチントン病疑い」の患者に対する確定診断目的のみ算定可能であり、原則として患者1人につき1回に限り算定できる、と定められています。つまり、すでに症状が出ている方の確定診断のための検査としては保険でカバーされていますが、家族歴をお持ちの未発症者(at-risk)への発症前診断は保険適応の対象外です。

この結果、未発症者への検査は完全な自費診療として実施せざるを得ません。多くの大学病院は、自費診療枠で未発症者の発症前診断を体系的に運用する診療体制を整えていないため、「実施していない」という運用判断につながります。

② 実施体制のレイヤー:国際ガイドラインに沿ったプロトコルの運用が必要

ハンチントン病の発症前診断は、国際的に確立されたガイドライン(IHA/WFN 1994、HDSA 2016改訂版、MacLeod et al. 2013など)に沿った多段階のプロトコルの運用が求められます。具体的には:

  • 複数回にわたる事前遺伝カウンセリング
  • 心理士・精神科医との連携体制の確保
  • カウンセリング後の一定のクーリング期間(意思の再確認のための猶予)
  • 結果開示時の遺伝カウンセリング
  • 結果開示後の長期的な心理的フォロー

これらをすべて満たせる遺伝医療チームを継続的に運用できる施設は、日本国内では極めて限定的です。そのため「未発症者の発症前診断は当院では実施していない」という運用判断につながります。

③ 検査受託のレイヤー:SRLが2026年3月末で受託中止

さらに重大な事態として、日本最大の臨床検査受託機関であるSRLが、2026年3月31日付でHTT遺伝子CAG反復配列解析の検査受託中止をアナウンスしています。これにより、日本国内の医療機関がSRL経由でHTT遺伝子検査を依頼する道は、すでに閉ざされる局面に入っています。検査を実施する物理的なインフラ自体が縮小しているのが現状です。

⚠️ つまり:「発症者でなければ検査しない」という一律の対応は、医師個人の判断というより、保険適応の壁・実施体制の壁・検査受託の壁という三層の制度的構造が折り重なった結果として現場のスタンダードになっているのです。理由を尋ねても明確な答えが返ってこないことが多いのは、理由が一つではなく、施設ごとに事情が複層的だからでもあります。

3. 当院は国際ガイドラインに準拠し、欧米の臨床基準で運営しています

当院の基本姿勢として最も明確にお伝えしたいのは、当院は日本の自由診療の枠組みではなく、欧米の臨床診療基準に準拠して運営しているという事実です。提供する遺伝子検査は、すべて欧米で臨床検査としての規制当局の承認を受け、現地で保険償還の対象となっている検査に限定しています。

💡 用語解説:CLIA認定ラボとは

CLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments、臨床検査改善修正法)は、米国における臨床検査の品質を法的に保証する制度です。米国内で人体検体を用いた臨床検査を実施するためには、FDA(米国食品医薬品局)の管轄下にあるCLIA認証を取得した検査ラボでなければなりません。CLIA認定ラボは、検査の精度・再現性・人員資格・品質管理について厳格な基準を満たし、定期的な査察を受けています。研究目的のラボとは法的にも運用的にも異なる、臨床診療のために認定された施設です。

💡 用語解説:CPTコードとは

CPT(Current Procedural Terminology)コードは、米国医師会(American Medical Association)が発行する医療行為の標準コードです。米国の医療保険制度において、診療報酬の請求・償還の基礎となる正式な番号体系で、CPTコードが付与されているということは、その医療行為が米国の保険診療として日常的に請求・償還される対象であることを意味します。当院が使用するHTT遺伝子CAGリピート伸長解析にもCPTコードが付与されており、米国の保険診療下で実施されている臨床検査としての位置づけが確立されています。

💡 用語解説:IHA/WFN国際ガイドライン

国際ハンチントン協会(IHA)と世界神経学会連合(WFN)が1994年に共同発表し、その後MacLeodら(2013年)やHDSA(2016年改訂版)によってアップデートされてきた、ハンチントン病の発症前診断に関する国際ガイドラインです。事前カウンセリング・心理的サポート・クーリング期間・結果開示後の継続的フォローなど、発症前診断のすべての段階における倫理的・臨床的標準を示しています。ハンチントン病の発症前診断プロトコルは、他の神経変性疾患(ALSなど)の発症前診断プロトコルのモデルとしても参照されており、発症前診断のゴールドスタンダードと位置づけられています。

研究用検査(research-use only)は一切扱いません

当院は、研究目的でのみ使用が許可されている検査(research-use only / RUO)は一切扱いません。提供するのは、欧米の規制当局によって臨床用途として承認された検査のみです。

🔬 研究用検査(RUO)

  • 目的:科学的知見の蓄積
  • 実施:研究機関の研究室
  • 結果開示:限定的または非開示
  • 品質基準:研究目的の精度
  • 当院では一切扱わない

🏥 臨床用検査(Clinical)

  • 目的:個人の医療判断のため
  • 実施:FDA管轄下のCLIA認定ラボ
  • 結果開示:正式な検査報告書として書面開示
  • 品質基準:臨床診療に耐える精度・再現性
  • 当院が提供するのはこちらのみ

この区別は、欧米の臨床遺伝医療の現場では極めて明確です。当院は、欧米の医療現場で「普通の臨床検査」として日常的に使用されている検査を、日本で同じ品質基準のもとに、国際ガイドライン準拠の発症前診断プロトコルとともに提供しています。

4. ハンチントン病遺伝子検査の世界的な臨床的位置づけ

ここで重要な事実を整理しておきます。ハンチントン病遺伝子検査そのものの科学的妥当性・臨床的位置づけは、世界的に確立されています。日本でも「発症した患者の確定診断」としては保険収載されており、検査としての有効性は公的に認められています。問題は、未発症者へのアクセスが日本では事実上閉ざされているという運用面にあります。

保険収載・CPTコード付与に必要なエビデンスとは

米国・欧州・日本いずれの国でも、ある医療行為(検査・治療)を公的医療保険または民間医療保険の償還対象とするためには、以下のような評価プロセスを経る必要があります。

  • 検査の解析的妥当性(analytical validity):意図した分子変化(HTT遺伝子のCAGリピート数)を正確に検出できるか
  • 検査の臨床的妥当性(clinical validity):CAGリピート数と疾患・予後の関連が確立されているか
  • 検査の臨床的有用性(clinical utility):結果が患者の医療判断に有意な変化をもたらすか
  • 規制当局による審査・承認

これらすべてを満たして初めて、米国ではCPTコードが付与され、保険償還の対象となります。米国でHTT遺伝子CAGリピート伸長解析にCPTコードが付与されているということは、その時点で既に臨床的有用性が確立されたエビデンスベースの臨床検査である、ということです。

「日本で受けにくい」と「検査として未確立」は別問題

⚠️ 押さえておきたいのは、「日本国内で未発症者がアクセスしにくい」ことと、「検査として未確立」であることは、論理的にまったく別の問題だという点です。HTT遺伝子CAGリピート伸長解析は、世界的に最も多くの発症前診断が行われてきた検査の一つであり、米国・欧州の医療現場では国際ガイドラインに沿って日常的に実施されています。日本での未発症者へのアクセス困難は、検査そのものの問題ではなく、制度・運用上の問題なのです。

5. 当院のハンチントン病遺伝子検査:HTT CAGリピート伸長解析

当院で提供するハンチントン病遺伝子検査は、米国のFDA管轄下にあるCLIA認定臨床検査ラボで実施される、HTT遺伝子のCAGリピート数を解析する検査です。米国医師会のCPTコードが付与され、現地で保険償還の対象となっている臨床検査です。

💡 用語解説:repeat-primed PCR(リピートプライムドPCR)

HTT遺伝子のCAG三塩基反復配列の伸長は、通常のサンガーシーケンスやNGSでは正確に検出できない場合があります。repeat-primed PCRは、リピート伸長を専門的に検出する技術で、CAGリピートの内部にプライマーを設計することで、伸長したリピートの存在を確実に同定できます。通常のフラグメント解析と組み合わせることで、正常範囲のリピート数の正確な計測と、大きく伸長したリピートの検出の両方が可能になります。これは国際的に標準とされている解析手法です。

CAGリピート数の臨床的解釈

HTT遺伝子のCAGリピート数は、以下のように臨床的に解釈されます。

✅ 正常範囲(≤26回)

ハンチントン病を発症することはありません。次世代への伸長リスクもほぼありません。

⚠️ 中間アレル(27〜35回)

本人は発症しませんが、世代を超えて伸長し、次世代でCAGリピートが36回以上になり発症するリスクが生じうる範囲です。

⚠️ 不完全浸透(36〜39回)

発症する場合と発症しない場合があり、発症しても高齢発症となる傾向があります。次世代への伸長リスクが高くなります。

🔴 完全浸透(≥40回)

通常の寿命を仮定したとき、ほぼ100%でハンチントン病を発症します。リピート数が多いほど発症年齢が早くなる傾向があります。

💡 用語解説:表現促進現象(アンティシペーション)

世代を経るごとに、CAGリピート数が伸びて発症年齢が早まる現象です。特に父親からの遺伝でリピート伸長が起こりやすいとされ、親より子の方が早期に発症する若年性ハンチントン病(JHD)として現れることもあります。約1割の患者は20歳以下で発症しており、その多くが父親からの遺伝とされています。中間アレルや不完全浸透域の方が次世代に与える影響を考えるうえで、この現象の理解は重要です。

検査仕様の概要

🧬 解析対象

  • HTT遺伝子エクソン1領域内のCAG三塩基反復配列
  • 正常アレルおよび伸長アレルの両方のリピート数を測定

🔬 解析方法

  • フラグメント解析によるCAGリピート数の精密測定
  • repeat-primed PCRによるリピート伸長の検出

📦 検体

  • 血液(EDTAチューブ)
  • 唾液
  • 口腔粘膜擦過
  • オンライン診療対応(唾液・口腔粘膜のキット送付)

📅 結果報告

  • 通常:2〜3週間
  • 米国ラボから正式な臨床検査報告書として発行
  • 遺伝カウンセリングを伴って結果開示

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6. 大学病院と当院――役割の違い

ここで誤解のないようにお伝えしておきたいのですが、「大学病院ではできないことを当院ができる」という単純な構図ではありません。それぞれが医療制度の中で異なる役割を担っており、その役割の違いが、患者さんから見ると「できる・できない」の差として現れているのが実情です。

🏥 大学病院

  • 日本の保険診療を中心とした診療体制
  • 発症患者の確定診断・包括的医療の拠点
  • 未発症者の発症前診断は制度上の隙間で運用困難
  • 多診療科による集学的医療と先進医療研究の拠点

🌍 当院(ミネルバクリニック)

  • 欧米の臨床基準で運営
  • FDA管轄下のCLIA認定ラボの臨床検査のみ提供
  • 研究用検査は一切扱わない
  • 臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを伴う検査運用

大学病院は、日本の保険診療を支える基盤として極めて重要な役割を担っています。同時に、日本の保険適応の範囲と運用体制の制約により、「日本の保険診療と現場の運用の隙間で選択肢を見つけられない方」が一定数存在することも事実です。当院は、そのような方々に対して、欧米基準で確立された臨床検査を、国際ガイドライン準拠の遺伝カウンセリングとともに提供することを役割としています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【制度の隙間で諦めないでほしい】

「発症した本人でなければ検査はできません」と説明され、それを「もう選択肢はない」と受け取って諦めてしまう方が、本当に多くいらっしゃいます。でもそれは、日本の制度上の制約であって、世界のどこかに同じ検査の臨床的な実施先が必ず存在することがあるのです。

ハンチントン病の発症前診断は、ご本人とご家族の人生設計に直結する情報です。受けるか受けないかを最終的に決めるのはご本人ですが、「選べる」という前提を持っていただきたい。選択肢の存在を知っていただくこと自体に意味があると、私は考えています。

7. 発症前診断という選択について

家族歴をお持ちの未発症の方が遺伝子検査を希望される場合、それは発症前診断(presymptomatic testing)と呼ばれる特別な領域に入ります。ハンチントン病は現時点で根治療法が確立されていない疾患であるため、結果を知ることのメリットとデメリットを慎重に考える必要があります。

💡 用語解説:発症前診断(presymptomatic testing)

将来発症する可能性のある遺伝性疾患について、症状が現れる前に遺伝子検査によってリスクを判定する診断のことです。ハンチントン病のように現時点で根治療法がない疾患の場合、結果が陽性であっても予防的治療を直ちに開始できるわけではないため、「知ること」自体の意味と心理的影響を事前に十分に検討する必要があります。国際的にはハンチントン病の発症前診断プロトコルがゴールドスタンダードのモデルとして確立されており、他の神経変性疾患(ALSなど)の発症前診断もこれに準じた手順で実施されています。

国際的に確立された発症前診断の手順

  • 事前カウンセリング:検査の意味・結果のとらえ方・心理的影響・家族計画への影響などを十分に話し合う
  • インフォームドコンセント:受検の意思を確認する正式な手続き
  • クーリング期間:カウンセリング後、すぐに採血せず一定期間を置いて意思を再確認する
  • 結果開示時のサポート:陽性・陰性いずれの結果でも、その意味を十分に理解できる場としての遺伝カウンセリング
  • 結果開示後の継続的フォロー:心理的サポート・医学的管理計画・家族への情報共有支援

当院は、この国際基準に沿った手順を遵守しています。検査を急ぎたいというお気持ちは理解できますが、発症前診断は急いで結果を出すことよりも、その結果を受け止める準備を整えることのほうが重要です。これは欧米の臨床遺伝医療において確立されたコンセンサスです。

「知る権利」と「知らないでいる権利」

発症前診断において、「知る権利」と「知らないでいる権利」のどちらも尊重されるべき重要な権利です。当院は、ご本人が十分な情報のもとで自由に選択できる環境を整えることを大切にしています。また、結果は本人にのみ開示し、ご家族や第三者への情報共有はご本人の意思に委ねられます。

家族計画への波及――PGT-Mと出生前診断という選択肢

ハンチントン病は常染色体顕性遺伝のため、患者の子どもには50%の確率で異常遺伝子が伝わります。家系内に発症者がいる場合、ご自身の将来だけでなく、子どもへの遺伝も含めた家族計画への影響が大きな関心事となります。発症前診断の結果に応じて、着床前遺伝学的検査(PGT-M)や出生前診断といった生殖選択肢を検討するご家族もいらっしゃいます。これらの選択についても、当院の遺伝カウンセリングの中で丁寧にお伝えしています。

なお、未成年(18歳未満)の無症状者に対する発症前診断は、国際的に推奨されていません。これは、本人が自らの意思で「知るか・知らないか」を選択できる年齢に達してから検査を行うべきという、世界的に確立された倫理的合意に基づいています。

8. ご相談・検査の流れ

当院でハンチントン病の発症前診断をご検討の方は、以下の流れでご相談を進めていただけます。全国どこからでもオンライン診療でご対応可能です。

① ご予約

WEB予約フォームから初診のご予約をお取りいただきます。家族歴・お困りの内容を事前にお伝えください。

② 初診カウンセリング

臨床遺伝専門医による1.5時間枠でじっくりお話しします。検査の意味・結果のとらえ方・心理的影響をお伝えします。

③ 検体提出

検査料金お支払い後にキットを送付。唾液・口腔粘膜なら自宅で採取可能、血液は提携医療機関で採血可能です。

④ 結果開示と継続フォロー

2〜3週間で結果が届き次第、遺伝カウンセリングで丁寧にご説明します。結果に応じた継続的なサポートも行います。

紹介状は必須ではありません。すでに大学病院などで検査を断られた方も、直接当院にご相談いただけます。

9. 臨床遺伝専門医からのメッセージ

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【なぜ当院は欧米基準で運営しているのか】

日本の遺伝医療の現場で長く診療を続けてきて、私が痛感してきたのは、保険診療と現場の運用体制の隙間で、本来必要な遺伝子検査にたどり着けない方が確実にいらっしゃるという現実です。とくにハンチントン病のように、家族歴をお持ちで「自分のリスクを知りたい」と願う方が、「発症していないから」「うちでは対応していないから」と入口で断られてしまう状況には、ずっと違和感を持っていました。

当院が欧米の臨床基準で運営しているのは、世界基準では確立された臨床検査が、日本では未発症者にとって事実上アクセスできなくなっている構造に対して、患者さんに選択肢を提供するためです。FDAに承認され、米国で保険償還の対象となっている検査は、その時点で世界の臨床診療の標準として認められたエビデンスベースの検査です。それを、国際ガイドラインに沿った適切な遺伝カウンセリングとともに、日本の患者さんにお届けする。これが当院の役割です。

遺伝子検査の結果は、ご本人とご家族の人生に深く関わる情報です。陽性であっても陰性であっても、その情報をどう受け止めるか、その後どう生きるかまでが、私たちの責任の範囲だと考えています。「陽性後も、ひとりにしない。」――これが当院の基本姿勢です。ご不安・ご相談がありましたら、どうぞ遠慮なくお問い合わせください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 大学病院で「発症者でなければできない」と断られましたが、紹介状なしで受けられますか?

はい、紹介状は必須ではありません。当院に直接ご予約いただいて初診カウンセリングを受けていただけます。家族歴・現在のお気持ち・これまでの経緯などをお伺いし、検査が適切かどうかを臨床遺伝専門医がご相談に応じます。

Q2. 発症していなくても検査を受けられますか?

家族歴のある未発症の方の検査(発症前診断)に対応しています。ただし、ハンチントン病は現時点で根治療法がない疾患であるため、結果を知ることの意味・心理的影響について、検査前に十分な遺伝カウンセリングを行います。検査を急がず、ご自身の準備が整ったうえで進めることを大切にしています。

Q3. なぜ日本では未発症者の検査が受けにくいのですか?

日本の保険適応がハンチントン病疑い患者の確定診断のみに限定されており、未発症者の発症前診断は自費診療となること、国際ガイドライン準拠の発症前診断プロトコルを継続運用できる施設が限られること、さらに日本最大の臨床検査受託機関であるSRLが2026年3月末でHTT遺伝子CAG反復配列解析の受託中止をアナウンスしていることなど、複数の制度的・運用的構造が重なっています。検査そのものの科学的有効性の問題ではなく、日本国内のアクセス障壁の問題です。

Q4. 検査ラボはどこにありますか?

米国のFDA管轄下にあるCLIA認定臨床検査ラボで実施されます。米国医師会のCPTコードが付与され、現地の医療保険制度で保険償還の対象となっている臨床検査です。研究用検査ではなく、欧米の医療現場で日常的に使用されている検査です。

Q5. 結果はどのように開示されますか?

米国ラボから発行される正式な臨床検査報告書を、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングのもとで丁寧にご説明します。CAGリピート数の意味、今後の医学的管理、ご家族への影響、ライフプランへの影響などを総合的にお伝えします。陽性・陰性いずれの場合も、結果開示後の継続的なサポートを行います。

Q6. 子どもの検査はいつから受けられますか?

国際的なガイドラインでは、未成年(18歳未満)の無症状者に対する発症前診断は推奨されていません。これは、本人が自らの意思で「知るか・知らないか」を選択できる年齢に達してから検査を行うべきという、世界的に確立された倫理的合意に基づいています。当院もこの国際基準を遵守しています。ただし、すでに症状が出ているお子さんの場合は別の枠組みでの相談が可能です。

Q7. 結果が陽性だった場合、どのようなサポートがありますか?

陽性結果を受け止める時間と心理的サポート、医学的管理計画の立案、ご家族への情報共有支援、家族計画(PGT-M・出生前診断などの選択肢)に関するご相談、必要に応じた臨床試験・治験情報の提供など、結果開示後の継続的なフォローを行います。「陽性後も、ひとりにしない」を当院の基本姿勢としています。

Q8. オンラインで受けられますか?

はい、唾液・口腔粘膜検体であれば、初診カウンセリングから結果開示までオンライン診療で完結可能です。検査キットはお支払い確認後に郵送いたします。全国どこからでもご相談いただけます。血液検体をご希望の場合は、提携医療機関での採血をご案内します。

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「発症者でなければ」と断られた方も、ご家族の家族歴が気になる方も、
臨床遺伝専門医による丁寧な遺伝カウンセリングをご利用いただけます。

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参考文献

  • [1] OMIM #143100. Huntington Disease. Johns Hopkins University. [OMIM]
  • [2] Caron NS, et al. Huntington Disease. GeneReviews®. NCBI Bookshelf. [GeneReviews]
  • [3] MacLeod R, et al. Recommendations for the predictive genetic test in Huntington’s disease. Clin Genet. 2013;83(3):221-231. [PubMed]
  • [4] Huntington’s Disease Society of America (HDSA). Genetic Testing Protocol for Huntington’s Disease (2016 Revision). [HDSA]
  • [5] 日本ハンチントン病ネットワーク. ハンチントン病の診断. [JHDN]
  • [6] 日本神経学会. 遺伝性神経疾患の遺伝カウンセリングと発症前診断. 臨床神経学. [J-STAGE]
  • [7] SRL総合検査案内. HTT遺伝子CAG反復配列解析(ハンチントン病)――2026年3月31日検査受託中止のお知らせ. [SRL]
  • [8] American Medical Association. Current Procedural Terminology (CPT). [AMA CPT]
  • [9] Centers for Medicare & Medicaid Services. Clinical Laboratory Improvement Amendments (CLIA). [CMS CLIA]
  • [10] American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG). Practice Resources and Guidelines. [ACMG]

プロフィール

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。
2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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