目次
📍 クイックナビゲーション
「同じNIPT(新型出生前診断)なのに、クリニックによって調べられる病気も、精度の説明も違うのはなぜ?」――その答えの多くは、お母さんの血液に含まれるDNAを「どの方式で読み、どう解析しているか」にあります。NIPTの解析技術(検査方法)には、ワイドゲノム法(WGS法)、SNP法、ターゲット法、メチル化法、そしてSNP法とターゲット法を組み合わせたCOATE法があり、それぞれ得意な病気と苦手な病気、受けられない妊娠の状況が違います。この記事では、それぞれの方式のしくみと精度の違い、検査を選ぶときに確かめたいポイントを、臨床遺伝専門医の立場から整理します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. NIPTの解析技術(検査方法)は何が違うの?
ダウン症候群などの数の異常(トリソミー)はどの方式でも高い精度で調べられます。違いが出るのは、染色体のごく一部が欠ける微小欠失、三倍体、1つの遺伝子の変化(単一遺伝子疾患)と、卵子提供などで受けられるかどうかです。
🔍 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫?
ダウン症候群のほかにも、22q11.2欠失症候群のような微小欠失や、一部の自閉症・発達障害の原因になる単一遺伝子の変化があります。これらまで調べられるかは、方式とプランで決まります。
🥚 Q. 卵子提供の妊娠でも、どの方式でも受けられる?
いいえ。お母さんのDNAの型を基準にする方式(SNP法や、それを組み合わせたCOATE法)は、卵子提供では使えないことがあります。当院では、卵子提供による妊娠はスタンダードプランと双子マックスプランで受けられます(プレミアムプラン・ダイヤモンドプラン・インペリアルプランは対象外)。受ける前に妊娠の経過を必ず伝えてください。
\ ダウン症候群だけで大丈夫? 調べる「範囲」から選びたい方へ /
当院のNIPTは、プランにより微小欠失・重複(最大92種類)や単一遺伝子(最大155遺伝子)まで調べられ、陽性なら確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。
まだ決めていない方は:NIPTのプラン一覧を見る | NIPTを受けるべきか迷ったら
結論|NIPTは「測り方」で得意・不得意がまったく違います
同じ「NIPT」でも、方式ごとに別の検査と考えてください
NIPTの解析技術とは、お母さんの血液(血漿)に含まれるDNAの断片をどのように読み取り、赤ちゃんの染色体や遺伝子の状態を判定するかという検査方式のことです。お母さんの血漿に赤ちゃん由来のDNAが含まれていることは、1997年にDennis Lo博士らが報告しました[1]。その後、次世代シークエンサーと解析の方法が進歩し、いま「NIPT」と呼ばれている検査の中身は、方式によって大きく違います。
そのため、「どこで受けても同じ」と考えて値段や近さだけで選ぶと、知りたかった病気が対象に入っていなかった、陽性の意味が思っていたのと違ったということが起こりえます。方式の違いを知ることは、結果を正しく受け止めるための準備でもあります。
💡 用語解説:セルフリー胎児DNA(cffDNA)と胎児分画
妊娠中のお母さんの血液には、胎盤の細胞(栄養膜細胞)から放出された赤ちゃん由来のDNAの断片が流れています。これをセルフリー胎児DNA(cffDNA)と呼び、血液中のDNA全体のうち赤ちゃん由来のものが占める割合を胎児分画(Fetal Fraction)と呼びます。NIPTは、お母さん自身のDNAが大半を占める中から、このわずかな赤ちゃん由来のDNAの情報を読み取る検査です。詳しくはセルフリーDNA(cfDNA)とはをご覧ください。
解析技術の全体像(第1世代・第2世代・次世代と、別の方式)
NIPTの解析技術は、大きく「第1世代・第2世代・次世代」の3段で整理すると分かりやすくなります。メチル化法は、この流れとは別の発想から生まれた方式なので、世代の番号は付けずに「別の方式」として並べます。
🧬 NIPTの解析技術の比較(しくみと得意・不得意)
| 区分 | 方式 | しくみ | 得意なこと・限界 |
|---|---|---|---|
| 第1世代 | ワイドゲノム法(WGS法) | ゲノム全体を浅く読み、染色体ごとのDNA断片の数を数える | 13・18・21トリソミーなど数の異常は得意。小さな欠失や三倍体は苦手 |
| 第2世代 | SNP法・ターゲット法 | SNP法はお母さんと赤ちゃんのDNAの型の違いを見分ける。ターゲット法は調べたい領域だけを集めて深く読む | SNP法は三倍体を見つけられるが、卵子提供などでは使えない。ターゲット法は対象領域の精度が高い |
| 次世代 | COATE法 | SNP法とターゲット法を組み合わせ、読み取りの深さ・DNAの型の割合・つながったSNPを合わせて解析 | 数の異常・微小欠失・単一遺伝子の変化まで同時に調べられる。卵子提供は対象外のプランがある |
| 別の方式 | メチル化法 | 胎盤とお母さんの血液細胞でDNAのメチル化のしかたが違うことを手がかりにする | 赤ちゃんの性別やDNAの型に頼らずに胎児分画を見積もれる |
※各方式の具体的な精度は、検査会社・対象の病気・調べる妊婦さんの集団によって変わります。下の各章で、確かめられたデータに条件を添えて説明します。
ここでまずお伝えしたいのは、「調べられる項目の数」と「検査の正確さ」はまったく別のものだということです。項目をいくつ並べても、その一つひとつについて精度の検証データがそろっていなければ、陽性と出たときにどれくらい本当なのか(陽性的中率)を説明できません。項目の数より、それぞれの項目をどの方式で、どれだけ深く読んでいるかを確かめてください。
第1世代|ワイドゲノム法(WGS法)のしくみと限界
ワイドゲノム法とは
ワイドゲノム法(Whole-Genome Sequencing:WGS法)は、血漿から取り出したDNAの断片を次世代シークエンサーでまんべんなく読み取り、どの染色体から来た断片が何本あるかを数えて判定する方式です。読み取った数百万本の短い断片をヒトの標準的な遺伝情報(参照ゲノム)に当てはめ、たとえば21番染色体から来た断片が基準より統計的に多ければ「21トリソミーの可能性が高い」と判定します。
しくみがシンプルで、13・18・21トリソミーのような染色体まるごと1本分の数の変化は、この方式でも高い精度で調べられます。この部分については、長く使われてきた実績のある方式です。NIPTはスクリーニング検査なので、確定検査ほど高い陽性的中率がなくても、可能性の高い方を拾い上げて確定検査で確かめることにつなげられれば役割を果たせます。
🔬 用語解説:読み取り深度(Depth of Coverage)
同じ場所のDNAを何回重ねて読んだかを表す指標です。深く読むほど偶然のばらつき(ノイズ)が減り、わずかな違いも見落としにくくなります。ワイドゲノム法はゲノム全体に読み取りを薄く広く配るため、1か所あたりの読み取りは浅くなり、小さな領域の変化を見るのは苦手です。次世代シークエンサーのしくみは次世代シークエンサーとはで解説しています。
微小欠失で偽陽性が出やすい理由
染色体のごく一部が欠ける微小欠失(微細欠失)は、一般に、数の異常より陽性的中率が低め(項目により60〜70%程度)になります。陽性と出ても、確定検査で異常が見つからない方が一定の割合でいるということです。ワイドゲノム法でこの問題が大きくなりやすい理由は、次の3つです。
第一に、ワイドゲノム法はお母さんのDNAと赤ちゃんのDNAを区別せずに数えています。そのため、お母さん自身がもっている小さな欠失や重複(コピー数変化)や、胎盤だけに染色体の変化がある胎盤限局性モザイク(CPM)の影響を受けやすくなります。第二に、1か所あたりの読み取りが浅いこと。第三に、染色体がひと組まるごと多い三倍体は、どの染色体も同じ割合で増えるため、断片の数を比べる方式では見つけにくいことです[2]。
⚠️ 「陽性」の重さを考える
微小欠失で陽性と出ると、ご家族は羊水検査・絨毛検査という確定検査を受けるかどうかを決めなければなりません。その結果「異常なし」と分かることもあります。陽性と出たときにどれくらい本当なのかは、検査を受ける前に確かめておきたい数字です。
🩺 院長コラム【「たくさん調べられる」と「正確に調べられる」は別の話です】
「種類が多いほうが安心」と感じるのは自然なことです。けれども医療の検査では、精度の検証データがそろっていない項目をいくら増やしても、陽性が出たときに「どれくらい本当か」を説明できません。そうなると、確定検査を受けるかどうかという重い判断を、根拠の乏しい結果をもとに迫られることになります。
臨床遺伝専門医として大切だと考えているのは、項目の多さではなく、調べる一つひとつの領域を深く、正しく読むことです。検査は、結果を受け取ったご家族が納得して次の一歩を選ぶための材料です。その材料が不確かでは、意思決定の支えになりません。
第2世代|SNP法とターゲット法――お母さんと赤ちゃんのDNAを見分ける
SNP法とは――DNAの型の違いで赤ちゃんのDNAを見分ける
SNP法(Single Nucleotide Polymorphism:一塩基多型法)は、人によって1文字だけ違うDNAの場所(SNP)を数多く調べ、お母さんの型と赤ちゃんの型の違いから赤ちゃんのDNAを見分ける方式です。お母さんの血液細胞のDNAを基準にして、血漿の中にお母さんにない型(父親から受け継いだ型)がどれくらいの割合で混ざっているかを見ます。断片の数を数えるだけのワイドゲノム法の弱点を補うために登場した、第2世代の方式です。
💡 用語解説:対立遺伝子(アレル)と三倍体
対立遺伝子(アレル)とは、同じ場所にある遺伝子の型の違いのことで、父親由来と母親由来の2つがあります。SNP法は、この型の割合から赤ちゃんの染色体の組み合わせを推定します。三倍体は、染色体が通常の46本ではなく69本ある状態で、多くは流産や周産期の死亡につながります。SNP法は型の割合の偏りから三倍体を見つけられますが、断片の数を数える方式では見つけにくいことが知られています[2]。SNPそのものはSNP(一塩基多型)とはで解説しています。
SNP法が使えない妊娠があります(卵子提供・代理出産・移植後)
SNP法は、お母さんのDNAの型を基準にして計算するしくみです。そのため、お母さんと赤ちゃんのあいだに通常の遺伝的なつながりがない場合や、お母さんの血液に別の人のDNAが混ざっている場合は、正しく判定できないことがあります。
- ➤卵子提供(ドナー卵子)による妊娠
- ➤代理出産(妊娠するのが遺伝上の母親ではない場合)
- ➤骨髄移植や臓器移植を受けたことがあるお母さん(男性ドナーからの移植では、NIPT全般で誤った結果になりうると説明されています[2])
受けようとしているNIPTがどの方式か、自分の状況が対象外に当たらないかは、検査を受ける前に必ず確認してください。卵子提供や移植の経験は、問診で伝えにくいと感じる方もいますが、正しい結果のために欠かせない情報です。当院では、卵子提供による妊娠はスタンダードプランと双子マックスプランで受けられます。どちらも、お母さんのDNAの型を基準にしないしくみで染色体を調べるため、卵子提供でも成り立ちます。一方、プレミアムプラン・ダイヤモンドプラン・インペリアルプランは、卵子提供による妊娠は対象外です。受けられるかどうかは「NIPTかどうか」ではなく、検査ごとの方式と、検査会社がその妊娠の状況で精度を確かめているかで決まります。卵子提供そのものについては卵子提供の基礎知識をご覧ください。
ターゲット法とは――必要な領域を深く正確に読む
ターゲット法は、ゲノム全体ではなく、調べたい染色体や領域だけを選んで集め(濃縮し)、深く読み取る方式です。「ターゲット法は3つのトリソミーしか分からない」という説明を見かけることがありますが、それは設計の一例にすぎません。どの領域を対象にするかを設計できるため、読み取りの力を必要な領域に集中させ、対象領域の読み取り深度を深く確保できます。
✓ ミネルバクリニックの基本方針
当院は、小さな領域の変化ほど「必要な領域を深く正確に」読むことを大切にしてきました。たとえばスタンダードプランは、ターゲット法の一種である標的捕捉濃縮法で調べます。ゲノム全体を浅く読む方式も、数の異常を拾い上げる役割は果たせますが、それだけで微小欠失まで判定すると偽陽性が多くなりやすいと考えています。
別の方式|メチル化法――DNAの「型」ではなく「印」で見分ける
メチル化法とは――胎盤とお母さんの血液細胞で「印の付き方」が違う
メチル化法は、ここまでの方式とは別の発想に立つ方式です。血漿の中のDNAは、お母さんの血液細胞から出たものと、胎盤から出たものが混ざっています。親子なので塩基配列はよく似ていますが、DNAに付く「メチル化」という印の付き方は、細胞の種類によって違います。胎盤とお母さんの血液細胞でメチル化の程度が大きく違う領域(DMR:Differentially Methylated Regions)を手がかりにすれば、赤ちゃん由来のDNAを見分けることができます。
🔬 用語解説:DNAメチル化
DNAの塩基配列はそのままに、シトシンという塩基にメチル基が付いた状態をDNAメチル化と呼びます。配列を変えずに遺伝子の働きを調節する「エピジェネティクス」の代表的なしくみで、細胞の種類によってパターンが変わります。詳しくはメチル化とはで解説しています。
メチル化法の意義は「胎児分画を見積もる」こと
メチル化の違いを使う方法の大きな利点は、赤ちゃんの性別やSNPの型に頼らずに胎児分画を見積もれることです。メチル化の違いを利用して、SNPにも性別にも依存せずに胎児分画を測る方法が開発されています[3]。胎児分画はNIPTの結果の信頼性を左右する大切な数字で、足りないと正しく判定できません。
当院では、胎児分画の基準をスタンダード・プレミアム・ダイヤモンドプランは3%、インペリアルプラン・双子マックスプランは3.5%と決めています。胎児分画が足りないときは「再検査(再採血)」となり、当院ではこれを判定保留とは呼びません。当院のNIPTの判定保留は0%です。なお、論文や他院では、胎児分画が足りずに結果が出ない場合も判定保留(No-Call)に含めることが多いので、数字を比べるときは定義の違いに注意してください。
次世代|COATE法――SNP法とターゲット法を組み合わせた方式
COATE法とは
当院のプレミアムプラン・ダイヤモンドプランでは、米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供する新技術「COATE法」(SNP法とターゲット法の組み合わせ)※を採用しています。COATE法(Coordinative Allele-Aware Target Enrichment Sequencing)は、調べたい領域を集めて深く読むターゲット法に、SNP法の「お母さんと赤ちゃんのDNAの型を見分ける力」を組み合わせた方式です。
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
COATE法の開発論文では、①読み取りの深さ、②DNAの型の割合(アレルの割合)、③近くでつながって受け継がれるSNPという3つの情報を合わせて解析し、お母さんのDNAの中から赤ちゃんのゲノムの情報を切り分ける方法が示されています[4][6]。「必要な領域を深く読む」「お母さんと赤ちゃんを見分ける」という第2世代の2つの強みを、1回の検査で同時に使う方式だといえます。
COATE法の研究データ(対象はハイリスクの妊婦さん)
COATE法の最初の報告では、条件を満たした1,129件の妊娠で、染色体の数の異常54件、微小欠失・微小重複8件、単一遺伝子の変化8件が見つかり、感度100%・特異度99.3%と報告されました[4]。
その後、中国の3施設で行われた前向き研究(Nature Medicine, 2024年)では、赤ちゃんの遺伝の病気の可能性が高いとされた妊婦さん1,090人を対象に、羊水検査などの確定検査や出生後の検査と照らし合わせて、感度98.5%・特異度99.3%と報告されています[5]。この1,090人のうち876人は、超音波検査で赤ちゃんの体のつくりの異常が疑われていました。その876人では、数の異常と微小欠失だけを調べた場合に見つかったのは61件でしたが、単一遺伝子も調べると98件(約1.6倍)に増えました[5]。
⚠️ この数字の読み方
これらの研究は、超音波で異常が疑われるなど、もともと病気の可能性が高い妊婦さん(ハイリスク)を対象にしたものです。検査を受ける方全体(多くは超音波で異常のない妊婦さん)では、見つかる件数や陽性的中率はこれと同じにはなりません。
当院のプランで公表している精度の数字
当院のダイヤモンドプランの精度の根拠は、上の1,090例の研究(感度98.5%・特異度99.3%)です[5]。また、単一遺伝子の新しい変化(de novo変異)を調べるNIPTの実測値として、インペリアルプラン(155遺伝子・202疾患)の検証データ750例では、陽性的中率96.9%・感度100%・特異度99.9%でした(インペリアルプランの検証データで、ダイヤモンドプランの数字ではありません)。
どの方式でも、NIPTは確定診断ではありません。陽性なら確定検査で確かめます。当院では、確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。偽陰性(病気があるのに陰性と出ること)も、まれですが可能性はあります。精度の考え方はNIPTの精度と的中率のページで詳しく説明しています。
単一遺伝子の変化・新生突然変異(de novo変異)まで調べられます
COATE法の特徴は、染色体の異常だけでなく、1つの遺伝子の変化による病気(単一遺伝子疾患)も同じ採血で調べられることです。特に意味が大きいのは、両親にはない変化が精子や卵子ができる過程で新しく起きる新生突然変異(de novo変異)です。de novo変異は両親の検査では分からず、父親の年齢が上がるほど起こりやすくなることが知られています。
たとえば、軟骨無形成症の原因になるFGFR3遺伝子の変化、ヌーナン症候群の原因になるPTPN11遺伝子の変化、アペール症候群やクルーゾン症候群の原因になる遺伝子の変化などが対象になります。当院では、ダイヤモンドプランで56遺伝子、インペリアルプランで最大155遺伝子(202疾患)を調べます。結果は、ダイヤモンドプランは単一遺伝子も含めて10〜14日、インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間です。
「高齢出産」というとお母さんの年齢に目が向きがちですが、de novo変異は父親の年齢が上がるほど子どもに伝わりやすくなることが、大規模なゲノム解析で示されています[9]。精子は一生つくられ続け、そのたびにDNAが複製されるためです。一部の自閉スペクトラム症や骨の病気(骨系統疾患)には、このde novo変異が原因になるものがあります。de novo変異は両親の検査をしても見つからないので、赤ちゃん側を調べる方法が必要になります。56遺伝子の内容は56遺伝子de novo変異NIPT、155遺伝子の内容は155遺伝子de novo変異NIPTで紹介しています。
📋 解析技術ごとの得意・不得意(まとめ)
| 比べること | ワイドゲノム法 | SNP法 | メチル化法 | COATE法 |
|---|---|---|---|---|
| 13・18・21トリソミー | 得意 | 得意 | 得意 | 得意 |
| 微小欠失 | 読みが浅く偽陽性が出やすい | 対象領域の設計しだい | 設計しだい | 対象領域を深く読み、型の情報も使う |
| お母さんと赤ちゃんのDNAの見分け | しない(数を数える) | する(型の違い) | する(メチル化の違い) | する(型の違い) |
| 三倍体 | 見つけにくい | 見つけられる | ― | ― |
| 単一遺伝子の変化 | 対象外 | 対象外 | 対象外 | 調べられる |
| 卵子提供の妊娠 | お母さんの型を使わないしくみ | 使えないことがある | 型に頼らないしくみ | 当院のプレミアム・ダイヤモンドプランは対象外 |
※「―」は、この記事で確かめた資料に記載がなかった項目です。実際に受けられるかどうかは、検査ごと・プランごとに確認してください。当院では、卵子提供による妊娠はスタンダードプランと双子マックスプランで受けられます(プレミアムプラン・ダイヤモンドプラン・インペリアルプランは対象外)。
ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ
方式の違いを知ると、次に気になるのは「では、自分は何を調べればいいのか」ということだと思います。ダウン症候群(21トリソミー)は、母体年齢とともに頻度が上がることもあって最もよく知られた染色体の病気で、NIPTで調べる中心であることは変わりません。そのうえでお伝えしたいのは、ダウン症候群のほかにも、生まれてからの生活や子育てに大きく関わる病気があるということです。
子育ての大変さは、知的発達の重さだけでは決まらない
自閉スペクトラム症(ASD)のお子さんの親を対象にした研究をまとめたメタ解析では、ASDのお子さんの親は、ほかの障害のお子さんの親より子育てのストレスが高く、ダウン症候群のお子さんの親と比べたときに差が大きかったと報告されています(著者は、この比較はダウン症候群のお子さんを育てる経験の特性を反映している可能性があり、解釈に注意が必要だと添えています)[7]。
また、微小欠失の一つである22q11.2欠失症候群は、知的発達への影響は軽めでも、心臓・免疫・精神面の合併症が多い病気です。1,402人を調べた国際研究では、子どものADHDが37%、25歳を超えた大人の精神病性障害が41%に見られました[8]。1p36欠失症候群やウォルフ・ヒルシュホーン症候群は、ダウン症候群より重いことが多い病気です。
さらに、微小欠失はダウン症候群のように母体年齢とともに増えるものではありません。流産組織22,451例を調べた研究では、22q11.2欠失症候群が見つかった赤ちゃんと母体年齢のあいだに意味のある関係は見られませんでした[10]。若い妊婦さんでも起こりうるということです。22q11.2欠失症候群は心臓の病気や免疫の問題を伴うことがあり、生まれる前に分かっていれば、出産する施設や生まれてすぐの診療の準備を整えることができます。
こうした病気の一部や、一部の自閉症・発達障害・知的障害の原因になる単一遺伝子の変化(de novo変異)は、方式とプランによってはNIPTで調べられます。ダウン症候群の検査に意味がないということではなく、「1つの病気あたり」でいくらかかり、何まで分かるのかという視点で選んでいただきたいと考えています。
🧬 当院のNIPTプランと調べられる範囲
| プラン | 染色体の数 | 微小欠失など | 単一遺伝子 | 単胎・双胎 | 卵子提供の妊娠 |
|---|---|---|---|---|---|
| スタンダード | 13・18・21トリソミー+性染色体の数の異常 | 6種類7疾患 | ― | 単胎・双胎 | 受けられる |
| プレミアム | 13・18・21・15・16・22トリソミー | 12種類13疾患 | ― | 単胎のみ | 対象外 |
| ダイヤモンド | プレミアムと同じ | プレミアムと同じ | de novo 56遺伝子 | 単胎のみ | 対象外 |
| 双子マックス | 全常染色体の数の異常 | 92種類の微小欠失・重複+5Mbを超える構造異常 | ― | 単胎・双胎 | 受けられる |
| インペリアル | 全常染色体の数の異常 | 92種類の微小欠失・重複+5Mbを超える構造異常 | 最大155遺伝子(202疾患) | 単胎のみ | 対象外 |
※金額はNIPTの費用・料金のページでご確認ください。料金には、臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリング、4Dエコー、性別判定が含まれます(検査結果の作成費用は別途3,300円)。
🩺 院長コラム【微小欠失の精度の問題に、技術が追いついてきた】
微小欠失は、陽性と出ても確定検査で異常が見つからないことが少なくない――この問題は、出生前検査に携わる医師にとって長い課題でした。陽性をお伝えしながら「偽陽性の可能性もかなりあります」と添えなければならない状況は、ご家族にとっても医師にとっても苦しいものです。
COATE法のように、調べる領域を深く読み、お母さんと赤ちゃんのDNAを見分ける方式は、この課題に技術で応えようとするものだと考えています。ただし、どの方式でもNIPTは確定診断ではありません。だからこそ当院は、方式を選ぶことと同じくらい、陽性のあとに確定検査まで院内で受けられる体制を大切にしています。どのプランを選ぶかは、ご家族のお考えを最優先にお決めいただくものです。私から「これが正解です」とは申し上げませんが、選択肢と、それぞれで分かること・分からないことは、すべてお伝えしたいと考えています。
どの方式にも共通する「NIPTの限界」
COATE法のような新しい方式でも、お母さんの血液を調べる検査である以上、技術だけでは解決しきれない生物学的な限界があります。結果を落ち着いて受け止めるために、次の3つを知っておいてください。
① 胎児分画の制約
胎児分画は、妊娠週数が早いほど低く、お母さんの体格などでも変わります。胎児分画が足りない状態で結果を出すと偽陰性が増えるため、当院では基準(スタンダード・プレミアム・ダイヤモンドは3%、インペリアル・双子マックスは3.5%)を満たさない場合は再検査(再採血)とします。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。当院のおすすめは8週で、妊娠8週で受けた場合の再検査率は約5%です(当院のデータ)。
② 胎盤限局性モザイク(CPM)
血液中の赤ちゃん由来のDNAは、赤ちゃん本人ではなく主に胎盤から出たものです。そのため、胎盤だけに染色体の変化がある場合、赤ちゃん本人は正常でも陽性と出ることがあります。これが、NIPTが確定診断にならない大きな理由の一つです。
③ お母さん側の要因
お母さん自身に小さな欠失や重複(コピー数変化)がある場合や、まれにお母さんの体に腫瘍があり、そのDNAが血液中に出ている場合には、赤ちゃんの異常と区別しにくい結果になることがあります。移植を受けたことがある場合も、結果に影響することがあります[2]。
こうした限界があるからこそ、陽性のときに確定検査をどこで受けるかまで考えて施設を選ぶことが大切です。当院では2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査とも院内で行っています。結果は、主要な項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどです。陽性のあとの遺伝カウンセリングは何度でも無料です。
\ 方式とプランを確かめてから受けたい方へ /
臨床遺伝専門医が常駐し、検査前の遺伝カウンセリングから、陽性時の確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で行います。
まだ決めていない方は:ダイヤモンドプラン | インペリアルプラン | オンラインNIPT
ミネルバクリニックが解析技術を選んできた経緯
当院は2017年にNIPTを始めてから、より精度の高い方式が出てくるたびに、検査を順に切り替えてきました。項目の数よりも「調べる領域を正確に読めるか」を基準に選んできた経緯を、年ごとにまとめます。
📅 当院のNIPTの方式の移り変わり
| 年 | できごと | 課題・その後 |
|---|---|---|
| 2017年 | NIPTの提供を開始(13・18・21トリソミーなど数の異常が中心) | 13トリソミーの陽性が21トリソミーより多く出るなど、偽陽性の多さが課題でした |
| 2018年 | 22q11.2欠失症候群などの微小欠失(5種類6疾患)を調べられる検査を導入 | 陽性的中率の低さに加え、22q11.2欠失症候群の偽陰性を1例経験。方式を見直すきっかけになりました |
| 2019年 | より精度の高い方式の検査に切り替え。父親の加齢で増える新生突然変異(de novo変異)による病気(25遺伝子)を調べる検査も始めました | それでも微小欠失の陽性的中率は70%台にとどまり、de novoの結果は染色体の結果より遅れて出ていました |
| 2020〜2023年 | 次の技術を待つ時期 | 検査会社ごとの開発の動きを見ながら、より精度の高い方式の登場を待ちました |
| 2024年 | SNP法とターゲット法を組み合わせたCOATE法を採用(プレミアムプラン・ダイヤモンドプラン) | 微小欠失を深く読めるようになり、de novo変異(56遺伝子)も染色体と同時に結果が出るようになりました |
※検査会社の名前や検査の商品名は記載していません。微小欠失の陽性的中率は項目により異なり、どの方式でも陽性なら確定検査で確かめます。
今は、調べる範囲に合わせてプランごとに方式を使い分けています。スタンダードプランは標的捕捉濃縮法(ターゲット法の一種)、プレミアムプラン・ダイヤモンドプランはCOATE法、インペリアルプランは低深度全ゲノムシーケンスとターゲット法の組み合わせで、全染色体の数の異常は全ゲノム解析で広く拾い、92種類の微小欠失・重複と単一遺伝子はターゲット法で深く読みます。どの検査会社の、どの方式を使うかは、ご家族が受け取る「陽性」「陰性」の重みに直結すると考えています。
🏥 ミネルバクリニックのNIPTの体制
| 臨床遺伝専門医が常駐 | 検査前の遺伝カウンセリング(90分の受診枠の中で行います)、結果の説明、陽性後のケアまで臨床遺伝専門医が対応します |
| COATE法を採用 | プレミアムプラン・ダイヤモンドプランで採用しています |
| 採血の前にエコーで確認 | 4Dエコーは料金に含まれます |
| 確定検査も院内で | 2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査を院内で実施。主要な項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます |
| 2つの互助会(全員加入) | 羊水検査互助会(カトレア会・1回のNIPTにつき8,000円):陽性時の確定検査費用を補助(上限なし)。安心検査結果保障制度(1回6,000円):再検査が必要になったのに流産して再検査ができず結果が出なかったとき、検査代金(諸費用を除く)を返金。会費は消費税の対象外です |
| 陽性後のカウンセリング | 何度でも無料です |
検査の流れ
当院はNIPTの年齢制限を設けていません。妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。
陰性の結果はマイページでお知らせします。陽性の場合は、臨床遺伝専門医があらためて説明し、確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間かかります。互助会の詳しい内容は羊水検査互助会(カトレア会)のページをご覧ください。
解析技術はあくまで道具です。ただ、道具の選び方を間違えると、ご家族に余計な不安を背負わせてしまうことがあります。当院が、ゲノム全体を浅く読むだけで微小欠失まで判定する検査を選ばず、小さな領域はターゲット法で深く読む方式を組み合わせてきたのは、偽陽性で苦しむ方を一人でも減らしたいと考えているからです。
まとめ|「項目数」より「精度」と「範囲」で選ぶ
- ➤ワイドゲノム法(第1世代):13・18・21トリソミーは得意。お母さんと赤ちゃんのDNAを見分けず浅く読むため、微小欠失は偽陽性が出やすく、三倍体は見つけにくい
- ➤SNP法(第2世代):DNAの型の違いで見分け、三倍体も分かる。卵子提供・代理出産・移植後では使えないことがある
- ➤ターゲット法(第2世代):必要な領域を深く読む。設計しだいで多くの領域を調べられる
- ➤メチル化法(別の方式):メチル化の違いを使い、性別や型に頼らず胎児分画を見積もれる
- ➤COATE法(次世代):SNP法+ターゲット法。数の異常・微小欠失・単一遺伝子を同時に調べられる。当院ではプレミアム・ダイヤモンドプランで採用
NIPTを受けるかどうか、どのプランを選ぶかは、ご家族のお考えと状況によって違います。ただ、選ぶ前提として、「同じNIPTでも、解析技術によって調べられる範囲と精度が違う」ということだけは知っておいていただきたいと考えています。
🏥 方式とプランを確かめて、NIPTを選ぶために
当院のNIPTは、プランにより一部の自閉症・発達障害の原因になる単一遺伝子の変化(最大155遺伝子)まで調べられ、陽性なら確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。
まだ迷っている方は NIPTを受けるべきか迷ったときの3つの判断基準 もご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?
ダウン症候群はNIPTで調べる中心の病気ですが、それだけではありません。22q11.2欠失症候群のような微小欠失や、一部の自閉症・発達障害・知的障害の原因になる単一遺伝子の変化など、生まれてからの生活や子育てに大きく関わる病気がほかにもあります。これらまで調べられるかは、解析技術とプランで決まります。
Q2. ダウン症候群のほかに、NIPTで調べておいたほうがよい病気はありますか?
どこまで調べるかはご家族のお考えしだいですが、知的発達への影響が軽めでも心臓・免疫・精神面の合併症が多い22q11.2欠失症候群や、ダウン症候群より重いことが多い1p36欠失症候群などの微小欠失、父親の年齢とともに増える新生突然変異(de novo変異)による単一遺伝子疾患があります。当院ではプランにより、微小欠失・重複は最大92種類、単一遺伝子は最大155遺伝子(202疾患)まで調べられます。
Q3. ワイドゲノム法とCOATE法は、どちらが正確ですか?
13・18・21トリソミーのような数の異常は、どちらの方式でも高い精度で調べられます。違いが出るのは微小欠失などの小さな変化で、ワイドゲノム法はお母さんと赤ちゃんのDNAを見分けずに浅く読むため偽陽性が出やすく、COATE法は調べる領域を深く読み、DNAの型の情報も使って赤ちゃんの情報を切り分けます。COATE法はハイリスクの妊婦さん1,090人の研究で感度98.5%・特異度99.3%と報告されています。
Q4. 卵子提供で妊娠した場合、受けられないNIPTはありますか?
あります。SNP法や、SNP法を組み合わせたCOATE法は、お母さんのDNAの型を基準に計算するため、卵子提供では使えないことがあります。当院では、卵子提供による妊娠はスタンダードプランと双子マックスプランで受けられます。どちらもお母さんのDNAの型を基準にしないしくみで染色体を調べるためです。プレミアムプラン・ダイヤモンドプラン・インペリアルプランは、卵子提供による妊娠は対象外です。代理出産や骨髄・臓器移植を受けたことがある場合も結果に影響することがあるので、受ける前に必ずお伝えください。
Q5. 微小欠失で「陽性」と言われたら、本当に異常があるのですか?
微小欠失は一般に数の異常より陽性的中率が低め(項目により60〜70%程度)で、陽性でも確定検査で異常が見つからないことがあります。陽性の意味は、どの方式で、どの領域を、どれだけ深く読んだかで変わります。どの方式でもNIPTは確定診断ではないので、陽性なら羊水検査や絨毛検査で確かめてください。
Q6. 自分が受けるNIPTの解析技術は、どうやって確かめればよいですか?
検査を受ける前に、施設に「どの方式で調べるのか」「調べる病気ごとの精度(陽性的中率)のデータはあるか」「卵子提供や移植後でも受けられるか」「陽性のとき確定検査はどこで受けるのか」を確認してください。当院では、検査前の遺伝カウンセリングで、プランごとの方式・調べる範囲・精度をご説明しています。
Q7. NIPTの結果が「陰性」なら、異常はないと言い切れますか?
いいえ。NIPTはスクリーニング検査で、陰性は「調べた病気の可能性が低い」という意味です。調べていない病気は分かりませんし、胎盤限局性モザイクなどで赤ちゃん本人と胎盤の染色体が違う場合もあります。偽陰性もまれですが可能性はあります。出生前に診断を確定するのは羊水検査・絨毛検査です。
Q8. NIPTで陽性が出たら、確定検査もミネルバクリニックで受けられますか?
はい。2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。結果は主要な項目が3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどです。NIPTを受ける方は全員、羊水検査互助会(カトレア会・8,000円)に加入し、陽性時の確定検査費用が補助されます(上限なし)。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料です。
Q9. 35歳未満でもNIPTを受けられますか?
はい。当院はNIPTの年齢制限を設けていません。ダウン症候群などの数の異常は母体年齢とともに増えますが、22q11.2欠失症候群のような微小欠失や、父親の年齢とともに増えるde novo変異は、お母さんが若くても起こりえます。
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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。検査の選択については、臨床遺伝専門医にご相談ください。






