目次
- 1 NIPTの基本のしくみ——なぜお母さんの血液で赤ちゃんの染色体がわかるのか
- 2 NIPTの「世代」とは——呼び名と方式の関係
- 3 第1世代NIPT(WGS法)——全ゲノムを広く浅く読んで数える
- 4 第2世代NIPT(SNP法・ターゲット法)——狙いを定めて深く読む
- 5 次世代NIPT(COATE法)——SNP法とターゲット法を組み合わせる
- 6 世代別比較表——方式ごとの得意・不得意
- 7 呼び名にまどわされない選び方——確認したい5つのポイント
- 8 ミネルバクリニックのプランと検査方式
- 9 ダウン症候群だけを調べればよいわけではない ― 方式の違いは「調べられる病気」に表れる
- 10 ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ
- 11 NIPTと医療費控除
- 12 よくある質問(FAQ)
- 13 参考文献
📍 クイックナビゲーション
「第3世代NIPT」「次世代NIPT」——NIPTを調べていると、こうした言葉をよく目にします。けれども、NIPTの「世代」は学会や論文で決められた正式な分類ではありません。検査の方式の違いを、わかりやすく呼び分けた名前です。そのため、同じ「第3世代」という言葉が、施設や検査会社によって別の方式を指していることもあります。大切なのは呼び名ではなく、その検査がどの方式で、何を調べられて、何が苦手なのかです。この記事では、方式の違いを第1世代(WGS法)・第2世代(SNP法/ターゲット法)・次世代(SNP法+ターゲット法を組み合わせたCOATE法)の3つに整理し、それぞれの得意・不得意を臨床遺伝専門医が解説します。
- ➤ NIPTの「世代」がなぜ正式な分類ではないのか、呼び名と方式の関係
- ➤ 第1世代(WGS法):全ゲノムを広く浅く読んで量を数えるしくみと限界
- ➤ 第2世代(SNP法・ターゲット法):三倍体やバニシングツイン、微小欠失への強さ
- ➤ 次世代(COATE法):2つの方式を組み合わせ、単一遺伝子まで調べられる理由
- ➤ 呼び名にまどわされない施設・プランの選び方
🧬Q. NIPTの「世代」とは?
検査の方式の違いをわかりやすく呼び分けた名前で、学会が定めた正式な分類ではありません。この記事では、第1世代=WGS法、第2世代=SNP法またはターゲット法、次世代=SNP法+ターゲット法を組み合わせたCOATE法、と整理しています。
🍀Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?
大丈夫とは言えません。三大トリソミーはどの方式でも調べられますが、子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった行動の問題だと報告されています。それを伴いやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患は、三大トリソミーだけの検査では調べられません。方式の違いは、こうした病気まで調べられるかどうかに表れます。当院のNIPTは、これらの病気まで調べられます。
🔍Q. 方式によって何が違うのですか?
三大トリソミーはどの方式でも高い精度で調べられます。違いが出るのは、微小欠失や単一遺伝子まで調べられるか、三倍体やバニシングツインを見分けられるか、胎児分画をどう測るかといった点です。
🌸Q. どう選べばいいですか?
「第◯世代」という名前ではなく、方式・調べる範囲・陽性になったときの確定検査までの流れを確認して選びましょう。どの方式でもNIPTはスクリーニング検査で、陽性の場合は羊水検査・絨毛検査での確認が必要です。
\ ダウン症候群だけで大丈夫ですか? /
三大トリソミーはどの方式でも調べられますが、当院のNIPTは、子育ての負担につながりやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで調べられます。どの方式・どのプランでどこまで調べるかは、90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と一緒に決められます。
プランの違いを知りたい方へ:NIPT(新型出生前診断)について
NIPTの基本のしくみ——なぜお母さんの血液で赤ちゃんの染色体がわかるのか
妊娠中のお母さんの血液には、細胞の外を漂う小さなDNAの断片(セルフリーDNA、cfDNA)が含まれています。その一部は主に胎盤から放出された、胎児由来cfDNAを反映するDNAです。NIPTはこの「お母さんのDNAと赤ちゃん側のDNAが混ざったもの」を読み取り、統計的な解析で染色体の変化の可能性を評価します。
2008年、母体血漿のDNAを大量に読んで染色体ごとの量を比べることで、21トリソミーを見分けられることが示されました[1]。その後、方式を問わず集計した2017年のメタ解析では、21トリソミーの検出率は99.7%、偽陽性率は0.04%と報告されています[2]。三大トリソミーについては、どの方式でも高い精度が出ているということです。方式の違いが大きく出るのは、それ以外の項目や、条件が難しい妊娠のときです。
💡 用語解説:胎児分画(Fetal Fraction:FF)
お母さんの血液中のcfDNA全体のうち、胎盤(赤ちゃん側)由来のDNAが占める割合のことです。妊娠週数が進むと上がるのが一般的です。胎児分画が低いと赤ちゃん側の信号が弱くなり、判定保留(結果が出ない)や精度の低下につながります。
胎児分画が低くなりやすいのは、妊娠週数が早いとき、お母さんのBMIが高いとき(お母さん由来のDNAが相対的に増えるため)などです。胎児分画は妊娠週数や母体BMIなど複数の要因の影響を受けます。
NIPTの「世代」とは——呼び名と方式の関係
NIPTの総説や論文は、検査を「第何世代」ではなく、「全ゲノムを広く読む方法」「狙った領域を読む方法」といった方式で整理しています。「第1世代」「第3世代」といった呼び名は、検査会社や施設が説明のために使ってきた言葉で、何を「第3世代」と呼ぶかは統一されていません。
たとえば、胎盤とお母さんのDNAのメチル化(DNAにつく化学的な目印)の違いを利用する方法も研究されており、2018年には44例の妊婦さんの血漿で三大トリソミーをすべて正しく判定した概念実証研究が報告されています[7]。こうした方法を「第3世代」と呼ぶ説明もあれば、まったく別の方式を「第3世代」と呼ぶ説明もあります。呼び名だけでは、中身はわかりません。
そこでこの記事では、数え続けるのをやめ、方式にそって次の3つに整理します。
第1世代NIPT(WGS法)——全ゲノムを広く浅く読んで数える
WGS法は、cfDNAをゲノム全体からまんべんなく読み取り、どの染色体から来た断片がどれだけあるかを数えます。21番染色体が3本ある赤ちゃんなら、21番由来の断片がわずかに多くなる、その差を統計的にとらえるしくみです[1]。
得意なこと
・三大トリソミーの検出(臨床での実績が豊富)
・ゲノム全体を見るので、すべての染色体の数の変化や、大きな欠失・重複を広く見渡せる
苦手なこと
・お母さんのDNAと赤ちゃん側のDNAを遺伝的に区別できない
・三倍体(すべての染色体が3本ずつ)は「量の差」が出ないため見分けられない
・浅く読むので、小さな微小欠失や単一遺伝子の変化は苦手
第2世代NIPT(SNP法・ターゲット法)——狙いを定めて深く読む
第2世代は、ゲノム全体ではなく調べたい場所に狙いを定めて読む方式です。狙う対象によって、SNP法とターゲット法の2つに分けられます。
SNP法:お母さんと赤ちゃんのDNAを遺伝的に区別する
SNP(一塩基多型)は、人によって1文字違う、DNAの個人差の目印です。SNP法はこの目印をたくさん読み、どの断片がお母さん由来で、どの断片が赤ちゃん側由来かを見分けます。量の偏りだけでなく、アレル(父由来・母由来の型)の比率の変化から染色体の異常を評価できるのが特徴です。
この性質のおかげで、追加の胎児ハプロタイプを検出することで、三倍体・認識されていなかった双胎・バニシングツインを示唆できることが報告されています[4]。一方で、近親婚のご夫婦や骨髄移植を受けた方などでは、目印の個人差が読み取りにくくなり、解析が難しくなる場合があります。
💡 用語解説:バニシングツイン
双子の妊娠のうち、片方の赤ちゃんが妊娠初期に育たなくなり、見えなくなる現象です。育たなかった赤ちゃん側のDNAがしばらく血液中に残ると、NIPTで染色体の異常があるように見えることがあります(偽陽性の原因の一つ)。SNP法では追加の胎児ハプロタイプを検出できる場合があり、バニシングツインなどを示唆する手がかりになります[4]。
ターゲット法:狙った領域を捕まえて、深く読む
ターゲット法は、調べたい染色体や領域のDNA断片だけを選び出し、何度も重ねて深く読む方式です[3]。全体を浅く読むWGS法にくらべて、狙った場所の小さな変化をとらえやすいのが強みで、22q11.2欠失症候群のような微小欠失を対象にしやすくなります。反対に、狙っていない場所は調べないため、「何を対象にしているか」がプランごとに決まっている点に注意が必要です。また、量の比較で判定する場合は、WGS法と同じく三倍体は見分けられません。
次世代NIPT(COATE法)——SNP法とターゲット法を組み合わせる
COATE法は、第2世代の2つの方式を1つの検査にまとめた方法です。狙った領域を濃縮して深く読み(ターゲット法)、そのうえで読んだ量・アレルの比率・近くに並ぶSNPのつながりを組み合わせて、赤ちゃんのゲノムをお母さんのDNAから切り分けます[5]。2022年にこの方法を報告した論文は、そのタイトルで「次世代の非侵襲的出生前スクリーニング」とうたっています[5]。
切り分けの精度が上がったことで、染色体の数や微小欠失に加えて、対象パネルに含まれる単一遺伝子の変化まで、1回の採血でまとめて調べられるようになったことが、大きな進歩とされています[6]。COATE法のしくみや精度、従来法との違いはCOATE法と従来法の違いで詳しく解説しています。
⚠️ よくある誤解
「次世代だから確定診断に近い」わけではありません。COATE法を含め、NIPTはすべてスクリーニング検査(非確定検査)です。陽性の場合は、羊水検査・絨毛検査などの確定検査で確認します。
世代別比較表——方式ごとの得意・不得意
ここまでの内容を一覧にまとめます。同じ方式でも、検査ごとに対象項目や判定の条件は異なります。表はあくまで方式としての一般的な傾向です。
⚠️ 補足:同じNIPTでも、検査会社によって方式・調べる範囲・品質管理・結果までの日数が違います。検査会社ごとの違いはNIPTの検査会社による違いで整理しています。
陽性的中率が低いと「無駄な確定検査」が増える? ― がん検診と比べて考える
方式が進んで、調べる範囲が微小欠失や単一遺伝子に広がると、三大トリソミーに比べて陽性的中率(陽性と出た人のうち、本当にその病気である人の割合)は低めになります。微小欠失・重複では、項目によって60〜70%程度です。そこで、「陽性的中率が低い検査は、無駄な確定検査を増やす」という批判があります。方式を比べるときに避けて通れない論点なので、がん検診と比べながらデータで確かめます。
がん検診も、陽性的中率は数%です。胸部X線で行う日本の自治体の肺がん検診では、国が2008年の報告書で示した陽性反応適中度(要精密検査とされた人のうち、実際に肺がんだった人の割合)の許容値は「1.3%以上」です[8]。米国の大規模試験(NLST)では、低線量CTで2.4〜5.2%、胸部X線で4.4〜6.7%でした[9]。それでも低線量CTによる検診は、肺がんによる死亡を減らすことが示されています[10]。X線は「怪しい」と判定する人がCTより少ないぶん陽性的中率は少し高いのですが、そのかわり見逃しも多くなります。CTは拾い上げを広げたぶん陽性的中率が下がりましたが、死亡を減らしました。陽性的中率が低いことが、そのまま「悪い検査」を意味するわけではありません。
精密検査の負担も、がん検診にあります。米国の診療データ(保険請求データ)を使った調査では、肺の異常を調べる精密検査を受けた人は、受けなかった人に比べて、重い合併症が針生検で4.0%、気管支鏡で13.4%、胸部手術で11.3%多く起きていました[11]。出生前検査の確定検査については、英国の医療施設で行われた研究(1施設のコホート研究)で、絨毛検査・羊水検査を受けた人と受けなかった人のあいだに、流産の割合の統計的な差は見られませんでした(絨毛検査0.29%、羊水検査−0.36%で、どちらも統計的な差なし)[12]。研究の規模や方法が違うので、数字をそのまま並べて比べることはできません。ただ、「陽性的中率が低いと、体に負担のかかる確定検査が増える」という心配は、少なくとも肺がん検診にも同じように当てはまり、がん検診ではそれでも検診が行われています。
それでも出生前検査で慎重な意見が出るのには、理由があります。検査の結果が、妊娠を続けるかどうかの判断に直結するためです。いちばん大きな危険は、陽性のあと確定検査を受けずに妊娠をやめる選択をしてしまうことで、陽性的中率が低いと、本当は病気のない赤ちゃんが失われるおそれがあります。結果を待つあいだの不安は大きく、判断できる期間にも限りがあります。また、微小欠失などは症状の幅が広く、わかっても見通しを立てにくいことがあり、学会によって考え方が分かれています(22q11.2欠失症候群の項で説明します)。
一方で、陽性的中率だけを見ていると、「外れの陽性」ばかりに目が向きます。けれども拾い上げなければ、本当に病気がある赤ちゃんについて、ご家族が生まれる前に知り、出産する施設や生まれてすぐの治療を準備するか、妊娠を続けるかどうかを考える機会そのものがなくなります。見逃しにも、外れの陽性と同じように重い結果があります。実際に、先天的な病気が生まれる前にわかったお母さんは、生まれてから初めて知ったお母さんに比べて、心の面の生活の質が高かったという報告があります(ポルトガルの小規模な研究)[13]。重い心臓の病気でも、生まれる前にわかっていると生まれてすぐの治療を早く始められ、大血管転位症では手術の前後に亡くなる赤ちゃんが減ったと報告されています[14]。ただし、生まれる前に知ることで出産までの不安やつらさが増えるという報告もあり、研究によって結果は分かれています。
弱点は検査の方式そのものではなく、「確定検査で確かめる前に決めてしまうこと」にあります。そのため当院では、陽性になった場合に院内で確定検査(絨毛検査・羊水検査)を受けられ、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出る体制をとっています。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料で、確定検査の費用は互助会で補助されます(上限なし)。NIPTは、可能性のある赤ちゃんを見逃さずに拾い上げるための検査です。どの方式で受けた場合も、陽性になったときに大切なのは、確定検査で本当にそうかを確かめてから考えることです。当院では、その確定検査まで院内で受けられます。
呼び名にまどわされない選び方——確認したい5つのポイント
「第3世代」「次世代」という言葉だけで検査を選ぶと、思っていた項目が調べられていなかった、ということが起こりえます。次の点を確認しておくことが重要です。施設選び全体の考え方はNIPTを受ける施設選びで後悔しないためのポイントもあわせてご覧ください。
✅ 検査を選ぶ前のチェックリスト
✓方式(WGS法・SNP法・ターゲット法・COATE法など)が説明されている
✓調べる範囲(染色体・微小欠失・単一遺伝子)が具体的に示されている
✓胎児分画が低いときの扱い(判定保留・再検査の条件)が明確
✓陽性のときに確定検査まで進める体制がある
✓臨床遺伝専門医など専門家が、検査前の説明と結果の説明を行う
ミネルバクリニックのプランと検査方式
当院では、調べたい範囲に合わせて、方式の異なるプランを用意しています。どのプランも、検査前の遺伝カウンセリングで、何がわかり何がわからないのかを説明したうえで選んでいただきます。
スタンダードプラン
方式:ターゲット法(第2世代)
狙った染色体と、22q11.2欠失症候群を含む微小欠失を深く読んで調べます。
ダイヤモンドプラン
方式:COATE法=SNP法+ターゲット法(次世代)
赤ちゃんの情報をお母さんのDNAから切り分けて調べます。ダイヤモンドプランでは、de novo変異による単一遺伝子疾患(56遺伝子)も対象です。
インペリアルプラン
方式:WGS法+ターゲット法の組み合わせ
全染色体はWGS法で広く見渡し、単一遺伝子はターゲット法で深く読みます。単一遺伝子は最大155遺伝子・202疾患が対象です。
微小欠失・重複は、インペリアルプランと双子マックスプランでは92種類を調べます(プレミアムプランとダイヤモンドプランは12種類13疾患、スタンダードプランは6種類7疾患)。父親の年齢とともに増えるde novo変異についてはde novo変異のNIPTで、インペリアルプランの内容はインペリアルプランのページで詳しく説明しています。
臨床遺伝専門医が常駐し、陽性の場合は陽性カウンセリングを何度でも受けられます。確定検査(羊水検査・絨毛検査)は院内で行い、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。羊水検査の費用に備える互助会(カトレア会)もあります。
ダウン症候群だけを調べればよいわけではない ― 方式の違いは「調べられる病気」に表れる
三大トリソミーは、どの方式でも高い精度で調べられます。方式の違いが意味を持つのは、その先にある病気です。ここでは、方式とプランを選ぶ前に知っておいていただきたい2つの点を説明します。
子育てのストレスと行動の問題
知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高いと報告されています[15]。その差を最も強く左右していたのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷などの行動の問題と、睡眠の問題でした[15]。病気ごとにみると、他人への攻撃的な行動はアンジェルマン症候群とスミス・マゲニス症候群で、自傷はコルネリア・デ・ランゲ症候群、スミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群で多いことが分かっています[16]。
これらの多くは、染色体の数の変化ではなく、微小欠失や単一遺伝子の変化で起こります。当院では、スミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群はすべてのプランで、コルネリア・デ・ランゲ症候群はダイヤモンドプランとインペリアルプランで、ウィリアムズ症候群はインペリアルプランと双子マックスプランで調べられます。方式と調べる範囲を確かめるときに、ダウン症候群だけを調べればよいのかも、あわせて考えていただきたい点です。
22q11.2欠失症候群を調べる意味
22q11.2欠失症候群は、妊娠中の赤ちゃんのおよそ1,000人に1人にみられ、微小欠失症候群の中で最も多い病気です[17]。親から受け継いだものより、新しく起こる変化であることが多く、母親の年齢とは関係がありません[17]。伴うことがあるのは、心臓の病気、免疫の働きの低下、低カルシウム血症、口蓋裂、発達の遅れなどで、自閉スペクトラム症を伴う割合も一般より高いと報告されています[17][18]。
米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)は、年齢にかかわらずすべての妊婦さんに、22q11.2欠失症候群のNIPTを提供することを提案しています[19]。一方、米国母体胎児医学会(SMFM)は、22q11.2欠失を調べる場合は検査前に十分な説明を受けて選ぶことを求めており、学会によって考え方は分かれています。だからこそ、検査前の遺伝カウンセリングが大切です。
生まれる前に分かっていれば、出産する施設の選び方や、生まれてすぐの心臓・カルシウム・免疫の検査など、赤ちゃんを迎える準備ができます。当院では、ターゲット法のスタンダードプランから22q11.2欠失症候群を調べられます。ただし、微小欠失の陽性的中率は染色体の数の異常より低めなので、陽性の場合は必ず確定検査で確かめます。
ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ
「世代」や方式の名前を調べている方のなかにも、「心配なのはダウン症候群だけ」という方は少なくありません。けれども、出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわるものです。上で見たように、ご家族の子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった「行動の問題」です[15]。こうした行動の問題を伴いやすい病気には、ダウン症候群ではなく、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く含まれます[15][16]。三大トリソミーだけを調べる検査では、どの方式であっても、これらの病気は調べられません。
出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。呼び名や「安さ」だけで選んで大丈夫でしょうか。
調べられる範囲の広さを実感するために、検査の費用を、調べられる病気の数で割ってみます。三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、1つの病気あたりは約3万3千円です。当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患を調べます。性染色体の数の異常も含めて、数えられる病気だけで320になり、1つの病気あたりは約1,700円です。さらに、5Mbを超える欠失・重複はすべての染色体が対象なので、実際にはここに数えていない変化も調べています。
| プラン | 主に調べる範囲 | 数えた病気の数 | 1つの病気あたり |
|---|---|---|---|
| 三大トリソミーだけを調べる検査 (仮に10万円とした場合) |
13・18・21トリソミー | 3 | 約33,333円 |
| スタンダード(220,000円) | 13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 | 14 | 約15,714円 |
| プレミアム(264,000円) | 13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 | 23 | 約11,478円 |
| ダイヤモンド(407,000円) | プレミアムの範囲+単一遺伝子56 | 79 | 約5,152円 |
| 双子マックス(440,000円) | 全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 | 114+α | 約3,860円 |
| インペリアル(550,000円) | 全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 | 320+α | 約1,719円 |
※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています(性染色体を調べるのはスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアル。双子マックスは調べません)。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。※「三大トリソミーだけを調べる検査」は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。
各プランの詳しい内容:スタンダードプラン/プレミアムプラン/ダイヤモンドプラン/双子マックスプラン/インペリアルプラン
ただし、病気の数が多いほど良い検査、というわけではありません。調べる範囲が広がると、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。だからこそ、検査前の遺伝カウンセリングでプランを選びます。どこまで調べたいかは、ご家族によって違います。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。
NIPTと医療費控除
NIPTは病気の治療ではなく検査のため、単独では医療費控除の対象外とされることが多い検査です。一方で、陽性のあと確定検査などへ進んだ場合の扱いは、個別の事情で変わることがあります。領収書や明細は保管しておき、最終的な判断は税務署や税理士にご確認ください。詳しくはNIPTは医療費控除や補助金の対象になる?で解説しています。
よくある質問(FAQ)
🏥 呼び名ではなく、中身で選ぶNIPTを
検査方式・対象範囲・胎児分画・陽性時の確定検査について、検査前に確認できます。
臨床遺伝専門医が医学的根拠にもとづいて説明します。
参考文献
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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。検査の選択については、検査前の遺伝カウンセリングでご相談ください。






