InstagramInstagram

羊水検査の痛みと針の太さ | 医師が解説する合併症リスクと他の出生前診断との比較

この記事のポイント
  • 羊水検査で使われる針の太さは約25G(ワクチン接種と同程度)で、痛みは個人差あり
  • 局所麻酔の有無や検査時の痛み軽減方法について詳しく解説
  • 流産リスク0.3%など、羊水検査に伴う可能性のある合併症について
  • 痛みの少ないNIPT(COATE法)など、他の出生前診断との比較
  • 妊婦さんが検査を選ぶ際の判断材料となる情報を網羅

妊娠中期になると、ダウン症候群をはじめとした染色体異常症の有無を高精度で診断できる羊水検査を受けられるようになります。この検査は出生前診断の中でも最も精度が高いとされている一方で、妊婦さんのお腹に針を刺す「侵襲的検査」であるため、痛みや合併症のリスクが気になる方も多いでしょう。

本記事では、羊水検査における痛みの程度や使用される針の太さ、合併症リスクについて詳しく説明します。また、より痛みの少ない他の出生前診断方法との比較も行い、妊婦さんが自分に合った検査を選ぶための参考情報をご提供します。

羊水検査とは?基本知識と実施時期

羊水検査は、妊婦さんのお腹から羊水を採取し、その中に含まれる胎児の細胞を培養して染色体の数や構造を調べる検査です。極めて高い精度で染色体異常を診断できる「確定診断」として位置づけられています。

羊水検査で分かること

  • ダウン症候群(21トリソミー)
  • エドワーズ症候群(18トリソミー)
  • パトウ症候群(13トリソミー)
  • ターナー症候群(モノソミーX)
  • クラインフェルター症候群
  • その他の染色体異常や特定の遺伝子疾患

検査の実施時期と方法

羊水検査は、妊娠15~18週目が最適な時期とされています。この時期は羊水の量が十分に増えており、安全に採取できるタイミングです。妊娠22週以降は、日本では人工妊娠中絶が法律上認められていないため、結果を受けての選択肢が限られてきます。

検査では、超音波(エコー)で胎盤や胎児の位置を確認しながら、妊婦さんのお腹に細い針を刺して約20ml程度の羊水を採取します。この手技を「羊水穿刺(せんし)」と呼びます。採取した羊水に含まれる胎児の細胞を培養し、約2~4週間後に染色体検査の結果が出ます。

羊水検査の流れ
1. 事前準備
超音波で確認
局所麻酔

2. 羊水穿刺
針を刺して
羊水を採取

3. 検査後
30〜60分間
安静にする

4. 培養・検査
2〜4週間後
結果判明

羊水検査で使用される針の太さと特徴

羊水検査の痛みについて考える際、使用される針の太さは気になるポイントです。実際にどのような針が使われているのでしょうか。

羊水検査の針のサイズとゲージ

羊水検査で一般的に使用される針のサイズは「25G(ゲージ)」程度です。これは、ワクチン接種などで使用される針と同程度の細さです。針のゲージ数は数字が大きいほど細いことを示し、一般的な採血で使われる針(21~23G)よりも細いため、想像よりも痛みが少ないという方も多いようです。

針のサイズ(G) 一般的な用途 太さの目安
18G 輸血、大量の採血 太い(約1.2mm)
21-23G 一般的な採血 中程度(約0.7-0.8mm)
25G 羊水検査、ワクチン接種 細い(約0.5mm)
27-30G インスリン注射、皮内注射 非常に細い(約0.3-0.4mm)

羊水穿刺に使用される針は長さ約10~20cmほどで、超音波でモニタリングしながら慎重に刺していきます。針はお腹の皮膚、筋肉、子宮壁を通過し、羊水腔に到達します。針先の位置は超音波によってリアルタイムで確認されるため、胎児や胎盤を傷つけるリスクを最小限に抑えることができます。

専門医からの視点

「羊水検査で使用する針は、胎児の安全を確保しながら十分な量の羊水を採取できるよう、細さと強度のバランスが考慮されています。太すぎると痛みや合併症リスクが高まり、細すぎると針が曲がったり、採取に時間がかかったりするため、25Gが最適とされています。超音波ガイド下で行うことで安全性が高まりますが、熟練した医師による施術が重要です。」

羊水検査の痛みはどの程度?麻酔の有無と痛み対策

羊水検査の痛みについては、多くの妊婦さんが不安に感じる点です。実際の痛みの程度や、痛みを軽減するための対策について解説します。

実際の痛みの程度は?体験談から

羊水検査の痛みは、個人差が大きいのが特徴です。多くの方が「思ったより痛くなかった」「採血より痛くない」と感じる一方で、「ズンと来る鈍痛があった」「麻酔の注射のほうが痛かった」などの感想もあります。

一般的には、以下のような痛みを感じる方が多いようです:

局所麻酔を行う場合

  • 麻酔注射時にチクッとした痛み
  • 穿刺時は麻酔による痛みの軽減がある
  • 子宮壁を通過する際に圧迫感や鈍痛
  • 検査後に軽い痛みや違和感が残ることも

麻酔を行わない場合

  • 皮膚を通過する際のチクッとした痛み
  • 針が進むにつれて感じる圧迫感
  • 子宮壁を通過する際の「ズン」とくる感覚
  • 検査後に軽い痛みや子宮収縮感

検査中の痛みは一時的なものであり、羊水を採取する時間自体は約30秒~1分程度と短いため、「思ったより早く終わった」という感想も多いようです。

局所麻酔の有無について

羊水検査時の局所麻酔については、医療機関によって対応が異なります。

局所麻酔あり 局所麻酔なし

メリット:

  • 穿刺時の痛みを軽減できる
  • 妊婦さんの不安や緊張を和らげる
  • 検査へのストレスが軽減される

メリット:

  • 麻酔注射による痛みがない
  • 穿刺の回数が1回で済む
  • 検査時間が短縮される

デメリット:

  • 麻酔注射そのものの痛みがある
  • 針を刺す回数が増える
  • 麻酔の効き具合に個人差がある

デメリット:

  • 穿刺時の痛みを直接感じる
  • 緊張や恐怖心が強い場合は不適
  • 痛みへの不安が大きい場合は負担
専門医からのアドバイス

「局所麻酔を行うかどうかは、施設の方針によって異なりますが、多くの場合は妊婦さんの不安や希望を考慮して決定されます。麻酔を使用しない理由として、『麻酔注射の痛みと羊水穿刺の痛みが同程度』『二度針を刺すよりも一度で済ませる方が負担が少ない』という考え方もあります。不安な方は事前に担当医に相談し、検査の流れや痛みの軽減方法について確認しておくとよいでしょう。」

「また、痛みの感じ方には個人差があるため、検査前に自分の気持ちを医師に伝えることも大切です。リラックスした状態で検査を受けることで、痛みの感じ方も変わってきます。」

痛みを軽減するための対策

羊水検査の痛みをできるだけ軽減するための対策として、以下のポイントが挙げられます:

1

リラックスして検査に臨む:緊張していると痛みを強く感じるため、深呼吸や好きな音楽を聴くなどしてリラックスする

2

事前に検査の流れを理解する:どのような手順で行われるのか知っておくことで不安が軽減される

3

経験豊富な医師を選ぶ:熟練した医師による穿刺は、より素早く的確であり、痛みも少ない傾向がある

4

希望があれば局所麻酔について相談する:施設によって対応が異なるため、事前に確認しておく

5

穿刺中は呼吸を整える:穿刺時には医師の指示に従い、ゆっくりと深呼吸することで緊張を和らげる

また、痛みに対する心構えとして、「一時的な痛みである」「赤ちゃんの健康を確認するための大切な検査」という意識を持つことも助けになります。検査に不安がある場合は、担当医や看護師に遠慮なく相談し、自分の気持ちを伝えるようにしましょう。

羊水検査のリスクと起こりうる合併症

羊水検査は痛みだけでなく、侵襲的検査であるがゆえのリスクも存在します。検査を検討する際には、どのようなリスクがあるのかを理解しておくことが大切です。

主な合併症とその発生頻度

羊水検査後に起こりうる主な合併症と、その発生頻度は以下の通りです:

合併症 発生頻度 説明
流産 約0.3〜0.5%
(1/300〜1/200)
最も重大なリスクで、検査後24週以内に胎児喪失に至る可能性
羊水漏出・破水 約1.7% 穿刺部位から羊水が漏れる状態。多くは自然に止まる
子宮内感染 0.1%未満 穿刺によって細菌が子宮内に侵入し感染する可能性
胎児損傷 極めて稀 超音波ガイド下で行うため非常に稀。軽度の引っ掻き傷程度
出血 穿刺部位や胎盤近くの血管からの出血。通常は少量
羊水塞栓症 極めて稀 羊水が母体の血管内に入る重篤な合併症。極めて発生率は低い

これらのリスクは、医療技術の進歩や超音波ガイド下での穿刺によって、年々低下しています。しかし、ゼロではないため、検査を受ける前には十分に理解し、検討することが大切です。

リスク軽減のための注意点
  • 検査後は医師の指示に従い、適切な時間安静にする
  • 処方された抗生物質は感染予防のため必ず服用する
  • 検査後の出血、強い腹痛、発熱などの異常は医師に報告する
  • 検査当日から数日間は激しい運動や重いものの持ち上げを避ける
  • 水様のおりもの(羊水漏れの可能性)があれば速やかに受診する

検査結果が出ない場合のリスク

稀に採取した羊水中の細胞の培養がうまくいかず、結果が得られないケースがあります。その場合、再度羊水検査を行う必要が生じることもあります。この確率は約1.5%(1000人中15人)程度と報告されています。

また、羊膜・絨毛膜という現象により、正しい位置に針を刺すことができず、穿刺を何度か繰り返すことになる場合もあります。こうした事態に備えて、医師から事前に説明を受け、心の準備をしておくことが大切です。

痛みの少ない他の出生前診断との比較

羊水検査の痛みやリスクが気になる方は、より侵襲性の低い他の出生前診断方法も検討することができます。ここでは、主な検査方法を比較してみましょう。

検査名 痛みのレベル 検査時期 精度
NIPT
(新型出生前診断)
採血のみ
(注射針による軽い痛み)
妊娠10週〜 99%以上
(非確定)
エコー検査 無痛
(プローブの圧迫感のみ)
妊娠中期 中程度
(医師の技術に依存)
母体血清マーカー検査 採血のみ
(注射針による軽い痛み)
妊娠16〜18週 約80%
(非確定)
絨毛検査 中程度〜強い
(針または吸引管を使用)
妊娠10〜13週 99%以上
(確定)
羊水検査 中程度〜強い
(針を腹部から子宮へ刺入)
妊娠15〜18週 99.9%
(確定)

NIPT(新型出生前診断)による検査

近年、最も注目されている出生前診断方法がNIPT(新型出生前診断)です。母体の血液中に存在する胎児由来のDNA断片を分析することで、高精度で染色体異常の可能性を調べることができます。

NIPTの特徴

  • 痛みのレベル:採血のみのため、通常の採血と同程度の軽い痛み
  • 検査時期:妊娠10週目から可能(施設によって異なる)
  • リスク:ほぼなし(非侵襲的検査)
  • 精度:99%以上(ただし非確定検査のため、陽性の場合は確定検査が必要)
  • 長所:早期に高精度の結果が得られる、流産リスクがない、痛みが少ない

ミネルバクリニックでは、通常のNIPTよりもさらに精度が高い最新のCOATE法によるNIPTを導入しています。この方法は、従来のNIPTと比較して偽陽性率・偽陰性率をさらに低減することが可能です。

COATE法によるNIPTのメリット

ミネルバクリニックで実施しているCOATE法によるNIPTは、従来のNIPTを進化させた最新技術です。特徴として以下が挙げられます:

  • より高精度な解析が可能(偽陽性・偽陰性の低減)
  • 最新の解析アルゴリズムによる正確な判定
  • 従来よりも詳細な染色体異常の検出能力
  • 専門の遺伝カウンセリングによるサポート体制

よくある質問(FAQ)

羊水検査の痛みは採血と比べてどうですか?

個人差はありますが、一般的に羊水検査の痛みは採血より強いと感じる方が多いようです。針が皮膚から子宮まで到達する際の圧迫感や鈍痛を伴います。ただし、局所麻酔を使用する施設もあり、その場合は痛みが軽減されます。また、羊水検査で使用される針(25G程度)は、一般的な採血針(21〜23G)よりも細いため、針自体の痛みは採血より少ない場合もあります。「思ったより痛くなかった」という感想も多く聞かれます。

羊水検査の痛みを軽減する方法はありますか?

痛みを軽減する方法としては、まず局所麻酔の使用が挙げられます(施設によって異なります)。また、検査前にリラックスすることも重要です。深呼吸やマインドフルネスなどのリラクゼーション技法を試したり、事前に検査の流れを理解して心の準備をしておくことも有効です。経験豊富な医師による施術を受けることで、手技がスムーズになり痛みを軽減できることもあります。検査への不安や痛みへの恐怖が強い場合は、担当医に相談しましょう。

羊水検査と絨毛検査、どちらが痛みが少ないですか?

痛みの感じ方には個人差がありますが、羊水検査と絨毛検査はどちらも同程度の痛みを伴う侵襲的検査です。絨毛検査は経腹的に行う場合は羊水検査と同様に針を刺すため、痛みの質も似ています。一方、経腟的に行う場合は針ではなく吸引用のカテーテルを使用するため、痛みの質が異なります。絨毛検査は妊娠10〜13週頃に行うため、より早く結果が得られますが、流産リスクは羊水検査よりもやや高い(約1.1%)とされています。検査方法の選択は、検査時期や目的に応じて医師と相談して決めるとよいでしょう。

NIPTで陽性だった場合、必ず羊水検査を受ける必要がありますか?

NIPTで陽性結果が出た場合、確定診断のために羊水検査や絨毛検査が推奨されますが、必ず受ける必要はありません。これらの検査を受けるかどうかは個人の選択です。NIPTは非常に精度が高いものの、スクリーニング検査であるため、偽陽性の可能性もあります。確定診断を望まない場合は、超音波検査などで胎児の発育を注意深く観察する選択肢もあります。どのような選択をするにしても、遺伝カウンセリングを受けて十分な情報を得た上で、ご自身やご家族にとって最適な決断をすることが大切です。

羊水検査の痛みはどのくらい続きますか?

羊水検査時の痛みは、穿刺中の一時的なものが主ですが、検査後に軽い痛みや不快感が続くことがあります。多くの場合、穿刺部位の痛みは数時間から1日程度で収まることが多いです。また、検査後に子宮の軽い収縮感や違和感を感じることもありますが、これも通常は1〜2日で改善します。ただし、強い腹痛、出血、発熱、水様のおりものなどがある場合は、合併症の可能性があるため直ちに医師に連絡することが重要です。検査後は医師の指示に従い、必要に応じて安静にすることが回復を早めます。

まとめ:羊水検査と痛みについて

羊水検査は高精度な確定診断が可能な検査ですが、針を腹部から子宮に刺入する侵襲的な検査であるため、ある程度の痛みを伴います。使用される針は一般的に25G程度と細いものですが、針が通過する経路や個人の感受性によって痛みの感じ方には差があります。

痛みだけでなく、流産(0.3〜0.5%)や感染などのリスクもあるため、検査を受ける前には十分な理解と検討が必要です。近年は、採血だけで高精度なスクリーニングが可能なNIPT(新型出生前診断)も普及しており、特にCOATE法による最新のNIPTは、より正確な結果を提供できるようになっています。

どの検査方法を選ぶかは個人の価値観や状況によって異なります。専門医による適切な説明と遺伝カウンセリングを受けた上で、ご自身にとって最良の選択をすることが大切です。

出生前診断に関する遺伝カウンセリングはミネルバクリニックへ

ミネルバクリニックでは、NIPT(新型出生前診断)をはじめとする出生前検査についての遺伝カウンセリングを提供しています。日本人類遺伝学会認定の臨床遺伝専門医による適切な情報提供と心理的サポートにより、妊婦さんとご家族の不安や疑問に寄り添います。最新のCOATE法によるNIPTや検査後のフォローアップなど、一貫したサポート体制を整えております。

参考文献・資料:

  • 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン」
  • 日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」
  • ミネルバクリニック「NIPT(新型出生前診断)の最新技術」
  • ミネルバクリニック「出生前診断の選択肢と特徴」

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事