目次
メチル化(メチレーション、methylation)とは、分子にメチル基(–CH3)が付くことです。体の中ではDNA・ヒストン・タンパク質・RNA、そして薬や体内の物質がメチル化され、遺伝子のはたらきのオン・オフや代謝の調節に使われています。メチル基を配るのはSAM(S-アデノシルメチオニン)という物質です。メチル化の乱れは、プラダー・ウィリー症候群や脆弱X症候群など、遺伝の病気の原因にもなります。この記事では、メチル基の構造から、何がメチル化されるか、遺伝子検査でメチル化を調べる意味までを解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. メチル化とは何ですか?
メチル化とは、分子にメチル基(–CH3)が付くことです。英語ではmethylation(メチレーション)といいます。体の中では、DNA・ヒストン・タンパク質・RNA・体内の物質や薬がメチル化されます。
🧬 Q. メチル基とは何ですか?
炭素1つに水素3つが付いた、いちばん小さな炭化水素の基(–CH3)です。水になじみにくい(疎水性の)性質をもち、付いた分子の形や性質を変えます。
🧬 Q. 体の中のメチル化は何のためですか?
DNAのメチル化は、遺伝子の配列を変えずに遺伝子のはたらきを調節するしくみです。ゲノム刷り込み(インプリンティング)やX染色体の不活性化にも使われています。
🧬 Q. メチル化は病気と関係がありますか?
あります。プラダー・ウィリー症候群・アンジェルマン症候群はメチル化解析で調べ、脆弱X症候群ではメチル化によってFMR1遺伝子が止まります。
- ➤メチル化 → 分子にメチル基(–CH3)が付くこと(methylation)
- ➤何がメチル化される? → DNA(シトシン)・ヒストン・タンパク質・RNA・薬や体内の物質
- ➤メチル基の配り手 → SAM(S-アデノシルメチオニン)とメチオニン回路
- ➤遺伝との関係 → 刷り込みの病気のメチル化解析、脆弱X症候群、エピシグネチャー

1. メチル化(メチレーション)とは?メチル基とは?
メチル化とは、ある分子にメチル基(–CH3)が付く化学反応のことです。反対に、付いていたメチル基が外れることを脱メチル化といいます。化学の実験でも生物の体の中でも起こる反応ですが、医学・生物学で「メチル化」というときは、多くの場合、体の中で酵素がDNAやタンパク質などにメチル基を付けることを指します。
メチル基が付くと、付いた分子の形や性質が少し変わります。その変化が、遺伝子をはたらかせるかどうか、タンパク質が何と結合するか、薬がどれだけ早く分解されるかといった違いにつながります。メチル基そのものは小さな部品ですが、どこに付くかで意味がまったく変わるのがメチル化の特徴です。
メチル基(–CH3)の構造と性質
メチル基は、炭素原子1つに水素原子3つが付いた形の基で、–CH3と書きます。残りの1本の手で、別の原子(炭素・窒素・酸素・硫黄など)に結合します。教科書では、メチル基は電気的な偏りがない(非極性の)基で、水になじみにくい疎水性の基の例として挙げられています[1]。
模式図:メチル基(–CH3)。Rはメチル基が付いた分子の残りの部分。
「メチル基」と「メチル化」は、どちらも検索でよく調べられる言葉です。メチル基は部品の名前、メチル化はその部品を付ける反応の名前、と分けて覚えると混乱しません。メチル基が2つ付くとジメチル、3つ付くとトリメチルと呼びます。
メチル化とメチレーション・英語での言い方
メチル化は英語でmethylation(メチレーション)、メチル基はmethyl group、脱メチル化はdemethylationです。研究者向けの資料ではカタカナの「メチレーション」もよく使われますが、意味は同じです。メチル基を付ける酵素はメチルトランスフェラーゼ(methyltransferase、メチル基転移酵素)と総称され、DNAに付ける酵素はDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)と呼ばれます。
メチル化とアセチル化はどう違う?
メチル化はメチル基(–CH3)が付くこと、アセチル化はアセチル基(–COCH3)が付くことで、付く部品が違います。どちらもヒストンなどのタンパク質に付く「修飾」として並べて語られることが多い言葉です。アセチル化そのものについてはアセチル化・アセチル基とはで解説しています。
📘 メチル化とアセチル化の違い
| 項目 | メチル化 | アセチル化 |
|---|---|---|
| 付く部品 | メチル基(–CH3) | アセチル基(–COCH3) |
| 英語 | methylation | acetylation |
| DNAに付くか | 付く(主にシトシン) | DNAの修飾としては扱われない |
| ヒストンに付くか | 付く | 付く |
2. 体の中で何がメチル化される?
体の中でメチル化されるのは、DNA、ヒストン(DNAを巻き取るタンパク質)、ほかのタンパク質、RNA、そして体内の物質や薬です。同じ「メチル化」でも、対象によって起こることが違います。全体像を表にまとめます。
🧬 何がメチル化されるか(主なもの)
DNAのメチル化:シトシンの5位にメチル基が付く
DNAのメチル化とは、塩基のひとつシトシンの5位の炭素にメチル基が付き、5-メチルシトシン(5mC)になることです[2]。DNAのメチル化の大部分は、シトシンのすぐ後ろにグアニンが続く場所(CpG)のシトシンで起こります。CpGが集まった領域をCpGアイランドといい、遺伝子のプロモーター(スイッチの部分)にあるCpGアイランドは、メチル化されていないことが多いと説明されています[2]。
DNAのメチル化は、塩基の並び(配列)そのものは変えません。A・T・G・Cの並びは同じまま、シトシンに目印が付くだけです。それでも、その目印があるかどうかで遺伝子が使われるかどうかが変わるため、「配列の外にある情報(エピジェネティクス)」の代表とされています。詳しくはDNAメチル化、CpGアイランド、エピジェネティクスのページをご覧ください。
ヒストン・タンパク質のメチル化
ヒストンのメチル化では、ヒストンの塩基性のアミノ酸にメチル基が付き、付く場所と付く数によって結果が変わります[3]。ヒストンはDNAを巻き取る糸巻きのようなタンパク質で、ヒストンのしっぽに付く目印が、そこに巻かれたDNAの遺伝子を使いやすくするか使いにくくするかに関わります。同じ総説は、ヒストンのメチル化の調節が乱れると、がんや知的障害などの病気につながりうると述べています[3]。
ヒストン以外のタンパク質も、リシンやアルギニンなどにメチル基が付くことで、ほかの分子との結合や細胞の中での位置が変わります。こうした変化は、タンパク質が作られたあとに付く「翻訳後修飾」のひとつです。詳しくはヒストンメチル化、タンパク質翻訳後修飾としてのメチル化、ヒストンとはで扱っています。
RNAのメチル化(m6A)
RNAでは、アデノシンの6位の窒素にメチル基が付いたN6-メチルアデノシン(m6A)が、mRNAの内部でもっとも多い修飾とされています[4]。m6Aは、さまざまな生理的な場面で遺伝子発現を調節する広いしくみだと説明されています[4]。DNAのメチル化が「設計図に付ける目印」だとすると、RNAのメチル化は「設計図から写したコピーに付ける目印」にあたります。詳しくはm6A・RNA修飾をご覧ください。
薬や体内の物質のメチル化:体質で薬の効き方が変わる例
メチル化は薬の分解にも使われ、そのはたらきが遺伝子の違いで変わることがあります。代表的な例が、チオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)です。TPMTは、アザチオプリン・メルカプトプリン・チオグアニンなどのチオプリン系薬剤の代謝に関与し、チオプリン化合物をS-メチル化する酵素です。TPMT遺伝子の型によって酵素活性が異なり、活性が低い場合には細胞毒性をもつチオグアニンヌクレオチドが増加し、重い骨髄抑制などの副作用が起こりやすくなります[5]。
国際的な薬理遺伝学のガイドラインは、TPMTとNUDT15という2つの遺伝子の型にもとづいて、これらの薬の開始量を調整するよう推奨しています。NUDT15のはたらきが失われる型はアジアの人に多いとされています[5]。日本人の体質を考えるうえで、知っておきたい点です。
食品の成分にもメチル基が付いたものがあります。お茶の品種「べにふうき」に含まれるメチル化カテキンは、カテキンの一種(エピガロカテキンガレート)にメチル基が付いたO-メチル化カテキンで、EGCG3″Meと書かれます[6]。名前の「メチル化」は、この記事で説明している化学的な意味と同じです。
3. メチル基はどこから来る?SAMとメチオニン回路
体の中でメチル基を配る役目をしているのは、S-アデノシルメチオニン(SAM、AdoMet)です。SAMは、アミノ酸のメチオニンからメチオニンアデノシルトランスフェラーゼ(MAT)という酵素によって作られ、ほかの物質にメチル基を渡します。この反応はトランスメチル化と呼ばれ、遺伝子のはたらきの調節や神経の伝達物質の処理などを支えています[7]。DNAメチルトランスフェラーゼがDNAに付けるメチル基も、SAMから来ています[2]。
模式図:メチオニン回路の流れ。ホモシステインは、ビタミンB12を必要とするメチオニン合成酵素によってメチオニンに戻ります。
SAMはメチル基を渡すとS-アデノシルホモシステイン(SAH)になり、SAHはAHCYという酵素でアデノシンとホモシステインに分解されます[8]。ホモシステインは、メチオニン合成酵素によってメチオニンに戻されます。この酵素がはたらくにはビタミンB12の一種(メチルコバラミン)が必要です[9]。こうして一回りする流れをメチオニン回路といいます。
この回路の酵素の遺伝子に変化があると、生まれつきの代謝の病気になることがあります。たとえばAHCYのはたらきが落ちると、メチオニンの分解がうまく進まず高メチオニン血症になり、一部の人で知的障害などの神経の症状が出ると説明されています[8]。病気の詳しい解説はアデノシルホモシステイナーゼ欠損による高メチオニン血症にあります。
4. メチル化は何のため?遺伝子のはたらきのオン・オフ
DNAのメチル化は、配列を変えずに、どの遺伝子をどの細胞で使うかを決めるしくみのひとつです。私たちの体の細胞は、ほぼ同じゲノムをもっているのに、肝臓の細胞と神経の細胞では使っている遺伝子が違います。その違いを細胞が覚えておくための目印として、DNAのメチル化が使われています。
メチル化の模様は細胞分裂のたびにコピーされる(維持メチル化)
細胞が分裂してDNAを複製するとき、DNMT1という酵素がもとのメチル化の模様を新しいDNAに写し取ります[2]。これを維持メチル化といいます。一方、まだメチル基が付いていないDNAに新しい模様を作るのはDNMT3AとDNMT3Bです[2]。能動的なDNA脱メチル化には、TET酵素が5-メチルシトシン(5mC)を酸化して5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)に変える反応が関わります。TETによる酸化はメチル基の直接的な除去ではなく、さらに酸化された塩基が塩基除去修復などを経て非メチル化シトシンに置き換わる経路があります[2]。
刷り込み・X染色体の不活性化・動く遺伝子の抑え込み
DNAのメチル化は、ゲノム刷り込み(インプリンティング)、X染色体の不活性化、ゲノムの中の動く配列(トランスポゾンなど)を抑えることに使われています[2]。ヒトゲノムの約45%は転移因子に由来する反復配列が占めると推定されています。DNAメチル化は、これらの配列の多くを転写抑制する重要な仕組みの一つですが、すべての転移因子由来配列が同じ程度にメチル化されているわけではありません[2]。
ゲノム刷り込みとは、父親から受け継いだか母親から受け継いだかによって、片方の遺伝子だけが使われるしくみです。どちらの親から来たかの目印として、特定の領域(鑑別メチル化領域、DMR)のメチル化の違いが使われます。女性の2本のX染色体のうち1本が働かなくなるX染色体の不活性化にも、メチル化が関わります。詳しくはゲノムインプリンティング関連疾患、鑑別メチル化領域(DMR)、X染色体不活性化によるモザイクで解説しています。
🩺 院長コラム【「配列は正常」でも病気になる理由】
遺伝子検査は、多くの場合、塩基の並びを読む検査です。ところが、刷り込みの病気のように、配列には変化がなくてもメチル化の目印が違うために病気になることがあります。配列を読む検査で「異常なし」でも、それで遺伝の病気が否定されるとは限りません。
臨床遺伝専門医として、どの検査が何を見ていて何を見ていないのかを最初に整理することが、検査を選ぶうえでいちばん大切だと考えています。メチル化を調べるべき病気では、メチル化を調べる検査を選ぶ必要があります。
5. 遺伝・医療とのつながり:メチル化を調べる検査
遺伝の病気には、メチル化を調べることで初めて診断できるものや、メチル化の模様そのものが診断の手がかりになるものがあります。ここでは、メチル化が遺伝医療で実際にどう使われているかを紹介します。
プラダー・ウィリー症候群・アンジェルマン症候群のメチル化解析
プラダー・ウィリー症候群は、15番染色体の15q11.2-q13にある、父親由来のときだけ使われる遺伝子群がはたらかないことで起こります。DNAのメチル化解析では、この領域で父由来のメチル化パターンが失われ、母由来のパターンのみが認められる状態を検出できます。ただし、メチル化状態のみを測定する解析では、父由来領域の欠失、母性片親性ダイソミー、刷り込み異常を区別できません。コピー数解析などを組み合わせることで、一部の原因を鑑別できます[10]。
🧬 プラダー・ウィリー症候群の原因の内訳(GeneReviews、2026年2月改訂)
| 原因 | 割合 | メチル化解析 |
|---|---|---|
| 父由来15qの欠失 | 約60〜70% | 異常として見つかる |
| 母性片親性ダイソミー | 完全アイソダイソミー4〜5%、部分アイソダイソミー17〜23%、ヘテロダイソミー約8〜11% | 異常として見つかる |
| 刷り込み異常 | エピ変異 約2〜4%、刷り込み中心の欠失0.5%未満 | 異常として見つかる |
出典:GeneReviews「Prader-Willi Syndrome」[10]。割合は文献によって幅があります。メチル化解析で異常が見つかっても、どの原因かは別の検査で確かめます。
当院のプラダー・ウィリー症候群/アンジェルマン症候群のメチル化解析では、メチル化と同時にコピー数を測るため、欠失による型かどうかを区別できます。欠失がない場合は、片親性ダイソミーと刷り込み異常の区別にご家族の検体を使った追加の解析が必要です。メチル化が正常なアンジェルマン症候群が疑われるときは、UBE3A遺伝子の配列も調べます。検体は血液のほか、頬の内側の粘膜や唾液も使えます。一方、転座などの構造の変化や、低い割合のモザイクは見逃されることがあります。
原因の型を知ることには意味があります。欠失なのか、片親性ダイソミーなのか、刷り込み異常なのかで、次のお子さんで同じことが起こる可能性の考え方が変わるためです。片親性ダイソミーのしくみは片親性ダイソミー(UPD)で解説しています。
NIPTでメチル化の異常はわかる?
当院のNIPT(新型出生前診断)では、どのプランでも15q11.2-q13領域の欠失をスクリーニングできます。ただし、欠失の検出だけでは、その欠失が父由来か母由来かを確定できないため、プラダー・ウィリー症候群の診断には追加の検査が必要です。片親性ダイソミーや刷り込み異常(メチル化の異常)によるプラダー・ウィリー症候群は、NIPTではわかりません。NIPTは赤ちゃん由来のDNAの量の偏りを見る検査で、メチル化の目印を読む検査ではないためです。欠失による型についてはプラダー・ウィリー症候群(15q11.2-q13欠失)と微小欠失症候群のページで説明しています。
💡 用語解説:片親性ダイソミー
ある染色体の対の2本が、両方とも同じ親から来ている状態です。染色体の数や量は正常なので、量を見る検査では見つかりません。刷り込みを受ける領域を含む染色体で起こると、片方の親由来でしか使われない遺伝子がはたらかなくなり、病気になることがあります。
脆弱X症候群:メチル化でFMR1遺伝子が止まる
脆弱X症候群では、FMR1遺伝子のCGGリピートが通常200回を超える全変異になると、プロモーター領域の高メチル化が生じ、FMR1の転写が抑制されます。ただし、メチル化の程度には例外やモザイクがあり、リピート数だけでメチル化状態を確定することはできません[11]。GeneReviewsは、この異常な高メチル化が転写の停止の原因だと述べており、診断ではメチル化の状態も評価されます[11]。配列の変化(繰り返しの伸長)がメチル化を呼び込み、メチル化が遺伝子を止める、という2段のしくみです。
なお、当院のFMR1遺伝子リピート伸長検査はCGGの繰り返しの数を数え、正常・中間型・前変異・全変異のどれに当たるかを調べる検査で、FMR1のメチル化の状態を調べることは含まれていません。病気そのものについては脆弱X症候群とはをご覧ください。
エピシグネチャー:メチル化の模様で病気を見分ける
エピシグネチャーとは、特定の遺伝の病気に特徴的な、ゲノム全体のDNAメチル化の模様のことです。ゲノム全体のメチル化を調べる検査を欧米とカナダの検査室網で臨床に導入した報告では、最初に検査した207人のうち57人(27.6%)で、診断につながるエピシグネチャーが見つかりました。とくに、それまでの遺伝子検査で意義不明のバリアントなど結論の出ない結果があった人では136人中48人(35.3%)でした[12]。
配列の検査で見つかった変化が病気の原因かどうか決められないとき、メチル化の模様が判断の手がかりになりうる、という点が臨床での意味です。対象は主に神経発達の病気(発達の遅れや知的障害を伴う症候群など)です。詳しくはDNAメチル化エピシグネチャーで解説しています。
がんとメチル化:リンチ症候群を見分ける手がかり
がんの組織では、遺伝性ではないのに、メチル化によってがんを抑える遺伝子が止まることがあります。大腸がんでは、ミスマッチ修復遺伝子のMLH1が止まっているとき、それが生まれつきの病的バリアント(リンチ症候群)によるのか、がんの中で起きたMLH1のメチル化によるのかを見分けることが大切です。散発性の大腸がん11例とリンチ症候群16例を調べた小規模な研究では、MLH1のプロモーターのメチル化が散発性の11例すべてで見られ、リンチ症候群では16例中1例でした[13]。
つまり、がん組織でMLH1のメチル化が見つかると、遺伝性の可能性は下がります。ただし例外もあるため、メチル化だけで遺伝性を否定せず、家族歴などとあわせて判断します。
メチル化を担う遺伝子の病気
メチル基を付ける酵素の遺伝子そのものの変化が、病気の原因になることもあります。たとえばNSD1遺伝子は、ヒストンにメチル基を付けるヒストンメチルトランスフェラーゼの設計図です。NSD1にはソトス症候群の人で380を超える変化が見つかっており、酵素のはたらきの低下が症状に関わると説明されています[14]。詳しくはNSD1遺伝子のページをご覧ください。
🩺 院長コラム【メチル化は「読み方の指示書き」】
DNAの配列を本の文章にたとえると、メチル化はページに貼られた「ここは読まない」という付箋のようなものです。文章が正しくても、付箋の貼り方が違えば、本の伝える内容は変わります。
遺伝医療では、文章(配列)と付箋(メチル化)の両方を見る必要がある場面があります。どちらを調べるべきかは、疑われる病気によって決まると考えています。
よくある質問(FAQ)
Q1. メチル化とは簡単に言うと何ですか?
分子にメチル基(–CH3)という小さな部品が付くことです。体の中では、DNA・ヒストン・タンパク質・RNA・薬や体内の物質に付き、遺伝子のはたらきや代謝を調節します。
Q2. メチル基とメチル化の違いは何ですか?
メチル基は炭素1つに水素3つが付いた部品(–CH3)の名前で、メチル化はその部品が分子に付く反応の名前です。英語ではメチル基がmethyl group、メチル化がmethylation(メチレーション)です。
Q3. DNAがメチル化されるとどうなりますか?
DNAの配列は変わらず、シトシンに目印が付きます。この目印は、どの遺伝子をどの細胞で使うかの調節、ゲノム刷り込み、X染色体の不活性化、ゲノムの中の動く配列の抑え込みに使われます。脆弱X症候群のように、異常なメチル化で遺伝子が止まって病気になることもあります。
Q4. メチル化とアセチル化の違いは何ですか?
付く部品が違います。メチル化はメチル基(–CH3)、アセチル化はアセチル基(–COCH3)が付くことです。どちらもヒストンに付く修飾として知られていますが、DNAそのものに付く修飾として扱われるのはメチル化です。
Q5. メチル化カテキンの「メチル化」も同じ意味ですか?
同じ意味です。お茶の品種「べにふうき」に含まれるメチル化カテキンは、カテキンの一種にメチル基が付いたO-メチル化カテキン(EGCG3″Me)です。
Q6. メチル化の異常はNIPTでわかりますか?
わかりません。当院のNIPTでわかるプラダー・ウィリー症候群は、15q11.2-q13の欠失によるものだけです。片親性ダイソミーや刷り込み異常(メチル化の異常)による型は、NIPTではわかりません。
Q7. メチル化解析はどんなときに使われる検査ですか?
プラダー・ウィリー症候群・アンジェルマン症候群など刷り込みの病気の診断、脆弱X症候群のFMR1のメチル化状態の評価、遺伝子検査で原因が決まらない神経発達の病気でのエピシグネチャーの解析などに使われます。
まとめ
メチル化(メチレーション)とは、分子にメチル基(–CH3)が付くことです。体の中では、DNAのシトシン、ヒストンなどのタンパク質、RNAのアデノシン、薬や体内の物質がメチル化され、メチル基はSAMから配られます[2][7]。DNAのメチル化は、配列を変えずに遺伝子のはたらきを調節し、刷り込みやX染色体の不活性化にも使われています。
遺伝医療では、プラダー・ウィリー症候群・アンジェルマン症候群のメチル化解析、脆弱X症候群のFMR1のメチル化、エピシグネチャーなど、メチル化を調べることが診断につながる場面があります[10][11][12]。配列の検査で異常がなくても、メチル化の病気が否定されるとは限りません。
🧬 メチル化を調べる検査について
当院では、プラダー・ウィリー症候群・アンジェルマン症候群のメチル化解析を行っています。検査でわかること・わからないことは検査のページに詳しく書いています。検査を受けるかどうかまだ決めていない方は、検査で何がわかり、結果をどう受け止めればよいかを遺伝カウンセリングとはで先にご覧ください。
参考文献
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