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COATE法とは?次世代NIPT検査の精度と従来法の違いを徹底比較

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。医師として30年以上、のべ10万人以上のご家族の意思決定を支えてきました。2025年、国際誌『Global Woman Leader』の表紙に掲載。

COATE法(コート法)は、母体血の中に混ざった赤ちゃん由来のDNAを、お母さん由来のDNAから「遺伝学的に切り分けて」読み取るための次世代NIPTの技術です。従来の方式が苦手だった微小欠失症候群や、赤ちゃんに新しく生じた単一遺伝子の変異(de novo変異)まで、1回の採血で調べられるように設計されています。この記事では、全ゲノム法・ターゲット法・SNP法とCOATE法の違いを、原著論文で確認できる数字にもとづいて比較します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約10分
🧬 COATE法・NIPTの方式・検査精度
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. COATE法は従来のNIPTと何が違うのですか?まず結論だけ知りたいです

A. 「量(リード数)」と「型(アレルの比率)」の両方を同時に読み、母体側の要因を見分けたうえで判定するのが最大の違いです。そのため、染色体の数の異常に加えて、微小欠失症候群と単一遺伝子疾患を1回の検査でまとめて調べられます。ただし、どの方式でもNIPTはスクリーニング検査で、陽性のときは羊水検査・絨毛検査での確定が必要です。

  • ➤4つの方式 → 全ゲノム法・ターゲット法・SNP法・COATE法で「何を数えるか」が違う
  • ➤COATE法のしくみ → アレルの偏りが出にくいプローブで捕まえ、リード数・アレル比・連鎖SNP・断片長を統合解析
  • ➤報告されている精度 → 1,129例で感度100%・特異度99.3%、前向き研究1,090例で感度98.5%・特異度99.3%
  • ➤単一遺伝子疾患 → 構造異常のある胎児では、単一遺伝子を加えることで検出数が61例から98例に増えた
  • ➤限界 → 偽陽性はゼロではなく、陽性なら確定検査が必要。陰性でもすべての病気が否定されるわけではない

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. COATE法ってどんな技術?

母体血の中のDNAを、「どれだけあるか(量)」と「どの型か(アレル比)」の両方から読み、お母さんのDNAと赤ちゃんのDNAを切り分ける方法です。双子や母体側の小さな欠失・重複など、結果を乱す要因を先に見つけてから判定します。

🔎 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

大丈夫とは言えません。方式が進んだいまは、どこまで調べるかも選べます。子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった行動の問題です。こうした問題を伴いやすい病気は、ダウン症候群よりも微小欠失症候群や単一遺伝子疾患に多く、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTは、COATE法を使うダイヤモンドプランをはじめ、これらの病気まで調べられます。

📊 Q. 従来のNIPTより何が調べられるの?

染色体の数の異常に加えて、微小欠失症候群と単一遺伝子疾患を同じ検査で調べられます。前向き研究では、超音波で構造異常があった胎児で、単一遺伝子を加えたことで見つかった数が61例から98例に増えました。

⚠️ Q. COATE法なら陽性=確定?

いいえ。研究でも特異度は99.3%で、偽陽性はゼロではありません。陽性のときは羊水検査・絨毛検査で確かめます。ミネルバクリニックでは確定検査を院内で行い、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。

ダウン症候群だけで大丈夫ですか?

方式によって、調べられる病気の範囲は変わります。当院のNIPTは、子育ての負担につながりやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と一緒に決められます。

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1. NIPTとは?基本的な仕組みを理解しよう

NIPT(Non-Invasive Prenatal Testing:非侵襲性出生前遺伝学的検査)は、妊婦さんの血液に含まれる赤ちゃん由来のDNA断片(cell-free DNA:cfDNA)を解析し、染色体の変化などを調べるスクリーニング検査です。お腹に針を刺す羊水検査や絨毛検査と違い、採血だけで受けられるため、検査そのものによる流産のリスクがありません。

💡 NIPTの基本原理

妊婦さんの血液中には、お母さん由来と赤ちゃん(正確には胎盤)由来のDNA断片が混ざっています。赤ちゃん由来のDNAが占める割合(胎児分画)は、妊娠中期で平均10%前後、NIPTを行う妊娠初期の終わりごろはそれより低めとされています[6]。

NIPTはこのわずかな割合のDNAから、たとえば21番染色体が3本ある場合(ダウン症候群)に21番由来の断片が統計的にわずかに多くなることをとらえます。赤ちゃんの信号は母体の信号の中に埋もれているため、「雑音(測定のぶれ)より大きな信号をどう取り出すか」が、方式ごとの精度の差になります。

2. COATE法と従来NIPT技術の違い

NIPTの技術は、調べられる範囲と精度の両面で進化してきました。その流れの中で、2022年に報告されたのがCOATE法(COATE-seq:coordinative allele-aware target enrichment sequencing)です[1]。第1世代から現在までの大きな流れはNIPTの世代別比較で解説しているので、ここではCOATE法のしくみと精度に絞ってお話しします。

💡 用語解説:COATE法とは

直訳すると「アレル(対立遺伝子)を意識した、協調的な標的濃縮シーケンス法」です。ポイントは2つあります。

1つめはプローブ(DNAを釣り上げる釣り針)の設計です。従来の釣り針は「標準の配列」にぴったり合うように作られるため、変異のある側のDNAがわずかに釣れにくくなります。COATE法は、標準型と変異型のどちらにも同じくらいくっつくように釣り針を設計し、この偏りを小さくしました[1]。

2つめは解析の多次元化です。量(リード数)・型(アレル比)・近くのSNPのつながり(連鎖)・DNA断片の長さを組み合わせて、赤ちゃん由来の変化を母体の背景から切り分けます。

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3. 各NIPT手法の原理と技術的特徴

NIPTの方式は、大きく4つに分けて考えるとわかりやすくなります。違いは「どの範囲のDNAを読み、何を数えるか」です。同じ「NIPT」という名前でも、検査会社によってどの方式を使い、何を調べるかが異なります。検査会社ごとの品質管理や結果までの日数の違いはNIPTの検査会社による違いにまとめています。

3-1. 全ゲノムスクリーニング法(全ゲノム法・WGS法)

原理:母体血漿中のcfDNA断片を、ゲノム全体から無作為に浅く読み、染色体ごとの断片の数(リード数)を統計的に比べます。21番染色体由来の断片が予想より多ければ、21トリソミーの可能性を考えます。

  • ➤全染色体の数の異常を1回で調べられる
  • ➤数Mb(メガ塩基)以上の大きな変化は得意だが、小さな欠失・重複は信号が足りず苦手
  • ➤「量」しか見ないため、母体側の欠失・重複(母体CNV)が赤ちゃんの異常のように見えることがある[7]

3-2. ターゲットシーケンス法(ターゲット法)

原理:21・18・13番など、調べたい染色体の領域だけを選んで読みます。読む範囲をしぼるぶん、その領域を深く読むことができます。

  • ➤主要な染色体のトリソミーに特化した設計が多い
  • ➤一般妊婦を対象にした大規模研究では、21トリソミーの陽性的中率は80.9%と報告されている[4]
  • ➤従来型のプローブでは、変異型のアレルがわずかに釣れにくい偏りが残る[1]

3-3. SNPベース法(SNP法)

原理:人によって異なる1塩基の違い(SNP)に注目し、各SNPでのアレルの比率から、赤ちゃんの染色体が何本あるかを推定します。お母さんと赤ちゃんの「型」の違いを利用するため、母体由来と胎児由来をある程度区別できます。

  • ➤三倍体や、気づかれていない双子(バニシングツインを含む)の検出に強みがある
  • ➤お母さんが両方のアレルで同じ型を持つ領域(ヘテロ接合性の欠如:AOH)では、使えるSNPが減り判定しにくい[1]
  • ➤22q11.2欠失症候群のスクリーニングでは、更新アルゴリズムで感度83.3%、陽性的中率52.6%と報告されている[3]

3-4. COATE法

原理:ターゲット法とSNP法の考え方を一つにまとめ、さらにアレルの偏りが出にくいプローブで標的領域を捕まえます。そのうえで、リード数(量)とアレル比(型)を同時に解析します[1]。

  • ➤量と型の両方で確認するため、どちらか一方だけで見るより取りこぼしが少ない(検証用の40例のトリソミーで、量だけでは感度97.5%、型だけでは85.0%、両方では100%)[1]
  • ➤二卵性双胎、母体CNV、母体のAOHを判定の前に見つけ、品質管理の段階で除外できる
  • ➤赤ちゃん由来のDNA断片がお母さん由来より平均で約10塩基短いことを利用し、単一遺伝子の変異が本当に赤ちゃん由来かを確かめる
  • ➤2022年のCOATE-seq研究では、胎児分画4.0%を解析上の閾値としている[1]
従来のNIPT検査とCOATE法の解析原理の違い

図1:従来のNIPT検査とCOATE法の解析原理の違い

4. 微小欠失症候群・単一遺伝子疾患の検出精度比較

NIPTの対象は、染色体の数の異常(トリソミーなど)から、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患へと広がっています。この2つは信号がとても小さいため、方式による差がもっとも出やすい分野です。

💡 用語解説:微小欠失症候群とは

顕微鏡の染色体検査では見えないほど小さな範囲(おおむね数百kb〜数Mb)が欠けることで起こる病気の総称です。22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)や1p36欠失症候群などが代表例です(微小欠失症候群の詳しい解説)。

ダウン症候群と違い、お母さんの年齢とはほぼ関係なく起こります。染色体マイクロアレイを使った大規模研究では、超音波で構造異常がなく、高年齢や母体血清マーカー陽性を理由に検査を受けた妊娠でも、通常の染色体検査が正常だった胎児の約1.7%に臨床的に意味のある微細な欠失・重複が見つかりました[5]。

🔬 微小欠失症候群の検出:報告されているデータ

方式 報告されている成績 読み取るときの注意
全ゲノム法 小さな欠失ほど信号が弱く、成績は疾患・サイズ・胎児分画で大きく変わる 陽性でも実際には欠失がないこと(偽陽性)が、トリソミーより起こりやすい
SNP法 22q11.2欠失症候群の更新アルゴリズムで感度83.3%、陽性的中率52.6%[3] 陽性の約半数は確定検査で欠失が確認されなかった計算になる
COATE法 1,129例の検証で微小欠失・重複8例をすべて検出。トリソミー・単一遺伝子を含めた全体の感度100%、特異度99.3%[1] 微小欠失だけの陽性的中率はこの研究では示されていない。偽陽性もゼロではない

※研究ごとに対象(高リスク妊婦か一般妊婦か)や調べた疾患が異なるため、数字をそのまま横並びで比べることはできません。陽性的中率は、その病気がどれくらいの頻度で起こる集団かによって大きく変わります。

💡 用語解説:単一遺伝子疾患とは

1つの遺伝子の変異によって起こる病気です。NIPTで対象にしやすいのは、赤ちゃんに新しく生じた変異(de novo変異)や父親から受け継いだ変異で起こる顕性(優性)遺伝の病気です。軟骨無形成症(FGFR3)、ヌーナン症候群(PTPN11・SOS1など)、骨形成不全症(COL1A1・COL1A2)などがこれにあたります。

一方、両親とも保因者のときに起こる潜性(劣性)遺伝の病気は、お母さん由来のDNAに同じ変異が大量にあるため、NIPTで見分けるのは困難です。こちらは妊娠前の保因者検査が向いています。

🧬 単一遺伝子疾患の検出:COATE法の報告

研究 対象と方法 結果
分析性能の検証[1] 母体血漿28検体と、同じ妊娠の羊水細胞を463遺伝子で比較 感度99.5%、特異度99.9%
後ろ向き臨床検証[1] 確定検査を受けた1,129例(10の単一遺伝子疾患を含む) 単一遺伝子の病的変異8例を検出し、すべて超音波所見と一致
前向き多施設研究[2] 遺伝性疾患のリスクが高い妊婦1,090例 135例で異常を検出、感度98.5%・特異度99.3%。構造異常のある876例では単一遺伝子の病的変異が37例

※前向き研究では、構造異常のある胎児で、単一遺伝子を対象に加えたことにより検出数が61例から98例へ60.7%増えました[2]。いずれも超音波異常などで確定検査を受けた高リスクの集団での成績です。

5. COATE法の臨床的メリット

技術の違いは、実際に結果を受け取るご家族にとって、次のような意味を持ちます。

5-1. 結果を乱す要因を先に見つけられる

全ゲノム法では、お母さん自身が持っている欠失・重複(母体CNV)が赤ちゃんの異常と区別しにくく、偽陽性の原因になることが知られています[7]。COATE法では、量と型を同時に見ることで、母体CNV・母体のAOH・二卵性双胎などを判定の前に見つけます。実際の検証では、1,149例のうち20例(約1.7%)がこうした理由で解析の対象から外されました(二卵性双胎13例、卵子提供による双胎1例、3Mb以上の母体CNV 4例、母体AOH 2例)[1]。「判定できない検体を無理に判定しない」ことが、結果の信頼性につながります。

5-2. 陽性のときの説明がしやすくなる

微小欠失の陽性的中率が50%前後の検査では、陽性と言われても「半分くらいは実際には欠失がない」ことになり、確定検査までの不安が長く続きます。COATE法の検証では、1,129例中77例が陽性となり、そのうち70例が確定診断で確認されました(陽性的中率に換算すると約91%)[1]。それでも7例は偽陽性で、陽性=確定ではありません。陽性のときは必ず羊水検査・絨毛検査で確かめます。

5-3. 1回の採血で幅広い異常を調べられる

染色体の数の異常、微小欠失症候群、単一遺伝子疾患を同じ検体でまとめて調べられます。軟骨無形成症のように、妊娠初期の超音波では形の変化がまだはっきりしない病気もあるため、早い時期から画像検査を補う情報になりうると考えられています[1]。ただし、どの病気を対象に含めるべきか、浸透率(変異があっても症状が出ない人がいること)をどう説明するかなど、研究者自身も今後の検討課題をあげています。

💡 COATE法の精度を支える4つの要素

① 偏りの少ない捕獲:標準型・変異型のどちらにも同じようにくっつくプローブで、アレル比の測定誤差を減らす

② 量と型の統合解析:リード数とアレル比という独立した2つの証拠を合わせて判定する

③ 断片長と連鎖SNPの利用:赤ちゃん由来のDNA断片が短いことや、近くのSNPのつながりを手がかりに、母体由来の変化を除外する

④ 判定前の品質管理:胎児分画やリード数が基準に届かない検体、双胎や母体CNVのある検体を先に見つける

6. NIPT技術比較表

📋 4つの方式の比較

項目 全ゲノム法 ターゲット法 SNP法 COATE法
何を数えるか ゲノム全体のリード数 標的領域のリード数 SNPのアレル比 リード数+アレル比+連鎖SNP+断片長
主な対象 全染色体の数の異常、大きな欠失・重複 21・18・13トリソミー中心 主要トリソミー、性染色体、一部の微小欠失、三倍体 主要トリソミー、性染色体、微小欠失・重複、単一遺伝子疾患
微小欠失 小さいものは苦手 設計に含めた領域のみ 22q11.2の更新アルゴリズムで感度83.3%・陽性的中率52.6%[3] 検証で8例すべて検出[1]
単一遺伝子 対象外 原則対象外 限られる de novo・父由来の顕性遺伝の変異を検出
苦手な状況 母体CNV、胎盤性モザイク、低い胎児分画 アレルの捕獲の偏り、低い胎児分画 母体のAOH、低い胎児分画 低い胎児分画(判定基準は検査設計により異なる)、胎盤性モザイク、潜性遺伝の病気

※どの方式も、胎盤と赤ちゃんの染色体が食い違う「胎盤性モザイク」による偽陽性・偽陰性は避けられません。精度は方式だけでなく、検査会社ごとの品質管理や読み取りの深さにも左右されます。

⚠️ 注意点

どの方式のNIPTでも、陽性のときは羊水検査・絨毛検査による確定が必要です。また、陰性でも、NIPTの対象外の病気(多くの形態異常、潜性遺伝の病気、知的障害や自閉症の原因の多くなど)は否定できません。検査の前に、何がわかり何がわからないかを専門医から説明を受けることが大切です。

陽性的中率が低いと「無駄な確定検査」が増える? ― がん検診と比べて考える

方式を比べると、微小欠失のように、陽性的中率が50%前後と報告されている項目があることがわかります[3]。そこで出てくるのが、「陽性的中率が低い検査は、体に負担のかかる確定検査を無駄に増やす」という批判です。この点を、同じスクリーニング検査であるがん検診と比べて考えてみます。

がん検診も、陽性的中率は数%です。胸部X線で行う日本の自治体の肺がん検診では、国が2008年の報告書で示した陽性反応適中度(要精密検査とされた人のうち、実際に肺がんだった人の割合)の許容値は「1.3%以上」です[8]。米国の大規模試験(NLST)では、低線量CTで2.4〜5.2%、胸部X線で4.4〜6.7%でした[9]。それでも低線量CTによる検診は、肺がんによる死亡を減らすことが示されています[10]。

X線は「怪しい」と判定する人がCTより少ないぶん、陽性的中率は少し高くなりますが、そのかわり見逃しも多くなります。CTは拾い上げを広げたぶん陽性的中率が下がりましたが、死亡を減らしました。「陽性的中率が低い=悪い検査」とは言えません。

がん検診の精密検査にも、危険はあります。米国の診療データ(保険請求データ)を使った調査では、肺の異常を調べる精密検査を受けた人は、受けなかった人に比べて、重い合併症が針生検で4.0%、気管支鏡で13.4%、胸部手術で11.3%多く起きていました[11]。出生前検査の確定検査については、英国の医療施設で行われた研究(1施設のコホート研究)で、絨毛検査・羊水検査を受けた人と受けなかった人のあいだに、流産の割合の統計的な差は見られませんでした(絨毛検査0.29%、羊水検査−0.36%で、どちらも統計的な差なし)[12]。研究の規模や方法が違うので、数字をそのまま並べて比べることはできません。ただ、「陽性的中率が低いと、体に負担のかかる確定検査が増える」という心配は、少なくとも肺がん検診にも同じように当てはまり、がん検診ではそれでも検診が行われています。

それでも出生前検査で慎重な意見が出るのには、理由があります。

  • ➤検査の結果が「妊娠を続けるかどうか」の判断に直結する
  • ➤いちばん大きな危険は、陽性のあと確定検査を受けずに妊娠をやめる選択をしてしまうこと。陽性的中率が低いと、本当は病気のない赤ちゃんが失われるおそれがある
  • ➤結果を待つ間の不安が大きく、判断できる期間にも限りがある
  • ➤微小欠失などは症状の幅が広く、わかっても見通しが立てにくいことがある。学会によって考え方も分かれている

一方で、陽性的中率だけを見ると「外れの陽性」ばかりに目が向きますが、拾い上げなければ、本当に病気がある赤ちゃんについて、ご家族が生まれる前に知り、出産する施設や生まれてすぐの治療を準備するか、妊娠を続けるかどうかを考える機会そのものがなくなります。見逃しにも、外れの陽性と同じように重い結果があります。実際に、先天的な病気が生まれる前にわかったお母さんは、生まれてから初めて知ったお母さんに比べて、心の面の生活の質が高かったという報告があります[13]。また、重い心臓の病気では、生まれる前にわかっていると生まれてすぐの治療を早く始められ、大血管転位症では手術の前後に亡くなる赤ちゃんが減ったと報告されています[14]。ただし、[13]は小規模な研究で、生まれる前に知ることで出産までの不安やつらさが増えるという報告もあり、研究によって結果は分かれています。

弱点は検査そのものではなく、「確定検査で確かめる前に決めてしまうこと」にあります。COATE法のように陽性的中率を高める工夫をした方式でも、この前提は変わりません。そのため当院では、陽性になったら院内で確定検査(絨毛検査・羊水検査)を受けられ、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出る体制をとっています。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料で、確定検査の費用は互助会で補助されます(補助の上限はありません)。

💡 当院の考え方

NIPTは、可能性のある赤ちゃんを見逃さずに拾い上げるための検査です。陽性になったときに大切なのは、確定検査で本当にそうかを確かめてから考えることです。当院では、その確定検査まで院内で受けられます。

7. ミネルバクリニックのCOATE法NIPT

ミネルバクリニックではCOATE法によるNIPTを導入しており、現行プランではダイヤモンドプランでCOATE法を採用しています。インペリアルプランは検査範囲を広く設定した別プランです。

  • ➤単一遺伝子(de novo変異):ダイヤモンドプランは56遺伝子、インペリアルプランは最大155遺伝子・202疾患
  • ➤微小欠失・重複:ダイヤモンドプランは微小欠失12種類13疾患、インペリアルプランは92種類の微小欠失・重複
  • ➤確定検査:羊水検査・絨毛検査を院内で行い、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます

プランごとの検査範囲と料金はミネルバクリニックのNIPT料金をご覧ください。父親の年齢とde novo変異の関係については父親のリスクをNIPTでで解説しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【方式の名前より「何を、どこまで」を見てほしい】

COATE法のような技術は、シークエンサーを買えばすぐにできるものではありません。プローブの設計、解析のアルゴリズム、確定検査と照らし合わせた大規模な検証の積み重ねがあって、はじめて成り立つものです。

ただ、どれほど優れた方式でも、NIPTはスクリーニング検査です。だからこそ私は、検査を選ぶときには方式の名前だけで判断せず、「何を、どこまで調べ、陽性のときに誰がどう支えてくれるのか」まで確かめてほしいと考えています。精度の高い検査と、結果の意味を一緒に考える体制は、両方そろってはじめて意味を持つと考えています。

8. 三大トリソミーのほかにも調べる意味がある理由 ― 行動の問題と22q11.2欠失症候群

COATE法をはじめ、方式が進んだことで、NIPTで調べられる病気は三大トリソミーの外へ広がりました。では、広く調べることにはどんな意味があるのでしょうか。2つの点からお伝えします。

8-1. 子育てのストレスを左右するのは「行動の問題」

知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高いと報告されています[15]。そのストレスを最も強く左右していたのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷といった行動の問題と、睡眠の問題でした[15]。病気ごとの特徴も調べられていて、アンジェルマン症候群やスミス・マゲニス症候群では他人への攻撃的な行動が、コルネリア・デ・ランゲ症候群やスミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群では自傷が多いことが分かっています[16]。

こうした病気は、どれも当院のNIPTで調べられます。スミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群はスタンダードプランを含むすべてのプランで、コルネリア・デ・ランゲ症候群はダイヤモンドプランとインペリアルプランで、ウィリアムズ症候群はインペリアルプランと双子マックスプランで対象になります。ダウン症候群だけを調べればよいのか、方式やプランを選ぶ前に考えていただきたい点です。

8-2. 22q11.2欠失症候群を調べる意味 ― 米国の学会の提案

22q11.2欠失症候群は、この記事の方式の比較にも出てきた病気です。妊娠中の赤ちゃんのおよそ1,000人に1人にみられ、微小欠失症候群の中で最も多い病気です[17]。ほとんどは親から受け継ぐのではなく赤ちゃんに新しく起こる変化で、母親の年齢とは関係なく起こります[17]。伴うことがある症状は、心臓の病気、免疫の働きの低下、低カルシウム血症、口蓋裂、発達の遅れなどです。自閉スペクトラム症を伴う割合も、一般より高いと報告されています[17][18]。

米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)は、年齢にかかわらずすべての妊婦さんに、22q11.2欠失症候群のNIPTを提供することを提案しています[19]。一方、米国母体胎児医学会(SMFM)は、22q11.2欠失を調べる場合は検査前に十分な説明を受けて選ぶことを求めています。学会によって考え方が分かれる点だからこそ、検査前の遺伝カウンセリングが大切です。

生まれる前に分かっていれば、出産する施設の選び方や、生まれてすぐの心臓・カルシウム・免疫の検査など、赤ちゃんを迎える準備ができます。当院では、スタンダードプランから22q11.2欠失症候群を調べられます。ただし、微小欠失の陽性的中率は染色体の数の異常より低めです。陽性のときは、必ず確定検査で確かめます。

9. ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

方式の違いは、そのまま「何を、どこまで調べられるか」の違いです。「ダウン症候群だけが心配」という方は少なくありませんが、出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわるものです。前の章でお伝えしたとおり、ご家族の子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった「行動の問題」だと分かっています[15]。こうした行動の問題を伴いやすい病気には、ダウン症候群ではなく、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く含まれます[15][16]。三大トリソミーだけを調べる検査では、こうした病気は対象に入りません。

出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。「安さ」だけで選んで大丈夫でしょうか。ここでは、検査の費用を「調べられる病気の数」で割って考えてみます。

たとえば、三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、1つの病気あたりは約3万3千円です。当院のインペリアルプランが調べるのは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患です。性染色体の数の異常も含め、数えられる病気だけで320あり、1つの病気あたりは約1,700円になります。このほか、5Mbを超える欠失・重複はすべての染色体が対象なので、実際には数えきれないほどの変化を調べています。COATE法を採用しているダイヤモンドプランも含めて、プランごとに並べると次のようになります。

プラン 主に調べる範囲 数えた病気の数 1つの病気あたり
三大トリソミーだけを調べる検査
(仮に10万円とした場合)
13・18・21トリソミー 3 約33,333円
スタンダード
(220,000円)
13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 14 約15,714円
プレミアム
(264,000円)
13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 23 約11,478円
ダイヤモンド
(407,000円)
プレミアムの範囲+単一遺伝子56 79 約5,152円
双子マックス
(440,000円)
全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 114+α 約3,860円
インペリアル
(550,000円)
全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 320+α 約1,719円

※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています(性染色体を調べるのはスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアル。双子マックスは調べません)。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。※『三大トリソミーだけを調べる検査』は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。

各プランの詳しい内容は、それぞれのページでご案内しています。

ただし、調べる病気の数が多いほど良い検査、というわけではありません。調べる範囲が広がると、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。だからこそ、検査前の遺伝カウンセリングでプランを選びます。どこまで調べたいかは、ご家族によって違います。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。

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10. まとめ:次世代NIPTの可能性

COATE法は、量と型を同時に読み、母体側の要因を先に見つけることで、従来の方式が苦手だった微小欠失症候群と単一遺伝子疾患まで1回の採血で調べられるようにした技術です。

  • ➤染色体の数の異常:1,129例の検証で、トリソミー54例をすべて検出[1]
  • ➤微小欠失症候群:量と型の両方で確認することで、取りこぼしと母体由来の誤判定を減らす
  • ➤単一遺伝子疾患:構造異常のある胎児で、検出数が61例から98例に増えた[2]
  • ➤限界:特異度は99.3%で偽陽性はゼロではない。陽性なら確定検査、陰性でも対象外の病気は否定できない

出生前検査は、情報を得るための手段です。検査を受けるかどうか、結果をどう受け止めるかに「正解」はなく、それぞれのご家族の状況や価値観にもとづいた選択が尊重されるべきです。どの選択をする場合でも、十分な情報と支援を得られる環境で検討することが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q1. COATE法と従来のNIPTは何が違うのですか?

従来の方式は、リード数(量)かアレル比(型)のどちらかを中心に判定していました。COATE法はアレルの偏りが出にくいプローブで標的を捕まえ、量と型、連鎖SNP、DNA断片の長さを組み合わせて解析します。そのため、母体側の欠失・重複や双胎などの要因を先に見つけたうえで、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで調べられます。

Q2. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

ダウン症候群だけを調べれば大丈夫、とは言えません。方式によって調べられる範囲は違い、三大トリソミーだけを調べる検査ではわからない病気があります。知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高く、ストレスを最も強く左右していたのは知的障害の程度よりも行動の問題でした。当院ではスタンダードプランから22q11.2欠失症候群やプラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群などの微小欠失を、ダイヤモンドプラン(COATE法)とインペリアルプランでは単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、検査前の遺伝カウンセリングで一緒に考えます。

Q3. COATE法の精度はどのくらいですか?

確定検査を受けた1,129例の検証では、トリソミー・微小欠失・単一遺伝子を合わせた感度100%、特異度99.3%でした。リスクの高い妊婦1,090例の前向き研究では、感度98.5%、特異度99.3%と報告されています。いずれも高リスク集団での成績で、偽陽性もゼロではありません。

Q4. COATE法で陽性なら、確定と考えてよいですか?

いいえ。NIPTはどの方式でもスクリーニング検査です。COATE法の検証でも陽性77例のうち7例は偽陽性でした。陽性のときは羊水検査や絨毛検査で確かめる必要があります。ミネルバクリニックでは確定検査を院内で行い、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。

Q5. COATE法で単一遺伝子疾患はすべてわかりますか?

いいえ。対象は、赤ちゃんに新しく生じた変異(de novo変異)や父親から受け継いだ変異で起こる顕性遺伝の病気のうち、検査に含まれている遺伝子に限られます。両親とも保因者のときに起こる潜性遺伝の病気は、NIPTで見分けるのが困難です。妊娠前の保因者検査が向いています。

Q6. ミネルバクリニックでCOATE法を使うのはどのプランですか?

現行プランではダイヤモンドプランでCOATE法を採用しています。ダイヤモンドプランは単一遺伝子56遺伝子と微小欠失12種類13疾患を対象とし、インペリアルプランは別プランとして単一遺伝子最大155遺伝子・202疾患、92種類の微小欠失・重複などを対象とします。詳しくはNIPTの料金ページをご覧ください。

🏥 NIPT(新型出生前診断)のご予約

COATE法のダイヤモンドプランを含め、どのプランにするかは検査前の遺伝カウンセリングで決められます。
陽性の場合も、確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。

参考文献

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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