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肺疾患の遺伝子検査(69遺伝子パネル)|肺の病気は遺伝する?肺線維症・肺気腫・気胸・線毛機能不全の原因をまとめて調べる

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

肺疾患の遺伝子検査(69遺伝子パネル)

肺の病気の一部は、1つの遺伝子の変化が原因で起こり、家族の中でくり返すことがあります。肺疾患の遺伝子検査(69遺伝子パネル)は、肺線維症・間質性肺炎、肺気腫(α1-アンチトリプシン欠乏症)、くり返す気胸、線毛の病気、肺高血圧症、赤ちゃんの呼吸の病気など、遺伝性の肺の病気に関わる69の遺伝子を一度に調べる検査です。原因がわからないまま病院を回る時間を、1回の検査で短くできる可能性があります。日本の未診断疾患イニシアチブ(IRUD)では、全エクソーム解析を終えた5,136家系のうち43.8%で診断が確定しました[1]。全員に診断がつくわけではありませんが、病名がつけば、受けるべき検査・避けたいこと・ご家族にできることが決まります。このページでは、どんな肺の病気が遺伝するのか、この検査で何がわかり、結果のあと何ができるのかを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

肺線維症・間質性肺炎、肺気腫(α1-アンチトリプシン欠乏症)、くり返す気胸、線毛機能不全症候群、嚢胞性線維症、肺高血圧症、赤ちゃんの呼吸の病気など、遺伝性の肺の病気に関わる69遺伝子に、原因となる変化があるかを一度に調べます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

若いうちに肺線維症・肺気腫・肺高血圧症と言われた方、気胸をくり返す方、子どものころから咳・痰・副鼻腔炎・中耳炎をくり返す方、ご家族に同じ肺の病気の方がいる方です。病名がしぼれている場合は、個別の検査のほうが向くこともあります。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、唾液・頬粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、治療の選び方・避けたいこと・ほかの臓器の見張り・ご家族の検査・妊娠の計画につなげられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /

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検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

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1. 肺の病気は遺伝する?遺伝性肺疾患とは

肺の病気の多くは、たばこ・感染・粉じんなど、生まれたあとの要因で起こります。ただし一部には、1つの遺伝子の変化が原因で起こり、親から子へ、きょうだいの間でくり返す「遺伝性肺疾患」があります。このパネルは、そうした肺の病気の原因として知られる69の遺伝子を、まとめて調べる検査です。

遺伝性肺疾患は、症状の出る場所(気道・肺胞・血管・呼吸の調節)も、発症する年齢(生まれてすぐ〜大人になってから)も、遺伝のしかた(常染色体顕性(優性)遺伝・常染色体潜性(劣性)遺伝・X連鎖遺伝)も、病気によって大きく違います。同じ「肺線維症」でも、原因の遺伝子によって、気をつける臓器や、ご家族への影響が変わります。

遺伝が関わっているかもしれないサイン

次のようなときは、遺伝性の肺の病気が隠れていないかを考えるきっかけになります。

  • ●同じ年代の人に比べて、若いうちに肺線維症・間質性肺炎・肺気腫・肺高血圧症と言われた
  • ●たばこを吸っていない、または吸った量のわりに、肺の病気が重い
  • ●気胸を何度もくり返す、または家族にも気胸の人が多い
  • ●子どものころから、湿った咳・痰・副鼻腔炎・中耳炎をくり返している
  • ●肺の病気に加えて、白髪が早い・血球が少ない・肝臓の病気・皮膚や目の色が薄い・腎臓の腫瘍など、ほかの臓器にも変化がある
  • ●親・きょうだい・子どもに、同じ肺の病気の人がいる

肺炎・ぜんそく・COPDと、遺伝性の肺の病気の違い

肺炎そのものは、細菌やウイルスなどによる感染症で、遺伝する病気ではありません。ただ、「肺が弱い」「肺炎をくり返す」という背景に、痰を外へ運ぶしくみ(線毛)の病気や嚢胞性線維症、免疫の病気など、遺伝性の病気が隠れていることがあります。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺気腫の最大の原因は喫煙ですが、α1-アンチトリプシン欠乏症のように、遺伝が関わって肺気腫が早く進む病気もあります。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsは、α1-アンチトリプシン欠乏症の大人では、喫煙がCOPDを早める最大の要因であるとしています[6]。「遺伝かどうか」を知ることは、避けたいことを決める手がかりになります。

2. このパネルで調べる肺の病気

このパネルの69遺伝子は、気道・肺胞・肺の構造・血管・呼吸の調節など、さまざまな肺の病気にまたがっています。主なグループと、病名がしぼれているときの個別の検査は次のとおりです。

🫁 このパネルで調べる主な病気のグループ

グループ 主な病気 病名がしぼれているときの検査
気道(痰を運ぶしくみ) 原発性線毛機能不全症候群(カルタゲナー症候群を含む)、嚢胞性線維症、気管支拡張症 原発性線毛機能不全症候群の遺伝子検査/気管支拡張症の遺伝子検査
肺の線維化 家族性の肺線維症(テロメアの病気・サーファクタントの病気)、ヘルマンスキー・パドラック症候群の肺線維症 テロメア関連肺線維症の遺伝子検査
肺胞(サーファクタント) 先天性肺胞蛋白症・肺サーファクタントの病気、肺胞微石症 肺サーファクタント機能不全症の遺伝子検査
肺の嚢胞・気胸 バート・ホッグ・デュベ症候群、結節性硬化症に伴うリンパ脈管筋腫症(LAM) 嚢胞性肺疾患の遺伝子検査
肺気腫 α1-アンチトリプシン欠乏症、皮膚弛緩症 (このパネル)
肺の血管 肺動脈性肺高血圧症、遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病) 肺動脈性肺高血圧症の遺伝子検査/遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)の遺伝子検査
呼吸の調節 先天性中枢性低換気症候群(ヒルシュスプルング病を伴うことがある) 先天性中枢性低換気症候群の遺伝子検査
全身の病気の一部 ヘルマンスキー・パドラック症候群、神経線維腫症1型、高IgE症候群、SAVI、リジン尿性蛋白不耐症、ニーマン・ピック病など 各ページ(下の表を参照)

※どの遺伝子がどの病気に関わるかは、第5章の表にすべて載せています。

肺線維症・間質性肺炎は遺伝する?

肺線維症(間質性肺炎のうち、肺が硬くなっていくもの)の一部は、家族の中でくり返します。原因として知られるのは、主に「テロメア」を保つ遺伝子と、「肺サーファクタント」をつくる遺伝子です。欧州呼吸器学会は2023年に家族性肺線維症についての声明を出し、どの患者さんが遺伝子の解析と遺伝カウンセリングの恩恵を受けるか、ご家族の検査やスクリーニングをどうするかを整理しています[3]。

テロメアは、染色体の端を守るキャップのような部分です。TERT・TERC・RTEL1・PARN・NAF1・TINF2・DKC1などテロメアを保つ遺伝子の変化では、肺線維症のほか、骨髄の働きの低下(血球が減る)や肝臓の病気が起こることがあります。GeneReviewsでは、先天性角化不全症などのテロメアの病気(テロメア生物学的疾患)で、肺線維症と肝臓の病気はよくみられる合併症とされています[5]。肺に加えて血液・肝臓も見張る必要がある、というのが、テロメアの病気だとわかる意味のひとつです。

SFTPA1・SFTPA2・SFTPCなどのサーファクタントの遺伝子の変化も、大人の肺線維症や間質性肺疾患の原因になります。また、MUC5Bという遺伝子の近くにある、よく見られる変化(rs35705950)は、家族性間質性肺炎と特発性肺線維症のなりやすさと強く関係することが報告されています。この変化は遺伝子の働きを調節する「プロモーター領域」(遺伝子の上流、約3,000塩基のところ)にあります[4]。この検査は、プロモーター領域の多くを調べる対象にしていないため、MUC5Bのこの変化は見つけられません(第6章)。

テロメアの病気をくわしく調べたいときは、テロメア関連肺線維症の遺伝子検査、血液の病気も気になる場合は先天性角化不全症の遺伝子検査や骨髄不全症候群の遺伝子検査もあわせてご覧ください。

肺気腫とα1-アンチトリプシン欠乏症

肺気腫は多くが喫煙によるものですが、SERPINA1遺伝子の変化によるα1-アンチトリプシン欠乏症では、遺伝が関わって肺気腫が早く進むことがあります。α1-アンチトリプシンは、肺の組織を壊す酵素から肺を守るタンパク質です。GeneReviewsでは、この病気は両親から1つずつ受け継いだ変化の組み合わせで決まる遺伝のしかた(常染色体共顕性)とされ、大人では喫煙(受動喫煙を含む)がCOPDを早める最大の要因で、避けるべきものとされています。肝臓の病気のリスクも年齢とともに高くなります[6]。

難病情報センターによると、α1-アンチトリプシン欠乏症は欧米では約5,000人に1人ですが、日本では全国調査で1,000万人あたり2.03〜2.08人と、とても少ない病気です(2026年10月時点で確認)。日本では少ないからこそ、若い肺気腫の原因として思い浮かびにくい病気でもあります。GeneReviewsは、重いα1-アンチトリプシン欠乏症の方のきょうだいには、遺伝子検査を勧めるべきとしています[6]。

くり返す気胸・肺嚢胞と遺伝

気胸をくり返す、肺に薄い壁の袋(嚢胞)がたくさんある、という方の一部には、FLCN遺伝子の変化によるバート・ホッグ・デュベ症候群が隠れています。GeneReviewsによると、この病気は常染色体顕性(優性)遺伝で、肺嚢胞は70〜85%、自然気胸の生涯のリスクは24〜48%、腎細胞がんの生涯のリスクは15〜30%とされています[7]。

この病気だとわかると、肺だけでなく腎臓の見張りが始められます。GeneReviewsは、腎臓の検査はMRI(腹部・骨盤)が最も適しているとし、20歳から毎年行うことを勧めています[7]。腎臓のがんについては、がん診療専門外来のページもご覧ください。

女性で肺の嚢胞が多いときは、TSC1・TSC2遺伝子の変化による結節性硬化症に伴うリンパ脈管筋腫症(LAM)も考えます。GeneReviewsでは、結節性硬化症の女性の約30〜40%にLAMがみられ、18歳を過ぎたら一度、胸のCTで調べることが勧められています[8]。LAMでは、シロリムスを12か月使った臨床試験で、偽薬に比べて肺の働き(1秒量)の低下が止まったと報告されています(薬をやめると、再び低下しました)[9]。気胸と肺嚢胞をしぼって調べるなら、嚢胞性肺疾患の遺伝子検査、結節性硬化症が疑われるなら結節性硬化症の遺伝子検査もあります。

咳・痰・副鼻腔炎をくり返す:線毛機能不全症候群・嚢胞性線維症

気道の表面には「線毛」という小さな毛が生えていて、痰をのどの方へ運んでいます。この線毛が生まれつきうまく動かない病気が、原発性線毛機能不全症候群(PCD)です。GeneReviewsによると、多くは常染色体潜性(劣性)遺伝で、満期で生まれた赤ちゃんの75%以上に生まれてすぐの呼吸の苦しさがあり、乳児期から一年中続く湿った咳、慢性副鼻腔炎、くり返す中耳炎が起こります。内臓の左右が反対になる内臓逆位は40〜50%にみられ、男性では精子の動きが悪くなり子どもを持ちにくくなることが多いとされています[10]。内臓逆位を伴うものはカルタゲナー症候群と呼ばれます。

日本人のPCDでは、DRC1という遺伝子の大きな欠失が最も多い原因と報告されています。原因の遺伝子がわかった方の49%がこの欠失でした[11]。DRC1は、この69遺伝子パネルには入っていません。PCDが疑われる場合は、原発性線毛機能不全症候群の遺伝子検査で調べる遺伝子をご確認ください。内臓逆位が気になる方は、内臓錯位症・完全内臓逆位の遺伝子検査もあります。線毛の病気の全体像はシリオパチー(線毛病)で解説しています。

CFTR遺伝子の変化による嚢胞性線維症は、粘り気の強い痰で気道がつまり、感染をくり返す病気で、膵臓の働きの低下も起こります。難病情報センターによると、日本では出生約60万人に1人のまれな病気です(2026年10月時点で確認)。CFTRの変化は、男性の先天性両側精管欠損症の原因にもなります。CFTRの働きを助ける薬についてはCFTRモジュレーターのページで解説しています。気管支拡張症の原因を広く調べたいときは、気管支拡張症の遺伝子検査もご覧ください。

肺高血圧症の遺伝

肺の動脈の血圧が高くなる肺動脈性肺高血圧症(PAH)の一部は、遺伝します。最も多い原因はBMPR2遺伝子の変化です。2019年の総説では、家族に肺動脈性肺高血圧症の人がいる家系の約70〜80%、家族歴のない特発性の10〜20%がBMPR2の変化によるとされています。ただし、変化をもっていても発症しない人が多く、発症する割合(浸透率)は男性で約14%、女性で約42%と報告されています[12]。

欧州心臓病学会・欧州呼吸器学会の2022年の診療ガイドラインは、肺動脈性肺高血圧症の原因となる変化が見つかった方と、遺伝性肺動脈性肺高血圧症の患者さんの第一度近親者(親・きょうだい・子)には、毎年のスクリーニングを勧めています[13]。つまり、原因がわかれば、症状のないご家族が早く見張りを始められます。病気の解説は肺動脈性肺高血圧症(PAH)をご覧ください。

このパネルで調べる肺動脈性肺高血圧症の遺伝子は、BMPR2とSMAD9です。遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)の原因であるENG・ACVRL1も入っています。肺動脈性肺高血圧症とわかっている場合は、肺動脈性肺高血圧症の遺伝子検査のほうが向いていることがあります。オスラー病が疑われる場合は遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)の遺伝子検査があります。

赤ちゃん・子どもの呼吸の病気

肺胞(空気が入る小さな袋)がつぶれないように内側をおおう「サーファクタント」がうまくつくれない病気は、生まれてすぐの重い呼吸の障害から、大きくなってからの肺線維症まで、さまざまな形で現れます。原因の遺伝子によって遺伝のしかたが違うことも報告されています[17]。ABCA3・SFTPB・SFTPC・CSF2RA・CSF2RB・NKX2-1が、先天性肺胞蛋白症(遺伝性サーファクタント機能障害)の原因として知られています。詳しくは肺サーファクタント機能不全症の遺伝子検査をご覧ください。

肺胞の中にカルシウムとリンの小さな石がたまる肺胞微石症は、SLC34A2遺伝子による常染色体潜性(劣性)遺伝の病気です。2023年の系統的レビューでは、遺伝子検査を受けたほぼすべての患者さんにSLC34A2の変化が見つかっており、確立した根治的な薬物療法はなく、進行例では肺移植が治療選択肢となります[16]。

眠ると呼吸が浅く止まりやすくなる先天性中枢性低換気症候群(CCHS)は、PHOX2B遺伝子の変化で起こります。GeneReviewsによると、PHOX2Bの中の同じ配列のくり返し(ポリアラニン)が伸びる変化を狙った解析で約90〜92%、配列を読む解析で約8〜10%の方の原因が見つかります[15]。この69遺伝子パネルは、くり返し配列の伸長を見つけられません(第6章)。CCHSが疑われる場合は、先天性中枢性低換気症候群の遺伝子検査をご覧ください。CCHSに伴うことがあるヒルシュスプルング病(ヒルシュスプルング病)に関わるRET・GDNF・EDN3も、このパネルに入っています。

肺の症状が全身の病気の一部のとき

肺の病気が、全身に変化が出る遺伝性の病気の一部として現れることもあります。代表的なのが、皮膚・髪・目の色が薄く、出血しやすいヘルマンスキー・パドラック症候群です。GeneReviewsによると常染色体潜性(劣性)遺伝で、肺線維症が起こるのはHPS1・AP3B1(ヘルマンスキー・パドラック症候群2型)・HPS4の型で、症状は多くが30代で始まるとされています[14]。詳しくはヘルマンスキー・パドラック症候群の遺伝子検査をご覧ください。

このほか、神経線維腫症1型(NF1)、感染をくり返す高IgE症候群(STAT3)、乳児期に発症し肺にも病変が出ることのあるSAVI(STING関連乳児発症血管症)(STING1、旧名TMEM173)、リジン尿性蛋白不耐症(SLC7A7)、ニーマン・ピック病A型・B型(SMPD1)なども、このパネルで調べます。関連する検査に神経線維腫症の遺伝子検査・高IgE症候群の遺伝子検査があります。

3. どの検査を選ぶ?症状・検査の結果からの選び分け

病名や所見がしぼれているなら個別の検査、肺の病気の型がまだしぼれない・いくつかの型にまたがるなら、このパネルが向いています。比べる相手は検査の種類です。迷ったら、遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

🔍 症状・検査の結果に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
肺の病気が遺伝性らしいが、型がしぼれない/いくつかの型にまたがる このページの検査(肺疾患の遺伝子検査・69遺伝子)
子どものころから湿った咳・副鼻腔炎・中耳炎、内臓逆位 原発性線毛機能不全症候群の遺伝子検査(日本人に多いDRC1はこのパネルにない)
気管支拡張症の原因を調べたい 気管支拡張症の遺伝子検査
気胸をくり返す・肺嚢胞が多い 嚢胞性肺疾患の遺伝子検査
肺動脈性肺高血圧症と診断された 肺動脈性肺高血圧症の遺伝子検査
肺線維症に、白髪が早い・血球が少ない・肝臓の病気が重なる テロメア関連肺線維症の遺伝子検査/先天性角化不全症の遺伝子検査
生まれてすぐの呼吸の障害、先天性肺胞蛋白症 肺サーファクタント機能不全症の遺伝子検査
眠ると呼吸が浅くなる(CCHSが疑われる) 先天性中枢性低換気症候群の遺伝子検査(くり返し配列の伸長はこのパネルで見つからない)
オスラー病(遺伝性出血性毛細血管拡張症)が疑われる 遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)の遺伝子検査
感染をくり返し、免疫の病気が疑われる 包括的原発性免疫不全症の遺伝子検査
肺以外の症状も多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)

※どの検査が合うかは、症状・画像・ご家族の情報で変わります。

4. どんな人がこの検査を受けるとよいか

病名がつくと、次の一手が決まります。α1-アンチトリプシン欠乏症なら禁煙と肝臓の見張り、バート・ホッグ・デュベ症候群なら腎臓のMRI、テロメアの病気なら血液と肝臓の見張り、肺動脈性肺高血圧症ならご家族のスクリーニング、というように、原因の遺伝子によって次にすることが変わります。先天異常や知的障害のあるお子さんを対象にした米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の系統的レビューでも、エクソーム・ゲノム検査の結果として最も多く報告されたのは、診療方針や子どもを持つことについての判断の変化でした[2]。

  • ●原因のわからない肺線維症・間質性肺炎・肺気腫・肺高血圧症があり、とくに若いうちに見つかった方
  • ●気胸をくり返す方、肺に嚢胞が多いと言われた方
  • ●子どものころから湿った咳・痰・副鼻腔炎・中耳炎をくり返す方、気管支拡張症がある方
  • ●肺の病気に加えて、血液・肝臓・皮膚・目・腎臓などにも変化がある方
  • ●ご家族に肺の病気の人が多く、ご自身やお子さんへの影響を知りたい方
  • ●ご家族ですでに原因の遺伝子がわかっていて、ご自身も持っているか知りたい方
  • ●ほかの検査で原因がわからなかった方

「自分もなるかもしれない」という不安を抱えながら暮らしている方もいます。ご家族の原因の変化を受け継いでいないとわかれば、その病気について、ご家族と同じ確率を心配しなくてよくなります。受け継いでいるとわかった場合も、見張り・避けたいこと・治療の準備を始められます。知らないでいることも、同じように選べます。

院長は、「遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。」と考えています。見た目や家族歴だけでは判断できないことがあるため、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

受けなくてよい場合・別の検査が向いている場合

たばこをたくさん吸ってきた方の中高年のCOPDのように、遺伝以外の原因で説明がつく場合は、遺伝子検査を急ぐ必要がないことがあります。病名がしぼれている場合は第3章の個別の検査、肺以外の症状が多い場合は全エクソーム検査、CCHSや日本人に多いPCDの原因(DRC1)が疑われる場合は、それぞれの検査ページをご確認ください。

\ 生まれ持った遺伝子は一生変わらない。一度知れば、この先ずっと使える情報に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

遺伝カウンセリングから、絨毛検査・羊水検査による出生前診断まで、院内で続けて受けられます。

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5. 調べる69遺伝子と、それぞれでわかる病気

この検査では、遺伝性肺疾患に関わる69の遺伝子を一度に調べます。病名と遺伝のしかたは、遺伝性疾患のデータベースOMIMの登録にもとづいています(2026年10月時点で確認)。台帳に解説ページがある遺伝子・病気にはリンクを付けています。

🧬 肺疾患の遺伝子検査で調べる69遺伝子

グループ 遺伝子 関係する病気(OMIM) 遺伝のしかた
気道 DNAI1 原発性線毛機能不全症1(カルタゲナー症候群) 常染色体潜性(劣性)
気道 DNAH5 原発性線毛機能不全症3(内臓逆位を伴うことがある) 常染色体潜性(劣性)
気道 DNAI2 原発性線毛機能不全症9 常染色体潜性(劣性)
気道 CCDC39 原発性線毛機能不全症14 常染色体潜性(劣性)
気道 CCDC40 原発性線毛機能不全症15 常染色体潜性(劣性)
気道 DNAL1 原発性線毛機能不全症16 常染色体潜性(劣性)
気道 DNAAF1 原発性線毛機能不全症13 常染色体潜性(劣性)
気道 DNAAF2 原発性線毛機能不全症10 常染色体潜性(劣性)
気道 DNAH11 原発性線毛機能不全症7 常染色体潜性(劣性)
気道 NME8 原発性線毛機能不全症6 常染色体潜性(劣性)
気道 RSPH4A 原発性線毛機能不全症11 常染色体潜性(劣性)
気道 RSPH9 原発性線毛機能不全症12 常染色体潜性(劣性)
気道 CFTR 嚢胞性線維症/先天性両側精管欠損症(以上常染色体潜性(劣性))/遺伝性膵炎・気管支拡張症(汗の塩分が高いことがある)1型(以上常染色体顕性(優性)) 病気による
気道 SCNN1A 偽性低アルドステロン症1型(常染色体潜性(劣性))/気管支拡張症(汗の塩分が高いことがある)2型・リドル症候群3型(常染色体顕性(優性)) 病気による
気道 SCNN1B 偽性低アルドステロン症1B2型(常染色体潜性(劣性))/気管支拡張症(汗の塩分が高いことがある)1型・リドル症候群1型(常染色体顕性(優性)) 病気による
気道 SCNN1G 偽性低アルドステロン症1B3型(常染色体潜性(劣性))/気管支拡張症(汗の塩分が高いことがある)3型・リドル症候群2型(常染色体顕性(優性)) 病気による
肺胞・サーファクタント ABCA3 肺サーファクタント代謝異常症3型(先天性肺胞蛋白症) 常染色体潜性(劣性)
肺胞・サーファクタント SFTPB 肺サーファクタント代謝異常症1型 常染色体潜性(劣性)
肺胞・サーファクタント SFTPC 肺サーファクタント代謝異常症2型/特発性肺線維症 常染色体顕性(優性)
肺胞・サーファクタント CSF2RA 肺サーファクタント代謝異常症4型(先天性肺胞蛋白症) 偽常染色体領域の潜性遺伝
肺胞・サーファクタント CSF2RB 肺サーファクタント代謝異常症5型(先天性肺胞蛋白症) 常染色体潜性(劣性)
肺胞・サーファクタント NKX2-1 舞踏運動・甲状腺機能低下・新生児呼吸障害(脳・肺・甲状腺症候群)/良性遺伝性舞踏病/非髄様甲状腺がん1 常染色体顕性(優性)
肺胞・サーファクタント FOXF1 肺静脈の走行異常を伴う肺胞毛細血管異形成 常染色体顕性(優性)
肺胞・サーファクタント SLC34A2 肺胞微石症 常染色体潜性(劣性)
肺線維症・テロメア TERT 肺線維症・骨髄不全(テロメア関連)1型/先天性角化不全症/特発性肺線維症/再生不良性貧血 ほか 病気による(顕性が多く、潜性の型もある)
肺線維症・テロメア TERC 先天性角化不全症(顕性1型)/肺線維症・骨髄不全(テロメア関連)2型/特発性肺線維症 常染色体顕性(優性)
肺線維症・テロメア RTEL1 先天性角化不全症/肺線維症・骨髄不全(テロメア関連)3型 病気による(顕性・潜性)
肺線維症・テロメア PARN 先天性角化不全症(潜性6型)/肺線維症・骨髄不全(テロメア関連)4型(顕性) 病気による
肺線維症・テロメア NAF1 肺線維症・骨髄不全(テロメア関連)7型 常染色体顕性(優性)
肺線維症・テロメア TINF2 先天性角化不全症(顕性3型)/レベス症候群 常染色体顕性(優性)
肺線維症・テロメア DKC1 先天性角化不全症(X連鎖)/白内障・難聴・ネフローゼ症候群・腸炎1 X連鎖
肺線維症・テロメア SFTPA1 間質性肺疾患1 常染色体顕性(優性)
肺線維症・テロメア SFTPA2 特発性肺線維症 常染色体顕性(優性)
肺線維症・テロメア MUC5B 特発性肺線維症(なりやすさ。主な変化はプロモーター領域にあり、この検査では見つけられない) なりやすさに関わる
肺線維症・テロメア FAM111B 腱の拘縮・筋症・肺線維症を伴う遺伝性線維化性多形皮膚萎縮症 常染色体顕性(優性)
肺気腫・結合組織 SERPINA1 α1-アンチトリプシン欠乏症 常染色体共顕性
肺気腫・結合組織 ELN 常染色体顕性皮膚弛緩症1型/大動脈弁上狭窄症(ウィリアムズ症候群の欠失範囲に含まれる) 常染色体顕性(優性)
肺気腫・結合組織 FBLN5 常染色体潜性皮膚弛緩症1A型(常染色体潜性(劣性))/常染色体顕性皮膚弛緩症2型・加齢黄斑変性3・シャルコー・マリー・トゥース病1H型(常染色体顕性(優性)) 病気による
肺気腫・結合組織 LTBP4 常染色体潜性皮膚弛緩症1C型 常染色体潜性(劣性)
肺気腫・結合組織 EFEMP2 常染色体潜性皮膚弛緩症1B型 常染色体潜性(劣性)
嚢胞・気胸 FLCN バート・ホッグ・デュベ症候群/原発性自然気胸 常染色体顕性(優性)
嚢胞・気胸 TSC1 結節性硬化症1型(リンパ脈管筋腫症を伴うことがある) 常染色体顕性(優性)
嚢胞・気胸 TSC2 結節性硬化症2型(リンパ脈管筋腫症を伴うことがある) 常染色体顕性(優性)
肺の血管 BMPR2 肺動脈性肺高血圧症(原発性肺高血圧症1)/肺静脈閉塞症1 常染色体顕性(優性)(発症しない人もいる)
肺の血管 SMAD9 肺動脈性肺高血圧症(原発性肺高血圧症2) 常染色体顕性(優性)(発症しない人もいる)
肺の血管 ENG 遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)1型 常染色体顕性(優性)
肺の血管 ACVRL1 遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)2型 常染色体顕性(優性)
呼吸の調節・腸 PHOX2B 先天性中枢性低換気症候群1(ヒルシュスプルング病を伴うことがある)/神経芽腫(なりやすさ) 常染色体顕性(優性)
呼吸の調節・腸 RET ヒルシュスプルング病(なりやすさ)/多発性内分泌腫瘍症2A型・2B型/家族性甲状腺髄様がん 常染色体顕性(優性)
呼吸の調節・腸 GDNF ヒルシュスプルング病(なりやすさ) 常染色体顕性(優性)
呼吸の調節・腸 EDN3 ヒルシュスプルング病(なりやすさ)/ワールデンブルグ症候群4B型 病気による(顕性・潜性)
呼吸の調節・腸 ASCL1 病気との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病気の登録なし) OMIMに登録なし
呼吸の調節・腸 BDNF 病気との関係を研究中の遺伝子(OMIMに病気の登録なし) OMIMに登録なし
全身の病気 HPS1 ヘルマンスキー・パドラック症候群1型(肺線維症を起こす型) 常染色体潜性(劣性)
全身の病気 AP3B1 ヘルマンスキー・パドラック症候群2型(肺線維症を起こす型) 常染色体潜性(劣性)
全身の病気 HPS3 ヘルマンスキー・パドラック症候群3型 常染色体潜性(劣性)
全身の病気 HPS4 ヘルマンスキー・パドラック症候群4型(肺線維症を起こす型) 常染色体潜性(劣性)
全身の病気 HPS5 ヘルマンスキー・パドラック症候群5型 常染色体潜性(劣性)
全身の病気 HPS6 ヘルマンスキー・パドラック症候群6型 常染色体潜性(劣性)
全身の病気 DTNBP1 ヘルマンスキー・パドラック症候群7型 常染色体潜性(劣性)
全身の病気 BLOC1S3 ヘルマンスキー・パドラック症候群8型 常染色体潜性(劣性)
全身の病気 BLOC1S6 ヘルマンスキー・パドラック症候群9型 常染色体潜性(劣性)
全身の病気 NF1 神経線維腫症1型/神経線維腫症-ヌーナン症候群 ほか 常染色体顕性(優性)
全身の病気 STAT3 高IgE症候群/乳児発症多臓器自己免疫疾患1 常染色体顕性(優性)
全身の病気 STING1(旧名TMEM173) SAVI(STING関連乳児発症血管症) 常染色体顕性(優性)
全身の病気 SLC7A7 リジン尿性蛋白不耐症 常染色体潜性(劣性)
全身の病気 SMPD1 ニーマン・ピック病A型・B型 常染色体潜性(劣性)
全身の病気 ITGA3 間質性肺疾患・ネフローゼ症候群・表皮水疱症(先天性) 常染色体潜性(劣性)
全身の病気 STRA6 症候性小眼球症9型(肺の低形成を伴うことがある) 常染色体潜性(劣性)

※病名・遺伝のしかたはOMIMの登録(HPOのOMIM由来のデータで確認)による。ASCL1とBDNFは、OMIMに病気の登録がありません。1つの遺伝子が複数の病気に関わる場合、病気ごとに遺伝のしかたが違うことがあります。

NIPT(新型出生前診断)でも調べられる遺伝子

この69遺伝子のうち、TSC1・TSC2・STAT3は、当院のNIPTのダイヤモンドプランとインペリアルプランでも調べられます。NF1は、インペリアルプランで調べられます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。そのほかの65遺伝子は、当院のNIPTでは調べられません。NIPTの詳しい内容はNIPTのトップページをご覧ください。

6. 検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、69遺伝子の、タンパク質の設計図になる部分(コード領域)とその境目(スプライス部位)にある小さな変化です。次世代シークエンサーで読み、読み取りの質が基準に届かない変化は、別の方法(サンガー法)でもう一度確かめます。調べる場所の99%以上を、20回以上くり返し読んでいます。どの遺伝子検査にも限界があり、この検査では次のことがわかりません。

  • ●くり返し配列の伸長:3塩基や6塩基のくり返しが伸びる変化は見つけられません。先天性中枢性低換気症候群(PHOX2B)の主な原因はこのタイプです[15]。
  • ●プロモーター領域・深いイントロンの変化:遺伝子の働きを調節する領域の多くや、境目から20塩基以上離れた場所の変化は調べていません。肺線維症のなりやすさに関わるMUC5Bの変化(rs35705950)はプロモーター領域にあるため、見つけられません[4]。
  • ●大きな欠失・重複:遺伝子まるごとの欠失・重複(頬粘膜と血液の検体)と、2つ以上続くエクソンの欠失・重複(血液の検体のみ)は見つけられますが、1つのエクソンだけの欠失・重複はふつう検出されません。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)で確かめてから報告します。
  • ●そのほかの構造の変化・モザイク:染色体の転座・逆位、体の一部の細胞だけにある変化(モザイク)、がんの組織の変化は調べる対象ではありません。
  • ●調べていない遺伝子:このパネルにない遺伝子(例:日本人のPCDに多いDRC1)の変化はわかりません。肺の病気には、まだ見つかっていない原因も多く残っています。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知識では判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、遺伝性の肺の病気ではないとは言い切れません。症状・画像・肺の機能の検査にもとづく診療が引き続き大切です。

調べた目的とは別の病気の原因が見つかること(二次的所見)の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

7. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。あなたの1回の検査結果は、ご両親・きょうだい・お子さんが、ご自身のことを考える手がかりにもなります。

病的変異が見つかったら、次にできること

①ご本人(症状がある方):病名が決まり、何を見張り、何を避けるかが決まります。たとえば、α1-アンチトリプシン欠乏症なら禁煙(受動喫煙も避ける)と肝臓の見張り[6]、バート・ホッグ・デュベ症候群なら20歳からの毎年の腎臓のMRI[7]、テロメアの病気なら血液と肝臓の見張り[5]、結節性硬化症の女性なら胸のCTによるLAMの確認[8]です。治療や見張りは、呼吸器内科・循環器内科・小児科などの専門の医療機関で受けていただきます。指定難病などの制度を使うときにも、原因が確定していることが手がかりになります(第8章)。男性で線毛の病気やCFTRの変化があり、子どもを持ちにくい場合は、男性不妊症の遺伝子検査のページも参考になります。

②症状のないご本人(家族歴で受けた方・保因者だった方):顕性遺伝の病気で変化があった場合、発症しない人もいますが(肺動脈性肺高血圧症など)、見張りを始められます。欧州のガイドラインは、肺動脈性肺高血圧症の原因となる変化をもつ方に毎年のスクリーニングを勧めています[13]。潜性遺伝の病気で変化を1つだけもつ保因者だった場合、ご自身が発症することはふつうありませんが、パートナーも同じ遺伝子の保因者かどうかで、お子さんへの確率が変わります。

お子さんへの確率は、遺伝のしかたで決まります。常染色体顕性(優性)遺伝ではお子さん1人あたり2分の1、常染色体潜性(劣性)遺伝ではご夫婦とも保因者の場合にお子さん1人あたり4分の1、X連鎖遺伝ではお母さんが保因者かどうかと、お子さんの性別で変わります。ご家族に症状のない方がいても、新しく起きた変化(新生突然変異)や、親の卵子・精子のもとになる細胞にだけ変化がある場合(性腺モザイク)もあります。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。

③子どもを持つときの選択肢:ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。羊水検査・絨毛検査は院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針をふまえて個別に考えますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。TSC1・TSC2・STAT3・NF1の病気は、当院のNIPTでも調べられるプランがあります(第5章)。

日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-M(着床前遺伝学的検査)が行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは遺伝性疾患をお持ちで海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。もちろん、何も検査をせずに妊娠・出産することも、そのまま選べる選択肢です。

④ご家族:ご家族の中で原因の変化がわかっていると、きょうだい・親・いとこなどは、同じ場所をピンポイントで調べることで、受け継いでいるかを確かめられます。症状のない方の検査は、ご本人の同意のもとで行います。

⑤当院でのその後:結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、次に何をするかを一緒に考えます。遺伝カウンセリング料は30分22,000円(税込)、出生前診断の遺伝カウンセリングは30分33,000円(税込)です。

陰性・VUSだったとき

原因の変化が見つからなかった場合も、遺伝性の肺の病気が否定されたわけではありません(第6章)。調べていない遺伝子やくり返し配列の変化が疑われる場合は、個別の検査や全エクソーム検査(WES)を考えます。VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。

遺伝性の肺の病気と結婚・妊娠

ご自身やご家族の病気を理由に、結婚や妊娠に不安を感じる方もいます。遺伝の確率は、病気とご家族ごとに違い、検査で「わかること」があります。ご自身が変化をもっているか、パートナーが同じ遺伝子の保因者か、お子さんへの確率はどれくらいか、を知ったうえで、出生前診断なども含めて選べます。

妊娠前のカップルには、拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子)があります。このパネルの潜性遺伝の遺伝子のうち、CFTR・SERPINA1・HPS1・DNAI1・DNAH5・ABCA3・SLC7A7・SMPD1・CCDC39などは、女性版787遺伝子の対象に入っています(ほかの遺伝子は遺伝子一覧でご確認ください)。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(単独では受けられません)。肺高血圧症のある女性は妊娠の危険が大きいため、2022年の欧州のガイドラインは妊娠を避けることを勧めています[13]。肺高血圧症と言われている方は、妊娠を考える前に主治医とご相談ください。

8. 指定難病・小児慢性特定疾病(2026年10月時点)

このパネルで調べる病気の多くは、指定難病や小児慢性特定疾病の対象になっています。難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターで確かめた主なものは次のとおりです(2026年10月時点)。

📋 主な病気と制度

病気 指定難病 小児慢性特定疾病
特発性間質性肺炎 85 特発性間質性肺炎 特発性間質性肺炎
肺動脈性肺高血圧症 86 肺動脈性肺高血圧症 肺動脈性肺高血圧症
肺静脈閉塞症/肺毛細血管腫症 87 肺静脈閉塞症/肺毛細血管腫症 該当なし
リンパ脈管筋腫症 89 リンパ脈管筋腫症 該当なし
結節性硬化症 158 結節性硬化症 結節性硬化症
神経線維腫症 34 神経線維腫症 レックリングハウゼン病(神経線維腫症Ⅰ型)
遺伝性出血性毛細血管拡張症 227 オスラー病 遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)
肺胞蛋白症 229 肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性) 先天性肺胞蛋白症(遺伝子異常が原因の間質性肺疾患を含む。)
先天性中枢性低換気症候群 230 肺胞低換気症候群(の病態の1つ) 先天性中枢性低換気症候群
α1-アンチトリプシン欠乏症 231 α1-アンチトリプシン欠乏症 α1-アンチトリプシン欠損症
嚢胞性線維症 299 嚢胞性線維症 嚢胞性線維症
線毛機能不全症候群 340 線毛機能不全症候群(カルタゲナー症候群を含む。) 線毛機能不全症候群(カルタゲナー症候群を含む。)
先天性角化不全症・高IgE症候群 65 原発性免疫不全症候群の対象病名に含まれる 先天性角化異常症/高IgE症候群
ヘルマンスキー・パドラック症候群 164 眼皮膚白皮症の関連する病名として記載 該当なし
肺胞微石症 該当なし 肺胞微石症

※「該当なし」は該当する告示病名・対象疾病が見当たらなかったもの。医療費の助成を受けるには、それぞれの認定基準を満たして申請する必要があります。詳しくは難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜で受ける場合は、オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただけます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・頬粘膜
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
調べる遺伝子 遺伝性肺疾患に関わる69遺伝子
検査費用 税込330,000円
調べる内容 塩基配列(料金に含まれる)/欠失・挿入(料金に含まれる)
オプション 至急:結果までの期間が約7日短くなります(55,000円)/VUS除外(無料)※VUSとは、病的な意義がよくわかっていない変化のことです
結果までの期間 2〜3週間
検体 血液(EDTA管4ml×2本)・抽出DNA・頬の内側の粘膜(スワブ)・唾液
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
オンライン診療 唾液・頬粘膜・血液いずれも可能。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血していただきます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、ご自身の判断で先に検体を採らないでください。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたをご覧ください。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

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臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

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10. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「肺が弱い家系」で終わらせない】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。肺の病気は、「うちは肺が弱い家系だから」「たばこのせいだろう」と片づけられやすい病気だと考えています。けれども、原因の遺伝子がわかると、肺だけでなく、腎臓・肝臓・血液など、見張るべき場所が見えてきます。ご家族の誰が、いつから何を調べればよいかも決められます。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。「遺伝子検査はやってみないとわからない」にも、その考えを書いています。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の健康管理だけでなく、これからの結婚や妊娠の計画、ご家族の健康を考えるときにも、ずっと役に立ちます。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 肺の病気は遺伝しますか?

肺の病気の多くは、たばこ・感染・粉じんなど生まれたあとの要因で起こりますが、一部は1つの遺伝子の変化が原因で起こり、家族の中でくり返します。家族性の肺線維症、α1-アンチトリプシン欠乏症による肺気腫、バート・ホッグ・デュベ症候群による気胸、原発性線毛機能不全症候群、遺伝性の肺動脈性肺高血圧症などです。若いうちに見つかった、家族に同じ病気の人がいる、ほかの臓器にも変化がある、といった場合は、遺伝が関わっている可能性を考えます。

Q2. 肺炎は遺伝するのですか?

肺炎そのものは、細菌やウイルスなどによる感染症で、遺伝する病気ではありません。ただし、肺炎や気管支炎をくり返す背景に、痰を運ぶ線毛の病気(原発性線毛機能不全症候群)、嚢胞性線維症、免疫の病気など、遺伝性の病気が隠れていることがあります。

Q3. 肺気腫は遺伝しますか?

肺気腫の最大の原因は喫煙ですが、SERPINA1遺伝子の変化によるα1-アンチトリプシン欠乏症では、遺伝が関わって肺気腫が早く進むことがあります。この病気では、喫煙(受動喫煙を含む)を避けることがとても大切です。日本ではとても少ない病気ですが、若いうちに肺気腫と言われた方は、遺伝子検査で確かめることができます。

Q4. 気胸は遺伝しますか?

気胸の多くは遺伝によるものではありませんが、気胸をくり返す方や、家族に気胸の人が多い方の一部には、FLCN遺伝子の変化によるバート・ホッグ・デュベ症候群が隠れています。この病気は常染色体顕性(優性)遺伝で、自然気胸の生涯のリスクは24〜48%、腎細胞がんの生涯のリスクは15〜30%とされ、わかれば腎臓のMRIでの見張りを始められます。

Q5. 肺がんの遺伝子検査とは違うのですか?

違います。肺がんの治療の前に行う遺伝子検査は、がんの組織の遺伝子の変化を調べて薬を選ぶための検査です。このページの検査は、生まれ持った遺伝子(血液や唾液のDNA)を調べて、遺伝性の肺の病気の原因を探す検査で、がんの組織の検査は対象外です。

Q6. 家族に肺線維症の人がいると、自分や子どもに遺伝する確率は?

原因の遺伝子と遺伝のしかたによって違います。家族性の肺線維症の原因として多いテロメアの遺伝子(TERTなど)の変化の多くは常染色体顕性(優性)遺伝で、変化をもつ親からお子さんへは1人あたり2分の1の確率で受け継がれます。ただし、変化をもっていても発症の時期や重さには差があります。まずご家族の中で原因を確かめることが、正確な確率を知る出発点になります。

Q7. 遺伝性の肺の病気があると、結婚に差し支えますか?

遺伝の確率は、病気とご家族ごとに違い、検査で「わかること」があります。ご自身が原因の変化をもっているか、パートナーが同じ遺伝子の保因者か、お子さんへの確率はどれくらいかを知ったうえで、出生前診断なども含めて選ぶことができます。当院では、検査と遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、続けてご相談いただけます。

Q8. 唾液でオンラインでも受けられますか?

受けられます。唾液・頬の内側の粘膜の検体なら、オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただけます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血していただきます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金のお支払いのあとにお送りします。

🧬 一度の検査で、ご自身とご家族の肺のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。肺の病気の原因がわかれば、治療の選び方や避けたいこと、肺以外の臓器の見張りだけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

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参考文献

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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