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気管支拡張症の遺伝子検査|原因は遺伝?線毛機能不全症候群・嚢胞性線維症など18遺伝子を調べる

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

気管支拡張症の遺伝子検査|原発性線毛機能不全症候群・嚢胞性線維症など18遺伝子を調べる

子どものころから咳・痰・副鼻腔炎をくり返してきた気管支拡張症は、原発性線毛機能不全症候群や嚢胞性線維症など、生まれつきの遺伝子の変化が原因のことがあります。この検査は、気管支拡張症の原因になる遺伝の病気に関わる18遺伝子を一度に調べます。原因がわからないまま病院を回る時間を、1回の検査で短くできる可能性があります。生まれ持った遺伝子は一生変わらないので、わかったことは、これからの治療の選び方や、ご家族・妊娠の計画にもずっと使える情報になります。気管支拡張症の原因と遺伝の関係、この検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

気管支拡張症の原因になる遺伝の病気のうち、原発性線毛機能不全症候群(カルタゲナー症候群)・嚢胞性線維症・活性化PI3Kδ症候群などに関わる18遺伝子の変化を、まとめて調べます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

子どものころから咳・痰・副鼻腔炎・中耳炎をくり返している方、若いうちに気管支拡張症と言われた方、内臓逆位がある方、ご家族に同じ病気の方がいる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・口の内側の粘膜・血液で調べられ、オンライン診療にも対応しています。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。潜性(劣性)遺伝の病気なら、ご両親とも保因者のとき次のお子さんで4分の1の確率です。ご家族の検査や、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 咳と痰の原因を知って、これからの治療と計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

1. 気管支拡張症の原因は遺伝? 遺伝子で原因が見つかる病気

気管支拡張症の原因は1つではありません。遺伝子の変化が原因のものと、そうでないものがあり、遺伝子の変化が原因の場合は、遺伝子検査で病名まで確かめられることがあります。欧州呼吸器学会の成人の気管支拡張症の診療ガイドライン(2017年)も、原因を調べることを、診療で検討すべき大事なテーマのひとつに挙げています[7]。

気管支拡張症とは:症状と、なりやすい人

気管支は、のどから肺へ空気を運ぶ管です。気管支拡張症は、この気管支が広がったまま戻らなくなった状態をいいます。広がった気管支には痰がたまりやすく、毎日の咳と痰、ときに血の混じった痰や、肺炎・気管支炎のくり返しにつながります。

「なりやすい人」は、原因によって違います。子どものころから症状がある方、副鼻腔炎や中耳炎もくり返している方、内臓逆位がある方、ご家族に同じ病気の方がいる方では、生まれつきの原因(遺伝の病気)を考えます。

気管支の表面には、線毛という小さな毛がびっしり生えていて、波打つように動いて痰を外へ運び出しています。線毛が動かない、または痰がねばりすぎて運べないと、次のような悪い流れが起こります。

線毛が動かないまたは痰がねばる
▶
痰がたまる
▶
感染・炎症を
くり返す
▶
気管支が
広がる

原因の一覧と、遺伝子で調べられるもの

この検査で調べられるのは、気管支拡張症の原因のうち「遺伝子の変化が原因の病気」です。遺伝子の変化ではない原因は、遺伝子検査ではなく、呼吸器内科での血液検査・画像検査・痰の検査などで調べます。

🧬 気管支拡張症の原因になる遺伝の病気と、この検査で調べる範囲

原因の病気 しくみ この検査で調べる遺伝子
原発性線毛機能不全症候群(カルタゲナー症候群を含む) 線毛が動かず、痰を運べない 線毛の12遺伝子(50以上ある原因遺伝子の一部)
嚢胞性線維症(CF)・CFTRの病気 塩と水の出入りがうまくいかず、痰がねばる CFTR
活性化PI3Kδ症候群(APDS) 免疫の働きが乱れ、感染をくり返す PIK3CD・PIK3R1
上皮ナトリウムチャネル(ENaC)の変化 気道の表面の水分の調節が乱れる(研究段階) SCNN1A・SCNN1B・SCNN1G
遺伝子の変化ではない原因 感染症のあと、ほかの病気にともなうものなど 遺伝子検査では調べない(呼吸器内科での検査)

※線毛の遺伝子の数はGeneReviews[1]、遺伝子と病気の関係はOMIM・UniProtによる。調べる遺伝子はこの検査の対象遺伝子(第4章)。

子ども・20代から症状がある、先天性かもと言われたとき

年齢だけで原因は決まりませんが、症状が始まった時期は大事な手がかりです。原発性線毛機能不全症候群では、満期で生まれた赤ちゃんの75%以上が、生まれてすぐ酸素の助けが必要な呼吸の苦しさを経験すると報告されています(ただし、その時点で診断されることは少ないとされています)[1]。次のような経過がある方は、遺伝の病気を考えるきっかけになります。

  • ●生まれてすぐに呼吸が苦しく、酸素や治療が必要だった
  • ●赤ちゃんのころから、湿った咳と鼻水が1年中続いていた
  • ●子ども・10代・20代で気管支拡張症と言われた
  • ●肺炎・気管支炎のほか、副鼻腔炎・中耳炎もくり返している
  • ●きょうだいや親に同じ症状の方がいる

副鼻腔気管支症候群・中耳炎・内臓逆位があるとき

気管支の病気と副鼻腔炎が一緒に続く状態は、副鼻腔気管支症候群と呼ばれます。鼻の奥(副鼻腔)や耳(中耳)の表面にも線毛があるため、線毛の病気では、気管支・副鼻腔・中耳の症状がそろって起こりやすくなります。

また、線毛は、お母さんのおなかの中で心臓や胃の位置(左右)を決めるときにも働きます。そのため原発性線毛機能不全症候群では、内臓の左右がそっくり入れ替わる完全内臓逆位が40〜50%、内臓の配置が乱れる内臓錯位が9〜12%にみられます[1]。内臓逆位・慢性副鼻腔炎・気管支拡張症がそろった状態は、カルタゲナー症候群と呼ばれます。心臓の位置や形の異常が中心の方は、内臓錯位症・完全内臓逆位の遺伝子検査もご覧ください。

2. この検査で調べる4つの病気

この検査の18遺伝子は、原発性線毛機能不全症候群・嚢胞性線維症・活性化PI3Kδ症候群・上皮ナトリウムチャネルの変化の、4つのグループに分かれます。どれが見つかるかで、治療の選び方も、ご家族への影響も変わります。

原発性線毛機能不全症候群(PCD・カルタゲナー症候群)

原発性線毛機能不全症候群は、生まれつき線毛がうまく動かないために、痰を運び出せなくなる病気です。英語の primary ciliary dyskinesia の頭文字をとって、PCDとも呼ばれます。線毛のはたらきが乱れる病気の全体は、線毛病(シリオパチー)と呼ばれます。

遺伝性疾患の解説書GeneReviewsによると、原因になる遺伝子は50以上知られていますが、くわしく調べて診断された方でも20〜30%は原因の遺伝子の変化が見つかりません。海外の報告では、DNAH5が約22%、DNAH11が約11%、CCDC40が約9%、DNAI1が約6%を占めます。多くは常染色体潜性(劣性)遺伝で、一部に顕性遺伝やX連鎖の型があります[1]。

精子のしっぽ(鞭毛)は線毛とよく似たつくりをしているため、男性では精子の動きが悪く、子どもを授かりにくいことがよくあります。女性でも、卵管の線毛の働きが落ちて妊娠しにくくなる方があり、子宮外妊娠への注意が必要とされています。一方で、妊娠のしやすさが変わらない女性もいます[1]。

⚠️ 日本人で最も多い原因(DRC1)は、この検査に入っていません

日本人の原発性線毛機能不全症候群が疑われた93人(84家系)を調べた研究では、21人にDRC1遺伝子の大きな欠失(エクソン1〜4、約2万8千塩基)が両方の染色体で見つかり、原因の遺伝子がわかった方の49%を占めていました[2]。このDRC1は、気管支拡張症の18遺伝子パネルには入っていません。症状から原発性線毛機能不全症候群が強く疑われる方には、DRC1を含む49遺伝子を調べる原発性線毛機能不全症候群(PCD)遺伝子パネル検査をおすすめします(第3章)。

この検査で調べる線毛の遺伝子の病気には、原発性線毛機能不全1(カルタゲナー症候群)(DNAI1)、原発性線毛機能不全症3(DNAH5)などがあり、遺伝子ごとの病気は第4章の表にまとめています。

嚢胞性線維症(CF)と、日本人に見られるCFTRの病気

嚢胞性線維症は、CFTR遺伝子の変化で、気道や膵臓などの分泌液がねばり、気道に痰がたまって感染をくり返す病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝で、世界では少なくとも10万人の患者さんがいるとされています[3]。

日本ではきわめてまれで、発症は100万人あたり約3人とされてきましたが、確定診断に必要な汗の検査を受けられる場が少ないため、実際より少なく見積もられている可能性も指摘されています[5]。日本人の患者さんでは、欧米で多い変化とは違い、CFTRのエクソン16〜17bがまとまって抜ける大きな欠失が、最も多い変化と報告されています[4][5]。このように、日本人に多い変化は欧米と違うため、日本人のための読み方ができることが大切です。この検査は、遺伝子の小さな変化に加えて、複数のエクソンにまたがる欠失・重複も調べます(第5章)。

CFTRの変化は、肺以外の病気にもつながります。GeneReviewsでは、CFTRに関わる病気のうち最も多いのは先天性両側精管欠損症(精子の通り道がないための男性不妊)とされ、くり返す急性膵炎・慢性膵炎の方の約15%がCFTRの変化を1つもっていたとも記載されています[3]。膵炎が気になる方には慢性膵炎の遺伝子検査もあります。

治療では、海外でCFTR調節薬(CFTRモジュレーター)が使われており、使えるかどうかはCFTRのどの変化をもっているかで決まります[3]。どの変化かがわかっていることが、治療を考える出発点になります。日本で使える薬かどうかは、専門の医療機関でご確認ください。

免疫の病気:活性化PI3Kδ症候群(APDS)

活性化PI3Kδ症候群は、PIK3CD(1型)またはPIK3R1(2型)の変化で免疫の働きが乱れ、副鼻腔や肺の感染をくり返す病気で、常染色体顕性(優性)遺伝です。免疫細胞の中で信号を伝えるPI3K-AKT-mTOR経路が働きすぎることで起こります。

PIK3CDの変化による患者さん53人を調べた欧州などの研究では、98%が副鼻腔や肺の感染をくり返し、60%で胸の画像検査で気管支拡張症が見つかり、13%にリンパ腫がみられました[6]。感染症のくり返しの陰に、治療の選び方が変わる免疫の病気が隠れていることがあります。日本では2026年3月に、4歳以上の活性化PI3Kδ症候群の治療薬(レニオリシブ)の承認が発表されています(2026年10月時点で確認)。免疫の病気がより強く疑われるときは、包括的原発性免疫不全症遺伝子パネル検査(596遺伝子)が向いています。

上皮ナトリウムチャネル(ENaC)の変化

SCNN1A・SCNN1B・SCNN1Gは、気道の表面で塩(ナトリウム)を取り込む通り道(上皮ナトリウムチャネル)を作る遺伝子です。これらの変化は、嚢胞性線維症に似た気管支拡張症(気管支拡張症1±汗中塩化物上昇など)との関係が報告されています。ただし、気管支拡張症との関係はまだ研究の途中で、遺伝のしかたも確立していません。同じ遺伝子は、血圧や体の塩分の調節に関わる病気(偽性低アルドステロン症1型・リドル症候群)の原因にもなります。

3. どんな人がこの検査を受けるとよいか

気管支拡張症があり、原因の候補が線毛・嚢胞性線維症・免疫などにまたがっていて、まだ絞れない方に向く検査です。病名がわかると、受けるべき検査、気をつけたいこと、使える制度が決まります。

この検査を受けるとよい方

  • ●子ども・若いうちから気管支拡張症がある方、または咳と痰が長く続いている方
  • ●副鼻腔炎・中耳炎・肺炎をくり返している方
  • ●ご家族に気管支拡張症・原発性線毛機能不全症候群・嚢胞性線維症の方がいる方
  • ●気管支拡張症に加えて、男性不妊(精子の動きが悪い・精管がない)や膵炎がある方
  • ●ご家族で原因がわかっていて、ご自身が同じ変化をもっているか、保因者かを知りたい方

見た目や症状、ご家族の様子だけでは、遺伝の病気かどうかは判断できません。迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。

この検査より別の検査が向いている場合

疑う病気がはっきりしているときは、その病気の遺伝子をより多く調べる検査のほうが向いています。比べる相手は検査の種類で、症状に合わせて選びます。遺伝子検査の種類やわかることもあわせてご覧ください。

🔍 症状・検査の結果から、どの検査を選ぶか

こんなとき 向いている検査
気管支拡張症の原因を、線毛・CF・免疫・ENaCにまたがって広く調べたい このページの検査(18遺伝子)
生まれてすぐの呼吸の苦しさ、副鼻腔炎・中耳炎、内臓逆位など、原発性線毛機能不全症候群が強く疑われる 原発性線毛機能不全症候群(PCD)遺伝子パネル検査(49遺伝子・DRC1を含む)
内臓逆位と慢性の呼吸器感染症が中心 カルタゲナー症候群/内臓錯位症候群の遺伝子検査(11遺伝子)、内臓錯位症・完全内臓逆位の遺伝子検査
肺の病気の型を絞れない(嚢胞・線維化などもある) 肺疾患遺伝子パネル検査(69遺伝子)
肺以外の感染もくり返し、免疫の病気が疑われる 包括的原発性免疫不全症遺伝子パネル検査(596遺伝子)
肺以外の症状も多く、病気を絞れない 全エクソーム検査(WES)

※遺伝子数は各検査ページの記載による(2026年10月時点)。どの検査が合うかは、症状・画像・ご家族の情報で変わるため、遺伝カウンセリングで一緒に決めます。

臨床遺伝専門医としての判断をお伝えすると、日本人で原発性線毛機能不全症候群が強く疑われる場合は、日本人に最も多いDRC1を含むPCDパネルを先に選ぶほうが、原因にたどり着きやすいと考えています。反対に、線毛の病気か、嚢胞性線維症か、免疫の病気か、まだ見当がつかない段階では、このパネルで広く調べる意味があります。

\ 1回の検査結果が、ご家族の手がかりにもなります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

原因がわかれば、ご両親・きょうだいは同じ変化だけをピンポイントで調べられます。海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。

お問い合わせはこちら | 原発性線毛機能不全症候群のパネル検査を見る

4. 調べる18遺伝子と関係する病気

この検査では、次の18遺伝子をまとめて調べます。遺伝子ごとに関係する病気と遺伝のしかたが違うため、どの遺伝子に変化が見つかったかで、その後の考え方が変わります。

🧬 気管支拡張症の遺伝子検査で調べる18遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
CCDC39 原発性線毛機能不全症14型 常染色体潜性(劣性)
CCDC40 原発性線毛機能不全症15型 常染色体潜性(劣性)
CFTR 嚢胞性線維症、先天性両側精管欠損症 常染色体潜性(劣性)
DNAAF1 原発性線毛機能不全症13型 常染色体潜性(劣性)
DNAAF2 原発性線毛機能不全症10型 常染色体潜性(劣性)
DNAH11 原発性線毛機能不全症7型 常染色体潜性(劣性)
DNAH5 原発性線毛機能不全症3型 常染色体潜性(劣性)
DNAI1 原発性線毛機能不全症1型(カルタゲナー症候群) 常染色体潜性(劣性)
DNAI2 原発性線毛機能不全症9型 常染色体潜性(劣性)
DNAL1 原発性線毛機能不全症16型 常染色体潜性(劣性)
NME8 原発性線毛機能不全症6型 常染色体潜性(劣性)
PIK3CD 活性化PI3Kδ症候群1型(免疫不全症14A)/免疫不全症14B/ロイフマン・チタヤット症候群 1型は常染色体顕性(優性)。14Bは常染色体潜性(劣性)。ロイフマン・チタヤット症候群は潜性の二遺伝子遺伝
PIK3R1 活性化PI3Kδ症候群2型(免疫不全症36)/無ガンマグロブリン血症7型。SHORT症候群の原因にもなる 2型は常染色体顕性(優性)。無ガンマグロブリン血症7型は常染色体潜性(劣性)
RSPH4A 原発性線毛機能不全症11型 常染色体潜性(劣性)
RSPH9 原発性線毛機能不全症12型 常染色体潜性(劣性)
SCNN1A 気管支拡張症2型(汗中塩化物上昇の有無を問わない)/偽性低アルドステロン症1B1型/リドル症候群3型 気管支拡張症との関係は研究段階。偽性低アルドステロン症は常染色体潜性(劣性)、リドル症候群は常染色体顕性(優性)
SCNN1B 気管支拡張症1型(汗中塩化物上昇の有無を問わない)/偽性低アルドステロン症1B2型/リドル症候群1型 気管支拡張症との関係は研究段階。偽性低アルドステロン症は常染色体潜性(劣性)、リドル症候群は常染色体顕性(優性)
SCNN1G 気管支拡張症3型(汗中塩化物上昇の有無を問わない)/偽性低アルドステロン症1B3型/リドル症候群2型 気管支拡張症との関係は研究段階。偽性低アルドステロン症は常染色体潜性(劣性)、リドル症候群は常染色体顕性(優性)

※対象遺伝子は当院の検査内容(18遺伝子)による。病気と遺伝のしかたはOMIM・UniProtの記載による(2026年10月確認)。

5. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、18遺伝子の小さな変化(1文字の置き換わりや、小さな抜け・入り込み)と、遺伝子全体や複数のエクソンにまたがる欠失・重複です。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。一方で、次のような限界があります。

  • ●調べていない遺伝子:日本人の原発性線毛機能不全症候群で最も多いDRC1をはじめ、50以上ある線毛の遺伝子の多くは対象外です。
  • ●小さな欠失・重複:エクソン1つだけの欠失・重複は、見つからないことがあります。複数のエクソンにまたがる欠失・重複は血液の検体で、遺伝子全体の欠失・重複は血液と口の内側の粘膜の検体で調べられます。
  • ●見つけにくい変化:染色体の入れ替わり(転座・逆位)、遺伝子のスイッチの部分(プロモーター)や、エクソンから離れたイントロンの奥の変化は調べられません。体の一部の細胞だけの変化(モザイク)を見つけるための検査でもありません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうかまだ判断できない変化が見つかることがあります。ご希望により、VUSを報告に含めない設定もできます(無料)。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、遺伝の病気ではないとは言い切れません。原発性線毛機能不全症候群では、くわしく調べて診断された方でも20〜30%で原因の遺伝子が見つかっていません[1]。

6. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。結果の報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたでも解説しています。

病的変異が見つかったら、次にできること

原因の病気がわかると、「わかって終わり」ではなく、立場ごとに次の行動が決まります。治療は呼吸器内科・小児科などの専門の医療機関で受けていただくことになりますが、何を相談すればよいかがはっきりします。

✅ 立場ごとに、次にできること

立場 できること
①症状のあるご本人 病名が決まり、痰を出す練習・感染の予防など、原因に合わせた管理を主治医と相談できます。嚢胞性線維症ならCFTRの変化の種類が治療薬を考える手がかりに、活性化PI3Kδ症候群なら免疫の専門医での治療の検討につながります。原発性線毛機能不全症候群や先天性両側精管欠損症では、子どもを授かりにくいことへの備え(男性不妊症・女性不妊症の相談)を早めに考えられます。
②症状のないご本人(保因者だった方など) 潜性遺伝の病気の保因者は、ふつう発症しません。お子さんに関係するのは、パートナーも同じ遺伝子の保因者だった場合です。パートナーの保因者検査で確かめられます。一方、活性化PI3Kδ症候群などの顕性遺伝の病気では、症状がなくても病的な変化をもっている可能性があります。ご家族に原因となる変化が見つかっている場合は、ご自身の検査の必要性や、その後の健康管理について遺伝カウンセリングで相談できます。
③子どもを持つとき 自然に妊娠して出生前診断を受ける、PGT-Mを考える、何もしないで出産する、のどれも選べます。どの選択も尊重します。
④ご家族 きょうだい・親・いとこが同じ変化をもっているかを、その変化だけピンポイントで調べられます。症状のない方は、ご本人の同意で受けていただきます。
⑤当院でのその後 臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで結果をご説明し、ご家族の検査、パートナーの保因者検査、妊娠したときの出生前診断まで、続けて相談できます。

ご家族・次のお子さんへの確率と、結婚を考えるとき

原発性線毛機能不全症候群と嚢胞性線維症の多くは常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親がともに保因者のとき、お子さん1人あたり4分の1の確率で発症し、2分の1の確率で保因者になります。きょうだいも同じ確率です。活性化PI3Kδ症候群のような常染色体顕性(優性)遺伝の病気では、親が変化をもっていれば、お子さん1人あたり2分の1の確率で受け継ぎます。確率のしくみは劣性遺伝(潜性遺伝)とは?保因者の仕組みと子どもへ遺伝する確率でくわしく解説しています。

ご家族に気管支拡張症の方がいて、結婚や子どもへの影響を心配される方もいます。遺伝するかどうか、お子さんへの確率は、原因の病気と遺伝のしかた、そしてパートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかで大きく変わります。これらは検査でわかることなので、知ったうえで、どうするかを考えられます。

当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)には、この検査の遺伝子のうちCFTR・CCDC39・DNAH5・DNAI1・DNAI2・DNAL1・RSPH9が含まれ、女性版1009遺伝子にはさらにDNAH11が含まれます。男性の方は男性版714遺伝子・男性版911遺伝子の遺伝子一覧でご確認ください。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(単独では受けられません)。

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-M(着床前遺伝学的検査)が行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。

陰性だったとき・VUSが見つかったとき

原因が見つからなかった場合は、調べていない遺伝子や見つけにくい変化が残っている可能性があります(第5章)。原発性線毛機能不全症候群が疑われるなら、DRC1を含むPCDパネルを次の選択肢として考えます。VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的と別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、二次的所見の開示方針をご覧ください。

7. 指定難病と、使える制度(2026年10月時点)

「気管支拡張症」という病名そのものは、指定難病の一覧にありません。一方で、原因の病気のうち、線毛機能不全症候群(カルタゲナー症候群を含む)は指定難病340、嚢胞性線維症は指定難病299です。原発性免疫不全症候群も指定難病65として一覧に載っています(いずれも2026年10月時点で確認)。

医療費の助成を受けるには、それぞれの病気の診断基準と重症度の基準を満たし、申請する必要があります。遺伝子検査で原因がはっきりしていることは、診断を確かめる手がかりのひとつになります。認定の条件や申請の方法は、難病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。なお、当院の検査と遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・口の内側の粘膜で調べられる検査なので、オンライン診療で遺伝カウンセリングを受け、ご自宅から検体をお送りいただくこともできます。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取唾液・粘膜・血液
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査内容 18遺伝子の塩基配列と、欠失・重複(どちらも料金に含まれます)
検査費用 税込330,000円
結果までの期間 2〜3週間(至急オプション55,000円で約7日短くなります)
検体 血液(EDTA採血管4ml×2本)、抽出DNA、口の内側の粘膜、唾液
オプション VUSを報告に含めない設定(無料)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
オンライン診療 可能。血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。検体の取り違えや、検査に使えない品質になることを防ぐためです。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、これからの治療と家族の計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご夫婦とも保因者だった場合、妊娠したときの出生前診断(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「いつもの咳」に名前がつくと、次の一手が決まる】

子どものころからの咳や痰は、「体質だから」「そういうものだから」と、長いあいだ当たり前のこととして過ごされがちです。けれども、その陰に生まれつきの原因があるとわかれば、痰を出すための管理、感染への備え、治療薬の選び方、そして子どもを授かることへの準備まで、考えることが具体的になります。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

原発性線毛機能不全症候群や嚢胞性線維症のような潜性遺伝の病気では、ご両親は保因者で症状がないことがほとんどです。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。お子さんの原因がわかることは、ご両親を責める材料ではなく、きょうだいやご親族が自分のことを知り、次の妊娠に備えるための手がかりになります。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 気管支拡張症は遺伝しますか?

気管支拡張症の原因は1つではなく、遺伝子の変化が原因のものと、そうでないものがあります。原発性線毛機能不全症候群、嚢胞性線維症、活性化PI3Kδ症候群など、遺伝子の変化が原因の病気から気管支拡張症になることがあります。原発性線毛機能不全症候群と嚢胞性線維症の多くは常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親がともに保因者のとき、お子さん1人あたり4分の1の確率で発症します。

Q2. 気管支拡張症になりやすい人は?子どもや20代でもなりますか?

子どものころから咳や痰、副鼻腔炎・中耳炎をくり返している方、若いうちに気管支拡張症と言われた方、内臓逆位がある方、ご家族に同じ病気の方がいる方では、生まれつきの原因を考えます。原発性線毛機能不全症候群では、満期で生まれた赤ちゃんの75%以上が、生まれてすぐ酸素の助けが必要な呼吸の苦しさを経験すると報告されています。年齢だけで原因は決められないので、症状の経過とあわせて考えます。

Q3. 気管支拡張症は指定難病ですか?

2026年10月時点で、「気管支拡張症」という病名そのものは指定難病の一覧にありません。ただし、原因の病気のうち、線毛機能不全症候群(カルタゲナー症候群を含む)は指定難病340、嚢胞性線維症は指定難病299です。対象になるかどうかは診断基準や重症度で決まるため、難病情報センターやお住まいの自治体の窓口でご確認ください。

Q4. 気管支拡張症は治りますか?余命はどれくらいですか?

気管支拡張症は、気管支が広がったまま戻らなくなった状態です。治療は、痰を出しやすくし、感染や悪化を減らすことが中心になります。見通しは原因と重症度によって大きく違うため、一律に余命を言うことはできません。原因の病気がわかると、嚢胞性線維症や活性化PI3Kδ症候群のように、原因に合わせた治療を検討できる場合があります。治療は呼吸器内科などの専門の医療機関で受けてください。

Q5. 気管支拡張症はうつりますか?

気管支拡張症そのものが、人から人へうつることはありません。遺伝子の変化が原因の場合も、うつるのではなく、親から子へ受け継がれるものです。広がった気管支に起こる感染症への対応は、主治医の指示に従ってください。

Q6. 家族に気管支拡張症の人がいます。結婚や子どもへの影響が心配です。

遺伝するかどうか、お子さんへの確率は、原因の病気と遺伝のしかた、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかで大きく変わります。潜性遺伝の病気なら、パートナーが同じ遺伝子の保因者でなければ、お子さんが発症することはふつうありません。ご自身が原因の変化をもっているか、パートナーが保因者かは、検査でわかります。知ったうえで、出生前診断などの選択肢も含めて計画を立てられます。どの選択をされても、その選択を尊重します。

Q7. 原発性線毛機能不全症候群のパネル検査と、どちらを受ければよいですか?

生まれてすぐの呼吸の苦しさ、くり返す副鼻腔炎・中耳炎、内臓逆位など、原発性線毛機能不全症候群が強く疑われるときは、49遺伝子を調べるPCDパネルが向いています。日本人で最も多い原因と報告されているDRC1は、この気管支拡張症の18遺伝子パネルには入っておらず、PCDパネルには入っています。原因の候補が線毛・嚢胞性線維症・免疫などにまたがり、まだ絞れないときは、このパネルを選びます。

Q8. 検査の結果は英語でもらえますか?

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。

🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。気管支拡張症の原因がわかれば、ご自身の治療や管理の選び方だけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、パートナーの保因者検査、拡大版保因者スクリーニング、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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